説明

シングルキャリア受信装置

【課題】ブロック同期の検出範囲を正確に識別してブロック同期を適切に実現すると共に、演算量を抑える。
【解決手段】シングルキャリア受信装置201,202におけるブロック同期部26−1のスライディング相関部40は、送信信号のクロックに対してオーバーサンプリングでAD変換部23によりAD変換された受信信号に対して、受信信号とこの受信信号をユニークワードのシンボル数分遅延させた信号との間でスライディング相関処理を行う。相互相関部51は、スライディング相関のピーク前後の受信信号に限定して、受信信号とユニークワードの参照信号との間で相互相関処理を行うことによって相互相関の電力値(遅延プロファイル)を計算し、遅延プロファイルの最大ピークより前の前ゴースト探索範囲で、閾値以上のレベルの到来波が最初に現われたタイミングをブロック先頭タイミングとするブロック同期を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送または通信等の無線伝送システムで使用されるシングルキャリアの受信装置に係わり、特に、周波数領域で等化及び合成処理を行うシングルキャリア受信装置のブロック同期技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線伝送技術において、周波数領域で等化及び合成を行うシングルキャリア方式が提案されている(非特許文献1)。このシングルキャリア方式は、ブロック単位でチャネル推定、等化及び合成を行うことができるため、同じく周波数領域で等化及び合成を行うOFDM方式のように、移動伝送時の高速なチャネル変動に追従することができる。一方で、シングルキャリア方式では、送信信号のピーク電力と平均電力との間の差が小さいため、OFDM方式に比べて増幅器の電力効率が優れている。周波数領域で等化及び合成を行うシングルキャリア方式では、ブロックの先頭を検出するブロック同期を行って、チャネル推定用のユニークワード及びデータを抽出し、フーリエ変換により周波数領域に変換して処理する。
【0003】
シングルキャリア方式でも、OFDM方式と同じようにガードインターバルを設けて、マルチパス環境におけるブロック間干渉を防ぐことができる。しかし、ブロック同期が適切に行われない場合には、ブロック間干渉が生じて誤り率特性が極端に劣化してしまう。
【0004】
図2は、シングルキャリア方式における送信シンボルの構成を示す図である。この送信シンボルの構成は、非特許文献1に記載されたものであり、シングルキャリア送信装置によってこの構成の送信シンボルが生成され送信される。シングルキャリア受信装置は、この構成の送信シンボルを受信することにより、周波数領域において等化及び合成処理を行う。図2において、1ブロックの送信シンボルは、データシンボルと、データシンボルの前後に挿入(配置)されるユニークワードシンボルとにより構成される。データシンボルの前に挿入されるユニークワードシンボルと、データシンボルの後に挿入されるユニークワードシンボルとは、同一かつ既知の情報である。ユニークワードシンボルのシンボル数(ポイント数)はNであり、データシンボルのシンボル数は(M−N)であり、データシンボル及び1つのユニークワードシンボルのシンボル数は、合計でMである。ここで、M,Nは正の整数であり、M>Nである。シングルキャリア送信装置は、データシンボルと、データシンボルの前後に挿入したユニークワードシンボルとからなるブロックを構成し、このブロックを連続して繰り返した送信系列のシンボルを変調信号としてシングルキャリアを直交変調しRF信号(無線信号)として送信する。
【0005】
図10は、従来のシングルキャリア受信装置におけるブロック同期部の構成を示すブロック図である。シングルキャリア受信装置は、シングルキャリア送信装置から送信されたシングルキャリアのRF信号を受信し、ブロック同期部26においてブロック同期の処理を行う。このブロック同期部26は、複素共役化部101、Nシンボル遅延部102、複素乗算部103、Nシンボル積分部104、ピーク検出部105及びブロック抽出部106を備えている。ブロック同期部26は、ベースバンドの実部及び虚部の受信信号に対しブロック同期処理を行い、ブロック同期した受信信号y(t)、同期ポイント及び同期ポイントの位相φを求める。以下、ブロック同期部26の各構成部について説明する。
【0006】
複素共役化部101は、受信信号を入力し、受信信号の複素共役を計算し、Nシンボル遅延部102に出力する。Nシンボル遅延部102は、複素共役化部101から複素共役の信号を入力し、Nシンボル遅延させて複素乗算部103に出力する。
【0007】
複素乗算部103は、受信信号を入力すると共に、Nシンボル遅延部102からNシンボル遅延した複素共役の信号を入力し、複素乗算を行い、Nシンボル積分部104に出力する。Nシンボル積分部104は、複素乗算部103から複素乗算された受信信号を入力し、Nシンボル分積分し、積分信号をピーク検出部105に出力する。ここで、積分信号は、積分処理するNシンボルにおいて、ユニークワードシンボルの信号同士の積分処理数が多いほど、大きい電力値を有することになり、ユニークワードシンボルの信号同士の積分処理数が少ないほど、小さい電力値を有することになる。
【0008】
ピーク検出部105は、Nシンボル積分部104から積分信号を入力し、積分信号の電力値を算出してそのピークを求め、そのピークのタイミングを同期ポイントとし、ピーク時における積分信号の位相(φ=tan−1(虚部/実部))を同期ポイントの位相φとし、同期ポイント及び同期ポイントの位相φを出力すると共に、同期ポイントをブロック抽出部106に出力する。ここで、同期ポイントの位相φは、シングルキャリア送信装置とシングルキャリア受信装置の周波数誤差または移動伝送におけるドップラーシフトに起因し、受信信号におけるNシンボル経過後の位相回転量を表す。
【0009】
ブロック抽出部106は、受信信号を入力すると共に、ピーク検出部105から同期ポイントを入力し、同期ポイントが示すタイミングにて、受信信号からユニークワードシンボル、その後のデータシンボル及びユニークワードシンボルと続くブロックを抽出し、ブロック同期した受信信号y(t)を出力する。このような同期ポイントを求める手法はスライディング相関と呼ばれ、積分区間の信号系列が似通っているとピークが現われる現象を利用している。
【0010】
このように、従来のシングルキャリア受信装置におけるブロック同期部26は、ユニークワードが一定間隔で送られていることを利用して、受信信号のスライディング相関のピーク検出により同期ポイントを求める(特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−55153号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】D.Falconer, et al., “Frequency domain equalization for single-carrier broadband wireless systems,” IEEE Commun.mag., Vol.40, pp.58-66, April 2002.
