シリコンベースの光学変調器用最新型変調フォーマット
自由キャリア分散ベースの変調に伴う位相変調非線形及び減衰の問題を解決するように変形した電気データ入力信号フォーマットを用いたマルチセグメント装置として構成したシリコンベースの光学変調器。この変調器は、M個の分離セグメントを具えるように形成されており、デジタル信号エンコーダを用いて、Nビットの入力データ信号をM個の変調セグメント用の複数のM駆動信号に 変換する。ここで、M≧2N/2である。変調器セグメントの長さを調整して、非線形と減衰の問題を解決することができる。追加の位相調整を、変調器の出力に(組み合わせた導波路を超えて)用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2009年8月19日に出願された米国暫定特許出願第61/235,106号及び2010年6月16日に出願された米国暫定特許出願61/355,374号の利益を主張する。両出願とも、引用によって個々に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、シリコンベースの光学変調器に関し、特に、シリコンベースの変調器独自の特性に関連する性能の問題(例えば、減衰)に取り組むように選択された組み合わせで、マルチビット入力データ信号を別々の変調器セグメントを駆動する複数の信号にマッピングするのにデジタルエンコーダを使用するセグメント化したシリコンベースの光学変調器に関する。
【背景技術】
【0003】
何年もの間、光学変調器はニオブ酸リチウムなどの電気光学材料で作られてきた。この電気光学材料の中に光導波器が形成されており、各導波器アームの表面に金属のコンタクト領域が配置されている。連続波(CW)光学信号が導波器に入り、電気データ信号入力が金属のコンタクト領域に入力信号として与えられる。与えられた電気信号は、コンタクト領域の下の導波領域の屈折率を変えて、導波器に沿う伝達速度を変更する。2本のアーム間に位相シフトπを作る電圧を加えることによって、非線形(デジタル)マッハツェンダー変調器が形成される。
【0004】
このタイプの外付け変調器は非常に便利なものであるが、シリコンベースのプラットフォームに様々な光学要素、サブシステム、及びシステムを形成するといった要求が高まっている。更に、このようなシステムに関連する様々な電気部品(例えば、電気光学変調器用の入力電気データ駆動回路)を、同じシリコン基板上の光学部品に一体化することが望まれている。明らかに、このような場合にニオブ酸リチウムベースの電気光学装置を使用することは選択肢ではない。その他の従来の様々な電気光学装置は、同様に、シリコンプラットフォームと直接に互換性がない材料(III−V化合物等)でできている。更に、これらの現場ベースの装置はいずれも、例えば1GB/sを超えるデータレートでは固有の性能に制限があることはよく知られている。特に、ニオブ酸リチウムベースの構成は、移動する波動構造としてモデル化する必要があり、装置を必須の速度で稼働させることが要求される比較的複雑な電気駆動構造を伴う。
【0005】
2005年1月18日に、R.K.Montgomery et al. に発行され、本出願の譲受人に譲渡され、ここに引用として組み込まれている米国特許第6,845,198号に開示されているように、シリコンベースのプラットフォームに光学変調器を設ける能力には有意な進歩があった。図1は、Montgomery et al.特許に開示されているシリコンベースの変調器装置の例示的な一構成を示す。この場合、シリコンベースの光学変調器1は、ドープシリコン層2(通常、ポリシリコン)であって、サブミクロンの厚いシリコン表面層3(この分野では、SOI層と呼ばれる)の逆ドープ部分に重なる構成に配置された層を具える。SOI層3は、従来のシリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造体4の表面層として示されており、この構造体は更に、シリコン基板5と埋め込み酸化物層6を具える。重要なことは、比較的薄い誘電層7(例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸化カリウム、酸化ビスマス、酸化ハフニウム、またはその他の高誘電率電気絶縁材料等)が、SOI層3とドープポリシリコン層2との間のオーバーラップ領域に沿って配設されていることである。ポリシリコン層2と、誘電層7と、SOI層3によって規定されるオーバーラップ領域は、光学変調器1の「活性領域」を規定する。一の実施例では、ポリシリコン層2は、p−型にドープされており、SOI層3はn−型にドープされており、相補型ドープ構造(すなわち、n−型ドープポリシリコン層2とp−型ドープSOI層)もまた用いられている。
【0006】
図2は、変調器1の活性領域を示す拡大図であり、構造体を伝達する信号(紙面に直交する方向)に関連する光強度を示し、ポリシリコン層2とSOI層3との間のオーバーラップ領域の幅Wも示している。作動時に、ドープポリシリコン層2(VREF2)とSOI層3(VREF3)にかかる電圧(すなわち、電気データ入力信号)に応じて、誘電層7の両側に自由キャリアが蓄積し空乏化する。自由キャリア濃度の調節によって、活性領域の有効屈折率が変わり、従って活性領域によって規定された導波路に沿って伝達する光学信号の位相変調を取り入れる。図2では、光学信号は紙面に直交する方向において、y軸に沿って伝達する。
【0007】
図3は、従来のシリコンベースのマッハツェンダー干渉計(MZI)10の一例を示す図であり、この干渉計は、上述したようなシリコンベースの変調装置1を使用するように構成されている。図に示すように、従来のMZI10は、入力導波路部分12と、出力導波路部分14を具える。導波変調器アーム対16と18が示されており、この例では、導波アーム16が上述した変調装置1を有するように形成されている。
【0008】
動作中は、レーザ源(図示せず)からの入射連続波(CW)光信号が、入力導波路部分12にカップリングされる。CW信号は、その後、分かれて導波アーム16と18に沿って伝達する。アーム16に沿って変調器1に電気駆動信号を与えることで、光学信号を変調する所望の位相シフトを提供し、出力導波路14に沿って変調光学出力信号を形成する。電極対20が、変調器1と共に記載されており、これを使用して電気駆動信号(VREF2,VREF3)を提供している。同様の変調装置を導波アーム18に沿って配置して、伝達する光学信号の上に同様に位相遅れを取り入れるようにしてもよい。デジタルドメインで作動中は、論理信号「1」を送信したい場合は電極をオンにし、論理信号「0」を送信したい場合はオフにする。
【0009】
まず、上記に示す従来の変調器の出力電力は、式:
Pout=Pin/2(1+cosΔφ)
で与えられる。ここで、Poutは変調器からの出力電力であり、Poは入力電力であり、Δφは2本のアーム(例えば、図3の変調器10のアーム16及び18)間の正味光学位相差である。この結果、光学出力電力レベルは、2本のアーム間の正味位相シフトφの値を変えることで制御される。図4は、この関係をプロットしたものであり、2本のアーム間の位相シフトの関数としての出力電力を示す(「1」の出力は、最大出力電力Poutに関連し、「0」出力は、最小出力電力Poutに関連する)。すなわち、変調器の2本のアーム間の異なる位相シフトが、建設的干渉(例えば「1」)又は相殺的干渉(例えば「0」)のいずれかを提供する。図示しておらず、説明はないが、変調器などの実装において、DCセクションを利用して、このアームを光学的にバランスさせており、図4に示す転送曲線に沿って所望の位置に操作ポイントを設定することができると解される。
