説明

シリコーンゴム組成物及び定着ロール

【解決手段】熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に、(E)平均粒子径が200μm以下で、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、及び(F)平均粒子径が1〜30μmで、かさ密度が0.1〜0.5g/cm3である無機充填剤:0.5〜30質量部を含有することを特徴とする低比重シリコーンゴム組成物。
【効果】本発明のシリコーンゴム組成物によれば、軽量で、ゴム強度、シール特性に優れたシリコーンゴムを得ることができ、該シリコーンゴムは、定着ロール用として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比重が小さくかつゴム弾性、ゴム強度、シール特性に優れるシリコーンゴムを与えるシリコーンゴム組成物、及び該シリコーンゴム組成物を用いた、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ等の静電記録装置における加熱定着装置の定着ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱硬化型液状シリコーンゴムは、成形性に優れ、成形後は耐熱性、電気絶縁性に優れることから種々の分野で使用されている。その中で、特に耐熱性や離型性に優れることから、PPCやLBPやFAX等の電子写真式画像形成装置のトナー定着ロ−ルに多く使用されている。特に比重の低い材料は、各種製品の小型化、軽量化に貢献できるため、数多くの分野において望まれている。
【0003】
これら電子写真プロセスを利用した機器においては、感光体表面から複写紙に転写されたトナー像を複写紙に固定する必要がある。このトナー像を固定する方法として、互いに圧接回転している加熱されたヒーターロールと加圧ロールとの間に複写紙を通過させ、複写紙上のトナー像を熱融着し、固定する方法が広く採用されている。この熱融着方法においては、一般にロール材料の熱伝導率を高くすることで、応答の速い複写機、プリンターなどとすることができるが、一方で熱伝導性の高いものは放熱も早く、小型化、低価格化の流れの中で、逆に熱伝導性の低い、すなわち蓄熱性のよい材料が必要とされていた。
【0004】
このような材料として、特開平5−209080号公報(特許文献1)には、熱により膨張する未発泡の有機樹脂フィラーを添加する方法が開示されているが、成形型内で膨張するため、発泡の均一性など成形面で困難な点が多かった。また、特開平9−137063号公報(特許文献2)には、液状のシリコーンゴム組成物に合成樹脂中空体(既発泡)を添加する方法が記載されており、任意成分としてヒュームドシリカ、沈降性シリカ、石英粉、珪藻土などの無機充填剤が記載されている。しかし、それら充填剤の具体的な添加量や効果の違いについては全く触れられておらず、実施例においても、気相法二酸化ケイ素(ヒュームドシリカ)が例示されているのみであった。ところが、ヒュームドシリカや沈降性シリカはシリコーンゴムに強度を付与することができるが、一方で、圧縮永久歪を悪化させてしまう傾向があり、特に気体を内包する低比重シリコーンゴムではその度合いが著しく、好ましい充填剤ではなかった。更に、トナー定着ロール用の低比重材料としては、既発泡の中空フィラーを配合した材料を開示した特開平10−60151号公報(特許文献3)があるが、シリコーンゴムに配合する無機充填剤として実施例に具体的に開示されているのはカーボンブラックのみであった。また、特開2001−220510号公報(特許文献4)には、既発泡有機樹脂フィラーに加えて多価アルコールを添加することにより、圧縮永久歪が小さい材料を得る方法が記載されているが、これも同じく無機充填剤は任意成分として記載されるのみで、実施例にはヒュームドシリカしか記載されていなかった。
【0005】
シリコーンゴム成形物は、軽量であるだけでなく、強度やシール性が必要とされることが多い。特に、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真式画像形成装置に組み込まれるトナー定着ロールとして使用される場合は、耐熱性に加えて、ゴム強度と低圧縮永久歪が重要な特性となる。強度が不十分な場合、使用中に定着ロールが破壊してしまう場合があり、圧縮永久歪が大きい場合、使用中に定着ロールが変形し、トナーが未定着になってしまう可能性がある。ところが、強度を付与するためにヒュームドシリカや沈降性シリカを加えると、圧縮永久歪が著しく悪化してしまうため、高強度でかつ圧縮永久歪が小さい材料が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−209080号公報
【特許文献2】特開平9−137063号公報
【特許文献3】特開平10−60151号公報
【特許文献4】特開2001−220510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高強度で圧縮永久歪が小さい低比重シリコーンゴムを与えるシリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いた定着ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の問題点を解決すべく鋭意検討を行った結果、有機樹脂製の微小な(平均粒子径が200μm以下)中空フィラーを配合してシリコーンゴムスポンジを得る場合に、平均粒子径が200μm以下で、真比重が0.5以下の有機樹脂製中空フィラーを選択し、更に平均粒子径が1〜30μmで、かさ密度が0.1〜0.5g/cm3である無機充填剤を配合することにより、高強度で圧縮永久歪が小さい低比重シリコーンゴム硬化物を与えるシリコーンゴム組成物を得ることができ、該組成物の硬化物が電子写真式画像形成装置のトナー定着ロールとして好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記シリコーンゴム組成物及び定着ロールを提供する。
[請求項1]
熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に、(E)平均粒子径が200μm以下で、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、及び(F)平均粒子径が1〜30μmで、かさ密度が0.1〜0.5g/cm3である無機充填剤:0.5〜30質量部を含有することを特徴とするシリコーンゴム組成物。
[請求項2]
熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物が、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜50質量部、
