説明

シートロールのシート除去装置

【課題】芯材に巻かれた長尺なシートを十分に分散した状態でシートロールから自動的に除去できるようにして、作業効率の向上を図ることのできるシートロールのシート除去装置を提供する。
【解決手段】シートロール2の外表面を軸方向に沿って切断する切断装置11と、シートロール2の外表面を切断装置11による切断位置を中心として相反方向に押し開く展開装置12を設ける。展開装置12は一対の上段駆動ローラ23L,23Rによって構成し、各上段駆動ローラ23L,23Rはばね24によってシートロール2の軸心の近傍方向に付勢する。切断装置11と展開装置12により、シートロール2の外表面からシート4をシート片4Aにして剥き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯材に巻かれたシートを材料として再使用するためにシートロールからシートを除去するシートロールのシート除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂等から成る薄肉のシート材は、長尺な連続したシートとして造形され、円筒状の芯材に連続的に巻かれてシートロールとされる。
このシートロールは、シートを用いる製造設備において、所定の幅と長さに切断されて用いられるが、通常、幅方向で切断された端部の余肉部は粉砕装置に投入してシートロールの製造工程で材料として再使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−100163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートロールの製造に際しては、予め幅の広い(軸長の長い)ロールとして造形しておき、そのロールを、使用するシートの幅に合わせて複数本に切断することがある。この場合、切断したロールの端部は、余肉部だけが巻かれたシートロールとなるため、芯材に巻かれたシートはシートロールから除去されて再使用のために粉砕装置に投入される。
この作業は、作業者による手作業や、機械による巻き出し等によって行われるが、余肉部のシートロールの幅が狭い場合には、シートロールが十分に分散されずに粉砕装置に落下し、粉砕装置でのトラブルの原因となり易い。
また、手作業でシートをシートロールから除去する場合には、作業者の負担が大きいうえに、作業に大幅な時間を要してしまう。
【0005】
そこでこの発明は、芯材に巻かれた長尺なシートを十分に分散した状態でシートロールから自動的に除去できるようにして、作業効率の向上を図ることのできるシートロールのシート除去装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るシートロールのシート除去装置では、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
請求項1に係る発明は、長尺なシートが芯材に連続的に巻かれたシートロールから前記シートを除去するシートロールのシート除去装置であって、前記シートロールの外表面を軸方向に沿って切断する切断装置と、前記シートロールの外表面を前記切断装置による切断位置を中心として相反方向に押し開く展開装置と、を備え、前記切断装置と展開装置とが前記シートロールの半径方向に略沿う方向に進退操作可能とされていることを特徴とするものである。
これにより、切断装置と展開装置がシートロールの軸心に向かう方向に変位すると、切断装置がシートロールの外表面を軸方向に沿って切断し、展開装置がシートロールの外表面を切断位置を中心として押し開くようになる。これにより、シートロール上のシートは、短尺なシート片となってシートロールの外表面から順次分散して剥き取られる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係るシートロールのシート除去装置において、前記シートロールは、軸心が略水平に向くように設置され、前記切断装置は、前記シートロールの外表面の頂部を軸方向に沿って切断する位置に配置されていることを特徴とするものである。
これにより、切断装置で切断されたシート片は切断位置を中心として左右に重力がバランス良く作用し、安定的にシートロールから剥き取られるようになる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に係るシートロールのシート除去装置において、前記展開装置は、前記シートロールの外表面に接して回転する駆動ローラによって構成されていることを特徴とするものである。
これにより、駆動ローラの回転がシートロールの外表面に作用することにより、外表面からシート片が安定的に剥き取られるようになる。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項3に係るシートロールのシート除去装置において、前記駆動ローラは、前記シートロールの軸心の近傍方向に向かってばねによって付勢されていることを特徴とするものである。
