説明

シリコン細棒の製造方法

【課題】シリコン細棒の製造における欠点を回避して従来技術を改善する。
【解決手段】シリコン細棒(1)の製造方法であって、a)多結晶シリコン製のロッドを準備して、これから前記多結晶シリコン製のロッドに対して縮小された断面積を有する少なくとも2つの細棒(11,12)を分離する工程;b)前記分離された少なくとも2つの細棒(11,12)を、材料侵食性液状媒体での処理によって清浄化する工程;c)前記清浄化された少なくとも2つの細棒(11,12)を溶接して、1つのより長い細棒(1)とする工程;d)前記のより長い細棒(1)をチューブラフィルム(100)中にパッケージングする工程を含む前記製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン細棒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン細棒(Duennstab;thin rod)は、多結晶シリコンの析出のために使用される。
【0003】
多結晶シリコン(略語:ポリシリコン)は、坩堝引き上げ(チョクラルスキー法もしくはCZ法)又は帯域溶融(フロートゾーン法もしくはFZ法)による単結晶シリコンの製造における出発材料として用いられる。この単結晶シリコンは、ウェハ(Wafer)へと切り分けられ、半導体産業における多数の機械的加工、化学的加工及び化学機械的加工の後に電子素子(チップ)の製造のために使用される。
【0004】
しかしながら特に、多結晶シリコンは、ますます大きな規模で、引き上げ法又は鋳造法による単結晶シリコン又は多結晶シリコンの製造のために必要とされ、その際、この単結晶シリコン又は多結晶シリコンは、光電装置用のソーラーセルの製造のために用いられる。
【0005】
多結晶シリコン(しばしば短縮してポリシリコンとも呼ばれる)は、通常はシーメンス法によって製造される。その際、釣鐘状反応器("シーメンス反応器")においてシリコン製の細い心棒は直接的な通電によって加熱され、ケイ素含有成分と水素とを含有する反応ガスがそこに導入される。
【0006】
シリコン細棒は、通常は、3〜15mmの縁長さを有する。
【0007】
ケイ素含有成分としては、例えばケイ素塩素化合物などのケイ素ハロゲン化合物、特にクロロシランが該当する。前記ケイ素含有成分は、水素と一緒に反応器中に導入される。1000℃を超える温度で、該細棒上にシリコンが析出される。その際、最終的に多結晶シリコンを有するロッドが得られる。DE1105396号において、シーメンス法の基本原理が記載されている。
【0008】
細棒の製造に関して、DE1177119号から、シリコンからなる支持体(=細棒)上にシリコンを析出させ、引き続きこれから一部を分離して、この分離した一部を再びシリコンの析出のための支持体として使用することが知られている。その分離は、機械的に、例えば鋸引きによって、又は電気分解的に液体噴射流によって行うことができる。
【0009】
しかし、細棒の機械的分離の場合に、その表面は、金属並びにホウ素化合物、リン化合物、アルミニウム化合物及びヒ素化合物で汚染される。金属による表面汚染は、機械的分離後にほぼ90000〜160000pptw(質量一兆分率(parts per trillion by weight))までである。B、P、Al及びAsによる平均負荷量は、60〜700ppta(原子一兆分率(parts per trillion atomic))の範囲にある。
【0010】
従って、通常は、シリコンの析出のために使用しうる前に、前記細棒を表面清浄化に供する必要がある。DE1177119号は、それに関して、機械的様式の清浄化、例えばサンドブラスティングによる清浄化又は化学的様式のエッチングによる清浄化を開示している。
【0011】
汚染の少ない材料、例えばプラスチック製のエッチングタンク(Aetzbecken;etching tank)中で細棒をHF及びHNO3からの混合物によって処理することによって、表面汚染は、金属では300pptw以下に、B、P、Al及びAsでは15pptw未満に明らかに低減できる。
【0012】
EP0548504号A2において、HF及びHNO3をシリコンの清浄化のために使用する清浄化方法が記載されている。
【0013】
別の清浄化法は、DE19529518号A1から公知である。その際、多結晶シリコンは、まず王水からの混合物(HCl及びHNO3からの混合物)で清浄化され、次いでHFによる追加の清浄化に供される。
