説明

シリンダー成形機の拡張カウチニップ

シリンダーモールド(14)またはふるい機と実質的に形状が一致するような関係をなす凹形状の圧力表面を備えたシュー(28)を有するシリンダー機において使用される装置。シューの凹形状の圧力表面は、シリンダーモールド(14)またはふるい機を覆う成形布(16)の量を増大させるので、成形布(16)とシリンダーモールド(14)またはふるい機の間で生じる摩擦量が増大する。摩擦が増大することで、成形布とシリンダーモールドまたはふるい機の間のトルク伝達が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、抄紙機や繊維セメント(FC)製品といった他の産業に適用されるシリンダー成形機に関する。より詳しくは、成形布からシリンダーモールドまたはふるい機へとより効率的にトルクを伝達するために、従来のカウチロール(couch roll)に代わる、シリンダーモールドの形成区間におけるプレッシャーシューを有する拡張カウチニップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、紙、板紙およびカーボン用板紙に限られない紙製品を作るための工程の間、セルロース繊維のウェブは、繊維状のスラリーを抄紙機の形成区間にある移動形成布上に沈積させることによって、すなわちセルロースの繊維を水分散させることによって形成される。大量の水が形成布を通してスラリーから取り除かれ、形成布の表面にはセルロース繊維のウェブが残る。
【0003】
新しく形成されたセルロース繊維のウェブは、形成区間から一続きのプレスニップを有するプレス区間へと進む。セルロース繊維のウェブは、1つのプレス布、またはしばしば2つのそのようなプレス布の間で支持されているプレスニップを通過する。プレスニップにおいて、セルロース繊維のウェブは、水分を搾り、およびセルロース繊維のウェブが紙シートになるように互いをウェブのなかで付着させる圧縮力を受ける。1つまたは複数のプレス布に水は受け入れられ、望ましくは紙シートへと戻ってこない。
【0004】
最終的に、紙シートは、蒸気によって内部から加熱された、少なくとも一続きの回転乾燥ドラムまたはシリンダーを有する乾燥区間へと進む。新しく形成された紙シートは連続的に乾燥布によって一続きのドラムの周囲を蛇行している通路へと向けられ、そこで紙シートはドラムの表面に対して近接して保持される。加熱されたドラムは、蒸発によって望ましいレベルへと紙シートに含まれた水を減少させる。
【0005】
現在、紙、板紙およびカーボン用板紙の連続したシートを形成する多数の方法が存在する。例えば、連続した紙シートは、多くの別個の形成区間を用いて形成されることが可能である。しかし、マルチ長網抄紙機を設置するのに必要な資本コストは高く、要求される全資本コストのためにしばしばその装置への変更は実行可能なものではない。加えて、このタイプの抄紙機を設置するには、かなりの広さの空間が必要となる。形成方法の選択において考慮されるべきもう1つの要素として、使用する形成工程において、製造される板の重さまたは開発される板の性質がある。したがって、ある特定の適用において編成されたシリンダーモールドを使用することが好ましい。
【0006】
図1には、シリンダー形成機を使用するシート形成の基本的な形態が示されており、それは以下のようになっている。織布よりなるスリーブを有する水平シリンダー(シリンダーモールドまたはふるい機)14は、シリンダーの円周の小さな弧部分が紙または他のものが堆積したレベルより上にくるように、紙または他のものの堆積20を有するコンテナ(タンク)22のなかに4分の3ほど入れられている。この場合の堆積は繊維の滞留状況および水分によって規定される。繊維はセルロースであり、それは合成物でも自然物でもよい。製品特性の向上のために必要な無機質といった他の添加物もまた存在している。滞留している繊維に含まれている水21は織布のスリーブを通して排出され、そうすることで繊維の層が布スリーブの表面に沈積する。排水は、タンク22における繊維堆積レベルとモールド14の内部の溜まり水23の間にある喫水差によって生じる。その差は成形点(making head)として知られている。
【0007】
それから、移動布または“成形布”16は、ほぼ頂部の位置においてシリンダーモールド14と接触するカウチロール12手段によって圧縮される。そうすることで、布スリーブの上で形成された布の層(繊維のウェブまたは滞留している繊維)は、成形布16へと移送または並べられ、布スリーブから離れていく。布スリーブにおいて形成された布の層18は成形布16へと移送されるのだが、それは成形布16が布スリーブより多孔質でなく滑らかであるという長所によってなされるのであり、大気圧が移送を可能とする。カウチロール12がシリンダーモールドまたはふるい機14にある布スリーブに対して成形布16を押しつけることによって、成形布16は多重タスクを実行する。成形布16は水分を含んだ繊維のウェブ層18をシリンダーモールド14上のスリーブ表面から取り上げる。また、成形布16は全形成/プレス区間における駆動ベルトとしても働く。最終的に、成形布は、水分が繊維の層から圧縮されることによって、または吸い取られることによって除去されるように、布の内部に空隙容量または貯蔵所を設けることによって、繊維のウェブ層を部分的に脱水する。シリンダーモールド14は一般的に駆動手段と結合していないので、成形布16はシリンダーモールド14が回転する源である。一度繊維のウェブ18が成形布16へ移送されたら、シリンダーモールド14のスリーブはスプレーによって洗われ、成形布16へ移送されなかった繊維材料が、新しい層18を形成するのに使用される繊維の堆積貯蔵所20のなかへと入り込まないようにされる。
