説明

シート処理装置

【課題】大面積の被処理物を処理可能なシート処理装置を用いて小さな被処理物を処理する際にも、電力を浪費し難く且つ処理能力の高いシート処理装置を提供することにある。
【解決手段】カットシート状の被処理物Pに所定の操作を行う処理装置と、上流側から供給される被処理物Pを静電吸着によって支持可能な吸着支持体3と、吸着支持体3を処理装置に対して移動させる搬送機構M1と、吸着支持体3に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、処理装置による操作を終えた被処理物Pを吸着支持体3から回収する回収手段とを備え、吸着支持体3には、吸着力発生部によって各別に静電吸着力を制御可能な複数の吸着領域2a,2b,2c,2dを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カットシート状の被処理物の面に所定の操作を行う処理装置と、上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、吸着支持体を処理装置に対して移動させる搬送機構と、吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部とを備えたシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシート処理装置に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。この特許文献1に記されたシート処理装置では、吸着支持体は回転自在に支持されたドラムと、ドラムの外周面に貼り付けられた静電吸着板とで構成され、搬送機構は同ドラムを回転駆動するモータで構成され、吸着力発生部はドラム内に配置された高圧電源装置で構成されている。また、処理装置としては、記録媒体(被処理物)に画像などを形成する記録手段や、記録媒体に記された情報を取得する読取手段などを設けることが例示されている。
【0003】
特許文献1に記されたシート処理装置を用いて、被処理物の面に同上のような操作を行う際には、静電吸着板に記録媒体を静電吸着させ、ドラムを回転させながら処理装置による処理を行い、同処理を終えた記録媒体を静電吸着板から回収することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−193492号公報(0021段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記されたシート処理装置では、静電吸着板に対する記録媒体の静電吸着と回収を繰り返す間に、静電吸着板に形成された静電場が記録媒体によって乱され、静電吸着力が全体的に又は局部的に低下する現象が生じ、記録媒体の一部が静電吸着板から浮き上がって円滑な操作ができない等の支障を生じる虞があった。この問題は、吸着力発生部による高電圧の印加をOFF操作して静電吸着力を一旦解除し、印加を再度ON操作する一連のリフレッシュ操作によって解決可能と考えられるが、静電吸着板の全領域に対して高電圧の印加をOFF操作すれば、被処理物を支持できない期間が生じるため処理能力を十分に高めることができない虞がある。
【0006】
同様に、特許文献1に記されたシート処理装置において、例えばA3サイズなど大面積の記録媒体を処理するためにはドラムおよび静電吸着板が大型化したシート処理装置となるが、吸着力発生部による静電吸着力のON/OFF操作は、常に静電吸着板の全領域に対して一括して行われるので、そのような大型のシート処理装置を用いてハガキ大などの小さな記録媒体を処理する際には、静電吸着板のうちで記録媒体を支持しない領域に静電吸着力を発生させる電力が無駄であった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術によるシート処理装置が与える課題に鑑み、静電吸着板の静電吸着力を高く保持可能であり、しかも、処理能力の高いシート処理装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、大面積の被処理物を処理可能なシート処理装置を用いて小さな被処理物を処理する際などにも、電力を無駄に消費に難いシート処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるシート処理装置の第1の特徴構成は、
カットシート状の被処理物の面に所定の操作を行う処理装置と、
上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、
前記吸着支持体を前記処理装置に対して移動させる搬送機構と、
前記吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、
前記処理装置による操作を終えた被処理物を前記吸着支持体から回収する回収手段と、を備え、
前記吸着支持体には、前記吸着力発生部によって各別に静電吸着力を制御可能な複数の吸着領域が設けられている点にある。
【0010】
本発明の第1の特徴構成によるシート処理装置では、吸着支持体の一部の静電吸着力が低下した際などに、吸着支持体の全領域をOFF操作するのではなく、静電吸着力が低下した吸着領域のみを一旦OFF操作して再びON操作する方法によって、被処理物を支持できない期間を生じさせることなく、吸着支持体の全体としての静電吸着力を常に一定以上のレベルに保持できる。したがって、被処理物に対する処理能力を長期間に亘って高く保持可能なシート処理装置が得られた。
【0011】
本発明の他の特徴構成は、各吸着領域に対して静電吸着力のON/OFF操作を交互に行う制御装置を備えている点にある。
【0012】