【0014】
EP0905796号A1は、低い金属濃度を有する半導体材料の製造方法であって、多結晶シリコンを予備清浄化において少なくとも1つの工程において酸化性の清浄化溶液で洗浄し、主清浄化において他の工程においてHNO3及びHFを含有する清浄化溶液で洗浄し、そして親水性化に際してもう1つの他の工程において酸化性の清浄化液で洗浄することを特徴とする前記製造方法を開示している。前記の清浄化方法によって、シリコンの表面の鉄含有率及び/又はクロム含有率を、1.332×10-8g/cm2(金属工具による加工後)から6.66×10-11g/cm2未満に低減することができる。
【0015】
シリコン析出での歩留まりを高めるために、より長い細棒を使用できることも所望されている。より長い細棒は、原則的に、より短い細棒の溶接によって製造することができる。
【0016】
WO02/070184号A1は、2つのシリコン工作物を亀裂無く溶接によって互いに接合させる方法を記載している。まず、それらの工作物を、少なくとも600℃の温度に、好ましくはシリコン製の加熱プレート上で加熱する。次いで、それらの工作物を、例えば電気溶接、プラズマ溶接又はレーザ溶接によって互いに接合する。
【0017】
しかし、細い工作物のためには、この方法は取り扱いが困難である。さらに、該シリコン工作物は、溶接の間に常に空気と直接的に接触しており、これは汚染に関して不都合である。
【0018】
US6,573,471号B1は、同様に、2つのシリコン工作物を溶接によって互いに接合できる方法を記載している。WO02/070184号A1による方法との本質的な相違点は、高くても0.05トルの低圧を生じさせてから、両方の工作物を接合させることにある。
【0019】
US6,852,952号B1は、2つのシリコン工作物をアーク溶接によって互いに接合させる方法を記載している。そのために、2つの電極の間にプラズマが生成され、その近くに、接合されるべきシリコン工作物がもたらされる。それは、好ましくはアルゴン雰囲気で行われる。
【0020】
しかしながら、US6,852,952号B1による方法も費用がかかり、細棒の溶接のためには不都合である。
【0021】
他の考え得る方法は、誘導溶接である。それによって、通常はプラスチック部材及び金属部材が空気雰囲気下で溶接される。
【0022】
シリコン工作物の接合のための誘導溶接の使用は、SiN層の形成をもたらす。それというのも、シリコンは1500℃超の高温のため周囲空気からの窒素と反応するからである。SiNはシリコン溶融物中で溶けず、それは粒子として単結晶中の転位をもたらすので、かかる多結晶シリコンを坩堝引き上げもしくは帯域溶融によるシリコン単結晶の生成のために用いることは適していない。
【0023】
長い細棒の場合は、目下使用可能なエッチングタンクに更なる問題がある。
【0024】
純粋なプラスチック製の清浄化装置用のエッチングタンクの大きさは、構造に制約されて限られてくる。エッチングタンクの所定の寸法からはその装置は不安定になる。追加の鋼製補強材は、エッチングタンクの拡大を可能にしうる。しかしながら、鋼の使用は、応力亀裂の結果として酸がエッチングタンクから前記鋼製補強材にまで至り、その酸が金属で汚染されることを回避できないため危険である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】EP0548504号A2
【特許文献2】DE19529518号A1
【特許文献3】EP0905796号A1
【特許文献4】WO02/070184号A1
【特許文献5】US6,573,471号B1
【特許文献6】WO02/070184号A1
【特許文献7】US6,852,952号B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の課題は、前記の欠点を回避して従来技術を改善することにあった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記課題は、シリコン細棒(1)の製造方法であって、
a)多結晶シリコン製のロッドを準備して、これから前記多結晶シリコン製のロッドに対して縮小された断面積を有する少なくとも2つの細棒(11,12)を分離する工程;
b)前記分離された少なくとも2つの細棒(11,12)を、材料侵食性(material−eroding)液状媒体での処理によって清浄化する工程;
