説明

シリケート蛍光りん光物質を有する発光装置

【課題】白色発光ダイオードの製造に有用な新規な発光物質を提供する。
【解決手段】本発明に係るりん光物質は、式:SrBaCaSiO:Eu(ここで、 x,y,zは、x,yまたはzの合計が1以上であるとの条件付で、限界0.001および2を除いて、その間の全ての千分の一%を含み、互いに独立して約0乃至約2のいずれかの値に変わり、Euは、りん光物質の全体重量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%のいずれかの量で存在する)で表され、実質的に存在する全てのユウロピウムが2価状態で存在する。本発明に係るりん光物質は、Ce,Mn,Ti,Pb,Snからなる群より選ばれる元素を選択的にさらに含んでなり、りん光物質の全体重量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%の量で存在する。本発明に係るシリケートりん光物質材料は、類似しない青色および赤色のりん光物質化合物を添加する必要がなく、亜鉛および/またはマンガンを含まない。また、本発明は、緑色および赤色放出を全て包含する広い黄色を帯びる色を放出する材料を提供する。りん光物質を含む発光ダイオードの製造のために、りん光物質の付着に用いられる標準技術は、本発明のりん光物質を用いる場合、白色出力を有するLEDsを生産するために使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔連邦−後援リサーチに関する陳述〕
本発明は、少なくとも部分的に、国立科学財団からの政府補助金でなされた(交付番号6108576)。米国政府は、本発明において、特定の権利を有することができる。
〔関連出願に対する交差参照〕
本出願は、その全体が本明細書で参照・併合されている、2003年5月17日付で出願された米国仮出願第60/471,619号の利益を主張する。
〔技術分野〕
本発明は、固体状態発光装置に関し、より詳細には、これは、従来技術の類似した装置よりも増進された性能と効率を有する、改善された固体状態材料を含んでなる、発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
去る20年間、普通の照明(すなわち、白熱灯、ハロゲン、および蛍光ランプ)では、大きく改善されたことが殆どない。しかしながら、発光ダイオード(以下、「LEDs」とする)では、これらが、交通信号灯および自動車の後尾灯のような伝統的な単色照明例である白熱灯およびハロゲンランプを代替するほど、作動効率が改善された。
【0003】
これは、LEDsが、普通の光源よりも長寿命、耐久性、低電力消耗、小型であるという多くの長所を有しているからである。LEDsは、単色光源であり、現在、UV−青、緑、黄、赤の様々な色として利用可能である。また、LEDsの狭帯域放出特性のため、白色LEDは、(1)個別の赤・緑・青(RGB)のLEDsを、相互隣接して配列した後、これらによって、放出された光を拡散および混合し、あるいは(2)短波UVまたは青色LEDを、LED光の一部または全部をより長い波長に転換させる広帯域蛍光化合物と結合しなければ生産されない。
【0004】
前記第1の接近法を用いて、白色LEDを作成する場合、R、G、B発光装置は、異なる作動電圧およびごれによる複合駆動回路を必要とする、異なる半導体材料で製造されるということにより、いくつかの問題点が発生する。他の短所としては、R、G、BのLED放出の単色性質による、得られる白色光の低い演色特性、および異なる半導体材料の異なる放出温度依存性が挙げられる。
【0005】
一般に、LEDsから白色光を生産する第2の接近法がより好ましいが、これは、1つ以上の蛍光材料でコートされた単一型のLED(UVまたは青色)のみを必要とし、これによって、白色光生産LEDの全体構成体が、構成の面でさらにコンパクト、かつ単純であり、以前の代替物よりも安価となる。また、大部分の蛍光材料または蛍光物質により提供される広帯域光放出で、高い演色の白色光が可能となる。
【0006】
最近、UV/青色のLEDs効率が発達することにより、蛍光物質でコートされた青色LEDsは、現在、照明およびディスプレイ逆光照明に用いられる通常の白熱電球を代替するために深刻に論議されている。現在、市販されている装置は、大体、青色LED放出の一部を黄色に切り換えて作動する。
【0007】
このような状況で、LEDからの青色光の一部は、蛍光物質によって伝達され、黄色い蛍光物質の放出と混合されて、感知される白色光となる。参照・併合されている、以下の米国特許によって明らかとなるように、多くの研究者が、蛍光物質の分野において研究してきた。
【0008】
特許文献1は、下記式
BaF・aBaX・bMgF.cBeF・dMeII:eLn