本構成であれば、常時いずれかの吸着領域によって被処理物を吸着支持体に静電吸着している状態を保ちながら、高電圧印加のON/OFF操作を交互に行うことで静電吸着力のリフレッシュ操作ができる。その結果、処理能力と静電吸着力の双方を高く保持可能なシート処理装置が得られた。
【0013】
本発明の他の特徴構成は、前記制御装置が、各吸着領域による被処理物の処理履歴情報に基づいて静電吸着力のON/OFF操作を行う点にある。
【0014】
本構成であれば、リフレッシュ操作のための高電圧印加のON/OFF操作を、被処理物の処理履歴情報、すなわち処理した被処理物の枚数や処理累積面積など基づいて判定される適切な頻度やタイミングで行うことができるので、単に一通りのインターバルでON/OFF操作を繰り返す構成に比して、電力消費量を抑制することができる。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、被処理物の表面状態に関する情報に基づいて各吸着領域に対する静電吸着力の大きさを制御する制御装置を備えている点にある。
【0016】
本構成であれば、リフレッシュ操作のための高電圧印加のON/OFF操作を、被処理物の表面状態に関する情報、すなわち被処理物の面質、面積、吸着される面に既に画像が印刷済みか否か、など基づいて判定される適切な頻度やタイミングで行うことができるので、単に一通りのインターバルでON/OFF操作を繰り返す構成に比して、電力消費量を抑制することができる。
【0017】
本発明によるシート処理装置の第5の特徴構成は、
カットシート状の被処理物に所定の操作を行う処理装置と、
上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、
前記吸着支持体を前記処理装置に対して移動させる搬送機構と、
前記吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、
前記処理装置による操作を終えた被処理物を前記吸着支持体から回収する回収手段と、を備え、
前記吸着支持体には、前記吸着力発生部によって各別に静電吸着力を制御可能な複数の吸着領域が設けられており、且つ、
被処理物のサイズに応じて、各吸着領域に対する静電吸着力の制御を行う制御装置を備えている点にある。
【0018】
本発明の第5の特徴構成によるシート処理装置では、例えば、処理可能な最大の被処理物よりも小さいサイズの被処理物を処理する際などに、最も外側の吸着領域など、シートの吸着に関与しない一部の吸着領域の静電吸着力を継続的に弱めに設定した状態またはOFFにした状態で処理する使用方法が可能なり、結果的に電力を無駄に消費し難いシート処理装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るシート処理装置を具現化したインクジェットプリンタの構成図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの吸着支持体を示す平面図である。
【図3】図1のインクジェットプリンタの吐出ユニットを示す平面図である。
【図4】図3の吐出ユニットを示す斜視図である。
【図5】同色のプリントヘッドどうしの位置関係を示す説明図である。
【図6】静電吸着シートに対する印加パターンを示す説明図である。
【図7】制御ユニットを示すブロック図である。
【図8】静電吸着シートに対する印加パターンの別形態を示す説明図である。
【図9】回収揺動体に隣接配置された塵埃除去手段を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るシート処理装置の一実施形態をなすインクジェットプリンタ100を示す。
【0021】
(インクジェットプリンタの概略構成)
このインクジェットプリンタ100は、その筐体C内に、カットシート状の被処理物としてのペーパーP(記録媒体の一例)を外周面に支持可能な吸着支持体3と、吸着支持体3を横向きの軸心X1廻りで回転駆動するためのモータM1と、吸着支持体3に支持されたペーパーPに対して微細なインク滴を吐出して画像を形成する吐出ユニット6(処理装置の一例)と、各部材を駆動制御する制御ユニット50とを有する。吐出ユニット6には、多数の微小な吐出ノズルをペーパーPの幅方向(主走査方向)に並置したインクジェット式のプリントヘッド9が設けられている。
【0022】
吸着支持体3を回転駆動するモータM1は、吸着支持体3を吐出ユニット6に対して前記主走査方向とほぼ直行する副走査方向に移動させる搬送機構の役目を果たす。
吐出ユニット6は、モータM1によって回転駆動される吸着支持体3の周速度と同期したタイミングで、吸着支持体3に支持されたペーパーPの表面にインクを吐出することで、ペーパーPに画像形成(所定の操作の一例)を行う。
【0023】
インクジェットプリンタ100は、注文情報処理部を備えた操作ステーション200とLANケーブルなどを介して接続されており、制御ユニット50には、操作ステーション200から送られてくるプリントジョブとしての画像データを順次格納し、同画像データに基づいてモータM1、吐出ユニット6などの駆動を制御するプリントジョブ入力・処理部51が設けられている。
【0024】
吸着支持体3は、金属製の回転ドラム1と、回転ドラム1の外周面のほぼ全周に亘って貼り付けられた樹脂製の静電吸着シート2とを有する。回転ドラム1の内部には静電吸着シート2に静電吸着力を発生させるための高圧電源装置4(吸着力発生部の一例)が設置されている。筐体C外から高圧電源装置4への低電圧電力の給電は、回転ドラム1を枢支しているシャフト1sに配置されたスリップリングSRを介して行われる。
【0025】
