シートベルトエアバッグ及びその製造方法
【課題】車両の衝突時に膨張し、乗員に加わる衝撃、特に肩及び胸に加わる衝撃を吸収し、緩和するシートベルトエアバッグ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部11を具備し、4層袋織構造体からなる。また、袋状部11は、一対の外層と、その内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部21a、21b、21c、21d、並びに一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられた中央閉部22、を有する。更に、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、及びこれらの閉部22a、22bの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部23を備え、噴出ガスの流入時に、分割可能部23が分割され、袋状部11が膨張する。
【解決手段】インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部11を具備し、4層袋織構造体からなる。また、袋状部11は、一対の外層と、その内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部21a、21b、21c、21d、並びに一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられた中央閉部22、を有する。更に、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、及びこれらの閉部22a、22bの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部23を備え、噴出ガスの流入時に、分割可能部23が分割され、袋状部11が膨張する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時等に膨張し、乗員に加わる衝撃、特に肩及び胸部に加わる衝撃を吸収し、緩和する袋状部を具備するシートベルトエアバッグ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、袋状部のみでなく、膨張しない部分も含め、ベルト全体が4層袋織構造体により構成され、縫製を全く必要とせず、特に幅方向の両端部が縫製されていないため、この両端部も含め、ベルト全体が厚くならず、良好な装着感を有するシートベルトエアバッグに関する。また、独特の、且つ簡便な工程を備えるシートベルトエアバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の衝突時等の衝撃から乗員を保護するため、車両にはシートベルトが取り付けられている。また、通常、このシートベルトの着用を前提としたフロントエアバッグ、サイドエアバッグ等の各種のエアバッグが配設されている。更に、シートベルトは、脱着時の操作性と装着感、即ち、脱着時の機能性と装着時の快適性とを両立させるため、過度に幅広とすることができない。そのため、ペルトの幅には自ずと制限があり、衝突時等に、シートベルトによる局部的な荷重が乗員に加わることになる。
【0003】
また、前述のシートベルトによる局部的な荷重を緩和するため、エアバッグ機能を有するシートベルトが提案され、実用化が図られている。例えば、特定の上部ウェブ層と下部ウェブ層とが製織されてなり、折り畳み構造を有する膨張可能なシートベルト等のベルト帯状物が知られており(例えば、特許文献1参照。)、事故の際に乗客のための適切な緩衝保護を保証し、コスト的にも有利である等と説明されている。更に、シート用エアバッグとベルト用エアバッグとを備え、ベルト用エアバッグは、ベルト本体を構成する2枚の基布に挟み込まれるようにして折り畳まれ、ベルト本体内に収納される構成の乗員保護装置が知られており(例えば、特許文献2参照。)、部品点数及び組付工数を低減することが可能である等と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−502918号公報
【特許文献1】特開2002−145002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたベルト帯状物、及び特許文献2に記載された乗員保護装置が備えるベルト用エアバッグは、いずれも折り畳み構造を有するとともに、端部等が縫製されている。そのため、折り畳む工程、及び縫製工程が必須となり、工数が低減されるとはいえない。更に、折り畳むことによって全体に厚くなり、特に縫製された端部がより厚くなり、必ずしも装着感が良いとはいえない。
【0006】
本発明は、前述の従来の状況に鑑みてなされたものであり、袋状部のみでなく、膨張しない部分も含め、ベルト全体が4層袋織構造体により構成され、縫製を全く必要とせず、特に幅方向の両端部が縫製されていないため、この両端部も含め、ベルト全体が厚くならず、良好な装着感を有するシートベルトエアバッグを提供することを目的とする。また、本発明は、独特の、且つ簡便な工程を備えるシートベルトエアバッグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.インフレータからの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部を具備し、4層袋織構造体からなるシートベルトエアバッグであって、
前記袋状部は、一対の外層と前記外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層と一の内層の幅方向の両端部、及び他の外層と他の内層の幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部、並びに前記一の内層と前記他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部、を有し、前記中央閉部は、前記幅方向の一方側の閉部と他方側の閉部、及び前記一方側の閉部と前記他方側の閉部との間に設けられた前記幅方向に分割され得る分割可能部を備え、前記噴出ガスの流入時に、前記分割可能部が分割され、前記袋状部が膨張することを特徴とするシートベルトエアバッグ。
2.前記分割可能部では、前記幅方向の少なくとも1箇所で、前記袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている前記1.に記載のシートベルトエアバッグ。
3. 前記端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、前記接結部における前記一の内層の経糸と前記他の内層の緯糸、及び前記一の内層の緯糸と前記他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、前記一の内層の前記経糸及び前記他の内層の前記経糸が、前記噴出ガス流入時に切断可能である前記1.又は2.に記載のシートベルトエアバッグ。
4.前記4層袋織構造体の前記一対の外層の織密度が、前記一対の内層の織密度より高い前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグ。
5.前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグの製造方法であって、
前記4層袋織構造体を製織する製織工程と、前記シートベルトエアバッグの長さ方向の開口端のうちの一端側から、前記シートベルトエアバッグの内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、前記袋状部が有する前記中央閉部が備える前記分割可能部を構成する緯糸を、前記袋状部の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程と、を備えることを特徴とするシートベルトエアバッグの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシートベルトエアバッグは、衝突時等に膨張する袋状部、及び膨張しない非膨張部が、ともに4層袋織構造体を備え、折り畳む必要がないため、全体に厚くならず、生産性も高い。また、幅方向の両端部も含め、全体が全く縫製されておらず、特に両端部が厚くなることもなく、シートベルトとしての通常の使用時には良好な装着感を有する。更に、衝突時等には、袋状部が膨張してエアバッグとして機能し、乗員に加わる衝撃、特に肩及び胸部に加わる衝撃が十分に緩和される。
また、分割可能部では、幅方向の少なくとも1箇所で、袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている場合は、インフレータからの噴出ガスが袋状部に流入したときに、中央閉部が分割可能部で容易に分割され、袋状部が膨張し易く、エアバッグとして十分に機能するシートベルトエアバッグとすることができる。
更に、端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、接結部における一の内層の経糸と他の内層の緯糸、及び一の内層の緯糸と他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、一の内層の経糸及び他の内層の経糸が、噴出ガス流入時に切断可能である場合は、インフレータからの噴出ガスが袋状部に流入したときに、4層袋織構造体の内層の経糸が接結部に形成されている接結点で容易に切断され、袋状部が膨張し易く、エアバッグとして十分に機能するシートベルトエアバッグとすることができる。
また、4層袋織構造体の一対の外層の織密度が、一対の内層の織密度より高い場合は、袋状部が膨張していないシートベルトとしての通常の使用時は、外層を構成する織密度の高い2層の織地により、シートベルトとしての本来の十分な強度を有するシートベルトエアバッグとすることができる。