(ここで、Xは、塩素,ブロム,ヨードからなる群より選ばれる少なくとも1つのハロゲンであり、MeIIは、カルシウムおよびストロンチウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの2価金属であり、Lnは、2価のユウロピウム(Eu2+),セリウム(Ce3+)およびテルビウム(Tb3+)からなる群より選ばれる少なくとも1つの希土類元素であり、aは、0.90乃至1.05の範囲であり、bは、0乃至1.2の範囲であり、cは、0乃至1.2の範囲であり、dは、0乃至1.2範囲のc+dの合計として定義され、BeFは、X線露出後、450乃至800nm範囲の波長光で刺激された場合、りん光物質が、前記BeF不在のりん光物質よりも高いりん光を表すのに十分な量で存在する)で表される希土類元素で活性化した錯体ハロゲン化物りん光物質を開示している。
【0009】
特許文献2は、下記式
LnPO・aLnX:xCe3+
(ここで、Lnは、Y,La,Gd,Luからなる群より選ばれる少なくとも一つの希土類元素であり、Xは、F,Cl,Br,Iからなる群より選ばれる少なくとも一つのハロゲンであり、aおよびxは、それぞれ0.1<a<10.0および0<x<0.2の条件を満たす数である)を有し、aが0.1以下であるりん光物質よりも、80KVpでX線露出後、632.8nm波長のHe−Neレーザで励起時、さらに高い刺激放出を示す、セリウム活性化した希土類ハロフォスフェイトりん光物質を開示している。
【0010】
特許文献3は、下記式(I)
SrLn1y11Ln2y2Ln3y319−k (I)
(ここで、Ln1は、ランタン,ガドリニウム,イットリウムから選ばれる少なくとも一つの3価元素を示し、Ln2は、ネオジミウム,プラセオジミウム,エルビウム,ホルミウム,トリウムから選ばれる少なくとも一つの3価元素を示し、Ln3は、酸素ホールのために電気的中性を有する2価ユウロピウム、または3価セリウムから選ばれる元素を示し、Mは、マグネシウム、マンガン、亜鉛から選ばれる少なくとも一つの2価元素を示し、Aは、アルミニウム、ガリウムから選ばれる少なくとも一つの3価金属を示し、Bは、クロム、チタンから選ばれる少なくとも一つの3価遷移金属を示し、x,y1,y2,y3,z,a,b,kは、0<x+y1+y2+y3<1および11<z+a+b<12を条件とし、0<x<1,0<y1<1,0<y2<1,0<y3<1,0<z<1,10.5<a<12,0<b<0.5,0<k<1となるような数を示す)のマグネトリード型結晶質構造を有する、混合された単一相ストロンチウム、ランタン族元素酸化物を提供する。
【0011】
特許文献4は、下記化学式
II・aMIIX’・bSiO:xEu2+
(ここで、MIIは、Ba,Sr,Caからなる群より選ばれる少なくとも一つのアルカリ土類金属であり、XおよびX’のそれぞれは、Cl,Br,Iからなる群より選ばれる少なくとも一つのハロゲンであり、Xは、X’と同一ではなく、aおよびxは、それぞれ0.1<a<10.0および0<x<0.2の条件を満たす数であり、bは、0<b<3×10−2の条件を満たす数である)を有する2価ユウロピウムで活性化したアルカリ土類金属ハロゲン化物りん光物質を開示している。
【0012】
特許文献5には、ホスト材料としてアルカリ系ハロゲン化物、ドーパントとして希土類を含んでなる、ELディスプレイ(Electro Luminescent Display)用の明るい短波長の青紫色りん光物質が開示されている。ホストアルカリ塩化物は、ユウロピウムまたはセリウム希土類のドーパントと共に、それぞれ404および367nmピーク波長で電子発光する、II族アルカリ成分、特に、SrClまたはCaClから選ばれ得る。得られた放出は、人の目の可視範囲の境界にあるCIE色度座標を有することにより、フルカラーフラットパネルELディスプレイのためのより広範囲の色が可能となる。
【0013】
特許文献6には、無機光放出層と、1対の電極と、1対の絶縁層とを備え、少なくとも一つの電極が光学的に透明であり、光放出層が絶縁層対間に設けられ、各絶縁層が光放出層の反対側上に設けられ、絶縁層対が光放出層と電極対との間に設けられ、光放出層が、希土類元素金属およびその化合物からなる群から選ばれる少なくとも一つでドープされたフッ化ランタニウムのマトリクスを含む無機材料で本質的に構成される、無機薄膜電子発光装置が開示されている。
【0014】
特許文献7には、支持体を含んでなり、支持体上にコートされており、少なくとも一つの層が、電子発光部分およびオーバーコート層を形成し、電子発光部分およびオーバーコート層が、X線に透明な結合剤を含み、放出光および前記発光部分は、りん光物質粒子:結合剤の重量比が7:1乃至25:1であり、りん光物質粒子を含む、X線写真のりん光物質スクリーンを開示している。りん光物質は、酸素、および式
(Ba1-q)(Hf1-z-eZrMg):yT