図2に示すように、静電吸着シート2は軸心X1に沿って互いに分割された複数の吸着シート(吸着領域の一例)からなる。本実施形態では、静電吸着シート2は7つに分割され、個々の吸着シートは回転ドラム1の全周に亘って延びた1枚の長尺状を呈しているが、周方向にも分割した構成としてもよい。吸着シートは、樹脂シートの内部に薄い導電性メッシュ材(不図示)をインサート成形したものである。導電性メッシュ材は、回転ドラム1の外周に形成された小さな貫通孔に通したリード線(不図示)を介して、対応する高圧電源装置4と接続されている。静電吸着シート2は接着剤などで回転ドラム1の外周面に固定されている。
【0026】
制御ユニット50によって高圧電源装置4が駆動されると、導電性メッシュ材に高電圧(例えば2000ボルト前後)が印加されるので、静電吸着シート2の表面は静電気を帯電して、ペーパーPを静電吸着可能な状態となる。静電吸着シート2は、制御ユニット50からの指令に応じて、静電吸着シート2の帯電極性を+−のいずれにも設定可能に構成されている。静電吸着シート2の帯電がいずれの極性でも基本的に一般的なペーパーPは有効に吸着される。
【0027】
(エンコーダの構成)
モータM1によって得られる吸着支持体3の周速度と、吐出ユニット6によるインクの吐出タイミングとの同期を実現するためのエンコーダECとして、回転ドラム1の外周面の一端には細い帯状のラウンドストリップRSがほぼ全周に亘って貼り付けられ、このラウンドストリップRSのスケール情報を光学的に取得するセンサユニットSUが基板を介して筐体Cに支持されている。センサユニットSUには、光源モジュール(不図示)からの光線をラウンドストリップRSのスケール面で反射させてフォトセンサモジュール(不図示)で受ける反射型のものを用いることができる。
【0028】
エンコーダECは、吸着支持体3の回転時にスケール情報をカウントすることにより、吸着支持体3の吐出ユニット6に対する副走査方向での位置を特定するインクリメンタル型に構成されている。制御ユニット50は、プリントを行う画像や文字等の情報を取得し、エンコーダECからの信号に基づいてモータM1及び吐出ユニット6を同時に駆動することにより吐出ユニット6の吐出ノズルからインクを吐出して画像がプリントされる。
【0029】
(吐出ユニットの構成)
図1、3、4に示すように、吐出ユニット6は、吸着支持体3の周方向に沿って隣接配置された2つのキャリッジ7a,7bを有する。各キャリッジ7は、筐体Cに支持された一対のガイド軸8によって主走査方向に移動自在に支持され、筐体Cに支持されたモータM2,M3と、モータM2,M3とキャリッジ7との間に設けられた伝動機構10によって、主走査方向に移動操作可能に設けられている。伝動機構10は、例えば、主走査方向に離間配置された一対のプーリ10aと、これらのプーリ10aの間に巻回されたタイミングベルト10bとで構成し、タイミングベルト10bの一端をキャリッジ7の一部に固定した形態で実現される。図3に示すように、キャリッジ7は伝動機構10によって、吸着支持体3上のペーパーPにプリントヘッド9で画像を形成するための走査位置SPと、プリントヘッド9が吸着支持体3から主走査方向の一方側に離間したホームポジションHPとの間で移動可能に構成されている。2つのキャリッジ7の主走査方向の位置は制御ユニット50によって各別に制御可能とされている。
【0030】
図4に示すように、各キャリッジ7の下面にはインクジェット式のプリントヘッド9が配置されている。プリントヘッド9としては、CMYKの4色のインク毎に、シアン用プリントヘッド9C、マゼンタ用プリントヘッド9M、イエロー用プリントヘッド9Y、ブラック用プリントヘッド9Kという4種類のプリントヘッドが設けられている。また、各色のプリントヘッド9は、互いに主走査方向に千鳥状に変位配置された2本のプリントヘッド9で構成されており、その結果、各キャリッジ7は全部で8本のプリントヘッド9を備えている。各プリントヘッド9で消費されるインクは、筐体C内に配置された各色のインクのボトル11からチューブ12を介して適宜補充される。
【0031】
1本のプリントヘッド9には、同色の吐出ノズルが主走査方向に沿って150dpiの密度で直線状に配列されている。また、千鳥状に配置された同色の2本のプリントヘッド9どうしは、シアン用プリントヘッド9Cを例示した図5に示すように、HP側のプリントヘッド9Chの中の最もSP側のノズルと、SP側のプリントヘッド9Csの中の最もHP側のノズルとが、主走査方向に関して互いに150dpiに対応する間隔(約1.7mm)で離間するように配置されている。
【0032】
したがって、図3及び図4に例示するように、2つのキャリッジ7a,7bを、一方のキャリッジ7aの最もSP側のノズルと、他方のキャリッジ7bの最もHP側のノズルとが互いに150dpiの間隔で離間するように配置した状態としておけば、吸着支持体3(回転ドラム1)を1回転させる間に、キャリッジ7a,7bを主走査方向に全く移動させることなくプリントヘッド9からのインク吐出を実施した場合、A4サイズのペーパーPに対して主走査方向の解像度が150dpiの画像を形成することができる。
【0033】
また、吸着支持体3(回転ドラム1)を2〜4回転させる間に、2つのキャリッジ7a,7bを主走査方向に該当する距離だけ移動させながらプリントヘッド9からのインク吐出を適宜実施することで、A4サイズのペーパーPに対して主走査方向の解像度が300〜600dpiの画像を形成することができる。
他方、副走査方向における達成可能な最高解像度は、画像形成時における吸着支持体3(回転ドラム1)の回転速度によって異なるが、標準的な回転速度(50rpm)で画像形成を実施した場合は、吸着支持体3(回転ドラム1)を4回転させる間に、副走査方向の解像度が600dpiの画像を形成することができる。
【0034】
(定着ユニットの構成)
