シリコンエレクトロルミネセンス素子およびその製造方法、並びに短波長光を放射させる方法。
【課題】短波長で発光するシリコンエレクトロルミネセンス素子を実現する。
【解決手段】本発明のシリコンエレクトロルミネセンス素子100の製造方法は、基板102を用意する工程と、基板102の上に重ねて、一絶縁層104を形成する工程と、第一絶縁層104の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層106を形成する工程と、SRSO層106の上に重ねて、第二絶縁層108を形成する工程と、上部電極110を形成する工程とを含む。通常、SRSO層106のSi濃度は5〜40%である。一つの形態では、SRSO層106は、DCスパッタリング工程を用いて形成される。別の形態では、SRSO層106を形成する工程には、SRSO層106の堆積に続く瞬時熱アニール(RTA)工程が含まれる。
【解決手段】本発明のシリコンエレクトロルミネセンス素子100の製造方法は、基板102を用意する工程と、基板102の上に重ねて、一絶縁層104を形成する工程と、第一絶縁層104の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層106を形成する工程と、SRSO層106の上に重ねて、第二絶縁層108を形成する工程と、上部電極110を形成する工程とを含む。通常、SRSO層106のSi濃度は5〜40%である。一つの形態では、SRSO層106は、DCスパッタリング工程を用いて形成される。別の形態では、SRSO層106を形成する工程には、SRSO層106の堆積に続く瞬時熱アニール(RTA)工程が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路(IC)製造に関するものであり、具体的には、幅広い波長帯で発光するシリコンベースのエレクトロルミネセンス(EL)素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体が直接遷移型バンドギャップを形成するか間接遷移型バンドギャップを形成するかにかかわらず、半導体素子からの発光は可能である。pn接合に高電界で逆バイアスを掛けることによって、多数のホット・キャリアの集団が生じる。ホット・キャリアの集団は、放出された光子と再結合する。シリコン素子は発光効率が低いことが知られており、大部分の光子エネルギーは、2eV前後である。電気エネルギーから光子エネルギーへの転換は、エレクトロルミネセンス(EL)と呼ばれ、小さな電気的信号により室温で動作する高効率のEL素子が作製されている。しかしながら、上記EL素子は、例えばInGaN、AlGaAs、GaAsP、GaNおよびGaPなどのIII‐V族物質のような、通常はシリコンと混合することができない物質の上に作製される。このような物質(基材)の中の1つの上に形成されるEL素子は、特定の上記物質を使用することによって、可視領域内の狭い帯域幅で高効率で発光する。加えて、ZnSeのようなII‐VI族物質も使用することができ、ZnSやZnOのような他のII‐VI族物質は、交流バイアスでエレクトロルミネセンスを示すことが知られている。このような素子はシリコン上に堆積させることができ、特殊な(従来にない)CMOS処理が行われる場合における発光素子として使用することができる。他の種類の発光素子としては、有機発光ダイオード(OLED)、ナノ結晶性シリコン(nc‐Si)およびポリマーLEDが挙げられる。
【0003】
従来、シリコンは、エネルギーバンドギャップが間接遷移型のため、オプトエレクトロニクス分野での利用には不適当であると考えられてきた。実際に、バルクシリコンはきわめて効率の悪い発光体である。この問題を解決するために行われてきた様々な取り組みの中で、Siナノ構造中での量子閉じ込め、および希土類の結晶シリコンへのドーピングは、極めて多くの注目を浴びてきた。特に、SiO2に埋め込まれたSiナノクラスター(nc)は、近年、Siベースの可視光源を作製するための有望な新物質として科学界の注目を集めている。一方、Erをドープした結晶Siでは、放射性4f殻内Er遷移(radiative intra-4f shell Er transition)を利用する研究が広範囲にわたって行われている。そして、0.05%前後の効率を有する、室温で動作する素子が実現された。その効率は非常に低く、加工温度は、通常1100℃を超え、極めて高い。
【0004】
しかしながら、室温で利用できるポーラスシリコン(Si)から可視発光を行うとするこのような先駆者たちの努力によって、夥しい量の研究が、ナノサイズSiの使用によるSiベースの光源の開発に向けられることに拍車をかけることになった。
【0005】
ナノクラスターSi(nc‐Si)を作製するために広く使用されている方法の1つは、化学気相成長(CVD)、高周波(RF)スパッタリング、または、シリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)もしくはシリコン過剰酸化物(SRO)と呼ばれることが多いSi注入を使用して、該nc‐SiをSiOx(ここではx<2)から析出させることにより膜を形成する方法である。CVDまたはRFスパッタリング工程を高温アニールと共に使用することによって、上記SRSOにおける光ルミネセンス(PL)ピークは、590〜750nmの波長範囲となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、EL素子としての用途が限定されるという問題が生じる。具体的には、上記SRSOにおける光ルミネセンス(PL)ピークとしては、590nm以下のPL波長は報告されておらず、また、上記SRSOは量子効率が低く、安定性が悪い。このため、時間の経過と共にPL強度が低くなり、EL素子としての用途は限定される。
【0007】
Erドープナノ結晶性Si作製のためのEr注入も、Siベースの光源において利用されるが、最先端の注入方法を用いたとしてもドーパントを均一に分布させることはできない。このため、発光効率は低くなり、コストが増加する。加えて、そのようなドーパントの使用を支持するに足りる界面工学も存在しない。上記素子の効率は非常に低く、かつ加工温度は極めて高いため、該素子の用途は限定される。上記素子の効率を改善するためには、ナノ結晶性SiとSiO2との間に広い界面領域を設けなければならない。
【0008】
光素子(発光および光検出)が必要な分野においては、シリコンと混合可能であり、直流電圧によって作動し、単純かつ高効率の発光素子が望まれている。高効率なシリコン基材EL素子であれば、従来のメタライゼーション工程と比べて、より速くかつ信頼性の高い信号結合手段を実現できる。更には、システムオンチップ型の大型素子上のチップ内接続のための、光学的方法による信号経路形成も魅力的である。導波管または離れたシリコン片の間での直接的な光結合により、チップ間での通信のためのチップ間での電気接触の無い実装が可能となる。このため、小型ディスプレイ用の小型の可視光線点光源を作製することにより、単純で安価なディスプレイを作製することができる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的一定の強度を有するPLを発するのに十分安定したシリコンベースのEL素子、特に590nm以下の短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子およびその製造方法、並びに短波長光を放射させる方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法は、上記課題を解決するために、基板を設ける工程と、上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
上記の方法によれば、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層を形成するため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を製造することができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層を上記第一絶縁層上にDCスパッタリングする工程を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記DCスパッタリングする工程は、下記(a)〜(e)の工程
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
を含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、DCスパッタリングの出力を低下させることにより、Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後に高速熱アニールを行う工程を含むことが好ましい。
【0017】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記高速熱アニールを行う工程は、下記(a’)〜(d’)の工程
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶の大きさを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0019】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層を熱酸化する工程を含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を熱酸化する工程は、下記(a’’)〜(c’’)の工程
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
を含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0022】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことが好ましい。
【0023】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層をプラズマ酸化する工程は、下記(a’’’)〜(c’’’)の工程
(a’’’)上記基板を150〜250℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’’)4〜5%のO2を含む気体を供給する
(c’’’)1〜20分間酸化を行う
を含むことが好ましい。
【0024】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料を含むことが好ましい。
【0026】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を形成する工程を更に含むことが好ましい。
【0027】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記底部電極を、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0028】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上部電極を、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0029】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記第一絶縁層および第二絶縁層を、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0030】
本発明に係る短波長光を放射させる方法は、上記課題を解決するために、基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0031】
上記の方法によれば、SRSO層に、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siを形成するため、590nm未満の波長を有する光を放射させることができるという効果を奏する。