【0008】
図2に示されているように、多くのそのようなユニットが、一連のマルチシリンダー機に配置されている。マルチシリンダー機において、マルチプーリーウェブまたはシートは連続的に製造される。各々の形成ユニットは一般的に自分の堆積供給と、各々のシリンダーモールドがそれ自身における個別のウェブ形成ユニットであるように、効果的に堆積の内部から水を除去する方法を有している。成形布は連続するユニットを通過するにつれ、付加的な繊維の層が、すでに成形布に付着している繊維のウェブに移送または並べられる。
【0009】
また、上記のタイプのシリンダーモールド形態は、繊維セメント(FC)板の製造においても使用されてよい。FC産業において、シリンダーモールドの形態は“ハチェック(Hatscheck)”工程として知られている。この工程において、セメント質のスラリーが、水、セルロースの繊維、シリカ、セメントおよび意図する適用にしたがって製品に特定の性質を含有させるために選択された他の添加物から、最初に形成される。抄紙と同様に、ふるい機であるシリンダーまたはモールドが、スラリーを含有するタンクに入れられている。シリンダーは、成形布の底部走行によって漸進的に駆動されて回転する。成形布がシリンダーを越えて通過し、シリンダーの網状のふるいに接触することによって、ふるい上で形成された繊維の層は成形布へと移送される。抄紙におけるのと同じく、数多くのこれらのユニットはマルチシリンダー機に一続きに配置されることが可能である。この過程は、FC板およびFCパイプに限定されることなく、建設業において使用される多くのタイプのFC製品を作るために適用されることが可能である。
【0010】
現在、様々なタイプのシリンダーモールドおよびタンクの配列が存在する。この点に関して、1つの典型的なシリンダーモールドが、スパイダー(spider)として知られているスポークを囲むように固定されている鋳鉄コアの周囲に構築されている。スパイダーは同心リムを支持し、その同心リムの外側端部には、直径が約1センチで互いが約3.5センチ離れており、中心シャフトの軸と平行しているロッドを運ぶための溝が付けられている。シリンダーの周囲には連続するワイヤが巻かれている。この骨格は、一般的にステンレス鋼ワイヤで覆われており、通常30メッシュ(mesh)から50メッシュの範囲にある。合成スリーブは、しばしばポリエチレン(PE)、フッ化ビニリデン樹脂(KYNAR(登録商標))およびポリフェニレン・サルファイド樹脂(RYTON(登録商標)、PPS)などから作られており、一般的に織製品で、脱水をコントロールすることによって形態をコントロールすることで繊維支持を増加させるために、シリンダーモールドまたはふるい機の上に設置される。しかし、合成スリーブの性質および織パターンによっては、モールドと布の間の摩擦が減少し、布が動きにくくなる。モールドにトルクを伝達する布の能力は、結果としてモールドの回転を引き起こすものであるが、張力(カウチロールからの圧力)、およびカウチロールとモールドの間の接触量に影響を受けるのであり、その両者がそれらカウチロールとモールドの間の摩擦力の量に影響を及ぼす。したがって、改善された手段では、全てのシリンダーモールドを駆動するために、摩擦力を増大させ、成形布からシリンダーモールドへとトルクを効果的に伝達することが必要とされる。
【0011】
前述したように、様々なタイプのシリンダーモールドおよびタンクの配列が存在するのであるが、本発明は様々なシリンダーモールドおよびタンクの配列に等しく適用され得るので、それらの詳細については記載しない。
【特許文献1】米国特許第5695612号明細書
【特許文献2】国際公開第01/51703号パンフレット
【特許文献3】米国特許第4308097号明細書
【特許文献4】米国特許第4880550号明細書
【特許文献5】米国特許第4919760号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術では、布をシリンダー形成機にあるシリンダーモールドまたはふるい機に駆動させる能力を増大させてこなかった。例えば、特許文献1では、圧力を紙ウェブに加えるための背部要素と組み合わされたプレッシャーシューを使用する抄紙機における紙ウェブのためのプレプレス(prepress)が開示されている。ウェブは負荷シューと背部要素の間を通過し、好ましくは2つのワイヤまたは布の間に配置される。紙ウェブから水分を取り除く目的で負荷シューに圧力を加えるために、媒介物が使用される。また、その媒介物は、負荷シューのウェブプレートの全表面を円滑にするために、負荷シューにある通路を通過させられる。ここで、負荷シューはシリンダーモールドまたはふるい機と組み合わせて使用されはしない。負荷シューの摩擦は、成形布とシリンダーモールドの間の摩擦を増加させるためのものではなく、それはシリンダー形成機のシリンダーモールドまたはふるい機を駆動するための成形布の能力を増大させるものである。