【非特許文献2】Harald Witschnig, “Concepts of Frequency Domain Equalization,” VDM Verlag, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のスライディング相関のピーク検出手法では、ユニークワードが一致した箇所で必ずしも鋭い相関ピークになるとは限らない。つまり、マルチパス環境によっては、鋭い相関ピークを得ることができない場合があり、最初の到来波のタイミングを精度良く検出できず、ブロック間干渉が生じやすくなるという問題があった。
【0014】
一方で、受信信号とユニークワードとの間で相互相関処理を行って遅延プロファイルを計算すると、鋭い相関ピークが得られることから、相互相関のピーク検出により、最初の到来波のタイミングを検出する手法が考えられる。この相互相関のピーク検出手法では、受信信号とユニークワードとの間で相互相関処理を行うと、ユニークワードが2回連続して送られているため、遅延プロファイルも2回連続して計算される。最初の遅延プロファイルにおいては、最大の到来波よりも後ろの到来波(後ろゴースト)の方が受信電力のダイナミックレンジが大きく、2回目の遅延プロファイルにおいては、最大の到来波よりも前の到来波(前ゴースト)の方が受信電力のダイナミックレンジが大きいため、ブロック同期には2回目の遅延プロファイルを用いる方が精度は良くなる。
【0015】
しかしながら、この相互相関のピーク検出手法では、2回目の遅延プロファイルを相互相関ピークのみから識別しようとすると、サンプリングタイミングのずれ等が原因で、1回目の遅延プロファイルと2回目の遅延プロファイルの相互相関ピークの大小関係が変化してしまい、正確に2回目の遅延プロファイルを識別することができなくなる場合があるという問題があった。さらに、相互相関処理は演算量が多いため、回路規模が大きくなり、処理時間がかかるという問題もあった。
【0016】
このように、従来のスライディング相関のピーク検出手法では、ブロック同期が適切に行われず、ブロック間干渉が生じて誤り率特性が極端に劣化してしまう場合があるという問題があった。また、相互相関のピーク検出手法では、スライディング相関のピーク検出手法に比べ、ブロック同期のタイミングを精度良く検出することができるが、2回目の遅延プロファイルを正確に識別することができない場合があり、ブロック同期のタイミングを検出するための範囲を正確に識別することができないという問題があった。また、相互相関処理は演算量が多いため、回路規模を削減し、処理時間を短縮化する必要があった。
【0017】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ブロック同期の検出範囲を正確に識別してブロック同期を適切に実現すると共に、演算量を抑えることが可能なシングルキャリア受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明によるシングルキャリア受信装置は、シンボル数が(M−N)のデータシンボル、及び前記データシンボルの前後に配置したシンボル数がNの既知のユニークワードシンボルからなるブロックが連続した送信信号を、シングルキャリアの無線信号として受信アンテナによって受信し(M,Nは正の整数、M>N)、前記受信した信号をAD変換及び直交復調してベースバンドの受信信号とし、ブロック同期処理によりブロック同期した信号を生成し、前記ブロック同期した信号を周波数領域で等化または合成するシングルキャリア受信装置において、前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号と、前記受信信号を前記ユニークワードシンボル数分遅延させた信号との間の相関処理により相関値を算出し、前記相関値がピークとなるタイミングをスライディング相関ピークのタイミングとして検出するスライディング相関部と、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの前記受信信号と、前記Nシンボルの既知のユニークワードシンボルについての参照信号との間の相関処理により相関値を遅延プロファイルとして算出し、前記遅延プロファイルがピークとなる前の所定の前ゴースト探索範囲にて、所定の閾値以上の到来波が最初に現れるタイミングをブロック先頭タイミングとして検出する相互相関部と、前記相互相関部により検出されたブロック先頭タイミングに基づいて、前記受信信号からブロックを抽出し、ブロック同期した信号を出力するブロック抽出部と、を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明によるシングルキャリア受信装置は、前記相互相関部が、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後における所定の計算範囲を設定する相互相関計算範囲設定部と、前記Nシンボルの既知のユニークワードシンボルが複素共役の参照信号として記憶された参照信号メモリ部と、前記相互相関計算範囲設定部により設定された計算範囲において、前記受信信号と前記参照信号メモリ部に記憶された参照信号との間でNシンボル分の複素乗算を行う複素乗算部と、前記複素乗算部により複素乗算されたNシンボル分の乗算結果を積分し、前記計算範囲におけるNシンボル毎の積分値を算出するNシンボル積分部と、Nシンボル積分部により算出された積分値に対応する遅延プロファイルが最大ピークとなるタイミングを検出するピーク検出部と、前記ピーク検出部により検出された最大ピークのタイミングを基準にして、それ以前の所定時点から前記基準時点までの間の前ゴースト探索範囲の中で、前記遅延プロファイルにおいて所定の閾値以上の到来波が最初に現れるタイミングをブロック先頭タイミングとして検出する前ゴースト検出部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明によるシングルキャリア受信装置は、さらに、前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号に対し、前記送信信号のクロックと等倍になるように間引き処理を行うディシメーション部を備え、前記スライディング相関部が、前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号の代わりに、前記ディシメーション部により間引き処理された受信信号を用いて、前記スライディング相関ピークのタイミングを検出し、前記相互相関部が、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの前記受信信号の代わりに、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの、前記ディシメーション部により間引き処理された受信信号を用いて、前記ブロック先頭タイミングを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によれば、ブロック同期の検出範囲を正確に識別してブロック同期を適切に実現することができると共に、ブロック同期を実現するための演算量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】シングルキャリア送信装置の構成を示すブロック図である。