(C)付加反応触媒:触媒量、
(D)ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体:0〜30質量部
からなることを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項3]
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対するヒュームドシリカ及び沈降性シリカの合計含有量が5質量部以下であることを特徴とする請求項2記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項4]
硬化物の熱伝導率が0.15W/m・℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項5]
(E)有機樹脂製中空フィラーの真比重が0.01〜0.40であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項6]
(F)無機充填剤が珪藻土及び/又はパーライト粉砕物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項7]
(E)有機樹脂製中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体、並びにこれらモノマーのうち2種類以上の共重合体から選ばれるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項8]
電子写真方式の画像形成装置に使用されるトナー定着ロール用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
[請求項9]
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化させて形成されたことを特徴とする定着ロール。
[請求項10]
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化させて形成されたことを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシリコーンゴム組成物によれば、軽量で、ゴム強度、シール特性に優れた圧縮永久歪の小さい低比重シリコーンゴムを得ることができ、該シリコーンゴムは、定着ロール用として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明は、熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に、(E)平均粒子径が200μm以下で、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー、及び(F)平均粒子径が1〜30μmで、かさ密度が0.1〜0.5g/cm3である無機充填剤を含有することを特徴とするシリコーンゴム組成物である。該熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物としては、ヒドロシリル化付加反応により架橋、硬化するいわゆる通常の付加反応型オルガノポリシロキサン組成物であればよく、好適には下記の(A)〜(D)成分からなるものである。
【0012】
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)付加反応触媒、及び、任意に
(D)ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体。
【0013】
(A)〜(D)成分からなる本発明の熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物を構成する(A)成分の一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(1)で示されたものを用いることができる。
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0014】
ここで、上記R1で示されるケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。この場合、R1のうち少なくとも2個(通常、2〜50個、好ましくは2〜20個程度)はアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、全R1中、0.001〜20モル%、特に0.01〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖途中のケイ素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。このオルガノポリシロキサンは、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R12SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R13SiO1/2)で封鎖された、基本的には直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造、三次元網状構造などであってもよい。このオルガノポリシロキサンの分子量については、特に制限はなく、粘度の低い液状のものから、粘度の高い生ゴム状のものまで使用できるが、硬化してゴム状弾性体になるためには、25℃での粘度が、100mPa・s以上であり、通常100〜1,000,000mPa・s、特に500〜100,000mPa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度は回転粘度計により25℃における値を測定したものである。また、この(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの重合度は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度が50以上、通常50〜2,000、好ましくは100〜1,200、より好ましくは150〜600のものが好適に使用できる。
