説明

シロアリ駆除装置

【課題】誘引されたシロアリを装置内に長期間留めおくことができ、大量のシロアリを捕獲して確実に駆除することができるシロアリ駆除装置を提供する。
【解決手段】シロアリが接触を好むセルロースを含む屋根材2と、前記屋根材の下部周縁に間隔を空けて取り付けられ長手方向に沿う周面が鏡面仕上げされた複数の柱材3と、上部が開口し該開口7の内面7aの周縁に前記各柱材3が設置されるシロアリ捕獲容器4と、を備え、前記シロアリ捕獲容器4は、前記開口7の内面7aが水平な状態から傾斜していき、奥にいくにしたがって急傾斜になって底部に至り、該底部7cにシロアリを捕獲可能な網目状の第1トラップ10が設けられたシロアリ捕獲室5と、該シロアリ捕獲室5の下部に設けられて前記第1トラップ10の下に所定深さの空間部を確保し、底部に前記第1トラップ10を通過したシロアリを捕獲可能な網目状の第2トラップ11が設けられた空間室6と、から構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロアリを誘引して捕獲し、駆除を行うシロアリ駆除装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋等の木造構造物をシロアリの被害から保護するために、シロアリの存在する可能性のある領域、あるいは、シロアリの被害を予防することが必要な領域に殺虫剤を散布する方法が行われている。
【0003】
しかし、巣の所在を特定せずに多量の殺虫剤を散布することは、生き残りのシロアリに薬剤耐性を与えるなどの問題があり、環境への影響等を考慮すると大量の殺虫剤を散布することは好ましくない。
【0004】
そこで、容器内に誘引剤を設けてシロアリを容器内に集め、容器内にシロアリ駆除用の薬剤を散布すると、この薬剤を摂餌または接触したシロアリが駆除されると共に、このようなシロアリが帰巣後に死亡することで巣内に薬剤が散布され、営巣しているシロアリの群れ全体を駆除できる可能性がある。
【0005】
例えば、特開平9−313084号公報に記載のシロアリの誘引装置は上面開口の容器にシロアリの餌木を収容し、前記容器の底部に排水管を連結し、この排水管にシロアリが通過可能な孔を形成してなる構成である。
【特許文献1】特開平9−313084号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来のシロアリの誘引装置は、容器内にシロアリ駆除用の薬剤を散布することが必要となるために、容器内にシロアリを長期間留める必要がある。その場合、死んだシロアリにカビが生えたりするとカビの生えたシロアリを忌避する習性によって、シロアリが容器に寄りつかなくなり、結果としてシロアリを装置内に長期間留めておくことができず、駆除効果を高めることができない。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、誘引されたシロアリを装置内に長期間留めおくことができ、大量のシロアリを捕獲して確実に駆除することができるシロアリ駆除装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明は、シロアリが接触を好むセルロースを含む屋根材と、前記屋根材の下部周縁に間隔を空けて取り付けられ長手方向に沿う周面が鏡面仕上げされた複数の柱材と、上部が開口し該開口の内面の周縁に前記各柱材が設置されるシロアリ捕獲容器と、を備え、前記シロアリ捕獲容器は、前記開口の内面が水平な状態から傾斜していき、奥にいくにしたがって急傾斜になって底部に至り、該底部にシロアリを捕獲可能な網目状の第1トラップが設けられたシロアリ捕獲室と、該シロアリ捕獲室の下部に設けられて前記第1トラップの下に所定深さの空間部を確保し、底部に前記第1トラップを通過したシロアリを捕獲可能な網目状の第2トラップが設けられた空間室と、から構成されていることを特徴とするシロアリ駆除装置である。
【0009】
また、請求項2記載の発明において、前記屋根材は、前記柱材により前記シロアリ捕獲容器に装着されて、外側に飛び出した周縁が前記シロアリ捕獲容器の庇を形成している請求項1に記載のシロアリ駆除装置である。
【0010】