【0010】
最新の信号フォーマットを使用する点において、シリコンベースの光学変調器の分野は改良されている。例えば、本出願人に譲渡された、2009年1月27日にK.Shastri et al.に発行された米国特許第7,483,597号である。この特許は、引用によりここに組み込まれている。この特許に開示されているように、マルチビット電気入力データが用いられており、変調器自体が、トータル長さが位相シフトπに等しく、長さが異なる複数部分を有する少なくとも一の変調器アームを具えるように構成されている。この例示的変調器25が図5に示されている。各分割部分がデジタル論理信号「1」又はデジタル論理信号「0」で駆動され、これらの信号は、デジタル的に「オン」又は「オフ」に駆動されて、マルチレベルの変調を行う。
【0011】
各変調器部分は、変調器アームに沿ったこの部分の位置(すなわち、コサインベースの電力曲線に対するその「位置」)にかかわらず、公称長さで最適化して、絶対値でほぼ同じ電力レベルを提供することができる。図4に示す伝達関数曲線を参照すると、コサイン曲線のピークと谷で動作して、伝達関数のより「急な」中央領域に関連する部分と同じ出力電力変化を提供するには、より長い変調部分が必要であることが明かである。
【0012】
Shastri et al.に開示された構成は、マルチビットデータ信号をシリコンベースの光学変調器を駆動させるのに便利であるが、シリコン中の光学位相変調に用いる自由キャリア分散効果が非線形位相変調応答を示し、一方で位相変調量に比例する減衰を示すことがわかっている。図6(a)は、非線形位相変調応答対印加電をプロットしたものであり、図6(b)は、図5に示す従来技術の装置に対する印加電圧に応じたシリコンベースの光学変調器の減衰をプロットしたものである。図6(a)に示すように、位相変調は約1ボルトより低い印加電圧に対して非線形であり、ここで、図6(b)に示す減衰は、印加電圧が上がるにつれて大きくなって、印加電圧2Vと動作波長1550nmについて、3dB/mmに近い値になっている。
【0013】
このように、シリコンベースの光学変調器に関する分野には、これらのシリコン装置における自由キャリア分散効果に関連する非線形及び減衰の問題を認識し、取り組む必要性がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明は従来技術に足りないものに取り組んでおり、シリコンベースの光学変調器に関する。特に、本発明は導波領域に沿った自由キャリアの分散ベースの変調に関する位相変調非線形及び減衰の問題に取り組むため、変形電気データ入力信号フォーマットを用いたマルチセグメント装置として構成されたシリコンベースの光学変調器に関する。
【0015】
本発明によれば、非線形位相変調と自由キャリア分散ベースの減衰が、Nビットの入力信号に対してM個のセグメント変調器(M≧2N/2)を用いた、マルチセグメント変調器構造を用いることによって軽減される。N−to−Mデジタルエンコーダが変調器構成に含まれており、Nビットの入力信号を変調器セグメントの選択的な駆動に用いる所望のM個の信号へのマッピングに用いる。
【0016】
変調器セグメントの長さを調整することによっても非線形と減衰の問題を解決できることが、本発明の一態様である。追加の位相調整を、変調器の出力地点(足し合わせた導波路を超えて)で使用することができる。
【0017】
有利なことに、デジタル入力信号のコード化によって制御されたマルチ変調器セグメントを具えることによって、セグメント自体に対する入力をデジタル信号の形にすることができ、CMOSベースの構造を用いることが可能となる。
【0018】
本発明の変調器は、限定するものではないが、直交振幅変調(QAM)、QAM−m、スター−QAM、四相位相シフトキーイング(QPSK)、PAM(位相増幅変調)、OFDM(直交周波数分割多重方式)、などを含む様々な高度の変調スキームにより有益であると考えられる。
【0019】
本発明のその他の態様及び更なる態様は、添付図面を参照することによって、以下の説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、例示的なシリコンベースの変調装置の断面図である。
【図2】図2は、図1に記載の装置の活性領域を拡大した図である。
【図3】図3は、図1に示すシリコンベースの変調装置を用いた例示的なマッハツェンダー干渉計(MZI)を示す図である。
【図4】図4は、図3に示すMZIの転送機能を示す図である。
【図5】図5は、マルチレベルの電気入力(データ)信号に使用する例示的なセグメント化したMZIを示す図である。
【図6】図6(a)は、シリコンベースの変調装置の非線形位相応答を示すグラフである。図6(b)は、シリコンベースの変調装置に関連する減衰を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明によって形成した、例示的なセグメント化したシリコンベースの光学変調器を示す図であり、従来技術の位相非直線性と減衰の問題を解決する電気データ入力信号のコード化を提供する。
【図8】図8は、本発明によって形成した、例示的QAM変調器を示す図である。
【図9】図9は、従来技術の3セグメント変調器を用いたQAM−64についての矩形配置図である。
【図10】図10(a)は、本発明によって形成した4セグメントMZIとそれに関連する入力信号エンコーダを使用した、QAM−64の図である。図10(b)は、本発明によって形成した6セグメントMZIとそれに関連する入力信号エンコーダを使用した、QAM−64の図である。
【図11】図11は、本発明の代替の実施例を示す図であり、単一のMZIを用いてQAM信号を提供しており、MZIの出力を超えて配置した追加のセグメントを使用して、更なる補償を提供している。
【図12】図12は、図11の構成の代替実施例であり、変調器構造の各セグメントの長さが異なっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図7は、本発明によって形成した例示的なシリコンベースの光学変調器30を示す図であり、マルチセグメント変調器構成において自由キャリア分散ベースの変調を用いて非線形及び減衰の問題に対処している。図に示すように、変調器30は、上述したものと同じMZIアーキテクチュアを具え、これは、入力導波路12、出力導波路14、及び、一対の導波アーム16、18を有している。CW光学信号は入力導波路12にカップリングされ、「変調した」光学信号が出力導波路14に沿って現れており、導波アーム16、18に沿って配置された変調装置に入力信号として加えた電気入力(データ)信号によって変調が行われる。各導波アーム16、18は、マルチセグメントを具えるものとして、伝達する光学信号へ導入された位相変調の度合いを制御するのに使用する電気(データ)入力信号と共に示されている。
【0022】
