説明

シータ及びシート搬送方法

【課題】 シートの高速搬送に適した搬送部を有するシータを提供することを目的とする。
【解決手段】 上記課題を解決するためのシータは、下部高速搬送手段12から下部低速搬送手段14へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記下部低速搬送手段14へ押圧して前記シートに制動をかけるスナッパ20を有するシータであって、前記スナッパ20によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記下部低速搬送手段14側へ吸着させる吸引手段22を備え、前記スナッパ20の押圧はブラシによって成すこととし、当該ブラシを構成する繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機用シータ、及び前記シータによって搬送されるシート(ウェブ)の搬送方法に係り、特にシートカット後の搬送部に特徴を有するシータ、及びシート搬送方に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機のシータには、印刷機から供給される印刷ウェブを所定の長さに裁断して枚葉状態のカット紙(シート)をスタック部まで搬送する搬送部が備えられている。前記搬送部として、下部高速搬送手段と下部低速搬送手段、及び上部高速搬送手段を備えるシータがある。このようなシータでは、下部高速搬送手段から排出されたシートが上部高速搬送手段に引き渡され、次いで下部低速搬送手段に引き渡され、スタック部へ供給されるように構成されることが一般的である。スタック部の前段に低速搬送手段を配設することで、高速で搬送されてくるシートを減速させ、スタック部へ積層可能な速度まで減速させることができ、シートがスタック部の対壁にぶつかって折れ曲がることを防止することができる。
【0003】
このような構成の搬送部を有するシータでは、上部高速搬送手段から下部低速搬送手段へシートを引き渡す際、スナッパと呼ばれる回転アームを用いて上部高速搬送手段によって搬送されてくるシートのシート端(後端)を叩いて、下部低速搬送手段の搬送面へ押し付けることでシートに制動をかけつつ、スクェアリングロールと呼ばれるローラにシートをぶつけてシートの減速を図り、シートを下部低速搬送手段へ引き渡すという手法が採られていた。
【0004】
しかし、上記のような手法によれば、シートを下部低速搬送手段へ押し付けた際に、前記シートに押し付け痕が残ったり、押し付けの際の衝撃や音が大きいという問題があった。これに対し、シートに押し付け痕が残らないようにするために、押し付け圧力を弱めた場合には、シートの制動が十分でなくなり、スクェアリングロールへぶつかった際に折れや曲がりが生ずるという問題があった。
【0005】
上記実状を鑑み、本願出願人は、前記スナッパに対してブラシを装着し、このブラシによってシートを押圧すること、及びブラシ面をシートの搬送方向に対して長く設定することにより弱い押圧であっても十分な制動をかけることができるようにすることを提案し、これを特許文献1、特許文献2に開示している。
【0006】
このような構成のシータによれば、スナッパによるシートの押圧力を高めた場合であっても、シートに押し付け痕が残る虞が無くなる。また、ブラシの押圧面積を広くした場合には弱い押圧力であってもシートに対して十分な制動をかけることが可能となる。このため、シートがスクェアリングロールへぶつかった際に折れや曲がりが生ずる虞が無くなる。さらに、押し付けの際に生じる衝撃や音も解消することができる。
【特許文献1】特開平10−109805号公報
【特許文献2】特開2000−16665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2に開示したシータによれば、従来の搬送速度でシートを搬送する場合には、シートに対して十分な制動をかけることができていた。しかし、近年では、印刷速度の向上と共に、印刷され、裁断されたシートの搬送速度の向上も望まれてきている。これに対して、シートの搬送速度を高めた場合に、上記特許文献1、2に開示した技術をもってシートに十分な制動力を与えるためにはブラシ面を相当に長くする等の対策を採る必要が生じる。一方、ブラシ面をシートの搬送方向に対して長くした場合には、厚いシートを押圧する際、押圧位置が前方にズレてしまうといった問題が生ずる。
【0008】
また、シートの引渡しの際には、シートの厚さや抵抗の差により、シートの幅方向についての送り出し速度に違いが生じ易く、シートが搬送方向に対して傾いてしまうことがある。この減少は高速搬送時には特に顕著に表れることとなる。シートが傾いた状態であっても、スクェアリングロールにぶつかることにより正常な位置に回帰されるが、シートはスクェアリングに対してオフセット衝突することとなるため、衝突部分における折れや曲がりは大きなものとなってしまう。
【0009】
また、シータ全般の問題として、シートが薄い場合にはシートに腰が無く、高速搬送手段から低速搬送手段への引渡しの際にシートにめくれや曲がりが生ずるといった問題がある。また、めくれや曲がりを生じたシートは、供給先の搬送手段と干渉し干渉部分に汚れが生ずるという問題もある。また、同様の問題としてシートをスタック部へ供給する際にも折れや曲がり、しわが生ずるということがある。スタック部へシートを供給する際の問題解決策として、シートの排出部の中央に腰付けガイドと呼ばれる固定物を置いて排出されるシートを山なりにしてシートに腰を付けるという手法が採られていることが多い。しかし、腰付けガイドを配置した場合には、固定物の腰付けガイドにシートが擦れ、シートを汚すといった問題があった。
【0010】