【0032】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成した後のSRSO層のSi濃度は、5〜40%の範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、第一絶縁層上の上記SRSO層をDCスパッタリングする工程を含むことが好ましい。
【0034】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、上記SRSO層の堆積の後に高速熱アニール(RTA)を行う工程を含むことが好ましい。
【0035】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層を熱酸化する工程を含むことが好ましい。
【0036】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことが好ましい。
【0037】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子は、上記課題を解決するために、基板と、上記基板の上に重なる第一絶縁層と、上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、SRSO層には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれているため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を提供することができるという効果を奏する。
【0039】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることが好ましい。
【0040】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料からなることが好ましい。
【0041】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を更に含むことが好ましい。
【0042】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記底部電極は、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0043】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板は、透明材料からなり、かつ、上記底部電極も透明材料からなることが好ましい。
【0044】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記第一絶縁層および第二絶縁層は、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0045】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記上部電極は、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0046】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記SRSO層は、空隙率が0.1〜5%の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法は、以上のように、基板を設ける工程と、上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0048】
このため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を製造することができるという効果を奏する。
【0049】
本発明に係る短波長光を放射させる方法は、以上のように、基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0050】
このため、590nm未満の波長を有する光を放射させることができるという効果を奏する。
【0051】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子は、以上のように、基板と、上記基板の上に重なる第一絶縁層と、上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴としている。
【0052】
このため、SRSO層には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれているため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明は、ELおよびLED素子の作製に関するものである。本発明は、DCスパッタリング、熱酸化アニール、およびプラズマ酸化工程を用いて、ELおよびLED素子に利用可能である、ナノ結晶性Siの粒径を制御し、かつシリコン過剰二酸化ケイ素の欠陥を低減させる方法について記載している。従来、SRSO(SRSO材料)の前記光ルミネセンス(PL)ピークは590nm〜750nmの波長範囲であり、これらのSRSOは安定性に問題があった。つまり、時間が経過するとPLピークの高さ(強度)が下がり、実際に利用できるEL素子としての使用が限定されてしまう。波長範囲の幅(特に短波長領域(590nm以下))を広げ、安定性を改善するために、ナノ結晶性Siの粒径を制御し、かつSRSOの欠陥密度を低下させる方法をここで開示する。SRSO膜のSiの粒径は、DCスパッタリング、高温アニール、熱酸化アニール、およびプラズマ酸化工程によって制御することができる。
【0054】
これにより、短波長で発光するシリコンEL素子を形成する方法を提供することができる。該方法には、通常、基板を用意する工程と、該基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、該第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmの範囲内であるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層を形成する工程と、該SRSO層の上に重ねられ、第二絶縁層を形成する工程と、該第二絶縁層の上に重ねられ、上部電極を形成する工程とが含まれる。通常、上記SRSO層のSi濃度は5〜40%であり、上記第一絶縁層および第二絶縁層は、例えば、SiO2、HfO2、またはZrO2のような物質により構成されている。
【0055】
一つの形態として、上記SRSO層は、DCスパッタリングによって形成される。Siナノ結晶の大きさはDCスパッタリングの出力レベルに関連しており、DCスパッタリングの出力レベルを低下させることにより、Siナノ結晶の大きさを小さくすることができる。
【0056】
別の形態としては、上記SRSO層形成工程には、該SRSO層の堆積に続いて行われる高速熱アニール(RTA)工程が含まれる。Siナノ結晶のサイズは、アニール温度を低下することにより小さくすることができる。同様に、上記SRSO層の堆積に続いて、熱酸化またはプラズマ酸化を行うこともできる。Siナノ結晶のサイズは、上記酸化工程に関連するアニール温度を低下することにより、小さくすることができる。
【0057】
更に、上述した方法、シリコンEL素子を使用して短波長光を放射させる方法、および短波長シリコンEL素子の詳細について以下に説明する。
【0058】
図1は、短波長シリコン(Si)エレクトロルミネセンス(EL)素子の部分断面図である。素子(シリコンエレクトロルミネセンス(SiEL)素子)100は、基板102、該基板102の上に重なる第一絶縁層104、および該第一絶縁層104の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層106を含む。SRSO層106には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれている。通常は、SRSO層106のSi濃度は5〜40%である。第二絶縁層108がSRSO層106の上に重なり、上部電極(TE)110が第二絶縁層108の上に重なっている。
【0059】
上記SRSO層106の欠陥は、2、3例を挙げると、不純物、不均一性、SiまたはOの空孔または多孔性の結果として起こるものである。以下に述べる方法を使用することにより、従来の埋め込み工程と比べて、不純物を取り除くことができ、均一性を改善することができる。例えば、熱アニール後では、上記SiまたはOの空孔は低減し、上記SRSO層(膜)106の空隙率は10%から0〜5%へと改善される。
【0060】
基板102を構成する材料としては、Si、n型Si、p型Si、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、もしくはAl2O3(サファイア)のような物質、またはSiガラス、石英、もしくはプラスチックのような感温材料が挙げられる。第一絶縁層104および第二絶縁層108を構成する材料としては、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、またはNb2O5のような物質が挙げられる。なお、第一絶縁層104と第二絶縁層108とは、同じ材料から構成させている必要はない。通常、上部電極110は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)のような透明材料、または金(Au)、アルミニウム(Al)もしくはクロム(Cr)のような金属薄板である。
【0061】
図2は、図1のシリコンエレクトロルミネセンス素子の別の形態の概略構成を示す断面図である。この形態では、上部電極110は透明である必要はない。上述した透明材料に加えて、上部電極110は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような物質から構成されていてもよい。本実施の形態では、底部電極(BE)103は、基板102と第一絶縁層104との間に挟まれている。上部電極110が透明である場合、底部電極103は、通常、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような不透明な物質から構成される。また、基板102が透明である場合、底部電極103は、ITO、Au、Al、ZnO、またはCrのような透明な物質から作製されていてもよい。更には、不透明な上部電極110を使用し、SRSO層106と上部電極110との間に挟まれた第二絶縁層108を通して光を放出することもできる。
【0062】
直径5nm以下のシリコンナノ結晶は、目に見える光ルミネセンスPLを室温で発する。Siナノ結晶の直径を1nm未満まで低減すると、量子閉じ込めされた励起子の再結合により、発生する光子エネルギーが増加され得る。SRSO層106内のSiナノ結晶から発生するPLスペクトルは、上記Siナノ結晶の粒径に依存し、500〜900nmの範囲内となる。
【0063】
SRSOに関して、光電子放出はSiとSiO2との間の界面、特にシリコンと酸素との二重結合(Si=O)によるものと信じられている。したがって、SiとSiO2との間の界面全体の領域およびその特性を改善することはきわめて重要な問題である。
【0064】
上記の研究に基づき、波長帯、特に短波長領域の波長帯を広げ、PL強度を増加させて減衰の問題を解決することができる。こうした問題は、上記Si/SiO2界面領域を拡大すること、Siナノ結晶の粒径を0.5〜5nm前後に調整すること、およびSiナノ結晶およびSi/SiO2界面の欠陥を低減することによって対処される。
【0065】
Siナノ結晶の粒径を調整することにより、SRSO内の欠陥密度を低下させる方法を開発した。一つの形態として、前記膜をDCスパッタリングによって堆積し、その後高温アニールを行う。Siナノ粒子の結晶のサイズは熱酸化工程、アニール工程、またはプラズマ酸化工程によって制御することができる。これらの方法を使用することで、500〜800nmのPL波長を有するSRSOを作製することができる。このようなSRSOのPL強度は高く、安定性も著しく改善されている。
【0066】