【図2】シングルキャリア方式における送信シンボルの構成を示す図である。
【図3】ユニークワードにChu符号を用いた場合の相互相関特性を説明する図である。
【図4】本発明の実施形態による第1のシングルキャリア受信装置の構成(受信ブランチ数が1の場合の構成)を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による第2のシングルキャリア受信装置の構成(受信ブランチ数がL(Lは2以上の整数)の場合の構成)を示すブロック図である。
【図6】第1のブロック同期部26の構成を示すブロック図である。
【図7】第2のブロック同期部26の構成を示すブロック図である。
【図8】ブロック同期部のスライディング相関部における処理のタイミングを説明する図である。
【図9】ブロック同期部の相互相関部における処理のタイミングを説明する図である。
【図10】従来のシングルキャリア受信装置におけるブロック同期部の構成を示すブロック図である。
【図11】前ゴースト、主波及び後ろゴーストの3波が存在する条件において、第2のブロック同期部によりブロック同期を行った場合の相互演算の結果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明の実施形態では、シングルキャリア送信装置が、既知のNシンボルのユニークワードの次に(M−N)シンボルのデータ、その次にNシンボルのユニークワードからなるブロック単位の送信シンボルを構成し、この系列でシングルキャリアを直交変調して連続的に送信することを前提とする。また、シングルキャリア受信装置の受信ブランチ数は1またはL(Lは2以上の整数)であり、シングルキャリア受信装置が、各受信ブランチにおいて、送信信号のクロックに対してオーバーサンプリングでAD変換した受信信号に対し、ブロック同期を行い、次に、ブロックの初めのユニークワードの部分におけるNシンボルの受信信号をフーリエ変換した信号に対し、送信された既知のユニークワードをフーリエ変換した信号で割り算し、Nポイントの周波数領域のチャネル情報を得る。その後、Nポイントのチャネル情報からMポイントのチャネル情報にアップサンプリングする。さらに、データと次のユニークワードの部分におけるMシンボルの受信信号をフーリエ変換し、周波数領域の受信信号を得て、周波数領域で等化または合成を行うことを前提とする。
【0024】
〔シングルキャリア送信装置〕
はじめに、本発明の実施形態によるシングルキャリア受信装置へシングルキャリアのRF信号を送信するシングルキャリア送信装置について説明する。図1は、シングルキャリア送信装置の構成を示すブロック図である。このシングルキャリア送信装置200は、送信前処理部1、マッピング部2、基準信号挿入部3、アップサンプル部4、帯域制限フィルタ部5、デジタル直交変調部6、アパーチャ補正部7、DA(デジタル/アナログ)変換部8、送信高周波部9及び送信アンテナ10を備えている。
【0025】
送信前処理部1は、TSパケット形式等により構成された情報を入力し、フレーム同期、エネルギ拡散、外符号符号化、外インタリーブ、内符号符号化、内インタリーブ等の送信前処理を施し、送信前処理した信号をマッピング部2に出力する。
【0026】
マッピング部2は、送信前処理部1から送信前処理された信号を入力し、入力した信号をQPSK、16QAM等のシンボル点に割り当ててマッピングし、マッピングした信号を基準信号挿入部3に出力する。
【0027】
基準信号挿入部3は、マッピング部2からマッピングされた信号を入力し、Nシンボルのユニークワードシンボルを、マッピングされた信号における(M−N)シンボルのデータシンボルの前後に挿入して配置し、図2に示した送信シンボルのブロックを構成し、アップサンプル部4に出力する。ここで、M,Nは、高速フーリエ変換を行うことができるように、2のべき乗の値を用いる。また、ユニークワードとしては、Frank−Zadoff符号、Chu符号等を用いる。これにより、高速フーリエ変換したときの振幅特性が各周波数で一定となり、各周波数においてチャネル情報を精度良く求めることが可能となる。
【0028】
アップサンプル部4は、基準信号挿入部3から送信シンボルのブロックを入力し、アップサンプリングを行い、アップサンプリング後の送信シンボルのブロックを帯域制限フィルタ部5に出力する。帯域制限フィルタ部5は、アップサンプル部4からアップサンプリング後の送信シンボルのブロックを入力し、フィルタ処理により帯域制限を行い、帯域制限した送信シンボルのブロックをデジタル直交変調部6に出力する。帯域制限フィルタとしては、ルートロールオフ特性を有するフィルタが通常用いられる。
【0029】
デジタル直交変調部6は、帯域制限フィルタ部5から帯域制限された送信シンボルのブロックを入力し、送信シンボルのブロックを構成するシングルキャリアを直交変調し、直交変調後の信号をアパーチャ補正部7に出力する。アパーチャ補正部7は、デジタル直交変調部6から直交変調後の信号を入力し、後段のDA変換部8におけるDA変換によるアパーチャ効果を予め補正し、補正後の信号をDA変換部8に出力する。DA変換部8は、アパーチャ補正部7から補正後の信号を入力し、デジタル信号をアナログ信号に変換し、アナログ信号を送信高周波部9に出力する。
【0030】
送信高周波部9は、DA変換部8からアナログ信号を入力し、入力したアナログ信号の周波数を無線周波数に周波数変換し、規定の電力で送信アンテナ10からシングルキャリアのRF信号を送信する。
【0031】
尚、図1では、帯域制限フィルタ部5、デジタル直交変調部6及びアパーチャ補正部7は、デジタル信号処理を行っているが、基準信号挿入部3により出力される複素ベースバンド信号である送信シンボルのブロックをDA変換した後のアナログ信号を用いて、アナログ信号処理を行なうようにしてもよい。
【0032】
このように、シングルキャリア送信装置200は、(M−N)シンボルのデータシンボルと、このデータシンボルの前後に配置した既知のNシンボルのユニークワードシンボルとからなるブロックの送信シンボルを生成し、シングルキャリアのRF信号を送信する。
【0033】
ここで、基準信号挿入部3により挿入されるユニークワードがChu符号であり、ユニークワード長がNの場合のi番目(i=0〜N−1)のChu符号をexp{j・K・π・i/N}と表したとき(jは虚数単位)、パラメータKを、Nより小さく、かつNと互いに素である最大の整数(N−1)とする。この場合、後述する図3に示すように、ユニークワードから求めた遅延プロファイルに疑似的なピークが無くなり、前ゴースト、後ろゴースト共にダイナミックレンジを大きくとることができる。