本発明では、シートに折れや曲がり、しわを生じさせることが無く、搬送シートの厚さに左右されること無くシートを搬送することができる、シートの高速搬送に適した搬送部を有するシータを提供することを目的とする。また、他の目的として、搬送するシートを汚すこと無くシートに腰付けを施すことを可能とするシートの搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
シートを高速搬送しつつシートに折れや曲がり、しわ等を生じさせないためにはまず、高速搬送手段から低速搬送手段へ供給する際の引渡し手段であるスナッパ(制動手段)を改良する必要があると考えられる。そこで、上記目的を達成するための本発明に係る第1のシータは、高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を備え、前記制動手段はブラシとし、当該ブラシを構成する繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることにより、制動手段によって押圧されたシートが吸引手段によって低速搬送手段に吸着されるため、シートを押し付ける押圧力が低い場合であっても、シートに対して十分に制動をかけることができる。また、ブラシの繊維束の配置距離をシートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことにより、シートを押圧する面が小さくなり押圧時間が短くなる。このため、押圧するシートの厚さによる押圧開始時間のズレが無くなる。よって、これを考慮してシート厚の変更毎にスナッパの回転速度等の設定を変える必要も無くなる。
【0013】
また、シートを高速搬送する上で、シートにめくれや折れ等を生じさせないようにするためには、各搬送手段にシートを押し付けておく、若しくはシートにめくれ等が生じることを強制的に止めるようにすることができれば良いと考えられる。そこで上記目的を達成するための本発明に係る第2のシータは、高速搬送手段と低速搬送手段とを有するシータであって、前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を備え、前記上昇流発生手段には噴出気体を導く気体案内板を設け、前記案内板の気体噴出方向を前記高速搬送手段側へ定めたことを特徴とするものである。
【0014】
このような構成とすることにより、高速搬送手段から排出されたシートに腰が無い場合であっても、シートが下方へ折れ曲がることを防止することができる。また、シートが上部(高速)搬送手段によって搬送される場合には、シートを上部搬送手段へ押し付けておくことができるため、シートが下方へ折れ曲がることを防止することができる。また、シート厚が薄い場合には、低速搬送手段に引き渡されたシートの後端に噴出気体が触れることで、シート後端がめくり上げられるという問題もあったが、気体案内板の気体噴出方向を高速搬送手段側へ定めたことによりこれを解消することができる。なお、シート後端のめくれを防止することにより、後続のシートが前のシートの下部へ潜り込むことも防止することができ、このことによってシートに生じる折れや曲がりも防止することができる。よって、シート厚が薄い場合であってもシートに折れや曲がり等を生じさせること無く高速搬送することができる。
【0015】
また、高速搬送されてきたシートを引き渡す際の搬送方向に対する傾きを防止するためには、シートに対して芯出しをしてやれば良いと考えられる。そこで、上記目的を達成するための本発明に係る第3のシータは、高速搬送手段と低速搬送手段とを有し、前記低速搬送手段を、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成したシータであって、前記複数の無端搬送ベルトの中から、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするものである。
【0016】
このような構成とすることにより、シートの一部(例えば中央付近)が、シートの搬送と共に他の部位よりも高い位置に持ち上げられることとなる。このためシートが搬送手段に引渡される際には、その部分が他の部分よりも先にシートと触れることとなり、シートの芯出しを行うことができ、その後にシートが傾くことを防止することができる。また、シートを搬送方向の正面から見た場合、山なりの形状を成す状態で搬送されることとなり、いわゆる腰付けがされた状態となる。また上記構成によれば、腰付けを行う部位も無端搬送ベルトであり、シートと共に移動していくため、シートとの間に摩擦が生じることが無く、腰付けガイドとシートが擦れることによってシートが汚れるといった虞は無い。さらに、腰付け部(腰付けガイド)となる無端搬送ベルトは、シートの搬送と共に排出側にかけて徐徐に高さを増していくため、シートが腰付けガイドに衝突することによって折れやしわが発生するといった虞も無い。
【0017】
また、シートに折れや汚れ、しわ等を生じさせずに高速搬送するには、シートを高速搬送手段から低速搬送手段へ引き渡す際に、シートのめくれや折れ、摩擦等による汚れを防止することが重要であるということが考えられる。そこで上記目的を達成するための本発明に係る第4のシータは、高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を、前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を、それぞれ備え、前記制動手段はブラシとし、当該ブラシを構成する繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことを特徴とするものである。
【0018】