特に、光学導波アーム16は、第1の複数セグメント40を具えるものとして示されている。4つ以上のセグメントを使用することもできるが、この場合は、長さが異なる(図7に、L0、L1、L2及びL3として示されている)4つのセグメント41、42、43及び44である。このセグメントの長さは、特に、非線形位相変調と自由キャリアによって誘発される減衰の補償を含む以下に述べる設計基準によって定められている。光学導波アーム18は、第2の複数セグメント50(ここでも、規定された長さの4つのセグメント51、52、53及び54を含む)として形成されている。各セグメントは、図1乃至3に示すように、変調器1の構造と同様に形成することができる。代替的に、この分野で知られているP−N接合シリコンベースの変調器を、本発明の変調器に使用することができる。
【0023】
本発明によれば、入力信号エンコーダ60を用いて、N個の入力電気データ信号ビットセットをM個の電気駆動信号セットに変換して、第1及び第2の複数セグメント40及び50の制御に用いる。上述したように、セグメント数Mは、関係式M≧2N/2によってビット数Nに関連する。図7に示す例示的な実施例では、N=3、M=4である。入力信号エンコーダ40は、8個の可能な入力条件を、3ビットの入力電気データ信号(b0、b1、b2)から、セグメント20、30についての制御信号(M0、M1、M2、M3)にマッピングするよう機能する。出力もデジタル信号であり、CMOSベースの回路素子を変調器の製造に使用できることは、有利である。以下に示す表1は、制御信号M0−M3を生成するのに使用することができる一の例示的エンコードスキームを示す。
【0024】
この場合、入力信号エンコーダ60は、3ビットの電気データ入力信号の8個の可能な入力条件を、M0−M3を制御する8個の可能な16の出力状態にマッピングする。「最も良い」8個の状態をうまく選択することによって、シリコンベースの変調器が、自由キャリア分散ベースの変調に関連する非線形位相応答と、減衰の問題を克服することができる。この表又は関連する図面に明確に示されてはいないが、変調器セグメントに与えられたM個の制御信号の各々は、実際は一対の逆の信号を具えていると解するべきである。更に、追加の一定の位相バイアスが変調器30に与えられており、変調器が所望の動作ポイントで機能するようにしていると解するべきである。
【0025】
図8は、QAM光学変調器100として構成された本発明の実施例を示す。この場合、導波路16は、QAM変調スキームの同相(I)成分に関連し、導波路18は、このスキームの直角位相(Q)成分に関連するものとして示されている。図に示すように、第1のマルチセグメント変調器110と関連する第1の入力信号エンコーダ120は、導波路16に沿って配置されている。第2のマルチセグメント変調器130と関連する第2の入力信号エンコーダ140は、同様に、導波路18に沿って配置されている。アーム16及び18に沿って信号を再結合するためには、π/2位相シフト素子135を変調器130の出力に配置して、直交成分が再整列するようにする。
【0026】
図に示すように、同相データビット入力I0、I1及びI2を第1の入力信号エンコーダ120への入力として用いており、この特定の実施例では、第1の入力信号エンコーダ120は、6つの制御信号M0−M5のセット(特に、6対の相補制御信号)を生成するものとして示されている。この6つの制御信号M0−M5セットを用いて、第1の導波路16−1に沿ったセグメント150と、第2の導波路16−2に沿ったセグメント152として示した、6セグメント変調器構造を制御する。同様に、直交データビット入力Q0、Q1及びQ2セットは、第2の入力信号エンコーダ140への入力として用いられ、ここでも、導波路18−1及び18−2に沿ってそれぞれ配置されたセグメント154と156の6つの制御信号セットを生成する。ここでも、エンコーダ120と140を用いて入力信号ビットを、シリコンベースの光学変調器に関連する非線形の問題と減衰の問題を解決する「最良の」出力信号セットにマッピングする。
【0027】
図9は、QAM−64に関する従来技術の配置図であり、3セグメント変調器を用いて3ビットの入力信号(b0、b1及びb2)を、図8と同様の構成のI及びQ変調器へ直接加えるようにしている(この場合、各変調器に沿って3つのセグメントのみを使用している)。「理想的な」変調器構造によると、等間隔ポイントのアレイでなる配置図ができると解される。しかし、MZIの様々な非線形特性(すなわち、固有の非線形伝達関数や、信号路に沿った減衰の存在と非線形位相変調)は、すべて、仮の配置に対して64の可能なデータ信号のうちのさまざまな信号への偏位の誘発に寄与する。この偏位は、図9に示すように、「外信号」に対して特に問題である。
【0028】
本発明によれば、変調器に用いるセグメント数を増やすことによって、及び、エンコーダによって供給された制御信号入力パターンを賢明に選択することによって、これらの信号に伴う減衰を低減することができる。図10(a)は、4セグメント変調器構造を用いた本発明の実施例の配置図であり、図10(b)は、6セグメント変調器を用いた実施例の配置図である。従来技術の3セグメント構造を超えた改良点を見ることができる。実際、セグメント数を増やすことによって、関連する光学受信機における変調出力信号から回復したデータのエラー率が有意に少なくなる。
【0029】
図11は、単一の変調器200を有するQAM−64を実装した場合の、本発明の代替の実施例を示す図である。64の可能なデータビットをすべて完全に表示するために、位相変調セグメントセット210が出力信号路14に沿って変調器200の「外側」に配置されている。図に示すように、3つの同相データビット(I0、I1及びI2)、並びに3つの直交データビット(Q0、Q1及びQ2)が、入力として単一のエンコーダ220へ加えられる。図11に示す特定の実施例は、6セグメント変調器構造230を具えており、セグメント231、232、233、234、235及び236をそれぞれ分離する駆動信号入力として制御信号M0−M5(及び、この相補信号)を加えて、変調器構造230を形成している。従ってエンコーダ220は、I、Q入力信号を使って、変調器セグメント230の駆動信号のみならず、位相変調セグメント210のデジタル駆動信号φ0、φ1及びφ2も生成している。ここで、セグメント230の長さと駆動信号のパターンも、シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰の問題を解決するように選択されている。
【0030】
特に図示はしていないが、図8に関して上述した本発明の実施例は、更に、出力導波路14に沿って、変調器100の「外側」に配置した複数の位相変調セグメントを具えるように変形することができると解される。
【0031】
いくつかの設計アプリケーションでは、個別基準で各セグメントの長さを最適化する必要がある。特定のシリコンベースの制限(自由キャリア分散ベースの減衰など)は、MZI構造の長さの関数であることが知られており(例えば、図6(a)及び(b)のグラフを参照)、これは、位相変調と、シリコンベースの変調装置の長さ(mm)の関数としての減衰を示す。しかしながら、等比級数に基づいてこの長さを選択することも有利である。例えば、5セグメントの実施例では、この長さは、L/2、L/4、L/8、L/16及びL/32の幾何学的関係にあり、ここでLは、最大光学変調振幅(OMA)や、消光比などのある基準に基づいて選択される。この特別に選択された基準は、特定の実装の設計考察であると考えられ、本発明の要件ではない。図12は、図11の実施例の代替構成300を示す図であり、このようなスキームを、各変調セグメント(MZI300「内部」のセグメント310と、MZI300の「外部」のセグメント320)の長さを規定するのに用いている。この方法では、変調器セグメントがある方法で駆動される結果、L/32インクリメント中の31L/32の有効トータル長さとなる。上述のその他の構成と同様に、好適にプログラムされたエンコーダ330を用いて、MZIのセグメント310に対する第1のデジタル駆動信号セットM0−M4(相補型の)と、出力導波路14に沿って配置された位相セグメント320に対する第2のデジタル駆動信号φ0−φ4(単波)セットとして示した、別のセグメントに対する複数のデジタル駆動信号を提供する。