本発明のシートベルトエアバッグの製造方法によれば、4層袋織構造体を製織し、その後、開口端のうちの一端側から切断用治具を挿入し、袋状部の中央閉部が有する分割可能部の緯糸を切断するという、独特の、且つ簡便な方法によって、縫製を全く必要とせず、幅方向の両端部も含め、厚くならず、良好な装着感を有する製品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシートベルトエアバッグが取り付けられた車両用シートの模式的な斜視図である。
【図2】図1のシートベルトエアバッグの袋状部にインフレータからの噴出ガスが流入し、膨張した状態を説明するための模式図である。
【図3】長さ方向の一部に設けられた袋状部、及びこの袋状部の両側に連設された非膨張部を備える本発明のシートベルトエアバッグの模式的な平面図である。
【図4】図3の袋状部の横断面(A−A断面)の4層袋織構造を詳しく説明するための模式図である。
【図5】図3の非膨張部の横断面(B−B断面)の4層袋織構造を詳しく説明するための模式図である。尚、この図5の、非膨張部における織組織C、D及びEは、図4の、袋状部における織組織C、D及びEと、それぞれ同じ織組織である。
【図6】シートベルトエアバッグの袋状部及び接結部の横断面の4層袋織構造を説明するための模式図である。
【図7】図6のシートベルトエアバッグの袋状部にインフレータからの噴出ガスが流入し、袋状部の中央閉部が有する分割可能部が分割されるとともに、接結部を構成する経糸が切断され、袋状部が膨張しつつある様子を説明するための模式図である。
【図8】図7の膨張しつつある袋状部が完全に膨張し、横断面が楕円形状になった様子を説明するための模式図である。
【図9】図4における袋状部が有する端縁閉部の外方側に隣接して形成された接結部の織組織Aの模式的な説明図である。
【図10】図4における袋状部が有する端縁閉部の織組織Bの模式的な説明図である。
【図11】図4における端縁閉部と中央閉部との間の、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる中間部の織組織Cの模式的な説明図である。
【図12】図4における中央閉部の一方側の閉部又は他方側の閉部と、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる非閉部との織組織Dの模式的な説明図である。
【図13】図4における中央閉部のうちの、膨張時、幅方向に分割し得る分割可能部と、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる非閉部との織組織Eの模式的な説明図である。
【図14】図5の、非膨張部の幅方向の両端部を構成する端部閉部の織組織Fの模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、図1〜14を参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
[1]シートベルトエアバッグ
本発明のシートベルトエアバッグ1は、インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部11を具備し、4層袋織構造体からなる。袋状部11は、一対の外層と、この外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部(端縁閉部21a、21b、21c、21d)、並びに一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられた中央閉部22、を有し、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、及び一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部23を備え(図4参照)、ガスの流入時に、分割可能部23が分割され、袋状部11が膨張する(図7及び8参照)。
【0012】
(1)袋状部
前記「袋状部11」は4層袋織構造体からなり、車両の衝突時等、衝撃が加わったときに、インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入することにより、膨張し、幅広になるとともに厚さも増し、乗員の肩から胸部に加わる衝撃が緩和され、エアバッグとして機能する。袋状部11は、一対の外層1a、1bと、その内部に配置された一対の内層1c、1dとを有する、即ち、袋織構造を構成する4層の織地を備える。
【0013】
一の外層1a、他の外層1b及びこれらの外層の内部に配置された一の内層1c、他の内層1dのそれぞれの織物組織は特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、袋状部11を構成する各々の層の織組織も特に限定されず、シートベルトエアバッグ1が剛直になり、装着感が損なわれることのない織組織とすることが好ましい。
【0014】
(2)端縁閉部
前記「端縁閉部」は、袋織構造を構成する4層の織地のうちの、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部(図4及び6の端縁閉部21a、21b参照)、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部(図4及び6の端縁閉部21c、21d参照)に設けられる。端縁閉部は、各々、袋状部11が膨張して所定の立体形状となるように、袋状部11に流入したガスの漏洩を抑えるための通気度の低い帯状部として形成される。
【0015】
端縁閉部の織物組織は、流入したガスの漏洩を十分に抑えることができる限り、特に限定されない。この端縁閉部の織物組織は、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、端縁閉部の織組織も特に限定されず、シートベルトとしての通常の装着時に、ベルトの両端部が他部より厚くなり、装着感が損なわれることのない織組織とすることが好ましい。
【0016】
(3)中央閉部
前記「中央閉部22」は、袋織構造を構成する4層の織地のうちの、一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられる(図4及び6の中央閉部22参照)。中央閉部22の織物組織は特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。
【0017】
更に、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b(図4の一方側の閉部22a、他方側の閉部22b参照)、及び一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間に設けられ、インフレータ5からの噴出ガスの流入時に、幅方向に分割され得る前記「分割可能部23」を備える。この分割可能部23の中央閉部22の幅方向における位置は特に限定されず、幅方向の中央部でもよく(図4の分割可能部23参照)、いずれかの側に片寄った位置に設けられていてもよい。分割可能部23は、分割後、流入したガスの漏洩を、一方側の閉部22a及び他方側の閉部22bのいずれの側でも十分に抑えることができるという観点で、幅方向の中央部に設けられることが好ましい。
【0018】
分割可能部23は、幅方向の両側の一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとに連続して製織されているが、分割可能部23では、幅方向の少なくとも1箇所で、袋状部11の全長さに亘って緯糸が切断されており(図4の分割可能部23における切断された緯糸23a参照)、袋状部11にインフレータ5からの噴出ガスが流入したときに、中央閉部22が容易に分割され、袋状部11が膨張する。緯糸が切断されている箇所は幅方向の1箇所、特に中央部の1箇所でもよく、2箇所以上でもよいが、通常、1〜2箇所であり、中央閉部22を容易に分割させるという観点では、1箇所で十分である。また、緯糸は分割可能部23の幅方向の2箇所、特に両端縁部の2箇所で切断されていてもよい。
【0019】
更に、分割可能部23では、少なくとも一部で緯糸が経糸と織成されていないことが好ましく、全ての緯糸と経糸とが単に重なり合っているのみで、全く織成されていないことがより好ましい(図4の分割可能部23参照)。これによって、緯糸をより容易に切断することができる。尚、緯糸が経糸と織成されていないとは、緯糸を切断する前から織られていなかったという意味であり、緯糸を切断した結果、織成されていない状態になった場合は含まれない。このように、切断される前から緯糸が経糸と織成されていないことで、緯糸をより容易に切断することができる。
【0020】
分割可能部23における緯糸を切断する方法は特に限定されないが、例えば、シートベルトエアバッグ1の長さ方向の開口端のうちの一端側から切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11の一端側から他端側に向かって順次切断していく方法が挙げられる。
【0021】
(4)接結部
端縁閉部21a、21cの幅方向の外方側、及び端縁閉部21b、21dの幅方向の外方側、の各々に隣接して、前記「接結部」が形成されている(図4及び6の接結部3a、3b参照)。また、接結部における一の内層1cの経糸と他の内層1dの緯糸、及び一の内層1cの緯糸と他の内層1dの経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成され、接結点が形成されている(図4の端縁閉部21a、21c側の接結点S1、及び端縁閉部21b、21d側の接結点S2参照)。
【0022】