図3は、シリコンエレクトロルミネセンス素子のEL素子構造の概略構成を示す断面図である。欠陥密度が低く、様々な粒径のナノ結晶性Siを有するSRSOによって、EL素子を作製することができる。上記EL素子の作製を実現するために用いられるDCスパッタリング工程、高速熱アニール(RTA)工程、熱酸化工程、およびプラズマ酸化工程における条件を表1〜4にそれぞれ示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
実験結果では、シリコン過剰酸化ケイ素のPLおよびEL波長は、ナノSi結晶の粒径によって決定されることを示す。ナノSi結晶の粒径が小さくなると、それに応じて該シリコン過剰酸化ケイ素のPL波長は、より短波長へとシフトする。従来、SRSOは590〜750nmの波長のPLを放射し、590nm以下の波長で発光するSRSOは知られていない。より幅広い波長帯、高いPL強度および優れた安定性を有するSRSOを作製するためには、ナノSiの粒径およびサイズ分布を調整して、Siナノ粒子の濃度(Si濃度)を増加させ、かつSRSOの欠陥を低減させなければならない。このような成果を得るためには、以下の方法が用いられる。
【0072】
(1)DCスパッタリング出力および酸素分圧を変化させることにより、SRSO内のSi濃度を調整する
(2)アニール温度および酸素分圧(酸素がない場合も含む)を変化させることにより、SRSO内のSiナノ結晶の粒径を調整する
(3)熱酸化工程およびプラズマ酸化工程によって、SRSO内のSiナノ結晶の粒径を調整する
(4)高温アニール工程および熱酸化またはプラズマ酸化工程によって、SRSOの欠陥を低減させる
(5)好適なSi濃度および粒径を選択することにより、上記の方法を最適化し、SRSO内で最大数のナノ粒子を得る
(6)上記(1)〜(5)の方法を繰り返す、または組み合わせる
例えば、Si濃度の高いSRSOは、高いDCスパッタリング出力および低酸素分圧によって堆積し、その後好適な温度および酸素分圧で熱アニールおよび酸化を行うことにより得られる。このようにして、所望の波長、高い効率性および優れた安定性を有するSRSOを作製することができる。一方、Si濃度の低いSRSOは、DCスパッタリング出力を低減し、低いまたは高い酸素分圧によって堆積し、高温下で熱アニールすることによって得られる。
【0073】
図4は、酸素分圧が15%の場合におけるDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。図4に示すように、酸素分圧が15%の場合では、DCスパッタリング出力を150Wから300Wに増加させると、SRSO内のSi濃度は0%から49%に増加することがわかる。このように、DCスパッタリング出力および酸素分圧を変化させることにより、様々なSi濃度のSRSOを形成することができる。
【0074】
図5および図6はそれぞれ、アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。DCスパッタリング出力およびアニール温度を変化させることにより、様々な粒径のナノSi結晶を得ることができる。図5に示すように、30分間で850℃でアニールを行う場合、DCプラズマ出力を325Wから275Wに低下させると、ナノSi結晶の粒径は4.4nmから3.1nmに低下することがわかる。DCスパッタリング出力を更に低下させると、ナノSi結晶の粒径は更に低下する。300Wの一定のDCスパッタリング出力では、30分間で、アニール温度を850℃から1000℃へ増加させると、ナノSi結晶の粒径は2.9nmから5.8nmに増加する(図6参照)。このような方法を使用することにより、様々な粒径のナノSi結晶を含むSRSOを得ることができる。
【0075】
図7は、様々なDC出力の条件で堆積され、1000℃で30分間アニールしたSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。上記ELおよびPL強度は、Siナノ粒子の濃度および粒径によって決定される。DCスパッタリング出力を低下させると、粒径3〜1nmのSiナノ粒子の形成により、PL強度は増加する。上記Siナノ粒子の粒径を著しく小さくすると、PL波長は短波長領域にシフトする。図7に示すように、175WのDCスパッタリング出力で作製したSRSOでは、PL波長は500nmに短波長シフトする。しかしながら、後の熱酸化またはプラズマ酸化によっても、SRSO内のナノSi結晶の粒径を小さくすることができ、PL波長を短波長領域にシフトさせることができる。
【0076】
図8は、熱酸化前後におけるSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。図8に示すように、熱酸化後では、PL強度が低下すると共にPL波長が780nmから500nmにシフトする。このことは、上記SRSO中のナノ粒子の数が減少した結果であると考えられる。
【0077】
図9は、本実施の形態に係る方法により作製されたSRSOの波長帯を示すグラフである。上述した方法を使用することにより、SRSO内にさまざまな粒径のナノSi結晶を形成することができ、その結果、500nmから800nmまでの幅広いPL波長帯の光を放射させることができる。
【0078】
図10は、SRSOの安定性試験を示すグラフである。950℃、Ar中で30分間アニールした場合、Si濃度10%のSRSOでは、極めて安定したPL特性を示した。同様に、1000℃、Ar中で30分間アニールした場合、およびより酸素の少ない気体中で1050℃で30分間アニールした場合では、どちらの場合もSRSOは極めて安定であった。このように、適切な熱アニール工程および酸化工程によって、SRSOの欠陥密度を低減することできる。従って、PL特性の劣化が0に近いSRSOを作製することも可能である。安定であるSRSOは、その材齢にかかわらず比較的一定のPL強度を発するという特性を有する。
【0079】
図11は、短波長で発光するSiEL素子を形成する方法を示すフローチャートである。上記方法では、説明を明確にするため、各工程には続き番号が付記されているが、明示的に記載した場合を除いては、これらは順番を示すものではない。このため、工程が飛ばされてもかまわないし、同時に行う工程があってもよく、厳密に順序を守って行う必要はないと理解されたい。尚、上記方法は工程1100から始まる。
【0080】
工程1102では基板102を用意する。工程1104では、該基板102の上に重ねて、第一絶縁層104を形成する。工程1106では、上記第一絶縁層104の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層106を形成する。通常、工程1106では、Si濃度が5〜40%のSRSO層106を形成する。工程1108では、該SRSO層106の上に重ねて、第二絶縁層108を形成する。工程1110では、該第二絶縁層108の上に重ねて、上部電極110を形成する。
【0081】
一つの形態として、工程1106におけるSRSO層106の形成工程には、上記第一絶縁層104上に、該SRSO層106をDCスパッタリングする工程が含まれる。通常、Siナノ結晶のサイズは、DCスパッタリング出力の低下に応じて小さくなる。例えば、上記DCスパッタリングする工程では、
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0082】
別の形態として、工程1106において、上記SRSO層106の堆積後に高速熱アニール(RTA)工程が行われる。通常、Siナノ結晶のサイズはアニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、上記RTA工程は、
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0083】
更に別の形態として、工程1106において、堆積後に上記SRSO層106を熱酸化する。通常、Siナノ結晶のサイズはアニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、上記SRSO層106の熱酸化工程は、
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0084】
更に別の形態として、工程1106では、堆積後に上記SRSO層106をプラズマ酸化する。通常、Siナノ結晶のサイズは、アニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、工程1106では、約250℃まで(より好ましくは150℃以上250℃以下)基板102を加熱し、4〜5%のO2を含む気体を供給し、1〜20分間酸化することにより、上記SRSO層106をプラズマ酸化する。
【0085】
一つの形態として、工程1102の基板102を用意する工程では、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、Al2O3(サファイア)のような物質、またはSiガラス、石英、およびプラスチックのような感温性物質を基板102として用いることもできる。
【0086】
上記基板102が底部電極103として作動してもよい。また、別の形態では、工程1103で、上記基板102と第一絶縁層104との間に挟まれた底部電極103を形成する。底部電極103は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような物質で形成され得る。また、別の形態では、工程1103で、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)またはクロム(Cr)のような物質から透明な底部電極103を形成する。底部電極103が透明である場合は、工程1102で形成される上記基板102もまた透明であってもよい。
【0087】
一つの形態として、工程1110では、ITO、Au、Al、ZnO、またはCrのような透明材料で上部電極110を形成する。また、別の形態では、上部電極110は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような不透明な材料から構成されていてもよい。
【0088】
別の形態では、上記第一絶縁層104および第二絶縁層108を形成する工程1104および工程1108には、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、またはNb2O5のような物質から第一絶縁層104および第二絶縁層108を形成する工程がそれぞれ含まれる。
【0089】
図12は、SiEL素子から短波長光を放射させる方法を示すフローチャートである。上記方法は、工程1200から始まる。工程1202では、基板102、該基板102の上に重なる第一絶縁層104、該第一絶縁層104の上に重なるSRSO層106、該SRSO層106の上に重なる第二絶縁層108、および該第二絶縁層108の上に重なる上部電極110を含むSiEL素子100を用意する。工程1204では、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを上記SRSO層106内に形成する。通常、工程1204では、Si濃度が5〜40%のSRSO層106を形成する。工程1206では、上記SiEL素子100に電力を加える。一つの形態として、工程1206では、120V以上(より好ましくは120V以上500V以下)の振幅を有するDCパルスを加える。工程1208では、590nm未満の波長を有する光を放射させる。一つの形態としては、工程1208では、500〜800nmの波長を有する光を放射させる。別の形態としては、工程1208では、50サイクル以上(より好ましくは50サイクル以上1000サイクル以下)電力を加えた後、強度が5%未満(より好ましくは0.1%以上5%未満)減衰した光を放射させる。
【0090】
一つの形態としては、工程1204におけるナノ結晶性Siを形成する工程には、上記第一絶縁層104上にSRSO層106をDCスパッタリングする工程が含まれる。別の形態としては、工程1204では、上記SRSO層106の堆積後に高速熱アニール(RTA)工程を行う。別の形態としては、工程1204では、堆積後に上記SRSO層106を熱酸化する。さらに他の形態としては、工程1204では、堆積後に上記SRSO層106をプラズマ酸化する。
