説明

シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子とその製造方法、これを用いた光学部材用塗布液及び光学部材

【課題】 耐湿性が改善され、特性の劣化がなく、日射遮蔽材料などとして好適に利用される6ホウ化物微粒子を提供し、これを用いた光学部材用塗布液、並びに日射遮蔽用の光学部材を提供する。
【解決手段】 6ホウ化物微粒子の表面に、予めシランカップリング剤などの表面修飾剤で一次被覆膜を形成し、次にケイ酸化合物でシリカを主体とする二次被覆膜を形成する。このシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子は外形が略球状をなし、耐湿性に優れている。日射遮蔽用の光学部材は、このシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を分散させた塗布液を基材に塗布するか、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を液体媒質又は固体媒質に分散させ、フィルム又はボードに成形して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日射遮蔽材料として好適なシリカ膜で被覆された6ホウ化微粒子とその製造方法、これを用いた光学部材用塗布液、及び日射遮蔽用の光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光などからの熱成分を除去・減少させる日射遮蔽膜として、可視・赤外域の波長を反射する金属酸化物や金属薄膜を、樹脂フィルムやガラスの表面に形成することが行なわれていた。このような日射遮蔽膜に用いる日射遮蔽材料としては、無機系では、FeO、CoO、CrO、TiOなどの金属酸化物や、Ag、Au、アルミニウムなどの自由電子を多量にもつ金属材料が使用されていた。また、有機系では、フタロシアニン系や金属錯体系があり、樹脂バインダー中に添加した物がよく使用されていた。
【0003】
しかし、上記した従来の無機系の日射遮蔽材料は、特に太陽光線で熱効果に大きく寄与する近赤外線以外に、可視光領域の光も同時に反射若しくは吸収する性質がある。そのため、鏡のようなギラギラした外観を与えて美観を損ねたり、可視光透過率が低下してしまうという欠点があった。
【0004】
特に、住宅、ビル、乗り物などに用いる透明基材では、可視光領域の高い透過率が必要とされるため、無機系の日射遮蔽材料を利用する場合には膜厚を非常に薄くするという操作が必要となる。従って、スプレー焼き付け法、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法などの物理成膜法を用いて、10nmレベルという極めて薄い膜を成膜しなければならなかった。このため、大がかりな装置や真空設備が必要となり、成膜コストが高くなるうえ、大面積化が難しく、生産性にも劣るという問題があった。
【0005】
更に、これら無機系の日射遮蔽材料では、膜の導電性が高くなるものが多く、携帯電話やTV受信、車内にアンテナを搭載したカーナビゲーションシステムなどの電波を反射して受信不能になったり、周辺地域に電波障害を引き起こしたりする欠点があった。
【0006】
一方、上記した従来の有機系の日射遮蔽材料は、無機系の材料に比べて熱や湿度による劣化が著しく、耐湿性に致命的な欠点があった。また、可視光透過率を高くしようとすると日射遮蔽特性が低下し、逆に日射遮蔽特性を高くすると可視光透過率が低下してしまうという問題もあった。
【0007】
他の日射遮蔽材料として、アンチモン含有酸化錫(ATO)や錫含有酸化インジウム(ITO)があり、可視光領域の光の吸収・反射率が比較的少なく、人の目に対して透明性が高いという利点がある。しかし、単位質量あたりの日射遮蔽力は低く、十分な日射遮蔽効果を得るためには大量の材料が必要となるため、これを用いた日射遮蔽膜は非常に高価であった。特に、ATOは自由電子濃度が低いため近赤外線の遮蔽力が弱く、日射遮蔽特性が不十分であった。また、ATOやITOの日射遮蔽膜を物理成膜法で形成しても、膜の導電性が上がり、電波を反射妨害してしまう欠点があった。
【0008】
上記した従来の日射遮蔽材料の欠点を解決する方法として、特開2000−169765号公報には、可視光領域の光の透過率が高く且つ反射率が低く、近赤外領域の光の透過率が低く、自由電子を多量に保有する6ホウ化物に着目し、これを超微粒子化してATOやITOと併用することが記載されている。この方法によれば、それぞれの材料を単独で使用するよりも日射遮蔽特性が向上し、ATOやITOの使用量を少なくして材料コストを低減し、しかも表面抵抗値を10Ω/□以上に制御可能な膜を簡便な塗布法で成膜できる利点がある。
【0009】
しかしながら、上記6ホウ化物粒子は、空気中の水蒸気や水分によって表面が分解されることが知られている。特に微細な粒子の状態では体積に対して表面積が増加しているため、6ホウ化物微粒子の表面は水蒸気や水分で容易に分解し、酸化物や水酸化物の化合物に変化する割合が多く、その結果6ホウ化物本来の特性が徐々に低下してしまうという欠点があった。例えば、6ホウ化物微粒子を用いた塗膜などにおいて、その光学特性を利用して近赤外領域の光を遮蔽する用途に適用した場合、水蒸気や水分の影響で200〜2600nm領域の透過率が上昇してしまい、日射遮蔽性能が徐々に劣化することが知れている。
【0010】
これを防止する方法として、特開2004−043764号公報には、6ホウ化物微粒子を不定形シリカで表面処理することが記載されている。また、不定形シリカで表面処理した6ホウ化物微粒子同士を更に不定形シリカを結着剤として結合して、1〜100μm程度の粒子に成長させ、次いで、その粒子を粉砕して平均粒径が0.1〜30μmの6ホウ化物複合粒子とすることも開示されている。しかしながら、水蒸気や水分による6ホウ化物の分解を完全に抑えることは難しいうえ、粉砕時にシリカ膜が破損してしまうため耐湿性を維持することも困難であった。
【0011】
【特許文献1】特開2000−169765号公報