このような構成とすることにより、高速搬送手段から排出されたシートが薄手のものである場合であっても、シートが下方へ折れ曲がることを防止することができる。また、シートが上部(高速)搬送手段によって搬送される場合には、シートを上部搬送手段へ押し付けておくことができる。このため、折れ曲がったシートが低速搬送手段と干渉して汚れる虞がない。また、上記構成によれば、制動手段によって押圧されたシートが吸引手段によって低速搬送手段に吸着されるため、シートを押し付ける押圧力が低い場合であっても、シートに対して十分な制動をかけることができる。また、ブラシの繊維の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことにより、シートを押圧する面が小さくなり押圧時間が短くなる。このため、押圧するシートの厚さによる押圧開始時間のズレが無くなる。すなわち、搬送されるシートのシート厚に関係無く、良好な搬送状態を保つことができる。
【0019】
また、高速搬送されるシートに、折れやまがり、汚れを発生させずに、当該シートをスタック部に積層するためには、高速搬送手段から低速搬送手段へシートを引き渡す際に十分な制動をシートにかけると共に、シートを排出し、スタック部に積層する際に折れや、めくれ、曲がり等が発生しないようにする必要があると考えられる。そこで、上記目的を達成するための本発明に係る第5のシータは、高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を備え、前記低速搬送手段は、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成し、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするものである。
【0020】
このような構成とすることにより、制動手段によって押圧されたシートが、吸引手段によって低速搬送手段に吸着されるため、シートを押し付ける押圧力が低い場合であっても、シートに対して十分な制動をかけることができる。また、上記のような構成によれば、シートの一部(例えば中央付近)が、シートの搬送と共に他の部位よりも高い位置に持ち上げられることとなる。このため引渡し時には、その部分が他の部分よりも先にシートと触れることとなり、シートの芯出しが行われることとなり、その後にシートが傾くことを防止することができる。また、シートの一部(例えば中央付近)が搬送されると共に他の部位よりも高い位置に持ち上げられることとなるため、シートを搬送方向の正面から見た場合、山なりの形状を成す状態で搬送されることとなり、いわゆる腰付けがされた状態となる。また上記構成によれば、腰付けを行う部位も無端搬送ベルトであり、シートと共に移動していくため、シートとの間に摩擦が生じることが無く、シートが腰付けガイドと擦れることによって発生する汚れは発生しない。さらに、腰付け部(腰付けガイド)となる無端搬送ベルトは、シートの搬送と共に排出側にかけて徐徐に高さを増していくため、シートには腰付けガイドとの衝突による折れやしわが発生する虞も無い。そしてこのような状態で排出されるシートは、腰付けが十分になされているため、スタック部に積層される際に折れやめくれ、曲がり等を生じる虞が無い。
【0021】
また、上記第1又は、第3乃至第5のシータにおいては、前記制動手段の後段に、前記低速搬送手段の上方から前記低速搬送手段へ向けて気体を噴出する下降流発生手段を備えると良く、これを本発明に係る第6のシータとする。
上記構成によれば、シートが搬送手段に引渡された際にシートが空気抵抗によって浮き上がること(バタつくこと)を防止することができる。
【0022】
また、シートを高速搬送することができ、シートに折れや曲がり、しわ、汚れ等を生じさせることが無く、搬送シートの厚さに左右されることの無い搬送部を有するシータの構成として挙げた上記シータのそれぞれの構成をまとめることにより相乗的な効果を得られることが考えられる。よって上記目的を達成するための本発明に係る第7のシータは、高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を、前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を、前記制動手段の後段に、前記低速搬送手段の上方から前記低速搬送手段へ向けて気体を噴出する下降流発生手段を、それぞれ備え、前記低速搬送手段は、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成し、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするものである。
【0023】
このような構成によれば、高速搬送手段から低速搬送手段へシートを引き渡す際にシートが下方へ折れ曲がる虞が無い。また、シートを高速で引き渡した場合であっても、シートに十分な制動をかけることができ、シートの前端側には押し付け力を付与することができる。また、シートを引渡す際に芯出しを行うことができるため、低速搬送手段に引渡されたシートに傾きが生じる虞も無い。また、スタック部へ排出するシートには確実に腰付けを行うことができ、シートが擦れて汚れるという虞も無い。さらに、気体によってシートを押し付けることにより、シートに対して腰付けを行うために低速搬送手段の一部が隆起していてもシート等が上部高速搬送手段や、下降流発生手段に干渉して汚れるという虞が無い。
また、上記第4又は第7のシータにおいて、前記上昇流発生手段の気体噴出口には、噴出気体を導く噴流案内手段を設けるようにすると良く、これを本発明に係る第8のシータとする。
【0024】
上昇流発生手段の気体噴出口に噴流気体を導く噴流案内手段を設けることにより、上昇流発生手段の気体噴出口から噴出された気体を拡散させること無く、シート下面へ導くことができる。よって高速搬送手段から排出されるシートに対する気体の噴出を効率良く行うことができる。
また、上記第8のシータにおいて、前記噴流案内手段は板によって構成し、当該板の気体噴出方向を前記高速搬送手段側へ定める構成を採ると良く、これを本発明に係る第9のシータとする。
【0025】
このような構成とすることにより、低速搬送手段に引渡されたシートの後端に上昇流が触れることが無くなる。このため、低速搬送手段に引渡された後のシート後端が、上側へめくれ上がることが無くなる。
