説明

シリコンマイクロスフィア及びフォトニックスポンジ並びにフォトニック素子の製造におけるそれらの製作及び使用方法

【解決手段】
本発明は、1ミクロンから15ミクロンの範囲の波長においてミー共振モードにて光学マイクロキャビティとして機能する0.1ミクロンから50ミクロンの範囲の直径を有したシリコンのマイクロスフィアと、それから形成されるフォトスポンジとに関する。その製作は、加熱による気相前駆物質の分解に基づく簡単な方法で達成される。これらマイクロスフィアとフォトニックスポンジは、例えば太陽電池、フォトダイオード、レーザー及びセンサーであるフォトニック素子の製作に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に極微小構造物質の製造分野に関する。特に、光学マイクロキャビティ及びフォトニック素子の分野並びに光起電セル、レーザー及びセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
微小キャビティ内での電磁気エネルギーの封じ込みは大きな可能性を秘めた現象である。特に、波長程度のサイズのキャビティ内での可視光範囲及び近赤外線範囲の光共鳴は世界中の研究者やマイクロエレクトロニクス業界によって研究されている。このようなタイプのキャビティ(マイクロキャビティ)内への電磁場の封じ込み現象は様々な分野における利用の可能性を秘めている。
【0003】
まずは、マイクロキャビティはミクロン単位のフォトニック素子、例えばマルチプレキサー及びデマルチプレキサーの製作において必須要素である(S・ノダ、A・チュチナン、M・イマダ「ネイチャー」407、608、2000)。同時に、マイクロキャビティは、特に、例えばラマン相互作用のような非線形光学相互作用を活用する。これはマイクロキャビティに近接する液体又は気体の検出に利用が可能である。別タイプの利用形態は発光また光を検出するミクロサイズの素子であり、例えば活性物質をマイクロキャビティ内に入れることで製造されるマイクロレーザーが存在する(O・ペインタ、R・K・リー、A・シェラー、A・ヤリフ、J・D・オブライエン、P・D・ダプクス、I・キム「科学」284、1819、1999)。
【0004】
保存エネルギー量とサイクルあたりで消費されるエネルギー量との比として定義される高線質係数(Q)での共振(共鳴)モードを可能にするマイクロキャビティの開発(電磁場閉じ込め量(V)は極少)は、量子ポイントや単原子ガスのごとく明確に定義されている電子レベルでの物質の利用を通じて量子電磁力学の実験を可能にした。このようにパーセル効果(Purcell effect)やラビスプリット(Rabi splitting)を観察することが可能になった(K・ヘネシ、A・バドラト、M・ウィンガ、D・ジェラス、M・アタチュール、S・ギルド、S・ファルト、E・L・フ、A・イマモグル「ネイチャー」445、896、2007)。
【0005】
今日までに製作された様々なタイプのマイクロキャビティは、マイクロピラー、マイクロディスク、フォトニック結晶キャビティ、マイクロスフィア及びマイクロトロイドである(K・J・バハラ、424、839、2003)。
【0006】
それら全てにおいて物理現象はQ/V比により決定される。前述の現象が起きるためには高Q値と低V値とが必要である。線質係数は様々な要因に依存し、例えば、マクロキャビティの屈折率、共振メカニズム、等々に基づく。ウィスパーギャラリーモード(囁き回廊モード)共振器(whispering gallery mode resonator)は今日までに達成された最高線質係数を提供する。Q値の最高値8xE9は酸化ケイ素マイクロスフィアにて達成された(M・L・ゴロデトスキー、A・A・サブチェンコフ、V・S・イルチェンコ「光学」21、453、1996)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、それらの直径及び体積Vは相対的に大きく、数十ミクロンになる。この理由は球体と雰囲気ガスとの間の屈折率の低コントラスト(n_球体/n_空気=1.45)と、球体内の全体光内部反射である関連共振メカニズムとによる。高Q値を維持しつつ球体サイズを減少させる1つの方法はその屈折率を増加させることである。このことは、例えば球をシリコンにより作成すれば可能である。この場合、近赤外線近辺での屈折率のコントラストはn_球体/n_空気=3.5となるであろう。