【0015】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に2個以上、好ましくは3個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ここで、(B)成分は、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている、例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する必要があり、通常は2〜200個、好ましくは3〜100個、より好ましくは4〜50個有する。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが好適に用いられる。
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、上記式(1)中のR1と同様の基を挙げることができるが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、bは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0で、かつb+cは1.5〜2.5の範囲の正数である。)
【0016】
一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は通常2〜300個、好ましくは4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0017】
式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0018】
この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜100質量部、特に0.3〜50質量部とすることが好ましい。
【0019】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基に対する(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.5〜5、好ましくは0.8〜4、より好ましくは0.8〜2.5となる量で配合することができる。(B)成分の配合量が少な過ぎると、架橋密度が低くなり過ぎ硬化したシリコーンゴムの耐熱性に悪影響を与える場合があり、また多過ぎると、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、耐熱性に悪影響を与える場合がある。
【0020】
(C)成分の付加反応触媒は、(A)成分中のアルケニル基と(B)成分中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量はいわゆる触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)成分及び(B)成分の合計質量に対して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度配合することが好ましい。
【0021】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上記(A)〜(C)成分に加えて、圧縮永久歪を低下させるなどの目的で、更に、(D)成分として、ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体を配合することができる。具体的には、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセリン−α−モノクロロヒドリン等の多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコールの2量体、3量体等のオリゴマー、ポリエチレングリコール(又はポリエチレンオキサイド)、ポリプロピレングリコール(又はポリプロピレンオキサイド)、クラウンエーテル等の多価アルコールの重合体あるいは2種以上の共重合体等から選ばれるポリエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの部分エーテル化物、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、エチレングリコールモノアセテート等の多価アルコールの部分エステル化物、あるいは部分シリル化物などから選ばれる1種又は2種以上の添加剤を(A)成分100質量部に対して30質量部以下(0〜30質量部)の範囲で配合してもよい。配合する場合、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは3〜20質量部である。30質量部を超えると、ゴム物性が著しく低下するおそれがある。
【0022】
本発明において、(A)〜(D)成分からなる熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物に配合する(E)成分としての有機樹脂製中空フィラーは、硬化物内に気体部分を持つことでスポンジゴムのように熱伝導率を低下させるもので、このような材料としては、フェノールバルーン、アクリロニトリルバルーン、塩化ビニリデンバルーンなどいかなるものでも構わないが、好ましくは、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体並びにこれらのモノマーのうちの2種類以上の共重合体から選ばれるものである。又は、中空フィラーに強度を持たせるためなどの理由で表面に無機フィラーなどを付着させたものでもよい。但し、シリコーンゴム組成物内で十分な熱伝導性の低下を行うには、中空フィラーの真比重が0.01〜0.50、好ましくは0.02〜0.40、より好ましくは0.02〜0.30である。真比重が0.01より小さいと、配合・取り扱いが難しいばかりか、中空フィラーの耐圧強度が不十分で成型時に破壊してしまい、軽量化、熱伝導率の低下ができなくなるおそれがある。また、真比重が0.5を超えると、中空フィラーの殻の厚さが大きく、熱伝導の低下や軽量化が十分とはならないおそれがある。なお、ここでの真比重は、粒子密度測定法(イソプロピルアルコール中での体積より算出する)による値である。
【0023】
また、中空フィラーの平均粒子径は、200μm以下、好ましくは5μm以上150μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下で、200μmを超えると成型時の射出圧力により中空フィラーが破壊されてしまい、熱伝導率が高くなってしまったり、ゴム強度が低下してしまったり、あるいはローラ成形後の表面の粗さが大きくなってしまうなどの問題が生じることがある。また、5μm未満では内包する気体が不十分で、目的とする低熱伝導率が得られない場合が多い。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置における重量平均粒子径、又はメジアン径等として求めることができる。
【0024】