尚、吐出ユニット6から吐出されるインクとしては紫外線硬化型インクが用いられており、図1に示すように、吸着支持体3の外周面付近の一部には、ペーパーPに吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する定着ユニット20が配置されている。定着ユニット20は、紫外線照射装置ULを収納したハウジング21を備え、ハウジング21の一部には軸心X1と平行に直線状に延びたスリット21aが形成されている。紫外線照射装置ULから発される紫外線は、このスリット21aを通して吸着支持体3の外周面に向けて照射される。制御ユニット50は、プリント中の画像データやペーパーPの特性に基づいて所定のアルゴリズムによって、吸着支持体3の回転速度及び吸着されているペーパーPの位置に応じて決められる必要な期間だけ紫外線照射装置ULを駆動させる。紫外線照射装置ULの光源としては紫外線ランプまたはUV−LEDを用いることができる。
【0035】
筐体C内には、吸着支持体3の静電吸着シート2の外周面に未処理のペーパーPを供給するためのペーパー供給ユニット22と、プリントを完了したペーパーPを吸着支持体3から回収するためのプリント回収ユニット26とが設けられている。
【0036】
(ペーパー供給ユニットの構成)
ペーパー供給ユニット22は、吸着支持体3の下方の一端に設置された用紙マガジン24と、用紙マガジン24に収納された未処理のペーパーPのスタックからペーパーPを一枚ずつ排出するための供給ローラ25とを備える。供給ローラ25を回転駆動するためのモータ(不図示)も制御ユニット50によって駆動制御される。一枚のペーパーPが供給ローラ25によって所定の長さだけ用紙マガジン24から横向きに突出した状態まで送り出されると、ペーパーPの先端が回転中の静電吸着シート2の外周面の所定位置に静電吸着され、引き続き、静電吸着シート2の周速度に同期した速度で供給ローラ25による送り出しが実行され、最終的にペーパーPの全体が静電吸着シート2に吸着される。この一連の手順を繰り返すことで、当実施形態の吸着支持体3では、A4サイズのペーパーPを縦並びで3枚まで同時に支持することができる。
【0037】
(プリント回収ユニットの構成)
プリント回収ユニット26は、吸着支持体3の下方の他端に横向き軸心X2廻りで揺動自在に設置された回収揺動体27と、処理済みのペーパーPを多数枚で蓄積可能なプリントストッカ30とを備えている。回収揺動体27は、対向する吸着支持体3の外周部位に沿って延びた爪部27aと、爪部27aの径方向外側面から滑らかに円弧状に下方に向かって延びたガイド部27bと、ガイド部27bの他端に配置された回収ローラ対28とを有する。回収揺動体27は、筐体Cに支持されたモータM4によって、爪部27aが吸着支持体3の外周面から十分に離間した退避姿勢と、爪部27aが後述する吸着支持体3の縦溝3D(図2を参照)に進入した回収姿勢との間で姿勢変更自在に構成されている。回収ローラ対28は回収揺動体27に支持されたモータM5によって回転駆動可能に構成されている。
【0038】
制御ユニット50は、吸着支持体3上のペーパーPに対して、吐出ユニット6によるプリントおよび定着ユニット20による定着処理を終えると、吸着支持体3の回転位相と同期した適切なタイミングで回収揺動体27を回収姿勢に切り換える。同切り換えによって、回収揺動体27の爪部27aが該当するペーパーPの先端の直前位置で吸着支持体3の縦溝3Dに進入するので、ペーパーPは爪部27aによって吸着支持体3の外周面から引き離され、ガイド部27bに案内されて、既に回転駆動を開始している回収ローラ対28のニップに送り込まれ、回収ローラ対28の回収動作によってプリントストッカ30内に排出される。
【0039】
尚、複数のペーパーPを吸着支持体3に同時に支持させる際には、画像形成処理が完了後に最初に回収する予定のペーパーPの先端と、隣接する他のペーパーPの後端との間隔を、ペーパーPどうしの他の間隔よりも大きく離した状態で吸着しておくと、回収揺動体27の爪部27aを該当するペーパーPの先端の直前位置で吸着支持体3の縦溝3Dに進入させるタイミングに要求される精度が比較的低くて済む。
【0040】
(吸着支持体の構成)
図2に示すように、吸着支持体3の静電吸着シート2は、軸心X1方向に関してほぼ中央に位置する1枚の第1シート2a、第1シート2aの外側に配置された一対の第2シート2b、さらに外側に配置された一対の第3シート2c、一番外側に配置された一対の第4シート2dという全部で7枚の細長い吸着シート(吸着領域の一例)で構成されている。左右に隣接配置された個別の吸着シートの間には、幅が約2〜5mmで金属製の回転ドラム1が露出した間隙箇所があり、ここに前述した縦溝3Dが全周に亘って形成されている。静電吸着シート2の分割方法は上記例に限らず、全部で5枚或いは9枚とするなど、吸着支持体3の規模や使用目的に応じて適宜な数の吸着シートに分割できる。
【0041】
個別の吸着シート(吸着領域の一例)の幅と位置は印刷用の紙寸法の規格に適合するように決められている。すなわち、A3サイズのペーパーPを縦向きに吸着した場合は、ペーパーPの両端が最も外側の第4シート2dの中央付近に来るように配置でき、A4サイズのペーパーPを縦向きに吸着した場合は、ペーパーPの両端が一つ内側の第3シート2cの中央付近に来るように配置でき、B5サイズのペーパーPを縦向きに吸着した場合は、ペーパーPの両端が第2シート2bの中央付近に来るように配置できる。
【0042】
図1に示すように、吸着支持体3の内部には、第1シート2aから第4シート2dまでの全部で7枚のシートに対応した7基の高圧電源装置4が設置されており、制御ユニット50は、これらの高圧電源装置4によって、第1シート2aから第4シート2dまでの各シート2a,2b,2c,2dの静電吸着力を別々にON/OFF操作することができる。また、ON操作時の電圧や静電吸着シート2の帯電極性も各シート2a,2b,2c,2d毎に独立して調整することができる。