【特許文献2】特開2004−043764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来の事情に鑑みてなされたものであり、耐湿性に優れていて、日射遮蔽特性の劣化のない6ホウ化物微粒子を提供すること、これを用いた光学部材用塗布液並びに光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、6ホウ化物微粒子の表面に、表面修飾剤による一次被覆膜と、一次被覆膜上のシリカを主体とする二次被覆膜とを有し、外形が略球状であることを特徴とするシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を提供するものである。
【0014】
上記本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子においては、前記6ホウ化物微粒子が、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の6ホウ化物であることが好ましい。また、前記6ホウ化物微粒子の粒子径は2nm〜10μmであることが好ましい。
【0015】
上記本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子においては、前記一次被覆膜と二次被覆膜の合計厚さが1〜100nmであることが好ましい。また、前記表面修飾剤がシランカップリング剤であることが好ましい。
【0016】
上記本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の製造方法は、6ホウ化物微粒子が分散した液体に表面修飾剤を添加して粒子表面に表面修飾剤による一次被覆膜を形成し、次にケイ酸化合物を添加して加水分解重合させることにより一次被覆膜上にシリカを主体とする二次被覆膜を形成することを特徴とする。
【0017】
上記本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の製造方法においては、前記表面修飾剤がシランカップリング剤であり、その6ホウ化物微粒子に対する比率が、シランカップリング剤に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。また、前記ケイ酸化合物の6ホウ化物微粒子に対する比率が、ケイ酸化合物に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜100重量部であることが好ましい。
【0018】
本発明は、また、上記本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を、液体中に分散させたことを特徴とする光学部材用塗布液を提供する。この光学部材用塗布液においては、前記液体が、有機溶媒及び/又は水であるか、樹脂及び金属アルコキシドの少なくとも1種を溶解又は分散させた有機溶媒及び/又は水であることが好ましい。
【0019】
本発明は光学部材を提供するものであり、その第1は、上記した本発明の光学部材用塗布液を基材表面に塗布し、硬化させて形成したことを特徴とするものである。この光学部材は、また、上記した本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させた光学部材用分散体からなる被膜が、基材表面に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
更に、本発明の第2の光学部材は、上記した本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させた光学部材用分散体からなり、フィルム又はボードに成形されていることを特徴とする。
【0021】
上記第2の光学部材においては、前記固体媒質が樹脂又はガラスのいずれかであることが好ましい。また、前記光学用分散体からなるフィルム又はボードの厚さは0.1μm〜50mmであることが好ましい。
【0022】
また、本発明の第3の光学部材は、上記した本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を液体媒質に分散させた光学部材用分散体が、フィルム又はボードの間に封入されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、6ホウ化物微粒子の表面に最初に表面修飾剤で薄く一次被覆膜を形成し、次にケイ酸化合物を用いてシリカの二次被覆膜を形成することで、被覆時に粒子間の凝集が起こらず、表面が均一なシリカ膜で完全に被覆された、6ホウ化物微粒子を中心核とする外形が略球状のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を得ることができる。
【0024】
この外形が略球状のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子は、表面が均一なシリカ膜で完全に被覆されているだけでなく、分散性が高いため粉砕が不要か又は軽い解砕で済み、且つ外状が滑らかな略球状であるため、シリカ膜が破損することがない。従って、6ホウ化物微粒子の耐湿性が飛躍的に向上し、日射遮蔽材料として好適な耐湿性に優れたシリカ膜被覆6ホウ化微粒子、及びこれを用いた光学部材用塗布液並びに光学部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
上述したように、日射遮蔽特性を有する6ホウ化物微粒子は、空気中の湿気等で表面が酸化物や水酸化物に変化し、6ホウ化物本来の特性が低下してしまうという問題がある。そこで、6ホウ化物微粒子の表面を表面処理剤で物理的もしくは化学的に被覆して、6ホウ化物微粒子の耐湿性を改善させる試みがなされてきた。例えば、前記特開2004−043764号公報に記載されるように、6ホウ化物微粒子に直接、3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)、テトラエチルシリケート、テトラメチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケートのようなテトラアルキルシリケートなどのケイ酸化合物又はそれらの部分縮合物等を加水分解して、非結晶性、無定形のシリカで被覆する方法がある。
【0026】
しかしながら、このような方法でシリカ被覆された6ホウ化物微粒子は分散性が悪くなり、被覆時に粒子が凝集して結着するという問題があった。そこで、光学特性を出すため結着した粒子の粉砕を行うと、シリカ被覆層が破損して耐湿性の劣化を招く結果となっていた。また、6ホウ化物微粒子の表面に付着したシリカが滑らかでなく、凸凹した被覆膜であるために、水分の含浸が起こりやすく、満足すべき耐湿性を得ることも難しかった。