【0032】
本発明の変調器に使用したコード化技術は、様々な変調スキームに適用できると解される。例示的な変調フォーマットには、限定するものではないが、この分野で振幅偏移変調(ASK)と呼ばれるパルス振幅変調(PAM−n)、QAM−n(矩形並びに星型配置を実装している)、直交周波数分割多重化(OFDM)、などが含まれる。実際、本発明をここに示すいくつかの実施例を参照して説明したが、当業者は本発明の精神と範囲から外れることなく、様々な変更を行うことができると認識される。従って、本発明は、図面に示され、明細書に説明されている事項に限定されることなく、特許請求の範囲に記載されている。
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2009年8月19日に出願された米国暫定特許出願第61/235,106号及び2010年6月16日に出願された米国暫定特許出願61/355,374号の利益を主張する。両出願とも、引用によって個々に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、シリコンベースの光学変調器に関し、特に、シリコンベースの変調器独自の特性に関連する性能の問題(例えば、減衰)に取り組むように選択された組み合わせで、マルチビット入力データ信号を別々の変調器セグメントを駆動する複数の信号にマッピングするのにデジタルエンコーダを使用するセグメント化したシリコンベースの光学変調器に関する。
【背景技術】
【0003】
何年もの間、光学変調器はニオブ酸リチウムなどの電気光学材料で作られてきた。この電気光学材料の中に光導波器が形成されており、各導波器アームの表面に金属のコンタクト領域が配置されている。連続波(CW)光学信号が導波器に入り、電気データ信号入力が金属のコンタクト領域に入力信号として与えられる。与えられた電気信号は、コンタクト領域の下の導波領域の屈折率を変えて、導波器に沿う伝達速度を変更する。2本のアーム間に位相シフトπを作る電圧を加えることによって、非線形(デジタル)マッハツェンダー変調器が形成される。
【0004】
このタイプの外付け変調器は非常に便利なものであるが、シリコンベースのプラットフォームに様々な光学要素、サブシステム、及びシステムを形成するといった要求が高まっている。更に、このようなシステムに関連する様々な電気部品(例えば、電気光学変調器用の入力電気データ駆動回路)を、同じシリコン基板上の光学部品に一体化することが望まれている。明らかに、このような場合にニオブ酸リチウムベースの電気光学装置を使用することは選択肢ではない。その他の従来の様々な電気光学装置は、同様に、シリコンプラットフォームと直接に互換性がない材料(III−V化合物等)でできている。更に、これらの現場ベースの装置はいずれも、例えば1GB/sを超えるデータレートでは固有の性能に制限があることはよく知られている。特に、ニオブ酸リチウムベースの構成は、移動する波動構造としてモデル化する必要があり、装置を必須の速度で稼働させることが要求される比較的複雑な電気駆動構造を伴う。
【0005】
2005年1月18日に、R.K.Montgomery et al. に発行され、本出願の譲受人に譲渡され、ここに引用として組み込まれている米国特許第6,845,198号に開示されているように、シリコンベースのプラットフォームに光学変調器を設ける能力には有意な進歩があった。図1は、Montgomery et al.特許に開示されているシリコンベースの変調器装置の例示的な一構成を示す。この場合、シリコンベースの光学変調器1は、ドープシリコン層2(通常、ポリシリコン)であって、サブミクロンの厚いシリコン表面層3(この分野では、SOI層と呼ばれる)の逆ドープ部分に重なる構成に配置された層を具える。SOI層3は、従来のシリコン・オン・インシュレータ(SOI)構造体4の表面層として示されており、この構造体は更に、シリコン基板5と埋め込み酸化物層6を具える。重要なことは、比較的薄い誘電層7(例えば、二酸化シリコン、窒化シリコン、酸化カリウム、酸化ビスマス、酸化ハフニウム、またはその他の高誘電率電気絶縁材料等)が、SOI層3とドープポリシリコン層2との間のオーバーラップ領域に沿って配設されていることである。ポリシリコン層2と、誘電層7と、SOI層3によって規定されるオーバーラップ領域は、光学変調器1の「活性領域」を規定する。一の実施例では、ポリシリコン層2は、p−型にドープされており、SOI層3はn−型にドープされており、相補型ドープ構造(すなわち、n−型ドープポリシリコン層2とp−型ドープSOI層)もまた用いられている。
【0006】
図2は、変調器1の活性領域を示す拡大図であり、構造体を伝達する信号(紙面に直交する方向)に関連する光強度を示し、ポリシリコン層2とSOI層3との間のオーバーラップ領域の幅Wも示している。作動時に、ドープポリシリコン層2(VREF2)とSOI層3(VREF3)にかかる電圧(すなわち、電気データ入力信号)に応じて、誘電層7の両側に自由キャリアが蓄積し空乏化する。自由キャリア濃度の調節によって、活性領域の有効屈折率が変わり、従って活性領域によって規定された導波路に沿って伝達する光学信号の位相変調を取り入れる。図2では、光学信号は紙面に直交する方向において、y軸に沿って伝達する。
【0007】
図3は、従来のシリコンベースのマッハツェンダー干渉計(MZI)10の一例を示す図であり、この干渉計は、上述したようなシリコンベースの変調装置1を使用するように構成されている。図に示すように、従来のMZI10は、入力導波路部分12と、出力導波路部分14を具える。導波変調器アーム対16と18が示されており、この例では、導波アーム16が上述した変調装置1を有するように形成されている。
【0008】
動作中は、レーザ源(図示せず)からの入射連続波(CW)光信号が、入力導波路部分12にカップリングされる。CW信号は、その後、分かれて導波アーム16と18に沿って伝達する。アーム16に沿って変調器1に電気駆動信号を与えることで、光学信号を変調する所望の位相シフトを提供し、出力導波路14に沿って変調光学出力信号を形成する。電極対20が、変調器1と共に記載されており、これを使用して電気駆動信号(VREF2,VREF3)を提供している。同様の変調装置を導波アーム18に沿って配置して、伝達する光学信号の上に同様に位相遅れを取り入れるようにしてもよい。デジタルドメインで作動中は、論理信号「1」を送信したい場合は電極をオンにし、論理信号「0」を送信したい場合はオフにする。
【0009】
まず、上記に示す従来の変調器の出力電力は、式:
Pout=Pin/2(1+cosΔφ)
