説明

シート分離給紙装置およびこれを備えた画像形成装置

【課題】静電吸着を利用してシートの分離を行う際に無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができるシート分離給紙装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】シート束Sから最上位シートS1を静電気力を用いて吸着保持するとともにシート束Sから分離する吸着分離部40を備えたシート分離給紙装置15は、シート束Sを積載するシート積載部50がシート束Sの給紙方向後端側を載置する第1底板51と、第1底板51と独立して設けられ、吸着分離部40の下方でシート束Sの給紙方向前端側を載置する第2底板52とを有し、シート積載部50を昇降させる昇降機構部60が第1底板51を昇降させる第1昇降部61と、シート束Sの給紙方向前端側が吸着分離部40に対して近接および離間するよう第2底板52を昇降させる第2昇降部62とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート分離給紙装置および画像形成装置に関し、特に、積載されたシート束から最上面に位置するシートを1枚ずつ分離して給紙するシート分離給紙装置およびこれを備えた例えば電子写真複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置等からなる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のシート分離給紙装置として、静電気を利用しシートを吸着させて分離を行う、いわゆる静電吸着分離方式を採用したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のシート分離給紙装置は、積載されたシート束の上面に対設された給紙方向に移動する誘導体からなる無端状ベルトと、この無端状ベルト表面に交番する電圧を印加する帯電部材とを備え、帯電部材により無端状ベルト上に帯電電荷を与え、帯電電荷により発生する電界によって吸着力を発生させることで、積載されたシート束から最上位のシートを分離するようになっている。
【0004】
また、上記シート分離給紙装置では、モータなどの駆動手段に接続された偏心軸を中心に回転する一対の偏心ローラに無端状ベルトが巻き掛けられており、駆動手段の駆動に応じて偏心ローラを回転させることにより、シート束の上面に対して無端状ベルトを近接および離間させるようになっている。ここで、上記偏心ローラは、予め偏心軸から最も遠い円周部が上になる位置に保持され、この位置をホームポジションとしている。したがって、ホームポジションでは、無端状ベルトはシート束の上面から離間している。
【0005】
このように構成された上記シート分離給紙装置においては、給紙動作の開始に伴い偏心ローラが回転すると、無端状ベルトが無端移動し、これに応じて無端状ベルト表面に帯電電荷が付与される。また、同時に無端状ベルトは、偏心ローラの回転に伴いホームポジションから下方に移動し、シート束の上面に近接する。さらに、偏心軸から最も遠い円周部が下になる位置まで偏心ローラが回転すると、帯電電荷により発生した吸着力によって最上位シートが無端状ベルトに静電吸着される。その後、偏心ローラがさらに回転することにより、最上位シートの給紙方向先端が偏心ローラの曲率により無端状ベルトから剥離し、搬送ガイド間に進入する。そして、その後の偏心ローラの回転により最上位シートが搬送経路上を給紙方向下流に向けて送り込まれる。
【0006】
このように、静電吸着分離方式を採用するシート分離給紙装置では、シートの分離給紙時に無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる必要がある。
【0007】
無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる方法としては、上記の他、例えばソレノイドあるいはモータなどの駆動手段によりワイヤを介して無端状ベルトを保持したベルトユニットを上下動させたり、あるいはモータの駆動力を用いて無端状ベルトが巻き掛けられた一対のローラのうち、一方のローラを支点として他方のローラを上下に回動させる方法などがある。
【0008】
一方で、無端状ベルトをシート束に対して近接および離間させる構成に限らず、例えばモータなどの駆動力によりリンク機構やラックアンドピニオン機構を介して、シート束が積載された底板を上下動させることによってシート束を無端状ベルトに対して近接および離間させる構成も提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ソレノイドあるいはモータなどの駆動手段によりワイヤを介してベルトユニットを上下動させることによって、無端状ベルトをシート束に対して近接および離間させるシート分離給紙装置にあっては、次のような問題が生ずる。すなわち、生産性(時間当たりの給紙枚数)を向上させようと駆動手段を急駆動させると、急駆動時の慣性に対してワイヤの撓みが発生することがあり、これが原因で無端状ベルトをシート束に対して近接および離間させる繰り返しの動作にかかる時間を短縮することが困難となるおそれがあった。このため、慣性に対するワイヤの撓みを生じさせないような駆動を行う必要があり、上記生産性を向上させるには限界があった。