【0091】
上述したように、本実施の形態では、SRSOを用いたEL素子、および小さい直径のSiナノ結晶を有するような素子の作製を可能とする製造方法を提供した。本発明を説明するために特定の物質、環境条件および温度のいくつかの例が示されているが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、他の変形および形態が当業者によってなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施の形態に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】上記シリコンエレクトロルミネセンス素子の別の形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】上記シリコンエレクトロルミネセンス素子のEL素子構造の概略構成を示す断面図である。
【図4】酸素分圧が15%の場合におけるDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図5】アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図6】アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図7】様々なDC出力の条件で堆積され、1000℃で30分間アニールしたSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。
【図8】熱酸化前後でのSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。
【図9】本実施の形態にかかる方法により作製されたSRSOの波長帯を示すグラフである。
【図10】SRSOの安定性試験を示すグラフである。
【図11】短波長で発光するシリコンエレクトロルミネセンス素子を形成する方法を示すフローチャートである。
【図12】シリコンエレクトロルミネセンス素子から短波長光を放射させる方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
100 素子(シリコンエレクトロルミネセンス素子)
102 基板
103 底部電極
104 第一絶縁層
106 シリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層
108 第二絶縁層
110 上部電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路(IC)製造に関するものであり、具体的には、幅広い波長帯で発光するシリコンベースのエレクトロルミネセンス(EL)素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体が直接遷移型バンドギャップを形成するか間接遷移型バンドギャップを形成するかにかかわらず、半導体素子からの発光は可能である。pn接合に高電界で逆バイアスを掛けることによって、多数のホット・キャリアの集団が生じる。ホット・キャリアの集団は、放出された光子と再結合する。シリコン素子は発光効率が低いことが知られており、大部分の光子エネルギーは、2eV前後である。電気エネルギーから光子エネルギーへの転換は、エレクトロルミネセンス(EL)と呼ばれ、小さな電気的信号により室温で動作する高効率のEL素子が作製されている。しかしながら、上記EL素子は、例えばInGaN、AlGaAs、GaAsP、GaNおよびGaPなどのIII‐V族物質のような、通常はシリコンと混合することができない物質の上に作製される。このような物質(基材)の中の1つの上に形成されるEL素子は、特定の上記物質を使用することによって、可視領域内の狭い帯域幅で高効率で発光する。加えて、ZnSeのようなII‐VI族物質も使用することができ、ZnSやZnOのような他のII‐VI族物質は、交流バイアスでエレクトロルミネセンスを示すことが知られている。このような素子はシリコン上に堆積させることができ、特殊な(従来にない)CMOS処理が行われる場合における発光素子として使用することができる。他の種類の発光素子としては、有機発光ダイオード(OLED)、ナノ結晶性シリコン(nc‐Si)およびポリマーLEDが挙げられる。
【0003】
従来、シリコンは、エネルギーバンドギャップが間接遷移型のため、オプトエレクトロニクス分野での利用には不適当であると考えられてきた。実際に、バルクシリコンはきわめて効率の悪い発光体である。この問題を解決するために行われてきた様々な取り組みの中で、Siナノ構造中での量子閉じ込め、および希土類の結晶シリコンへのドーピングは、極めて多くの注目を浴びてきた。特に、SiO2に埋め込まれたSiナノクラスター(nc)は、近年、Siベースの可視光源を作製するための有望な新物質として科学界の注目を集めている。一方、Erをドープした結晶Siでは、放射性4f殻内Er遷移(radiative intra-4f shell Er transition)を利用する研究が広範囲にわたって行われている。そして、0.05%前後の効率を有する、室温で動作する素子が実現された。その効率は非常に低く、加工温度は、通常1100℃を超え、極めて高い。
【0004】
しかしながら、室温で利用できるポーラスシリコン(Si)から可視発光を行うとするこのような先駆者たちの努力によって、夥しい量の研究が、ナノサイズSiの使用によるSiベースの光源の開発に向けられることに拍車をかけることになった。
【0005】
ナノクラスターSi(nc‐Si)を作製するために広く使用されている方法の1つは、化学気相成長(CVD)、高周波(RF)スパッタリング、または、シリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)もしくはシリコン過剰酸化物(SRO)と呼ばれることが多いSi注入を使用して、該nc‐SiをSiOx(ここではx<2)から析出させることにより膜を形成する方法である。CVDまたはRFスパッタリング工程を高温アニールと共に使用することによって、上記SRSOにおける光ルミネセンス(PL)ピークは、590〜750nmの波長範囲となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成では、EL素子としての用途が限定されるという問題が生じる。具体的には、上記SRSOにおける光ルミネセンス(PL)ピークとしては、590nm以下のPL波長は報告されておらず、また、上記SRSOは量子効率が低く、安定性が悪い。このため、時間の経過と共にPL強度が低くなり、EL素子としての用途は限定される。
【0007】
Erドープナノ結晶性Si作製のためのEr注入も、Siベースの光源において利用されるが、最先端の注入方法を用いたとしてもドーパントを均一に分布させることはできない。このため、発光効率は低くなり、コストが増加する。加えて、そのようなドーパントの使用を支持するに足りる界面工学も存在しない。上記素子の効率は非常に低く、かつ加工温度は極めて高いため、該素子の用途は限定される。上記素子の効率を改善するためには、ナノ結晶性SiとSiO2との間に広い界面領域を設けなければならない。
【0008】
光素子(発光および光検出)が必要な分野においては、シリコンと混合可能であり、直流電圧によって作動し、単純かつ高効率の発光素子が望まれている。高効率なシリコン基材EL素子であれば、従来のメタライゼーション工程と比べて、より速くかつ信頼性の高い信号結合手段を実現できる。更には、システムオンチップ型の大型素子上のチップ内接続のための、光学的方法による信号経路形成も魅力的である。導波管または離れたシリコン片の間での直接的な光結合により、チップ間での通信のためのチップ間での電気接触の無い実装が可能となる。このため、小型ディスプレイ用の小型の可視光線点光源を作製することにより、単純で安価なディスプレイを作製することができる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的一定の強度を有するPLを発するのに十分安定したシリコンベースのEL素子、特に590nm以下の短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子およびその製造方法、並びに短波長光を放射させる方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法は、上記課題を解決するために、基板を設ける工程と、上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0011】
上記の方法によれば、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層を形成するため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を製造することができるという効果を奏する。
【0012】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層を上記第一絶縁層上にDCスパッタリングする工程を含むことが好ましい。
【0014】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記DCスパッタリングする工程は、下記(a)〜(e)の工程
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
を含むことが好ましい。
【0015】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、DCスパッタリングの出力を低下させることにより、Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後に高速熱アニールを行う工程を含むことが好ましい。
【0017】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記高速熱アニールを行う工程は、下記(a’)〜(d’)の工程
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
を含むことが好ましい。
【0018】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶の大きさを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0019】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層を熱酸化する工程を含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を熱酸化する工程は、下記(a’’)〜(c’’)の工程
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
を含むことが好ましい。
【0021】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0022】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことが好ましい。
【0023】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層をプラズマ酸化する工程は、下記(a’’’)〜(c’’’)の工程
(a’’’)上記基板を150〜250℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’’)4〜5%のO2を含む気体を供給する
(c’’’)1〜20分間酸化を行う
を含むことが好ましい。
【0024】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料を含むことが好ましい。
【0026】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を形成する工程を更に含むことが好ましい。