c)前記清浄化された少なくとも2つの細棒(11,12)を溶接して、1つのより長い細棒(1)とする工程;
d)前記のより長い細棒(1)をチューブラフィルム(100)中にパッケージングする工程
を含む前記製造方法によって解決される。
【0028】
好ましい実施形態は、従属形式請求項でクレームされている。
【0029】
該方法の出発点は、細棒上に、好ましくはシーメンス法によってシリコンを析出させることによって製造される、多結晶シリコン製のロッドである。
【0030】
この多結晶材料製のロッドは、複数の細棒に切り分けられる。好ましくは、細棒の分離は機械的にソウイングによって行われる。
【0031】
分離された細棒は、引き続き化学的に清浄化される。
【0032】
好ましくは、細棒の溶接前に正確に1つの清浄化工程を行う。
【0033】
この清浄化工程は、好ましくは、クリーンルームクラス100又はそれ未満(米国連邦規格(US FED STD)209Eに準拠、ISO14644−1により代替)のクリーンルームにおいて行われる。
【0034】
クラス100(ISO5)では、1リットルあたり最大0.5μm直径の粒子が最大3.5個含まれていてよい。
【0035】
好ましくは、化学的清浄化は、HF/HNO3によって行われる。
【0036】
次いで、それらの細棒は溶接される。
【0037】
清浄化された細棒の溶接は、好ましくは不活性ガス下で行われる。
【0038】
好ましくは、前記溶接は、誘導溶接法によって行われる。
【0039】
本発明を、以下に図面をもとに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、どのようにして2つの細棒を溶接するかを図示している。
【図2】図2は、どのようにして溶接された細棒をエッチングタンク中で処理するかを図示している。
【0041】
シリコン製の短い細棒11と12との溶接は、2つの細棒11と12とを保護ガス(特に好ましくはアルゴン)下でまず接触させる装置中で行われる。
【0042】
誘導コイル3は、前記細棒11と12の両端部をシリコンの溶融温度超(1412℃超)で加熱し、液状シリコンからなる滴が生じ、その滴は表面張力によって形状を保つ。最大4〜5分後に、前記シリコンは両方の細棒の末端部で液状であり、そして誘導コイル3が停止される。2つの細棒11と12とは癒合する。
【0043】
誘導コイル3は、石英で取り囲まれた炭素(グラファイト)製の管4より上部に設置する。
【0044】
誘導コイル3中で生ずる交番磁界は、まず前記炭素製の管4中で入力結合され、前記管を加熱する。その熱放射は、引き続き、前記シリコン製の細棒を加熱する。決められた温度から、交番磁界は、前記シリコン中にも直接的に入力結合され、それをさらに加熱する。実際の溶接事象は、ここから開始されうる。
【0045】
炭素管4において、1000℃をはるかに超える温度が生ずる。従って、この管を外気から遮蔽することを顧慮せねばならない。前記管は、適宜、石英中に取り囲まれる。高温のシリコンをさらに周囲空気から遮蔽するためには、装置全体を石英管2によって取り囲む。一方で、石英は、高温に持ちこたえるという特性を有する。他方で、石英は透明なので、溶接過程を観察することが可能となる。
【0046】
石英管2内部の高い温度は、比較的激しい下から上への対流を引き起こす。
【0047】
ここで特別な措置を採らない場合、周囲空気が吸入されて、溶接箇所に導かれる。
【0048】
しかし、そのことは2つの欠点:
− 溶接箇所の付加的な汚染、及び
− 空気(窒素及び酸素)との化学反応
に結びつく。
【0049】
特に窒素との反応はどのような場合でも回避すべきである。それというのも、該反応に際して、後続の結晶引き上げプロセスで問題を引き起こすSiNが形成されるからである。従って、石英管は下方から保護ガス(希ガス、アルゴン)が供給される。
【0050】
保護ガスとしては、アルゴンが特に好ましい。しかしながら原則的には、他の不活性ガスも使用することができる。
【0051】
上方の開口部で、保護ガスを再び抜き出すことができる。シリコンの高い温度によって引き起こされる対流は、周囲空気が事実上高温のシリコンと接触に至らないことを配慮している。
【0052】
引き続き、溶接された細棒は、チューブラバッグ(Schlauchbeutel;tubular bag)100中にパッケージングされる。
【0053】