【0043】
回転ドラム1の内部は8枚の隔壁によって8つのセクターに分割されており、7基の高圧電源装置4はそのうちの7つのセクターに分配されている。回転ドラム1の回転速度を安定させるために、残りの一つのセクターには、高圧電源装置4と質量同等のダミー4′が取り付けられている。
制御ユニット50は、静電吸着形態および後述するリフレッシュのプロセスを最も合理的に実現するために、処理対象として入力されたペーパーPのサイズ情報に基づいて、最も適切な吸着パターンを判定して実行させる印加パターン設定部52を備えている。
また、制御ユニット50は、処理対象とするペーパーPの特性や状態に適した静電吸着力を静電吸着シート2に発生させるための印加電圧設定部53を備えている。
【0044】
(印加パターン設定部の作用)
基本的に制御ユニット50は、ペーパーPを吸着支持体3に支持させる必要に応じて、処理するペーパーPに適した位置のシート2a,2b,2c,2dに静電吸着力を与えるべく、該当する高圧電源装置4を駆動する。
しかし、単に高圧電源装置4の駆動を継続する使用方法では、プリント処理開始後のペーパーPの支持および回収の繰り返しによって、静電吸着シート2の帯電状態に乱れが生じ、同じ静電吸着シート2の面内で静電吸着力のバラツキが現れる、或いは、静電吸着力が局部的に弱まるなどの現象が生じる傾向がある。
ここで、高圧電源装置4による高電圧の印加をOFF操作して静電吸着力を一旦解除し、印加を再度ON操作する一連のリフレッシュ操作を行えば、当初と同様の十分強さと均一な静電量を持つ初期の静電吸着力が回復され、上記の現象は解決可能である。
【0045】
本発明では、制御ユニット50の印加パターン設定部52が、静電吸着シート2の帯電状態に異変が生じる前に、制御ユニット50が上述した一連のリフレッシュ操作を定期的に実施するように構成されている。しかも、一連のリフレッシュ操作を静電吸着シート2の全領域に対して一度に行うのではなく、静電吸着シート2を構成する複数のシート2a,2,2c,2dに対して交互に行うので、プリント処理を受けるためにペーパーPを静電吸着シート2に吸着している期間中も問題なくリフレッシュを行うことができる。
【0046】
すなわち、図6(a)に例示するように、印加パターン設定部52は、A4サイズのペーパーPを処理している間は、第1シート2aと第3シート2cのみに静電吸着力を発生させる第1印加パターンと、第2シート2bのみに静電吸着力を発生させる第2印加パターンとを例えば数分間ずつ交互に実施させ、且つ、第1印加パターンと第2印加パターンとの切り換え時に、第4シート2d以外の全てのシート2a,2b,2cに静電吸着力を発生させた重複期間を介在させながら実施させる。A4サイズのペーパーPを処理する場合は、最外側の一対の第4シート2dは用いる必要がないので、対応する高圧電源装置4は継続的にOFF状態に保持され、結果的に消費電力の抑制に寄与する。但し、A4サイズのペーパーPの吸着に使用されない最外側の一対の第4シート2dをも第1印加パターンまたは第2印加パターンのいずれか一方で静電吸着力を発生させることでリフレッシュを行ってもよい。
【0047】
この方法によって、ペーパーPは常に少なくとも第1印加パターンと第2印加パターンのいずれかの形態で確実に吸着されるので、ペーパーPの位置ずれなどが生じることなく、且つ、使用する全てのシート2a,2b,2cの静電吸着力を処理中の全期間に亘って一定レベルに保持することができる。同様に、印加パターン設定部52は、A3サイズのペーパーPを処理する場合は、図6(b)に例示するように、中央の第1シート2aと一列空けた一対の第3シート2cのみに静電吸着力を発生させる第3印加パターンと、第2シート2bと第4シート2dのみに静電吸着力を発生させる第4印加パターンとを、間に重複期間を介在させながら交互に実施させる。
【0048】
適用可能な印加パターンは上記の例に限らず、A3サイズのペーパーPを処理する場合を例にとれば、第1シート2aと第4シート2dのみに静電吸着力を発生させる印加パターンと、第2シート2bと第3シート2cのみに静電吸着力を発生させる印加パターンとを、間に重複期間を介在させながら交互に実施させる方法なども可能であり、ペーパーPを安定的に吸着可能な範囲で任意の組み合わせで実施できる。
【0049】
(印加電圧設定部の作用)
制御ユニット50の印加電圧設定部53は、処理対象とするペーパーPの特性や表面状態に応じて静電吸着シート2の静電吸着力を制御する。ペーパーPの特性には、ペーパーPの厚さ、重さ、腰の強さ、基材の材質などの要素が例として挙げられる。ペーパーPの表面状態には、両面印刷の場合のように既に印刷されている面によって支持させるか否か、湿度などが例として挙げられる。例えば、通常よりも厚く腰の強いペーパーPを処理する場合や既に印刷されている面で支持させる場合は、一般に静電吸着力を高めて実施する必要がある。これらの各因子の組み合わせと必要な静電吸着力とを関連付けたLUTを事前に作成しておき、印加電圧設定部53は、同LUTに基づいて各シート2a,2b,2c,2dに対応する高圧電源装置4の発生電圧を調整するように構成されている。また、紫外線硬化型のインクで形成され、定着ユニット20によって十分に定着された画像部位を担持しているペーパーPの部位は剛性が高くなるため、制御ユニット50が画像の形成および定着の進行に応じて、該当する静電吸着シート2a,2b,2c,2dの静電吸着力を次第に高めていく構成としてもよい。
【0050】
(ペーパー静電気除去手段)