【0034】
図3は、ユニークワードにChu符号を用いた場合の相互相関特性を説明する図である。図3は、ユニークワード長をN=128とし、到来波を3つに設定した場合の受信信号とユニークワードの相互相関特性(相互相関の電力値、遅延プロファイル)を表しており、(1)はK=127、(2)はK=13、(3)はK=3の場合を示している。この相互相関処理では、ユニークワードが2回連続して送られることから、遅延プロファイルが2回連続して計算される。図3から明らかなように、(1)では、設定した到来波のみがピークとなって遅延プロファイルに現れているが、(2)及び(3)では、擬似的なピークも遅延プロファイルに現れている。図3には示していないが、Nと互いに素であるこれ以外のKについても同様な結果が得られている。
【0035】
このことから、KをNより小さく、かつNと互いに素である最大の整数(N−1)とすることにより(図3の場合は(1)K=127とすることにより)、遅延プロファイルに疑似的なピークが無くなり、前ゴースト、後ろゴースト共にダイナミックレンジを大きくとることができ、これを正確なブロック同期に利用できることがわかる。また、遅延プロファイルに擬似的なピークが現れる場合であっても、その擬似的なピークの現れるタイミングが、設定した到来波を含む所定範囲(後述する相互相関部51において、遅延プロファイルの計算対象となる範囲、並びにピーク及び前ゴーストを検出する範囲)に含まれない場合には、前ゴースト、後ろゴースト共にダイナミックレンジを大きくとることができ、これを正確なブロック同期に利用することができる。
【0036】
尚、基準信号挿入部3により挿入されるユニークワードは、必ずしもChu符号である必要はなく、遅延プロファイルに疑似的なピークが無くなり、前ゴースト、後ろゴースト共にダイナミックレンジを大きくとることが可能な符号であればよい。
【0037】
〔シングルキャリア受信装置〕
次に、本発明の実施形態によるシングルキャリア受信装置について説明する。図4及び図5は、シングルキャリア受信装置の構成を示すブロック図である。図4は、受信ブランチ数が1の場合における第1のシングルキャリア受信装置の構成を示し、図5は、受信ブランチ数がL(Lは2以上の整数)の場合における第2のシングルキャリア受信装置の構成を示している。
【0038】
まず、受信ブランチ数が1の場合における第1のシングルキャリア受信装置について説明する。図4において、第1のシングルキャリア受信装置201は、受信アンテナ21、受信高周波部22、AD(アナログ/デジタル)変換部23、デジタル直交復調部24、帯域制限フィルタ部25、ブロック同期部26、自動周波数制御部27、フーリエ変換部29、チャネル推定部30、周波数領域等化部31、逆フーリエ変換部32、シンボル判定部33及び受信後処理部34を備えている。
【0039】
シングルキャリア受信装置201が受信アンテナ21を介して、シングルキャリア送信装置200からシングルキャリアのRF信号を受信すると、受信高周波部22は、RF信号の無線周波数を中間周波数に周波数変換し、IF信号をAD変換部23に出力する。AD変換部23は、受信高周波部22からIF信号を入力し、アナログのIF信号をデジタルのIF信号に変換し、デジタルIF信号をデジタル直交復調部24に出力する。デジタル直交復調部24は、AD変換部23からデジタルIF信号を入力すると共に、自動周波数制御部27から補正情報を入力し、デジタルIF信号を直交復調して複素ベースバンド信号を生成し、補正情報に基づいて周波数ずれを補正し、周波数補正後の複素ベースバンド信号を帯域制限フィルタ部25に出力する。
【0040】
帯域制限フィルタ部25は、デジタル直交復調部24から複素ベースバンド信号を入力し、フィルタ処理により帯域制限を行い、帯域制限した複素ベースバンド信号をブロック同期部26に出力する。帯域制限フィルタとしては、ルートロールオフ特性を有するフィルタが通常用いられる。
【0041】
ブロック同期部26は、帯域制限フィルタ部25から帯域制限された複素ベースバンド信号を入力し、ブロックの同期タイミングを検出し、ユニークワードの部分(Nシンボル分)とデータ及びユニークワードの部分(Mシンボル分)とを抽出すると共に、自動周波数制御のために位相差情報を生成する。そして、ブロック同期部26は、データ及びユニークワードの部分の信号をフーリエ変換部29に出力し、ユニークワードの部分の信号をチャネル推定部30に出力し、位相差情報を自動周波数制御部27に出力する。ブロック同期部26の詳細については後述する。
【0042】
自動周波数制御部27は、ブロック同期部26から位相差情報を入力し、位相差情報に基づいて、周波数ずれを補正するための情報(補正情報)を生成し、生成した補正情報をデジタル直交復調部24に出力する。
【0043】
フーリエ変換部29は、ブロック同期部26からデータ及びユニークワードの部分の信号を入力し、入力した信号をフーリエ変換してMシンボル(Mポイント)の周波数領域の情報Y(f)を生成し、周波数領域等化部31に出力する。一方、チャネル推定部30は、ブロック同期部26からユニークワードの部分の信号を入力し、入力した信号をフーリエ変換してNシンボル(Nポイント)の周波数領域の信号を生成し、生成した信号を、送信されたユニークワードの周波数領域の情報(参照情報)で複素除算してNポイント分の伝搬路情報を推定し、Mポイント分の周波数領域の伝搬路情報H(f)にアップサンプリングし、周波数領域等化部31に出力する。
【0044】
周波数領域等化部31は、フーリエ変換部29からデータ及びユニークワードにおけるMポイントの周波数領域の情報Y(f)を入力すると共に、チャネル推定部30からMポイントの周波数領域の伝搬路情報H(f)を入力し、周波数領域の情報Y(f)と周波数領域の伝搬路情報H(f)とを用いて周波数毎に周波数領域等化を行い、等化した周波数領域の受信信号Y(f)を逆フーリエ変換部32に出力する。
【0045】
逆フーリエ変換部32は、周波数領域等化部31から等化された周波数領域の受信信号Y(f)を入力し、逆フーリエ変換を行って時間領域の受信信号を生成し、シンボル判定部33に出力する。シンボル判定部33は、逆フーリエ変換部32から時間領域の受信信号を入力し、QPSK、16QAM等のシンボル点の判定を行い、受信後処理部34に出力する。
【0046】
受信後処理部34は、シンボル判定部33からシンボル判定された時間領域の信号y(t)を入力し、シングルキャリア送信装置200の送信前処理部1に対応する処理、すなわち、内デインタリーブ、内符号復号、外デインタリーブ、外符号復号、エネルギ逆拡散、フレーム同期等の受信後処理を施し、元のTSパケット形式等により構成された情報を出力する。
【0047】