【0027】
本発明においては、6ホウ化物微粒子の表面に、予めシランカップリング剤などの表面修飾剤で薄く一次被覆膜を形成し、その後ケイ酸化合物でシリカを主体とする丸みのある二次被覆膜を形成する。この方法によれば、被覆時に粒子間の凝集が起こらず、高い分散性を保持したまま、6ホウ化物微粒子の表面を均一なシリカ膜で覆うことができる。従って、凝集を除去するための粉砕が不要か又は軽い解砕で済むうえ、形状が滑らかで外形が略球状であるため、シリカ膜の破損が起き難くなり、耐湿性が飛躍的に向上する。
【0028】
かかる本発明によるシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子は、6ホウ化物微粒子の表面に表面修飾剤による一次被覆膜とシリカを主体とする二次被覆膜とを有し、外形が略球状である。6ホウ化物微粒子表面の一次被覆膜と二次被覆膜の合計厚さは、1〜100nmの範囲であることが好ましい。膜厚が1nmよりも薄いと 耐湿性が低下し、逆に100nmを超えると凝集が起こりやすくなるため好ましくない。本発明による外形が略球状のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の透過電子顕微鏡(TEMと略す)写真を図1に示す。
【0029】
本発明によるシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子は、6ホウ化物に特有の電子構造に由来する日射遮蔽特性を有している。即ち、6ホウ化物は特に1000nm付近に自由電子のプラズモン共鳴があるため、この領域の光(近赤外線)をブロードに吸収反射する。同時に、380〜780nmの可視光領域の吸収が少ないため、可視光線を透過し近赤外線を遮蔽する光学部材としての用途に適している。従って、本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を適用した断熱用光学フィルターは、例えば住宅や自動車の窓材、温室等に適用することによって、太陽光線の1000nm付近の近赤外線を遮蔽することで高い断熱効果が得られると同時に、視認性が確保される利点を有する。
【0030】
尚、断熱用光学フィルターなどの光学部材におけるシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の使用量は、その求められる特性によって適宜変更可能である。具体的には、可視光線領域を透過し近赤外線を遮蔽する断熱用光学フィルターの場合、例えばLaBにおいては、1m当たりのフィラー量が0.01g以上で有効な断熱効果が得られる。使用量の上限は求める光学特性に応じて適宜定めることができるが、1m当たり0.1gで約50%の太陽光線の熱エネルギーを吸収遮蔽することが可能であるから、単位重量における断熱効率は優れている。
【0031】
本発明で用いる6ホウ化物微粒子は、従来から日射遮蔽用として公知のものであってよいが、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の6ホウ化物であることが好ましい。
【0032】
上記6ホウ化物微粒子の粒子径は、光学的利用目的によって2nm〜10μmの範囲内で適宜設定される。例えば、光学的選択透過膜(可視光領域の光を透過させ、近赤外領域の光を遮蔽する膜)のように透明性を重視する場合、6ホウ化物微粒子の粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下とする。その理由は、粒子径が200nmを超えると、幾何学散乱若しくはミー散乱によって、380〜780nmの可視光領域の光を散乱して曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が達成できないからである。
【0033】
6ホウ化物微粒子の粒子径が200nm以下になると上記散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴って透明性が向上する。更に100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり透過性が一層向上する。ただし、用途によっては透明性が要求されない場合もあるため、2nm〜10μmの範囲内で適宜設定すればよい。尚、粒子径が2nmよりも小さい微粒子は6ホウ化物が硬質であることから得ることが難しく、また粒子径が10μmを超えると滑らかな膜の形成が困難となるため好ましくない。
【0034】
本発明方法において、6ホウ化物微粒子の表面に表面修飾剤による一次被覆膜とシリカを主体とする二次被覆膜を順次形成するには、湿式法を用いることが好ましい。この方法によれば、6ホウ化物微粒子を液体中に分散させ、その中に表面修飾剤を添加して6ホウ化物微粒子表面を単分子層で被覆し、次にケイ酸化合物を添加して、その加水分解重合により非結晶性ないし無定形のシリカを主体とする被覆膜を形成することができる。
【0035】
上記一次被覆膜を形成するための表面修飾剤は、6ホウ化物微粒子表面を化学的もしくは物理的に被覆するものであればよい。中でも1分子中に無機物及び有機物に化学結合する官能基を併せ持つ有機ケイ素化合物、例えばシランカップリング剤などが好ましい。また、好ましいシランカップリング剤としては、アミノ系、ウレイド系、エポキシ系、イソシアネート系、ビニル系、メタクリル系、メルカプト系等があげられる。
【0036】
シランカップリング剤の6ホウ化物微粒子に対する比率は、シランカップリング剤に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。このシランカップリング剤の比率が0.01重量部よりも少ないとカップリング剤による一次被覆膜形成の効果が得られず、10重量部を超えると凝集が起こりやすくなるからである。
【0037】
また、上記二次被覆膜を形成するためのケイ酸化合物としては、3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン、又はそれらの部分縮合物等を用いることができる。ここで、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランは、前記特開2004−043764号公報に記載のテトラエチルシリケート等のテトラアルキルシリケートと同一物質である。