【0013】
同様に、特許文献2には、ウェブが形成される間に紙ウェブをプレプレスするための方法および装置が開示されている。紙のウェブまた板紙は組になった形成ワイヤの間に挟まれている。そのとき、様々な実施形態において、形成ワイヤおよび紙ウェブの積層は1つ以上のプレッシャーニップを通過するのであり、前記プレッシャーニップは、ウェブの長さの一部分に沿ってウェブを押すプレッシャーシューを有する1つ以上のロールニップまたは拡張ニッププレスである。また、この例におけるプレッシャーシューは、成形布とシリンダーモールドの間の摩擦を増大させることはなく、したがって、シリンダー形成機のシリンダーモールドを駆動する布の能力を増大させるものである。
【0014】
特許文献3では、ワイヤ上に滞留繊維の紙ウェブを製造するための紙ウェブ形成機が開示されている。形成機は、滞留パルプがシューの滑動表面上に出ることができる開口部を有する凸形状のシューからなる。この形成機を使用する配置構造はまた、ウェブを押すためのカウチロールを有しており、ウェブを移動(成形)布へと横たわらせる。形成機は、カウチロールを取り替えることなく、シリンダーモールドを有する“ニッピング(nipping)”の関係(そこにおいて、背部要素と組み合わされたシューは繊維状のウェブに圧力を加える)にあるものでもない。
【0015】
特許文献4では、抄紙機は固定カウチ装置を有する従来の回転カウチロールを取り替えることによって修正されている。固定カウチ装置は、ウェブが滑動する、凸形状に湾曲して穴があいた上部表面を備えた部材を有している。凸形状に湾曲したカウチ装置は、シリンダーモールドと“ニッピング”の関係にないため、その装置は摩擦を増大させて、モールドを回転させるためにシリンダーモールドに成形布からトルクを伝達するために使用されはしない。
【0016】
最後に、特許文献5では、上部ワイヤおよび下部ワイヤを有する抄紙機のためのウェブ形成機が開示されている。形成シューは、下部ワイヤのループの内部でウェブ走行方向にある第1の形成ロールの後に配置されており、2つのワイヤ脱水領域部を導く。形成シューは、下部ワイヤループを導くための凸形状に湾曲したデッキ(deck)を有している。抄紙機における形成シューの配置は、吸引することなしにウェブから水分を取り除くこと、および水分を集めることを容易にする。その代わり、水分は運動エネルギー、および部分的には重力エネルギーに基づいて収集および除去される。凸形状の湾曲したデッキを有する形成シューはシリンダーモールドと“ニッピング”の関係にない。したがって、その装置は、モールドを回転させるために、摩擦を増大させ、シリンダーモールドにピックアップ布からトルクを伝達するためには使用されない。
【0017】
したがって、シリンダー形成機で使用するために、プレッシャーシューを有する拡張ニップにおいて、シリンダーモールドまたはふるい機を駆動させるために成形布とシリンダーモールドの間の摩擦が増大するように、成形布のより大きな領域に対するニップを増大させるという布の改善案が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の目的は、シリンダーモールド機にあるシリンダーモールドを覆う成形布の量を増大させることが可能な、シリンダー形成機に設けられる拡張カウチニップを提供することであり、そうすることで、成形布からシリンダーモールドへとより効率的にトルクを伝達することができるようになる。
【0019】
本発明は、シリンダーモールド機において使用される装置に向けられている。シューは、シリンダーモールドまたはふるい機と形状が一致するような関係をなす凹形状の圧力表面を有するように設けられている。凹形状の圧力表面は、シリンダーモールドまたはふるい機を覆う成形布の量を増大させ、よって、成形布とシリンダーモールドまたはふるい機の間で生じる摩擦量が増大する。摩擦量が増大することで、トルク伝達も増す。その装置は、シューにかかる圧力を増やすまたは減らすための負荷手段と、シューの望ましい部分に圧力を適用するための手段とからさらになる。
【0020】
本発明の他の様態は、シリンダーモールドまたはふるい機を覆う成形布の量を増大させるための方法である。その方法は、シリンダーモールドまたはふるい機と形状が一致するような関係をなし、シリンダーモールドまたはふるい機を覆う成形布の量を増大させることが可能な凹形状の圧力表面を有するシューを設けることよりなる。覆う布の量が増えることで、成形布とシリンダーモールドまたはふるい機の間で生じる摩擦量が増大する。摩擦が増大することで、トルク伝達が増す。その方法は、成形布がシリンダーモールドまたはふるい機を駆動させることができるようにプレッシャーシューに圧力を加えることからさらになる。
【0021】