次に、受信ブランチ数がLの場合における第2のシングルキャリア受信装置について説明する。図5において、第2のシングルキャリア受信装置202は、受信ブランチ数Lの受信系統数分の受信ブランチ#1〜#L、周波数領域合成部35、逆フーリエ変換部32、シンボル判定部33及び受信後処理部34を備えている。受信ブランチ#1〜#Lのそれぞれは、図4に示した受信アンテナ21からチャネル推定部30までの構成に加え、雑音電力検出部28を備えており、シングルキャリア受信装置202は、受信系統数分の受信ブランチ#1〜#Lを並列処理する。図5において、図4と共通する部分には図4と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0048】
受信ブランチ#1〜#Lの雑音電力検出部28は、ブロック同期部26からブロック同期した受信信号y(t)及び同期ポイントを入力し、受信信号y(t)に含まれる雑音電力nを検出し、雑音電力nを周波数領域合成部35に出力する。ここで、i=1,・・・,Lである。
【0049】
周波数領域合成部35は、受信ブランチ#1〜#Lから雑音電力n〜n、データ及びユニークワードの周波数領域の情報Y(f)〜Y(f)、及び周波数領域の伝搬路情報H(f)〜H(f)を入力し、周波数領域で合成処理を行い、周波数領域の受信信号Y(f)を逆フーリエ変換部32に出力する。尚、雑音電力検出部28及び周波数領域合成部35の処理は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。詳細については前述の特許文献1を参照されたい。
【0050】
図4及び図5において、AD変換部23のサンプリング速度は、サンプリング定理を満たすために送信信号のクロックに対して2倍以上とし、図4に示した周波数領域等化部31及び図5に示した周波数領域合成部35の手前までは、オーバーサンプリングで処理することを基本とする。尚、本説明においては、受信信号のシンボル数を等倍のシンボル数で表現している。また、図4及び図5では、受信したIF信号をAD変換し、AD変換後のデジタル信号を用いてデジタル直交復調部24及び帯域制限フィルタ部25によるデジタル信号処理を行っているが、アナログ信号を用いてデジタル直交復調部24及び帯域制限フィルタ部25に相当するアナログ信号処理を行った後に、アナログ信号をデジタル信号にAD変換するようにしてもよい。
【0051】
〔第1のブロック同期部〕
次に、図4及び図5に示したブロック同期部26における第1の構成及び処理について詳細に説明する。図6は、第1のブロック同期部26の構成を示すブロック図である。このブロック同期部26−1は、スライディング相関部40、相互相関部51及びブロック抽出部52を備えている。
【0052】
スライディング相関部40は、複素共役化部41、Nシンボル遅延部42、複素乗算部43、Nシンボル積分部44及びピーク検出部45を備えている。複素共役化部41、Nシンボル遅延部42、複素乗算部43及びNシンボル積分部44は、図10に示したブロック同期部26の複素共役化部101、Nシンボル遅延部102、複素乗算部103及びNシンボル積分部104と同様であるから、説明を省略する。
【0053】
ピーク検出部45は、Nシンボル積分部104から積分信号(積分値)を入力し、積分信号の電力値を算出してスライディング相関の電力値とし、スライディング相関の電力値のピークを求め、そのピークのタイミングをスライディング相関ピークのタイミングとし、ピーク時における積分信号の実部及び虚部から±180度の範囲で位相(φ=tan−1(虚部/実部))を算出し、これを位相差情報(スライディング相関ピークの位相φ)とする。そして、ピーク検出部45は、スライディング相関ピークのタイミング情報を相互相関部51に出力し、位相差情報を自動周波数制御部27に出力する。尚、ピーク検出部45の処理は既知であるから、ここでは詳細な説明を省略する。詳細については前述の特許文献1を参照されたい。
【0054】
相互相関部51は、参照信号メモリ部46、複素乗算部47、Nシンボル積分部48、ピーク検出部49、前ゴースト検出部50及び相互相関計算制御部(相互相関計算範囲設定部)54を備えている。参照信号メモリ部46には、Nシンボル分のユニークワードが複素共役の参照信号として予め記憶されている。この参照信号におけるNシンボル分のユニークワードは、図1に示したシングルキャリア送信装置200の基準信号挿入部3により挿入されるNシンボル分のユニークワードに相当する。
【0055】
相互相関計算制御部54は、スライディング相関部40のピーク検出部45からスライディング相関ピークのタイミング情報を入力し、そのタイミング前後における計算範囲(例えば、±N/2シンボル分の範囲)を設定し、スライディング相関ピークのタイミングの前後における計算範囲の情報を複素乗算部47に出力する。スライディング相関ピークのタイミング前後における計算範囲は、例えば、そのタイミングを中心にして、予め設定されたシンボル数(前記例では、±N/2シンボル数)の範囲とする。
【0056】
複素乗算部47は、帯域制限フィルタ部25から帯域制限された複素ベースバンド信号である受信信号を入力すると共に、相互相関計算制御部54からスライディング相関ピークのタイミング前後における計算範囲の情報を入力し、参照信号メモリ部46から参照信号を読み出す。そして、複素乗算部47は、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲の受信信号に対し、参照信号との間でNシンボル分の複素乗算を行う。具体的には、複素乗算部47は、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲内でNシンボル分のウィンドウを設定し、計算範囲における最初の時点から最後の時点までシンボル単位に移動するウィンドウに属する受信信号と、参照信号との間でNシンボル分の複素乗算をそれぞれ行う。そして、複素乗算部47は、Nシンボル分の複素乗算結果をNシンボル積分部48に出力する。Nシンボル分の複素乗算結果は、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲において、シンボル単位に移動するウィンドウ毎に出力される。
【0057】
Nシンボル積分部48は、複素乗算部47からNシンボル分の複素乗算結果を入力し、Nシンボル分の複素乗算結果を積分し、積分信号(積分値、相互相関出力)をピーク検出部49に出力する。Nシンボル積分部48により、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲において、シンボル単位に移動するウィンドウ毎に、積分信号が出力される。
【0058】
ピーク検出部49は、Nシンボル積分部48から、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲においてシンボル単位に移動するウィンドウ毎の積分信号を入力し、積分信号の電力値を算出して相互相関の電力値とし、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲をピーク探索範囲として、そのピーク探索範囲の中で、相互相関の電力値が最大となる時点である相互相関の最大ピークのタイミングを検出し、相互相関の最大ピークのタイミング情報、及びウィンドウ毎の相互相関の電力値を前ゴースト検出部50に出力する。尚、前記例では、ピーク探索範囲を、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲と同じにしたが、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲とは異なる範囲に予め設定しておき、その範囲の中で、相互相関の最大ピークのタイミングを検出してもよい。