【0027】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記底部電極を、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0028】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上部電極を、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0029】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法では、上記第一絶縁層および第二絶縁層を、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質から形成することが好ましい。
【0030】
本発明に係る短波長光を放射させる方法は、上記課題を解決するために、基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0031】
上記の方法によれば、SRSO層に、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siを形成するため、590nm未満の波長を有する光を放射させることができるという効果を奏する。
【0032】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成した後のSRSO層のSi濃度は、5〜40%の範囲内であることが好ましい。
【0033】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、第一絶縁層上の上記SRSO層をDCスパッタリングする工程を含むことが好ましい。
【0034】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、上記SRSO層の堆積の後に高速熱アニール(RTA)を行う工程を含むことが好ましい。
【0035】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層を熱酸化する工程を含むことが好ましい。
【0036】
本発明に係る短波長光を放射させる方法では、ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことが好ましい。
【0037】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子は、上記課題を解決するために、基板と、上記基板の上に重なる第一絶縁層と、上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴としている。
【0038】
上記構成によれば、SRSO層には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれているため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を提供することができるという効果を奏する。
【0039】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることが好ましい。
【0040】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料からなることが好ましい。
【0041】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を更に含むことが好ましい。
【0042】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記底部電極は、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0043】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記基板は、透明材料からなり、かつ、上記底部電極も透明材料からなることが好ましい。
【0044】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記第一絶縁層および第二絶縁層は、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0045】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記上部電極は、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることが好ましい。
【0046】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子では、上記SRSO層は、空隙率が0.1〜5%の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法は、以上のように、基板を設ける工程と、上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0048】
このため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を製造することができるという効果を奏する。
【0049】
本発明に係る短波長光を放射させる方法は、以上のように、基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴としている。
【0050】
このため、590nm未満の波長を有する光を放射させることができるという効果を奏する。
【0051】
本発明に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子は、以上のように、基板と、上記基板の上に重なる第一絶縁層と、上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴としている。
【0052】
このため、SRSO層には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれているため、短波長で、より広域のスペクトルの放射光を発する安定したシリコンベースのEL素子を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明は、ELおよびLED素子の作製に関するものである。本発明は、DCスパッタリング、熱酸化アニール、およびプラズマ酸化工程を用いて、ELおよびLED素子に利用可能である、ナノ結晶性Siの粒径を制御し、かつシリコン過剰二酸化ケイ素の欠陥を低減させる方法について記載している。従来、SRSO(SRSO材料)の前記光ルミネセンス(PL)ピークは590nm〜750nmの波長範囲であり、これらのSRSOは安定性に問題があった。つまり、時間が経過するとPLピークの高さ(強度)が下がり、実際に利用できるEL素子としての使用が限定されてしまう。波長範囲の幅(特に短波長領域(590nm以下))を広げ、安定性を改善するために、ナノ結晶性Siの粒径を制御し、かつSRSOの欠陥密度を低下させる方法をここで開示する。SRSO膜のSiの粒径は、DCスパッタリング、高温アニール、熱酸化アニール、およびプラズマ酸化工程によって制御することができる。
【0054】
これにより、短波長で発光するシリコンEL素子を形成する方法を提供することができる。該方法には、通常、基板を用意する工程と、該基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、該第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmの範囲内であるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層を形成する工程と、該SRSO層の上に重ねられ、第二絶縁層を形成する工程と、該第二絶縁層の上に重ねられ、上部電極を形成する工程とが含まれる。通常、上記SRSO層のSi濃度は5〜40%であり、上記第一絶縁層および第二絶縁層は、例えば、SiO2、HfO2、またはZrO2のような物質により構成されている。
【0055】
一つの形態として、上記SRSO層は、DCスパッタリングによって形成される。Siナノ結晶の大きさはDCスパッタリングの出力レベルに関連しており、DCスパッタリングの出力レベルを低下させることにより、Siナノ結晶の大きさを小さくすることができる。
【0056】
別の形態としては、上記SRSO層形成工程には、該SRSO層の堆積に続いて行われる高速熱アニール(RTA)工程が含まれる。Siナノ結晶のサイズは、アニール温度を低下することにより小さくすることができる。同様に、上記SRSO層の堆積に続いて、熱酸化またはプラズマ酸化を行うこともできる。Siナノ結晶のサイズは、上記酸化工程に関連するアニール温度を低下することにより、小さくすることができる。
【0057】
更に、上述した方法、シリコンEL素子を使用して短波長光を放射させる方法、および短波長シリコンEL素子の詳細について以下に説明する。
【0058】
図1は、短波長シリコン(Si)エレクトロルミネセンス(EL)素子の部分断面図である。素子(シリコンエレクトロルミネセンス(SiEL)素子)100は、基板102、該基板102の上に重なる第一絶縁層104、および該第一絶縁層104の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層106を含む。SRSO層106には、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれている。通常は、SRSO層106のSi濃度は5〜40%である。第二絶縁層108がSRSO層106の上に重なり、上部電極(TE)110が第二絶縁層108の上に重なっている。
【0059】
上記SRSO層106の欠陥は、2、3例を挙げると、不純物、不均一性、SiまたはOの空孔または多孔性の結果として起こるものである。以下に述べる方法を使用することにより、従来の埋め込み工程と比べて、不純物を取り除くことができ、均一性を改善することができる。例えば、熱アニール後では、上記SiまたはOの空孔は低減し、上記SRSO層(膜)106の空隙率は10%から0〜5%へと改善される。
【0060】
基板102を構成する材料としては、Si、n型Si、p型Si、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、もしくはAl2O3(サファイア)のような物質、またはSiガラス、石英、もしくはプラスチックのような感温材料が挙げられる。第一絶縁層104および第二絶縁層108を構成する材料としては、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、またはNb2O5のような物質が挙げられる。なお、第一絶縁層104と第二絶縁層108とは、同じ材料から構成させている必要はない。通常、上部電極110は、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)のような透明材料、または金(Au)、アルミニウム(Al)もしくはクロム(Cr)のような金属薄板である。
【0061】
図2は、図1のシリコンエレクトロルミネセンス素子の別の形態の概略構成を示す断面図である。この形態では、上部電極110は透明である必要はない。上述した透明材料に加えて、上部電極110は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような物質から構成されていてもよい。本実施の形態では、底部電極(BE)103は、基板102と第一絶縁層104との間に挟まれている。上部電極110が透明である場合、底部電極103は、通常、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような不透明な物質から構成される。また、基板102が透明である場合、底部電極103は、ITO、Au、Al、ZnO、またはCrのような透明な物質から作製されていてもよい。更には、不透明な上部電極110を使用し、SRSO層106と上部電極110との間に挟まれた第二絶縁層108を通して光を放出することもできる。