【0008】
シリコン球を製造するのに今日まで利用されてきた様々な方法が存在する。例えば、米国特許5069740及び4637855に解説されている方法が存在する。しかし、これらの方法が製作するのは本発明のものよりずっと大きなサイズの球体である。それらは0.5mm以上の直径を有する。それら発明は光起電セルの分野での利用を想定して為されたものである。なぜなら、ミリサイズのシリコン球は、その幾何学的形状によって光を平坦構造物よりも多量に捕獲することができるからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの形態は、そのキャビティが制御され、シリコンが透明(透過性)である1ミクロンから15ミクロンの範囲の波長に対してミー共鳴する光学マイクロキャビティとして機能することができる長形が0.1ミクロンから50ミクロン、好適には0.5ミクロンから5ミクロンのシリコン製マイクロスフィアである。
【0010】
本発明の別形態は、湾曲表面その他の表面上に積み重ね状態にてコーティング状又は層状である1物質又は異なる複数物質による多数のユニットで成る本発明のマイクロスフィアの集塊体またはランダム分布体により形成される本発明のフォトニックスポンジである。これらスポンジは、シリコンが透過性となる1ミクロンから15ミクロンである波長範囲にて光を非常に小さな空間に封じ込めることができる。
【0011】
本発明の別形態は本発明のマイクロスフィアの製造方法であり、以下のステップを含む(図6参照):
(a)化学蒸着用構造体にて使用する反応バイアル又は反応容器(2)の材料、容積及び形状、並びにその内部の基板(5)の材料、形状及び位置の選択及び構成のステップ;
(b)反応器/バイアル内に入れられたガス(気体)状であるシリコンの前駆化合物(好適にはシラン及び/又はジシラン)の加熱による分解ステップ(適正な圧力、温度及び時間条件下);
(c)ガス内に散布し、ガスの中央部に(好適にはシリコンである)物質の核を形成する化学蒸着を利用する本発明のマイクロスフィア合成ステップ;
(d)降雨形態によるマイクロスフィアの沈殿又は堆積及び容器内又は容器壁上の基板上へのマイクロスフィア堆積ステップ。(例参照);
(e)フォトニックスポンジの形成ステップ;
(f)化学蒸着用構造物を利用した容器又はバイアル(2)からの余剰ガス排出ステップ;
(g)容器又はバイアル(b)を開封し、続く精製ステップのために容器と基板(d)に接着したマイクロスフィア及びフォトニックスポンジを取り出すステップ。
【0012】
最後の本発明の別な形態は、例えば太陽電池、フィトダイオード、レーザー及びセンサーのごときフォトニック素子の製作における本発明のマイクロスフィア及びフォトニックスポンジの利用である。
【0013】
本発明のマイクロスフィア及びフォトニックスポンジは、光起電セル、フォトダイオード、レーザー及び化学/生物学センサー、等々である様々な素子において利用可能である光の捕獲のための新規なアイデアに基づく。事実、この新アイデアは2現象の連携に基づく。その一方はマイクロスフィア内での光の共振である。それでは他方の現象とは何であろう。この疑問には明確な回答がない。
【0014】
この共振の結果、発光エネルギーは内部に集中し、続いてその集中は、2以上の光子の同時吸収のごとき共振が利用される非線形光学現象を導く。この現象の太陽電池及びフォトダイオードへの利用は非常に類似している。なぜならホモ接合p-n又はp-i-n型のヘテロ接合における光子の検出に基づくからである。これでその吸収範囲を太陽スペクトル全体にまで広げることが可能となる。共振現象自体はレーザーのごとき他の利用形態にて利用が可能である。よって、もし蛍光物質がその表面に導かれ、あるいはその表面で吸収されると、これらマイクロキャビティは非常に小さな共振キャビティとして作用し、蛍光色素の発光を励起し、ポピュレーションインバージョン(population inversion)現象を引き起こし、レーザー現象を発生させる。
