説明

シートの接合部における縫製構造と縫製方法、並びにそのようなシートの接合部で縫製された梱包袋とその製造方法

【課題】シートの接合部における縫製構造と縫製方法、並びにそのようなシートの接合部での縫製構造で構成される梱包袋及びそのようなシートの接合部の縫製方法を用いてなされる梱包袋の製造方法であって、たとえば綿等を圧縮梱包するような場合に使用される梱包袋やその製造方法に関し、シートの接合部における縫目が双方向から裸出しないような状態とし、それによって梱包用袋等のシートの接合部における縫目の部分から埃等が混入するのをより確実に防止することを課題とする。
【解決手段】少なくとも2枚のシートの接合部における縫製構造であって、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返され、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの接合部における縫製構造と縫製方法、並びにそのようなシートの接合部での縫製構造で構成される梱包袋及びそのようなシートの接合部の縫製方法を用いてなされる梱包袋の製造方法であって、たとえば綿等を圧縮梱包するような場合に使用される梱包袋やその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の圧縮梱包用の袋としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のフラットヤーンを経糸、緯糸に使った織布を基材とした基布の内側に合成樹脂製フィルムをホットメルト法で接着し、或いは押出ラミネート法により基材織布にフィルムを全面積層した袋状のものが使用されている。このような圧縮梱包用の袋は、外側の織布に、被梱包物である綿の反発応力を負担させるとともに、内側にフィルムが設けられているために、そのフィルムが防水効果を発揮して内側の綿が保護され、またフィルムの柔軟性により、作業面で非常に優れたものとなっている。
【0003】
そして、このような梱包袋として、従来ではたとえば下記特許文献1や特許文献2のような特許出願がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−47610号公報
【特許文献2】特開2000−272671号公報
【0005】
ところで、このような梱包袋で梱包される上記のような綿は、たとえば衛生用パッド等に使用されるが、そのような場合、一般にポリプロピレン等の合成樹脂で構成されているので静電気を帯び易く、空気中の埃や異物等が付着し易いものである。そのため、梱包袋内に埃や異物等が混入するのを極力防止する必要がある。しかしながら、上記特許文献1、2の図面にも示されているように、この種の梱包用袋は、少なくとも2枚以上のシートが接合されて構成されているので、その構造上、シートの接合部においてどうしても縫目が形成されることとなり、その縫目からほこり等が混入するおそれがある。
【0006】
より具体的に説明すると、この種の梱包用袋においては、図8に示すように、相対面するシート3c、3dの端縁を糸7cで縫製する方法、或いは図9に示すように、相対面するシート3c、3dの端部を折り曲げ、その折り曲げられた端部6c、端部6d、及び前記シート3c、3dとの4者を糸7cで縫製する方法等が採用されている。
【0007】
しかしながら、上記図8のような縫製構造においては、相対面する2枚のシート3c、3dに糸7cが貫通して縫目が形成されており、また図9のような縫製構造においては、相対面する2枚のシート3c、3dと、前記折り曲げられた端部6c、端部6dとの4者に糸7cが貫通して縫目が形成されているので、上記
図8、図9のいずれの縫製構造の場合にも、接合部分における縫目が貫通した状態となって、シートの接合部分の外側及び内側のいずれの側にも縫目が裸出した状態となる。
【0008】
従って、梱包袋の外部から上記縫目の部分を介して埃等が袋の内部に混入するおそれを好適に防止することができなかった。この結果、梱包袋内の綿等の被梱包物に混入した埃等が付着し、被梱包物が不衛生になるおそれがあるという問題が生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、シートの接合部における縫目が双方向から裸出しないような状態とし、それによって梱包用袋等のシートの接合部における縫目の部分から埃等が混入するのをより確実に防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような課題を解決するために、シートの接合部における縫製構造と縫製方法、並びにそのようなシートの接合部で縫製された梱包袋とその製造方法としてなされたもので、シートの接合部における縫製構造に係る請求項1記載の発明は、少なくとも2枚のシートの接合部における縫製構造であって、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返され、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製されていることを特徴とする。
【0011】
またシートの接合部の縫製方法に係る請求項2記載の発明は、少なくとも2枚のシートの接合部を縫製する方法であって、一方のシートと他方のシートとを接合し、該一方のシートの端部を他方のシートとの接合面と反対側へ折り返し、その折り返された一方のシートの端部と、折り返されていない一方のシート及び他方のシートとの3者を縫製し、次に、他方のシートの端部を、前記折り返された一方のシートの端部の外側へ折り返し、該折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者を、前記3者が縫製された位置から離間した位置で縫製することを特徴とする。
【0012】
さらに梱包袋に係る請求項3記載の発明は、袋本体が少なくとも2枚のシートによって構成された梱包袋において、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返され、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製され、しかも前記3者の縫製部分を起点として前記他方のシートが反転されて前記一方のシートと反対側に延設されていることを特徴とする。