【0010】
また、モータの駆動力を用いて無端状ベルトが巻き掛けられた一対のローラのうち、一方のローラを支点として他方のローラを上下に回動させるシート分離給紙装置にあっては、無端状ベルトを回動させるに際し、モータには比較的大きな回転トルクが必要とされる。また、他方のローラを上下に回動させるためは、モータの駆動を正転および逆転させる必要があり、給紙を行う度にモータの正転駆動および逆転駆動を繰り返すこととなる。したがって、このようなシート分離給紙装置においては、モータへの負荷が増大するため、上記生産性を向上させるには不向きであった。
【0011】
さらに、シート束が積載された底板を上下動させることによりシート束を無端状ベルトに対して近接および離間させる構成のシート分離給紙装置にあっても、底板に積載されるシート束の全重量分を上下動させるだけの駆動力がモータに必要とされる。すなわち、底板を上下動させるためのモータには、シート束の全重量分を上下動させるだけの大きな回転トルクが必要とされる。また、底板の上下動の度にモータの正転駆動および逆転駆動を繰り返すこととなる。したがって、このようなシート分離給紙装置においても、上記と同様、モータへの負荷が増大するため、上記生産性を向上させるには不向きであるという問題があった。
【0012】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、静電吸着を利用してシートの分離を行う際に無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができるシート分離給紙装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るシート分離給紙装置は、上記目的を達成するため、シート束の給紙方向前端側の上部に配置され、前記シート束から最上位に位置する最上位シートを静電気力を用いて吸着保持するとともに前記シート束から分離する吸着分離手段を備えたシート分離給紙装置であって、前記シート束を積載するシート積載手段と、前記シート積載手段を上昇および下降させる昇降手段と、を備え、前記シート積載手段は、前記シート束の給紙方向後端側が載置される第1底板と、前記第1底板と独立して設けられ、前記吸着分離手段の下方で前記シート束の給紙方向前端側が載置される第2底板とを有し、前記昇降手段は、前記第1底板を上昇および下降させる第1昇降手段と、前記シート束の給紙方向前端側が前記吸着分離手段に対して近接および離間するよう前記第2底板を上昇および下降させる第2昇降手段とを有する。
【0014】
この構成により、本発明は、シート束から最上位シートを分離する際には、第2底板に載置されたシート束の給紙方向前端側のみを第2昇降手段により上昇および下降させることが可能となる。このため、シート束の全部を上昇および下降させていた従来のシート分離給紙装置と比較して、シート束のうち吸着分離に必要な部分のみを昇降させればよいので、昇降手段にかかる負荷を小さくすることができ、例えば吸着分離にかかる時間を短縮させることができる。したがって、本発明は、吸着分離手段とシート束とを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係るシート分離給紙装置において、前記吸着分離手段は、給紙方向下流側に設けられた下流ローラと、前記下流ローラに対して給紙方向上流に離隔して設けられ、前記下流ローラを支点に回動可能に構成された上流ローラと、前記上流ローラおよび前記下流ローラに架け渡された無端状の誘電体ベルトとを有し、前記誘電体ベルトが前記シート束に対して平行となったことを検知する角度検知手段を設けた構成を有する。
【0016】
この構成により、本発明は、下流ローラを支点に上流ローラが回動することにより誘電体ベルトが回動するので、シート束の位置が積載量に応じて変化した場合でも誘電体ベルトの表面を最上位シートの上面に確実に面接触させることができる。また、角度検知手段により誘電体ベルトがシート束に対して平行となったことを検知可能であるため、誘電体ベルトの表面に最上位シートの上面が接触した時点でシート束の上昇を停止することができる。
【0017】
また、本発明に係るシート分離給紙装置において、前記第2昇降手段は、前記第2底板を前記第1底板に対して平行に上昇および下降させる構成を有する。
【0018】