特に樹脂層を備えたペーパーPは静電気を帯び易い傾向がある。未処理のペーパーPを静電吸着シート2に支持させる際に、ペーパーPが静電気を帯びていると、静電吸着シート2への静電吸着が不安定になる虞がある。そこで、図1に示すように、ペーパー供給ユニット22の供給ローラ25の下流側に、供給ローラ25によって一枚ずつ排出されるペーパーPから静電気を除去するための静電気除去ブラシ60が配置されている。ここで用いる静電気除去ブラシ60は、ペーパーPの幅方向に沿って横向きに延設された軸部材61と、軸部材61の下面に植え付けられた多数の有機導電性繊維62とで構成されている。有機導電性繊維62はコロナ放電による高い除電性を有するため、供給ローラ25によって一枚ずつ排出されるペーパーPが有機導電性繊維62と触れながら排出される際に、ペーパーPに帯電されていた静電気の大半は、有機導電性繊維62を介して空中に放電される。有機導電性繊維62の具体例としては、アクリロニトリル−硫化銅複合体繊維などが挙げられる。
但し、塵埃除去手段40として上述した一対の帯電ブラシローラ41,42と同様のものをペーパーPの静電気除去手段として採用することも可能である。
【0051】
〔別実施形態〕
〈1〉単に高圧電源装置4による高電圧の印加を一旦OFF操作するのではなく、ON/OFF操作の切り換えによるリフレッシュをより効果的なものにするために、例えば奇数回目の第1印加パターンでは第1シート2aを+に帯電させ、偶数回目の第1印加パターンでは第1シート2aを−に帯電させるなど、各シートの帯電極性(+/−)を定期的に入れ替えてもよい。
【0052】
〈2〉ペーパーPの中央寄りの箇所と両サイド寄りの箇所とで静電吸着シート2に吸着させる場合、印加パターン設定部52が基本的に中央寄りのシート2の吸着力を弱めに設定するように構成してもよい。例えば、図6(a)の第1パターンでは、A4サイズのペーパーPの両サイドを吸着する外側の第2シート2bには通常の十分な静電吸着力を与えるが、ペーパーPの中央を吸着する第1シート2aの静電吸着力は例えば通常の30〜50%にする。同様に、図6(b)の第3パターンや第4パターンでは、A3サイズのペーパーPの両サイドを吸着する外側の第3シート2cや第4シート2dには通常の十分な静電吸着力を与えるが、ペーパーPの中央を吸着する第1シート2aや第2シート2bの静電吸着力は低めに設定する構成にする。これによって吸着支持体3に対するペーパーPの吸着支持は良好に確保しながら、静電吸着に消費される電力量を合理的に抑制することができる。
【0053】
〈3〉第1の実施形態のように、ON/OFF操作の切り換えによるリフレッシュのタイミングを数分間ずつなど一定にするのではなく、制御ユニット50がペーパーPの処理履歴情報や処理予定情報に基づいてリフレッシュの適切なタイミングや頻度を判定する構成としてもよい。具体的には、例えば、全ての静電吸着シート2a,2b,2c,2dに静電吸着力を発生させた状態でA3のペーパーPに対して次々に画像形成処理を行い、ペーパーPの処理枚数が10枚に達したとき、或いは、処理したペーパーPの面積の累積値が所定量に達したときに、前述の第1印加パターンを数秒間と第2印加パターンを数秒間、両パターンの間に全ての静電吸着シート2a,2b,2c,2dに静電吸着力を発生させた重複期間を介在させて実施する方法などが考えられる。
【0054】
〈4〉帯電量または帯電量の低下を判定する判定手段を設け、制御ユニット50が判定手段による判定結果に基づいて、ON/OFF操作の切り換えによるリフレッシュのタイミングや頻度を設定して、実行する構成としてもよい。
【0055】
〈5〉第1の実施形態では、静電吸着シート2が軸心X1に沿って7つの吸着領域に分割されているが、静電吸着シート2を吸着支持体3の外周面に沿った周方向で分割し、分割された領域毎に静電吸着力のON/OFF制御や静電吸着力の大きさを制御できる形態で実施してもよい。例えば、静電吸着シート2を周方向で3つに等分割した形態で実施した場合は、互いに厚さや面質など、適切な静電吸着力の異なる2種類のA4サイズのペーパーPを吸着支持体3の外周面上の異なる位置に同時に吸着して画像形成処理するなどの使用形態でも、領域によって静電吸着力を調節することで、いずれのペーパーPも適切な静電吸着力で吸着支持体3に支持させることが可能となる。勿論、静電吸着シート2を軸心方向と周方向との双方向で複数の吸着領域に分割する形態でも実施可能である。
【0056】
〈6〉或いは、第1の実施形態にならって静電吸着シート2を軸心X1に沿って複数の吸着領域に分割した上で、さらに、静電吸着シート2を吸着支持体3の外周面に沿った周方向でも、独立してON/OFF制御や静電吸着力の大きさを制御可能な複数領域に分割してもよい。図8は、7枚の静電吸着シート2のそれぞれを周方向で8つの領域に分割した場合を想定し、便宜的にそのうちの4つの領域E,F,G,Hのみを示している。
【0057】
この構成では、例えば、A4サイズのペーパーPを処理する際には、図8(a)に例示するように、周方向に隣接しないE領域とG領域とが図6(a)に示した第1パターンとなるように印加し、且つ、残りのF領域とH領域とが第2パターンとなるように印加したAパターンと、AパターンとはON/OFF状態が逆転し、E領域とG領域とが第2パターンとなるように印加し、且つ、F領域とH領域とが第1パターンとなるように印加したBパターンとを、間に重複期間を介在させながら交互に実施させることができる。
【0058】
同様に、A3サイズのペーパーPを処理する際には、図8(b)に例示するように、周方向に隣接しないE領域とG領域とが図6(b)の第3パターンとなるように印加し、且つ、残りのF領域とH領域とが第4パターンとなるように印加したAパターンと、Aパターンとは逆に、E領域とG領域とが第4パターンとなるように印加し、且つ、F領域とH領域とが第3パターンとなるように印加したBパターンとを、間に重複期間を介在させつつ交互に実施させればよい。