接結点のベルトの長さ方向における間隔は、シートベルトとしての通常の使用時には、幅方向の両端部が一体に結合されたベルトとなり、ガス流入時には、接結点S1、S2において経糸が切断し、袋状部11が容易に膨張し得る限り、特に限定されない。この接結点のベルトの長さ方向における間隔は、経糸の材質、繊度、及び接結部3a、3bの織物組織、織組織にもよるが、織成される緯糸の長さ方向における間隔として、1本以上で自由に設定することができ、10〜100本おきとすることが好ましい。
【0023】
接結部3a、3bにおいては、シートベルトエアバッグ1の長さ方向に所定の間隔をおいて接結点を形成することにより、一の内層1cと他の内層1dとを接結させることができる。例えば、他の内層1dを構成する緯糸が、一の内層1cを構成する経糸に対して上口になるように織成することで、2層の内層を接結させることができる。更に、接結部3aと前記の端縁閉部21a、21c、及び接結部3bと前記の端縁閉部21b、21d、により、厚さ方向に4層が一体に結合されたベルトとなり(図4参照)、通常のシートベルトとして使用し易いシートベルトエアバッグ1とすることができる。
【0024】
一方、インフレータ5からの噴出ガスが流入し、エアバッグとして機能するときには、接結点S1、S2を構成する一の内層1cの経糸、及び他の内層1dの経糸が切断可能であり、切断したときには、接結部3aにおける一の内層1cと他の内層1dとの間、及び接結部3bにおける一の内層1cと他の内層1dとの間、がそれぞれ離間することになる。これにより、袋状部11の膨張が妨げられることなく、容易に、且つ十分に膨張し得るシートベルトエアバッグ1とすることができる。また、切断可能な経糸としては、切断されない他の経糸と材質の異なる低強度糸、及び同材質であるときは、切断されない他の経糸と比べて、繊度が1/1(後に記載の1は、1に極めて近似という意味であり、1を僅かに超える。)〜1/5、特に1/2〜1/3程度の繊度の小さい糸等を用いることができる。
【0025】
接結部3a、3bとなる非閉部は必ずしも設ける必要はなく、又は接結部となる非閉部を設けたとしても、接結点S1、S2は必ずしも形成する必要はない。この場合、袋状部11の幅方向の両端側は一の内層1cと他の内層1dとの間で離間しており、閉じられていないが、ガスの流入により袋状部11が容易に膨張するというエアバッグとしての観点では何ら問題はない。しかし、袋状部11の両端側が開放状態であると、ベルト破断の起点となることがある。また、シートベルトとしての通常の使用時には、袋状部11の両端側は閉じられており、シートベルトとしての形状が保持されていることが好ましく、従って、接結部3a、3bを形成し、且つ接結点S1、S2を設けることが好ましい。
【0026】
(5)経糸の材質及び経糸密度
本発明のシートベルトエアバッグ1は、衝突時等には、袋状部11が膨張し、乗員の肩から胸部への衝撃が緩和され、エアバッグとして機能するが、通常はシートベルトとして機能する。そのため、シートベルトとしての所要強度を有している必要があり、経糸の材質は、優れた引張強さを有する合成樹脂であることが好ましく、ポリエステル系樹脂であることがより好ましい。
【0027】
更に、所要強度を有するシートベルトエアバッグ1とするためには、4層袋織構造体の一対の外層の経糸密度が、一対の内層の経糸密度より高いことが好ましいが、4層袋織構造体全体として、ガス流入時に膨張するための十分な糸密度が必要である。従って、具体的には、外層の経糸密度は、通常、100〜150本/インチとすることができ、120〜140本/インチであることが好ましい。また、内層の経糸密度は、通常、100〜150本/インチとすることができ、100〜130本/インチであることが好ましい。即ち、一対の外層の経糸密度は、一対の内層の経糸密度の1.08〜1.20倍であることが好ましい。
【0028】
(6)非膨張部
シートベルトエアバッグ1の長さ方向において袋状部11に連設されている非膨張部12(図3の非膨張部12参照)は、袋状部11と連続して製織されており、袋状部11と同様に4層袋織構造を備える。この非膨張部12の織り構造は、幅方向の両端部において4層の各々が離間し、端部が開放されることのないように、端部閉部(図5の端部閉部41a、41b参照)が形成されていることを除いて特に限定されない。
【0029】
また、幅方向の中央部(図5の中央閉部42及び中央閉部42と端部閉部41a、41bとの間の中間部参照)の織り構造も特に限定されない。この中央部の織り構造は、袋状部11の対応する部分と同じでもよく、異なっていてもよいが、特に異なる織り構造とする必要はなく、非膨張部12の、幅方向の両端部の端部閉部41a、42bを除く中央部は、袋状部11の端縁閉部を除いた部分と同一の織り構造とすることができる。
【0030】
例えば、非膨張部12は、一対の外層と、その内部に配置された一対の内層とを備え、幅方向の両端部の端部閉部41a、41bを除く中央部に、一の内層と他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部42、を有する織り構造とすることができる。更に、中央閉部42は、幅方向の一方側の閉部42aと他方側の閉部42b、及び一方側の閉部42aと他方側の閉部42bとの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部43を備える織り構造とすることができる(図5参照)。
【0031】
また、分割可能部43では、通常、袋状部11と同様に、幅方向の少なくとも1箇所で、非膨張部12の全長さに亘って緯糸が切断されている。更に、袋状部11と同様に、経糸と緯糸とが少なくとも一部で織成されていないことが好ましく、全ての緯糸と経糸とが全く織成されていないことがより好ましい。このように、非膨張部12は、袋状部11と同様の織り組織を有する中央部と、その両端部に連設された端部閉部41a、42bとを有する4層袋織構造により構成することができる。尚、緯糸が切断されていること、及び経糸と緯糸とが少なくとも一部で織成されていないことの詳細については、前述の袋状部11における各々の記載をそのまま適用することができる。
【0032】
更に、図5では、非膨張部12の幅方向の中央部に、分割可能部43が設けられており、緯糸が切断されているが(図5の切断された緯糸43a参照)、非膨張部12は専らシートベルトとして機能する部分であり、分割可能部43を形成せず、一方側の閉部42a及び他方側の閉部42bと連続し、一体となった中央閉部42としてもよい。また、中央閉部42を形成せず、端部閉部41a、41b間を非閉部により構成される同一の織り構造により構成することもできる。
【0033】
尚、前述のように、ベルトの開口端から切断治具を挿入し、一端側から他端側に向かって緯糸を順次切断していく方法の場合は、袋状部11と非膨張部12との区別なく、緯糸を連続的に切断することができる。しかし、非膨張部12の分割可能部43における緯糸は、シートベルトとしての機能の観点では、必ずしも切断する必要はない。分割可能部43が設けられていても緯糸が切断されない場合は、袋状部11の中央閉部22が備える分割可能部23における緯糸のみを切断すればよい。更に、分割可能部43を設けない場合は、袋状部11の中央閉部22が備える分割可能部23における緯糸のみを切断すればよい。
【0034】
また、衝突時等の衝撃が加わったときに、袋状部11にはインフレータ5からの噴出ガスが流入し、第1内層1cと第2内層1dとの幅方向の両端側が強固に閉じられていないため、袋状部11は容易に膨張する。一方、非膨張部12では、幅方向の両端側において、全ての外層及び内層を構成する緯糸と経糸とが織成されて、端部閉部(図5の端部閉部41a、41b参照)が形成されている。そのため、両端側において各々の層が強固に一体となっており、非膨張部12はガスの圧力による変形に対する抵抗が袋状部11と比べて極めて大きい。従って、袋状部11にガスが流入したとき、非膨張部12は、袋状部11に隣接する部分が僅かに膨らむことはあるかもしれないが、大きく膨張することはなく、実質的に袋状部11のみが膨張し、エアバッグとして機能することになる。
【0035】
(7)織組織
本発明のシートベルトエアバッグ1は、前述のように、袋状部11を具備し、袋状部11は、端縁閉部21、一方側の閉部22aと、他方側の閉部22bと、分割可能部23とを備える中央閉部22、及び端縁閉部21と中央閉部22との間の中間部を有する。また、袋状部11の幅方向の外方側に隣接して接結部3a、3bが設けられている(図4参照)。このように、袋状部11は、分割可能部23を中心として、幅方向の一方側と他方側とに略対象の織り構造を備える構成とすることができる。また、一方側の端縁閉部21a、21cと他方側の端縁閉部21b、21d、一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、一方側の接結部3aと他方側の接結部3b、及び一方側の中間部と他方側の中間部、はそれぞれ同一の織組織とすることができる。
【0036】
例えば、接結部3a、3bの織組織は、図9の織組織Aのようにすることができる。この図9で、斜線部は、他の内層1dを構成する緯糸が、一の内層1cを構成する経糸に対して上口にくるように織成されて接結点S1、S2が形成されていることを表している。この接結点S1、S2は、ベルトの長さ方向に間隔を置いて設けられ、この間隔は、前述のようにすることができる。更に、シートベルトとしての幅方向の両端部における内層間の一体化、及び袋状部11が膨張するときに接結点S1、S2において経糸が切断され、内層間が離間するときの離間のし易さ、等を勘案して設定することが好ましい。
【0037】
また、端縁閉部21の織組織は、例えば、図10の織組織Bのようにすることができ、一方側、他方側の各々の中間部の織組織は、例えば、図11の織組織Cのようにすることができる。更に、一方側の閉部22aと他方側の閉部22bの織組織は、例えば、図12の織組織Dのようにすることができ、分割可能部23の織組織は、例えば、図13の織組織Eのようにすることができる。また、非膨張部12の、両端部の端部閉部41a、41bを除く他の部分、即ち、中央部の織り構造は、前述のように、袋状部11の端縁閉部を除く部分と同じとすることができる。
【0038】
