説明

シートヒータ

【課題】機器の故障状態を確実に検出し、より安全で快適なシートヒータを提供するとともに、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことを目的とする。
【解決手段】故障検知手段13による故障の検知をしている時のみ、SW等の操作手段17の所定の操作(複数回操作・組み合わせ操作等)によってのみ故障診断を行うようにすることで、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことができるとともに、故障診断を始めてから、所定時間経過後に故障診断を終了することにより、一旦故障診断を行った後でも、電源をオフにすることなく、通常の動作が可能となり、万一故障診断が始まってしまった場合でも、所定時間経過で自動的に解除できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輌用座席に取り付けられて、座席の暖房を行うシートヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシートヒータは、例えばマイクロコンピュータのような制御手段を用いて、採暖用ヒータへの通電制御を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6に示すものは、前記従来のシートヒータを示すもので、採暖用ヒータ1と、例えばマイクロコンピュータ等の制御手段2と、採暖用ヒータ1の温度を検出する、サーミスタからなる温度検出手段3で構成されている。
【0004】
ここで、採暖用ヒータ1の温度は温度検出手段3であるサーミスタの抵抗値から検出し、検出した温度に応じて制御手段2が採暖用ヒータ1への通電制御を行い、その温度を最適な値になるように制御する。温度検出手段3としては、サーミスタの代わりにサーモスタット等を用いることも考えられていた。
【特許文献1】特開平7−253223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的にシートヒータは、採暖用ヒータとこれをコントロールするコントローラとに分割されている。そして、コントローラはシートの下に配置されることが多いため、その交換時に非常に作業性が悪くなり、仮にシートヒータが動作不良となった際に、故障の原因がヒータにあるのか、コントローラにあるのかを判別するのが難しく、的確な修理作業が行いにくかった。
【0006】
そこで、故障検知手段によって故障が検知された場合、例えば、サーミスタ異常時には弱LEDを点滅報知、制御手段の異常であれば高LEDを点滅報知といったように、故障検知手段が検知した故障内容に応じて報知手段の報知を切り替えるようにしておくことで、現在どのような故障が発生しているのかが、外部から容易に把握できるようになったが、故障診断中は通常動作している間の報知とは異なることから、使用者が操作している間に自動的に報知が切り替わるのは好ましくないという課題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、機器の故障状態を確実に検出し、より安全で快適なシートヒータを提供するとともに、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のシートヒータは、採暖用ヒータと、機器を制御する制御手段と、機器の操作を行う操作手段と、機器の故障を検知する故障検知手段と、機器の状態を報知する報知手段とを備え、制御手段は、操作手段への所定の操作及び故障検知手段による故障の検知をしている時のみ、故障検知手段によって検知した故障内容に応じた所定の報知を報知手段が行う故障診断に移行し、故障を検知していない時には操作手段にて所定の操作を実施しても故障診断へ移行しないことを特徴としたものである。
【0009】
これによって、操作手段の所定の操作(複数回操作・組み合わせ操作等)によってのみ
故障診断を行うようにすることで、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことができ、使い勝手が向上する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシートヒータは、操作手段への所定の操作及び故障検知手段による故障の検知をしている時のみ、故障検知手段によって検知した故障内容に応じた所定の報知を報知手段が行う故障診断に移行し、故障を検知していない時には操作手段にて所定の操作を実施しても故障診断へ移行しないことにより、操作手段の所定の操作(複数回操作・組み合わせ操作等)によってのみ故障診断を行うようにすることで、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、採暖用ヒータと、機器を制御する制御手段と、機器の操作を行う操作手段と、機器の故障を検知する故障検知手段と、機器の状態を報知する報知手段とを備え、前記制御手段は、前記操作手段への所定の操作及び前記故障検知手段による故障の検知をしている時のみ、前記故障検知手段によって検知した故障内容に応じた所定の報知を前記報知手段が行う故障診断に移行し、故障を検知していない時には前記操作手段にて所定の操作を実施しても故障診断へ移行しないことにより、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことができる。
【0012】