溶接された細棒のパッケージングは、好ましくは高純度のPE製のチューブラフィルム中で行われる。使用される前記バッグは、理想的には40〜100μmの厚さを有する高純度PEから成る。
【0054】
溶接過程の間に、シリコン表面は細棒全長で不純物により軽く汚染される。
【0055】
この方法で得られる細棒は、半導体産業(CZ)用のポリシリコンの製造のためにも、ソーラー産業のためにも使用することができることが明らかになった。
【0056】
こうして作成された細棒上への析出によって析出された多結晶シリコンは、帯域溶融法(FZ)においても単結晶へとさらに加工することができる。
【0057】
しかしながら、1000オーム・cm未満の抵抗についての引き上げ歩留まりは、従ってまだなおも存在する不純物のためたった50%未満であるにすぎず、これは不利である。
【0058】
しかし、高抵抗材料はまずます必要となっているので、その歩留まりを高めることが好ましい。それを達成するためには、使用される細棒のシリコン表面上の及びバルク中の金属の濃度は、約1012原子/cm2から約1011原子/cm2にまで低減させる必要がある。
【0059】
鉄、銅及びニッケルなどの不純物に関しては、それらが、シリコン中の少数電荷担体の寿命を劇的に減らすことも知られている。そのことは、かかる材料を半導体用途で使用すること(そこではその際、金属のための追加のゲッタを使用せねばならない)に対しても、ソーラー用途で使用すること(その寿命は、ソーラーセルの効率を大部分で決める)に対しても悪影響を有する。
【0060】
従って、好ましくは前記パッケージングの直前に付加的な清浄化工程が行われる。
【0061】
またこの付加的な清浄化工程は、好ましくはクリーンルームクラス100又はそれ未満のクリーンルーム中で行われる。
【0062】
好ましくは、またその第二の化学的清浄化は、HF/HNO3混合物によって行われる。
【0063】
溶接された細棒を溶接後にもう一度清浄化する場合、細棒のシリコン表面上に溶接時に堆積された不純物を除去することができる。
【0064】
第1表は、第二の清浄化工程を行わない場合の溶接後の金属による表面汚染(pptw)を示している。
【0065】
第1表
【表1】

【0066】
第2表は、第二の清浄化工程を行わない場合の溶接後のドーパント濃度(ppta)を示している。
【0067】
第2表
【表2】

【0068】
第二の化学的清浄化は、以下の実施例に示されるのとは明らかに異なるエッチング侵食をもって行ってよい。
【実施例】
【0069】
実施例1
実施例1においては、第二の清浄化工程の場合の1μm未満でのエッチング侵食は、比較的少ない。
【0070】
それに対して、第一の清浄化工程での侵食は30μmである。
【0071】
第一の清浄化工程は、予備清浄化と、主清浄化と、すすぎ工程と、親水性化工程とを含む。
【0072】
予備清浄化の際には、細棒は、5分間にわたり、11質量%のHClと5質量%のHFと1.5質量%のH22とからなる混合物中で20℃の温度において清浄化される。
【0073】
主清浄化は、5分間にわたり8℃で、6質量%のHFと55質量%のHNO3と1質量%のSiとを有するHF/HNO3混合物中で行われる。
【0074】
エッチング侵食は、約30μmである。
【0075】
引き続き、エッチングされた細棒を、5分間にわたり、18メガオーム(MOHM)を有する22℃の温かい超純水ですすぐ。
【0076】
最後に、5分間の親水性化を、20ppmのオゾンで飽和された22℃の温かい水中で行う。
【0077】
最後に、その細棒を、60分間にわたり、クリーンルームクラス100の超純粋な空気で80℃において乾燥させる。
【0078】
清浄化された細棒の溶接後に、溶接によってシリコン表面上に達した粒子の除去のために第二の化学的清浄化が行われる。
【0079】
材料侵食は、その際1μm未満である。
【0080】
予備清浄化の際には、細棒は、5分間にわたり、11質量%のHClと5質量%のHFと1.5質量%のH22とからなる混合物中で20℃の温度において清浄化される。
【0081】
主清浄化は、0.1分間にわたり8℃で、6質量%のHFと55質量%のHNO3と1質量%のSiとを有するHF/HNO3混合物中で行われる。
【0082】
エッチング侵食は、約30μmである。
【0083】
引き続き、エッチングされた細棒を、5分間にわたり、18メガオーム(MOHM)を有する22℃の温かい超純水ですすぐ。
【0084】