【0013】
さらに梱包袋の製造方法に係る請求項4記載の発明は、袋本体が少なくとも2枚のシートによって構成された梱包袋の製造方法であって、一方のシートと他方のシートとを接合し、該一方のシートの端部を他方のシートとの接合面と反対側へ折り返し、その折り返された一方のシートの端部と、折り返されていない一方のシート及び他方のシートとの3者を縫製し、次に、他方のシートの端部を、前記折り返された一方のシートの端部の外側へ折り返し、該折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者を、前記3者が縫製された位置から離間した位置で縫製し、その後、前記3者の縫製部分を起点として前記他方のシートを反転し、前記一方のシートと反対側に延設して製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、上述のように少なくとも2枚のシートのうち、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返されているとともに、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製されているものであるため、このような2箇所の縫製部分は、外側又は内側のいずれか一方の側のみに縫目が存在し、他方には縫目が存在しない状態となり、従って、2箇所の縫目はいずれも貫通した状態とならないために、その縫目
を介してシート接合部の一方側から他方側へ埃や異物等が通過することがない。
【0015】
従って、上記のようなシートの接合部における縫製構造を梱包袋に適用した場合、その梱包袋のシート接合部における縫目の部分から埃等が袋の内部に侵入するのを確実に防止することができる。
【0016】
その結果、被梱包物が綿等の場合に埃等が付着するのを好適に防止することができ、その衛生面を維持することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、先ず梱包袋の実施形態を図面に従って説明する。本実施形態の梱包袋1は、図1乃至図3に示すように、上面に開口部2を有して全体が略箱状に形成されたものである。
【0018】
この梱包袋1は、図2及び図3に示すように、2枚のシート3a、3bを側縁部4a及び底縁部4bにおいて接合した接合部5で縫製することによって構成されている。このように2枚のシート3a、3bが側縁部4aで縫製される結果、梱包袋1の側面側はガゼット状に形成されることとなる。
【0019】
前記両シート3a、3bは、図4に示すように、それぞれ、合成樹脂製のクロス8にラミネート層9を介して合成樹脂製フィルム10が貼着された構成からなるものである。合成樹脂製のクロス8は、たとえばポリプロピレンやポリエチレン等のフラットヤーンやスプリットヤーンからなる経糸と緯糸とで織成されたものである。ラミネート層9や合成樹脂製フィルム10の材質も、たとえばポリプロピレンやポリエチレン等が用いられる。
【0020】
上記のようなシートの接合部5の構造は、図5により詳細に示されている。すなわち、この接合部5においては、同図に示すように、一方のシート3aの端部が折り返されているとともに、その一方のシート3aの端部の外側に重ねられるようにして他方のシート3bの端部が折り返され、前記一方のシート3a及び他方のシート3b、並びに該一方のシート3aの折り返された端部6aの3者が糸7aで縫製されて一体化されており、且つその糸7aで縫製された部分から離間した位置で、前記一方のシート3aの端部6a、及び他方のシート3bの端部6bとの2者が、糸7bで縫製されて一体化されている。
【0021】
そして他方のシート3bは、図5に示すように、前記3者が糸7aで縫製された部分から反転されて、前記一方のシート3aの反対側に延設されている。このようにして接合部5において2箇所で縫製された一方のシート3a及び他方のシート3bによって、図1乃至3に示すような梱包袋1が構成されているのである。
【0022】
そして、このような構成からなる梱包袋1を製造する場合には、上述のように
2枚のシート3a、3bを側縁部4a及び底縁部4bで接合部5を形成すべく縫製することによって製造されることとなる。
【0023】
この接合部5を縫製する工程を説明すると、先ず図6に示すように、一方のシート3aと他方のシート3bとを重ね合わせ、その状態から一方のシート3aの端部を折り返し、一方のシート3a及び他方のシート3b、並びに該一方のシート3aの折り返された端部6aの3者を糸7aで縫製する。
【0024】
次に、その状態から、図7に示すように、他方のシート3bの端部を前記一方のシート3aの端部の外側に重ねられるようにして折り返す。そして、このよう他方のシート3bの端部を折り返した状態で、前記3者を糸7aで縫製した部分から離間した位置で、同図のように一方のシート3aの端部6a、及び他方のシート3bの端部6bの2者を、糸7bで縫製する。
【0025】
その後、図5に示すように、他方のシート3bを、前記3者を糸7aで縫製した部分から反転し、前記一方のシート3aの反対側に延設させる。これによって、
一方のシート3aと他方のシート3bとが接合部5の2箇所で縫製された状態となる。そして、このような接合部5は、両シート3a、3bの側縁部4a及び底縁部4bにおいて形成され、それによって両シート3a、3bが一体化されて梱包袋1が製造されることとなるのである。
【0026】
この場合において、糸7aで縫製された一方のシート3a及び他方のシート3b、並びに該一方のシート3aの端部6aの3者の接合部分は、図5に示すように、その接合部分から反転された他方のシート3bによって、梱包袋1の内面側からは覆い隠された状態となり、また糸7bで縫製された一方のシート3aの折曲端部6aと他方のシート3bの折曲端部6bとの2者の接合部分は、一方のシート3aによって梱包袋1の内面側から覆い隠された状態となる。
【0027】