【0015】
センサーへの利用は次の事実に基づく。すなわちマイクロキャビティ内での共振は異なる周波数(又は波長)で現れる。この現象には透過率の最低化が関与する。シリコン球は処理パラメータに従った孔質を提供するためにセンサーとして機能する。もし球体の孔部内に化学生成物又は生物生成物が侵入すればマイクロキャビティの屈折率を変えるであろう。従って共振が波長ポジションを変化させるために物質が検出される。
【0016】
シリコン球は0.1ミクロンから50ミクロンの直径を有しているものとして解説されており、それを得る方法が説明されている。特に、これらマイクロスフィアは図1(a)で示す分散形態であり、図1(b)で示す制御された孔質性、球状性及び非常に平滑な表面形状を有する。よってこのマイクロスフィアはミー共鳴又はウィスパーギャラリーモードで作用する光学マイクロキャビティとして機能する。そのサイズ(直径50ミクロン以内)と、シリコンが透過性となるスペクトル範囲においては、これら共振はシリコンが透過性であるスペクトル範囲1ミクロンから15ミクロンで現れる。
【0017】
図2は直径が1.88ミクロンである球体の光透過率の測定値(赤色)を示す。また図2はこのサイズの球体(多結晶シリコンであると想定)のミー理論(Mie theory)による光透過率の理論的計算値(黒色)を示す。これらピーク値と透過スペクトルのピーク値の一致が明確に観察できる。さらに図2は異なるモードのマイクロキャビティ(amn及びbmn:mとnは1、2、3、4、5、6、・・・・・)の異なる共振状態の指定を示す。図2はまたモードの電磁場(b31及びb42)の空間分布の計算を示す。
【0018】
スペクトロメータの限定された解像性能により透過スペクトルのピークから導かれる最高線質係数は1000である。さらに高い解像ピーク又は共振性を有するスペクトロメータを利用すればさらに高い線質係数の共振が観察されるのは当然である。特に、実行された計算は、それらの一部は1xE9の範囲の線質係数に到達することができ、1立方ミクロン程度の非常に小さな領域内に電磁場を封じ込めることができることを示す。これら周波数範囲では共振が発生しないことが確認される同一サイズである酸化ケイ素球体内の光透過率の理論計算値(緑色)も示されている。
【0019】
例示するように、マイクロスフィアは数個のユニットによる集落形態又は節目形態及びフォトニックスポンジを形成する多数のユニットによる集塊形態又は重合形態の分離状態で現れる(図3)。それら集塊体又は集落体となっているマイクロスフィアを物理的に分離させることは容易である。この分離は慎重な削取処理あるいは精巧な研削処理又は超音波処理によって可能である。
【0020】
このようにフォトニックスポンジはマイクロスフィアの集塊体又はランダム分布によって形成され、得ることができる。これらスポンジは、特に1ミクロンから15ミクロンであるシリコンが透明となる波長範囲にて光を非常に小さなスペース(球体サイズ)に封じ込め、検出させる。この光の封じ込みはミー共振の観点から説明することが可能であり、光子の平均自由移動経路が粒子間の距離に匹敵するアンダーソン光子封じ込み(Anderson photon localization)のごとき非線形光学現象の発生を利用する。図3は約60ミクロン厚のフォトニックスポンジの低倍率電子顕微鏡図である。挿入部は高倍率のスポンジの一部である。比較のため、図4は単結晶シリコンのウェハ上に成長した13ミクロン厚のスポンジの光透過スペクトルと、フォトニックスポンジのない同一ウェハの光透過スペクトルとを示す。
【0021】
グリッドの光子による16ミクロン周囲での吸収ピークとは別に、シリコンスポンジが透過スペクトルにどのように境界を与えるか明確に観察できる。この境界の平均ポイントは15ミクロンとすることができる。この理由は、15ミクロン以下の波長では拡散タイプはミー型となり、光の封じ込めが発生するからである。一方、15ミクロン以上の波長では拡散はレイリー型であり、粒子サイズが光の波長よりも小さいときに典型的なものである。
【0022】