また、請求項3記載の発明において、前記シロアリ捕獲容器は、内面が鏡面仕上げに加工され、又は、樹脂で被覆されて滑り易く形成されている請求項1に記載のシロアリ駆除装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、シロアリが接触を好むセルロースを含む屋根材を、周面が鏡面仕上げされた複数の柱材によりシロアリ捕獲容器の上部に設置したので、屋根材へ接触しようとして、シロアリ捕獲容器に集まってくる大量のシロアリを捕獲することができる。また、シロアリ捕獲容器に集まってきたシロアリは、網目状の第1トラップで捕獲され、第1トラップが通気されることで乾燥して死亡する。また、雨水がシロアリ収容穴に侵入しても、各トラップを介して室外へ水抜きされるので、シロアリ捕獲容器に収容されたシロアリが脱出することも防止され、確実にシロアリを駆除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1を示す平面図、図2は、図1の一部欠截正面図、図3は図1の分解斜視図である。
【0014】
図1〜図3において、シロアリ駆除装置1は、木製の屋根材2と、周面が鏡面仕上げされて屋根材2の下部周縁に間隔を空けて取り付けられ、屋根材2を支持する複数の柱材3と、複数の柱材3が上部に設置されるシロアリ捕獲容器4とから構成されている。
【0015】
木製の屋根材2は、シロアリが接触を好むセルロースを含む木で略直方体(例えば、長さ15cm、幅9cm、厚さ3cm)に形成されており、下部に縦辺に沿う中心線の位置に縦溝2aが形成され、また、横辺に沿って平行に横溝2b,2cが形成されている。各溝2a,2b,2cには、長手方向に沿う周面が鏡面仕上げされたステンレス製の複数の柱材3(例えば、長さ3cm、幅1cm、厚さ1cm)が、各溝2a,2b,2cに沿って設置位置を微調整可能に取り付けられている。柱材3は、丸棒状、角棒状、丸パイプ状、角パイプ状のいずれの形状でも良い。
【0016】
屋根材2は、シロアリを誘引するために設けているので、シロアリの誘引性物質であるカンファー、リナロール、カジネン、テレピン油、ボルネオール、シンナミルアルコールなどを含有する溶液を含ませた誘引剤を含ませると効果的である。この屋根材2は、長期間経過すると、誘引効果が弱まるために適宜の期間経過後に、他の屋根材と交換すると良い。また、屋根材2は、木以外にもシロアリが食べるセルロースを含有する材料を用いて作ることができ、例えば、濾紙、和紙、再生紙等のパルプ含有紙を使用することができる。
【0017】
柱材3は、屋根材2に誘引されたシロアリが滑って登れないようにして、屋根材2をシロアリに食べさせずに柱材3の下部に設置されるシロアリ捕獲容器4に誘導するために設けられるので、長手方向に沿う周面が滑りやすく加工できて、シロアリに食害されない素材であれば、ステンレス以外の他の金属や、樹脂で製造することができる。
【0018】
シロアリ捕獲容器4は、柱材3により屋根材2が装着されている状態では、外側に飛び出した周縁がシロアリ捕獲容器4の庇2aを形成しているので、日陰の状態で使用される。また、シロアリ捕獲容器4は、シロアリを捕獲するための大きな容積のシロアリ捕獲室5と、シロアリ捕獲室5より小さな容積の空間室6とから構成されている。なお、シロアリ捕獲容器4は、地中に埋設して使用されるが、家の周辺や縁の下の地面に直置きしてもよい。
【0019】
シロアリ捕獲容器4は、日陰の状態で使用されるから耐候性を要求されないが地中において腐敗または腐食に耐え、かつシロアリに食害されず、また、柱材3の下部のシロアリが内面上を滑り落ちやすく表面を鏡面仕上げに加工できる材料が好ましい。
【0020】
シロアリ捕獲容器4の材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ABS樹脂等の樹脂材料;アルミニウム、鉄、ステンレススティール、ブリキ等の金属材料が使用できる。前記の樹脂や金属により製造されたシロアリ捕獲容器4は、表面を鏡面仕上げ加工する代りに、樹脂(例えば、ポリフッ化エチレン系繊維)で内面を被覆して、内面の摩擦抵抗を極端に減少させて滑り易くしても良い。このようにシロアリ捕獲容器4の内面を鏡面仕上げに加工したり、樹脂を被覆して滑り易くすれば、シロアリ等の昆虫類の登坂を妨げてシロアリ捕獲容器4からの逃避を防ぐことができる。
【0021】
シロアリ捕獲容器4のシロアリ捕獲室5は、上部が開口し、開口7の内面7aが水平な状態から傾斜していき、奥にいくにしたがって急傾斜になって底部に至るように形成されている。特に、シロアリ捕獲室5の上部は、壁9が外側に曲面状に張り出して、上部から所定の深さ(例えば5cm)まで軸方向の断面が円弧状になるように形成されて、フランジ部7bが形成されている。フランジ部7bの内面7aは、シロアリ等の昆虫類が内部に滑り落ち易く形成されている。また、フランジ部7bの周縁に位置する開口7の内面7aの周縁には、各柱材3の下部が設置される凹部8が適宜の間隔で複数(図1,3では6個)設けられている。