【0038】
シリカを主体とする二次被覆膜は、上記ケイ酸化合物の加水分解重合により形成される。例えば、テトラエトキシシラン(Si(OC))と水(HO)の加水分解重合では、徐々にエトキシ基がエタノールとして除かれ、更にSi−O−H同士が結合してSi−O−Si構造が形成される。この加水分解重合により、非結晶性ないし無定形のシリカを主体とする二次被覆膜が形成される。また、この加水分解重合反応を制御するために、触媒としてHClやHNOなどの酸やNHOHなどのアルカリを添加することもできる。
【0039】
また、ケイ酸化合物の6ホウ化物微粒子に対する比率は、ケイ酸化合物に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜100重量部の範囲が好ましい。このケイ酸化合物の比率が0.01重量部未満では二次被覆膜の形成が難しく、逆に100重量部を超えると粒子間の凝集が起こるからである。
【0040】
上述した表面修飾剤は、液体中で効率良く6ホウ化物微粒子表面を覆って一次被覆膜を形成し、液体中の6ホウ化物微粒子の凝集を防ぐ。同時に、その一次被覆膜は、二次被覆膜形成時におけるケイ酸化合物の加水分解重合の際に、シリカ前駆体が優先的に6ホウ化物微粒子表面に形成されることを促し、シリカ前駆体が表面以外で使われること、例えば液中でシリカ単一粒子を形成したり、6ホウ化物微粒子間の結着に使われたりすることを抑制する。
【0041】
即ち、表面修飾剤がシリカ前駆体のシリカ形成核となって6ホウ化物微粒子表面にシリカが形成され、更にそこが次の核となって6ホウ化物微粒子表面にのみ次々にシリカ前駆体からの核形成が起こり、シリカの二次被覆膜が形成されるのである。その結果、シリカ前駆体からの単一シリカ粒子の形成や、粒子間の結着につながる粒子間での橋渡し的シリカの形成を抑制することができる。更に、6ホウ化物微粒子表面にシリカの被覆膜が形成されると、裸の6ホウ化物微粒子に比べて粒子間の電気的反発力が増し、凝集が起こり難くなる。
【0042】
このようにして得られた外形が略球状のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子は、そのまま又は加熱乾燥して、日射遮蔽製品などの原料として使用する。特に加熱処理により、シリカ膜が緻密になり、耐湿性が一層向上する利点がある。加熱処理温度は、6ホウ化物の耐熱温度や加熱雰囲気によって決定されるが、酸素が存在する雰囲気、特に大気中では6ホウ化物は600℃前後から酸化されるため、酸素が存在する雰囲気中では600℃以下とすることが好ましい。
【0043】
次に、本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を用いた日射遮蔽用の光学部材について説明する。まず、日射遮蔽製品などの光学部材を製造する手段の一つとして、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を液体中に分散させた光学部材用塗布液がある。シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を分散させる液体としては、アルコールなどの有機溶媒及び/又は水、あるいは樹脂及び金属アルコキシドの少なくとも1種を溶解又は分散させた有機溶媒及び/又は水であることが好ましい。樹脂成分としては、用途に合わせて選択すればよく、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑樹脂等を用いることができる。
【0044】
この光学部材用塗布液を基材表面に塗布し、硬化させることによって、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が固体媒質に分散した光学部材用分散体の被膜を形成することができる。例えば、光学部材用塗布液が樹脂や金属アルコキシドを含む場合は、その塗布液を基材表面に塗布し、有機溶剤や水等の溶媒を蒸発させると共に、樹脂や金属アルコキシドを硬化させることによって、基材表面にシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が固体媒質に分散した被膜を有する光学部材を簡単に作製することができる。
【0045】
また、光学部材用塗布液が樹脂及び金属アルコキシドを含まない場合には、塗布後に有機溶剤や水等の溶媒を蒸発させることにより、基材表面にシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が堆積した被膜が形成される。この場合、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を基材表面に積層させた後に、樹脂等の成分を含む液体媒質を塗布しても、上記と同様の光学部材を得ることができる。尚、基材表面に堆積したシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子層の上に、別の基材を重ね合わせてもよい。
【0046】
ここで、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が固体媒体中に分散した被膜は、後から加熱処理することにより耐湿性が向上する。特に、予め加熱処理を施していないシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が適用されている場合には、この加熱処理により被膜が緻密となり、耐湿性がより一層向上する。加熱処理温度は、上述したように6ホウ化物の耐熱温度や加熱雰囲気によって決定されるが、酸素が存在する雰囲気、特に大気中では6ホウ化物微粒子の酸化を防ぐために600℃以下とすることが好ましい。
【0047】
他の形態の光学部材としては、本発明のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させた光学部材用分散体を、フィルム又はボードに成形したものがある。このシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させたフィルム又はボードは、その厚さが0.1μm〜50mmの範囲であることが好ましい。フィルム又はボードの厚さが0.1μm未満では強度が弱くなるであり、また50mmを超えると加工が困難となるからである。