(ここで、Mは、Ca,Sr,およびその結合物で構成される群から選ばれ、Tは、Cuであり、qは、0乃至0.15であり、zは、0乃至1であり、eは、0乃至0.10であり、z+eは、0乃至1であり、yは、1×10−6乃至0.02である)を特徴とする種の結合物を含んでなる。
【0015】
特許文献8は、発光成分、および発光成分による放出光の一部を吸収し、吸収光とは異なる波長の光を放出可能なりん光物質を含んでなり、前記発光成分は、化学式:InGaAlN(ただし、0<i,0<j,0<k,i+j+k=1である)で表される窒化物化合物半導体を含んでなり、前記りん光物質は、(1)Y,Lu,Se,La,Gd,Smからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素、(2)Al,Ga,Inからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を含んでなり、セリウムで活性化した、ガーネット色の蛍光材料を含むことを特徴とする発光装置を提供する。通常の白色LEDsに用いられる無機りん光物質は、この特許に記載されたセリウムでドープされたイットリウムアルミニウムガーネット色のYAl12:Ce(YAG:Ce)およびその誘導体りん光物質であり、これは、現在、通常の白色LEDsに用いられる標準無機りん光物質であり、この技術分野において広く知られているものである。
【0016】
特許文献9は、(a)透明なエポキシ注型用樹脂,(b)透明なエポキシ樹脂中に分散された無機発光物質顔料粉末を含んでなり、顔料粉末が、一般式
12:M
(ここで、Aは、Y,Ca,Srからなる群より選ばれる元素であり、Bは、Al,Ga,Siからなる群より選ばれる元素であり、Xは、O,Sからなる群より選ばれる元素であり、Mは、Ce,Tbからなる群より選ばれる元素である)を有するリン基からのりん光物質顔料を含む、電子発光成分によって放出された紫外、青色または緑色光の波長を切り換えるための、波長切換キャスティング組成物を開示している。りん光物質顔料は、粒径<20μmであり、平均粒径ds<5μmである。
【0017】
特許文献10は、照明された対象の表面上に少なくとも赤・緑・青・黄色・白色のカテゴリー色知覚が可能となるような対象の照明方法を開示しており、この方法は、第1の波長帯が530乃至580nmであり、第2の波長帯が600乃至650nmである両主要波長帯の光の結合で必須に構成される光を対象に照明する段階を含んでなる。
【0018】
特許文献11は、Ba(Mg、Zn)Si:Eu2+を含んでなる物質の組成物と、(Ba1−X−Y−Z、Ca、Sr、Eu(Mg1−W、Zn)Si(ただし、X+Y+Z=1;Z>0;および0.05<W<0.50である)を含んでなる物質の組成物とを開示している。
【0019】
【特許文献1】米国特許第4,512,911号公報
【特許文献2】米国特許第4,661,419号公報
【特許文献3】米国特許第5,140,604号公報
【特許文献4】米国特許第5,198,679号公報
【特許文献5】米国特許第5,602,445号公報
【特許文献6】米国特許第5,648,181号公報
【特許文献7】米国特許第5,698,857号公報
【特許文献8】米国特許第5,998,925号公報
【特許文献9】米国特許第6,066,861号公報
【特許文献10】米国特許第6,153,971号公報
【特許文献11】米国特許第6,255,670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、LEDによって放出された青色、紫色、または紫外光を高効率で吸収し、LEDからの吸収されたものよりも長波長の光を放出可能なシリケート系蛍光材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によって提供されたりん光物質を用いて作られた発光装置のりん光物質成分は、特定な、所望の白色性能を達成するために、単一のりん光物質成分または前記式に由来する異なるりん光物質の両立性ミックスを用いて作られる。
したがって、本発明は、下記化学式
SrBaCaSiO:Eu2+
(ここで、x、y、zは、互いに独立して0乃至2のいずれかの値である)で表される材料を含んでなる、発光ダイオード中のりん光物質として有用な物質の組成物を提供する。本発明の一態様によると、活性化因子として作用する2価Euは、前記組成物の全体モル量に対して0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在する。したがって、活性化因子Euは、前記範囲内の全ての千分の一%を含み、組成物の全体モル量に対して0.0001モル%乃至5.00モル%の量で存在し得る。本発明の他の態様によると、前記式で、0.5≦x≦1.5;0≦y≦0.5:および0.5≦z≦1.5である。本発明のまた他の態様によると、前記式で、x=1、y=0、およびz=1である。本発明のまた他の態様によると、前記式で、1.5≦x≦2.5;0≦y≦0.5:および0≦z≦0.5である。本発明のまた他の態様によると、前記式で、x=2、y=0、およびz=0である。本発明のまた他の態様によると、前記式で、1.0≦x≦2.0;0≦y≦1.0:および0≦z≦0.5である。本発明のさらに他の態様によると、前記式で、x=1.5、y=0.5、およびz=0である。
