説明

シートベルト装置

【課題】装着状態ではタングプレートによって折り返されるシートベルトでも、その内部のガスの送りを十分にできるシートベルト装置を提供すること。
【解決手段】シートベルト装置4は、インフレータ10と、このインフレータ10から発せられるガスを送り可能に袋状に形成され、一端にリトラクタが接続されているシートベルト20と、このシートベルト20が差し込まれるベルト差込孔32を有するタングプレート30と、このタングプレート30を装着可能なバックル40とから構成されている。タングプレート30のベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面は、リトラクタからシートベルト20にテンションが作用したとき、この折り返される部位の表面と裏面との間で周長差による弛みTがシートベルト20に生じるように、湾曲状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置に関し、詳しくは、インフレータと、このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成され、一端にリトラクタが接続されているシートベルトと、このシートベルトが差し込まれるベルト差込孔を有するタングプレートと、このタングプレートを装着可能なバックルとを備えたシートベルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8〜9に示すように、シートベルト120のアンカー側の端部(リトラクタ側の端部と反対側の端部)にインフレータを接続させておき、車両に追突が発生すると、この接続させたインフレータから発せられるガスをラップベルト120a(シートベルト120のうち、アンカー(図示しない)とタングプレート130との間のベルト)の内部からショルダーベルト120b(シートベルト120のうち、タングプレート130とシートバックの肩口(図示しない)との間のベルト)の内部へ送り、この送られたガスによってシートベルト120(ラップベルト120aとショルダーベルト120b)を膨らますことができるシートベルト装置が知られている。このようにシートベルト120を膨らませることにより乗員の保護を図ることができる。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−256099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、シートベルト120の装着状態では、シートベルト120はタングプレート130によって折り返されるため、この折り返される部位において、ガスの送りが十分でなかった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、装着状態ではタングプレートによって折り返されるシートベルトでも、その内部のガスの送りを十分にできるシートベルト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、インフレータと、このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成され、一端にリトラクタが接続されているシートベルトと、このシートベルトが差し込まれるベルト差込孔を有するタングプレートと、このタングプレートを装着可能なバックルと、を備えたシートベルト装置であって、タングプレートのベルト差込孔の内面のうち、シートベルトが折り返される側の内面は、リトラクタからシートベルトにテンションが作用したとき、この折り返される部位の表面と裏面との間で周長差による弛みがシートベルトに生じるように、湾曲状に形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、シートベルトの表面のうち、タングプレートによって折り返される部位には、その幅方向の中央に弛みが生じることとなる。そのため、シートベルトが膨らんでいくとき、シートベルトの表面のうち、タングプレートによって折り返される部位は、その内部が塞がれぎみの状態であっても、この撓みにより風路を確保できる。したがって、シートベルトのうち、タングプレートによって折り返される部位でも、その内部でのガスの送りを十分にできる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシートベルト装置であって、タングプレートのベルト差込孔には、シートベルトを差し込んだ残りの部分を塞ぐ塞ぎ体が形成されていることを特徴とする構成である。
この構成によれば、膨らんだシートベルトがタングプレートに干渉することがないように、ベルト差込孔が十分大きく形成されていても、シートベルトが膨らんでいないとき、シートベルトの反転を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係るシートベルト装置を適用した助手席の全体斜視図であり、シートベルトを装着した状態を示している。
【図2】図2は、図1の一部拡大図であり、タングプレートによって折り返された部位のシートベルトの拡大図である。
【図3】図3は、図2のタングプレートの平面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図3において、シートベルトが膨らんだ状態を示している。
【図6】図6は、本発明の実施例2に係るシートベルトの拡大図であり、タングプレートによって折り返された部位の拡大図である。
【図7】図7は、図6のタングプレートの平面図である。
【図8】図8は、従来技術に係るシートベルトの拡大図であり、タングプレートによって折り返された部位の拡大図である。
【図9】図9は、図8のタングプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