【0048】
上記フィルムやボードの母体となる固体媒質としては、樹脂又はガラスが好ましい。使用する樹脂は、特に限定されるものではなく、用途に合わせて選択可能であるが、耐湿性を考慮するとフッ素樹脂が有効である。また、フッ素樹脂に較べて低コストで、透明性が高く、汎用性の広い樹脂としては、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0049】
上記したシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が固体媒質に分散したフィルム又はボードからなる光学部材を製造する方法としては、例えば、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を直接樹脂に練り込み、フィルム状やボード状に成形する方法が一般的である。また、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が液体媒質に分散した分散体と樹脂を混合することも、あるいは、シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子が固体媒質に分散された粉末状の分散体を液体媒質に添加し、更に樹脂と混合することも可能である。
【0050】
一般に、樹脂に練り込む際には、樹脂の融点付近の温度(例えば200〜300℃前後)で加熱混合する。また、樹脂に混合した後ペレット化し、更にフィルムやボードを形成することも可能である。例えば、押し出し成形法、インフレーション成形法、溶液流延法、キャスティング法等により成形することが可能である。樹脂に対するフィラー量、即ちシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の配合量は、フィルム又はボードの厚さ、必要とされる光学特性や機械特性に応じて変えることができるが、一般的に樹脂に対して50重量%以下が好ましい。
【0051】
更に、上記シリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を液体媒質に分散させた光学部材用分散体を、フィルム又はボードの間に封入して光学部材とすることもできる。この場合のフィルム又はボードも、樹脂又はガラスであってよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、平均分散粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(大塚電子(株)製、ELS−800)により測定した平均値である。
【0053】
また、可視光透過率とは、波長領域380〜780nmの光の透過量を人の目の視感度で規格化した透過光量の積算値で、人の目の感じる明るさを意味する値である。可視光透過率は、JISA
5759に準ずる方法で測定した(ただし、ガラスに貼付せずフィルムのみで測定を行った)。また、膜のヘイズ値は、JIS K 7105に基づいて測定した。
【0054】
更に、耐湿性の評価方法は、60℃で湿度90%の環境に3000時間保管したとき、可視光透過率60%〜70%の試料において、透過率の上昇が1%以下のものを良好とし、1%を越えるものは不良とした。
【0055】
[実施例1]
平均粒子径80nmのLaB微粒子16gを、シランカップリング剤であるγ−アミノプロピルトリエトキシシラン1gと水783gに撹拌混合し、LaB微粒子表面にγ−アミノプロピルトリエトキシシランを吸着させて表面修飾を行った。次に、遠心分離機で水を除去した後、表面修飾されたLaB微粒子とエタノール560gと水140gの混合溶媒中にテトラエトキシシラン90gを添加し、加水分解重合によりLaB微粒子表面にシリカの被覆膜を形成した。
【0056】
その後、遠心分離機でアルコールと水を除去した後、乾燥し、更に450℃で30分加熱処理して、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0057】
この略球状のシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子が5重量%、有機高分子分散剤(アクリル系ポリマーからなり、無機成分を含まない)が2重量%、紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、UV3701)が26重量%となるようにトルエン中で混合し、塗布液を調整した。この塗布液を厚み50μmのPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプから紫外線を照射して被膜を硬化させた。
【0058】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は65.6%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ65.7%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0059】
[実施例2]
シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0060】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0061】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は66.1%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ66.1%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0062】
[実施例3]
シランカップリング剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0063】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0064】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は65.3%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ65.3%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0065】
