説明

シートパイル用吊り運搬具

【課題】長尺の鋼材であるシートパイルを運搬する際に、容易に取付け・取り外しをすることができ、安全性に優れたシートパイル用吊り運搬具を提供する。
【解決手段】シートパイル21の長手方向と交差する方向に延びる前後のベース部2と、内向きに屈曲させた中間部をベース部2に回動可能に取り付けた屈曲アーム部3とを備え、各屈曲アーム部3の上端部を吊り材4を介して吊り支持することで、屈曲アーム部3の下端の爪部5が外側からシートパイル21の継手部に係合し、シートパイル21を吊っている際の係合状態を維持するようにしたシートパイル用吊り運搬具1である。ベース部2には、シートパイル21のフランジ間に嵌合する突出部6が設けられ、各屈曲アーム部3の上端部には、吊り材4を取り付けるための吊り孔7が形成されており、前後のベース部2をつなぐ連結部8には、吊り運搬具1を単独で吊りあげるための吊り部9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパイルを運搬する際に、容易に取付け・取り外しができ、安全に運搬することができるシートパイル用吊り運搬具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、2点吊りの運搬具を用いて、シートパイルを運搬する場合、吊り運搬具をシートパイルの中心あたりに掛けて、微動し、シートパイルの中心が取れていない場合は、再度地面に下ろして、吊り運搬具の位置を変えて掛け直す。シートパイルの中心が取れるまで繰り返し、シートパイルの中心を確認した後巻き上げ、運搬する。
【0003】
シートパイル用吊り運搬具に関する先行技術文献として、例えば特許文献1、2記載の発明がある。
【0004】
特許文献1は、シートパイルの継手を受持する受部を備えた受部材とロープが係合される押さえ部材とを備えた2点吊りのシートパイルの吊り具が示されている。ロープを引上ることによって、押さえ部材と受部が、シートパイルの継手から外れないように受部材を回動自在に枢支している。
【0005】
また、ロープを引き上げた時に、押さえ部材のシートパイルの継手に接当される側の部分が、受部材のシートパイルの継手を受持する正面側から背面側に退避可能とされている。
【0006】
特許文献2は、4点吊りのシートパイル運搬用補助具が示されている。左右に配した各一対の吊上げ片をそれぞれ途中でヒンジ結合し、その各一対の吊上げ片の下端にシートパイルのセクション部に係合し得る爪部を相互に対向させて構成している。
【0007】
左右の各一対の吊上げ片について、それぞれ前方の吊上げ片相互及び後方の吊上げ片相互を、ヒンジ結合の位置より下方で、各別の連結片により結合し、前後の連結片間に、上記二対の吊上げ片で抱持し、かつ前後対向する爪部でセクション部を係合支持するシートパイル群を緊締する締付機構を構成している。
【0008】
さらに、左右各一対の吊上げ片の上端間を各々三本のリンク片からなるリンク機構で連結し、左右のリンク機構の中央のリンク片の中央部間を支持横棒で結合し、支持横棒に、吊上げ装置との結合手段を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許2905436号
【特許文献2】実開平05−085783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1で示したような2点吊りの場合、長尺であるシートパイルの中心を取るまでに、大変手間がかかる。また、シートパイルを2点で吊るため、シートパイルが振れやすく、安全性に欠ける。シートパイルを着地させる際に、衝撃で吊り具が外れる場合がある。
【0011】
特許文献2の場合、4点吊りであるが、シートパイルを挟むために、対向する爪間に締付機構というものを設けなければならない。締付機構は、人力によって爪間の締付を行う構成となっているため、作業者の人力の違いによって、締付具合も異なることになり、4点吊りではあるが、安全に対する信頼性が十分ではないと考えられる。また、爪間の締付を行う手間がかかり、作業効率も良くない。
【0012】
本発明では、従来技術における上述のような課題の解決を図ったものであり、長尺の鋼材であるシートパイルを運搬する際に、容易に取付け・取り外しをすることができ、安全性に優れたシートパイル用吊り運搬具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、シートパイルを運搬する際に使用するシートパイル用吊り運搬具であって、シートパイルの長手方向と交差する方向に延びる前後のベース部と、前記ベース部の両端部に設けられ、内向きに屈曲させた中間部を前記ベース部に回動可能に取り付けた屈曲アーム部とを備え、前記各屈曲アーム部の上端部を吊り材を介して吊り支持することで、前記屈曲アーム部の下端に形成した爪部が外側からシートパイルの継手部に係合し、シートパイルを吊っている際の係合状態を維持するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
