説明

シリンダー型スクリーン印刷機及びその印刷方法

【課題】少なくとも印刷中において、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔を被印刷物の厚さと同じに設定することにより、印刷時のスキージの圧接によるスクリーン版の伸び及び撓みを防止し、もって、高精度な印刷を行うことができるシリンダー型スクリーン印刷機及びその印刷方法を得る。
【解決手段】シリンダー型スクリーン印刷機であって、被印刷物1が外表面上に載置されることができる、回転可能なシリンダー2と、シリンダー2の上方に配置されたスクリーン版7とを備え、少なくとも印刷中は、シリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔が、被印刷物1の厚さと同じに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダー型スクリーン印刷機及びその印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、種々のシリンダー型スクリーン装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3208077号公報
【0003】
従来のシリンダー型スクリーン装置は、周知のように、グリッパーで被印刷物の前端を所定の排出位置まで把持して印刷を行っている。グリッパーは、シリンダーの凹部内で回動可能に支持されており、グリッパーの先端部は、被印刷部の前端を把持するために、シリンダーの外表面から半径方向外方に突出している。この突出寸法は、被印刷物の厚さ寸法よりも大きい。そのため、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔は、グリッパーの先端部の、シリンダーの外表面から半径方向外方に突出している分以上の隙間となるように設定されており、該隙間がある状態で印刷が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔が、グリッパーの先端部の、シリンダーの外表面から半径方向外方に突出している分以上の隙間、換言すれば被印刷物の厚さよりも大きい隙間である状態で印刷を行うと以下のような問題が発生する。すなわち、スクリーン印刷は、スキージがスクリーン版をシリンダー上の被印刷物に押し付けるように下方に圧接し、スクリーン版上のインクをスクリーン版の印刷パターンに対応した網目を通すことによって行われているが、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔が印刷中において被印刷物の厚さよりも大きいと、スクリーン版がスキージの圧接によって伸びて下方に撓んでしまい、その結果、高精度な印刷を行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、少なくとも印刷中において、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔を被印刷物の厚さと同じに設定することにより、印刷時のスキージの圧接によるスクリーン版の伸び及び撓みを防止し、もって、高精度な印刷を行うことができるシリンダー型スクリーン印刷機及びその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダー型スクリーン印刷機であって、被印刷物が外表面上に載置されることができる、回転可能なシリンダーと、前記シリンダーの上方に配置されたスクリーン版とを備え、少なくとも印刷中は、前記シリンダーの外表面の最上部と前記スクリーン版の下面との最短間隔が、被印刷物の厚さと同じに設定されていることを特徴とするシリンダー型スクリーン印刷機を提供する。
【0007】
また、前記シリンダー型スクリーン印刷機は、更に、前記シリンダーの外表面の最上部と前記スクリーン版の下面との最短間隔を調整する調整手段を備えている。また、前記調整手段は、前記スクリーン版を保持する保持手段にすることができる。
【0008】
また、本発明は、請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載のシリンダー型スクリーン印刷機を用いて印刷することを特徴とする印刷方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、少なくとも印刷中において、シリンダーの外表面の最上部とスクリーン版(刷版)の下面との最短間隔を被印刷物の厚さと同じに設定することにより、印刷時のスキージの圧接によるスクリーン版の伸び及び撓みを防止し、もって、高精度な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明にかかるシリンダー型スクリーン印刷機を実施するための最良の形態について図面を参照しながら述べる。図1には、本発明にかかるシリンダー型スクリーン印刷機の概略図を示しており、図2には、図1に示すシリンダー部分の部分拡大図を示している。図1及び図2に示すように、シリンダー型スクリーン装置は、スクリーン装置の上流側に配置されている供給コンベヤ(図示せず)から供給された被印刷物1が外表面上に載置されることができる、回転可能なシリンダー2を有しており、該シリンダー2は、主として、その外周にバキューム面(図示せず)が形成されていると共に、シリンダー2の中心軸(図示せず)に沿って伸びた凹部3が形成されており、図1において反時計方向に回転することができる。