[実施例4]
シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0066】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0067】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は66.3%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ66.3%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0068】
[実施例5]
ケイ酸化合物としてテトラエトキシシランの代わりに3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)を用い、且つエタノールと水の混合溶媒に代えて水中で処理した以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。
【0069】
得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ5nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0070】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0071】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は67.5%であり、ヘイズ値は1.3%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ67.7%であり、可視光透過率の上昇は0.2%で耐湿性は極めて良好であった。
【0072】
[実施例6]
ケイ酸化合物として3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)とテトラエトキシシランとを逐次添加した以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0073】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。この略球状のシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0074】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は68.5%であり、ヘイズ値は1.4%であった。この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ68.5%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0075】
[実施例7]
シランカップリング剤添加後に3号ケイ酸ナトリウム(SiO含有量:28.5%)を添加する以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0076】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0077】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は68.6%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ68.6%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0078】
[実施例8]
ケイ酸化合物としてテトラメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様にして、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子をTEM観察した結果、単分散化したLaB微粒子の表面に厚さ20nm程度のシリカ被覆膜が形成され、外形が略球状になっている状態が観察された。
【0079】
このシリカ膜被覆LaB微粒子は単分散化しているため、特に粉砕は行わなかった。このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を用い、実施例1と同様にして、塗布液を調整した。更に、この塗布液を用いて、実施例1と同様に、PETフィルム上に被膜を形成した。
【0080】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は65.5%であり、ヘイズ値は1.4%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ65.5%であり、可視光透過率の上昇は0%で耐湿性は極めて良好であった。
【0081】
[比較例1]
平均粒子径80nmのLaB微粒子16gが5重量%、有機高分子分散剤(アクリル系ポリマーからなり、無機成分を含まない)が2重量%、紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、UV3701)が26重量%となるようにトルエン中で混合して、塗布液を調整した。この塗布液を厚み50μmのPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプから紫外線を照射して被膜を硬化させた。
【0082】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は66.6%であり、ヘイズ値は1%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に66時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ72.6%であり、可視光透過率の上昇は6%であった。更に、3000時間保管したした後、その可視光透過率を測定したところ82.7%であり、可視光透過率の上昇は16.1%であった。
【0083】
[比較例2]