【0022】
そして、シロアリ捕獲室5の底部7cには、通水可能であるとともにシロアリの通り抜けを阻止する網目状の第1トラップ10が設けられている。第1トラップ10は、底部7cに誘い込んだシロアリが通り抜けできない大きさの網目(例えば1mm2)が使用されている。
【0023】
シロアリ捕獲室5の下部には、第1トラップ10の下に所定深さ(例えば2cm)の空間部を確保する空間室6が設けられている。そして、空間室6の底部6cには、第1トラップ10を通過したシロアリの通り抜けを阻止する網目状の第2トラップ11が設けられている。
【0024】
また、第2トラップ11は、シロアリ捕獲容器4を地中に埋設したときに、地面に近接して配置され、降雨時にシロアリ捕獲容器4内に溜まる雨水を地中に排水させることができる。したがって、シロアリ捕獲容器4を地中に埋設する際に、空間室6が設置される地面に、空間室6の下部からの排水を一時的に貯留しておくドレイン溝を設けておくと良い。また、第2トラップ11は、シロアリ捕獲室5の底部7cに誘い込んだシロアリが第1トラップ10を通過してしまう場合を考慮して、シロアリが通り抜けできない大きさの網目(例えば1mm2)を使用する。
【0025】
次に、シロアリ駆除装置1を地中に埋設した場合の使用例について説明する。シロアリ捕獲容器4は、地中に全体が埋設されて開口7の周縁の面が地面とほぼ同一面となるように設置する。シロアリは、屋根材2に接触しようとしてステンレス製の複数の柱材3を登ろうとする。シロアリは、柱材3が鏡面仕上げされているので登れず、各柱材3の下部に集まってきて、シロアリ捕獲室5のフランジ部7bの内面7a上を滑って、シロアリ捕獲室5内に滑り落ちて底部7cに誘導される。
【0026】
シロアリ捕獲室5の底部7cには、シロアリを捕獲可能な網目状の第1トラップ10が設けられているので、大部分のシロアリは、第1トラップ10で捕獲される。そして、第1トラップ10の下には、空間室6が設けられていて所定深さ(例えば2cm)の空間部が確保されているので、第1トラップ10が通気されて大部分のシロアリは、乾燥し2、3日で死滅する。
【0027】
また、シロアリ駆除装置1が設置されているときに雨になると、雨水がシロアリ捕獲容器4内に侵入する場合がある。その場合、雨水は各トラップ10,11を介して容器外へ水抜きされるので、シロアリ捕獲容器4に収容されたシロアリが脱出することは防止される。このように、シロアリ駆除装置1は、集まってきたシロアリをシロアリ捕獲容器4に大量に捕獲して確実に駆除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例1を示す平面図である。
【図2】図1の一部欠截正面図である。
【図3】図1の分解斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シロアリ駆除装置
2 屋根材
2a,2b,2c 溝
3 柱材
4 シロアリ捕獲容器
5 シロアリ捕獲室
6 空間室
6c,7c 底部
7 開口
7a 内面
7b フランジ部
8 凹部
9 壁
10 第1トラップ
11 第2トラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シロアリが接触を好むセルロースを含む屋根材と、前記屋根材の下部周縁に間隔を空けて取り付けられ長手方向に沿う周面が鏡面仕上げされた複数の柱材と、上部が開口し該開口の内面の周縁に前記各柱材が設置されるシロアリ捕獲容器と、を備え、
前記シロアリ捕獲容器は、
前記開口の内面が水平な状態から傾斜していき、奥にいくにしたがって急傾斜になって底部に至り、該底部にシロアリを捕獲可能な網目状の第1トラップが設けられたシロアリ捕獲室と、
該シロアリ捕獲室の下部に設けられて前記第1トラップの下に所定深さの空間部を確保し、底部に前記第1トラップを通過したシロアリを捕獲可能な網目状の第2トラップが設けられた空間室と、
から構成されていることを特徴とするシロアリ駆除装置。
【請求項2】
前記屋根材は、前記柱材により前記シロアリ捕獲容器に装着されて、外側に飛び出した周縁が前記シロアリ捕獲容器の庇を形成している請求項1に記載のシロアリ駆除装置。
【請求項3】
前記シロアリ捕獲容器は、内面が鏡面仕上げに加工され、又は、樹脂で被覆されて滑り易く形成されている請求項1に記載のシロアリ駆除装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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