【0059】
〈7〉ペーパーPの基材側の面質や裏面の状態に応じて静電吸着シート2の吸着力を制御する構成とすることができる。例えば、ペーパーPの裏面の状態としては、特に、両面印刷をする場合に配慮が必要と考えられる。すなわち、両面印刷における第2プリント工程では、第1プリント工程でプリント処理済みの面を介して静電吸着シート2に吸着させることになり、特に紫外線硬化型インクによって形成されたプリント処理済みの面は処理前の面に比して吸着され難い傾向があるので、静電吸着シート2の吸着力を高めに設定することが適切である。
【0060】
具体的な方法としては、両面印刷処理が自動的に行われるプリンタとして実施する場合は、ペーパー供給ユニット22に、供給ローラ25が送り出すペーパーPの上面(静電吸着シート2に吸着させる面)の状態、特にプリント処理済みか否かを判定するセンサを設けておき、同センサの判定に基づいて印加電圧設定部53が、静電吸着シート2の吸着力を適切に切り換えるように構成すればよい。
他方、オペレータの手動による両面印刷処理が行われるプリンタとして実施する場合は、操作ステーション200に設けたモニターディスプレー(不図示)にペーパー裏面状態を選択可能な入力欄を作っておき、この入力欄に入力された指示に基づいて印加電圧設定部53が、静電吸着シート2の吸着力を適切に切り換えるように構成すればよい。
【0061】
〈8〉静電吸着シート2の表面には室内の塵埃や紙粉も静電吸着される傾向が生じる。そのような問題を解消するために、吸着支持体3の外周面の一部に塵埃除去手段40を設けることができる。図8に例示した塵埃除去手段40は、回収揺動体27の下流側に配置されたブラケット40aに回転自在に支持された一対の帯電ブラシローラ41,42と、両帯電ブラシローラ41,42を同一方向に回転駆動させるモータM6と、ブラシ面に吸着された塵埃を負圧によって回収するチューブ状の回収部材43とで構成されている。両帯電ブラシローラ41,42はブラシ部分の外周どうしが径方向で重なり合うように配置されており、より上流側の帯電ブラシローラ41の周面はナイロン毛で構成され、下流側の帯電ブラシローラ42は帯電列においてナイロンよりも−側に序列されるアクリル毛によって構成されている。したがって、モータM6による回転に伴う両ブラシ間の摩擦によって、上流側の帯電ブラシローラ41は+に帯電されるため、主として−に帯電された一般的な塵埃を吸着し、下流側の帯電ブラシローラ42は−に帯電されるため、主として+に帯電された他の塵埃を吸着する。
【0062】
ブラケット40aと両帯電ブラシローラ41,42は、通常は吸着支持体3に静電吸着されたペーパーPの面から十分に離間した位置に配置されているが、回収揺動体27を回収姿勢に切り換える共通のモータM4の駆動力によって、両帯電ブラシローラ41,42は、ブラケット40aと共に吸着支持体3に接近した除塵姿勢に切り換えられ、静電吸着シート2の表面に軽く触れることで塵埃を効率的に回収することができる。尚、両帯電ブラシローラ41,42の静電吸着シート2への接近は、回収揺動体27の回収姿勢への切り換えから一定時間だけ遅れ、全てのペーパーPの回収完了後に実行されるように、モータM4とブラケット40aの間には減速ギヤ機構が設けられている。したがって、両帯電ブラシローラ41,42が静電吸着シート2上のペーパーPを損傷する虞が抑制されている。尚、モータM4の駆動力を回収揺動体27に入力するためのプーリ27pと回収揺動体27の間には、回収揺動体27の爪部27aが吸着支持体3の縦溝3Dの底部に当接した後での両部材間の相対回転を許すワンウェイクラッチ機構27cが設けられている。
【0063】
〈9〉制御ユニット50が、上述した両帯電ブラシローラ41,42の除塵姿勢への切り換えに応じて、静電吸着シート2の静電吸着力を除去する構成とすることができる。この構成では、両帯電ブラシローラ41,42は、静電吸着シート2の静電吸着力から解放されて除去され易くなった状態の塵埃を効率的に除去できることになる。また、静電吸着シート2の静電吸着力を単に除去するのではなく、塵埃の帯電傾向と同じ極性の弱いクーロン力を恣意的に与えることで塵埃を静電吸着シート2から積極的に離間させた状態で両帯電ブラシローラ41,42のいずれかによって吸着してもよい。
【0064】
〈10〉さらに、別実施形態の一つとして記載したように、静電吸着シート2を吸着支持体3の外周面に沿った周方向で分割し、分割された領域毎に静電吸着力のON/OFF制御や静電吸着力の大きさを制御できる形態で実施する場合には、制御ユニット50が、何らかの塵埃除去手段の起動に際して、静電吸着シート2の全領域の静電吸着力を除去するのではなく、吸着支持体3の回転位相に応じて、周方向での対応する箇所に位置する静電吸着シート2(吸着領域)の静電吸着力を順番に除去していく或いは弱めていく構成としてもよい。
【0065】
尚、図8の実施例と対照的に、両帯電ブラシローラ41,42が吸着支持体3に静電吸着されたペーパーPの面から十分に離間した位置に固定された形態で実施することも可能である。
【0066】
〈11〉帯電ブラシローラ41,42の代わりに、回転駆動されることのない単純な刷毛状の静電吸着ブラシが、必要なタイミングで、その静電吸着ブラシの毛先が静電吸着シート2に当接されるように近接移動される構成としてもよい。
【0067】
〈12〉別実施形態の一つとして記載したように、静電吸着シート2を吸着支持体3の外周面に沿った周方向で分割し、分割された領域毎に静電吸着力のON/OFF制御や静電吸着力の大きさを制御できる形態で実施する場合には、回収揺動体27によるペーパーPの回収をより円滑化させるために、制御ユニット50が、回収揺動体27を回収姿勢に切り換える操作に応じて、回収揺動体27によって各ペーパーPが静電吸着シート2から引き離されるタイミングと一致するように、吸着支持体3の回転位相に応じて、周方向での対応する箇所に位置する静電吸着シート2(吸着領域)の静電吸着力を順番に除去していく或いは弱めていく構成とすることができる。