また、上記第6又は第7のシータにおいて、前記下降流発生手段の気体噴出口には、噴出される下降流の流れを前記シートの搬送方向に設定する噴流制御手段を備えるようにすると良く、これを本発明に係る第10のシータとする。
【0026】
下降流発生手段に噴流制御手段を備えることにより、低速搬送ベルト上にてシートが瓦状に重なる際に、シート間に適度な空気(気体)を挟み込むことができ、シート間での摩擦を防止することができる。また、この状態でスタック部へシートを排出することにより、積層されたシートのシート合わせが容易となる。
【0027】
また、上記第5又は第7のシータにおいて、前記制動手段は、前記シートの押圧を行うブラシを有する構成とすると良く、これを本発明に係る第11のシータとする。
このような構成とすることにより、押圧力を強めた場合であっても用紙に傷が付きづらいという効果がある。
【0028】
また、前記第11のシータでは、前記ブラシは複数の繊維を束ねた繊維束を基板に固定することによって構成されるものであり、前記基板には前記繊維束により前記シートの搬送方向と直交する方向に配した1つの列を構成したことを特徴とするものであると良い。
【0029】
このような構成のブラシを持つシータによれば、シートを押圧する面が小さくなり(線となるため)押圧時間が短くなる。このため、押圧するシートの厚さによる押圧開始時間のズレは無くなり、これを考慮してシート厚の変更毎に設定を変える必要も無くなる。
【0030】
また、上記目的を達成するための本発明に係るシート搬送方法は、シートを搬送する搬送手段のうち、複数の無端搬送ベルトによって構成される搬送手段を用いてシートを搬送する方法において、前記複数の無端搬送ベルトの中から少なくとも1つの無端搬送ベルトの搬送面の軌道を、他の無端搬送ベルトの搬送面の軌道よりも高所に設定したことを特徴とする。
このような方法によれば、シートに擦れによる汚れや傷を付けること無く、確実に腰付けを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明のシータ及びシート搬送方法に係る実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する際の一部の形態であり、本発明は以下の形態のみに拘束されるものでは無い。
【0032】
図1は、本発明のシータに係る第1の実施形態における搬送部の構成を示す図である。なお、シータには一般に、図1に示す搬送部10の上流にカット部(不図示)が設けられている。そして、図示しないカット部の下流に搬送部10が設けられ、搬送部10の下流には搬送されたシートを積層するスタック部18が設けられる。前記搬送部10は一般に、高速搬送部と、低速搬送部とから構成されている。
【0033】
上述したように、前記高速搬送部は、カット部でカットされたシートを、図示しない印刷機の印刷速度よりも若干早い速度で搬送するように設定されている。このため、高速搬送部には、カット部でのカット長さがばらつかないように、印刷ウェブにテンションをかけること、及び下流の低速搬送部でシートを重ねる際のタイミングをとること等の作用がある。一方、低速搬送部には、前記高速搬送部から排出されたシートが、前記スタック部18へ積層するのに適切な速度となるように搬送速度を調整する作用がある。なお、低速搬送部は、印刷機の印刷速度よりも遅めに設定されるため、高速搬送部から排出されたシートは低速搬送部上で瓦積み状を成して搬送されることとなる。
【0034】
以下に示す実施形態におけるシータの搬送部10は、下部高速搬送手段12、下部低速搬送手段14、及び上部高速搬送手段16を有することを基本構成とし、本発明のシータに係る第1の実施形態は、後述するスナッパ20、及び吸引手段22を備えることを特徴としている。
前記下部高速搬送手段12、下部低速搬送手段14、及び上部高速搬送手段16は、帯状に形成された無端搬送ベルト13,15,17によって構成されており、前記無端搬送ベルト13,15,17をシートの搬送方向に沿って並列に複数配置することでシートの搬送面を構成する。
【0035】
下部高速搬送手段12は、複数のガイドロール12a,12b等に無端搬送ベルト13を掛け回すことで構成され、例えばガイドロール12bを駆動ロールとして矢印Aの方向へ無端搬送ベルトを駆動させる。
上部高速搬送手段は、複数のガイドロール16a,16b,16c等に無端搬送ベルト17を掛け回すことで構成され、前記下部高速搬送手段12に設けられた無端搬送ベルト13の駆動速度に合わせて矢印Cの方向へ、無端搬送ベルト17を駆動させる。
【0036】
下部低速搬送手段14は、複数のガイドロール14a,14b等に無端搬送ベルト15を掛け回すことで構成され、例えばガイドロール14bを駆動ロールとして矢印Bの方向へ無端搬送ベルト15を駆動させる。なお、シートは、これらの搬送手段により、下部高速搬送手段12、上部高速搬送手段16、下部低速搬送手段14の順番で引き渡されて、搬送される。
【0037】
前記スナッパ20は、前記上部高速搬送手段16に張り付いて搬送されるシートを引き剥がし、前記下部低速搬送手段14に引き渡しつつシートに制動をかける制動手段である。スナッパ20の構成としては、図2に詳細を示すように、回転軸20aに対してスリーブ20bが設けられており、前記スリーブ20bの回転接線方向にプレート(基板)20cを設けている。前記プレート20cの主面には、ブラシ繊維20dが植えられている。前記ブラシ繊維20dは、スナッパ20を回転駆動させた際に、ブラシ先端が下部低速搬送手段14のシート搬送面を押圧する長さに設定される。
【0038】
スナッパ20は、シートの搬送速度に合わせて、各シートのシート後端を叩いて下部低速搬送手段14へ押圧する。このような動作により、シートを下部低速搬送手段14へ引き渡すと共に搬送されるシートに制動をかけることができる。