【0011】
上記凹部3内には、グリッパー4、爪当て金5、前見当6などが配置されている。グリッパー4は、凹部3内で回動可能に支持されており、グリッパー4の先端は、シリンダー2の外表面上に配置された被印刷物1の先端部を把持する方向(図1において右側方向)に向いている。爪当て金5は、凹部3内でグリッパー4の先端と接触する位置に配置されている。また、前見当6は、シリンダー2の中心軸に沿った方向(図1において紙面に対して直交する方向)において適当な間隔をおいて爪当て金5の側端部に配置されている。図示のように、グリッパー4の先端部は、シリンダー2の外表面上に配置された被印刷物1の先端部を把持するために、シリンダー2の外表面からその半径方向外方に突出している。この突出量は、被印刷物1を把持する前が最も大きく、被印刷物1を把持している間が最も小さい。
【0012】
シリンダー2の上方には、スクリーン版7が配置されている。スクリーン版7には、印刷パターンに対応した網目が形成されており、スクリーン版7の外周には矩形状のスクリーン枠8が設けられている。このスクリーン版7は、保持手段10の補助枠9上に載置されて保持手段10に保持されている。保持手段(スクリーン保持装置)10は、後述するように、シリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔を調整する調整手段を構成しており、保持手段10に取り付けられた作動手段としてのアクチュエーター11によって上下方向(すなわち、シリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔を調整する方向)に移動することができ、この移動によってシリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔を調整することができるようになっている。また、スクリーン版7の上方には、スキージ12、スクレイパー13などが配置されている。
【0013】
スクリーン装置の上流側に配置されている供給コンベヤ(図示せず)から供給された被印刷物1は、シリンダー2の外表面上においてその先端が前見当6に当接することによって位置決めされ、この位置決め後に、グリッパー4によってその先端部が把持される。その後、シリンダー2がグリッパー4と共に反時計方向に回転し、この回転に同調しながら保持手段10によってスクリーン版7が図1において左方向移動し、図3に示す印刷開始位置から印刷が行われる。この印刷は、スキージ12がスクリーン版7をシリンダー2上の被印刷物1に押し付けるように下方に圧接し、スクリーン版7上のインク14をスクリーン版7の印刷パターンに対応した網目(図示せず)を通すことによって行われる。
【0014】
上述のようにして印刷が行われるが、少なくともこの印刷中は、シリンダー2の外表面の最上部(図3において符号20で示す位置)とスクリーン版7の下面との最短間隔が、被印刷物1の厚さと同じに設定されている。従って、印刷中において、印刷時のスキージの圧接によってスクリーン版が伸びて撓むことはなく、もって、高精度な印刷を行うことができる。
【0015】
この設定は、調整手段としての保持手段(スクリーン保持装置)を、被印刷物の厚さ(数値)に基づき、アクチュエーター11によって図1又は図3において下方向に移動させることにより行うことができる。上述のように、グリッパー4は、その先端部が、シリンダー2の外表面上に配置された被印刷部5の先端部を把持するために、シリンダー2の外表面からその半径方向外方に突出している。従って、グリッパー4がシリンダー2の回転に伴って、グリッパー4がスクリーン版7と接触する間は、アクチュエーター11によって保持手段10を、グリッパー4がスクリーン版7と接触しない位置まで上方向(スクリーン版7がシリンダー2の外表面に対して離れる方向)に移動させておく。上記実施の形態では、印刷が、グリッパー4がシリンダー2の回転に伴ってシリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との間を通過後に行われるため、この通過の後、図3に示す印刷開始位置において、アクチュエーター11によって保持手段10を、被印刷物の厚さ(数値)に基づき、下方向(スクリーン版7がシリンダー2の外表面に対して近づく方向)に移動させて、シリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔を、被印刷物1の厚さと同じに設定して印刷を行う。
【0016】
図4には、上記実施の形態の動作のフローを示している。図4に示すように、まず、被印刷物の厚さ(数値)を確認する。この被印刷物の厚さ(数値)に基づき、印刷中にシリンダー2の外表面の最上部(図3において符号20で示す位置)とスクリーン版7の下面との最短間隔を被印刷物1の厚さ(数値)と同じに設定することができるように適宜の手段(自動的手段または手動的手段)によって保持手段10(スクリーン保持装置)の高さが調整され、この調整の後、アクチュエーター11によって保持手段10を、グリッパー4がスクリーン版7と接触しない位置まで上方向(スクリーン版7がシリンダー2の外表面に対して離れる方向)に移動させる。