より具体的には、図5のように、一方側、他方側の各々の中間部の織組織は、織組織Cとすることができ、一方側の閉部42aと他方側の閉部42bの織組織は、織組織Dとすることができ、分割可能部43の織組織は、織組織Eとすることができる。また、非膨張部12の、両端部の端部閉部41a、41bの織組織は、例えば、図14の織組織Fのようにすることができる。
以上、図9乃至14の織組織は、本発明のシートベルトエアバッグ1とすることができる一実施形態に係る織組織であり、シートベルトエアバッグ1は、他の種々の織組織の組合せにより構成することもできる。
【0039】
[2]シートベルトエアバッグの製造方法
本発明のシートベルトエアバッグの製造方法は、4層袋織構造体を製織する製織工程と、シートベルトエアバッグ1の長さ方向の開口端のうちの一端側から、シートベルトエアバッグ1の内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11が有する中央閉部22が備える分割可能部23を構成する緯糸を、袋状部11の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程(図4の分割可能部23において切断された緯糸23a参照)を備える。尚、図4及び5のシートベルトエアバッグ1の場合、非膨張部12の分割可能部43における緯糸も同じ工程で連続して切断される(切断された緯糸43a参照)。
【0040】
前記「製織工程」では、前記[1]シートベルトエアバッグにおいて詳述した織り構造等を備える前記「4層袋織構造体」が製織される。この4層袋織構造体は、一般的な織機を用いて製織することができ、プログラムにより設定された所定の織物組織、織組織を有する4層袋織構造体とすることができる。
【0041】
また、前記「緯糸切断工程」では、4層袋織構造体を製織後、その長さ方向の開口端のうちの一端側から、内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11における分割可能部23を構成する緯糸を、一端側から他端側に向かって順次切断していく。このように、分割可能部23における緯糸を切断することで、袋状部11にガスが流入したときに、一の内層1c及び他の内層1dが、一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間で分割され、袋状部11が容易に膨張し、エアバッグとして十分に機能する。
【0042】
一方、非膨張部12では、前述のとおり、分割可能部43における緯糸の切断は必須ではないが、この場合、4層袋織構造体の長さ方向の開口端のうちの一端側から内部に挿入した切断用治具により、袋状部11における分割可能部23を構成する緯糸のみを切断することになる。このようにすることもできるが、分割可能部23における緯糸を切断する作業性の観点では、分割可能部23における緯糸の切断と連続して、分割可能部43における緯糸を切断することが好ましい。
【0043】
更に、分割可能部23における緯糸は、幅方向の少なくとも1箇所、特に中央部で切断すればよく(図4の分割可能部23における切断された緯糸23a参照)、幅方向の2箇所以上、特に分割可能部23の両端縁の2箇所で切断してもよいが、中央閉部22を容易に分割させるという観点では、通常、1〜2箇所、特に1箇所で切断すれば十分である。また、緯糸をより容易に切断することができるという観点で、分割可能部23では、少なくとも一部で緯糸が経糸と織成されていない、特に全ての緯糸と経糸とが単に重なり合っているのみで、全く織成されていないことが好ましい(図4の分割可能部23参照)。尚、緯糸が経糸と織成されていないことの意味は前述のとおりである。
【0044】
切断用治具は、シートベルトエアバッグ1の開口端から挿入することができるほどに小型であり、内部を挿通させることができるとともに、緯糸を容易且つ確実に切断することができる限り、特に限定されない。袋状部11の分割可能部23及び非膨張部12の分割可能部43の各々における緯糸を連続して切断する場合は、例えば、荷解き用等のカッターナイフの柄を長尺にしたようなもの等の治具が挙げられる。
尚、本発明のシートベルトエアバッグの製造方法では、製織工程及び緯糸切断工程の他に、通常、シートベルトに色を付けるための染色工程、及びシートベルト表面に樹脂等を塗布、含浸させるためのコーティング工程等を備えている。
【0045】
[3]糸の材質、繊度等
本発明のシートベルトエアバッグ1の製造には、合成樹脂からなるフィラメントが用いられ、このフィラメントとしては、マルチフィラメントとモノフィラメントとがあるが、通常、マルチフィラメントが用いられる。フィラメントの材質は特に限定されず、各種の合成樹脂からなるフィラメントを用いることができる。
【0046】
合成樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂が好ましく、優れた引張強さを有するポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0047】
マルチフィラメント等の合成樹脂フィラメントの繊度は特に限定されず、適宜の繊度のマルチフィラメント等を用いることが好ましい。繊度は経糸が1000〜2000デシテックス、緯糸が500〜1000デシテックス、特に経糸は1500〜1800デシテックスであることが好ましい。このような繊度であれば、特に経糸の繊度が1500〜1800デシテックスであれば、シートベルトとしての十分な強度を有するとともに、エアバッグとしての作動時、端縁閉部21及び中央閉部22からのエア漏れを十分に抑えることができるため好ましい。また、マルチフィラメントの場合、このマルチフィラメントを構成するフィラメント数は特に限定されず、その繊度等によって設定することができるが、経糸の場合、50〜300本、特に100〜200本であることが好ましい。
【0048】
[4]樹脂等の含浸
袋織構造を構成する4層の織地の、少なくともガスの流入時に膨張してエアバッグとして機能する袋状部11を構成する部分は、通常、膨張時に外面となる側に、樹脂及び/又はゴムを含浸させ、気密性等を向上させることが好ましい。これにより、通気が抑えられ、十分な膨張速度が確保されるシートベルトエアバッグ1とすることができる。用いられる樹脂、ゴムとしては、例えば、クロロプレン系、シリコーン系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、フッ素系、クロロスルフォン化ポリエチレン系等の樹脂、ゴムが挙げられる。
【0049】
樹脂及び/又はゴムを含浸させる方法は特に限定されず、織地の少なくとも袋状部11を形成する部分に、樹脂及び/又はゴムを含有するエマルジョンに含浸させ、加熱して媒体を除去する等の方法が挙げられる。この場合、樹脂及び/又はゴムの付着量等によって、袋状部11の通気性を調整することができ、樹脂、ゴムの種類によっては耐熱性を向上させることもできる。この樹脂及び/又はゴムの含浸は、織物組織及び織組織等による通気性の相違等を勘案し、必要に応じて実施することが好ましいが、通常は実施される。
【0050】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両用のシートベルトの技術分野、及びエアバッグの技術分野において利用することができる。特にベルトの長さ方向の、装着したときに肩から胸部にかけて位置することになる部分に、衝突時等にエアバッグとして機能する袋状部を備え、他のエアバッグとともに、乗員をより十分に保護することができるシートベルトエアバッグの技術分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10;車両用シート、10a;シートクッション、10b;シートバック、1;シートベルトエアバッグ、1a;一の外層、1b;他の外層、1c;一の内層、1d;他の内層、11;袋状部、12;非膨張部、21a、21b、21c、21d;端縁閉部、22;中央閉部、22a;一方側の閉部、22b;他方側の閉部、23;分割可能部、23a;切断された緯糸、3a、3b;接結部、S1、S2;接結点、41a、41b;端部閉部、42;中央閉部、42a;一方側の閉部、42b;他方側の閉部、43;分割可能部、43a;切断された緯糸、5;インフレータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時等に膨張し、乗員に加わる衝撃、特に肩及び胸部に加わる衝撃を吸収し、緩和する袋状部を具備するシートベルトエアバッグ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、袋状部のみでなく、膨張しない部分も含め、ベルト全体が4層袋織構造体により構成され、縫製を全く必要とせず、特に幅方向の両端部が縫製されていないため、この両端部も含め、ベルト全体が厚くならず、良好な装着感を有するシートベルトエアバッグに関する。また、独特の、且つ簡便な工程を備えるシートベルトエアバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の衝突時等の衝撃から乗員を保護するため、車両にはシートベルトが取り付けられている。また、通常、このシートベルトの着用を前提としたフロントエアバッグ、サイドエアバッグ等の各種のエアバッグが配設されている。更に、シートベルトは、脱着時の操作性と装着感、即ち、脱着時の機能性と装着時の快適性とを両立させるため、過度に幅広とすることができない。そのため、ペルトの幅には自ずと制限があり、衝突時等に、シートベルトによる局部的な荷重が乗員に加わることになる。
【0003】