で与えられる。ここで、Poutは変調器からの出力電力であり、Poは入力電力であり、Δφは2本のアーム(例えば、図3の変調器10のアーム16及び18)間の正味光学位相差である。この結果、光学出力電力レベルは、2本のアーム間の正味位相シフトφの値を変えることで制御される。図4は、この関係をプロットしたものであり、2本のアーム間の位相シフトの関数としての出力電力を示す(「1」の出力は、最大出力電力Poutに関連し、「0」出力は、最小出力電力Poutに関連する)。すなわち、変調器の2本のアーム間の異なる位相シフトが、建設的干渉(例えば「1」)又は相殺的干渉(例えば「0」)のいずれかを提供する。図示しておらず、説明はないが、変調器などの実装において、DCセクションを利用して、このアームを光学的にバランスさせており、図4に示す転送曲線に沿って所望の位置に操作ポイントを設定することができると解される。
【0010】
最新の信号フォーマットを使用する点において、シリコンベースの光学変調器の分野は改良されている。例えば、本出願人に譲渡された、2009年1月27日にK.Shastri et al.に発行された米国特許第7,483,597号である。この特許は、引用によりここに組み込まれている。この特許に開示されているように、マルチビット電気入力データが用いられており、変調器自体が、トータル長さが位相シフトπに等しく、長さが異なる複数部分を有する少なくとも一の変調器アームを具えるように構成されている。この例示的変調器25が図5に示されている。各分割部分がデジタル論理信号「1」又はデジタル論理信号「0」で駆動され、これらの信号は、デジタル的に「オン」又は「オフ」に駆動されて、マルチレベルの変調を行う。
【0011】
各変調器部分は、変調器アームに沿ったこの部分の位置(すなわち、コサインベースの電力曲線に対するその「位置」)にかかわらず、公称長さで最適化して、絶対値でほぼ同じ電力レベルを提供することができる。図4に示す伝達関数曲線を参照すると、コサイン曲線のピークと谷で動作して、伝達関数のより「急な」中央領域に関連する部分と同じ出力電力変化を提供するには、より長い変調部分が必要であることが明かである。
【0012】
Shastri et al.に開示された構成は、マルチビットデータ信号をシリコンベースの光学変調器を駆動させるのに便利であるが、シリコン中の光学位相変調に用いる自由キャリア分散効果が非線形位相変調応答を示し、一方で位相変調量に比例する減衰を示すことがわかっている。図6(a)は、非線形位相変調応答対印加電をプロットしたものであり、図6(b)は、図5に示す従来技術の装置に対する印加電圧に応じたシリコンベースの光学変調器の減衰をプロットしたものである。図6(a)に示すように、位相変調は約1ボルトより低い印加電圧に対して非線形であり、ここで、図6(b)に示す減衰は、印加電圧が上がるにつれて大きくなって、印加電圧2Vと動作波長1550nmについて、3dB/mmに近い値になっている。
【0013】
このように、シリコンベースの光学変調器に関する分野には、これらのシリコン装置における自由キャリア分散効果に関連する非線形及び減衰の問題を認識し、取り組む必要性がある。
【発明の概要】
【0014】
本発明は従来技術に足りないものに取り組んでおり、シリコンベースの光学変調器に関する。特に、本発明は導波領域に沿った自由キャリアの分散ベースの変調に関する位相変調非線形及び減衰の問題に取り組むため、変形電気データ入力信号フォーマットを用いたマルチセグメント装置として構成されたシリコンベースの光学変調器に関する。
【0015】
本発明によれば、非線形位相変調と自由キャリア分散ベースの減衰が、Nビットの入力信号に対してM個のセグメント変調器(M≧2N/2)を用いた、マルチセグメント変調器構造を用いることによって軽減される。N−to−Mデジタルエンコーダが変調器構成に含まれており、Nビットの入力信号を変調器セグメントの選択的な駆動に用いる所望のM個の信号へのマッピングに用いる。
【0016】
変調器セグメントの長さを調整することによっても非線形と減衰の問題を解決できることが、本発明の一態様である。追加の位相調整を、変調器の出力地点(足し合わせた導波路を超えて)で使用することができる。
【0017】
有利なことに、デジタル入力信号のコード化によって制御されたマルチ変調器セグメントを具えることによって、セグメント自体に対する入力をデジタル信号の形にすることができ、CMOSベースの構造を用いることが可能となる。
【0018】
本発明の変調器は、限定するものではないが、直交振幅変調(QAM)、QAM−m、スター−QAM、四相位相シフトキーイング(QPSK)、PAM(位相増幅変調)、OFDM(直交周波数分割多重方式)、などを含む様々な高度の変調スキームにより有益であると考えられる。
【0019】
本発明のその他の態様及び更なる態様は、添付図面を参照することによって、以下の説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、例示的なシリコンベースの変調装置の断面図である。
【図2】図2は、図1に記載の装置の活性領域を拡大した図である。
【図3】図3は、図1に示すシリコンベースの変調装置を用いた例示的なマッハツェンダー干渉計(MZI)を示す図である。
【図4】図4は、図3に示すMZIの転送機能を示す図である。
【図5】図5は、マルチレベルの電気入力(データ)信号に使用する例示的なセグメント化したMZIを示す図である。
【図6】図6(a)は、シリコンベースの変調装置の非線形位相応答を示すグラフである。図6(b)は、シリコンベースの変調装置に関連する減衰を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明によって形成した、例示的なセグメント化したシリコンベースの光学変調器を示す図であり、従来技術の位相非直線性と減衰の問題を解決する電気データ入力信号のコード化を提供する。
【図8】図8は、本発明によって形成した、例示的QAM変調器を示す図である。
【図9】図9は、従来技術の3セグメント変調器を用いたQAM−64についての矩形配置図である。
【図10】図10(a)は、本発明によって形成した4セグメントMZIとそれに関連する入力信号エンコーダを使用した、QAM−64の図である。図10(b)は、本発明によって形成した6セグメントMZIとそれに関連する入力信号エンコーダを使用した、QAM−64の図である。
【図11】図11は、本発明の代替の実施例を示す図であり、単一のMZIを用いてQAM信号を提供しており、MZIの出力を超えて配置した追加のセグメントを使用して、更なる補償を提供している。
【図12】図12は、図11の構成の代替実施例であり、変調器構造の各セグメントの長さが異なっている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図7は、本発明によって形成した例示的なシリコンベースの光学変調器30を示す図であり、マルチセグメント変調器構成において自由キャリア分散ベースの変調を用いて非線形及び減衰の問題に対処している。図に示すように、変調器30は、上述したものと同じMZIアーキテクチュアを具え、これは、入力導波路12、出力導波路14、及び、一対の導波アーム16、18を有している。CW光学信号は入力導波路12にカップリングされ、「変調した」光学信号が出力導波路14に沿って現れており、導波アーム16、18に沿って配置された変調装置に入力信号として加えた電気入力(データ)信号によって変調が行われる。各導波アーム16、18は、マルチセグメントを具えるものとして、伝達する光学信号へ導入された位相変調の度合いを制御するのに使用する電気(データ)入力信号と共に示されている。
【0022】