これにより、駆動ローラからシートロールの外表面にはばねによる圧接力が常に作用するようになる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、切断装置によってシートロールの外表面を軸方向に沿って切断しつつ、展開装置によってシートロールの外表面を切断位置を中心として押し開くことにより、シートロールの外表面からシートを短尺なシート片にして順次自動的に剥ぎ取ることができるため、シートの除去作業効率を高めることができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、シートロールが軸心を略水平に向けるように設置されるとともに、切断装置がシートロールの外表面の頂部を軸方向に沿って切断する位置に設置されているため、切断されたシート片を重力の作用を利用して安定的に剥き取ることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、展開装置として駆動ローラを用いるため、極めて簡単な構造でありながら、シート片を順次安定的に剥き取ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、駆動ローラをシートロールの軸心の近傍方向に付勢するばねが設けられているため、シートの除去の進行に拘わらず駆動ローラによる剥き取りを安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施形態のシート除去装置の除去開始初期における側面図である。
【図2】この発明の一実施形態のシート除去装置の徐器作業後期における側面図である。
【図3】この発明の一実施形態のシート除去装置の除去開始初期における模式的な斜視図である。
【図4】この発明の一実施形態のシート除去装置の除去作業中期における模式的な斜視図である。
【図5】この発明の一実施形態のシート除去装置の除去作業後期における模式的な斜視図である。
【図6】この発明の他の実施形態のシート除去装置の除去開始初期における側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一実施形態のシート除去装置1を図面に基づいて説明する。
図面において、2は、このシート除去装置1で扱うシートロールである。このシートロール2は、予め広い幅で(長い軸長で)成形されたシートロールの連続体を所定幅に切断したときに、端部に残った幅の狭いロールであり、円筒状の芯材3の外周面に幅の狭い(100mm以下。)長尺な樹脂製のシート4が連続して巻かれている。
【0016】
シート除去装置1は、軸心が水平に向くようにシートロール2を保持するロール保持ユニット10と、シートロール2の外表面を軸方向に沿って切断する切断装置11と、切断装置11で切断されたシートロール2の切断部を相反方向に押し開く展開装置12と、切断装置11と展開装置12を保持する昇降フレーム13と、設置ベース14に立設されて昇降フレーム13を昇降可能に案内するガイドポスト15と、を備えている。
【0017】
ロール保持ユニット10は、設置ベース14に固定された一対のフレーム16L,16Rにそれぞれ下段駆動ローラ17L,17Rと、中段駆動ローラ18L,18Rが保持されている。これらの各駆動ローラ17L,17R,18L,18Rは、シートロール2と平行になるように配置され、これらの上面にシートロール2が線接触状態で載置されるようになっている。この実施形態の場合、下段駆動ローラ17L,17Rはフレーム16L,16Rの下部に固定設置されており、中段駆動ローラ18L,18Rは、フレーム16L,16Rの上部に変位可能に支持されている。下段駆動ローラ17L,17Rは相互に一定幅離間して配置され、中段駆動ローラ18L,18Rは相互に近接する方向にばね19,19によって付勢されている。
【0018】
また、左右の下段駆動ローラ17L,17Rの間の離間スペースはシートロール2から除去されたシート片4Aの排出口とされ、その排出口の下方にシート片4Aの回収容器20が配置されている。下段駆動ローラ17L,17Rと中段駆動ローラ18L,18Rは、上面に載置されたシートロール2からシート片4Aを排出口に引き込む方向に駆動される。具体的には、図中左側に位置される下段駆動ローラ17Lと中段駆動ローラ18Lは、図中時計回りに駆動され、図中右側に位置される下段駆動ローラ17Rと中段駆動ローラ18Rは、図中反時計回りに駆動される。
なお、回収容器20に収容されたシート片4Aは、ある程度溜まった時点で再使用のための粉砕装置(図示せず)まで搬送され、その粉砕装置に投入される。ただし、排出口の下方にエアによる搬送装置を設け、その搬送装置によってシート片4Aを粉砕装置に連続的に投入するようにしても良い。
また、ロール保持ユニット10には、幅の狭いシートロール2の倒れを規制する図示しない倒れ規制機構が設けられている。
【0019】
さらに、ロール保持ユニット10には、シートロール2の芯材3の回転を規制するための図示しない回転規制機構が設けられている。この回転規制機構は、例えば、芯材3の両端部に固定治具を相対回転不能に取り付け、その固定治具を固定ポストに昇降可能に係止させたものであっても良い。