【0068】
〈13〉特に紫外線硬化型のインクで形成された画像を担持し、定着ユニット20によって十分に定着されたペーパーPの部位は剛性が高く、静電吸着シート2上に確実に吸着しておくためには、より大きな静電吸着力が必要となる傾向がある。また、紫外線硬化型のインクを用いて縁無し印刷状にプリントした場合は、ペーパーPの角部や縁部などが静電吸着シート2から離間する方向にカールする傾向が見られる場合も。そこで、制御ユニット50が、プリントジョブとして入力された画像の周囲に、静電吸着シート2による十分な吸着を受けるための余分な余白が形成されるように、画像の倍率を所定のルールに従って恣意的に変更するように構成してもよい。
【0069】
〈14〉吸着支持体を前記処理装置に対して副走査方向に移動させる搬送機構として、ドラム状の回転体ではなく、互いに平行に離間配置された2本のローラと、2本のローラの間に無端ベルト状に巻回させた静電吸着用の可撓性膜と、その可撓性膜の内側に対向配置された吸着力発生部と、少なくとも一方のローラを回転駆動する駆動源とを設け、その可撓性膜が、吸着力発生部によって各別に静電吸着力をON/OFF可能なように、ローラの軸心に沿って複数に分割された可撓性膜で構成された形態で、本発明によるシート処理装置を実施することも可能である。
【0070】
〈15〉上記の実施形態では画像形成装置として説明したが、スキャナーなどの読み取り装置の形態で実施してもよく、また、バーコードを印刷したシールや超小型の検出用タグを多数のペーパーに次々に取り付ける装置など、より汎用的なシート処理装置の形態で実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
カットシート状の被処理物の面に所定の操作を行う処理装置と、上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、吸着支持体を前記処理装置に対して副走査方向に移動させる搬送機構と、吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、処理装置による操作を終えた被処理物を前記吸着支持体から回収する回収手段とを備えたシート処理装置を改良する技術として利用できる。
【符号の説明】
【0072】
C 筐体
EC エンコーダ(搬送機構)
M1 モータ(搬送機構)
P ペーパー(記録媒体)
1 回転ドラム
2 静電吸着シート
2a 第1シート(吸着領域)
2b 第2シート(吸着領域)
2c 第3シート(吸着領域)
2d 第4シート(吸着領域)
3 吸着支持体
3D 縦溝
4 高圧電源装置(吸着力発生部)
6 吐出ユニット(処理装置)
22 ペーパー供給ユニット
24 用紙マガジン
25 供給ローラ
26 プリント回収ユニット
27 回収揺動体
27a 爪部
30 プリントストッカ
50 制御ユニット
51 プリントジョブ入力・処理部
52 印加パターン設定部
53 印加電圧設定部
100 インクジェットプリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カットシート状の被処理物に所定の操作を行う処理装置と、
上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、
前記吸着支持体を前記処理装置に対して移動させる搬送機構と、
前記吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、
前記処理装置による操作を終えた被処理物を前記吸着支持体から回収する回収手段と、を備え、
前記吸着支持体には、前記吸着力発生部によって各別に静電吸着力を制御可能な複数の吸着領域が設けられているシート処理装置。
【請求項2】
各吸着領域に対して静電吸着力のON/OFF操作を交互に行う制御装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記制御装置が、各吸着領域による被処理物の処理履歴情報に基づいて静電吸着力のON/OFF操作を行うことを特徴とする請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
被処理物の表面状態に関する情報に基づいて各吸着領域に対する静電吸着力の大きさを制御する制御装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項5】
カットシート状の被処理物に所定の操作を行う処理装置と、
上流側から供給される被処理物を静電吸着によって支持可能な吸着支持体と、
前記吸着支持体を前記処理装置に対して移動させる搬送機構と、
前記吸着支持体に静電吸着力を付与する吸着力発生部と、
前記処理装置による操作を終えた被処理物を前記吸着支持体から回収する回収手段と、を備え、
前記吸着支持体には、前記吸着力発生部によって各別に静電吸着力を制御可能な複数の吸着領域が設けられており、且つ、
被処理物のサイズに応じて、各吸着領域に対する静電吸着力の制御を行う制御装置を備えているシート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−195295(P2011−195295A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64539(P2010−64539)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】