最後に、5分間の親水性化を、20ppmのオゾンで飽和された22℃の温かい水中で行う。
【0085】
最後に、その細棒を、60分間にわたり、クリーンルームクラス100の超純粋な空気で80℃において乾燥させる。
【0086】
金属及びドーパントでの汚染に関して、実施例1からの21本の細棒を調査した。
【0087】
第3表は、実施例1についての金属による表面汚染(pptw)を示している。
【0088】
第3表
【表3】

【0089】
第4表は、実施例1についてのドーパント濃度(ppta)を示している。
【0090】
第4表
【表4】

【0091】
金属汚染の明らかな低減(第1表を参照)も、B、P、Al及びAsでの汚染の低減(第2表を参照)も、第二の清浄化工程によって明らかである。
【0092】
実施例2
実施例2においては、第二の清浄化工程での約30μmでのエッチング侵食は、実施例1におけるよりも明らかに高い。より高いエッチング侵食のその成果に対する影響を、その際より詳細に調査されるべきである。
【0093】
第一の清浄化工程での侵食は、実施例1と同様に30μmである。
【0094】
第一の清浄化工程は、あらためて、予備清浄化と、主清浄化と、すすぎ工程と、親水性化工程とを含む。
【0095】
予備清浄化の際には、細棒は、5分間にわたり、11質量%のHClと5質量%のHFと1.5質量%のH22とからなる混合物中で20℃の温度において清浄化される。
【0096】
主清浄化は、5分間にわたり8℃で、6質量%のHFと55質量%のHNO3と1質量%のSiとを有するHF/HNO3混合物中で行われる。
【0097】
エッチング侵食は、約30μmである。
【0098】
引き続き、エッチングされた細棒を、5分間にわたり、18メガオーム(MOHM)を有する22℃の温かい超純水ですすぐ。
【0099】
最後に、5分間の親水性化を、20ppmのオゾンで飽和された22℃の温かい水中で行う。
【0100】
最後に、その細棒を、60分間にわたり、クリーンルームクラス100の超純粋な空気で80℃において乾燥させる。
【0101】
清浄化された細棒の溶接後に、溶接によってシリコン表面上に達した粒子の除去のために第二の化学的清浄化が行われる。
【0102】
材料侵食は、その際約30μmである。
【0103】
予備清浄化の際には、細棒は、5分間にわたり、11質量%のHClと5質量%のHFと1.5質量%のH22とからなる混合物中で20℃の温度において清浄化される。
【0104】
主清浄化は、5分間にわたり8℃で、6質量%のHFと55質量%のHNO3と1質量%のSiとを有するHF/HNO3混合物中で行われる。
【0105】
エッチング侵食は、約30μmである。
【0106】
引き続き、エッチングされた細棒を、5分間にわたり、18メガオーム(MOHM)を有する22℃の温かい超純水ですすぐ。
【0107】
最後に、5分間の親水性化を、20ppmのオゾンで飽和された22℃の温かい水中で行う。
【0108】
最後に、その細棒を、60分間にわたり、クリーンルームクラス100の超純粋な空気で80℃において乾燥させる。
【0109】
金属及びドーパントでの汚染に関して、実施例2からの21本の細棒を調査した。
【0110】
第5表は、実施例2についての金属による表面汚染(pptw)を示している。
【0111】
第5表
【表5】

【0112】
第6表は、実施例2についてのドーパント濃度(ppta)を示している。
【0113】
第6表
【表6】

【0114】
実施例1に対して、汚染の改善は、鉄、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、チタン及びドーパントであるホウ素、リン、アルミニウム及びヒ素の場合に判明している。
【0115】
実施例2の結果は、金属汚染に関するより高いエッチング侵食は、鉄及び環境元素であるカリウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、アルミニウム、チタンの場合に更なる軽い改善をもたらすことを示している。B、P、Al及びAsの濃度は、同様に低下する。
【0116】
しかしながら、本発明の範囲において、好ましい第二の清浄化工程では、10μm未満の小さいエッチング侵食が好ましい。5μm未満のエッチング侵食が特に好ましく、2μm未満のエッチング侵食が殊に好ましい。
【0117】