この構成により、本発明は、第2底板を第1底板に対して平行に上昇および下降させるので、シート束の積載量が変化しても吸着分離手段とシート束との接触角度は変わらないため、吸着分離時にあっても最上位シートの上面の必要領域を吸着分離手段に容易に接触させることができる。最上位シートの上面の必要領域とは、吸着分離手段が最上位シートの分離を行うのに十分な吸着力を付与可能な接触領域をいう。
【0019】
また、本発明に係るシート分離給紙装置において、前記第2底板は、前記第1底板に対して支点を中心に回動可能に構成され、前記第2昇降手段は、前記支点を中心に前記第2底板を回動させることにより前記第2底板を上昇および下降させる構成を有する。
【0020】
この構成により、本発明は、支点を中心に第2底板を回動させることにより第2底板を上昇および下降させるので、第2底板の上昇時にはシート束の給紙方向先端部のみを持ち上げればよい。このため、シート束の全部を持ち上げる構成あるいはシート束の給紙方向先端側のみを第1底板と平行に上昇させる構成と比較して、より小さな駆動力でシート束の吸着分離に必要な部分のみを上昇させることができる。
【0021】
また、本発明に係るシート分離給紙装置において、前記第2底板および前記第2昇降手段は、前記第1底板の給紙方向前端側の上面に配置される構成を有する。
【0022】
この構成により、本発明は、第1昇降手段がシート束全体の上昇および下降を行い、第2昇降手段が最上位シートの吸着分離に必要な分だけ第2底板を上昇させればよく、第2昇降手段の駆動量および可動範囲を小さくすることができる。このため、第2昇降手段を簡易かつコンパクトな構成とすることが可能となる。
【0023】
また、例えば第1底板と第2底板とをそれぞれ独立に設置した場合と比較して、それぞれの昇降手段の駆動制御を単純化することができる。すなわち、第1底板と第2底板とを独立に設置した場合には、シート束全体の上昇および下降時、第1底板と第2底板とを同期してそれぞれの昇降手段によって上下動させる必要があり、その駆動制御が複雑である。これに対して、本発明の場合には、第1底板と第2底板とを同期して駆動する必要がなく、その駆動制御が単純化される。
【0024】
また、本発明に係るシート分離給紙装置は、前記第2昇降手段を駆動する第2駆動手段をさらに備え、前記第2駆動手段は、前記第1底板に設けられる構成を有する。
【0025】
この構成により、本発明は、第2昇降手段を駆動する第2駆動手段が第1底板に設けられているので、第2駆動手段と第2昇降手段との間の駆動伝達機構を簡易な構成とすることができる。すなわち、第2駆動手段は、第1底板の上昇および下降に連動して上下に移動するので、第1底板が上昇および下降しても第2昇降手段との位置関係は不変である。このため、第1底板の上昇および下降に応じて駆動伝達の経路を切り換えるなどの複雑な構成をとることなく、第2昇降手段を駆動することができる。
【0026】
また、本発明に係る画像形成装置は、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート分離給紙装置を備えた画像形成装置であって、前記シート分離給紙装置によって分離給紙された最上位シート上に画像を形成する画像形成手段を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、静電吸着を利用してシートの分離を行う際に無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができるシート分離給紙装置および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置を備えた画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置の概略を示す断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置の動作を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置の変形例を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るシート分離給紙装置の概略を示す断面図である。
【図6】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施の形態に係るシート分離給紙装置の動作を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るシート分離給紙装置の概略を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係るシート分離給紙装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図1〜図3は、本発明に係るシート分離給紙装置および画像形成装置の一実施の形態を示す図であり、画像形成装置を電子写真式の複写機に適用した例を示している。