つまり、両シート3a、3bは、接合部5において、2箇所の異なる位置で糸7aと糸7bとで縫製され、その縫製部分においてはそれぞれ4層構造及び3層構造に形成されているが、4層構造の部分においては、糸7aは前記3者のみに貫通されて他の1層には貫通されておらず、また3層構造の部分においては、糸7bは前記2者のみに貫通されて他の1層には貫通されておらず、いずれにしても2箇所の糸の縫製位置で縫目が貫通していない状態となる。
【0028】
従って、上記のような糸7a、7bで縫製された縫い目を介して、埃や異物が外部から梱包袋1の内部に不用意に侵入することがない。この結果、たとえば梱包袋1で梱包される被梱包物が、たとえば衛生パッド等用の綿のようなものである場合でも、2箇所の糸7a、7bで縫製された接合部5の構造が上記のようなものであり、その糸7a、7bによる縫目が貫通した状態となっていないので、その縫目から埃等が不用意に侵入することがなく、被梱包物である綿が静電気を帯びたとしても、その綿に埃が付着するようなこともないのである。
【0029】
尚、上記実施形態では、シート3a、3bを、合成樹脂製のクロス8、ラミネート層9、及び合成樹脂製フィルム10の3層で構成したが、シート3a、3bの構造は必ずしも該実施形態に限定されるものではない。
【0030】
また、シートの材質も、上記実施形態のポリプロピレンやポリエチレン等に限定されるものではない。
【0031】
さらに、上記実施形態では、2枚のシート3a、3bを側縁部4a及び底縁部4bで接合した接合部5で縫製して側面側をガゼット状とし、上面に開口部2を有して全体が略箱状になるように梱包袋1を形成したが、梱包袋1の形状、構造は該実施形態に限定されるものではない。
【0032】
また該実施形態では2枚のシート3a、3bで梱包袋1を構成する場合について説明したが、これに限らず3枚以上のシートで構成することも可能である。
【0033】
さらに上記実施形態では、衛生パッド等に用いられる綿を梱包する場合について説明したが、被梱包物の種類も上記実施形態に限定されるものではなく、その種類は問わない。
【0034】
さらに上記実施形態では、シートの接合構造を梱包袋に適用する場合について説明したが、梱包袋以外の袋に本発明のシートの接合構造を適用することも可能であり、さらには袋以外の用途に適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】一実施形態の梱包袋の概略平面図。
【図2】同概略側面図。
【図3】同概略底面図。
【図4】シートの構造を示す要部拡大断面図。
【図5】梱包袋の接合部近辺の構造を示す要部拡大断面図。
【図6】梱包袋の一製造工程であって、一方のシートの端部を折り曲げて3者を縫製する工程の要部拡大断面図。
【図7】梱包袋の一製造工程であって、他方のシートの端部を折り曲げて3者を縫製する工程の要部拡大断面図。
【図8】従来の接合部の近辺の構造の一例を示す要部拡大断面図。
【図9】従来の接合部の近辺の構造の他の例を示す要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0036】
1…梱包袋 3a、3b…シート
5…接合部 6a、6b…折曲端部
7a、7b…糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚のシートの接合部における縫製構造であって、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返され、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製されていることを特徴とするシートの接合部における縫製構造。
【請求項2】
少なくとも2枚のシートの接合部を縫製する方法であって、一方のシートと他方のシートとを接合し、該一方のシートの端部を他方のシートとの接合面と反対側へ折り返し、その折り返された一方のシートの端部と、折り返されていない一方のシート及び他方のシートとの3者を縫製し、次に、他方のシートの端部を、前記折り返された一方のシートの端部の外側へ折り返し、該折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者を、前記3者が縫製された位置から離間した位置で縫製することを特徴とするシートの接合部の縫製方法。
【請求項3】
袋本体が少なくとも2枚のシートによって構成された梱包袋において、接合される一方のシートの端部と他方のシートの端部とが折り返され、折り返されていない一方のシートと他方のシートとの接合部分、及び折り返された一方のシートの端部との3者が縫製され、且つ該3者が縫製された位置から離間した位置で、前記折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者が縫製され、
しかも前記3者の縫製部分を起点として前記他方のシートが反転されて前記一方のシートと反対側に延設されていることを特徴とする梱包袋。
【請求項4】
袋本体が少なくとも2枚のシートによって構成された梱包袋の製造方法であって、一方のシートと他方のシートとを接合し、該一方のシートの端部を他方のシートとの接合面と反対側へ折り返し、その折り返された一方のシートの端部と、折り返されていない一方のシート及び他方のシートとの3者を縫製し、次に、他方のシートの端部を、前記折り返された一方のシートの端部の外側へ折り返し、該折り返された一方のシートの端部と他方のシートの端部との2者を、前記3者が縫製された位置から離間した位置で縫製し、その後、前記3者の縫製部分を起点として前記他方のシートを反転し、前記一方のシートと反対側に延設して製造することを特徴とする梱包袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−276978(P2007−276978A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107690(P2006−107690)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000243157)堀富商工株式会社 (4)
【Fターム(参考)】