本発明を特徴づける新規性を有する様々な要素は、本明細書に付属しており、かつ本明細書の一部を形作っている請求項において特に記載されている。本発明、その操作上の利点および使用者によって得られる特殊な目的をより良く理解するために、本発明の好ましい実施形態が、対応する構成要素が同じ参照番号で記されている付属の図面において示されているので、本明細書の記載事項と併せて参照していて頂きたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
例を与えるだけで本発明を限定するものではない下記の詳細な記載は、参照番号が各要素および部分に記されている付属の図面を参照することで最も良く理解することが可能である。
【0023】
本発明は、シリンダーモールド機のシリンダーモールドにある従来のカウチロールに代わるプレッシャーシューを有する拡張カウチニップに関する。本発明の可能な様態は、紙、板紙およびカーボン用板紙に限られない紙製品の製造を含む。また、本発明は、FC板またはパイプに限られない繊維セメント(FC)製品を製造するために使用されてもよい。
【0024】
以下の記載において、参照番号によって指定される部材は、図に対応する部分が記載されている。図において、矢印は要素の回転方向を示しており、同様に左から右へと成形布16の移動方向が指示されている。
【0025】
ここにおいて、シリンダーモールドはふるい機およびモールドと同義であり、成形布は布およびプレス布と同義であり、繊維ウェブはウェブと同義であり、プレッシャーシューはシューと同義である。
【0026】
図1には、一般的なソフトラバー製カウチロール12を使用して繊維ウェブを形成するための従来のシリンダーモールド機10が示されている。図3には、従来のカウチロールがプレッシャーシュー28を有する拡張カウチニップと置換されたシリンダーモールド機26が示されている。カウチロール12がプレッシャーシュー28を有する拡張カウチニップと置換されていることで、布16と接触する圧力表面(凹状表面)29の領域が増大している。成形布16と接触する圧力表面29が増大することによって、成形布がシリンダーモールドまたはふるい機14上を覆っている量が増大し、したがって、より大きなトルクおよびより大きな駆動力が成形布16からシリンダーモールド14へと伝達されることが可能となる。
【0027】
図1において、カウチロール12、成形布16およびシリンダーモールド14の間の接触領域は、カウチニップ20において小さな個別の領域にだけ生じる。成形布16がカウチニップ20を通過し、圧力がカウチロール12によって加えられるにしたがい、トルクは成形布16からシリンダーモールド14へと伝達され、結果としてシリンダーモールド14が回転する。しかし、成形布16とシリンダーモールド14の間にある接触領域と結合しているシリンダーモールド14上の合成スリーブは、結果として、摩擦を減少させ、成形布16がモールド14を(回転)駆動させることを困難にする。
【0028】
図3に示してある拡張カウチニッププレッシャーシュー28は、シリンダーモールド14と形状が一致するような関係をなす凹形状の圧力表面29を有している。圧力表面29の凹形状は、布16がシリンダーモールド14を覆っている量を増大させることによって、シリンダーモールド14と接触する成形布16の領域を増大させている。このようにして覆う領域が増大することによって、シリンダーモールド14と成形布16の間の摩擦が増大し、布16がモールド14を(回転)駆動させる能力が増す。加えて、成形布16と接触する圧力表面29の領域が増大し、繊維ウェブ18と成形布16が接触する時間が増えることで、繊維ウェブ18からの脱水力も向上する。
【0029】
成形布16がシリンダーモールド14を覆う量は、次の2つの要素に影響を受ける。1)成形布16と接触するプレッシャーシュー28の圧力表面29の大きさ、および2)シリンダーモールド14に対するプレッシャーシュー28の円周上の位置。よって、成形布16と接触する圧力表面29が大きいほど、成形布16がモールド14を覆う量およびモールド14における摩擦力は増大する。成形布16と接触する圧力表面29が小さいほど、成形布16がモールド14を覆う量およびモールド14と布16の間の摩擦力は減少する。
【0030】
しかしまた、成形布16が覆う量および摩擦力は、シリンダーモールド14に対するプレッシャーシュー28の円周上の位置に影響を受ける。例えば、本発明の1つの実施形態にしたがうと、プレッシャーシュー28は図4に示してあるようにシリンダーモールド14の高い位置に配置してある。この構成では、成形布がシリンダーモールド14を覆う量17は、モールド14と接触する圧力表面29の領域と等しくなる。しかし、回転方向においてシリンダーモールド14の下流方向にプレッシャーシュー28が配置されている場合では、成形布16が覆う量も影響を受ける。本発明の他の実施形態が示されている図5では、プレッシャーシュー28が回転方向においてシリンダーモールド14の下流側に配置されている。この構成にすると、結果として成形布が覆う部分19が増大するので、シリンダーモールド14の周囲を覆う成形布16において圧力表面29と接触しない部分21が生じる。こうなることで、成形布16の覆う量が増大するので、成形布16とシリンダーモールド14の間の摩擦力が増大し、トルク伝達力と駆動力が増える。
【0031】