平均粒子径80nmのLaB微粒子16gをエタノール570gと水140gの混合溶媒中に混合し、テトラエトキシシラン90gを添加して加水分解重合により、LaB微粒子の表面にシリカ被覆膜を形成した。この液を乾燥してアルコール溶媒を除去した後、更に450℃で30分加熱処理を行って、シリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子を得た。
【0084】
得られたシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子は凝集体になっていたため、ペイントシェーカー(浅田鉄工(株)製)による粉砕処理を行った。その後TEM観察したところ、凝集体の解砕は進んでいるが、LaB微粒子表面のシリカ膜は不均一であった。
【0085】
このシリカ膜被覆6ホウ化ランタン微粒子が5重量%、有機高分子分散剤(アクリル系ポリマーからなり、無機成分を含まない)が2重量%、紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)製、UV3701)が26重量%となるようにトルエン中で混合し、塗布液と調整した。
【0086】
この塗布液を厚さ50μmのPETフィルム上にバーコーターを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプから紫外線を照射して被膜を硬化させた。
【0087】
得られた被膜とPETフィルムの合計の可視光透過率は63.6%であり、ヘイズ値は20.3%であった。また、この被膜を60℃で湿度90%の環境に3000時間保管した後、その可視光透過率を測定したところ66.8%であり、可視光透過率の上昇は3.2%であった。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による外形が略球状のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の透過電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6ホウ化物微粒子の表面に、表面修飾剤による一次被覆膜と、一次被覆膜上のシリカを主体とする二次被覆膜とを有し、外形が略球状であることを特徴とするシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子。
【請求項2】
前記6ホウ化物微粒子が、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素の6ホウ化物であることを特徴とする、請求項1に記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子。
【請求項3】
前記6ホウ化物微粒子の粒子径が2nm〜10μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子。
【請求項4】
前記一次被覆膜と二次被覆膜の合計厚さが1〜100nmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子。
【請求項5】
前記表面修飾剤がシランカップリング剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子。
【請求項6】
6ホウ化物微粒子が分散した液体に表面修飾剤を添加して粒子表面に表面修飾剤による一次被覆膜を形成し、次にケイ酸化合物を添加して加水分解重合させることにより一次被覆膜上にシリカを主体とする二次被覆膜を形成することを特徴とするシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の製造方法。
【請求項7】
前記表面修飾剤がシランカップリング剤であり、その6ホウ化物微粒子に対する比率が、シランカップリング剤に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜10重量部であることを特徴とする、請求項6に記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記ケイ酸化合物の6ホウ化物微粒子に対する比率が、ケイ酸化合物に含まれるケイ素換算で6ホウ化物微粒子1重量部に対して0.01〜100重量部であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を、液体中に分散させたことを特徴とする光学部材用塗布液。
【請求項10】
前記液体が、有機溶媒及び/又は水であるか、樹脂及び金属アルコキシドの少なくとも1種を溶解又は分散させた有機溶媒及び/又は水であることを特徴とする、請求項9に記載の光学部材用塗布液。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の光学部材用塗布液を基材表面に塗布し、硬化させて形成したことを特徴とする光学部材。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させた光学部材用分散体からなる被膜が、基材表面に形成されていることを特徴とする光学部材。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を固体媒質に分散させた光学部材用分散体からなり、フィルム又はボードに成形されていることを特徴とする光学部材。
【請求項14】
前記固体媒質が樹脂又はガラスのいずれかであることを特徴とする、請求項13に記載の光学部材。
【請求項15】
前記光学用分散体からなるフィルム又はボードの厚さが0.1μm〜50mmであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の光学部材。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれかに記載のシリカ膜被覆6ホウ化物微粒子を液体媒質に分散させた光学部材用分散体が、フィルム又はボードの間に封入されていることを特徴とする光学部材。



【図1】
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【公開番号】特開2006−193670(P2006−193670A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8484(P2005−8484)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】