まず、本発明の実施例1を説明する。はじめに、実施例1に係る助手席1を説明する。この助手席1は、シートクッション2と、シートバック3と、シートベルト装置4とから構成されている(図1参照)。これら構成部材2、3、4のうち、シートベルト装置4について説明していく。なお、シートクッション2と、シートバック3とは、公知の構成で良いため、その詳細な説明は省略することとする。
【0011】
このシートベルト装置4は、主として、インフレータ10と、シートベルト20と、タングプレート30と、バックル40とから構成されている。以下に、これら構成部材10、20、30、40を個別に説明していく。
【0012】
はじめに、インフレータ10から説明していく。このインフレータ10は、高圧のガスを発する部材であり、シートクッション2のクッションフレーム(図示しない)のアウタ側に取り付けられている。このインフレータ10は、ECU(図示しない)が車両に前突が発生したことを検出すると、高圧のガスを発するように構成されている。
【0013】
次に、シートベルト20を説明する。このシートベルト20は、助手席1の乗員を拘束するベルト部材である。このシートベルト20の一端側は、アンカー50を介してシートクッション2のクッションフレーム(図示しない)に締結されている。一方、このシートベルト20の他端側は、シートバック3に取り付けられているリトラクタ(図示しない)に締結されている。
【0014】
また、このシートベルト20は、その一端側から他端側に向けてガスを送り可能な風路26を有する略筒状に形成されている。また、このシートベルト20の一端側の内部(風路26)とインフレータ10とは、ホース12を介して接続されている。これにより、インフレータ10から発せられたガスをシートベルト20の内部へ送ることができる。なお、このシートベルト20は、通常時(インフレータが作動する前の常時)、その両面(表面と裏面)が略帯状に折り重ね合わされた状態を成すように構成されている。
【0015】
次に、図2〜4を参照して、タングプレート30を説明する。タングプレート30は、後述するバックル40に装着可能なプレート部材である。このタングプレート30には、シートベルト20を差し込み可能なベルト差込孔32が形成されている。このタングプレート30は、そのベルト差込孔32にシートベルト20を差し込んだ状態で、シートベルト20に引っ掛けられている。
【0016】
ここで、ベルト差込孔32について詳述すると、このベルト差込孔32は、タングプレート30の厚み方向を貫通するように略矩形状に形成されている。また、このベルト差込孔32は、シートベルト20が膨らんだときでも、この膨らんだシートベルト20がタングプレート30に干渉することがないように、十分大きく形成されている。
【0017】
このベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面32aは、リトラクタからシートベルト20にテンションが作用したとき、このシートベルト20の折り返される部位の表面と裏面との間で周長差による弛みTがシートベルト20に生じるように、シートベルト20の幅方向に対して凹みを成す湾曲状に形成されている。
【0018】
ここで言う表面と裏面とは、折り返し部位における表側の生地と裏側の生地の意味であり、ラップベルト20aとショルダーベルト20bの意味ではない。この湾曲の度合いは、リトラクタからシートベルト20にテンションが作用したとき、シートベルト20が折り返される側の内面32aとシートベルト20の幅方向の中央との間に隙Sを有するように形成されている(図3参照)。
【0019】
これにより、シートベルト20が膨らんでいくとき、タングプレート30によって折り返される部位において、シートベルト20の内部が塞がれぎみの状態であっても、この隙Sにより風路26を確保できる。したがって、この確保された風路26を介して、ラップベルト20aの内部からショルダーベルト20bの内部へ十分にガスを送ることができる。
【0020】
また、このベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面と向かい合う内面32bには、ゴム製のベロ36が形成されている。このベロ36は、ベルト差込孔32のうち、シートベルト20を差し込んだ残りの部分を略塞ぐように、略矩形状に形成されている。このベロ36が、特許請求の範囲に記載の「塞ぎ体」に相当する。なお、このベロ36は、タングプレート30に対して一体的に成形(例えば、二色成形)されている。
【0021】
最後に、バックル40を説明する。バックル40は、タングプレート30を装着可能な受け部材であり、シートクッション2のクッションフレーム(図示しない)のインナ側に取り付けられている。そして、シートベルト20を助手席1の乗員に掛け渡してタングプレート30をバックル40に装着すると、シートベルト20によって乗員を拘束できる(図1参照)。
【0022】
これらインフレータ10と、シートベルト20と、タングプレート30と、バックル40とからシートベルト装置4は構成されている。そして、助手席1は、公知のシートクッション2と、公知のシートバック3と、上述したシートベルト装置4とから構成されている。
【0023】
続いて、図2〜5を参照して、上述したシートベルト装置4の作用を説明する。ECU(図示しない)が車両に追突が発生したことを検出すると、インフレータ10からガスが発せられる。この発せられたガスは、ホース12を介してシートベルト20(ラップベルト20a)の一端側の内部へ送られる。
【0024】
すると、シートベルト20(ラップベルト20a)の風路26にガスが送られるため、このガスが送られたシートベルト20(ラップベルト20a)は、その一端側からシートバック3側に向けて順に膨らんでいく(図2〜4に示す状態から図5に示す状態へと膨らんでいく)。このとき、シートベルト20は、ベロ36を折り曲げながら膨らんでいく。