【0022】
本発明はまた、組成物が下記化学式
SrBaCaSiO:Eu2+、B
(ここで、x、y、zは、互いに独立して0および2を含み、0乃至2のいずれかの値であり、活性化補助因子の役割をするBは、Ce、Mn、Ti、Pb、Snからなる群より選ばれ、Bは、その間の全ての千分の一%を含み、前記組成物の全体モル量に対して0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在する)で表される材料を含んでなる、発光ダイオード中のりん光物質材料として有用な物質の組成物を提供する。本発明の他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、0.5≦x≦1.5;0≦y≦0.5:および0.5≦z≦1.5である。本発明のまた他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、x=1、y=0、およびz=1である。本発明のまた他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、1.5≦x≦2.5;0≦y≦0.5:および0≦z≦0.5である。本発明のまた他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、x=2、y=0、およびz=0である。本発明のまた他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、1.0≦x≦2.0;0≦y≦1.0:および0≦z≦0.5である。本発明のさらに他の態様によると、活性化補助因子が存在する前記式で、x=1.5、y=0.5、およびz=0である。
【0023】
本発明はまた、発光ダイオードおよびレーザで構成される群から選ばれ、360乃至480nmの波長を有する光を放出する光源と、下記化学式
SrBaCaSiO:Eu2+
(ここで、x、y、zは、互いに独立して0乃至2を含み、0乃至2のいずれかの値である)で表され、これが、前記光源からの光を収容する位置に配置されるりん光物質を含んでなる発光装置を提供する。
【0024】
本発明はまた、りん光物質が上述したようなものであり、前記りん光物質が、Ce、Mn、Ti、Pb、Snからなる群より選ばれる少なくとも一つの追加元素をさらに含んでなることを特徴とする発光装置を提供する。本発明の一態様によると、追加元素は、このような発光装置のりん光物質中に、りん光物質の全体モル量に対して、0.0001モル%乃至5.00モル%の量で存在する。本発明はまた、本発明によって提供される異なる両りん光物質の混合物、すなわち、従来技術のあるりん光物質と混合された本発明によって提供されるあるりん光物質である、りん光物質を含む発光装置を提供する。一実施の形態において、りん光物質混合物は、発光装置が白色光を放出するようにする。また他の実施の形態において、本発明による単一のりん光物質は、青色の発光装置が白色光を放出するようにする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によって提供されたシリケートりん光物質材料は(特許文献11に開示された、緑色放出UVポンプシリケート系材料と対照的に)、類似していない青色および赤色のりん光物質化合物を添加する必要がなく、亜鉛および/またはマグネシウムを含まない。また、本発明の材料は、緑色および赤色を全て含む広い黄色を帯びる色を放出するように製造される。本発明の材料を青色または紫色のLEDと結合させることにより、特許文献11に開示されたような複合赤・緑・青(RGB)のりん光物質システムおよびUV LEDが必要なく、単一成分のりん光物質を用いて白色光を生産することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、白色光を生産するために、青色LEDによってポンプされた通常の従来技術のYAG:Ceりん光物質の放出された光のスペクトルを示す。YAG:Ceに加えて、いくつかのタイプの有機系蛍光材料がまた用いられてきたが、有機分子は、LED表面の近辺に存在する高温および強いUVまたは青色光に露出する場合、劣化および老化が加速化しやすい。
【0027】
しかしながら、YAG:Ceりん光物質およびその誘導体を除いて、長期間安定性を維持するとともに、青色または紫色の光を効率よく白色に切り換えることができる無機材料は殆どない。また、青色LEDsに用いられる標準 YAG:Ceりん光物質は、スペクトルの青緑色および赤色部分が全て不十分であり、低い白色りん光効率および演色特性が得られる。