特に、光学導波アーム16は、第1の複数セグメント40を具えるものとして示されている。4つ以上のセグメントを使用することもできるが、この場合は、長さが異なる(図7に、L0、L1、L2及びL3として示されている)4つのセグメント41、42、43及び44である。このセグメントの長さは、特に、非線形位相変調と自由キャリアによって誘発される減衰の補償を含む以下に述べる設計基準によって定められている。光学導波アーム18は、第2の複数セグメント50(ここでも、規定された長さの4つのセグメント51、52、53及び54を含む)として形成されている。各セグメントは、図1乃至3に示すように、変調器1の構造と同様に形成することができる。代替的に、この分野で知られているP−N接合シリコンベースの変調器を、本発明の変調器に使用することができる。
【0023】
本発明によれば、入力信号エンコーダ60を用いて、N個の入力電気データ信号ビットセットをM個の電気駆動信号セットに変換して、第1及び第2の複数セグメント40及び50の制御に用いる。上述したように、セグメント数Mは、関係式M≧2N/2によってビット数Nに関連する。図7に示す例示的な実施例では、N=3、M=4である。入力信号エンコーダ40は、8個の可能な入力条件を、3ビットの入力電気データ信号(b0、b1、b2)から、セグメント20、30についての制御信号(M0、M1、M2、M3)にマッピングするよう機能する。出力もデジタル信号であり、CMOSベースの回路素子を変調器の製造に使用できることは、有利である。以下に示す表1は、制御信号M0−M3を生成するのに使用することができる一の例示的エンコードスキームを示す。
【0024】
この場合、入力信号エンコーダ60は、3ビットの電気データ入力信号の8個の可能な入力条件を、M0−M3を制御する8個の可能な16の出力状態にマッピングする。「最も良い」8個の状態をうまく選択することによって、シリコンベースの変調器が、自由キャリア分散ベースの変調に関連する非線形位相応答と、減衰の問題を克服することができる。この表又は関連する図面に明確に示されてはいないが、変調器セグメントに与えられたM個の制御信号の各々は、実際は一対の逆の信号を具えていると解するべきである。更に、追加の一定の位相バイアスが変調器30に与えられており、変調器が所望の動作ポイントで機能するようにしていると解するべきである。
【0025】
図8は、QAM光学変調器100として構成された本発明の実施例を示す。この場合、導波路16は、QAM変調スキームの同相(I)成分に関連し、導波路18は、このスキームの直角位相(Q)成分に関連するものとして示されている。図に示すように、第1のマルチセグメント変調器110と関連する第1の入力信号エンコーダ120は、導波路16に沿って配置されている。第2のマルチセグメント変調器130と関連する第2の入力信号エンコーダ140は、同様に、導波路18に沿って配置されている。アーム16及び18に沿って信号を再結合するためには、π/2位相シフト素子135を変調器130の出力に配置して、直交成分が再整列するようにする。
【0026】
図に示すように、同相データビット入力I0、I1及びI2を第1の入力信号エンコーダ120への入力として用いており、この特定の実施例では、第1の入力信号エンコーダ120は、6つの制御信号M0−M5のセット(特に、6対の相補制御信号)を生成するものとして示されている。この6つの制御信号M0−M5セットを用いて、第1の導波路16−1に沿ったセグメント150と、第2の導波路16−2に沿ったセグメント152として示した、6セグメント変調器構造を制御する。同様に、直交データビット入力Q0、Q1及びQ2セットは、第2の入力信号エンコーダ140への入力として用いられ、ここでも、導波路18−1及び18−2に沿ってそれぞれ配置されたセグメント154と156の6つの制御信号セットを生成する。ここでも、エンコーダ120と140を用いて入力信号ビットを、シリコンベースの光学変調器に関連する非線形の問題と減衰の問題を解決する「最良の」出力信号セットにマッピングする。
【0027】
図9は、QAM−64に関する従来技術の配置図であり、3セグメント変調器を用いて3ビットの入力信号(b0、b1及びb2)を、図8と同様の構成のI及びQ変調器へ直接加えるようにしている(この場合、各変調器に沿って3つのセグメントのみを使用している)。「理想的な」変調器構造によると、等間隔ポイントのアレイでなる配置図ができると解される。しかし、MZIの様々な非線形特性(すなわち、固有の非線形伝達関数や、信号路に沿った減衰の存在と非線形位相変調)は、すべて、仮の配置に対して64の可能なデータ信号のうちのさまざまな信号への偏位の誘発に寄与する。この偏位は、図9に示すように、「外信号」に対して特に問題である。
【0028】
本発明によれば、変調器に用いるセグメント数を増やすことによって、及び、エンコーダによって供給された制御信号入力パターンを賢明に選択することによって、これらの信号に伴う減衰を低減することができる。図10(a)は、4セグメント変調器構造を用いた本発明の実施例の配置図であり、図10(b)は、6セグメント変調器を用いた実施例の配置図である。従来技術の3セグメント構造を超えた改良点を見ることができる。実際、セグメント数を増やすことによって、関連する光学受信機における変調出力信号から回復したデータのエラー率が有意に少なくなる。
【0029】
図11は、単一の変調器200を有するQAM−64を実装した場合の、本発明の代替の実施例を示す図である。64の可能なデータビットをすべて完全に表示するために、位相変調セグメントセット210が出力信号路14に沿って変調器200の「外側」に配置されている。図に示すように、3つの同相データビット(I0、I1及びI2)、並びに3つの直交データビット(Q0、Q1及びQ2)が、入力として単一のエンコーダ220へ加えられる。図11に示す特定の実施例は、6セグメント変調器構造230を具えており、セグメント231、232、233、234、235及び236をそれぞれ分離する駆動信号入力として制御信号M0−M5(及び、この相補信号)を加えて、変調器構造230を形成している。従ってエンコーダ220は、I、Q入力信号を使って、変調器セグメント230の駆動信号のみならず、位相変調セグメント210のデジタル駆動信号φ0、φ1及びφ2も生成している。ここで、セグメント230の長さと駆動信号のパターンも、シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰の問題を解決するように選択されている。
【0030】
特に図示はしていないが、図8に関して上述した本発明の実施例は、更に、出力導波路14に沿って、変調器100の「外側」に配置した複数の位相変調セグメントを具えるように変形することができると解される。
【0031】
いくつかの設計アプリケーションでは、個別基準で各セグメントの長さを最適化する必要がある。特定のシリコンベースの制限(自由キャリア分散ベースの減衰など)は、MZI構造の長さの関数であることが知られており(例えば、図6(a)及び(b)のグラフを参照)、これは、位相変調と、シリコンベースの変調装置の長さ(mm)の関数としての減衰を示す。しかしながら、等比級数に基づいてこの長さを選択することも有利である。例えば、5セグメントの実施例では、この長さは、L/2、L/4、L/8、L/16及びL/32の幾何学的関係にあり、ここでLは、最大光学変調振幅(OMA)や、消光比などのある基準に基づいて選択される。この特別に選択された基準は、特定の実装の設計考察であると考えられ、本発明の要件ではない。図12は、図11の実施例の代替構成300を示す図であり、このようなスキームを、各変調セグメント(MZI300「内部」のセグメント310と、MZI300の「外部」のセグメント320)の長さを規定するのに用いている。この方法では、変調器セグメントがある方法で駆動される結果、L/32インクリメント中の31L/32の有効トータル長さとなる。上述のその他の構成と同様に、好適にプログラムされたエンコーダ330を用いて、MZIのセグメント310に対する第1のデジタル駆動信号セットM0−M4(相補型の)と、出力導波路14に沿って配置された位相セグメント320に対する第2のデジタル駆動信号φ0−φ4(単波)セットとして示した、別のセグメントに対する複数のデジタル駆動信号を提供する。