さらに、プレッシャーシュー28は、限定されはしないが、空気力、油圧力および/またはスプリング、またはそれらを組み合わせたものといった負荷手段30に結合されており、そうすることで、布16とモールド14の間の摩擦力が増大するようにプレッシャーシュー28には圧力が加えられてもよい。プレッシャーシュー28に加えられる圧力の量を増やすまたは減らすことで、使用者が、布16とシリンダーモールド14の間で生み出される摩擦力の量、したがって布16とモールド14の間で伝達されるトルクの量をコントロールすることが可能となる。この結果、使用者は、シリンダーモールド14が回転する速度をコントロールすることがさらに可能となる。加えて、シュー28に加えられる圧力はプレッシャーシュー28の前端32および後端34といったシュー28の望ましい部分に適用されることが可能であるので、プレッシャーシュー28は節を有している、または他の方法で調節可能なようにされることが可能である。
【0032】
本発明の拡張カウチニップは、複数の異なる方法で、摩擦力、したがって成形布16とシリンダーモールド14の間のトルクの伝達に影響を与えるので、シリンダー形成機は数多くの構成を取ることが可能である。例えば、摩擦力の増大は、成形布16と接触するより大きな圧力表面領域29を有するより大きなプレッシャーシュー28を用いて、より小さな負荷を加えることによって獲得されることが可能である。他にも、布16とシリンダーモールド14の間の摩擦力の増大は、高い負荷が加えられた小さなプレッシャーシュー28を使用することで、または図5に示してあるように回転方向においてシリンダーモールド14の下流側に配置された小さなシュー28を使用することで獲得されることも可能である。基本的に、サイズ、位置および/またはプレッシャーシュー28に加えられる圧力を変更するといった多数の構成が、望ましい量の伝達されるトルクを得るために使用されることが可能であるということは、当業者に明らかなことである。
【0033】
プレッシャーシュー28は、限定されはしないが、例えばジルコニア酸化物、ポリマーまたは無機の表面を有する金属、または固体セラミックスといった、寸法安定性および耐摩耗性を備えた材料から作られることができる。プレッシャーシュー28に適した他の材料は、当業者にとって明らかである。シュー28は成形布16の非繊維ウェブ形成側25に対しては低摩擦力および摩耗もせず、液体に対して不浸透性を有しているので、成形布16と接触するシュー28の凹形状の圧力表面29は実質的に滑らかである。基本的に、図6に示してあるように、モールドのスリーブ15、繊維の層18、成形布16およびプレッシャーシュー28からなる拡張カウチニップは、サンドイッチ構造をなしている。成形布16のそれぞれの側部には2つの別個の独立した摩擦力が働いている。それは、プレッシャーシュー28と成形布16の摩擦力36と、成形布16/繊維の層18とモールドのスリーブ15の間の摩擦力である。したがって、成形布16とプレッシャーシュー28の間の摩擦が減少しても、シリンダーモールド14を駆動させる成形布16の能力には影響を与えない。摩擦が減少すると熱に変換されるエネルギーが少なくなるので、プレッシャーシュー28と成形布16の間の摩擦が減少すると、シリンダーモールド14を駆動するために使用される機械的エネルギーが減少する。また、摩擦が減少することで、プレッシャーシュー29が布16に対して摩耗しにくく、そして破壊されなくなるので、成形布の使用寿命は延びる。
【0034】
最後に、本方法によって多数の水分を有する層から形成された製品においては、シートの圧密性、例えば強度、内部層の密着度などが重要となる。また、繊維のウェブ18は長時間に渡って圧力を加えられるので、望まれる製品の価値レベルが増す。
【0035】
本発明の好ましい実施形態および変更例がこれまで詳細に記載されてきたが、本発明はそれによって限定されるものではなく、付属の請求項によって規定されている発明の精神および範囲から逸脱しない限り、他の変更例および様々な別形態が当業者によってもたらされることが可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】一般的なソフトラバー製カウチロールを用いた、従来のシリンダー形成機の断面図である。
【図2】マルチシリンダー機の断面図である。
【図3】本発明の1つの実施形態にしたがうプレッシャーシューを有する拡張カウチニップを備えたシリンダー形成機の断面図である。
【図4】本発明の1つの実施形態にしたがうシリンダー形成機におけるプレッシャーシューの位置を示す断面図である。
【図5】本発明の1つの実施形態にしたがうシリンダー形成機におけるプレッシャーシューの他の位置を示す断面図である。
【図6】拡張カウチニップにおけるサンドイッチ構造の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 従来のシリンダーモールド機
12 カウチロール
14 シリンダーモールドまたはふるい機
15 スリーブ
16 成形布
17 成形布が覆う部分
18 繊維のウェブ層
19 成形布が覆う部分
20 紙または他のものの堆積/カウチニップ
21 水/成形布が圧力表面と接触しない部分
22 コンテナ(タンク)
23 溜まり水
25 非繊維ウェブ形成側
