説明

シンク

【課題】板金加工により成形されるシンクにおいて、その底板のいずれの箇所からも排水口に向けて水を流下させることができるようにする。
【解決手段】板金加工により成形されると共に、基本水勾配を持った底板1のこの勾配下側となるこの底板1の一辺10aに近接した箇所に排水口11を備えるシンクSである。底板1のこの一辺に沿って、前記基本水勾配と逆向きの勾配を備えた追加勾配部12を、この追加勾配部12のレベルが前記排水口11の中心11bを通って前記一辺に直交する仮想の直線xに近づくに連れて次第に低まるように、展開状態にあるシンク構成板金Saにおける前記底板1の一辺10aに沿った箇所を雌雄をなす型5、5間で挟み付けることにより備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、板金加工により成形されるシンクの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製のシンクには、プレス加工により成形されるいわゆるプレスシンクと、板金加工により成形されるいわゆる手板金シンクとがある。
【0003】
手板金シンクは、プレスシンクと異なりシンクの深さは自由に設定できると共に、コーナーのアールを小さくすることにも障害が無く、さらに大型の成形型なども必要としない利点を有している。プレスシンクでは、SUS304を用いた場合、絞れる深さの限界は190mm程度であり、また、コーナーはエッジ状には構成することができないところである。
【0004】
一方、手板金シンクでは、底板に水勾配を持たせるように側板の高さを底板の一方側から他方側に向かうに連れて漸増させ、この勾配下側に排水口を設けるようにするところであるが、この手法のみではこの排水口と底板の他方側にある辺との間には勾配が形成されないため、この間にわずかながら水の残存を生じさせてしまうという課題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の板金加工により成形されるシンクにおいて、その底板のいずれの箇所からも排水口に向けて水を流下させることができるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、シンクを、板金加工により成形されると共に、基本水勾配を持った底板のこの勾配下側となるこの底板の一辺に近接した箇所に排水口を備えるシンクであって、
底板のこの一辺に沿って、前記基本水勾配と逆向きの勾配を備えた追加勾配部を、この追加勾配部のレベルが前記排水口の中心を通って前記一辺に直交する仮想の直線に近づくに連れて次第に低まるように、展開状態にあるシンク構成板金における前記底板の一辺に沿った箇所を雌雄をなす型間で挟み付けることにより備えてなるものとした。
【0007】
かかるシンクにあっては、前記追加勾配部により、底板における基本水勾配の勾配下側となる一辺に沿った箇所に水を残存させないようにすることができる。これにより、板金加工により成形されるシンクでありながら、その底板のいずれの箇所からも排水口に向けて水を流下させることができる。追加勾配部を必要とする箇所は底板の一部であり、また、底板の一部に対して前記のような逆向きの勾配を生じるわずかな型付けをすれば足りることから、前記雌雄をなす型およびこれを動作させる装置は簡素なもので足り、この追加勾配部の形成は板金加工によりシンクを成形させる利点を喪失させることもない。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、板金加工により成形されるシンクの利点を損なうことなく、その底板のいずれの箇所からも排水口に向けて水を流下させるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はシンクの構成例の一つを示した斜視構成図である。
【図2】図2は図1のシンクを構成するシンク構成板金の展開状態での平面構成図である。
【図3】図3はシンクの構成例の他の一つを示した斜視構成図である。
【図4】図4は図3のシンクを構成するシンク構成板金の展開状態での平面構成図である。
【図5】図5はシンクの構成例のさらに他の一つを示した斜視構成図である。
【図6】図6は図5のシンクを構成するシンク構成板金の展開状態での平面構成図である。
【図7】図7は追加勾配部を施すための型の斜視構成図である。
【図8】図8は図7の型の使用状態を示した断面構成図であり、(b)図は(a)図の状態から雄型を下降させて雄型と雌型との間で展開状態にあるシンク構成板金における前記底板の一辺に沿った箇所を挟み付けたときの様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図8に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について説明する。この実施の形態にかかるシンクSは、流し台などを構成するものであって、底板1とこの底板1を囲う側板2とフランジ3とを備えている。かかるシンクSは、このフランジ3を流し台などを構成する図示しない天板に設けられた開口に引っかけ、このフランジ3より下を天板下に納めて設置される。
【0011】
かかるシンクSは板金加工により成形されている。すなわち、かかるシンクSの主要部は一枚の金属板に曲げと溶接と表面仕上げを施すことで構成されている。
【0012】
典型的には、先ず、底板1の各辺10、10…にこの各辺各辺10、10…を折り曲げ箇所として立ち上げられる側板2を連接させたシンク構成板金Saを、金属板からレーザー加工などにより切り出す。
【0013】
次いで、このように切り出された展開状態にあるシンク構成板金Saにおける底板1に円形の排水口11を開設させる。前記底板1の側板2の一部は底板1の一方側から他方側に向けてその幅寸法を漸増させるように構成されており、この側板2の上端に形成されたフランジ3を前記のように引っかけたときに底板1は前記他方側を勾配下側とする基本水勾配を有するようになっている。したがって、かかる排水口11は、かかる基本水勾配を持った底板1のこの勾配下側となるこの底板1の一辺10aに近接した箇所に開設される。かかる排水口11の口縁部にはさらに絞り加工により排水口11の内方に向けて低まるテーパー部11aが形成される。