【0062】
直径5nm以下のシリコンナノ結晶は、目に見える光ルミネセンスPLを室温で発する。Siナノ結晶の直径を1nm未満まで低減すると、量子閉じ込めされた励起子の再結合により、発生する光子エネルギーが増加され得る。SRSO層106内のSiナノ結晶から発生するPLスペクトルは、上記Siナノ結晶の粒径に依存し、500〜900nmの範囲内となる。
【0063】
SRSOに関して、光電子放出はSiとSiO2との間の界面、特にシリコンと酸素との二重結合(Si=O)によるものと信じられている。したがって、SiとSiO2との間の界面全体の領域およびその特性を改善することはきわめて重要な問題である。
【0064】
上記の研究に基づき、波長帯、特に短波長領域の波長帯を広げ、PL強度を増加させて減衰の問題を解決することができる。こうした問題は、上記Si/SiO2界面領域を拡大すること、Siナノ結晶の粒径を0.5〜5nm前後に調整すること、およびSiナノ結晶およびSi/SiO2界面の欠陥を低減することによって対処される。
【0065】
Siナノ結晶の粒径を調整することにより、SRSO内の欠陥密度を低下させる方法を開発した。一つの形態として、前記膜をDCスパッタリングによって堆積し、その後高温アニールを行う。Siナノ粒子の結晶のサイズは熱酸化工程、アニール工程、またはプラズマ酸化工程によって制御することができる。これらの方法を使用することで、500〜800nmのPL波長を有するSRSOを作製することができる。このようなSRSOのPL強度は高く、安定性も著しく改善されている。
【0066】
図3は、シリコンエレクトロルミネセンス素子のEL素子構造の概略構成を示す断面図である。欠陥密度が低く、様々な粒径のナノ結晶性Siを有するSRSOによって、EL素子を作製することができる。上記EL素子の作製を実現するために用いられるDCスパッタリング工程、高速熱アニール(RTA)工程、熱酸化工程、およびプラズマ酸化工程における条件を表1〜4にそれぞれ示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
実験結果では、シリコン過剰酸化ケイ素のPLおよびEL波長は、ナノSi結晶の粒径によって決定されることを示す。ナノSi結晶の粒径が小さくなると、それに応じて該シリコン過剰酸化ケイ素のPL波長は、より短波長へとシフトする。従来、SRSOは590〜750nmの波長のPLを放射し、590nm以下の波長で発光するSRSOは知られていない。より幅広い波長帯、高いPL強度および優れた安定性を有するSRSOを作製するためには、ナノSiの粒径およびサイズ分布を調整して、Siナノ粒子の濃度(Si濃度)を増加させ、かつSRSOの欠陥を低減させなければならない。このような成果を得るためには、以下の方法が用いられる。
【0072】
(1)DCスパッタリング出力および酸素分圧を変化させることにより、SRSO内のSi濃度を調整する
(2)アニール温度および酸素分圧(酸素がない場合も含む)を変化させることにより、SRSO内のSiナノ結晶の粒径を調整する
(3)熱酸化工程およびプラズマ酸化工程によって、SRSO内のSiナノ結晶の粒径を調整する
(4)高温アニール工程および熱酸化またはプラズマ酸化工程によって、SRSOの欠陥を低減させる
(5)好適なSi濃度および粒径を選択することにより、上記の方法を最適化し、SRSO内で最大数のナノ粒子を得る
(6)上記(1)〜(5)の方法を繰り返す、または組み合わせる
例えば、Si濃度の高いSRSOは、高いDCスパッタリング出力および低酸素分圧によって堆積し、その後好適な温度および酸素分圧で熱アニールおよび酸化を行うことにより得られる。このようにして、所望の波長、高い効率性および優れた安定性を有するSRSOを作製することができる。一方、Si濃度の低いSRSOは、DCスパッタリング出力を低減し、低いまたは高い酸素分圧によって堆積し、高温下で熱アニールすることによって得られる。
【0073】
図4は、酸素分圧が15%の場合におけるDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。図4に示すように、酸素分圧が15%の場合では、DCスパッタリング出力を150Wから300Wに増加させると、SRSO内のSi濃度は0%から49%に増加することがわかる。このように、DCスパッタリング出力および酸素分圧を変化させることにより、様々なSi濃度のSRSOを形成することができる。
【0074】
図5および図6はそれぞれ、アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。DCスパッタリング出力およびアニール温度を変化させることにより、様々な粒径のナノSi結晶を得ることができる。図5に示すように、30分間で850℃でアニールを行う場合、DCプラズマ出力を325Wから275Wに低下させると、ナノSi結晶の粒径は4.4nmから3.1nmに低下することがわかる。DCスパッタリング出力を更に低下させると、ナノSi結晶の粒径は更に低下する。300Wの一定のDCスパッタリング出力では、30分間で、アニール温度を850℃から1000℃へ増加させると、ナノSi結晶の粒径は2.9nmから5.8nmに増加する(図6参照)。このような方法を使用することにより、様々な粒径のナノSi結晶を含むSRSOを得ることができる。
【0075】
図7は、様々なDC出力の条件で堆積され、1000℃で30分間アニールしたSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。上記ELおよびPL強度は、Siナノ粒子の濃度および粒径によって決定される。DCスパッタリング出力を低下させると、粒径3〜1nmのSiナノ粒子の形成により、PL強度は増加する。上記Siナノ粒子の粒径を著しく小さくすると、PL波長は短波長領域にシフトする。図7に示すように、175WのDCスパッタリング出力で作製したSRSOでは、PL波長は500nmに短波長シフトする。しかしながら、後の熱酸化またはプラズマ酸化によっても、SRSO内のナノSi結晶の粒径を小さくすることができ、PL波長を短波長領域にシフトさせることができる。
【0076】
図8は、熱酸化前後におけるSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。図8に示すように、熱酸化後では、PL強度が低下すると共にPL波長が780nmから500nmにシフトする。このことは、上記SRSO中のナノ粒子の数が減少した結果であると考えられる。
【0077】
図9は、本実施の形態に係る方法により作製されたSRSOの波長帯を示すグラフである。上述した方法を使用することにより、SRSO内にさまざまな粒径のナノSi結晶を形成することができ、その結果、500nmから800nmまでの幅広いPL波長帯の光を放射させることができる。
【0078】
図10は、SRSOの安定性試験を示すグラフである。950℃、Ar中で30分間アニールした場合、Si濃度10%のSRSOでは、極めて安定したPL特性を示した。同様に、1000℃、Ar中で30分間アニールした場合、およびより酸素の少ない気体中で1050℃で30分間アニールした場合では、どちらの場合もSRSOは極めて安定であった。このように、適切な熱アニール工程および酸化工程によって、SRSOの欠陥密度を低減することできる。従って、PL特性の劣化が0に近いSRSOを作製することも可能である。安定であるSRSOは、その材齢にかかわらず比較的一定のPL強度を発するという特性を有する。
【0079】
図11は、短波長で発光するSiEL素子を形成する方法を示すフローチャートである。上記方法では、説明を明確にするため、各工程には続き番号が付記されているが、明示的に記載した場合を除いては、これらは順番を示すものではない。このため、工程が飛ばされてもかまわないし、同時に行う工程があってもよく、厳密に順序を守って行う必要はないと理解されたい。尚、上記方法は工程1100から始まる。
【0080】
工程1102では基板102を用意する。工程1104では、該基板102の上に重ねて、第一絶縁層104を形成する。工程1106では、上記第一絶縁層104の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたSRSO層106を形成する。通常、工程1106では、Si濃度が5〜40%のSRSO層106を形成する。工程1108では、該SRSO層106の上に重ねて、第二絶縁層108を形成する。工程1110では、該第二絶縁層108の上に重ねて、上部電極110を形成する。
【0081】
一つの形態として、工程1106におけるSRSO層106の形成工程には、上記第一絶縁層104上に、該SRSO層106をDCスパッタリングする工程が含まれる。通常、Siナノ結晶のサイズは、DCスパッタリング出力の低下に応じて小さくなる。例えば、上記DCスパッタリングする工程では、
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0082】
別の形態として、工程1106において、上記SRSO層106の堆積後に高速熱アニール(RTA)工程が行われる。通常、Siナノ結晶のサイズはアニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、上記RTA工程は、
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0083】
更に別の形態として、工程1106において、堆積後に上記SRSO層106を熱酸化する。通常、Siナノ結晶のサイズはアニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、上記SRSO層106の熱酸化工程は、
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
などの諸工程を含んでいてもよい。
【0084】
更に別の形態として、工程1106では、堆積後に上記SRSO層106をプラズマ酸化する。通常、Siナノ結晶のサイズは、アニール温度の低下に応じて小さくなる。例えば、工程1106では、約250℃まで(より好ましくは150℃以上250℃以下)基板102を加熱し、4〜5%のO2を含む気体を供給し、1〜20分間酸化することにより、上記SRSO層106をプラズマ酸化する。
【0085】
一つの形態として、工程1102の基板102を用意する工程では、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、Al2O3(サファイア)のような物質、またはSiガラス、石英、およびプラスチックのような感温性物質を基板102として用いることもできる。
【0086】
上記基板102が底部電極103として作動してもよい。また、別の形態では、工程1103で、上記基板102と第一絶縁層104との間に挟まれた底部電極103を形成する。底部電極103は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような物質で形成され得る。また、別の形態では、工程1103で、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)またはクロム(Cr)のような物質から透明な底部電極103を形成する。底部電極103が透明である場合は、工程1102で形成される上記基板102もまた透明であってもよい。
【0087】
一つの形態として、工程1110では、ITO、Au、Al、ZnO、またはCrのような透明材料で上部電極110を形成する。また、別の形態では、上部電極110は、多結晶Si、Pt、Ir、Al、AlCu、Au、Ag、YBCO、ITO、RuO2、またはLa1−XSrXCoO3のような不透明な材料から構成されていてもよい。
【0088】
別の形態では、上記第一絶縁層104および第二絶縁層108を形成する工程1104および工程1108には、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、またはNb2O5のような物質から第一絶縁層104および第二絶縁層108を形成する工程がそれぞれ含まれる。