【0025】
なお、インフレータ10から発せられたガスは高圧であるため、シートベルト20(ラップベルト20aとショルダーベルト20b)は瞬時に膨らんでいく。このように膨らんでいくと、単に、乗員を拘束する通常のシートベルト(ベルトが膨らむことないシートベルト)20と比較すると、車両に追突が発生したときの乗員の初期拘束性能を向上させることができる。
【0026】
また、このように膨らんでいくと、車両に追突が発生した後にシートベルト20に対して乗員から荷重が作用しても、この作用した荷重の面圧が低下するため、その反力による乗員への衝撃も減少させることができる。このようにして、乗員の保護を図ることができる。
【0027】
本発明の実施例1に係るシートベルト装置4は、上述したように構成されている。この構成によれば、タングプレート30のベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面32aは、リトラクタからシートベルト20にテンションが作用したとき、この折り返される部位の表面と裏面との間で周長差による弛みTがシートベルト20に生じるように湾曲状に形成されている。これにより、シートベルト20の表面のうち、タングプレート30によって折り返される部位には、その幅方向の中央に弛みTが生じることとなる(図2、3参照)。そのため、シートベルト20が膨らんでいくとき、シートベルト20の表面のうち、タングプレート30によって折り返される部位は、その内部が塞がれぎみの状態であっても、この撓みTにより風路26を確保できる。したがって、この確保された風路26を介して、ラップベルト20aの内部からショルダーベルト20bの内部へ十分にガスを送ることができる。すなわち、シートベルト20のうち、タングプレート30によって折り返される部位でも、その内部でのガスの送りを十分にできる。
【0028】
また、この構成によれば、タングプレート30のベルト差込孔32には、ベロ36が形成されている。そのため、膨らんだシートベルト20がタングプレート30に干渉することがないように、ベルト差込孔32が十分大きく形成されていても、シートベルト20が膨らんでいないとき、シートベルト20の反転を防止できる。
【0029】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。この実施例2のシートベルト装置4は、既に説明した実施例1のシートベルト装置4と比較すると、タングプレート30のベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面32aに形成されている湾曲を逆にした形態である。なお、以下の説明にあたって、実施例1と同一もしくは均等な構成の部材には、図面において同一符号を付すことで重複する説明は省略することとする。
【0030】
図6、7に示すように、タングプレート30のベルト差込孔32の内面のうち、シートベルト20が折り返される側の内面32aは、シートベルト20の幅方向に対して凸を成す湾曲状に形成されている。この湾曲の度合いは、リトラクタからシートベルト20にテンションが作用したとき、シートベルト20が折り返される側の内面32aとシートベルト20の両縁との間に隙S、Sを有するように形成されている(図7参照)。
【0031】
本発明の実施例2に係るシートベルト装置4は、上述したように構成されている。この構成によれば、タングプレート30によって折り返される部位のシートベルト20の裏面には、その幅方向の両縁側に弛みTが生じることとなる(図7参照)。そのため、この実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
上述した内容は、あくまでも本発明の一実施の形態に関するものであって、本発明が上記内容に限定されることを意味するものではない。
各実施例では、助手席1を例に説明した。しかし、これに限定されるものでなく、運転席、後部座席等であっても構わない。
【0033】
また、各実施例では、シートベルト20そのもの(ラップベルト20aとショルダーベルト20b)を膨らませる例を説明した。しかし、これに限定されるものでなく、ラップベルト20aとショルダーベルト20bとにエアバック袋を設けておき、この設けたエアバック袋を膨らませても構わない。その場合、シートベルト20そのものを膨らませるより、膨らませの展開量を大きく確保できる。
【符号の説明】
【0034】
4 シートベルト装置
10 インフレータ
20 シートベルト
30 タングプレート
32 ベルト差込孔
32a 内面
36 ベロ(塞ぎ体)
40 バックル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータと、
このインフレータから発せられるガスを送り可能に袋状に形成され、一端にリトラクタ が接続されているシートベルトと、
このシートベルトが差し込まれるベルト差込孔を有するタングプレートと、
このタングプレートを装着可能なバックルと、を備えたシートベルト装置であって、
タングプレートのベルト差込孔の内面のうち、シートベルトが折り返される側の内面は、リトラクタからシートベルトにテンションが作用したとき、この折り返される部位の表面と裏面との間で周長差による弛みがシートベルトに生じるように、湾曲状に形成されていることを特徴とするシートベルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシートベルト装置であって、
タングプレートのベルト差込孔には、シートベルトを差し込んだ残りの部分を塞ぐ塞ぎ体が形成されていることを特徴とするシートベルト装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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