【0014】
次いで、この実施の形態にあっては、底板1の前記基本水勾配の勾配下側となる底板1の一辺10aに沿って、この基本水勾配と逆向きの勾配を備えた追加勾配部12を、この追加勾配部12のレベルが前記排水口11の中心11bを通って前記一辺10aに直交する仮想の直線xに近づくに連れて次第に低まるように、展開状態にあるシンク構成板金Saにおける前記底板1の一辺10aに沿った箇所を雌雄をなす型5、5間で挟み付けることにより施している。すなわち、追加勾配部12は、基本水勾配を備えた排水口11と底板1の他辺10b(一辺10aに対向する位置にある辺10)との間にある箇所10cに対し、排水口11を挟んだ反対側にあって、前記一辺10aから排水口11に向かうに連れて低まる、基本水勾配と逆向きの勾配を備えている。図2、図4、図6は展開状態にあるシンク構成板金Saに追加勾配部12を形成させた状態を示している。
【0015】
図7及び図8にかかる雌雄をなす型5、5の一例を示す。雄型50は丸棒体50aをその長さ方向略中程の位置においてその軸中心線が鈍角を形成するようにわずかに屈曲させてなる。雄型50はこの屈曲外側の頂部50bが前記底板1の一辺10aに沿った箇所であって前記仮想の直線x上に位置されるようにして展開状態にあるシンク構成板金Saに押しつけられる。図示の例では、この雄型50の頂部50bの直下位置においては排水口11のテーパー部11aが既に形成されていることから雌型51の一部が切除されている。
【0016】
図示の例では、このように構成される雌雄をなす型5、5により、追加勾配部12は、平面視の状態において、前記仮想の直線xに近づくに連れて次第に幅広となるように形成されている。各図においては、このように施される追加勾配部12の輪郭を説明の便宜上実線で示しているが、追加勾配部12の勾配はわずかで足りることから、実際はこのような輪郭は明確に表れるものではない。
【0017】
次いで、展開状態にあるシンク構成板金における底板1の各辺10、10…を折り曲げ箇所として各側板2、2…を立ち上げる。立ち上げられて隣り合う側板2、2同士は溶接され、また、底板1の形状からこのように立ち上げられて隣り合う側板2、2間に追加の側板4が必要となる場合(図5の場合)には追加の側板4を溶接により加える。それと共に、立ち上げられた側板2の上縁部を外向きに折り曲げて前記フランジ3を形成させる。シンクSの隅部Sbでは追加のフランジ構成板を溶接により加えてシンクSの全周にフランジ3を形成させる。
【0018】
最後に、シンクSの外面に研削加工により表面仕上げを施して、なめらかな意匠面を備えたシンクSが構成される。
【0019】
この実施の形態にかかるシンクSにあっては、前記のように形成される追加勾配部12により、底板1における基本水勾配の勾配下側となる一辺に沿った箇所に水を残存させないようにすることができる。これにより、板金加工により成形されるシンクSでありながら、その底板1のいずれの箇所からも排水口11に向けて水を流下させることができるようになっている。追加勾配部12を必要とする箇所は底板1の一部であり、また、底板1の一部に対して前記のような逆向きの勾配を生じるわずかな型付けをすれば足りることから、前記雌雄をなす型5、5およびこれを動作させる装置は簡素なもので足り、この追加勾配部12の形成は板金加工によりシンクSを成形させる利点を喪失させることはない。
【0020】
図1及び図2は、底板1を長方形状とするシンクSの、その短辺の一方側に排水口11を位置させた例を示している。この短辺の一方が前記一辺10aとなり、追加勾配部12はこの一辺10aに沿った側板2と排水口11との間に形成されている。
【0021】
図3及び図4は、底板1を長方形状とするシンクSの、その長辺の一方側に排水口11を位置させた例を示している。この長辺の一方が前記一辺10aとなり、追加勾配部12はこの一辺10aに沿った側板2と排水口11との間に形成されている。
【0022】
図5及び図6は、平面視の状態において底板1を、長方形状部13と、この長方形状部13の長辺の一方の中程位置から外側に張り出す張り出し部14とを備えた凸状の輪郭とするシンクSの、この長方形状部13の長辺の一方側に排水口11を位置させた例を示している。この長辺の一方が前記一辺10aとなり、追加勾配部12はこの一辺10aに沿った側板2と排水口11との間に形成されている。
【符号の説明】
【0023】
1 底板
10a 一辺
11 排水口
11b 中心
12 追加勾配部
x 仮想の直線
S シンク
Sa シンク構成板金
5 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金加工により成形されると共に、基本水勾配を持った底板のこの勾配下側となるこの底板の一辺に近接した箇所に排水口を備えるシンクであって、
底板のこの一辺に沿って、前記基本水勾配と逆向きの勾配を備えた追加勾配部を、この追加勾配部のレベルが前記排水口の中心を通って前記一辺に直交する仮想の直線に近づくに連れて次第に低まるように、展開状態にあるシンク構成板金における前記底板の一辺に沿った箇所を雌雄をなす型間で挟み付けることにより備えてなるシンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−285753(P2010−285753A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138245(P2009−138245)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(509162861)中外交易株式会社 (3)
【Fターム(参考)】