また、前記ブラシ20dは、複数の繊維を束ねた繊維束を前記基板に複数設ける(植える)ことで構成される。本実施形態におけるブラシ20dは、前記繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下とする。ブラシ20dをこのような構成とすることにより、繊維束とシートとの接触面積(シートを押圧する面)が小さくなる。これにより、シートを押圧する時間が短くなるため、搬送されるシートのシート厚に関係無くシートの押圧開始位置を定めることができる。なお、前記所定の長さとは、ブラシ20dに使用する繊維の柔軟性や繊維の間隔等によって設定される数値であり、繊維束が上部高速搬送手段16からシートを剥がして下部低速搬送手段へ押圧可能な強度を得ることができる最低値(本数)とすると良い。
【0039】
また、好適な条件として本実施形態では、前記繊維束を円形に束ね、これを前記シートの搬送方向に直交する方向へ複数、1列に配置する構成を採っている。1つの繊維束の束径は、約5mm程度とした。したがって、本実施形態における繊維束の配置距離は、シートの搬送方向に対して5mm程度である。なお、束径の小さな繊維束を複数配置して、同程度の配置距離を得たとしても、本発明を実施する上で影響を与えるものでは無いことはいうまでもない。
【0040】
前記吸引手段22は、下部低速搬送手段14におけるシート搬送面を構成する無端搬送ベルト15の下面に備えられ、前記スナッパ20によってシートが押圧される位置に吸引口22aを設けている。具体的には、次のような構成とした。スナッパ20のシート押圧位置の下面には一般的に、エネルギー吸収プレート24が設けられ、スナッパ20による押圧力を受け止めるように構成される。本実施形態では、前記ガイドロール14aと、前記エネルギー吸収プレート24との間に形成される隙間に着目し、この隙間を前記吸引手段22の吸引口22aとした。
【0041】
このような構成の吸引手段22は、前記吸引口22aから気体を吸引し、前記スナッパ20によって下部低速搬送手段14に押圧されたシートの後端を吸引し、シートに制動をかける。また、下部低速搬送手段14を構成する無端搬送ベルト15には、図3に示すような複数の孔15aが設けられており、吸引状態で搬送されるシートがベルトからズレることなく搬送される構成としている。このため、シートが吸引手段22の吸引口22aを塞ぐことは一時的なものとなり、後続のシートが押圧される時点では、吸引口22aが再び開口状態となる。
【0042】
上記のように、スナッパ20のシート押圧位置に吸引手段(吸引手段22の吸引口22a)22を設けることにより、スナッパ20によって押圧されたシートが、下部低速搬送手段14に吸着されることとなる。このため、スナッパ20とシートとの接触面積を小さくすることによりシートに対する押圧力が弱くなった場合であっても、高速で搬送されてくるシートに対して十分な制動をかけることができることとなる。そして、このような構成によれば、高速搬送されてくるシートをスクェアリングロール等に衝突させることなく制動させて下部低速搬送手段14に引き渡すことができるため、シートに折れや曲がりを生じさせることが無い。また、シートに対する吸引をピンポイント(実際には線状の吸引口)で行うこととなるため、吸引ボックス等を用いて面で吸引する場合に比べ、高い吸引力を得ることが可能となり、吸引効率が良い。
【0043】
次に、本発明のシータに係る第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態のシータについての基本的構成は、第1の実施形態のシータと同様である。
本実施形態に係るシータは、下部高速搬送手段12のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて空気等の気体を噴出する(吹きかける)上昇流発生手段26を備えており、当該上昇流発生手段26に気体案内板26aを設け、その先端を前記下部高速搬送手段12側へ屈曲させたことを特徴としている。
【0044】
前記気体案内板26aとは、上昇流発生手段26から噴出された気体を、拡散させること無く効率良くシート下面へ導くための板である。そして、この板の先端部を下部高速搬送手段12側、すなわちシートの搬送方向と反対側へ屈曲させることにより、噴出気体を下部高速搬送手段12側へ導くこととなり、下部低速搬送手段12に引き渡された後のシート後端に、噴出気体が触れるという事が無くなる。このため、下部低速搬送手段12に引き渡された後にシートの後端がめくれ上がるといったことが無くなり、前記めくれ上がりを要因として後続のシートが前のシートの下側へ潜り込むといったことも無くなる。
【0045】
通常、下部高速搬送手段12から排出されたシートは、上部高速搬送手段16に張り付いた状態で下部低速搬送手段14側へ搬送されるが、搬送速度が向上してシートが受ける抵抗が大きくなったり、シート厚が薄くシートに腰が無い場合等には、下部低速搬送手段14へ搬送される前にシートの先端が下方へ折れてしまたり、シート後端が下方へ垂れ下がってしまったりすることがある。このような状態で下部低速搬送手段14へ引き渡されたシートには、しわや折れ等が発生する可能性が高い。
【0046】
本実施形態の構成を有するシータによれば、下部高速搬送手段12から排出されたシートは、上部高速搬送手段16に張り付いた状態で下部低速搬送手段14まで搬送されることとなり、搬送後のシートにしわや折れが生じる虞が無い。詳細に説明すると、下部高速搬送手段12から排出されたシートは、上昇流発生手段26から噴出された気体により上部高速搬送手段16に押し付けられた状態で搬送されることとなるため、下部低速搬送手段14の手前側で下方へ折れ曲がるといったことが無くなるのである。
【0047】