【0032】
本発明の変調器に使用したコード化技術は、様々な変調スキームに適用できると解される。例示的な変調フォーマットには、限定するものではないが、この分野で振幅偏移変調(ASK)と呼ばれるパルス振幅変調(PAM−n)、QAM−n(矩形並びに星型配置を実装している)、直交周波数分割多重化(OFDM)、などが含まれる。実際、本発明をここに示すいくつかの実施例を参照して説明したが、当業者は本発明の精神と範囲から外れることなく、様々な変更を行うことができると認識される。従って、本発明は、図面に示され、明細書に説明されている事項に限定されることなく、特許請求の範囲に記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−ビットの電気データ信号を変調光学出力信号に変換するシリコンベースの光学変調装置において:
連続波(CW)光学入力信号を受信する入力導波部分と;
前記入力導波部分の出力に接続された、前記CW光学入力信号を1対のCW光学信号に分割する入力光学スプリッタと;
前記入力光学スプリッタの出力に接続された一対の光学導波路であって、前記一対のCW光学信号の伝達を支持する一対の変調器アームを形成し、少なくとも一方の変調器アームが複数のM個の変調器セグメントに区分けされた、一対の光学導波路と;
前記N−ビットの電気データ信号を、前記複数のM変調セグメント用の複数M個の駆動信号に、M≧2N/2で変換し、当該複数M個の駆動信号が前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、デジタルエンコーダと;
前記一対の変調光学信号を、変調した光学出力信号に組み入れる出力光学コンバイナと;
前記変調した光学出力信号の伝達をサポートするために、前記出力光学コンバイナの出力に接続された出力導波部分と;
を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、各変調器アームが複数M個の変調器セグメントに区分けされており、前記デジタルエンコーダが複数M対の駆動信号を提供することを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数M対の駆動信号が、複数M対の相補駆動信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記変調装置が更に、前記出力導波部分に沿って配置されており、前記デジタルエンコーダからの駆動信号出力によって制御される複数の位相変調セグメントを具えることを特徴とする光学変調装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数M個の駆動信号が、複数のデジタル信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数のデジタル信号が、複数のCMOS対応のデジタル信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項7】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数の変調器セグメントが、前記シリコンベースの変調装置に関連する減衰の存在下で、所定の光学変調振幅(OMA)を提供するように選択された、組み合わせた長さLを示すように構成されていることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項8】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数の変調器セグメントが、前記シリコンベースの変調装置に関連する減衰の存在下で、所定の消光比を提供するように選択された、組み合わせた長さLを示すように構成されていることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項9】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数のセグメントが、組み合わせた長さLを示すように構成されており、ここで、個々のセグメントの長さはL/2n、n=1、2、3、・・・に基づくことを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項10】
シリコンベースの直交振幅変調(QAM)光学装置において:
連続波(CW)光学入力信号を受信する入力導波部分と;
前記入力導波部分の出力に接続された、前記CW光学入力信号を1対のCW光学信号に分割する入力光学スプリッタと;
前記入力光学スプリッタの出力に接続された一対の光学導波路アームと;
前記一対の光学導波路アームのうちの第1の光学導波路アームであって、
前記CW光学信号の第1の部分の伝達をサポートする第1の変調器アーム対を作る第1の光学スプリッタであって、前記第1の変調器アーム対の各変調アームが第1の複数のM変調器セグメントに区分けされている、第1の光学スプリッタと;
QAMデータ信号を第1の複数のM変調器セグメント用の第1の複数のM駆動信号に変換する第1のデジタルエンコーダであって、前記第1の複数のM駆動信号が、前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、第1のデジタルエンコーダと;
前記第1の変調器アーム対の各変調器アームに沿って伝達する変調光学信号を組み合わせる第1の光学コンバイナと;
を具える第1の光学導波路アームと;
前記1対の光学導波路アームの第2の光学導波路アームであって、更に、
前記CW光学信号の第2の部分の伝達をサポートする第2の変調器アーム対を作る第2の光学スプリッタであって、前記第2の変調器アーム対の各変調器アームが第2の複数のM変調器セグメントに区分けされている、第2の光学スプリッタと;
QAMデータ信号を第2の複数のM変調器セグメント用の第2の複数のM駆動信号に変換する第2のデジタルエンコーダであって、前記第2の複数のM駆動信号が、前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、第2のデジタルエンコーダと;
前記第2の変調器アーム対の各変調器アームに沿って伝達する変調光学信号を組み合わせる第2の光学コンバイナと;
を具える第2の光学導波路アームと;
前記第2の光学コンバイナの出力に配置したπ/2位相シフト素子と;
前記第1及び第2の光学コンバイナの出力における変調光学信号対を、QAM変調光学出力信号に組み合わせる出力光学コンバイナと;
前記QAM変調光学出力信号の伝達をサポートする前記出力光学コンバイナの出力に接続した出力導波路部分と;
を具えることを特徴とするシリコンベースの直交振幅変調(QAM)光学装置。
【請求項1】