【0028】
単一成分の黄色りん光物質と共に、青色LEDを、UV LEDおよびRGBりん光物質ミックスの代わりに用いる場合の長所の一つは、経時的により安定した色が得られるということであり、後者の接近法は、LED表面の近辺の高温および光強度のため、選別的なりん光物質の老化が生じるからである。
【0029】
図2(a),図2(b)および図2(c)は、LEDにりん光物質粒子をカップリングするために用いられる、可能な配置の一部を示し、ここで、りん光物質は、エポキシ全般にわたって分散されるか(図2(a))、LED発光領域上( 図2(b))またはエポキシの外面上に直接分配され得る( 図2(c))。
【0030】
エポキシは、LEDをカプセル化することができる。LEDダイ上へのりん光物質の付着に用いられる標準商業的基準は、当業者に知られたように、ポリプロピレン、ポリカーボネートまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはより一般的に、エポキシ樹脂またはシリコンのような、光学的に清い液体ポリマーシステム中にりん光物質粉末をブレンドすることを含む。
【0031】
次いで、得られた材料をLED上にペイントまたはこれと異なり分配し、乾燥、固化または硬化する。大体、次いで全体のアセンブリを保護するか、場合によって、LEDダイから放出される光をフォーカスする目的で、光学レンズの役割をするように、エポキシの最終層を適用する。したがって、本発明によって提供されるりん光物質は、発光ダイオードのような、発光装置の製造のために、この技術分野において知られた通常技術を用いて、基板上に処理しまたは付着するのに極めて好適である。
【0032】
本発明の一実施の形態は、UV/青色発光ダイオード、および発光ダイオードによって放出された光の全部または一部を吸収し、吸収光から、より長波長の光を放出する一つ以上のりん光物質を含んでなる発光装置を提供することである。
【0033】
これと関連して有用な本発明によって提供されるりん光物質は、下記化学式
SrBaCaSiO:Eu
(ここで、x,y,zは、x,yまたはzの合計が1以上であるとの条件付で、限界0.001および2を除いて、その間の全ての千分の一%を含み、互いに独立して約0乃至約2のいずれかの値に変わり、Euは、りん光物質の全体重量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%のいずれかの量で存在する)で表される。
【0034】
本発明の好ましい態様によると、存在する全てのユウロピウムの50%以上が2価状態で存在する。本発明のまた他の好ましい態様によると、存在する全てのユウロピウムの70%以上が2価状態で存在する。本発明のまた他の好ましい態様によると、存在する全てのユウロピウムの90%以上が2価状態で存在する。本発明のまた他の好ましい態様によると、存在する全てのユウロピウムの95%以上が2価状態で存在する。本発明のさらに他の好ましい態様によると、存在する全てのユウロピウムの98%以上が2価状態で存在する。存在する全てのユウロピウムが2価状態であることが最も好ましい。
【0035】
本発明のまた他の好ましい態様において、下記化学式
SrBaCaSiO:Eu
(ここで、x,yまたはzの値は、前記と同様に、全て独立して変わり、ユウロピウムの酸化状態は上記のとおりである)で表されるようなりん光物質が提供され、りん光物質は、Ce,Mn,Ti,Pb,Snからなる群より選ばれる選択的元素をさらに含んでなり、選択的元素は、りん光物質の全体重量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%の量で存在する。
【0036】
本発明によって提供されるりん光物質材料は、出発材料としてアルカリ土類炭酸塩およびシリカを用いて合成されることが好ましい。原料を所望のモル比で混合した後、活性化元素、すなわち、「活性因子」を含む化合物(例えば、酸化物または炭酸塩)を原料混合物中にスラリ化する。
【0037】
活性化元素は、この技術分野に周知のように、ユウロピウム,セリウム,銅およびマンガンのような元素を含む。また、本発明の好ましい一態様によって、SrCaBaSiO(ここで、x,y,zは、限界0.001および2を除いて、その間の全ての千分の一%を含み、互いに独立して約0乃至約2のいずれかの値に変わる)である、ホスト材料間の反応を促進するために、少なくとも一つのハロゲン化物のフラックス材料(NHCl、SrClなど)を添加することが好ましく、このようなフラックスの使用は、当業者に公知されている。
【0038】
モルタルおよび乳棒、ボールミル、グラインダーのような通常の手段を用いて、機械的に徹底に混合した後、得られた材料を、好ましくは約1050℃乃至約1250℃の温度範囲にて、空気中で発火させ、存在する炭酸塩を酸化物に切り換える。