また、前述のシートベルトによる局部的な荷重を緩和するため、エアバッグ機能を有するシートベルトが提案され、実用化が図られている。例えば、特定の上部ウェブ層と下部ウェブ層とが製織されてなり、折り畳み構造を有する膨張可能なシートベルト等のベルト帯状物が知られており(例えば、特許文献1参照。)、事故の際に乗客のための適切な緩衝保護を保証し、コスト的にも有利である等と説明されている。更に、シート用エアバッグとベルト用エアバッグとを備え、ベルト用エアバッグは、ベルト本体を構成する2枚の基布に挟み込まれるようにして折り畳まれ、ベルト本体内に収納される構成の乗員保護装置が知られており(例えば、特許文献2参照。)、部品点数及び組付工数を低減することが可能である等と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−502918号公報
【特許文献1】特開2002−145002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたベルト帯状物、及び特許文献2に記載された乗員保護装置が備えるベルト用エアバッグは、いずれも折り畳み構造を有するとともに、端部等が縫製されている。そのため、折り畳む工程、及び縫製工程が必須となり、工数が低減されるとはいえない。更に、折り畳むことによって全体に厚くなり、特に縫製された端部がより厚くなり、必ずしも装着感が良いとはいえない。
【0006】
本発明は、前述の従来の状況に鑑みてなされたものであり、袋状部のみでなく、膨張しない部分も含め、ベルト全体が4層袋織構造体により構成され、縫製を全く必要とせず、特に幅方向の両端部が縫製されていないため、この両端部も含め、ベルト全体が厚くならず、良好な装着感を有するシートベルトエアバッグを提供することを目的とする。また、本発明は、独特の、且つ簡便な工程を備えるシートベルトエアバッグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.インフレータからの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部を具備し、4層袋織構造体からなるシートベルトエアバッグであって、
前記袋状部は、一対の外層と前記外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層と一の内層の幅方向の両端部、及び他の外層と他の内層の幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部、並びに前記一の内層と前記他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部、を有し、前記中央閉部は、前記幅方向の一方側の閉部と他方側の閉部、及び前記一方側の閉部と前記他方側の閉部との間に設けられた前記幅方向に分割され得る分割可能部を備え、前記噴出ガスの流入時に、前記分割可能部が分割され、前記袋状部が膨張することを特徴とするシートベルトエアバッグ。
2.前記分割可能部では、前記幅方向の少なくとも1箇所で、前記袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている前記1.に記載のシートベルトエアバッグ。
3. 前記端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、前記接結部における前記一の内層の経糸と前記他の内層の緯糸、及び前記一の内層の緯糸と前記他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、前記一の内層の前記経糸及び前記他の内層の前記経糸が、前記噴出ガス流入時に切断可能である前記1.又は2.に記載のシートベルトエアバッグ。
4.前記4層袋織構造体の前記一対の外層の織密度が、前記一対の内層の織密度より高い前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグ。
5.前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグの製造方法であって、
前記4層袋織構造体を製織する製織工程と、前記シートベルトエアバッグの長さ方向の開口端のうちの一端側から、前記シートベルトエアバッグの内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、前記袋状部が有する前記中央閉部が備える前記分割可能部を構成する緯糸を、前記袋状部の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程と、を備えることを特徴とするシートベルトエアバッグの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシートベルトエアバッグは、衝突時等に膨張する袋状部、及び膨張しない非膨張部が、ともに4層袋織構造体を備え、折り畳む必要がないため、全体に厚くならず、生産性も高い。また、幅方向の両端部も含め、全体が全く縫製されておらず、特に両端部が厚くなることもなく、シートベルトとしての通常の使用時には良好な装着感を有する。更に、衝突時等には、袋状部が膨張してエアバッグとして機能し、乗員に加わる衝撃、特に肩及び胸部に加わる衝撃が十分に緩和される。
また、分割可能部では、幅方向の少なくとも1箇所で、袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている場合は、インフレータからの噴出ガスが袋状部に流入したときに、中央閉部が分割可能部で容易に分割され、袋状部が膨張し易く、エアバッグとして十分に機能するシートベルトエアバッグとすることができる。
更に、端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、接結部における一の内層の経糸と他の内層の緯糸、及び一の内層の緯糸と他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、一の内層の経糸及び他の内層の経糸が、噴出ガス流入時に切断可能である場合は、インフレータからの噴出ガスが袋状部に流入したときに、4層袋織構造体の内層の経糸が接結部に形成されている接結点で容易に切断され、袋状部が膨張し易く、エアバッグとして十分に機能するシートベルトエアバッグとすることができる。
また、4層袋織構造体の一対の外層の織密度が、一対の内層の織密度より高い場合は、袋状部が膨張していないシートベルトとしての通常の使用時は、外層を構成する織密度の高い2層の織地により、シートベルトとしての本来の十分な強度を有するシートベルトエアバッグとすることができる。
本発明のシートベルトエアバッグの製造方法によれば、4層袋織構造体を製織し、その後、開口端のうちの一端側から切断用治具を挿入し、袋状部の中央閉部が有する分割可能部の緯糸を切断するという、独特の、且つ簡便な方法によって、縫製を全く必要とせず、幅方向の両端部も含め、厚くならず、良好な装着感を有する製品を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のシートベルトエアバッグが取り付けられた車両用シートの模式的な斜視図である。
【図2】図1のシートベルトエアバッグの袋状部にインフレータからの噴出ガスが流入し、膨張した状態を説明するための模式図である。
【図3】長さ方向の一部に設けられた袋状部、及びこの袋状部の両側に連設された非膨張部を備える本発明のシートベルトエアバッグの模式的な平面図である。
【図4】図3の袋状部の横断面(A−A断面)の4層袋織構造を詳しく説明するための模式図である。
【図5】図3の非膨張部の横断面(B−B断面)の4層袋織構造を詳しく説明するための模式図である。尚、この図5の、非膨張部における織組織C、D及びEは、図4の、袋状部における織組織C、D及びEと、それぞれ同じ織組織である。
【図6】シートベルトエアバッグの袋状部及び接結部の横断面の4層袋織構造を説明するための模式図である。
【図7】図6のシートベルトエアバッグの袋状部にインフレータからの噴出ガスが流入し、袋状部の中央閉部が有する分割可能部が分割されるとともに、接結部を構成する経糸が切断され、袋状部が膨張しつつある様子を説明するための模式図である。
【図8】図7の膨張しつつある袋状部が完全に膨張し、横断面が楕円形状になった様子を説明するための模式図である。
【図9】図4における袋状部が有する端縁閉部の外方側に隣接して形成された接結部の織組織Aの模式的な説明図である。
【図10】図4における袋状部が有する端縁閉部の織組織Bの模式的な説明図である。
【図11】図4における端縁閉部と中央閉部との間の、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる中間部の織組織Cの模式的な説明図である。
【図12】図4における中央閉部の一方側の閉部又は他方側の閉部と、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる非閉部との織組織Dの模式的な説明図である。
【図13】図4における中央閉部のうちの、膨張時、幅方向に分割し得る分割可能部と、膨張後、膨張壁の一部を構成することとなる非閉部との織組織Eの模式的な説明図である。
【図14】図5の、非膨張部の幅方向の両端部を構成する端部閉部の織組織Fの模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、図1〜14を参照しながら詳しく説明する。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0011】
[1]シートベルトエアバッグ
本発明のシートベルトエアバッグ1は、インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部11を具備し、4層袋織構造体からなる。袋状部11は、一対の外層と、この外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部(端縁閉部21a、21b、21c、21d)、並びに一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられた中央閉部22、を有し、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、及び一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部23を備え(図4参照)、ガスの流入時に、分割可能部23が分割され、袋状部11が膨張する(図7及び8参照)。