【0020】
切断装置11は、円盤状の歯面が回転駆動されるロータリー式のカッター21が進退駆動機構22を介して昇降フレーム13に取り付けられた構成とされている。カッター21は、ロール保持ユニット10上に設置されたシートロール2に対し、その外表面の頂部を軸方向に沿って切断し得るように進退駆動装置22に取り付けられ、進退駆動装置22は、カッター21をシートロール2の軸方向に沿う方向にスライド変位させるようになっている。
【0021】
また、展開装置12は、ロール保持ユニット10上に設置されたシートロール2の外表面に接触して回転する一対の上段駆動ローラ23L,23R(駆動ローラ)によって構成されている。上段駆動ローラ23L,23Rは、ロール保持ユニット10に保持されたシートロール2と平行になるように切断装置11を間に挟む左右両側位置に配置され、昇降フレーム13に進退変位可能に支持されている。そして、各上段駆動ローラ23L,23Rは、シートロール2の軸心の近傍方向に向かってばね24によって付勢されている。
上段駆動ローラ23L,23Rは、シートロール2上の切断装置11による切断部を相反方向に押し開くように駆動される。具体的には、図中左側に位置される上段駆動ローラ23Lは、図中時計回りに駆動され、図中右側に位置される上段駆動ローラ23Rは、図中反時計回りに駆動される。
【0022】
また、昇降フレーム13は、作業者による手操作、若しくは、図示しない駆動アクチュエータの動力によって昇降操作される。図中25、作業者が手で操作する場合に、昇降フレーム13の下降を停止させるためのストッパである。このストッパ25は、シートロール2上の継テープ26(シート4を継ぎ合わせるためのテープ。図4参照。)のある高さ位置に適宜固定し、昇降フレーム13と当接することによって昇降フレーム13の下降を停止させる。
なお、昇降フレーム13を駆動アクチュエータによって昇降させる場合には、継テープ26の位置や芯材3の位置を検出するセンサを設置しておき、そのセンサが継テープ26の位置や芯材3の位置を検出したとき駆動アクチュエータを自動停止させるようにしても良い。
【0023】
このシート除去装置1の作動について説明する。
最初に、シート4を除去するシートロール2をロール保持ユニット10の下段駆動ローラ17L,17Rと中段駆動ローラ18L,18Rの上面に載置し、図示しない倒れ規制機構によってシートロール2の倒れを規制する。このとき、シートロール2の重量によって中段駆動ローラ18L,18Rはばね19の力に抗して間隔が開き、シートロール2が下段駆動ローラ17L,17Rと中段駆動ローラ18L,18Rに線接触した状態で保持されることになる。
【0024】
この状態から、例えば、作業者が手で昇降フレーム13を下降させていくと、切断装置11のカッター21がシートロール2の頂部に接触し、展開装置12の一対の上段駆動ローラ23L,23Rがカッター21の両脇でシートロール2の外周面に当接するようになる。
この状態で、図1,図3に示すように、切断装置11と展開装置12をロール保持ユニット10の駆動ローラ17L,17R,18L,18Rとともに作動させると、切断装置11は、カッター21の回転と進退駆動機構22による軸方向の移動によってシートロール2の頂部を軸方向に沿って切断し、展開装置12は、切断部を中心としてシート4を左右に押し開くようになる。こうしてシート4が左右に押し開かれると、シートロール2の外表面から短尺のシート4Aが切り出され、そのシート片4Aは駆動ローラ17L,17R,18L,18Rの回転によって下段駆動ローラ17L,17R間の排出口に送り出され、回収容器20内に落下する。
【0025】
このまま作業者が昇降フレーム13を下降させていくと、シートロール2の外表面のシート4が短尺のシート片4Aとなって連続的に剥き取られ、そのシート片4Aが回収容器20内に収容される。
【0026】
また、この作業の途中で、図4に示すようにシートロール2上に継テープ26が現れると、昇降フレーム13がストッパ25に当接することによって昇降フレーム13の下降が停止する。このとき、装置全体を停止させ、継テープ26部分を取り除く。これにより、回収容器20内に材質の異なる継テープ26が混入するのを防止する。そして、継テープ26の除去を終了した時点で作業を再開する。
こうして、作業を再開し、図2,図5に示すように芯材3が現れると、その時点で装置全体を停止させ、昇降フレーム13を上昇させて芯材3をロール保持ユニット10から取り除く。
【0027】
以上のように、このシート除去装置1においては、切断装置11でシートロール2の外表面を軸方向に沿って切断しつつ、展開装置12の上段駆動ローラ23L,23Rで押し開いてシートロール2の外表面からシート4を短尺のシート片4Aにして順次剥き取ることができるため、粉砕装置でトラブルを招くことのない十分に分散された状態でシート4を除去し回収することができる。したがって、このシート除去装置1を採用することにより、シート4の除去作業効率を高めることができる。