【0039】
続けて、上記発火工程によって得られた材料を冷却後、共同粉砕に次いで、約1050℃乃至約1250℃温度範囲で、一酸化炭素または水素のような還元空気中において、最終発火段階を行い、2価Euの活性化を達成する。
【0040】
これらのりん光物質に相の純度を得るために、供給源材料および製造方法を精密に調節することが必要である。最終生成物中に存在するCa,BaおよびSrの相対的量は、原料混合物中にこれらの元素を含む原料の相対的量を調整することにより、当業者によって容易に調節される。
【0041】
本発明の製造工程は、上述したものに制限されるものではなく、同一の結果および化合物を得るために、異なる出発材料および合成技術を用いることができる。例えば、本発明では、原料として過酸化バリウム、過酸化カルシウムなどのような過酸化物の使用を考慮する。下記の実施例1および2は、本発明のより好ましい原料混合物の例である。
【実施例】
【0042】
〔実施例1〕
SrCO 145g
BaCO 197g
SiO 63g
EU 3.5g
NHCl 5.4g
【0043】
〔実施例2〕
BaCO 390g
SiO 63g
Eu 3.5g
NHCl 5.4g
【0044】
本発明によるりん光物質は、合成、スラリ−混合および次いで脱イオン水中での約1乃至5μの平均粒径としてのボールミリングによって、前記実施例1または2のいずれかに具体化した成分の混合物を用いて製造される。
【0045】
材料を乾燥後、混合物を空気中で1時間の間1000℃で石英るつぼ中で発火させる。発火後、5gの塩化アンモニウムを添加し、ボールミルを用いて、約1乃至5μの平均粒径となるように、混合物を再粉砕する。混合物を再度発火させるが、本発明によるりん光物質を得るために、還元空気(例えば、一酸化炭素または水素)中でのこのような時間は、追加の3時間の間である。
【0046】
効率的な青白色(白色)を要求する適用例のための好適な実施の形態で、本発明は、SrBaCaSiO:Eu、B(ここで、x=1.5;y=0.5;z=0であり、選択的元素Bは存在せず、本質的に存在する全てのユウロピウムが還元空気下で、最終発火作用の結果として、2価状態であるSr1.5Ba0.5SiO:Eu が得られる)を含んでなる緑黄色りん光物質を提供する。このりん光物質の性能は、470nmでの青色LEDからの放出部分を、550nm近辺の黄緑色光に効率よく切り換えるために、本発明のある組成物がどのように使用されるかを説明する図3に示されている。
【0047】
図4は、本発明の他の組成物、405nmでのUV LEDからの放出を520nm近辺の緑色光に効率よく切り換える、SrBaSiO:Euによってディスプレイされるスペクトルを示す。
【0048】
より高い赤色含量を要求する適用例(温白色)に対する、他の好ましい実施の形態において、本発明は、SrBaCaSiO:Eu、B(ここで、x=1;y=0;z=1であり、選択的元素Bは存在せず、本質的に存在する全てのユウロピウムが還元空気下で、最終発火作用の結果として、2価状態であるSrCaSiO:Eu が得られる)に基づいた黄色りん光物質を提供する。このりん光物質の性能は、図5に示されている。
【0049】
より高い赤色含量を要求する適用例(温白色)に対する、また他の好ましい実施の形態において、本発明は、SrBaCaSiO:Eu、B(ここで、x=2;y=0;z=0であり、選択的元素Bは存在せず、本質的に存在する全てのユウロピウムが還元空気下で、最終発火作用の結果として、2価状態であるSrSiO:Eu が得られる)に基づいた黄色りん光物質を提供する。このりん光物質の性能は、図5に示されている。
【0050】
したがって、本発明の単一の好適な実施例はなく、かえって、好適な組成物は、本発明に含まれる組成物の使用者の必要と要求、および遠くない将来の特定な必要要件に応じて決定される。図5から分かるように、SrBaCaSiO:Eu(本質的に存在する全てのユウロピウムが、還元空気中で、最終発火作用の結果として2価状態である)中のストロンチウム含量が増加するにつれて(例えば、高いx値、および低いyとz値の場合)、りん光物質からの放出は、青緑色から黄色へシフトする。
【0051】
また、りん光物質の吸収ピークは、紫外線から青色領域へシフトする。したがって、本発明は、この範囲内で可能なりん光物質の数に有通性を有する。よって、図5は、化学式SrSiO:Eu2+、Bによる、本発明のいくつかの相違した可能な組成物の放出スペクトルを示し、可能な波長可変度を示す。
【0052】
したがって、本発明は、ここに開示された様々な式の境界と限界内での広範囲なりん光物質の製造を教示する。前記特許請求の範囲に開示された境界と限界内での相違した組成を有するりん光物質を提供するために、このようなりん光物質のメーカは、ここに記載されており、この技術分野において公知の一般の準備方法を考慮し、前駆物質スラリの製造時に用いられる原料の相対的量を変えて、様々な式の所望の含量と比率の元素を有する組成物を得るだけでよいものである。