測定されたスポンジにおける球体サイズの統計的測定は、平均径1.8ミクロンで標準偏差0.5ミクロンのガウス分布を提供する。図4はこの球体分布のミー拡散の実効断面積の計算値を示す。その計算結果はスポンジの透過スペクトルに対する相補曲線となる。赤帯部分はレイリー拡散からミー拡散への移動を説明している。
【0023】
従来のものとは異なる平均球体サイズのスポンジは15ミクロンへの異なるポジションに位置する透過スペクトルの境界を与える。同様に、分布の標準偏差の変化は標準偏差がさらに低い又は高いかによって明瞭性がさらに多く又は少ない境界を提供する。図5は図4のスポンジの透過スペクトル(青曲線)と、参照用のシリコンウェハを、単結晶シリコンのウェハ上で成長した9ミクロン厚の別なスポンジと共に示す。この場合、統計分布は1.5ミクロンの平均サイズと0.5ミクロンの平均偏差とを与える。図5はまたこの球体分布のミー拡散の実効断面積の計算値をも示す。その結果はスポンジの透過スペクトルに対する相補曲線となる。球体サイズと層厚が減少すると透過境界は低い波長の方向に移動することが分る。
【0024】
本発明のマイクロスフィア及びフォトニックスポンジによって達成される光封じ込みは、複数の光子の光吸収及びシリコンキャビティで吸収される発光イオンのレーザー放射のごとき非直線光学現象の発生を促す。最新の適用形態は、レーザー、検出器、センサー、等々の非線形光学機器分野において無数に存在する。
【0025】
ミクロサイズのシリコン球は電子技術及び光子技術を1つ素子に一体化させる重要なアイデアを提供する。1つの未来的利用法は単独マイクロクキャビティ内でのp-n接合素子の開発である。これはマイクロキャビティのアイデアをフォトダイオードのアイデアとを1つの素子に一体化させるであろう。
【0026】
従って、本発明の1形態は、その孔質部が制御され、シリコンが透明となる1ミクロンから15ミクロンの波長範囲のミー共振モードにて光学タイプのマイクロキャビティとして機能することができる0.1ミクロンから50ミクロン径、好適には0.5ミクロンから5ミクロン径のシリコン製マイクロスフィアである。
【0027】
本発明の好適形態は、シリコンが結晶形態、例えば、シリコンが非結晶形態、水素添加非結晶形態、多結晶形態又は単結晶形態等であり、固相または多孔質タイプである異なる特徴を有した本発明のマイクロスフィアである。
【0028】
本発明の別な好適形態は、粒体材料がシリコン及びゲルマニウムの合金(原則的には化学量論的な比)である本発明のマイクロスフィアである。
【0029】
本発明の好適実施形態は、シリコン製であり、特に好適な形態では固形非結晶シリコン製である隔離形態又は集落形態のマイクロスフィアである。
【0030】
本発明の別好適実施形態は、結晶形態又は非結晶状態であるシリコン及びゲルマニウムの合金である隔離形態又は集落形態のマイクロスフィアである。
【0031】
本発明の別な形態は、同一サイズと特徴又は異なるサイズとび特徴を有した複数のマイクロスフィアで形成された集団、集落又は節目である。
【0032】

本発明の別な形態は、平面、湾曲面又は他の表面上でコーティング状又は層状である重合形態の単物質又は複物質で成り、本発明の多数のユニットの集塊物又はランダム分布物により形成されたフォトニックスポンジである。これらスポンジはシリコンが透明となる波長範囲、特に1ミクロンから15ミクロンの波長範囲の光を非常に小さなスペースに封じ込めることができる。
【0033】
本発明の別好適実施形態は、マイクロスフィアがシリコン及び/又はシリコンとゲルマニウムの合金で成り、混合物の結晶形態が、非結晶形態、水素化非結晶形態、多結晶形態、単結晶形態であり、マイクロスフィアが固相又は多孔質タイプであるフォトニックスポンジである。
【0034】
本発明の別形態は本発明のマイクロスフィアを製作する方法であり、以下のステップを含む(図6参照):
(i)化学蒸着用構造物のための反応バイアル又は容器(2)の材料、容積及び形状、並びにその内部の基板(5)の材料、形状及び位置の選択及び構成ステップ;
(ii)分解に適した圧力、温度及び時間条件下に置かれた反応バイアル内に入れられたガス形態でのシリコンの前駆化合物、好適にはシラン及び/又はジシランの加熱による分解ステップ;