【0028】
また、このシート除去装置1では、シートロール2が軸心を水平にしてにロール保持ユニット10上に設置され、切断装置11のカッター21がシートロール2の頂部を軸方向に沿って切断する位置に設置されているため、切断されたシート片4Aを重力の作用を利用してシートロール2から安定的に剥き取ることができる。
【0029】
また、この実施形態のシート除去装置1では、切断されたシートロール2の外表面を押し開く展開装置12として一対の上段駆動ローラ23L,23Rを用いているため、コンパクト化が可能な極めて簡単な構造でありながら、シート片4Aを一枚、若しくは、少数枚ずつシートロール2から安定的に剥き取ることができる。
【0030】
そして、このシート除去装置1の場合、展開装置12の各上段駆動ローラ23L,23Rがばね24によってシートロール2の軸心の近傍方向に向けて付勢されているため、シート4の除去の進行に拘わらず上段駆動ローラ23L,23Rをシートロール2の外面に常時安定した力で押し付けることができる。このため、上段駆動ローラ23L,23Rによるシート片4Aの剥き取りを常時安定的に行うことができる。
【0031】
図6は、この発明の他の実施形態のシート除去装置101を示す図である。なお、図6においては、上記の実施形態と同一部分に同一符号を付してある。
この実施形態のシート除去装置101は、シートロール2の外表面を軸方向に沿って切断する切断装置11と、展開装置である上段駆動ローラ23L,23Rが上下方向に昇降する点等の基本的な構成は、上記の実施形態と同様であるが、シートロール2の芯材3が設置ベース14側に固定され、シート片4Aの剥き取りの進行に応じて下段駆動ローラ17L,17Rが上昇する点が大きく異なっている。
【0032】
すなわち、このシート除去装置101では、シートロール2の芯材3が図示しない回転規制機構を介して設置ベース14側に固定され、下段駆動ローラ17L,17Rが下部側昇降フレーム31を介してガイドポスト15に昇降可能に支持されている。そして、下部側昇降フレーム31は、上部側の昇降フレーム13の下降作動と同期して上昇作動するようになっている。
このシート除去装置101の場合も、上記の実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0033】
なお、この発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、切断装置としてロータリー式のカッターを用いているが、切断装置はロータリー式のものに限らず、回転しないタイプのカッターを用いることも可能である。また、上記の実施形態においては、一対の駆動ローラによって展開装置を構成しているが、展開装置はこの構成に限らず、高圧エアを用いてシートロールを押し開くようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
1…シート除去装置
2…シートロール
3…芯材
4…シート
11…切断装置
12…展開装置
23L,23R…上段駆動ローラ(駆動ローラ,展開装置)
24…ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシートが芯材に連続的に巻かれたシートロールから前記シートを除去するシートロールのシート除去装置であって、
前記シートロールの外表面を軸方向に沿って切断する切断装置と、
前記シートロールの外表面を前記切断装置による切断位置を中心として相反方向に押し開く展開装置と、を備え、
前記切断装置と展開装置とが前記シートロールの半径方向に略沿う方向に進退操作可能とされていることを特徴とするシートロールのシート除去装置。
【請求項2】
前記シートロールは、軸心が略水平に向くように設置され、
前記切断装置は、前記シートロールの外表面の頂部を軸方向に沿って切断する位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシートロールのシート除去装置。
【請求項3】
前記展開装置は、前記シートロールの外表面に接して回転する駆動ローラによって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシートロールのシート除去装置。
【請求項4】
前記駆動ローラは、前記シートロールの軸心の近傍方向に向かってばねによって付勢されていることを特徴とする請求項3に記載のシートロールのシート除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−1480(P2013−1480A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132247(P2011−132247)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000106726)シーアイ化成株式会社 (267)
【Fターム(参考)】