【0012】
(1)袋状部
前記「袋状部11」は4層袋織構造体からなり、車両の衝突時等、衝撃が加わったときに、インフレータ5からの噴出ガスが内部に流入することにより、膨張し、幅広になるとともに厚さも増し、乗員の肩から胸部に加わる衝撃が緩和され、エアバッグとして機能する。袋状部11は、一対の外層1a、1bと、その内部に配置された一対の内層1c、1dとを有する、即ち、袋織構造を構成する4層の織地を備える。
【0013】
一の外層1a、他の外層1b及びこれらの外層の内部に配置された一の内層1c、他の内層1dのそれぞれの織物組織は特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、袋状部11を構成する各々の層の織組織も特に限定されず、シートベルトエアバッグ1が剛直になり、装着感が損なわれることのない織組織とすることが好ましい。
【0014】
(2)端縁閉部
前記「端縁閉部」は、袋織構造を構成する4層の織地のうちの、一の外層1aと一の内層1cの幅方向の両端部(図4及び6の端縁閉部21a、21b参照)、及び他の外層1bと他の内層1dの幅方向の両端部(図4及び6の端縁閉部21c、21d参照)に設けられる。端縁閉部は、各々、袋状部11が膨張して所定の立体形状となるように、袋状部11に流入したガスの漏洩を抑えるための通気度の低い帯状部として形成される。
【0015】
端縁閉部の織物組織は、流入したガスの漏洩を十分に抑えることができる限り、特に限定されない。この端縁閉部の織物組織は、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。また、端縁閉部の織組織も特に限定されず、シートベルトとしての通常の装着時に、ベルトの両端部が他部より厚くなり、装着感が損なわれることのない織組織とすることが好ましい。
【0016】
(3)中央閉部
前記「中央閉部22」は、袋織構造を構成する4層の織地のうちの、一の内層1cと他の内層1dの幅方向の中央部に設けられる(図4及び6の中央閉部22参照)。中央閉部22の織物組織は特に限定されず、例えば、平織組織、斜子組織、斜文組織、朱子組織等の各種の織物組織とすることができる。
【0017】
更に、中央閉部22は、幅方向の一方側の閉部22aと他方側の閉部22b(図4の一方側の閉部22a、他方側の閉部22b参照)、及び一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間に設けられ、インフレータ5からの噴出ガスの流入時に、幅方向に分割され得る前記「分割可能部23」を備える。この分割可能部23の中央閉部22の幅方向における位置は特に限定されず、幅方向の中央部でもよく(図4の分割可能部23参照)、いずれかの側に片寄った位置に設けられていてもよい。分割可能部23は、分割後、流入したガスの漏洩を、一方側の閉部22a及び他方側の閉部22bのいずれの側でも十分に抑えることができるという観点で、幅方向の中央部に設けられることが好ましい。
【0018】
分割可能部23は、幅方向の両側の一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとに連続して製織されているが、分割可能部23では、幅方向の少なくとも1箇所で、袋状部11の全長さに亘って緯糸が切断されており(図4の分割可能部23における切断された緯糸23a参照)、袋状部11にインフレータ5からの噴出ガスが流入したときに、中央閉部22が容易に分割され、袋状部11が膨張する。緯糸が切断されている箇所は幅方向の1箇所、特に中央部の1箇所でもよく、2箇所以上でもよいが、通常、1〜2箇所であり、中央閉部22を容易に分割させるという観点では、1箇所で十分である。また、緯糸は分割可能部23の幅方向の2箇所、特に両端縁部の2箇所で切断されていてもよい。
【0019】
更に、分割可能部23では、少なくとも一部で緯糸が経糸と織成されていないことが好ましく、全ての緯糸と経糸とが単に重なり合っているのみで、全く織成されていないことがより好ましい(図4の分割可能部23参照)。これによって、緯糸をより容易に切断することができる。尚、緯糸が経糸と織成されていないとは、緯糸を切断する前から織られていなかったという意味であり、緯糸を切断した結果、織成されていない状態になった場合は含まれない。このように、切断される前から緯糸が経糸と織成されていないことで、緯糸をより容易に切断することができる。
【0020】
分割可能部23における緯糸を切断する方法は特に限定されないが、例えば、シートベルトエアバッグ1の長さ方向の開口端のうちの一端側から切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11の一端側から他端側に向かって順次切断していく方法が挙げられる。
【0021】
(4)接結部
端縁閉部21a、21cの幅方向の外方側、及び端縁閉部21b、21dの幅方向の外方側、の各々に隣接して、前記「接結部」が形成されている(図4及び6の接結部3a、3b参照)。また、接結部における一の内層1cの経糸と他の内層1dの緯糸、及び一の内層1cの緯糸と他の内層1dの経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成され、接結点が形成されている(図4の端縁閉部21a、21c側の接結点S1、及び端縁閉部21b、21d側の接結点S2参照)。
【0022】
接結点のベルトの長さ方向における間隔は、シートベルトとしての通常の使用時には、幅方向の両端部が一体に結合されたベルトとなり、ガス流入時には、接結点S1、S2において経糸が切断し、袋状部11が容易に膨張し得る限り、特に限定されない。この接結点のベルトの長さ方向における間隔は、経糸の材質、繊度、及び接結部3a、3bの織物組織、織組織にもよるが、織成される緯糸の長さ方向における間隔として、1本以上で自由に設定することができ、10〜100本おきとすることが好ましい。
【0023】
接結部3a、3bにおいては、シートベルトエアバッグ1の長さ方向に所定の間隔をおいて接結点を形成することにより、一の内層1cと他の内層1dとを接結させることができる。例えば、他の内層1dを構成する緯糸が、一の内層1cを構成する経糸に対して上口になるように織成することで、2層の内層を接結させることができる。更に、接結部3aと前記の端縁閉部21a、21c、及び接結部3bと前記の端縁閉部21b、21d、により、厚さ方向に4層が一体に結合されたベルトとなり(図4参照)、通常のシートベルトとして使用し易いシートベルトエアバッグ1とすることができる。
【0024】
一方、インフレータ5からの噴出ガスが流入し、エアバッグとして機能するときには、接結点S1、S2を構成する一の内層1cの経糸、及び他の内層1dの経糸が切断可能であり、切断したときには、接結部3aにおける一の内層1cと他の内層1dとの間、及び接結部3bにおける一の内層1cと他の内層1dとの間、がそれぞれ離間することになる。これにより、袋状部11の膨張が妨げられることなく、容易に、且つ十分に膨張し得るシートベルトエアバッグ1とすることができる。また、切断可能な経糸としては、切断されない他の経糸と材質の異なる低強度糸、及び同材質であるときは、切断されない他の経糸と比べて、繊度が1/1(後に記載の1は、1に極めて近似という意味であり、1を僅かに超える。)〜1/5、特に1/2〜1/3程度の繊度の小さい糸等を用いることができる。
【0025】
接結部3a、3bとなる非閉部は必ずしも設ける必要はなく、又は接結部となる非閉部を設けたとしても、接結点S1、S2は必ずしも形成する必要はない。この場合、袋状部11の幅方向の両端側は一の内層1cと他の内層1dとの間で離間しており、閉じられていないが、ガスの流入により袋状部11が容易に膨張するというエアバッグとしての観点では何ら問題はない。しかし、袋状部11の両端側が開放状態であると、ベルト破断の起点となることがある。また、シートベルトとしての通常の使用時には、袋状部11の両端側は閉じられており、シートベルトとしての形状が保持されていることが好ましく、従って、接結部3a、3bを形成し、且つ接結点S1、S2を設けることが好ましい。
【0026】
(5)経糸の材質及び経糸密度
本発明のシートベルトエアバッグ1は、衝突時等には、袋状部11が膨張し、乗員の肩から胸部への衝撃が緩和され、エアバッグとして機能するが、通常はシートベルトとして機能する。そのため、シートベルトとしての所要強度を有している必要があり、経糸の材質は、優れた引張強さを有する合成樹脂であることが好ましく、ポリエステル系樹脂であることがより好ましい。
【0027】
更に、所要強度を有するシートベルトエアバッグ1とするためには、4層袋織構造体の一対の外層の経糸密度が、一対の内層の経糸密度より高いことが好ましいが、4層袋織構造体全体として、ガス流入時に膨張するための十分な糸密度が必要である。従って、具体的には、外層の経糸密度は、通常、100〜150本/インチとすることができ、120〜140本/インチであることが好ましい。また、内層の経糸密度は、通常、100〜150本/インチとすることができ、100〜130本/インチであることが好ましい。即ち、一対の外層の経糸密度は、一対の内層の経糸密度の1.08〜1.20倍であることが好ましい。
【0028】
(6)非膨張部
シートベルトエアバッグ1の長さ方向において袋状部11に連設されている非膨張部12(図3の非膨張部12参照)は、袋状部11と連続して製織されており、袋状部11と同様に4層袋織構造を備える。この非膨張部12の織り構造は、幅方向の両端部において4層の各々が離間し、端部が開放されることのないように、端部閉部(図5の端部閉部41a、41b参照)が形成されていることを除いて特に限定されない。
【0029】