【0059】
前ゴースト検出部50は、ピーク検出部49から相互相関の最大ピークのタイミング情報、及びウィンドウ毎の相互相関の電力値を入力し、相互相関の最大ピークのタイミングを基準にして、予め設定された前ゴースト探索範囲(例えば−N/2〜0シンボルの範囲)の中で、ウィンドウ毎の相互相関の電力値から、所定の閾値以上のレベルの相関ピーク(到来波)が最初に現われたタイミングを検出し、そのタイミングをブロック先頭とするブロック同期を行い、同期ポイントであるブロック先頭タイミングの情報をブロック抽出部52に出力する。この場合、前ゴースト検出部50は、相互相関の最大ピークのタイミングにおける電力値を基準にして、その基準値から例えば−20dB(真数の比率で0.01)等の値を計算して閾値を求め、その閾値を所定の閾値としてブロック同期を行う。
【0060】
ブロック抽出部52は、帯域制限フィルタ部25から帯域制限された複素ベースバンド信号である受信信号を入力すると共に、相互相関部51の前ゴースト検出部50から同期ポイントであるブロック先頭タイミングの情報を入力し、ブロック先頭タイミングの情報に基づいて受信信号をブロック化し、ブロック同期した受信信号y(t)を出力する。具体的には、ブロック抽出部52は、ブロック同期した受信信号y(t)のうち、はじめのユニークワードの部分の信号をチャネル推定部30に出力し、次のデータ及びユニークワードの部分の信号をフーリエ変換部29に出力し、受信信号y(t)及び同期ポイント(ブロック先頭タイミング情報)を雑音電力検出部28に出力する。
【0061】
図8は、ブロック同期部26−1のスライディング相関部40における処理のタイミングを説明する図である。図8において、受信信号は、ブロック同期部26−1のスライディング相関部40が入力する信号であり、複素共役化及びNシンボル遅延した受信信号は、スライディング相関部40の複素共役化部41を介してNシンボル遅延部42により出力され、複素乗算部43が入力する信号である。スライディング相関の電力値は、複素乗算部43を介してNシンボル積分部44により出力され、ピーク検出部45が入力する積分信号の電力値に対応する値である。このスライディング相関の電力値は、受信信号と、複素共役化及びNシンボル遅延した受信信号とを複素乗算してNシンボル毎(ユニークワード長に相当する複素乗算積分範囲毎)に積分した値の実部の自乗と虚部の自乗の和に対応しているから、Nシンボル期間において、位相は回転していてもよいが同一の信号の複素共役を有する割合が最も大きい位置でピークの値となる。つまり、図8に示すように、スライディング相関の電力値は、受信信号におけるユニークワードシンボルと、複素共役化及びNシンボル遅延した受信信号におけるユニークワードシンボルとの重なりが最も多いブロック先頭タイミング付近でピークを有する三角形の波形となる。
【0062】
しかしながら、スライディング相関部40によるスライディング相関処理では、マルチパス環境によっては鋭い相関ピークが得られるとは限らず、スライディング相関ピークのタイミングが変動してしまう。このため、スライディング相関ピークのタイミングが、必ずしもブロック先頭タイミングになるとは限らない。
【0063】
図9は、ブロック同期部26−1の相互相関部51における処理のタイミングを説明する図である。図9において、受信信号は、ブロック同期部26−1の相互相関部51が入力する信号であり、参照信号は、参照信号メモリ部46により出力され、複素乗算部47が入力するNシンボルの信号である。相互相関の電力値は、複素乗算部47を介してNシンボル積分部48により出力され、ピーク検出部49が入力する積分信号の電力値に対応する値である。この相互相関の電力値は、受信信号と参照信号とを複素乗算してNシンボル毎(ユニークワード長に相当する複素乗算積分範囲毎)に積分した値の実部の自乗と虚部の自乗の和に対応しているから、Nシンボル期間において、位相は回転していてもよいが同一の信号の複素共役を有する割合が最も大きい位置でピークの値となる。つまり、相互相関の電力値は、遅延プロファイルに相当し(図3を参照)、図9に示すように、2回連続するユニークワードのそれぞれの先頭タイミングで鋭い相互相関ピークが現れ、遅延プロファイルが2回計算される。
【0064】
相互相関処理では、1回目の遅延プロファイルの後ろゴースト領域(α)及び2回目の遅延プロファイルの前ゴースト領域(β)で大きなダイナミックレンジが得られることから、後者をブロック同期に用いることが望ましい。これらの領域で大きなダイナミックレンジが得られるのは、相互相関の電力値を算出するための受信信号及び参照信号のそれぞれに、ユニークワードのみが含まれるからである。逆に、これら以外の領域では、受信信号にユニークワード以外の信号が含まれるため、大きなダイナミックレンジを得ることができない。ここで、理想的な環境では、スライディング相関ピークと2回目の遅延プロファイルの相互相関ピークのタイミングは一致し、マルチパスが存在する場合においても、スライディング相関ピークは2回目の遅延プロファイルの相互相関ピークのタイミング付近に現れる。
【0065】
このため、相互相関部51の複素乗算部47が、相互相関を行う範囲を、相互相関計算制御部54により設定される、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲に限定し、受信信号と参照信号との間の複素乗算である相互相関を行い、ピーク検出部49が、例えば計算範囲と同じピーク探索範囲に限定して、相互相関の電力値の最大ピークを検出し、前ゴースト検出部50が、相互相関の最大ピーク値を基準にした閾値を設け、相互相関の最大ピークのタイミングを基準とする前ゴースト探索範囲の中で、相互相関の電力値において閾値以上のレベルの到来波が最初に現われたタイミングをブロック先頭タイミングとするようにした。これにより、先頭の到来波のタイミングを精度良く検出することができると共に、計算範囲、ピーク探索範囲及び前ゴースト探索範囲に限定して処理を行うようにしたから、演算量及び演算にかかる時間を削減することができる。
【0066】
以上のように、本発明の実施形態によるシングルキャリア受信装置201,202のブロック同期部26−1によれば、スライディング相関部40が、送信信号のクロックに対してオーバーサンプリングでAD変換部23によりAD変換された受信信号に対して、受信信号とこの受信信号をユニークワードのシンボル数分遅延させた信号との間でスライディング相関処理を行い、相互相関部51が、スライディング相関のピーク前後の受信信号に限定して、受信信号とユニークワードの参照信号との間で相互相関処理を行うことによって相互相関の電力値(遅延プロファイル)を計算し、遅延プロファイルの最大ピークより前の前ゴースト探索範囲で、閾値以上のレベルの到来波が最初に現われたタイミングをブロック先頭タイミングとするブロック同期を行うようにした。