また、故障診断へ移行してから所定時間経過後に故障診断を終了することにより、一旦故障診断を行った後でも、電源をオフにすることなく、通常の動作が可能となり、使い勝手が向上すると共に、万一故障診断が始まってしまった場合でも、所定時間経過で自動的に解除できる。
【0013】
さらに、故障診断へ移行している間は採暖用ヒータへの通電を行わないことにより、故障が発生しているかもしれない状態での不用意な採暖用ヒータへの通電を抑制することができ、より安全性が向上する。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本実施の形態によって本願発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1において、サーミスタ等からなる温度検出手段11は、採暖用ヒータ12の温度を検出するものであり、故障検知手段13は、前記温度検出手段11の故障を検知するものである。
【0016】
また、制御手段14は、温度検出手段13によって検出された採暖用ヒータ12の温度に応じてその通電を制御するものである。
【0017】
以上のように構成されたシートヒータについて、以下その動作、作用を説明する。
【0018】
まず、温度検出手段11は採暖用ヒータ12と熱的に結合しており、温度検出手段11がサーミスタで構成されている場合は、採暖用ヒータ12の温度に応じて抵抗値が変化するものである。
【0019】
制御手段14は、前記のように温度検出手段11によって検出された温度、すなわち抵抗値に応じて採暖用ヒータ1への通電/非通電を決定し、最適な温度になるように制御するものであり、一般的にはマイクロコンピュータが用いられる。
【0020】
一方、温度検出手段11がショートあるいはオープン故障してしまうと、採暖用ヒータ12の温度が正確に検出できず、したがって、制御手段14による採暖用ヒータ1の通電制御が不的確になり、その結果、採暖用ヒータ1の温度が低下あるいは上昇することで、使用者に不快感を与えてしまうというおそれがある。
【0021】
また、シートヒータは主に自動車等の車内で使用するものであり、ラジオやテレビ、ナビゲーション等のアンテナや他の制御機器(エンジン関連、パワーウィンドー等)からのノイズ、電界が非常に強い環境下で使用されることが多い。
【0022】
このことから、温度検出手段11が故障でなくとも、この温度検出手段3からの入力値にノイズが重畳され、制御手段14に入力される温度情報が異常となり、正確な温度制御ができなくなるおそれもある。
【0023】
ここで、温度検出手段11の検出値について考察する。
【0024】
前述の通り、温度検出手段11は採暖用ヒータ12と熱的に結合しており、その温度に応じて、例えば抵抗値が変化するものである。
【0025】
一般的に、こういった抵抗値を用いて制御を行う場合、図2に示すように、サーミスタ11aと直列に固定抵抗15を接続し、その電圧分圧値を例えばマイクロコンピュータ等の制御手段14に入力し、加えてマイクロコンピュータのA/D変換機能を用いて電圧値をA/D値として入力し、入力したA/D値を用いて制御を行うことが多い。
【0026】
例えば、入力基準電圧5V、8ビットA/D変換機能を用いたと仮定したときのサーミスタ電圧と入力A/D値との関係は図3のようになる。
【0027】
ここで、例えばサーミスタ11aがショート故障した場合には、入力電圧値は0Vとなることから、A/D変換値は0となる。
【0028】
一方、サーミスタ11aがオープン故障した場合には、入力電圧値は5Vとなることから、A/D変換値は255となる。
【0029】
そこで、図3に示すように、A/D変換値が所定のレベルA以下のときにはサーミスタショート故障、所定のレベルB以上のときにはサーミスタオープン故障、それ以外のときには正常と判定することができる。
【0030】
こういったことから、温度検出手段11の検出値からその故障状態を把握することができ、故障と判定したときには、制御手段14によって採暖用ヒータ1への通電を停止させることができる。
【0031】
以上のように本実施の形態においては、温度検出手段11の故障を検知する故障検知手段13を備え、この故障検知手段13にて温度検出手段11が故障と判定したときには、採暖用ヒータ12への通電を停止させるようにしたことにより、安全なシートヒータを提供することができる。
【0032】
なお、本実施の形態では、温度検出手段3にサーミスタを用いたもので説明したが、採暖用ヒータ12の温度に応じて出力が変化する構成のものであれば、同様の効果が得られる。
【0033】
また、故障検知手段13の故障検知の方法をA/D変換機能を用いて記載したが、所定
の範囲判断ができる構成のものであれば、同様の効果が得られる。
【0034】
(実施の形態2)
図4において実施の形態1と異なる点は、シート(図示せず)内に配設され、搭乗者に対して送風するDCファンモータ16を付加したことにある。
【0035】
DCファンモータ16は、制御手段2のPWM制御等により回転数制御が行われるようになっている。また、カーエアコン等からダクトを介してシートまで連絡し、冷風を送風することができるものもある。
【0036】
このように、寒いときには採暖用ヒータ12によって温風を得るようにし、一方、暑いときには送風動作を行うことで、寒い時期でも暑い時期でも快適に使用できる。
【0037】
一方、実施の形態1にも記載の通り、採暖用ヒータ12の温度を検出する温度検出手段11が故障した際には、故障検知手段13がこれを検知し、制御手段14を介して採暖用ヒータ1の通電を停止させる。
【0038】
しかしながら、温度検出手段11の故障を故障検知手段13が検知した場合でもDCファンモータ16の駆動はそのまま継続されるようにしてある。