【0031】
まず、構成について説明する。図1に示すように、画像形成装置としての複写機10は、原稿トレイ11aに載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部12上のコンタクトガラスに自動給紙する自動原稿搬送装置11と、自動原稿搬送装置11によってコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取る原稿読取部12と、給紙部13から給紙されたシート(記録紙)に対して、原稿読取部12によって読み取った画像を形成する画像形成部(画像形成手段)14と、複数のシートが積層されたシート束Sを有し、このシート束Sから最上位に位置する最上位シートS1を画像形成部14に給紙する給紙部13とを備えている。なお、本実施の形態では、画像形成部14と給紙部13とは分割可能となっている。
【0032】
給紙部13は、シート分離給紙装置15を備えており、このシート分離給紙装置15は、後述するシート積載部50(図2参照)に積載されたシート束Sから最上位シートS1を吸着して分離給紙するようになっている。
【0033】
シート分離給紙装置15によって分離給紙された最上位シートS1は、搬送経路10a上を搬送されるようになっており、搬送経路10a上を搬送される最上位シートS1は、搬送ローラ対18およびレジストローラ対19により搬送されるようになっている。さらに、搬送ローラ対18およびレジストローラ対19により搬送された最上位シートS1は、転写ローラ20によって画像形成部14で形成されたトナー画像が転写され、このトナー画像が定着器21によって熱転写され、排紙ローラ対22により排紙トレイ23に排出されるようになっている。
【0034】
画像形成部14は、4つの作像部24(24Y(イエロー)、24M(マゼンタ)、24C(シアン)、24BK(ブラック))と、転写ベルトである中間転写ベルト25と、露光装置26とから構成されている。
【0035】
露光装置26は、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等から入力される色分解された画像データや、原稿読取部12によって読み取られた原稿の画像データを光源駆動用の信号に変換し、それに従い各レーザ光源ユニット内の半導体レーザを駆動して光ビームを出射するようになっている。
【0036】
作像部24Y、24M、24C、24BKは、それぞれ異なる色の画像(トナー像)を形成するようになっており、作像部24Y、24M、24C、24BKは、時計回転方向に回転駆動される像担持体である感光体27(27Y、27M、27C、27BK)、各感光体27の周囲に配置された帯電部28、現像部29、クリーニング部30等により構成されている。
【0037】
感光体27Y、27M、27C、27BKは、円筒状に形成され、図示しない駆動源により回転駆動される。各感光体27の外周面部には感光層が設けられており、露光装置26から出射された破線で示す光ビームが各感光体27の外周面にスポット照射されることにより、各感光体27の外周面には画像情報に応じた静電潜像が書き込まれる。
【0038】
帯電部28は、感光体27の外周面を一様に帯電するもので、感光体27に対して接触方式のものが採用されている。現像部29は、感光体27にトナーの供給を行い、供給されたトナーが感光体27の外周面に書き込まれた静電潜像に付着することにより、感光体27上の静電潜像がトナー像として顕像化させるもので、感光体27に対して非接触方式のものが採用されている。
【0039】
クリーニング部30は、感光体27の外周面に付着している残留トナーをクリーニングするもので、感光体27の外周面にブラシを接触させるブラシ接触方式のものが採用されている。
【0040】
中間転写ベルト25は、樹脂フィルム、または、ゴムを基体として形成された無端状ベルトから構成されており、感光体27上に形成されたトナー像が転写され、この中間転写ベルト25に転写されたトナー像が転写ローラ20によって最上位シートS1に転写される。
【0041】
なお、複写機10として、電子写真方式の他、例えば、インクジェット方式等の他の方式を採用してもよい。また、画像形成装置としては、複写機10に限らず、プリンタ装置、ファクシミリ装置、印刷機または複合機として構成してもよい。
【0042】
次に、図2を参照して、本実施の形態に係るシート分離給紙装置15について説明する。
【0043】
図2に示すように、シート分離給紙装置15は、吸着分離手段としての吸着分離部40と、シート束Sを積載するシート積載手段としてのシート積載部50と、シート積載部50を上昇および下降させる昇降手段としての昇降機構部60とを含んで構成されている。
【0044】