【0067】
受信信号とユニークワードとの間の相互相関処理では、一致した箇所で鋭い相関ピークが現れる。この相互相関の特性は優れているため、相互相関のダイナミックレンジが大きくなり、最初の到来波の到来タイミングを正確に検出することができると共に、そのレベルを精度良く検出することができる。また、このタイミングをブロック先頭タイミングとすることで、ブロック間干渉のない復調処理が可能となる。さらに、複素乗算部47は、スライディング相関ピークのタイミング前後の計算範囲に限定して、受信信号とユニークワードとの間の相互相関の演算を行うようにしたから、演算量を抑えながら正確なブロック同期を行うことができる。したがって、ブロック同期の検出範囲を正確に識別してブロック同期を適切に実現することができると共に、ブロック同期を実現するための演算量を抑えることができる。尚、スライディング相関処理は、シンボル単位にスライドさせてNシンボル分の相関値を算出する際に、以前に算出した結果を用いることができるから、相互相関と比べて簡易な処理である。したがって、スライディング相関部40によるスライディング相関ピークのタイミング検出、及び自動周波数制御部27の自動周波数制御のために必要な位相差検出を、簡易な処理にて実現することができる。
【0068】
また、本発明の実施形態では、シングルキャリア送信装置200の基準信号挿入部3において、ガードインターバル及びチャネル推定用のユニークワードとしてChu符号を用いるようにした。具体的には、ユニークワード長がNの場合のi番目(i=0〜N−1)のChu符号をexp{j・K・π・i/N}と表したとき(jは虚数単位)、パラメータKが、Nより小さく、かつNと互いに素である最大の整数(N−1)になるようにした。ユニークワードをChu符号としたときのパラメータKは、Nと互いに素である整数にする必要があるが、さらに、KをNより小さく、かつNと互いに素である最大の整数(N−1)とするようにした。これにより、シングルキャリア受信装置201,202において、遅延プロファイルに疑似的なピークが無くなり、前ゴースト、後ろゴースト共に、ダイナミックレンジを大きくとることができるから、到来波の正確な検出が可能となる。
【0069】
〔第2のブロック同期部〕
次に、図4及び図5に示したブロック同期部26における第2の構成及び処理について詳細に説明する。図7は、第2のブロック同期部26の構成を示すブロック図である。このブロック同期部26−2は、スライディング相関部40、相互相関部51、ブロック抽出部52及びディシメーション部53を備えている。図6に示したブロック同期部26−1と図7に示すブロック同期部26−2とを比較すると、両ブロック同期部26−1,26−2共に、スライディング相関部40、相互相関部51及びブロック抽出部52を備えている点で共通する。これに対し、ブロック同期部26−2は、ブロック同期部26−1の構成に加え、ディシメーション部53を備えている点で相違する。図7において、図6と共通する部分には図6と同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0070】
ディシメーション部53は、帯域制限フィルタ部25から帯域制限された複素ベースバンド信号である受信信号を入力し、送信信号のクロックと等倍になるように信号を間引く。すなわち、AD変換部23により送信信号のクロックに対してオーバーサンプリングでAD変換された受信信号が、送信信号のクロックと等倍になるように、信号を間引く。そして、ディシメーション部53は、送信クロックと等倍になった受信信号を相互相関部51の複素乗算部47、並びにスライディング相関部40の複素共役化部41及び複素乗算部43に出力する。これにより、スライディング相関部40及び相互相関部51の相関処理において、相関計算の分解能はオーバーサンプリングの場合よりも劣化するが、相関結果は同様な特性を示すため、回路規模を半分以下に抑えつつ、スライディング相関ピークのタイミングを検出することができると共に、同期ポイントであるブロック先頭タイミングを検出することができる。
【0071】
図11は、前ゴースト、主波及び後ろゴーストの3波が存在する条件において、ブロック同期部26−2によりブロック同期を行った場合の相互演算の結果を説明する図である。図11の上段の図において、横軸は時間を示し、縦軸はスライディング相関部40のピーク検出部45により算出されるスライディング相関の電力値を示す。また、図11の下段の図において、横軸は時間を示し、縦軸は相互相関部51のピーク検出部49により算出される相互相関の電力値を示す。また、aは、スライディング相関ピークのタイミング及び相互相関ピークのタイミングを示す。bは、設定した最初の到来波のタイミングを示す。
【0072】
例えば、シングルキャリア送信装置200とシングルキャリア受信装置201,202との最短距離の間に遮蔽物が存在しない場合、シングルキャリア受信装置201,202では、相互相関の電力値である遅延プロファイルに、シングルキャリア送信装置200からシングルキャリアのRF信号を最短距離のルートで受信する信号に対応する主波(受信電力が最大である到来波)が現れる。この場合、aとbとは同じタイミングになる。これに対し、例えば、シングルキャリア送信装置200とシングルキャリア受信装置201,202との最短距離の間に遮蔽物が存在し、マルチパスの信号が主波となる場合、シングルキャリア受信装置201,202では、図11に示すように、相互相関の電力値である遅延プロファイルに、シングルキャリア送信装置200からシングルキャリアのRF信号を最短距離のルートで受信する信号に対応する前ゴースト、マルチパスによる主波及び後ろゴーストが現れる。この場合、最初の到来波のタイミングbは、スライディング相関ピークのタイミング及び相互相関ピークのタイミングaよりも前になる。
【0073】
前述のとおり、相互相関部51のピーク検出部49が、スライディング相関ピークのタイミングa前後の受信信号に対して相互相関の電力値を算出し、その中から最大の相互相関ピークのタイミングaと相互相関の電力値のレベルを検出し、前ゴースト検出部50が、相互相関ピークのタイミングaよりも前のゴースト探索範囲内で、所定の閾値以上の相関ピークが最初に現れるタイミングを検出する。図11の上段の図から、スライディング相関の電力値は、設定した最初の到来波のタイミングbでピークにならないが、図11の下段の図から、前ゴースト検出部50により検出されたタイミングが、設定した最初の到来波のタイミングbと一致していることがわかる。このタイミングbをブロックの先頭として処理することにより、原理的にブロック間干渉が生じない復調処理が可能となる。このように、ブロック同期部26−2によれば、回路規模を半分以下に抑えつつ、ブロック先頭位置を検出することが可能となる。