【0039】
このように、温度検出手段3とは無関係な負荷に関しては動作を継続させることができるので、使い勝手を大いに向上することができる。
【0040】
もちろん、温度検出手段11が故障のときに、採暖用ヒータ12とDCファンモータ16との両方の通電を停止させる等、全ての負荷を停止させることも考えられる。
【0041】
(実施の形態3)
図5において、実施の形態1と異なる点は、SW等の入力を行う操作手段17と、LEDやブザー等からなる報知手段18を付加したところにある。
【0042】
以上のように構成されたシートヒータについて、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
まず、例えば操作手段17において操作されたSW状態に応じて、弱−中−高といった採暖用ヒータ1の温度設定を切り替えることができ、この切り替え状態に応じて報知手段18ではLEDの点灯する箇所あるいは数を変化させ、使用者に現在どの温度設定で動作しているのかを報知する。
【0044】
ところで、一般的にシートヒータは、採暖用ヒータ12とコントローラ(図示せず)とが分割されており、コントローラはシートの下に配置されることが多い。
【0045】
そのため、コントローラの交換は非常に作業がしづらい上に、仮にシートヒータが動作不良となった際に、故障の原因がヒータにあるのか、コントローラにあるのかを判別するのが難しく、的確な修理作業が行いにくいという課題がある。
【0046】
そこで、故障検知手段13によって故障が検知された場合、例えば、サーミスタ異常時には弱LEDを点滅報知、制御手段14の異常であれば高LEDを点滅報知といったように、前記故障検知手段13が検知した故障内容に応じて報知手段18の報知を切り替えるようにしておくことで、現在どのような故障が発生しているのかが、外部から容易に把握できるようになる。
【0047】
また、故障診断中は通常動作している間の報知とは異なることから、使用者が操作している間に自動的に報知が切り替わるのは好ましくない。
【0048】
そこで、SW等の操作手段17の所定の操作(複数回操作・組み合わせ操作等)によってのみ故障診断を行うようにすることで、使用中に不用意な故障診断を行うことを防ぐことができ、使い勝手が向上する。
【0049】
また、故障診断を始めてから、所定時間経過後に故障診断を終了することにより、一旦故障診断を行った後でも、電源をオフにすることなく、通常の動作が可能となり、使い勝手が向上すると共に、万一故障診断が始まってしまった場合でも、所定時間経過で自動的に解除できるというメリットもある。
【0050】
さらに、故障診断を行っている間は、採暖用ヒータ12への通電を行わないことにより、故障が発生しているかもしれない状態での不用意な採暖用ヒータ12への通電を抑制することができ、より安全性が向上する。
【0051】
なお、本実施の形態3では、報知手段をLEDによって報知することについて記載したが、ブザー等による報知によっても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上のように、本発明にかかるシートヒータは、機器が故障した場合でも故障検知手段により確実に故障を検知し、採暖用ヒータへの通電を停止させることが可能となるので、車載用の採暖装置、例えばハンドルヒータ等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1におけるシートヒータのブロック図
【図2】サーミスタ信号の入力回路図
【図3】サーミスタ電圧と入力A/D値との関係を示した説明図
【図4】本発明の実施の形態2におけるシートヒータのブロック図
【図5】本発明の実施の形態3におけるシートヒータのブロック図
【図6】従来のシートヒータのブロック図
【符号の説明】
【0054】
11 温度検出手段
12 採暖用ヒータ
13 故障検知手段
14 制御手段
16 DCファンモータ
17 操作手段
18 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採暖用ヒータと、機器を制御する制御手段と、機器の操作を行う操作手段と、機器の故障を検知する故障検知手段と、機器の状態を報知する報知手段とを備え、
前記制御手段は、前記操作手段への所定の操作及び前記故障検知手段による故障の検知をしている時のみ、前記故障検知手段によって検知した故障内容に応じた所定の報知を前記報知手段が行う故障診断に移行し、
故障を検知していない時には前記操作手段にて所定の操作を実施しても故障診断へ移行しないことを特徴としたシートヒータ。
【請求項2】
制御手段は、故障診断へ移行してから所定時間経過後に故障診断を終了することを特徴とした請求項1に記載のシートヒータ。
【請求項3】
制御手段は、故障診断へ移行している間は、採暖用ヒータへの通電を行わないことを特徴とした請求項1または2に記載のシートヒータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−135403(P2008−135403A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39647(P2008−39647)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【分割の表示】特願2003−384921(P2003−384921)の分割
【原出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】