なお、本実施形態に係るシータには、スナッパ20として、アーム(ロール)やヘラを有するものや、大型のブラシを有するものを備えても良い。また、第1の実施形態のシータの特徴部分である吸引手段22は備えなくとも本実施形態のシータとみなすことができる。また、本実施形態では、気体案内板26aの先端は屈曲させることとしているが、この構成は、気体の噴出方向を下部高速搬送手段12側へ定めることが可能であれば良い。このため、気体案内板26aの先端を湾曲させたとしても同様の効果を得ることができる。さらに、気体案内板26a自体を湾曲させることにより、噴出気体を下部高速搬送手段12側の上方へ導くようにしても、同様の効果を得ることができる。
【0048】
次に、本発明のシータに係る第3の実施形態について説明する。本実施形態に係るシータの基本的構成も、第1の実施形態、第2の実施形態と同様である。本実施形態に係るシータは、複数の無端搬送ベルト15を並列に配置して構成した下部低速搬送手段14の構成に特徴を有する。詳細すると、下部低速搬送手段14を構成する複数の無端搬送ベルト15のうちの少なくとも一つ(本実施形態では中央部のみ)のシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルト15のシート排出側掛け回し部よりも高所に配置したのである。
【0049】
具体的構成としては、図5,6に示すように、下部低速搬送手段14の中央に配された無端搬送ベルト15のシート搬出側に、独立したガイドロール14cを設けたのである。前記ガイドロール14cは、無端搬送ベルト15のシート搬送面を構成する部分が、他の無端搬送ベルト15のシート搬送面よりも高い位置となるように、ガイドロール14bの上方へ設けることとした。
【0050】
このような構成により、中央の無端搬送ベルト15におけるシート搬送面の軌道は、他の無端搬送ベルト15におけるシート搬送面の軌道よりも高所に位置することとなる。このため、下部低速搬送手段14に引渡されたシートは、いち早く中央の無端搬送ベルト15のシート搬送面に接触することとなる。これは、高速搬送されてくるシートが搬送方向に対して傾きを持たないようにするための芯出し効果があり、シートをスタック部18へ積層する際にシートが傾いた状態とならないようにする。なお、このような構成であれば、シートのサイズに関わりなくシートが傾くことを防止することができる。
【0051】
また、シートを搬送方向の正面から見た場合には、シートはその中央を頂点とする山なりの形状を成す状態で搬送されることとなり、いわゆる腰付けがされた状態となる。
また、上記構成によれば、シートに対して腰付けを行う部位が無端搬送ベルト15であるため、腰付け部(腰付けガイド)がシートと共に搬送方向へ移動していくこととなる。このため、シートと腰付け部との間に摩擦が生じることが無く、シートが擦れにより汚れる事も無い。さらに、腰付け部となる無端搬送ベルト15は、シートの搬送と共に排出側に向けて徐徐に高さを増していく構造となっているため、シートが腰付け部に衝突することも無く、それによりシートにしわや折れが発生する虞も無い。
【0052】
また、上記構成のような腰付けによれば、シートの山なりをきつくすることもできるため、確実な腰付けを行うことができ、シートを排出(送り出し)した際には折れ曲がること無くスタック部18へ積層させることができる。
なお、複数の無端搬送ベルト15のシート排出側掛け回し部を段階的に高くすることにより、シートに山なり形状を生じさせるようにしたとしても、本実施形態に係るシータを逸脱するものでは無い。また、本実施形態に係るシータに備えるスナッパ20は、アームやヘラを有するものであっても、大型ブラシを有するものであっても良いこととする。また、第1の実施形態に記載した吸引手段22を備えない場合であっても、本実施形態に係るシータによる効果を奏することはできる。また、本実施形態における腰付けとは、シートを湾曲させることにより、搬送方向におけるシートの曲げ剛性を向上させることをいう。
【0053】
次に、図7,図8を参照して本発明のシータに係る第4の実施形態について説明する。本実施形態のシータは、上記実施形態に記載した特長を持つシータに、下降流発生手段28(28a,28b)を備えたことを特徴とする。
前記下降流発生手段28は、前記スナッパ20の下流に設けられ、上部高速搬送手段16側から下部低速搬送手段14へ向かって空気等の気体を吹き付け、前記下部低速搬送手段14によって搬送されるシートのばたつきを抑えるものである。
【0054】
また、下降流発生手段28は、噴出する気体を下方、若しくは下斜め前方へ噴出すことができるように、吹出口に噴流制御手段を設けるようにすると良い。噴流制御手段の良好な形態としては、吹出口を覆う板に、支持部を残した切れ込みを入れ、当該切れ込みにより片持ち状態となった切片を気体噴出し面と反対側へ適宜角度を付けて屈曲させたものである。そして、これを下降流発生手段の吹出口へ装着し、切片を折り曲げることによって形成される開口部を吹出口とすれば良い。
【0055】
前記切れ込みの形状として具体的には、図9に示すようなものであれば良い。すなわち、大型のU字形状を基本とし、その先端部分に小型のU字形状を逆向きに描く突端部29aを持たせる形状とすると良い。このような切れ込みを設けた板29の場合、前記大型のU字形状部分が切片29bとなる。
【0056】
また、切片29bの折り曲げにより形成される吹出口29cは複数形成し、その間隔はシートの送り出し方向へ進むほど広くすると良く、切片29bの折り曲げ角度もシートの送り出し方向へ進むほど大きくすることが望ましい。なお、図9において、図9(A)は前記吹出口29cを形成する板29の側面図を示し、図9(B)は板29の概略下面図を示す。また、図9(A)において矢印は、空気の噴出方向を示す。
【0057】
上記のように構成される吹出口29cを持つ下降流発生手段28によれば、シートの後端が押し付けられる前には、シート前端を搬送方向へ向かって送り出しつつ押さえつける作用を奏する。一方、シート後端が押圧され、吸引手段22によるバキュームブレーキがかけられる時点においては、シート前端を下方へ押し付ける力が強くなるように気体を吹き付ける作用を奏する。
