説明

シートベルト取付構造

【課題】部品点数を削減し、組立工数を削減することができるシートベルト取付構造を提供する。
【解決手段】シートベルトの端末部が連結されるとともにセンターピラーインナパネル10にボルト2で固定されるアンカーブラケット1とを備えるシートベルト取付構造であって、アンカーブラケット1は、センターピラーインナトリム14及びセンターピラーインナパネル10に貫通されて前記アンカーブラケット1の回動を阻止する回り止めピン3を有しており、回り止めピン3は、アンカーブラケット1がセンターピラーインナパネル10に固定された状態において、センターピラーインナトリム14とセンターピラーインナパネル10とに貫通されるとともにセンターピラーインナトリム14をセンターピラーインナパネル10側に押圧して固定するよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両におけるシートベルトの取付構造として、センターピラー下部にアンカーブラケットを設置して車体側に取り付ける構造が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
図7は、従来のシートベルト取付構造の構成を示した模式図である。
図7に示すように、従来のシートベルト取付構造において、シートベルト100の端末部を車体側に固定するアンカーブラケット101は、ボルト102によりセンターピラーインナパネル103の下部に取り付けられている。
【0003】
また、アンカーブラケット101には、回り止めのための爪101aが設けられており、この爪101aをセンターピラーインナトリム104とセンターピラーインナパネル103に形成した穴105に差し込むことにより、アンカーブラケット101が回転しないようになっている(例えば、下記特許文献2参照)。なお、センターピラーインナトリム104は、クリップ106等によりセンターピラーインナパネル103に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−211864号公報
【特許文献2】実開平2−126962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のシートベルトの取付構造では、センターピラーインナトリム104をセンターピラーインナパネル103に固定するために、クリップ106等を用いる構造となっているため、構造が複雑化して、部品点数が多くなり、組立工数が増加するという問題があった。
【0006】
以上のことから、本発明は、部品点数を削減し、組立工数を削減することができるシートベルト取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための第1の発明に係るシートベルト取付構造は、
車室側面を形成する車体パネルと、前記車体パネルの車室側を覆うトリムと、前記トリムの車室側に配置され、シートベルトの端末部が連結されるとともに前記車体パネルにボルトで固定されるアンカーブラケットとを備えるシートベルト取付構造であって、
前記アンカーブラケットは、前記トリム及び前記車体パネルに貫通されて前記アンカーブラケットの回動を阻止する回り止め手段を有しており、
前記回り止め手段は、前記アンカーブラケットが前記車体パネルに固定された状態において、前記トリムと前記車体パネルとに貫通されるとともに前記トリムを前記車体パネル側に押圧して固定するよう構成されている
ことを特徴とする。
【0008】
上記の課題を解決するための第2の発明に係るシートベルト取付構造は、第1の発明に係るシートベルト取付構造において、
前記回り止め手段は、前記車体パネル側に向かって突設されて前記トリム及び前記車体パネルを貫通する細軸部と、前記細軸部よりも大径に形成されて前記トリムを車体パネル側に押圧する太軸部とを有しており、
前記アンカーブラケットが前記車体パネルに固定された状態において、前記太軸部が前記車体パネルとの間に前記トリムを挟み込んで固定する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品点数を削減し、組立工数を削減することができるシートベルト取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造の構成を示した側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造の構成を示した断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの取付の様子を示した斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した断面図である。
【図7】従来のシートベルト取付構造の構成を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るシートベルト取付構造を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0012】
以下、本発明に係るシートベルト取付構造の実施例について説明する。
はじめに、本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成について説明する。
図4は、本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した斜視図である。なお、図4(a)はアンカーブラケットの表側から見た斜視図を示し、図4(b)はアンカーブラケットの裏側から見た斜視図を示している。