(iii)ガス内に分散され、ガスの中心部に物質、好適にはシリコンの核を形成する化学蒸着を利用した本発明のマイクロスフィア合成ステップ;
(iv)降雨形態でのマイクロスフィアの沈殿及び堆積及び容器内又は容器壁上に置かれた基板上にマイクロスフィアを堆積させるステップ(実施例参照);
(v)フォトニックスポンジ形成ステップ;
(vi)化学蒸着用構造物を通過させて容器またはバイアル(2)から余剰ガスを抽出するステップ;
(vii)容器又はバイアル(b)を開封し、続く精製ステップのために基板(d)及び容器と基板に接着したマイクロスフィア及びフォトニックスポンジを取り出すステップ。
【発明の効果】
【0035】
本発明に利用された化学蒸着による合成は通常は、シリコン等の様々な物質のエピタキシャル成長技術において利用されるものである(ジャシンスキJ・M及びゲイツS・M「シリコンの化学蒸着」Acc化学研究誌24、9-15(1991))。当該技術の専門家であれば本明細書で開示されている本発明の情報を利用して、本発明の様々なタイプのマイクロスフィア又はフォトニックスポンジを製作するために、例えば、ジシラン(HSi)及びシラン(HSi)の前駆ガスを取扱い、その使用量を調整し(実施例参照)、バイアル又は容器の材料、容積及び形状を調整し、シリコン球体の成長のための基板材料及び形状を調整し、シリコン粒子成長過程でバイアル又は容器内の基板の位置を調整し、ガスの分解温度及び分解時間を調整することができる。
【0036】
本発明の方法で得られるシリコン粒子はその表面張力によって球形となる。球形シリコン粒子の合成、核形成及び沈殿は、適した前駆物質によるゾルゲル合成法が利用されたときには液体媒質内での酸化ケイ素の球形粒子の合成に類似する(ストバー・W、フィンク・A及びボーン・E「ミクロンサイズ範囲の単拡散シリカ球の制御された成長」コロイドとインターフェース科学誌、26、62-69(1968))。堆積されると球形粒子は互いに接着してフォトニックスポンジ(図3)を形成する。得られる粒子サイズは0.5ミクロンから5ミクロンである。しかし、反応パラメータを変えることでこのサイズを0.1ミクロンから50ミクロンの範囲に広げることができる。
【0037】
本発明の別な好適形態は、前駆物質がシリコン前駆物質、好適には気相のシラン及び/又はジシランである本発明方法である。
【0038】
本発明の別好適形態は、前駆物質がゲルマニウム前駆物質、好適には気相のゲルマンである本発の方法である。
【0039】
本発明の別好適形態は、前駆物質がシリコンとゲルマニウムの前駆物質の混合物質、好適には気相のジシランとゲルマンである本発明方法である。
【0040】
利用目的に沿った特定の合金を得るために、シリコン前駆物質(シラン及び/又はジシラン)、ゲルマニウム(ゲルマン、HGe)及びジボラン(H)の適した割合の混合物が専門家によって調製できる。ジボランガスがドーピング剤として使用されるときには、それがp型シリコンを助長する物質であるためにジシランよりも少量にて導入されなければならない。
【0041】
本発明のさらに別な形態は、太陽電池、フォトダイオード、レーザー及びセンサーの製作のために本発明のマイクロスフィア及びフォトニックスポンジを利用する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(a)は、その分布状態が明示されているいくつかのマイクロスフィアの電子顕微鏡写真であり、図1(b)は、約2ミクロン径であるマイクロスフィアの高倍率電子顕微鏡写真である。球体面の球状性及び低粗性が確認できる。
【図2】図2は、1.88ミクロン径である単球体の光透過率(赤曲線)及び同サイズの球体のミー理論に従った光透過率の計算値(黒色)を示す。図においては異なるモードのマイクロキャビティamn及びbmn(m、n=1、2、3、4、5、6・・・・・)への異なる共振の指定も図示されている。図の下方部分はモードb31及びb42の電磁場の空間分布計算値を示す。
【図3】図3は、約60ミクロン厚の本発明のフォトニックスポンジの低倍率顕微鏡写真である。挿入写真は高倍率での同一スポンジの顕微鏡写真である。