【0017】
次に、上述のように、被印刷物1がスクリーン装置の上流側に配置されている供給コンベヤ(図示せず)から供給された被印刷物1は、シリンダー2の外表面上においてその先端が前見当6に当接することによって位置決め(位置あわせ)され、この位置決め後に、グリッパー4によってその先端部が把持される。次に、スクリーン版7とシリンダー2が作動する。すなわち、シリンダー2がグリッパー4と共に図1において反時計方向に回転し、この回転に同調しながら保持手段10によってスクリーン版7が図1において左方向移動し、図3に示す印刷開始位置(設定位置)においてシリンダー2及び保持手段10とスクリーン版7が停止する。
【0018】
次に、保持手段(スクリーン保持装置)10がアクチュエーター11によって被印刷物の厚さ(数値)に基づき、印刷中にシリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔が被印刷物1の厚さ(数値)と同じになるまで下方向(スクリーン版7がシリンダー2の外表面に対して近づく方向)に移動させる。この移動量は、図示しない確認センサーによって検知されるようになっている。
【0019】
次に、スキージ12が下降し、そして、再び、シリンダー2がグリッパー4と共に図1において反時計方向に回転し、この回転に同調しながら保持手段10によってスクリーン版7が図1において左方向移動し、図3に示す印刷開始位置から印刷が開始される。そして、印刷終了位置(刷り終わり位置)において、シリンダー2及び保持手段10とスクリーン版7が停止する。この停止後、スキージ12が上方向に上昇し、そして保持手段10がアクチュエーター11によって所定の位置(例えば、グリッパー4がスクリーン版7と接触しない位置)まで上方向(スクリーン版7がシリンダー2の外表面に対して離れる方向)に上昇される。次に、シリンダー2とスクリーン版7が予め決められた定位置まで移動して停止する。その後、図5に示すように、スクレイパー13が下降して、スクリーン返し方向(図5において左方向)に移動し、返し工程が行われる。
【0020】
上記実施の形態では、スクリーン装置は、シリンダー2にグリッパー4を備えているが、グリッパーを備えていないスクリーン装置にも本発明を適用することができる。また、上記実施の形態では、シリンダー2に対して、スクリーン版7が保持手段10によって上下方向に移動するようになっているが、これに限らず、例えば、図6に示すように、シリンダー2の中心軸を上下方向(図6において符号21で示す方向)に移動させることによって、シリンダー2の外表面の最上部とスクリーン版7の下面との最短間隔を調整することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明にかかるシリンダー型スクリーン印刷機の実施の形態を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示すシリンダー型スクリーン印刷機のシリンダー部分の部分拡大図である。
【図3】図3は、上記実施の形態を示す別の概略図である。
【図4】図4は、上記実施の形態の動作を示すフロー図である。
【図5】図5は、上記実施の形態を示す別の概略図である。
【図6】図6は、別の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0022】
1 被印刷物
2 シリンダー
3 凹部
4 グリッパー
5 爪当て金
6 前見当
7 スクリーン版
8 スクリーン枠
9 補助枠
10 保持手段
11 アクチュエーター
12 スキージ
13 スクレイパー
14 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー型スクリーン印刷機であって、
被印刷物が外表面上に載置されることができる、回転可能なシリンダーと、
前記シリンダーの上方に配置されたスクリーン版とを備え、
少なくとも印刷中は、前記シリンダーの外表面の最上部と前記スクリーン版の下面との最短間隔が、被印刷物の厚さと同じに設定されていることを特徴とするシリンダー型スクリーン印刷機。
【請求項2】
前記シリンダー型スクリーン印刷機は、更に、前記シリンダーの外表面の最上部と前記スクリーン版の下面との最短間隔を調整する調整手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシリンダー型スクリーン印刷機。
【請求項3】
前記調整手段は、前記スクリーン版を保持する保持手段であることを特徴とする請求項2に記載のシリンダー型スクリーン印刷機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちのいずれか一つに記載のシリンダー型スクリーン印刷機を用いて印刷することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−73032(P2009−73032A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244005(P2007−244005)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(392021344)株式会社桜井グラフィックシステムズ (15)
【Fターム(参考)】