【0053】
すなわち、「前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%」との表現が、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲においてよく出ている。このような表現を、「前記組成物(または可能な場合、りん光物質)の総重量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%の量で存在する」に置き換えることは、全て選択的に、および全てにおいて、本発明の追加の代替実施の形態を提供する。
【0054】
本発明の特定した好適な実施の形態ついて記載・開示してきたが、これらの明らかな等価変形と変更は、本詳細な説明および特許請求の範囲を理解した当業者にとって明らかなものである。
【0055】
本発明は、様々な請求項のうちいずれか一つと、他の少なくとも一つの請求項を任意に結合させて定義される対象を含み、単独または他の従属項と結合した、ある従属項の特徴を、単独または他の独立項の特徴または限定と結合させたある独立項内に併合することを含み、その原文に残っている従属項は、このように変形したある独立項のまま理解および適用される。
【0056】
また、数値に対する変形因子としての「約」を用いることは、実際の数値そのものを含むものと理解すべきである。例えば、「xが約1である」または類似した意味の語句がある場合、これは、xが1である状態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】青色LEDと結合された、従来技術のYAG:Ceりん光物質によって放出された光のスペクトルを示す。
【図2】(a)〜(c):LEDにりん光物質粒子をカップリングするために用いられる、一部公知の配置を示す。
【図3】青色LEDによってポンピングされた新規なシリケートりん光物質相中の一つのスペクトルを示す。
【図4】UV範囲内のLED作動によってポンピングされた本発明の組成物によってディスプレイされたスペクトルを示す。
【図5】本発明のいくつかの相違した組成物の放出スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式
SrBaCaSiO:Eu
(ここで、x,y,zは、x,y,またはzの合計が1以上であるとの条件付で、互いに独立して0乃至約2のいずれかの値であり、
Euは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001重量%乃至約5重量%のいずれかの量で存在し、存在する全てのユウロピウムのうち50%以上が2価状態で存在する)で表される材料を含んでなる、発光ダイオード中のりん光物質として有用な物質の組成物。
【請求項2】
0.5≦x≦1.5;0≦y≦0.5:および0.5≦z≦1.5であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
x=1,y=0,およびz=1であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
1.5≦x≦2.5;0≦y≦0.5:および0≦z≦0.5であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
x=2,y=0,およびz=0であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1.0≦x≦2.0;0≦y≦1.0:および0≦z≦0.5であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
x=1.5,y=0.5,およびz=0であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、下記化学式
SrBaCaSiO:Eu、B
(ここで、x,y,zは、x,y,またはz の合計が1以上であるとの条件付で、0および2を含み、互いに独立して0乃至2のいずれかの値であり、
Bは、Ce,Mn,Ti,Pb,Snからなる群より選ばれ、存在する全てのユウロピウムのうち50%以上が2価状態に存在する)で表される材料を含んでなる、発光ダイオード中のりん光物質材料として有用な物質の組成物。
【請求項9】
0.5≦x≦1.5;0≦y≦0.5:および0.5≦z≦1.5であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
x=1,y=0,およびz=1であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