(E)成分の配合量は、(A)〜(D)成分からなる熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に対し、0.1〜50質量部、好ましくは0.3〜40質量部、より好ましくは、0.5〜20質量部である。体積比率で組成物全体の容積に対して10〜80体積%となるよう配合するとよい。配合量が0.1質量部未満では、熱伝導率の低下が不十分であり、また50質量部を超えると、成形、配合が難しいだけでなく、成形物もゴム弾性のない脆いものとなってしまうことがある。
【0025】
本発明において、(F)成分の無機充填剤は、硬化ゴムに強度を付与する一方で、圧縮永久歪を低く保つ作用をするための必須の成分である。このような無機充填剤は、平均粒子径1〜30μm、好ましくは2〜20μm、より好ましくは5〜20μmであり、かさ密度が0.1〜0.5g/cm3、好ましくは0.15〜0.45g/cm3である。平均粒子径が1μmより小さいと圧縮永久歪が悪化してしまい、30μmより大きいとゴム強度が低下して、ロールとしての耐久性が低下してしまうおそれがある。かさ密度は、0.1g/cm3より小さいと圧縮永久歪が悪化してしまい、0.5g/cm3より大きいとゴム強度が不十分で、例えばロールとしての耐久性が低下してしまう。なお、かさ密度はJIS K6223の見掛比重の測定方法に基いて測定される。また、平均粒子径については、(E)成分と同様の方法で測定することができる。
【0026】
(F)成分の配合量としては、(A)〜(D)成分からなる熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に対して0.5〜30質量部、好ましくは1〜30質量部であるが、特に、上記(A)成分100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは5〜30質量部である。配合量が1質量部未満では、ゴム強度が不十分で、50質量部より大きいと、圧縮永久歪が悪化するばかりでなく、配合も困難になってしまう。このような(F)成分の平均粒子径とかさ密度の要件を同時に満足し得る無機充填剤としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレークなどから選ばれる特定の材料があるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好適である。
【0027】
これら無機充填剤の混合方法は、常温でプラネタリーミキサーやニーダー等の機器を用いて(A)、(B)成分と混合してもよいし、あるいは100〜200℃の高温で混合してもよい。
【0028】
また、これら無機充填剤は、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により表面処理されたものであってもよい。これらの処理は、無機充填剤自体を予め処理しても、あるいはオイルとの混合時に処理を行ってもよい。
【0029】
なお、(A)〜(D)成分からなる熱硬化型オルガンポリシロキサン組成物には、(F)成分の無機充填剤以外にも、石英粉(結晶性シリカ)、球状シリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム等の無機粉体を、本材料の特長である低圧縮永久歪、ロール耐久性を損なわない範囲で適宜添加してもよい。特に、圧縮永久歪に影響が大きいヒュームドシリカ及び/又は沈降性シリカを添加する場合は、その合計量が(A)成分100質量部に対し5質量部以下(即ち、0〜5質量部)が好ましく、3質量部以下(0〜3質量部)がより好ましい。
【0030】
また、本発明のシリコーンゴム組成物には、例えば、1−エチニル−1−ヘキサノール等のアセチレンアルコール類、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニル基高含有の環状シロキサンオリゴマー類、ヒドロキシパーオキサイド等の有機過酸化物類、ベンゾトリアゾール等の含窒素芳香族化合物や有機リン化合物等の従来公知の硬化制御剤や耐熱性向上剤、難燃性付与剤、導電性付与剤、接着性付与剤、チキソ性付与剤、着色顔料や染料等を配合することができる。
【0031】
本発明に係るシリコーンゴム組成物の硬化方法は、注入成形、圧縮成形、射出成形、コーティング等の方法があり、硬化条件としては100〜300℃の温度で10秒〜1時間の範囲が好適に採用される。また、有機樹脂製中空フィラーを破壊する、圧縮永久歪を低下させる、低分子シロキサン成分を低減する等の目的で、成形後、更に120〜250℃のオーブン内で30分〜70時間程度のポストキュア(2次キュア)を行ってもよい。
【0032】
本発明の定着ロールは、ステンレス、鉄、ニッケル、アルミ等の芯金上に上記シリコーンゴム組成物の硬化物層(弾性層)を形成するものであるが、この場合、芯金の材質、寸法等はロールの種類に応じて適宜選定し得る。また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法も適宜選定し得、例えば注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の方法によって成形でき、加熱により硬化される。シリコーンゴム層(弾性層)の外周に更にフッ素樹脂層やフッ素ゴム層等の表面離型層を設けてもよい。この場合、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、上記シリコーンゴム層を被覆する。ここでフッ素系樹脂コーティング材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFAが好ましい。
【0033】
なお、上記シリコーンゴム層の厚さは適宜選定されるが、0.05〜80mm、特に0.1〜50mmであることが、シリコーンゴムのゴム弾性をいかす点で好ましい。また、その上に形成されるフッ素樹脂又はフッ素ゴム層の厚さは、5〜200μm、特に10〜100μmが好ましい。
【0034】