シートパイルの長手方向と交差する方向に延びるベース部を前後に設け、ベース部の両端部に回動可能な屈曲アーム部を取付け、屈曲アーム部の下端に爪部を形成したことによって、4点吊りとしている。
【0015】
屈曲アーム部の中間部を、内向きに屈曲させ、ベース部に回動可能に取り付けたことによって、上部からの吊り上げる力で屈曲アーム部の上端部を引き上げることにより、屈曲アーム部をより内向きに回動し、屈曲アーム部の下端に形成した爪部がより強力にシートパイルの継手部に係合することができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のシートパイル用吊り運搬具において、前記ベース部には、シートパイルのフランジ間に嵌合する下向きの突出部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
ベース部に、下方に延びてシートパイルのフランジ間に嵌合する突出部を設けることによって、突出部と爪部の間にシートパイルの継手部を挟み込み、安全性を高めることができる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載のシートパイル用吊り運搬具において、前記各屈曲アーム部の上端部には吊り材を取り付けるための吊り孔が形成されていることを特徴とするものである。
【0019】
吊り孔を屈曲アーム部の上端部に形成しておけば、クレーン等を用いてシートパイルの運搬作業を行う際、シートパイルをクレーン等のフックで吊るために、玉掛用ワイヤーロープ等の吊り材を吊り孔に取り付けることができる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1、2または3記載のシートパイル用吊り運搬具において、前後のベース部をつなぐ連結部には、吊り運搬具を吊り運搬具単独で吊り上げるための吊り部が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
吊り運搬具をシートパイルから取り外し、吊り運搬具自体を運搬するために、吊り部を設ける。
【0022】
例えば、図1〜4に示したような構成の吊り部を連結部に設けると、吊り部を連結部に繋ぐことによって、屈曲アーム部が外向きに回動し、屈曲アーム部の下端の爪部が開いて、容易に吊り運搬具自体をシートパイルから取り外すことができ、吊り運搬具自体を運搬することが可能となり、利便性が良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以上のような構成となるため、以下のような効果が得られる。
(1)4点吊りのため、シートパイルの中心が取りやすく、玉掛時の手順が少なくて済む。
(2)シートパイルを4点吊りにするため、吊り上げた時にシートパイルが振れにくく、安全である。
(3)吊り部を外さなければ爪部が開かないため、衝撃を受けてもシートパイルからシートパイル用吊り運搬具が外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシートパイル用吊り運搬具の一実施形態を斜視図に示したものである。
【図2】本発明に係るシートパイル用吊り運搬具の一実施形態において、シートパイル長手方向の立面図である。
【図3】図2の実施形態のA−A断面図である。
【図4】図2の実施形態のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0026】
図1は、本発明に係るシートパイル用吊り運搬具1の一実施形態であり、シートパイル21の上にシートパイル用吊り運搬具1を設置した時の様子を示している。図2は、シートパイル長手方向の立面図、図3、4は、それぞれ断面図を示している。
【0027】
まず、ベース部2を前後2箇所に設けて、連結部8によって前後のベース部2を繋いでいる。各ベース部2の両端部には、中間部を内向きに屈曲させた屈曲アーム部3を設け、ベース部2と屈曲アーム部3との間に、ヒンジピン10を介すことによって、屈曲アーム部3を回動自在にしている。
【0028】
各屈曲アーム部3の下端部には、爪部5を設け、シートパイル21の継手部に係合する形状としている。
【0029】
一方、各屈曲アーム部3の上端部には、吊り孔7を備え、吊り孔7と吊り材4上部のプレート部4bとをチェーン4aで繋ぎ、上部のプレート部4bで4箇所のチェーン4aをまとめている。プレート部4bは、クレーン等で玉掛けがしやすいように、中抜きの三角形とした。
【0030】
吊り材4の例として、チェーン部4aと三角形のプレート部4bを例で示しているが、チェーン部4aは、強度面等の安全性に対して問題がなければ特に種類は問わず、例えばロープ等を用いても構わない。
【0031】