また、幅方向の中央部(図5の中央閉部42及び中央閉部42と端部閉部41a、41bとの間の中間部参照)の織り構造も特に限定されない。この中央部の織り構造は、袋状部11の対応する部分と同じでもよく、異なっていてもよいが、特に異なる織り構造とする必要はなく、非膨張部12の、幅方向の両端部の端部閉部41a、42bを除く中央部は、袋状部11の端縁閉部を除いた部分と同一の織り構造とすることができる。
【0030】
例えば、非膨張部12は、一対の外層と、その内部に配置された一対の内層とを備え、幅方向の両端部の端部閉部41a、41bを除く中央部に、一の内層と他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部42、を有する織り構造とすることができる。更に、中央閉部42は、幅方向の一方側の閉部42aと他方側の閉部42b、及び一方側の閉部42aと他方側の閉部42bとの間に設けられた幅方向に分割され得る分割可能部43を備える織り構造とすることができる(図5参照)。
【0031】
また、分割可能部43では、通常、袋状部11と同様に、幅方向の少なくとも1箇所で、非膨張部12の全長さに亘って緯糸が切断されている。更に、袋状部11と同様に、経糸と緯糸とが少なくとも一部で織成されていないことが好ましく、全ての緯糸と経糸とが全く織成されていないことがより好ましい。このように、非膨張部12は、袋状部11と同様の織り組織を有する中央部と、その両端部に連設された端部閉部41a、42bとを有する4層袋織構造により構成することができる。尚、緯糸が切断されていること、及び経糸と緯糸とが少なくとも一部で織成されていないことの詳細については、前述の袋状部11における各々の記載をそのまま適用することができる。
【0032】
更に、図5では、非膨張部12の幅方向の中央部に、分割可能部43が設けられており、緯糸が切断されているが(図5の切断された緯糸43a参照)、非膨張部12は専らシートベルトとして機能する部分であり、分割可能部43を形成せず、一方側の閉部42a及び他方側の閉部42bと連続し、一体となった中央閉部42としてもよい。また、中央閉部42を形成せず、端部閉部41a、41b間を非閉部により構成される同一の織り構造により構成することもできる。
【0033】
尚、前述のように、ベルトの開口端から切断治具を挿入し、一端側から他端側に向かって緯糸を順次切断していく方法の場合は、袋状部11と非膨張部12との区別なく、緯糸を連続的に切断することができる。しかし、非膨張部12の分割可能部43における緯糸は、シートベルトとしての機能の観点では、必ずしも切断する必要はない。分割可能部43が設けられていても緯糸が切断されない場合は、袋状部11の中央閉部22が備える分割可能部23における緯糸のみを切断すればよい。更に、分割可能部43を設けない場合は、袋状部11の中央閉部22が備える分割可能部23における緯糸のみを切断すればよい。
【0034】
また、衝突時等の衝撃が加わったときに、袋状部11にはインフレータ5からの噴出ガスが流入し、第1内層1cと第2内層1dとの幅方向の両端側が強固に閉じられていないため、袋状部11は容易に膨張する。一方、非膨張部12では、幅方向の両端側において、全ての外層及び内層を構成する緯糸と経糸とが織成されて、端部閉部(図5の端部閉部41a、41b参照)が形成されている。そのため、両端側において各々の層が強固に一体となっており、非膨張部12はガスの圧力による変形に対する抵抗が袋状部11と比べて極めて大きい。従って、袋状部11にガスが流入したとき、非膨張部12は、袋状部11に隣接する部分が僅かに膨らむことはあるかもしれないが、大きく膨張することはなく、実質的に袋状部11のみが膨張し、エアバッグとして機能することになる。
【0035】
(7)織組織
本発明のシートベルトエアバッグ1は、前述のように、袋状部11を具備し、袋状部11は、端縁閉部21、一方側の閉部22aと、他方側の閉部22bと、分割可能部23とを備える中央閉部22、及び端縁閉部21と中央閉部22との間の中間部を有する。また、袋状部11の幅方向の外方側に隣接して接結部3a、3bが設けられている(図4参照)。このように、袋状部11は、分割可能部23を中心として、幅方向の一方側と他方側とに略対象の織り構造を備える構成とすることができる。また、一方側の端縁閉部21a、21cと他方側の端縁閉部21b、21d、一方側の閉部22aと他方側の閉部22b、一方側の接結部3aと他方側の接結部3b、及び一方側の中間部と他方側の中間部、はそれぞれ同一の織組織とすることができる。
【0036】
例えば、接結部3a、3bの織組織は、図9の織組織Aのようにすることができる。この図9で、斜線部は、他の内層1dを構成する緯糸が、一の内層1cを構成する経糸に対して上口にくるように織成されて接結点S1、S2が形成されていることを表している。この接結点S1、S2は、ベルトの長さ方向に間隔を置いて設けられ、この間隔は、前述のようにすることができる。更に、シートベルトとしての幅方向の両端部における内層間の一体化、及び袋状部11が膨張するときに接結点S1、S2において経糸が切断され、内層間が離間するときの離間のし易さ、等を勘案して設定することが好ましい。
【0037】
また、端縁閉部21の織組織は、例えば、図10の織組織Bのようにすることができ、一方側、他方側の各々の中間部の織組織は、例えば、図11の織組織Cのようにすることができる。更に、一方側の閉部22aと他方側の閉部22bの織組織は、例えば、図12の織組織Dのようにすることができ、分割可能部23の織組織は、例えば、図13の織組織Eのようにすることができる。また、非膨張部12の、両端部の端部閉部41a、41bを除く他の部分、即ち、中央部の織り構造は、前述のように、袋状部11の端縁閉部を除く部分と同じとすることができる。
【0038】
より具体的には、図5のように、一方側、他方側の各々の中間部の織組織は、織組織Cとすることができ、一方側の閉部42aと他方側の閉部42bの織組織は、織組織Dとすることができ、分割可能部43の織組織は、織組織Eとすることができる。また、非膨張部12の、両端部の端部閉部41a、41bの織組織は、例えば、図14の織組織Fのようにすることができる。
以上、図9乃至14の織組織は、本発明のシートベルトエアバッグ1とすることができる一実施形態に係る織組織であり、シートベルトエアバッグ1は、他の種々の織組織の組合せにより構成することもできる。
【0039】
[2]シートベルトエアバッグの製造方法
本発明のシートベルトエアバッグの製造方法は、4層袋織構造体を製織する製織工程と、シートベルトエアバッグ1の長さ方向の開口端のうちの一端側から、シートベルトエアバッグ1の内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11が有する中央閉部22が備える分割可能部23を構成する緯糸を、袋状部11の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程(図4の分割可能部23において切断された緯糸23a参照)を備える。尚、図4及び5のシートベルトエアバッグ1の場合、非膨張部12の分割可能部43における緯糸も同じ工程で連続して切断される(切断された緯糸43a参照)。
【0040】
前記「製織工程」では、前記[1]シートベルトエアバッグにおいて詳述した織り構造等を備える前記「4層袋織構造体」が製織される。この4層袋織構造体は、一般的な織機を用いて製織することができ、プログラムにより設定された所定の織物組織、織組織を有する4層袋織構造体とすることができる。
【0041】
また、前記「緯糸切断工程」では、4層袋織構造体を製織後、その長さ方向の開口端のうちの一端側から、内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、袋状部11における分割可能部23を構成する緯糸を、一端側から他端側に向かって順次切断していく。このように、分割可能部23における緯糸を切断することで、袋状部11にガスが流入したときに、一の内層1c及び他の内層1dが、一方側の閉部22aと他方側の閉部22bとの間で分割され、袋状部11が容易に膨張し、エアバッグとして十分に機能する。
【0042】
一方、非膨張部12では、前述のとおり、分割可能部43における緯糸の切断は必須ではないが、この場合、4層袋織構造体の長さ方向の開口端のうちの一端側から内部に挿入した切断用治具により、袋状部11における分割可能部23を構成する緯糸のみを切断することになる。このようにすることもできるが、分割可能部23における緯糸を切断する作業性の観点では、分割可能部23における緯糸の切断と連続して、分割可能部43における緯糸を切断することが好ましい。
【0043】
更に、分割可能部23における緯糸は、幅方向の少なくとも1箇所、特に中央部で切断すればよく(図4の分割可能部23における切断された緯糸23a参照)、幅方向の2箇所以上、特に分割可能部23の両端縁の2箇所で切断してもよいが、中央閉部22を容易に分割させるという観点では、通常、1〜2箇所、特に1箇所で切断すれば十分である。また、緯糸をより容易に切断することができるという観点で、分割可能部23では、少なくとも一部で緯糸が経糸と織成されていない、特に全ての緯糸と経糸とが単に重なり合っているのみで、全く織成されていないことが好ましい(図4の分割可能部23参照)。尚、緯糸が経糸と織成されていないことの意味は前述のとおりである。
【0044】
切断用治具は、シートベルトエアバッグ1の開口端から挿入することができるほどに小型であり、内部を挿通させることができるとともに、緯糸を容易且つ確実に切断することができる限り、特に限定されない。袋状部11の分割可能部23及び非膨張部12の分割可能部43の各々における緯糸を連続して切断する場合は、例えば、荷解き用等のカッターナイフの柄を長尺にしたようなもの等の治具が挙げられる。
尚、本発明のシートベルトエアバッグの製造方法では、製織工程及び緯糸切断工程の他に、通常、シートベルトに色を付けるための染色工程、及びシートベルト表面に樹脂等を塗布、含浸させるためのコーティング工程等を備えている。