【0074】
以上のように、本発明の実施形態によるシングルキャリア受信装置201,202のブロック同期部26−2によれば、ディシメーション部53が、受信信号に対して、送信信号のクロックと等倍になるように間引き処理を行い、スライディング相関部40が、間引き処理が行われた受信信号に対して、受信信号と受信信号をユニークワードのシンボル数分遅延させた信号との間でスライディング相関処理を行い、相互相関部51が、間引き処理が行われた受信信号を用いて、スライディング相関のピーク前後の受信信号に限定して、受信信号とユニークワードの参照信号との間で相互相関処理を行うことによって相互相関の電力値(遅延プロファイル)を計算し、遅延プロファイルの最大ピークより前の前ゴースト探索範囲で、閾値以上のレベルの到来波が最初に現われたタイミングをブロック先頭タイミングとするブロック同期を行うようにした。
【0075】
これにより、ブロック同期部26−1の場合と同様の効果に加え、スライディング相関及び相互相関を行うための回路規模を半分以下に減らし、ピーク検出速度等の演算速度を速くすることができ、演算量を抑えて正確なブロック同期を行うことができる。
【符号の説明】
【0076】
1 送信前処理部
2 マッピング部
3 基準信号挿入部
4 アップサンプル部
5,25 帯域制限フィルタ部
6 デジタル直交変調部
7 アパーチャ補正部
8 DA変換部
9 送信高周波部
10 送信アンテナ
21 受信アンテナ
22 受信高周波部
23 AD変換部
24 デジタル直交復調部
26 ブロック同期部
27 自動周波数制御部
28 雑音電力検出部
29 フーリエ変換部
30 チャネル推定部
31 周波数領域等化部
32 逆フーリエ変換部
33 シンボル判定部
34 受信後処理部
35 周波数領域合成部
40 スライディング相関部
41,101 複素共役化部
42,102 Nシンボル遅延部
43,47,103 複素乗算部
44,48,104 Nシンボル積分部
45,49,105 ピーク検出部
46 参照信号メモリ部
50 前ゴースト検出部
51 相互相関部
52,106 ブロック抽出部
53 ディシメーション部
54 相互相関計算制御部
200 シングルキャリア送信装置
201,202 シングルキャリア受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンボル数が(M−N)のデータシンボル、及び前記データシンボルの前後に配置したシンボル数がNの既知のユニークワードシンボルからなるブロックが連続した送信信号を、シングルキャリアの無線信号として受信アンテナによって受信し(M,Nは正の整数、M>N)、前記受信した信号をAD変換及び直交復調してベースバンドの受信信号とし、ブロック同期処理によりブロック同期した信号を生成し、前記ブロック同期した信号を周波数領域で等化または合成するシングルキャリア受信装置において、
前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号と、前記受信信号を前記ユニークワードシンボル数分遅延させた信号との間の相関処理により相関値を算出し、前記相関値がピークとなるタイミングをスライディング相関ピークのタイミングとして検出するスライディング相関部と、
前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの前記受信信号と、前記Nシンボルの既知のユニークワードシンボルについての参照信号との間の相関処理により相関値を遅延プロファイルとして算出し、前記遅延プロファイルがピークとなる前の所定の前ゴースト探索範囲にて、所定の閾値以上の到来波が最初に現れるタイミングをブロック先頭タイミングとして検出する相互相関部と、
前記相互相関部により検出されたブロック先頭タイミングに基づいて、前記受信信号からブロックを抽出し、ブロック同期した信号を出力するブロック抽出部と、
を備えたことを特徴とするシングルキャリア受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシングルキャリア受信装置において、
前記相互相関部は、
前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後における所定の計算範囲を設定する相互相関計算範囲設定部と、
前記Nシンボルの既知のユニークワードシンボルが複素共役の参照信号として記憶された参照信号メモリ部と、
前記相互相関計算範囲設定部により設定された計算範囲において、前記受信信号と前記参照信号メモリ部に記憶された参照信号との間でNシンボル分の複素乗算を行う複素乗算部と、
前記複素乗算部により複素乗算されたNシンボル分の乗算結果を積分し、前記計算範囲におけるNシンボル毎の積分値を算出するNシンボル積分部と、
Nシンボル積分部により算出された積分値に対応する遅延プロファイルが最大ピークとなるタイミングを検出するピーク検出部と、
前記ピーク検出部により検出された最大ピークのタイミングを基準にして、それ以前の所定時点から前記基準時点までの間の前ゴースト探索範囲の中で、前記遅延プロファイルにおいて所定の閾値以上の到来波が最初に現れるタイミングをブロック先頭タイミングとして検出する前ゴースト検出部と、
を備えたことを特徴とするシングルキャリア受信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシングルキャリア受信装置において、
さらに、前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号に対し、前記送信信号のクロックと等倍になるように間引き処理を行うディシメーション部を備え、
前記スライディング相関部は、前記送信信号のクロックに対しオーバーサンプリングでAD変換された受信信号の代わりに、前記ディシメーション部により間引き処理された受信信号を用いて、前記スライディング相関ピークのタイミングを検出し、
前記相互相関部は、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの前記受信信号の代わりに、前記スライディング相関部により検出されたスライディング相関ピークのタイミング前後の所定範囲におけるNシンボルの、前記ディシメーション部により間引き処理された受信信号を用いて、前記ブロック先頭タイミングを検出することを特徴とするシングルキャリア受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−51596(P2013−51596A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189287(P2011−189287)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】