吸着分離部40は、シート束Sの給紙方向(図2中、右方向)前端側の上部に配置され、シート束Sから最上位シートS1を静電気力を用いて吸着保持するとともにシート束Sから分離するようになっている。また、吸着分離部40は、最上位シートS1の幅に対して短く、最上位シートS1の幅方向の中心付近に配置されている。なお、吸着分離部40は、最上位シートS1の幅に対して、同等、もしくは長くてもよい。また、吸着分離部40は、最上位シートS1の幅方向に複数個配置されていてもよい。
【0045】
具体的には、吸着分離部40は、給紙方向下流側に設けられた下流ローラとしての駆動ローラ41と、駆動ローラ41に対して給紙方向上流側に離隔して設けられた上流ローラとしての従動ローラ42と、駆動ローラ41と従動ローラ42とに架け渡された無端状の誘電体からなる誘電体ベルト43とを備えている。
【0046】
駆動ローラ41は、図示しない駆動軸が複写機10(図1参照)の筺体部(詳しくは給紙ユニットの筺体)に回転自在に支持されており、複写機本体に設置された図示しない駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に回転駆動するようになっている。これにより、誘電体ベルト43を周回駆動可能となっている。また、駆動ローラ41は、抵抗値が10Ω・cm程度の導電性ゴム層が表面に設けられている。
【0047】
従動ローラ42は、ローラ表面および内部ともに金属から構成された金属ローラであり、駆動ローラ41の駆動に伴い誘電体ベルト43が周回駆動することにより従動するようになっている。ここで、従動ローラ42は、駆動ローラ41との間隔を規制する図示しない支持部材に回転可能に取り付けられている。また、従動ローラ42は、上記支持部材に設けられた図示しないスプリングなどの付勢部材により駆動ローラ41から離隔する方向に付勢されている。これにより、誘電体ベルト43のベルト張力が最適に維持されるようになっている。このため、従動ローラ42は、ベルト張力と誘電体ベルト内面との摩擦により、駆動ローラ41に対して従動するよう構成される。通常、シートの給紙(搬送)には5N以下と高い搬送力は必要とされないが、密着力の高いシート等、特殊な条件の場合、誘電体ベルト43と各ローラ間にてスリップが起こる場合も考えられる。その際には、誘電体ベルト内面と各ローラとの接触面の摩擦係数を高くすることでスリップを防止することができる。また、駆動ローラ41および従動ローラ42は、ともに接地されている。
【0048】
誘電体ベルト43は、10Ω・cm以上の抵抗を有する50μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレート等のフィルムから構成された表層と、この表層の裏面にアルミ蒸着により10Ω・cm以下の抵抗を有する導電層からなる裏層とを有する2層構造で構成されている。これにより、誘電体ベルト43は、良好な帯電状態を有している。
【0049】
また、誘電体ベルト43の幅方向の両側端縁の内側には、図示しない寄止め用のリブが設けられており、駆動ローラ41および従動ローラ42の両側端面と係合し、誘電体ベルト43の寄りを防止している。
【0050】
さらに、誘電体ベルト43には、誘電体ベルト43の幅方向に延在する帯電部材としての帯電ローラ45が接している。帯電ローラ45は、誘電体ベルト43が駆動ローラ41に巻回された位置の近くで誘電体ベルト43に接するように配置されている。また、帯電ローラ45は、交流を発生する交流電源46に接続されており、必要に応じて交流電源46から交番電圧が印加されるようになっている。この帯電ローラ45は、誘電体ベルト43の裏層を接地された対向電極として使用しているため、誘電体ベルト43に電荷を与えるために誘電体ベルト43の表層に接した位置であれば、誘電体ベルト43上のどの位置に設けられていてもよい。なお、本実施の形態においては、誘電体ベルト43に電荷を与える手段として帯電ローラ45を用いているが、これに限らず、例えば帯電ブレードを用いてもよい。
【0051】
また、交流電源46は、交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施の形態においては、誘電体ベルト43の表面に対して4kVの振幅を持った交流を印加するようになっている。
【0052】
ここで、誘電体ベルト43は、上述の帯電ローラ45を介して交流電源46から交番電圧が印加されると、交流電源周波数と誘電体ベルト43の周回速度とに応じたピッチで交番する電荷パターンが誘電体ベルト43の表層に形成されるようになっている。なお、前述のピッチは、例えば5mm〜15mm程度とするのが好ましい。
【0053】
また、誘電体ベルト43の給紙方向下流側には、シートの搬送をガイドするガイド板35と搬送ローラ対18とが設けられている。
【0054】