同様に、プレート部4bに関しても、前後のチェーン部4aをまとめることができ、強度面等に問題がなければ、材質や形状等は特に限定されない。
【0032】
以上の構成により、プレート部4bを上に引き上げることによって、チェーン4aが上に引っ張られ、屈曲アーム部3が内向きに回動し、爪部5がシートパイル21の継手部に係合する仕組みとなっている。
【0033】
ここで、上からシートパイル用吊り運搬具を引き上げた際、内向きに回動する力をより強め、爪部5が強力にシートパイル21の継手部に係合させるため、屈曲アーム部3を内向きに屈曲させた形状とした。
【0034】
また、ベース部2の下端部には、下方にのびてシートパイル21のフランジ間に嵌合するような突出部6を設け、突出部6と爪部5によって、シートパイル21の継手部を挟み込むことができる構成としている。
【0035】
突出部6は、小さなプレート状のものを例に挙げているが、シートパイル21のフランジ間に嵌合するような形状で、安全性に問題がなければ、材質や形状等は問わない。
【0036】
また、シートパイル用吊り運搬具1自体を運ぶために使用する吊り部9を設けた。吊り部9は、前後のベース部2を繋ぐ連結部8の中間に、シートパイル21の長手方向と交差するプレート状の吊り部土台9bを設け、吊り部土台9bと吊り材4のプレート部4bとの間にはチェーン9aを掛け渡している。チェーン9aの中間あたりに、吊り部フック9cを備え、吊り部土台9bに引っ掛けることができるようにした。
【0037】
吊り部フック9cを吊り部土台9bに引っ掛けることによって、前後の屈曲アーム部3に繋がっている吊り材4のチェーン4aがたるみ、屈曲アーム部3が外向きに回動することで、爪部5がシートパイル21の継手部から外れた状態になる。その状態で、プレート部4bを上に持ち上げれば、シートパイル用吊り運搬具1のみを運搬することが可能となる。
【0038】
吊り部9の実施例として、チェーン9a、吊り部土台9b、吊り部フック9cを使用した形状を示したが、爪部5がシートパイル21の継手部に引っ掛かることがなく、シートパイル用吊り運搬具1のみを運搬できるような構成であればよく、強度面等の問題がなければ材質等も特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上に述べたように、本発明は、長尺のシートパイルに容易に取り付けることができ、かつ安定性を保つことができるシートパイル用吊り運搬具であり、シートパイルを安全に運搬することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…シートパイル用吊り運搬具、
2…ベース部、
3…屈曲アーム部、
4…吊り材、4a…チェーン、4b…プレート部、
5…爪部、
6…突出部、
7…吊り孔、
8…連結部、
9…吊り部、9a…チェーン、9b…吊り部土台、9c…吊り部フック、
10…ヒンジピン、
21…シートパイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートパイルを運搬する際に使用するシートパイル用吊り運搬具であって、シートパイルの長手方向と交差する方向に延びる前後のベース部と、前記ベース部の両端部に設けられ、内向きに屈曲させた中間部を前記ベース部に回動可能に取り付けた屈曲アーム部とを備え、前記各屈曲アーム部の上端部を吊り材を介して吊り支持することで、前記屈曲アーム部の下端に形成した爪部が外側からシートパイルの継手部に係合し、シートパイルを吊っている際の係合状態を維持するようにしたことを特徴とするシートパイル用吊り運搬具。
【請求項2】
前記ベース部には、シートパイルのフランジ間に嵌合する下向きの突出部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のシートパイル用吊り運搬具。
【請求項3】
前記各屈曲アーム部の上端部には吊り材を取り付けるための吊り孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のシートパイル用吊り運搬具。
【請求項4】
前後のベース部をつなぐ連結部には、吊り運搬具を吊り運搬具単独で吊り上げるための吊り部が設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載のシートパイル用吊り運搬具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6742(P2012−6742A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146159(P2010−146159)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000179915)ジェコス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】