【図4】図4は、結晶シリコンウェハ上に堆積された13ミクロン厚のフォトニックスポンジの透過率曲線と、比較のためにスポンジを有さない同一ウェハの透過率曲線である。Si-Si接合とSi-H接合の振動による約16ミクロンである吸収率谷部は別にして、約15ミクロンに配置できるスポンジの透過スペクトルにおいて降下部又は境界が観察される。この境界はミー型(15ミクロン以下の波長)からレイリー型(15ミクロン以上の波長)への拡散型移行を示す。平均径1.8ミクロンである球体のガウス分布による拡散の実効断面積の計算値と、測定スポンジに対応する0.5ミクロンの標準偏差も示されている。
【図5】図5は、異なるパラメータでの2体のスポンジの透過スペクトルを示す。赤色曲線は平均球体サイズが1.8ミクロン径で標準偏差が0.5ミクロンである13ミクロン厚のスポンジのものである。この曲線は図4のものに相当する。青色曲線は平均球サイズが1.5ミクロン径で標準偏差が0.4ミクロンである9ミクロン厚のスポンジのものである。図5はさらにこれらの球体のこのミー拡散分布の実効断面積計算値を示す。結果はスポンジの透過スペクトルに対する相補曲線となる。球体サイズと層厚が減少したとき、どのように透過境界が低い波長の方向に移動するかが観察できる。
【図6】図6は、その上にマイクロスフィアが堆積される基板の異なる配置方法に対応する2つの形態A及び形態Bを示す。ここで、(1)管状オーブン、(2)水晶バイアル又は容器、(3)バイアル開口部及びロック、(4)ガス入口及び出口(ロック3を使用して開閉できる)、(5)マイクロスフィアが堆積される基板である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下において本発明のシリコンマイクロスフィア及びフォトニックスポンジの製作のための本発明の好適実施例を説明する。これら実施例において使用されているバイアル及びオーブンのサイズは次の通りである。石英バイアル:2cm径、15cm長、47ml容積並びに管状オーブン:20cm長、3.5cm径。
【実施例1】
【0044】
0.5ミクロンから5ミクロンのサイズで、0.1ミクロンから50ミクロンのサイズに拡張可能である粒子によって形成されている13ミクロン厚である非結晶シリコンによるフォトニックスポンジの合成
この実施例では図5の形態Aが使用される。製作プロセスは以下のステップに要約できる:
ステップ1:ロック3がバイアルから外され、マイクロスフィアが堆積される基板が導入される。基板は石英製であり、高温に耐える;
ステップ2:マウス部4が開いたままとなるようにロック3がバイアルに戻される。バイアルはマウス部4を介してCVD(化学蒸着)ラインに接続される。このラインはバイアルを真空化し、バイアル内にガスを導入させる;
ステップ3:1xE-4トールになるまでバイアル内に真空を形成する;
ステップ4:液体窒素トラップによってジシランがバイアルに入れられる。使用されるジシラン量は20mgである;
ステップ5:ロック3が閉じられ、バイアルはCVDラインから外される。次にバイアルは図5の形態Aで示すように450℃のオーブンに入れられる。このようにして基板はオーブンの中央部に残される。そこでは温度の安定性は増しており、オーブン温度コントローラによって監視されている;
ステップ6:バイアルはオーブン内に450℃で1時間維持される;
ステップ7:バイアルがオーブンから取り出され、マウス部4を介してCVDラインに再接続される。マウス部4は開かれ、反応によって発生する余剰ジシラン及び余剰水素のごとき残留ガスが排出される。これらガスは空気と触れると爆発する。従って、それらはCVDラインの一部で捕獲され、不活性化される;
ステップ8:ロック3がバイラルから外され、マイクロスフィアを含んだ基板が取り出される。
【0045】
この実施例の方法は以下の特徴を有するサンプルを提供する。
【0046】