【0058】
また、板に切れ込みを入れ、切片を折り曲げることにより噴出方向を変化させる吹出口29cを形成するため、構造が簡単であり低コストで高い作用効果を得ることができる。
なお、図9に示す吹出口29cの形状は、噴流制御手段の好適な形態の1つであり、切れ込みの形状を変えることのみによっては、本実施形態を逸脱することにはならない。また、本実施形態では、噴出する気体を下方、若しくは下斜め前方へ噴出すことができるようにすると良いとしているため、噴流制御手段として、吹出口にルーバーを設けるなどして噴出させる気体の向きを変えるようにしても、本実施形態の一部とみなすこととする。
【0059】
次に、図10を参照して本発明のシータに係る第5の実施形態について説明する。本実施形態のシータは、上記第1から第4の実施形態のシータにおける特徴部分を併せ持つシータである。
よってその構成の特徴は、下部高速搬送手段12のシート排出部に上昇流発生手段26を、上部高速搬送手段16から下部低速搬送手段14へシートの引渡しを行うスナッパ20によるシート押圧位置に吸引手段22を、前記スナッパ20の下流に下降流発生手段28をそれぞれ備え、下部低速搬送手段14を構成する無端搬送ベルト15のうちの1つ(中央)のシート排出側掛け回し部を他の無端搬送ベルト15のシート排出側掛け回し部よりも高所に配置したことにある。
【0060】
また、各構成要素についての具体的構成や詳細部分については、上述した各実施形態の特徴部分と同一である。
このような構成から成る本実施形態のシータでは、シート状に切断されて下部高速搬送手段12上を搬送されてきたシートは、排出部において上昇流発生手段26によって吹き上げられ、上部高速搬送手段16に張り付いた状態で下部低速搬送手段14側へ搬送されることとなる。このため、腰の弱い薄手のシートであっても、下部高速搬送手段12と下部低速搬送手段14との間で下方へ垂れ下がってしまうことが無く、このような現象によってシートにしわや汚れ、折れ等が生じるといった事も無い。
【0061】
下部低速搬送手段14側へ搬送されたシートは、下面側には上昇流発生手段26によって吹き付けられた空気が入り込み、上面側には下降流発生手段28からの空気が吹き付けられることとなる。このように、シートの前端側は、空気に挟まれた状態で下方前方へ送りだされることとなる。このため、シート前端側は前に搬送されたシートや上部高速搬送手段16等と擦れ合うことが無い。よって、摩擦等によってシートが汚れるといったことも無い。
【0062】
上述のようにシート前端が送り出された後、シート後端は、スナッパ20によって叩かれ、エネルギー吸収プレート24に押圧される。このときシート下面側には吸引手段22の吸引口22aが位置することとなり、シートには吸引によるバキュームブレーキがかけられる。このバキュームブレーキにより、スナッパ20の押圧力が弱い場合であっても、シートに対して十分な制動をかけることができることとなる。なお、上昇流発生手段26に設ける気体案内板26aの先端部分を下部高速搬送手段12側へ屈曲させておけば、スナッパ20によって押圧されたシートの後端に空気が触れることが無く、引渡し後のシート後端がめくれ上がった状態となることは無い。このため、後続のシートの前端が、押圧されたシートの下側へ潜り込むといった虞も無い。
【0063】
本実施形態のシータは、下部低速搬送手段14を構成する無端搬送ベルト15のうち、中央の無端搬送ベルト15のシート排出側掛け回し部にガイドロール14cを設けることにより、他の無端搬送ベルト15の掛け回し部よりもその軌道を高所に設定している。このため、中央の無端搬送ベルト15におけるシート搬送面は、他の無端搬送ベルト15のシート搬送面よりも軌道が高くなる。よって、上部高速搬送手段16を介して下部高速搬送手段12から排出されたシートは、中央の無端搬送ベルト15のシート搬送面へ最も先に接触することとなる。その後、シートは正面から見ると山なりの形状を成しながら、他の無端搬送ベルトのシート搬送面へ接触することとなる。すなわち、中央の無端搬送ベルト15はシートに対して芯出しを行う作用があり、中央の無端搬送ベルト15に接触して山なり形状となったシートは、その後に傾くことは無い。
【0064】
また、シートの搬送面自体を隆起させていく構造であるため、腰付けによる山なり形状を従来に比べて大きなものとすることができ、シートに対して確実な腰付けを施すことが可能となる。
上述のようにして下部低速搬送手段14を搬送されたシートは、スタック部18に排出される際に下方へ垂れ下がること無く確実に積層される。また、スタック部18へ排出されたシートの下面には、上昇流発生手段26によって吹き付けられた空気の層が残るため、積層されたシートを揃える作業の容易性を高めることができる。
このように、本実施形態のシータは搬送部10に、シートの高速搬送に適した複数の構成要素を併せ持たせたことにより、各要素間の連携による相乗効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明のシータに係る第1の実施形態における搬送部を示す図である。
【図2】本発明のシータに係る第1の実施形態における特徴部分を示す部分拡大図である。
【図3】下部低速搬送手段の上面を示す部分拡大図である。
【図4】本発明のシータに係る第2の実施形態における特徴部分を示す部分拡大図である。
【図5】本発明のシータに係る第3の実施形態における特徴部分を示す部分拡大図である。
【図6】下部低速搬送手段の上面を示す図である。
【図7】本発明のシータに係る第4の実施形態における特徴部分を示す部分拡大図である。
【図8】上部高速搬送手段の下面を示す図である。
【図9】下降流発生手段の吹出口の形状を示す図である。