【0013】
また、図5は、本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した分解斜視図である。なお、図5においては、図4(a)に示したアンカーブラケットの分解斜視図を示している。
【0014】
また、図6は、本発明の実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの構成を示した断面図である。なお、図6においては、図4(a)にA−Aで示した断面における断面図を示している。
【0015】
図4〜6に示すように、本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケット1は、長尺な形状の板金部材から構成されている。アンカーブラケット1の一方の端部1aには、ボルト設置穴1d(図5参照)が形成されており、アンカーブラケット1を車体側に固定するボルト2がボルト設置穴1dに挿通された状態で設置されている。
【0016】
アンカーブラケット1の他方の端部1bには、シートベルト(図示省略)の端末部が通されて取り付けられる取付穴(以下、シートベルト取付穴4という)が形成されている。詳細には、シートベルトの端末部は、アンカーブラケット1のシートベルト取付穴4に挿通され折り返された状態で縫合されることで連結されている。アンカーブラケット1のボルト2とシートベルト取付穴4との間の部分1cには、アンカーブラケット1の回転を防止する回り止めピン3(回り止め手段)が設置されている。
【0017】
ボルト2は、アンカーブラケット1の一方の端部1aに形成されたボルト設置穴1d(図5参照)にスプリングワッシャー5を挟んで挿通されている。アンカーブラケット1を貫通したボルト2の軸部2aには、スペーサー6とワッシャー7が設置されている。
【0018】
回り止めピン3は、径の小さい細軸部3aと径の大きい太軸部3bとにより形成された段付き形状となっている。また、回り止めピン3には、軸頭部3cと尖端部3dが形成されている。回り止めピン3は、アンカーブラケット1のボルト2とシートベルト取付穴4との間に形成された回り止めピン設置穴1eに回り止めピン3の軸頭部3cを挿入し、はみ出した軸頭部3cの一部を潰して結合されている(図6参照)。
【0019】
本実施例に係るアンカーブラケット1は、長尺な形状となっており、さらに、必要に応じアンカーブラケット1のシートベルト取付穴4が形成された側の端部1bを車室内側に折り曲げることにより、本実施例に係るアンカーブラケット1を適用する車体の構造に応じて、シートベルトの端末部を所望の位置に配置できるようにシートベルト取付穴4を配置することが可能となっている。
以上が本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケット1の構成についての説明である。
【0020】
次に、本発明の実施例に係るシートベルト取付構造の構成について説明する。
図1は、本実施例に係るシートベルト取付構造の構成を示した側面図である。また、図2は、本実施例に係るシートベルト取付構造の構成を示した断面図である。なお、図2においては、図1にB−Bで示した断面における断面図を示している。また、図3は、本実施例に係るシートベルト取付構造におけるアンカーブラケットの取付の様子を示した斜視図である。
【0021】
図1〜3に示すように、本発明の実施例に係るシートベルト取付構造において、アンカーブラケット1は、車室側面を形成するセンターピラーインナパネル10(車体パネル)の下部のフロアパネル12の近傍に設置される。なお、センターピラーインナパネル10の外側にはセンターピラーアウタパネル13が設置されている(図2参照)。
【0022】
センターピラーインナパネル10の車室側には、センターピラーインナパネル10を覆うセンターピラーインナトリム14(トリム)が設けられており、アンカーブラケット1は、センターピラーインナトリム14の車室側に配置されてボルト2で固定されている。
図2,3に示すように、センターピラーインナパネル10のボルト2が固定される部位は、補強部材15とフロアパネル12とがセンターピラーインナパネル10を挟み込むように接合されることで補強されている。
【0023】
フロアパネル12とセンターピラーインナパネル10と補強部材15には、それぞれボルト2の軸部2aを挿入するための穴12a,10a,15aが形成されており、補強部材15の外側には、これら穴12a,10a,15aに合わせてナット8が溶接等により結合された状態で設けられている。また、センターピラーインナトリム14には、穴12a,10a,15aに対応した位置にボルト2の軸部2aが挿通される開口部14aが設けられている。そして、ボルト2は、これら開口部14aおよび穴12a,10a,15aに挿通され、ナット8に締結されることでアンカーブラケット1を固定している。
【0024】
センターピラーインナトリム14の開口部14aは、スペーサー6及びワッシャー7がフロアパネル12と直接接することができるように穴の径が大きくなっている。このため、アンカーブラケット1は、強度の高いフロアパネル12とセンターピラーインナパネル10と補強部材15の重なり合った部分に対して固定することができる。
【0025】
また、センターピラーインナトリム14とセンターピラーインナパネル10には、回り止めピン3を挿入するための穴10b,14bが互いに重なるように形成されている。そして、アンカーブラケット1が固定された状態で、この穴10b,14bに回り止めピン3の細軸部3aが貫通されよう構成されている。このため、回り止めピン3によりアンカーブラケット1の回転を防止することができる。