約1ミクロンのシリコン層が基板上にてバイアル壁に接触する面(壁側面)及びその反対面(自由面)上に形成された。このシリコン層上面では次のものが観察できる:側壁面上では図1(a)及び図1(b)で図示するような分離マイクロスフィアが観察され、自由面上では図3で図示するようなフォトニックスポンジが観察される。このフォトニックスポンジは脆く、例えば外科用メスによって簡単に基板から分離できる。この方法が実行されると分離マイクロスフィアが図1(a)で図示するように基板上に残る。両面にてマイクロスフィアは灰色であり、直径は0.5ミクロンから5ミクロンであり、非結晶シリコンである。しかし、反応パラメータを変えることで0.1ミクロンから50ミクロンの範囲にサイズを拡大することができる。
【0047】
精巧研削処理又は粒子を分離させる波長音波処理によって球形粒子がこれらスポンジから得られる。
【実施例2】
【0048】
0.5ミクロンから2ミクロンの非結晶及び多孔質シリコンマイクロスフィアの合成
この実施例はステップ6を除いて実施例1と同じである。
【0049】
ステップ6:バイアルはオーブン内に450℃で5分間維持される。この実施例の方法は以下の特徴を有したサンプルを提供する。1ミクロン以下のシリコン層が基板上でバイアル壁に接触する面(壁側面)と反対面(自由面)上に形成された。このシリコン層上面には分離されたマイクロスフィアが形成され、時には小型集落形態でマイクロスフィアが自由面に形成された。これらマイクロスフィアは赤色であり、0.5ミクロンから2ミクロンの直径を有する。それらは非結晶シリコン製であり、多孔質性である。
【実施例3】
【0050】
:0.5ミクロンから5ミクロンのサイズであり、0.1ミクロンから50ミクロンのサイズにも拡張できる粒子によって形成される13ミクロン厚である多結晶シリコンのフォトニックスポンジの合成。この実施例はステップ6を除いて実施例1と同じである。
ステップ6:バイアルは800℃のオーブン内で1時間維持される。得られるサンプルは、シリコンが非結晶ではなく多結晶であることを除けば実施例1のものに類似する。
【0051】
精巧研削処理及び粒子を分離する超音波処理によって球形粒子がこれらスポンジから得られる。
【実施例4】
【0052】
0.5ミクロンから5ミクロンであり、0.1ミクロンから50ミクロンに拡張が可能なサイズの非結晶及び多孔質シリコンマイクロスフィアの合成
この実施例では図5の形態Bが使用される。この場合、基板はバイアルが加熱される領域外に置かれる。実施例1と同一ステップが採用される。
【0053】
この方法では以下の特徴を備えたサンプルが得られる。
【0054】
前述の実施例において基板上に形成されたシリコン層は形成されない。基板のオーブン側の面は分離状態のマイクロスフィアを集落状態で示し、さらに0.5ミクロンから5ミクロン径の球体のスポンジ体を示す。シリコンは非結晶である。しかし、反応パラメータを調整することでサイズは0.1ミクロンから50ミクロンに拡張できる。
【0055】
非常に精巧な研削処理と、粒子を分離する超音波処理とによってこれらスポンジから球形粒子が得られる。基板の反対面にはマイクロスフィアは存在しない。
【0056】

光学測定の実行を目指し、実施例1、2及び3においてその上にマイクロスフィアが発見されるシリコン層がそれら測定に影響を及ぼさないようにマイクロスフィアは基板から分離され、例えばガラス製または石英製の別基板上に堆積される。この処理は様々な方法で実施可能であるが、その1例はそれら2つの基板の擦り合わせ処理である。
【図1(a)】

【図1(b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が0.1ミクロンから50ミクロンの範囲であるシリコンからなるマイクロスフィアであって、
前記マイクロスフィアは制御された空孔率を有し、
シリコンが透明となる1ミクロンから15ミクロンの範囲の波長のミー共鳴モードにて光学マイクロキャビティとして機能することを特徴とするマイクロスフィア。
【請求項2】
前記シリコンは非結晶形態、水素化非結晶形態、多結晶形態、あるいは単結晶形態であることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項3】
前記マイクロスフィアは固形又は多孔質であることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項4】