【図10】本発明のシータに係る第5の実施形態における搬送部を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10………搬送部、12………下部高速搬送手段、13………無端搬送ベルト、14………下部低速搬送手段、15………無端搬送ベルト、16………上部高速搬送手段、17………無端搬送ベルト、18………スタック部、20………スナッパ、22………吸引手段、24………エネルギー吸収プレート、26………上昇流発生手段、28(28a,28b)………下降流発生手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、
前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を備え、
前記制動手段はブラシとし、当該ブラシを構成する繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことを特徴とするシータ。
【請求項2】
高速搬送手段と低速搬送手段とを有するシータであって、
前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を備え、
前記上昇流発生手段には噴出気体を導く気体案内板を設け、前記案内板の気体噴出方向を前記高速搬送手段側へ定めたことを特徴とするシータ。
【請求項3】
高速搬送手段と低速搬送手段とを有し、前記低速搬送手段を、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成したシータであって、
前記複数の無端搬送ベルトの中から、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするシータ。
【請求項4】
高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、
前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を、
前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を、それぞれ備え、
前記制動手段はブラシとし、当該ブラシを構成する繊維束の配置距離を、前記シートの搬送方向に対して所定の長さ以下としたことを特徴とするシータ。
【請求項5】
高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、
前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を備え、
前記低速搬送手段は、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成し、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするシータ。
【請求項6】
前記制動手段の後段に、前記低速搬送手段の上方から前記低速搬送手段へ向けて気体を噴出する下降流発生手段を備えたことを特徴とする請求項1又は、請求項3乃至請求項5のいずれか1に記載のシータ。
【請求項7】
高速搬送手段から低速搬送手段へ供給されるシートの受け渡し手段として、前記シートの後端部を前記低速搬送手段へ押圧して前記シートに制動をかける制動手段を有するシータであって、
前記高速搬送手段のシート排出部に、排出されるシートの下方から前記シートへ向けて気体を噴出する上昇流発生手段を、
前記制動手段によって前記シートが押圧される位置に、前記シートを前記低速搬送手段へ吸着させる吸引手段を、
前記制動手段の後段に、前記低速搬送手段の上方から前記低速搬送手段へ向けて気体を噴出する下降流発生手段を、それぞれ備え、
前記低速搬送手段は、並列に配置した複数の無端搬送ベルトによって構成し、少なくとも1つの無端搬送ベルトのシート排出側掛け回し部を、他の無端搬送ベルトの排出側掛け回し部よりも高所に配置したことを特徴とするシータ。
【請求項8】
前記上昇流発生手段の気体噴出口には、噴出気体を導く噴流案内手段を設けたことを特徴とする請求項4又は請求項7に記載のシータ。
【請求項9】
前記噴流案内手段は板によって構成し、当該板の気体噴出方向を前記高速搬送手段側へ定めたことを特徴とする請求項8に記載のシータ。
【請求項10】
前記下降流発生手段の気体噴出口には、噴出される下降流の流れを前記シートの搬送方向に設定する噴流制御手段が備えられることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のシータ。
【請求項11】
前記制動手段は、前記シートの押圧を行うブラシを有することを特徴とする請求項5又は請求項7に記載のシータ。
【請求項12】
前記ブラシは複数の繊維を束ねた繊維束を基板に固定することによって構成されるものであり、前記基板には前記繊維束により前記シートの搬送方向と直交する方向に配した1つの列を構成したことを特徴とする請求項11に記載のシータ。
【請求項13】
シートを搬送する搬送手段のうち、複数の無端搬送ベルトによって構成される搬送手段を用いてシートを搬送する方法において、
前記複数の無端搬送ベルトの中から少なくとも1つの無端搬送ベルトの搬送面の軌道を、他の無端搬送ベルトの搬送面の軌道よりも高所に設定したことを特徴とするシート搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−225143(P2006−225143A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43958(P2005−43958)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(590001717)ニッカ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】