細棒の第一の清浄化において、10μm以上のエッチング侵食が好ましい。少なくとも20μmのエッチング侵食が特に好ましく、少なくとも30μmのエッチング侵食が殊に好ましい。
【0118】
従来からの経験によれば、純粋なプラスチック製の清浄化装置用のエッチングタンクは、最大で、4mの外側長さ及び3.2mの内側長さを達成できる。3.2m超の長さを有する細棒の清浄化は、従ってこのエッチングタンクを用いては不可能である。しかしながら、2つの細棒の溶接の後に、細棒の長さは3.2m超に至り、これは好ましい第二の清浄化工程の使用のために別の溶液を必要とする。
【0119】
本発明者は、より小さいエッチングタンクも長い細棒の清浄化のために適していることを見出した。
【0120】
非常に長い細棒1の上記の簡潔な第二のエッチング工程は、特に好ましくは、細棒1よりも短い長さのタンク5中で実施できる。このタンク5は、側面にそれぞれ1つの開口部51もしくは52を有し、それらの開口部に長い細棒1が導通されうる。前記の開口部51及び52で細棒1に沿って流れ去るエッチング液6は、その下方にあるトラフ(Wanne;trough)7で受け止められ、そしてポンプ8によって導管81を介して再びエッチングタンク5へと圧送されるので、エッチング液6の流出と返送との間に平衡が存在する。細棒1をエッチングタンク5に通過させ、該細棒1を乾燥させた後に、細棒は、ほとんど間髪入れずに、パッケージングのためにチューブラフィルム100中に導入されてよい。その場合、更なる付加的な汚染は回避される。その場合、乾燥は、粒子を取り除いた熱気によって行うことができ、前記の熱気は細棒1に対して吹き付けられる。相応の乾燥装置は符号9によって図示されている。
【0121】
細棒1の前進速度とエッチングタンク5の長さは、エッチングタンク5中の滞留時間、ひいてはエッチング侵食を決める。この方法の従来のエッチングタンク5中でのエッチングと比べた利点は、一方で、少ない装置の所要床面積であり、他方で、より柔軟性のある構造である。それというのも、示された原理では、種々のエッチング工程及びすすぎ工程を有するカスケードも実現でき、非常にコンパクトな構造様式で構成することができるからである。また親水性化のための工程は、問題なく作業手順において使用することができる。
【0122】
従来の構造様式のエッチングタンク5で使用される、細棒1を一方のタンクから別のタンクへと輸送するためのグリッパ(Greifer;gripper)は、この方法では必要ない。この非常にモジュラー式の構造様式では、細棒1を簡単に熱気で乾燥させる簡単な乾燥装置9も組み入れることができる。HF/オゾン乾燥機も考えられ、細棒1を最後のエッチング浴中で希釈されたHF/水溶液に通すことが特に好ましい。容器開口部51もしくは52からの出口では、まだHF/水の層が細棒1上に存在し、その層には、オゾン流が細棒1の輸送方向に向かって吹きかけられる。オゾンは、細棒1上の液膜中に溶け込み、該液膜の表面張力を変えるので、こうしてマランゴニ効果による乾燥が生ずる。
【0123】
不純物のレベルの特別な要求を満たすより長い細棒の使用は、析出反応器中での走行あたりの歩留まりを高めることができるという利点を約束する。
【0124】
従って、本発明は、付加的に純度の高い要求を満たすより長い細棒(>3.2m)を製造することを可能にする。(不純物は、1012原子/cm2もしくは原子/cm3未満である)
【0125】
3.2m超の長さを有する細棒は、2つ又はそれより多くのより短い細棒を接合して1つの長い細棒とすることによって製造することができる。
【0126】
3.2m未満の長さを有する溶接された細棒の使用でさえも、析出プロセスの間に利点を提供することが判明した。溶接箇所は完成した細棒の応力挙動を明らかに変えるので、シーメンス反応器中で該反応器の停止時に室温に冷却した場合に崩壊率(Umfallrate;rate of collapse)は明らかに低下する。それは、本発明による方法の付加的な予想されない効果である。
【0127】
ソウイングされたが事前に清浄化されていない細棒の溶接によって、その溶接箇所で表面での金属濃度は、1016原子/cm2超に高められる。
【0128】
500℃を超える溶接時の高温によって、その際に、金属製の不純物とその他の粒状の不純物は、シリコン細棒のバルク中に拡散する。
【0129】
かかるバルク中の不純物は、表面清浄化によってはもはや除去できない。
【0130】
本発明による方法により、細棒の清浄化を溶接前に必須のものとして要求することで、それは回避される。