【0089】
図12は、SiEL素子から短波長光を放射させる方法を示すフローチャートである。上記方法は、工程1200から始まる。工程1202では、基板102、該基板102の上に重なる第一絶縁層104、該第一絶縁層104の上に重なるSRSO層106、該SRSO層106の上に重なる第二絶縁層108、および該第二絶縁層108の上に重なる上部電極110を含むSiEL素子100を用意する。工程1204では、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを上記SRSO層106内に形成する。通常、工程1204では、Si濃度が5〜40%のSRSO層106を形成する。工程1206では、上記SiEL素子100に電力を加える。一つの形態として、工程1206では、120V以上(より好ましくは120V以上500V以下)の振幅を有するDCパルスを加える。工程1208では、590nm未満の波長を有する光を放射させる。一つの形態としては、工程1208では、500〜800nmの波長を有する光を放射させる。別の形態としては、工程1208では、50サイクル以上(より好ましくは50サイクル以上1000サイクル以下)電力を加えた後、強度が5%未満(より好ましくは0.1%以上5%未満)減衰した光を放射させる。
【0090】
一つの形態としては、工程1204におけるナノ結晶性Siを形成する工程には、上記第一絶縁層104上にSRSO層106をDCスパッタリングする工程が含まれる。別の形態としては、工程1204では、上記SRSO層106の堆積後に高速熱アニール(RTA)工程を行う。別の形態としては、工程1204では、堆積後に上記SRSO層106を熱酸化する。さらに他の形態としては、工程1204では、堆積後に上記SRSO層106をプラズマ酸化する。
【0091】
上述したように、本実施の形態では、SRSOを用いたEL素子、および小さい直径のSiナノ結晶を有するような素子の作製を可能とする製造方法を提供した。本発明を説明するために特定の物質、環境条件および温度のいくつかの例が示されているが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、他の変形および形態が当業者によってなされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本実施の形態に係るシリコンエレクトロルミネセンス素子の概略構成を示す断面図である。
【図2】上記シリコンエレクトロルミネセンス素子の別の形態の概略構成を示す断面図である。
【図3】上記シリコンエレクトロルミネセンス素子のEL素子構造の概略構成を示す断面図である。
【図4】酸素分圧が15%の場合におけるDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図5】アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図6】アニール温度とDCスパッタリング出力とSRSO内のSi濃度との関係を示すグラフである。
【図7】様々なDC出力の条件で堆積され、1000℃で30分間アニールしたSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。
【図8】熱酸化前後でのSRSOのPLスペクトルを示すグラフである。
【図9】本実施の形態にかかる方法により作製されたSRSOの波長帯を示すグラフである。
【図10】SRSOの安定性試験を示すグラフである。
【図11】短波長で発光するシリコンエレクトロルミネセンス素子を形成する方法を示すフローチャートである。
【図12】シリコンエレクトロルミネセンス素子から短波長光を放射させる方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
100 素子(シリコンエレクトロルミネセンス素子)
102 基板
103 底部電極
104 第一絶縁層
106 シリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層
108 第二絶縁層
110 上部電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を用意する工程と、
上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、
上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、
上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、
上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴とするシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項2】
上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項3】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層を上記第一絶縁層上にDCスパッタリングする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項4】
上記DCスパッタリングする工程では、下記(a)〜(e)の工程
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
を含むことを特徴とする請求項3に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項5】
上記SRSO層を形成する工程は、DCスパッタリングの出力を低下させることにより、Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項3に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項6】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後に高速熱アニールを行う工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項7】
上記高速熱アニールを行う工程では、下記(a’)〜(d’)の工程
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
を含むことを特徴とする請求項6に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項8】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶の大きさを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項9】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層を熱酸化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項10】
上記SRSO層を熱酸化する工程では、下記(a’’)〜(c’’)の工程
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
を含むことを特徴とする請求項9に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項11】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項9に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項12】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項13】
上記SRSO層をプラズマ酸化する工程では、下記(a’’’)〜(c’’’)の工程
(a’’’)上記基板を150〜250℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’’)4〜5%のO2を含む気体を供給する
(c’’’)1〜20分間酸化を行う
を含むことを特徴とする請求項12に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項14】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項15】
上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項16】
上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項17】
上記底部電極を、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項16に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項18】
上部電極を、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項19】
上記第一絶縁層および第二絶縁層を、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項20】
基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、
上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴とする短波長光を放射させる方法。
【請求項21】
ナノ結晶性Siを形成した後のSRSO層のSi濃度は、5〜40%の範囲内であることを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項22】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、第一絶縁層上の上記SRSO層をDCスパッタリングする工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項23】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、上記SRSO層の堆積の後に高速熱アニール(RTA)を行う工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項24】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層を熱酸化する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項25】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項26】
基板と、
上記基板の上に重なる第一絶縁層と、
上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、
上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、
上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴とするシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項27】
上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項28】
上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項29】
上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項30】
上記底部電極は、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項29に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項31】