更に、上記シリコーンゴム層の熱伝導率は、ヒーターやヒーターロールあるいはベルトから受けた熱を逃がさず、蓄熱するという点において、0.15W/m・℃以下、好ましくは0.05〜0.14W/m・℃、より好ましくは0.05〜0.12W/m・℃であることが望ましい。また、ロール耐久性の点から、上記シリコーンゴム層のJIS K6249による引張り強度は0.8MPa以上、好ましくは1.0MPa以上であることが好ましい。引張り強度の上限には特に制限はないが、通常10MPa以下程度でよい。また、ロールの定着安定性(定着耐久性)の点から、JIS K6249による圧縮永久歪性が20%以下(0〜20%)、好ましくは16%以下(0〜16%)、より好ましくは12%以下(0〜12%)であることが好ましい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例と比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、平均粒子径17μm、かさ密度が0.19g/cm3である粉砕パーライト(ロカヘルプB409、三井金属鉱業株式会社製)7質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(平均粒子径:約0.016μm、かさ密度:0.05g/cm3、日本アエロジル社製R−972)0.5質量部、平均粒子径90μmで真比重が0.02である有機樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン−1(重合度17、SiH基含有量0.0030mol/g)を4.5質量部(SiH基/アルケニル基=1.5)、トリエチレングリコールを5質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合しシリコーンゴム組成物(1)を得た。この組成物を120℃で10分プレス硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、厚さ2mm及び6mmのシリコーンゴムシート及び厚さ12.5mmのセット玉を得た。厚さ2mmのシートで硬さ(アスカC)及び引張り強度を測定し、厚さ6mmのシートで熱伝導率、厚さ12.5mm×直径29mmのセット玉で圧縮永久歪[25%圧縮、180℃×22時間]を測定した結果を表1に記した。なお、硬さ、引張り強度及び圧縮永久歪はJIS K6249に準じて測定し、熱伝導率は、熱伝導系QTM−3(京都電子社製)で測定した。
【0037】
[実施例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度600)80質量部、両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された側鎖にビニル基を有する重合度200のジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.00045mol/g)20質量部、平均粒子径6μm、かさ密度が0.25g/cm3である珪藻土(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)5質量部、比重0.04、平均粒子径40μmの有機樹脂製中空フィラー(エクスパンセル社製、ExpancelDE)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として実施例1のメチルハイドロジェンポリシロキサン−1を5.0質量部(SiH基/アルケニル基=1.2)、エチレングリコールを3質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合して、できあがった組成物をシリコーンゴム組成物(2)とした。このシリコーンゴム組成物(2)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュア及びポストキュアし、比重、硬さ、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に記した。
【0038】
[実施例3]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された側鎖にビニル基を有する重合度が450のジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量0.00011mol/g)100質量部、平均粒子径7μm、かさ密度が0.39g/cm3である珪藻土(ラジオライトF、昭和化学工業株式会社製)8質量部、比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(平均粒子径:約0.01μm、かさ密度:0.04g/cm3、日本アエロジル社製アエロジル200)0.5質量部、実施例1の中空フィラー(マイクロスフィアーF80ED(前出))2.5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として側鎖のみにSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン−2(重合度25、SiH基含有量0.0069mol/g)1.4質量部(SiH基/アルケニル基=0.9)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル6質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合し、できあがった組成物をシリコーンゴム組成物(3)とした。このシリコーンゴム組成物(3)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュア及びポストキュアし、比重、硬さ、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表1に記した。
【0039】
[比較例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製R−972(前出))0.5質量部、平均粒子径90μmで真比重が0.02である有機樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン−1(重合度17、SiH基含有量0.0030mol/g)を4.5質量部(SiH基/アルケニル基=1.5)、トリエチレングリコールを5質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合し、できあがった組成物をシリコーンゴム組成物(1−1)とした。このシリコーンゴム組成物(1−1)を、実施例1と同様に、各温度でプレスキュア及びポストキュアし、比重、硬さ、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表2に記した。
【0040】
[比較例2]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製R−972(前出))7質量部、平均粒子径90μmで真比重が0.02である有機樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン−1(重合度17、SiH基含有量0.0030mol/g)を4.5質量部(SiH基/アルケニル基=1.5)、トリエチレングリコールを5質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合し、できあがった組成物をシリコーンゴム組成物(2−1)とした。このシリコーンゴム組成物(2−1)より、実施例1と同様に、各温度でプレスキュア及びポストキュアを実施し、比重、硬さ、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表2に記した。