【符号の説明】
【0131】
1 溶接された細棒、 11 第一の細棒、 12 第二の細棒、 13 溶接接合部、 2 石英管、 3 誘導コイル、 4 炭素管、 5 エッチング容器/タンク、 51 開口部、 52 開口部、 6 エッチング液、 7 トラフ、 8 ポンプ、 81 導管、 9 乾燥装置、 100 チューブラフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン細棒(1)の製造方法であって、
a)多結晶シリコン製のロッドを準備して、これから前記多結晶シリコン製のロッドに対して縮小された断面積を有する少なくとも2つの細棒(11,12)を分離する工程;
b)前記分離された少なくとも2つの細棒(11,12)を、材料侵食性液状媒体での処理によって清浄化する工程;
c)前記清浄化された少なくとも2つの細棒(11,12)を溶接して、1つのより長い細棒(1)とする工程;
d)前記のより長い細棒(1)をチューブラフィルム(100)中にパッケージングする工程
を含む前記製造方法。
【請求項2】
少なくとも2つの細棒(11,12)を溶接して1つのより長い細棒(1)とした後で、かつそれをパッケージングする前に、前記のより長い細棒(1)を材料侵食性液状媒体で処理する第二の清浄化を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)による細棒(11,12)の処理のための液状媒体と前記のより長い細棒(1)の第二の清浄化での液状媒体が、HF及びHNO3を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)による清浄化後の細棒(11,12)の親水性化と第二の清浄化後の前記のより長い細棒(1)の親水性化を、オゾンによって行う、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記のより長い細棒(1)を材料侵食性液状媒体で処理した場合に材料侵食が10μm未満である、請求項2から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)に従って材料侵食性液状媒体で処理することによって細棒(11,12)を清浄化した場合に材料侵食がそれぞれ少なくとも10μmである、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記のより長い細棒(1)の第二の清浄化を、材料侵食性液状媒体を含有する、両方の側面にそれぞれ1つの開口部(51)及び(52)を有するタンク(5)中で行い、前記のより長い細棒(1)は、その清浄化のために前記開口部に徐々に導通され、その際、前記開口部(51)及び(52)を介して前記のより長い細棒(1)に沿って流れ去る材料侵食性液状媒体は、タンク(5)の下方に配置されたトラフ(7)で受け止められ、そして再び前記タンク(5)へと圧送される、請求項2から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記のより長い細棒(1)をタンク(5)に通過させ、そして前記のより長い細棒(1)を乾燥させた後に、その細棒をチューブラフィルム(100)中に導入し、パッケージングする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの分離された細棒(11,12)を溶接して1つのより長い細棒(1)とすることは、不活性雰囲気中で誘導溶接によって行われる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
石英で取り囲まれた炭素製の管(4)の上方に配置された誘導コイル(3)は、前記細棒(11)及び(12)のそれぞれ一方の端部をシリコンの溶融温度超で加熱し、それによって液状シリコンからなる滴が形成し、数分後に誘導コイル(3)を停止させ、その際、前記細棒(11)及び(12)は癒合してより長い細棒(1)となる、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−62243(P2012−62243A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199062(P2011−199062)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】