上記基板は、透明材料からなり、かつ、上記底部電極も透明材料からなることを特徴とする請求項29に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項32】
上記第一絶縁層および第二絶縁層は、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項33】
上記上部電極は、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項34】
上記SRSO層は、空隙率が0.1〜5%の範囲内であることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項1】
基板を用意する工程と、
上記基板の上に重ねて、第一絶縁層を形成する工程と、
上記第一絶縁層の上に重ねて、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層を形成する工程と、
上記SRSO層の上に重ねて、第二絶縁層を形成する工程と、
上記第二絶縁層の上に重ねて、上部電極を形成する工程とを含むことを特徴とするシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項2】
上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項3】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層を上記第一絶縁層上にDCスパッタリングする工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項4】
上記DCスパッタリングする工程では、下記(a)〜(e)の工程
(a)Siターゲットを使用する
(b)100〜300Wの範囲内の電力を加える
(c)上記基板を20〜300℃の範囲内の温度に加熱する
(d)2〜10mTorrの範囲内の堆積圧力を用いる
(e)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
を含むことを特徴とする請求項3に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項5】
上記SRSO層を形成する工程は、DCスパッタリングの出力を低下させることにより、Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項3に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項6】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後に高速熱アニールを行う工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項7】
上記高速熱アニールを行う工程では、下記(a’)〜(d’)の工程
(a’)50〜500℃/秒の高速熱速度を用いる
(b’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(c’)ArおよびN2を含む群から選択される気体を供給する
(d’)5〜60分間アニールする
を含むことを特徴とする請求項6に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項8】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶の大きさを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項7に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項9】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層を熱酸化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項10】
上記SRSO層を熱酸化する工程では、下記(a’’)〜(c’’)の工程
(a’’)上記基板を800〜1200℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’)ArおよびN2を含む群から選択された気体と2〜30%のO2とを含む気体を供給する
(c’’)5〜60分間アニールする
を含むことを特徴とする請求項9に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項11】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項9に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項12】
上記SRSO層を形成する工程は、該SRSO層の堆積の後にSRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項13】
上記SRSO層をプラズマ酸化する工程では、下記(a’’’)〜(c’’’)の工程
(a’’’)上記基板を150〜250℃の範囲内の温度に加熱する
(b’’’)4〜5%のO2を含む気体を供給する
(c’’’)1〜20分間酸化を行う
を含むことを特徴とする請求項12に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項14】
上記SRSO層を形成する工程は、アニール温度を低下させることにより、上記Siナノ結晶のサイズを小さくする工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項15】
上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項16】
上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を形成する工程を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項17】
上記底部電極を、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項16に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項18】
上部電極を、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項19】
上記第一絶縁層および第二絶縁層を、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質から形成することを特徴とする請求項1に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【請求項20】
基板と、該基板の上に重なる第一絶縁層と、該第一絶縁層の上に重なるシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、該SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、該第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むシリコンエレクトロルミネセンス素子を用意する工程と、
上記SRSO層内に、大きさが0.5〜5nmのナノ結晶性Siを形成する工程とを含むことを特徴とする短波長光を放射させる方法。
【請求項21】
ナノ結晶性Siを形成した後のSRSO層のSi濃度は、5〜40%の範囲内であることを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項22】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、第一絶縁層上の上記SRSO層をDCスパッタリングする工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項23】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、上記SRSO層の堆積の後に高速熱アニール(RTA)を行う工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項24】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層を熱酸化する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項25】
ナノ結晶性Siを形成する工程は、堆積の後に上記SRSO層をプラズマ酸化する工程を含むことを特徴とする請求項20に記載の短波長光を放射させる方法。
【請求項26】
基板と、
上記基板の上に重なる第一絶縁層と、
上記第一絶縁層の上に重なり、大きさが0.5〜5nmであるナノ結晶性Siが埋め込まれたシリコン過剰酸化ケイ素(SRSO)層と、
上記SRSO層の上に重なる第二絶縁層と、
上記第二絶縁層の上に重なる上部電極とを含むことを特徴とするシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項27】
上記SRSO層は、Si濃度が5〜40%であることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項28】
上記基板は、Si、n型Si、p型Si、Siガラス、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、およびAl2O3(サファイア)からなる群から選択された物質、またはガラス、プラスチック、および石英からなる群から選択された感温性材料からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項29】
上記基板と上記第一絶縁層との間に挟まれた底部電極を更に含むことを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項30】
上記底部電極は、多結晶Si、インジウムスズ酸化物(ITO)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、クロム(Cr)、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項29に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項31】
上記基板は、透明材料からなり、かつ、上記底部電極も透明材料からなることを特徴とする請求項29に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項32】
上記第一絶縁層および第二絶縁層は、SiO2、HfO2、ZrO2、Al2O3、La2O3、Si3N4、TiO2、Ta2O5、およびNb2O5を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項33】
上記上部電極は、多結晶Si、ITO、Au、Al、ZnO、Cr、Pt、Ir、AlCu、Ag、YBCO、RuO2、およびLa1−XSrXCoO3を含む群から選択された物質からなることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【請求項34】
上記SRSO層は、空隙率が0.1〜5%の範囲内であることを特徴とする請求項26に記載のシリコンエレクトロルミネセンス素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−228732(P2006−228732A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36944(P2006−36944)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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