【0041】
[比較例3]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100質量部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製R−972(前出))0.5質量部、平均粒子径4μm、真比重2.65、かさ密度が2.0g/cm3である石英粉(Tatsumori社製、クリスタライトVX−S)10質量部、平均粒子径90μmで真比重が0.02である有機樹脂製中空フィラー(松本油脂製薬社製マイクロスフィアーF80ED)4質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン−1(重合度17、SiH基含有量0.0030mol/g)を4.5質量部(SiH基/アルケニル基=1.5)、トリエチレングリコールを5質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けた後、更に白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部を混合し、できあがった組成物をシリコーンゴム組成物(3−1)とした。このシリコーンゴム組成物(3−1)より、実施例1と同様に、各温度でプレスキュア及びポストキュアを実施し、比重、硬さ、熱伝導率、圧縮永久歪を測定した。結果を表2に記した。
【0042】
[実施例4]
直径50mm×長さ30mmのアルミニウムシャフトの表面に、付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業社製)を塗付した。内面をプライマー処理した50μmのフッ素PFAチューブとアルミニウムシャフトとの間に実施例1のシリコーンゴム組成物(1)を充填し、120℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムロールを作製した。
このロールをPPC複写機の定着ロールとして組み込み、5000枚通紙したが何ら画像に異常は見られなかった。
【0043】
[比較例4]
実施例4で、シリコーンゴム組成物(1)に替えて、シリコーンゴム組成物(1−1)を使用し同様の実験を実施したところ、約1500枚目でロールが破壊してしまった。
【0044】
[比較例5]
実施例4で、シリコーンゴム組成物(1)に替えて、シリコーンゴム組成物(2−1)を使用し、同様の実験を実施したところ、約2200枚目付近より画像が乱れ始め、2500枚目で停止して、ロールを観察したところ、肉眼でもわかるほどの変形が見られた。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物100質量部に、(E)平均粒子径が200μm以下で、真比重が0.5以下である有機樹脂製中空フィラー:0.1〜50質量部、及び(F)平均粒子径が1〜30μmで、かさ密度が0.1〜0.5g/cmである無機充填剤:0.5〜30質量部を含有することを特徴とするシリコーンゴム組成物。
【請求項2】
熱硬化型オルガノポリシロキサン組成物が、
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を2個以上含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜50質量部、
(C)付加反応触媒:触媒量、
(D)ポリエーテル、多価アルコール又はその誘導体:0〜30質量部
からなることを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン100質量部に対するヒュームドシリカ及び沈降性シリカの合計含有量が5質量部以下であることを特徴とする請求項2記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項4】
硬化物の熱伝導率が0.15W/m・℃以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(E)有機樹脂製中空フィラーの真比重が0.01〜0.40であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(F)無機充填剤が珪藻土及び/又はパーライト粉砕物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項7】
(E)有機樹脂製中空フィラーが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルから選ばれるモノマーの重合体、並びにこれらモノマーのうち2種類以上の共重合体から選ばれるものであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項8】
電子写真方式の画像形成装置に使用されるトナー定着ロール用であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物。
【請求項9】
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を設けてなる熱定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が、請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化させて形成されたことを特徴とする定着ロール。
【請求項10】
ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおいて、このシリコーンゴム層が請求項1乃至8のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物を硬化させて形成されたことを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール。

【公開番号】特開2010−202728(P2010−202728A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47863(P2009−47863)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】