【0045】
[3]糸の材質、繊度等
本発明のシートベルトエアバッグ1の製造には、合成樹脂からなるフィラメントが用いられ、このフィラメントとしては、マルチフィラメントとモノフィラメントとがあるが、通常、マルチフィラメントが用いられる。フィラメントの材質は特に限定されず、各種の合成樹脂からなるフィラメントを用いることができる。
【0046】
合成樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。合成樹脂としては、特にポリエステル系樹脂及びポリアミド系樹脂が好ましく、優れた引張強さを有するポリエステル系樹脂がより好ましい。
【0047】
マルチフィラメント等の合成樹脂フィラメントの繊度は特に限定されず、適宜の繊度のマルチフィラメント等を用いることが好ましい。繊度は経糸が1000〜2000デシテックス、緯糸が500〜1000デシテックス、特に経糸は1500〜1800デシテックスであることが好ましい。このような繊度であれば、特に経糸の繊度が1500〜1800デシテックスであれば、シートベルトとしての十分な強度を有するとともに、エアバッグとしての作動時、端縁閉部21及び中央閉部22からのエア漏れを十分に抑えることができるため好ましい。また、マルチフィラメントの場合、このマルチフィラメントを構成するフィラメント数は特に限定されず、その繊度等によって設定することができるが、経糸の場合、50〜300本、特に100〜200本であることが好ましい。
【0048】
[4]樹脂等の含浸
袋織構造を構成する4層の織地の、少なくともガスの流入時に膨張してエアバッグとして機能する袋状部11を構成する部分は、通常、膨張時に外面となる側に、樹脂及び/又はゴムを含浸させ、気密性等を向上させることが好ましい。これにより、通気が抑えられ、十分な膨張速度が確保されるシートベルトエアバッグ1とすることができる。用いられる樹脂、ゴムとしては、例えば、クロロプレン系、シリコーン系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、フッ素系、クロロスルフォン化ポリエチレン系等の樹脂、ゴムが挙げられる。
【0049】
樹脂及び/又はゴムを含浸させる方法は特に限定されず、織地の少なくとも袋状部11を形成する部分に、樹脂及び/又はゴムを含有するエマルジョンに含浸させ、加熱して媒体を除去する等の方法が挙げられる。この場合、樹脂及び/又はゴムの付着量等によって、袋状部11の通気性を調整することができ、樹脂、ゴムの種類によっては耐熱性を向上させることもできる。この樹脂及び/又はゴムの含浸は、織物組織及び織組織等による通気性の相違等を勘案し、必要に応じて実施することが好ましいが、通常は実施される。
【0050】
尚、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施態様を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その態様において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施態様を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、車両用のシートベルトの技術分野、及びエアバッグの技術分野において利用することができる。特にベルトの長さ方向の、装着したときに肩から胸部にかけて位置することになる部分に、衝突時等にエアバッグとして機能する袋状部を備え、他のエアバッグとともに、乗員をより十分に保護することができるシートベルトエアバッグの技術分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10;車両用シート、10a;シートクッション、10b;シートバック、1;シートベルトエアバッグ、1a;一の外層、1b;他の外層、1c;一の内層、1d;他の内層、11;袋状部、12;非膨張部、21a、21b、21c、21d;端縁閉部、22;中央閉部、22a;一方側の閉部、22b;他方側の閉部、23;分割可能部、23a;切断された緯糸、3a、3b;接結部、S1、S2;接結点、41a、41b;端部閉部、42;中央閉部、42a;一方側の閉部、42b;他方側の閉部、43;分割可能部、43a;切断された緯糸、5;インフレータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータからの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部を具備し、4層袋織構造体からなるシートベルトエアバッグであって、
前記袋状部は、一対の外層と前記外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層と一の内層の幅方向の両端部、及び他の外層と他の内層の幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部、並びに前記一の内層と前記他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部、を有し、
前記中央閉部は、前記幅方向の一方側の閉部と他方側の閉部、及び前記一方側の閉部と前記他方側の閉部との間に設けられた前記幅方向に分割され得る分割可能部を備え、
前記噴出ガスの流入時に、前記分割可能部が分割され、前記袋状部が膨張することを特徴とするシートベルトエアバッグ。
【請求項2】
前記分割可能部では、前記幅方向の少なくとも1箇所で、前記袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている請求項1に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項3】
前記端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、
前記接結部における前記一の内層の経糸と前記他の内層の緯糸、及び前記一の内層の緯糸と前記他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、
前記一の内層の前記経糸及び前記他の内層の前記経糸が、前記噴出ガス流入時に切断可能である請求項1又は2に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項4】
前記4層袋織構造体の前記一対の外層の経糸密度が、前記一対の内層の経糸密度より高い請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグの製造方法であって、
前記4層袋織構造体を製織する製織工程と、
前記シートベルトエアバッグの長さ方向の開口端のうちの一端側から、前記シートベルトエアバッグの内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、前記袋状部が有する前記中央閉部が備える前記分割可能部を構成する緯糸を、前記袋状部の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程と、を備えることを特徴とするシートベルトエアバッグの製造方法。
【請求項1】
インフレータからの噴出ガスが内部に流入して膨張する袋状部を具備し、4層袋織構造体からなるシートベルトエアバッグであって、
前記袋状部は、一対の外層と前記外層の内部に配置された一対の内層とを備え、一の外層と一の内層の幅方向の両端部、及び他の外層と他の内層の幅方向の両端部、に設けられた端縁閉部、並びに前記一の内層と前記他の内層の幅方向の中央部に設けられた中央閉部、を有し、
前記中央閉部は、前記幅方向の一方側の閉部と他方側の閉部、及び前記一方側の閉部と前記他方側の閉部との間に設けられた前記幅方向に分割され得る分割可能部を備え、
前記噴出ガスの流入時に、前記分割可能部が分割され、前記袋状部が膨張することを特徴とするシートベルトエアバッグ。
【請求項2】
前記分割可能部では、前記幅方向の少なくとも1箇所で、前記袋状部の全長さに亘って緯糸が切断されている請求項1に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項3】
前記端縁閉部の幅方向の外方側に隣接して形成された接結部を有し、
前記接結部における前記一の内層の経糸と前記他の内層の緯糸、及び前記一の内層の緯糸と前記他の内層の経糸、のうちの少なくとも一方が、長さ方向に間隔をおいて織成されており、
前記一の内層の前記経糸及び前記他の内層の前記経糸が、前記噴出ガス流入時に切断可能である請求項1又は2に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項4】
前記4層袋織構造体の前記一対の外層の経糸密度が、前記一対の内層の経糸密度より高い請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載のシートベルトエアバッグの製造方法であって、
前記4層袋織構造体を製織する製織工程と、
前記シートベルトエアバッグの長さ方向の開口端のうちの一端側から、前記シートベルトエアバッグの内部に切断用治具を挿入し、長さ方向に挿通させて、前記袋状部が有する前記中央閉部が備える前記分割可能部を構成する緯糸を、前記袋状部の一端側から他端側に向かって順次切断していく緯糸切断工程と、を備えることを特徴とするシートベルトエアバッグの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−171600(P2012−171600A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38766(P2011−38766)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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