26 本発明のシリンダーモールド機
28 プレッシャーシュー
29 圧力表面
30 負荷手段
32 前端
34 後端
36 摩擦力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダー機において使用するためのシリンダーモールド装置であって、
シリンダーモールドまたはふるい機と実質的に形状が一致するような関係をなす、実質的に凹形状の圧力表面を有するシューからなり、
前記凹形状の圧力表面によって、前記シリンダーモールドまたはふるい機を覆う成形布の量が増大することで、前記成形布と前記シリンダーモールドまたはふるい機の間で生じる摩擦量が増大し、したがってトルクの伝達量が増えることを特徴とするシリンダーモールド装置。
【請求項2】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、寸法安定性および耐摩耗性を有する材料より構成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記寸法安定性および耐摩耗性を有する材料は、ジルコニア酸化物、ポリマー表面を有する金属、無機表面を有する金属および固体セラミックスからなるグループより選択されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、実質的に滑らかであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記実質的に滑らかな表面は、液体に対して不浸透性を有することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記実質的に滑らかな表面は、成形布と接触することを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、前記シリンダーモールドまたはふるい機を駆動させるための圧力を生み出すことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、前記成形布と接触する表面領域がカウチロールを用いるときよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記シューにかかる圧力を増やすまたは減らすための負荷手段と、
前記シューの望ましい部分に前記圧力を適用するための手段と、
からさらになることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記負荷手段は、空気力、油圧力およびスプリングからなるグループより選択されることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記負荷手段は、前記空気力、前記油圧力および前記スプリングのいずれかを組み合わせたものであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記圧力適用手段は、節を有する構造をしていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記望ましい部分は、前記シューの前端であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記望ましい部分は、前記シューの後端であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項15】
前記シューに加えられる圧力の量は、前記成形布と前記シリンダーまたはふるい機の間で生じる摩擦量と対応することを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記摩擦は、前記成形布から前記シリンダーモールドまたはふるい機へと伝達されるトルクの量と対応することを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記装置は、紙、板紙、カーボン用板紙、繊維セメント板または繊維セメントパイプを製造するための前記シリンダー機で使用されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項18】
シリンダー機において成形布からシリンダーモールドまたはふるい機へと伝達されるトルクの量を増大させるための方法であって、
前記シリンダーモールドまたはふるい機と実質的に形状が一致するような関係をなす凹形状の圧力表面を有するシューを設ける工程と、
前記シリンダーモールドまたはふるい機を覆う成形布の量を増大させることで、前記成形布と前記シリンダーモールドまたはふるい機の間に生じる摩擦量を増大させて、トルク伝達を増やす工程と、
からなることを特徴とする、シリンダー機において成形布からシリンダーモールドまたはふるい機へと伝達されるトルクの量を増大させるための方法。
【請求項19】
前記シューにかかる前記圧力を増やすまたは減らすための負荷手段を設ける工程と、
前記シューの望ましい部分に前記圧力を適用するための手段を設ける工程と、
からさらになることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