【0026】
なお、本実施例においては、回り止めピン3の細軸部3aが貫通される穴10b,14bは、ボルト2が挿通される穴10aや開口部14aよりも車体前方側に形成されており、アンカーブラケット1は、センターピラーインナパネル10に固定された状態で、長手方向が略車体前後方向を向く(すなわち、略車体前後方向に延びる)よう設置される。
【0027】
なお、回り止めピン3は、尖端部3dが形成されていることにより、穴10b,14bに回り止めピン3の細軸部3aが挿入しやすくなっている。また、回り止めピン3は、アンカーブラケット1をセンターピラーインナパネル10側に取付ける際のガイドとしての役割を果たすため、アンカーブラケット1をセンターピラーインナパネル10側に取付ける際の作業効率を向上させることができる。
【0028】
回り止めピン3の太軸部3dは、その径がセンターピラーインナトリム14の穴14bの径より大きく形成されており、細軸部3aが穴14bに貫通された状態(すなわち、アンカーブラケット1が固定された状態)でセンターピラーインナトリム14の穴14bの周縁部に当接してセンターピラーインナパネル10側へ押圧するよう構成されている
また、センターピラーインナトリム14の穴14bの周囲は、回り止めピン3の太軸部3bの形状に対応した凹部14cが形成されており、回り止めピン3の太軸部3bは、センターピラーインナトリム14の凹部14cに嵌るようになっている。
【0029】
つまり、アンカーブラケット1がボルト2によりセンターピラーインナパネル10に固定されると、回り止めピン3の太軸部3bがセンターピラーインナトリム14の凹部14cをセンターピラーインナパネル10側に押圧して凹部14cを回り止めピン3の太軸部3bとセンターピラーインナパネル10との間に挟み込む仕組みとなっている。このため、センターピラーインナトリム1をセンターピラーインナパネル10に対して固定することができる。
以上が本発明の実施例に係るシートベルト取付構造の構成についての説明である。
【0030】
なお、本実施例においては、例として、センターピラーインナパネル10の下部に設置されるアンカーブラケットについて説明したが、この他にも、クォータインナパネル等の下部に設置することも可能である。
【0031】
また、本実施例においては、例として、アンカーブラケット1のボルト2とシートベルト取付穴4との間の部分1cに回り止めピン3を配置する構成について説明したが、アンカーブラケット1の一方の端部1aに回り止めピン3を配置し、アンカーブラケット1の他方の端部1bにシートベルト取付穴4を配置し間にボルト2を配置する構成とすることも可能である。
【0032】
以上説明したように、本発明に係るシートベルト取付構造によれば、従来のシートベルト取付構造のようにクリップ106等を用いることなくセンターピラーインナトリム14をセンターピラーインナパネル10に対して固定することができるため、部品点数を削減し、組立工数を削減することができるシートベルト取付構造を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、例えば、車両におけるシートベルト取付構造において利用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 アンカーブラケット
2 ボルト
3 回り止めピン(回り止め手段)
3a 細軸部
3b 太軸部
4 シートベルト取付穴
5 スプリングワッシャー
6 スペーサー
7 ワッシャー
8 ナット
10 センターピラーインナパネル(車体パネル)
12 フロアパネル
13 センターピラーアウタパネル
14 センターピラーインナトリム(トリム)
15 補強部材
100 シートベルト
101 アンカーブラケット
101a 爪
102 ボルト
103 センターピラーインナパネル
104 センターピラーインナトリム
105 穴
106 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側面を形成する車体パネルと、前記車体パネルの車室側を覆うトリムと、前記トリムの車室側に配置され、シートベルトの端末部が連結されるとともに前記車体パネルにボルトで固定されるアンカーブラケットとを備えるシートベルト取付構造であって、
前記アンカーブラケットは、前記トリム及び前記車体パネルに貫通されて前記アンカーブラケットの回動を阻止する回り止め手段を有しており、
前記回り止め手段は、前記アンカーブラケットが前記車体パネルに固定された状態において、前記トリムと前記車体パネルとに貫通されるとともに前記トリムを前記車体パネル側に押圧して固定するよう構成されている
ことを特徴とするシートベルト取付構造。
【請求項2】
前記回り止め手段は、前記車体パネル側に向かって突設されて前記トリム及び前記車体パネルを貫通する細軸部と、前記細軸部よりも大径に形成されて前記トリムを車体パネル側に押圧する太軸部とを有しており、
前記アンカーブラケットが前記車体パネルに固定された状態において、前記太軸部が前記車体パネルとの間に前記トリムを挟み込んで固定する
ことを特徴とする請求項1に記載のシートベルト取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224294(P2012−224294A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95700(P2011−95700)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】