1.5≦x≦2.5;0≦y≦0.5:および0≦z≦0.5であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
x=2,y=0,およびz=0であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
1.0≦x≦2.0;0≦y≦1.0:および0≦z≦0.5であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項14】
x=1.5,y=0.5,およびz=0であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項15】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項16】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項9に記載の組成物。
【請求項17】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項19】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項12に記載の組成物。
【請求項20】
Bは、前記組成物の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
a)発光ダイオード、ランプ、およびレーザからなる群より選ばれ、約360乃至約480nmの周波数を有する光を放出する光源、および
b)下記化学式
SrBaCaSiO:Eu
(ここで、x,y,zは、x,y,またはz の合計が1以上であるとの条件付で、0および2を含み、互いに独立して0乃至2のいずれかの値であり、存在する全てのユウロピウムのうち50%以上が2価状態に存在する)で表され、これが、前記光源からの光を収容する位置に配置される、りん光物質を含んでなる発光装置。
【請求項22】
前記りん光物質が、Ce,Mn,Ti,Pb,Snからなる群より選ばれる少なくとも一つの追加元素をさらに含んでなり、前記追加元素は、前記りん光物質の全体モル量に対して、約0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在することを特徴とする請求項21に記載の発光装置。
【請求項23】
前記式で表される少なくとも2つの、相違したりん光物質の混合物を含んでなる請求項21に記載の発光装置。
【請求項24】
前記りん光物質の混合物が、白色光を放出することを特徴とする請求項23に記載の発光装置。
【請求項25】
ここに記載された少なくとも一つのりん光物質、および従来技術に記載されたりん光物質を含有する混合物を含んでなる請求項21に記載の発光装置。
【請求項26】
下記化学式
SrBaCaSiO:Eu2+、B
(ここで、x,y,zは、x,y,またはz の合計が1以上であるとの条件付で、0および2を含み、互いに独立して0乃至2のいずれかの値である)で表されるりん光物質をさらに含んでなり、Ce、Mn、Ti、Pb、Snからなる群より選ばれる少なくとも一つの追加元素のBをさらに含んでなり、前記追加元素のBは、前記りん光物質の全体モル量に対して、0.0001モル%乃至約5モル%の量で存在し、存在する全てのユウロピウムのうち50%以上が2価状態に存在し、これによって、りん光物質混合物が提供され、前記りん光物質の混合物は、これが、前記光源からの光を収容する位置に配置されることを特徴とする、発光装置。
【請求項27】
前記りん光物質の混合物が、白色光を放出することを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
ここに記載された少なくとも一つのりん光物質、および従来技術に記載されたりん光物質を含有する混合物を含んでなる請求項21に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−500776(P2007−500776A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533115(P2006−533115)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015295
【国際公開番号】WO2004/111156
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505424239)フォスファーテック コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】PHOSPHORTECH CORPORATION
【住所又は居所原語表記】351 Thornton Road,Suite 130,Lithia Springs,GA 30122, U.S.A.
【Fターム(参考)】