圧力は、前記プレッシャーシューに加えられることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記圧力表面は、前記成形布と接触する圧力表面がカウチロールを用いるときよりも大きいことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記負荷手段は、空気力、油圧力およびスプリングからなるグループより選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記負荷手段は、前記空気力、前記油圧力および前記スプリングのいずれかを組み合わせたものであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記圧力適用手段は、節を有する構造をしていることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記望ましい部分は、前記シューの前端であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記望ましい部分は、前記シューの後端であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記方法は、紙、板紙、カーボン用板紙、繊維セメント板または繊維セメントパイプの製造において、成形布からシリンダーモールドまたはふるい機へと伝達されるトルクの量を増大させるために使用されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの成形布と、少なくとも1つのシリンダーモールドまたはふるい機とを有する紙製品または繊維セメント製品を製造するための装置であって、
シリンダーモールドの外側円周表面の一部分に配置された実質的に凹形状の圧力表面を有する負荷がかけられたシューからなり、
前記シューは、前記シリンダーモールドまたはふるい機を覆う前記成形布の量を増加させ、
覆う量が増加することで、前記成形布と前記シリンダーモールドまたはふるい機の間で生じる摩擦量が増大し、したがって前記成形布と前記シリンダーモールドまたはふるい機の間のトルク伝達が増すことを特徴とする紙製品または繊維セメント製品を製造するための装置。
【請求項29】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、寸法安定性および耐摩耗性を有する材料より構成されることを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、前記シリンダーモールドまたはふるい機を駆動させるための圧力を生み出すことを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記実質的に凹形状の圧力表面は、前記成形布と接触する表面領域がカウチロールを用いるときよりも大きいことを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記シューにかかる前記圧力を増やすまたは減らすための負荷手段と、
前記シューの望ましい部分に前記圧力を適用するための手段と、
からなることを特徴とする請求項30に記載の装置。
【請求項33】
前記負荷手段は、空気力、油圧力およびスプリングから選択されるグループより選ばれることを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記負荷手段は、前記空気力、前記油圧力および前記スプリングのいずれかを組み合わせたものであることを特徴とする請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記圧力適用手段は、節を有する構造をしていることを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項36】
前記シューに加えられる圧力の量は、前記成形布と前記シリンダーモールドまたはふるい機の間で生じる摩擦量と対応することを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項37】
前記摩擦は、前記成形布から前記シリンダーモールドまたはふるい機へと伝達されるトルクの量と対応することを特徴とする請求項36に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−537031(P2008−537031A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507722(P2008−507722)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/013764
【国際公開番号】WO2006/115796
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591097414)アルバニー インターナショナル コーポレイション (110)
【氏名又は名称原語表記】ALBANY INTERNATIONAL CORPORATION
【Fターム(参考)】