N−ビットの電気データ信号を変調光学出力信号に変換するシリコンベースの光学変調装置において:
連続波(CW)光学入力信号を受信する入力導波部分と;
前記入力導波部分の出力に接続された、前記CW光学入力信号を1対のCW光学信号に分割する入力光学スプリッタと;
前記入力光学スプリッタの出力に接続された一対の光学導波路であって、前記一対のCW光学信号の伝達を支持する一対の変調器アームを形成し、少なくとも一方の変調器アームが複数のM個の変調器セグメントに区分けされた、一対の光学導波路と;
前記N−ビットの電気データ信号を、前記複数のM変調セグメント用の複数M個の駆動信号に、M≧2N/2で変換し、当該複数M個の駆動信号が前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、デジタルエンコーダと;
前記一対の変調光学信号を、変調した光学出力信号に組み入れる出力光学コンバイナと;
前記変調した光学出力信号の伝達をサポートするために、前記出力光学コンバイナの出力に接続された出力導波部分と;
を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、各変調器アームが複数M個の変調器セグメントに区分けされており、前記デジタルエンコーダが複数M対の駆動信号を提供することを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数M対の駆動信号が、複数M対の相補駆動信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記変調装置が更に、前記出力導波部分に沿って配置されており、前記デジタルエンコーダからの駆動信号出力によって制御される複数の位相変調セグメントを具えることを特徴とする光学変調装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数M個の駆動信号が、複数のデジタル信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項6】
請求項5に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数のデジタル信号が、複数のCMOS対応のデジタル信号を具えることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項7】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数の変調器セグメントが、前記シリコンベースの変調装置に関連する減衰の存在下で、所定の光学変調振幅(OMA)を提供するように選択された、組み合わせた長さLを示すように構成されていることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項8】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数の変調器セグメントが、前記シリコンベースの変調装置に関連する減衰の存在下で、所定の消光比を提供するように選択された、組み合わせた長さLを示すように構成されていることを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項9】
請求項1に記載のシリコンベースの光学変調装置において、前記複数のセグメントが、組み合わせた長さLを示すように構成されており、ここで、個々のセグメントの長さはL/2n、n=1、2、3、・・・に基づくことを特徴とするシリコンベースの光学変調装置。
【請求項10】
シリコンベースの直交振幅変調(QAM)光学装置において:
連続波(CW)光学入力信号を受信する入力導波部分と;
前記入力導波部分の出力に接続された、前記CW光学入力信号を1対のCW光学信号に分割する入力光学スプリッタと;
前記入力光学スプリッタの出力に接続された一対の光学導波路アームと;
前記一対の光学導波路アームのうちの第1の光学導波路アームであって、
前記CW光学信号の第1の部分の伝達をサポートする第1の変調器アーム対を作る第1の光学スプリッタであって、前記第1の変調器アーム対の各変調アームが第1の複数のM変調器セグメントに区分けされている、第1の光学スプリッタと;
QAMデータ信号を第1の複数のM変調器セグメント用の第1の複数のM駆動信号に変換する第1のデジタルエンコーダであって、前記第1の複数のM駆動信号が、前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、第1のデジタルエンコーダと;
前記第1の変調器アーム対の各変調器アームに沿って伝達する変調光学信号を組み合わせる第1の光学コンバイナと;
を具える第1の光学導波路アームと;
前記1対の光学導波路アームの第2の光学導波路アームであって、更に、
前記CW光学信号の第2の部分の伝達をサポートする第2の変調器アーム対を作る第2の光学スプリッタであって、前記第2の変調器アーム対の各変調器アームが第2の複数のM変調器セグメントに区分けされている、第2の光学スプリッタと;
QAMデータ信号を第2の複数のM変調器セグメント用の第2の複数のM駆動信号に変換する第2のデジタルエンコーダであって、前記第2の複数のM駆動信号が、前記シリコンベースの光学変調装置に関連する減衰を補償するように選択されている、第2のデジタルエンコーダと;
前記第2の変調器アーム対の各変調器アームに沿って伝達する変調光学信号を組み合わせる第2の光学コンバイナと;
を具える第2の光学導波路アームと;
前記第2の光学コンバイナの出力に配置したπ/2位相シフト素子と;
前記第1及び第2の光学コンバイナの出力における変調光学信号対を、QAM変調光学出力信号に組み合わせる出力光学コンバイナと;
前記QAM変調光学出力信号の伝達をサポートする前記出力光学コンバイナの出力に接続した出力導波路部分と;
を具えることを特徴とするシリコンベースの直交振幅変調(QAM)光学装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10(a)】
【図10(b)】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−502613(P2013−502613A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525623(P2012−525623)
【出願日】平成22年8月14日(2010.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/045555
【国際公開番号】WO2011/022308
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(509170693)ライトワイヤー,インク. (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月14日(2010.8.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/045555
【国際公開番号】WO2011/022308
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(509170693)ライトワイヤー,インク. (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]