前記マイクロスフィアはシリコンとゲルマニウムの合金から成ることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項5】
前記マイクロスフィアは分離形態又は集落形態で形成され、シリコン製であることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項6】
前記マイクロスフィアは分離形態又は集落形態で形成され、シリコンとゲルマニウムの結晶又は非結晶合金製であることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項7】
前記マイクロスフィアは同一サイズと同一特徴又は異種サイズと異種特徴の複数のマイクロスフィアによる集団形態、集落形態又は節目形態で形成されることを特徴とする請求項1記載のマイクロスフィア。
【請求項8】
前記マイクロスフィアは平面、湾曲面又はその他の表面上のコーティング状又は層状の重合形態であり、1種又は複数種の物質から成る請求項1から7のいずれかに記載のマイクロスフィアの多数ユニットの集塊又はランダム分布によって形成されていることを特徴とするフォトニックスポンジ。
【請求項9】
前記マイクロスフィアはシリコン製と、
シリコンとゲルマニウムとの合金製のうち少なくともいずれか一方であり、
混合物の結晶形態は非結晶、水素化非結晶、多結晶又は単結晶であることを特徴とする請求項8記載のフォトニックスポンジ。
【請求項10】
前記マイクロスフィアは固形と多孔質のうち少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項8又は9記載のフォトニックスポンジ。
【請求項11】
(i)から(vii)のステップを含んでいることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のマイクロスフィア又はフォトニックスポンジの製作方法:
(i)化学蒸着用構造物のための反応バイアル又は容器(2)の材料、容積及び形状、並びにその内部の基板(5)の材料、形状及び位置の選択及び構成ステップ;
(ii)分解に適した圧力、温度及び時間条件下に置かれた反応バイアル内に入れられたガス形態でのシリコンの前駆化合物の加熱による分解ステップ;
(iii)ガス内に分散され、ガスの中心部に物質、好適にはシリコンの核を形成する化学蒸着を利用した本発明のマイクロスフィア合成ステップ;
(iv)降雨形態でのマイクロスフィアの沈殿及び堆積及び容器内又は容器壁上に置かれた基板上にマイクロスフィアを堆積させるステップ;
(v)フォトニックスポンジ形成ステップ;
(vi)化学蒸着用構造物を通過させて容器またはバイアル(2)から余剰ガスを抽出するステップ;及び
(vii)容器又はバイアル(b)を開封し、続く精製ステップのために基板(d)及び容器と基板に接着したマイクロスフィア及びフォトニックスポンジを取り出すステップ。
【請求項12】
前記ステップ(i)の前駆物質は気相のゲルマニウムであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(i)の前駆物質は気相のシリコンとゲルマニウムの混合物であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(i)の前駆物質はシランと共に反応のドーピング剤として気相のジボランが含まれることを特徴とする請求項11記載の方法。



【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−530627(P2010−530627A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512723(P2010−512723)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/ES2008/070102
【国際公開番号】WO2008/155438
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508157886)コンセジョ スペリオール デ インベスティガショネス シエンティフィカス (21)
【Fターム(参考)】