このように構成された吸着分離部40において、従動ローラ42は、駆動ローラ41の駆動軸を支点に上下に自由に回動可能となっている。したがって、吸着分離を行わない待機状態では、従動ローラ42は、自重により駆動ローラ41よりも下方に位置するようになっている。具体的には、従動ローラ42は、誘電体ベルト43のベルト下面(シート束Sとの接触面)がシート束Sに対して10°〜30°の角度となる位置まで下降した状態となっている。ここで、従動ローラ42の下方への規制手段としては、例えば上記支持部材に設けられたストッパが装置本体に設けられたブラケットに当接することで規制することができる。このため、待機状態では、誘電体ベルト43が上記の角度で傾斜した状態を維持するとともに、従動ローラ42の下部に位置する誘電体ベルト43の表面と最上位シートS1の上面との間に所定の間隔(例えば、2mm程度)を形成可能である。上記のように、誘電体ベルト43の表面と最上位シートS1の上面との間に所定の間隔を形成することで、後のシート搬送時に2枚目以降のシートが連送り(重送)されることを防ぐことができる。
【0055】
また、従動ローラ42の側部近傍には、ローラ位置検出センサ47が設けられている。ローラ位置検出センサ47は、例えばフォトインタラプタやフィラ―センサ等からなり上昇した従動ローラ42を検知するようになっている。これにより、ローラ位置検出センサ47は、誘電体ベルト43がシート束Sに対して平行、すなわち水平となったことを検知可能となっている。ローラ位置検出センサ47は、検出結果に応じた信号を図示しない本体制御部に出力するようになっている。したがって、本体制御部では、ローラ位置検出センサ47の検出結果に応じて、誘電体ベルト43が水平となったときに後述する第2昇降部62の駆動を停止するようになっている。本実施の形態におけるローラ位置検出センサ47は、本発明に係る角度検知手段を構成する。
【0056】
また、シート分離給紙装置15の給紙方向上流側には、昇降機構部60によりシート束Sが上昇して最上位シートS1が給紙可能な給紙可能位置にあることを検知するフィラーセンサ38が設けられている。ここで、給紙可能位置とは、傾斜状態の誘電体ベルト43の最下部に最上位シートS1の上面が所定の間隔(例えば、2mm程度)で近接した位置をいう。
【0057】
シート積載部50は、シート束Sの給紙方向後端側が載置される第1底板51と、第1底板51と独立して設けられ、吸着分離部40の下方でシート束Sの給紙方向先端側が載置される第2底板52とを備えている。本実施の形態では、第1底板51の給紙方向の幅が第2底板52より長く設定されているが、第1底板51の給紙方向の幅と第2底板52の給紙方向の幅とを同一としてもよいし、第2底板52の給紙方向の幅を第1底板51の給紙方向の幅より長く構成してもよい。
【0058】
昇降機構部60は、第1底板51を上昇および下降させる第1昇降手段としての第1昇降部61と、第2底板52を上昇および下降させる第2昇降手段としての第2昇降部62とを備えている。これら第1底板51、第2底板52、第1昇降部61および第2昇降部62は、図示しない略平箱形状の給紙カセット内に配置されている。
【0059】
第1昇降部61は、2本のアーム61a、61bからなるリンク機構で構成され、支点61cを中心に2本のアーム61a、61bを回転させることで第1底板51を上昇および下降させるようになっている。2本のアーム61a、61bは、装置本体に設けられた図示しないモータ等の駆動手段により回転されるようになっている。なお、本実施の形態では、支点61cを中心に2本のアーム61a、61bを回転させる構成としたが、これに限らず、例えば2本のアーム61a、61bをそれぞれ下方側の基端部を支点に回転させる構成としてもよい。また、アーム61a、61bは、シート束Sの幅方向(給紙方向と直交する方向)に複数配置される構成であってもよい。
【0060】
第2昇降部62は、第1昇降部61と同様、2本のアーム62a、62bからなるリンク機構で構成され、支点62cを中心に2本のアーム62a、62bを回転させることで第2底板52を上昇および下降させるようになっている。2本のアーム62a、62bは、装置本体に設けられた図示しないモータ等の駆動手段により回転されるようになっている。なお、第2昇降部62についても、第1昇降部61と同様、2本のアーム62a、62bをそれぞれ下方側の基端部を支点に回転させる構成としてもよい。また、アーム62a、62bは、シート束Sの幅方向に複数配置される構成であってもよい。
【0061】
第1昇降部61および第2昇降部62を駆動する駆動手段は、図示しない本体制御部に接続され、本体制御部からの駆動信号に応じて駆動するようになっている。
【0062】
ここで、第1昇降部61および第2昇降部62は、シートの吸着分離を行わない待機時やシート補給時等においては第1底板51および第2底板52がともに同一高さとなるよう各アームの回転位置を調整するようになっている。また、第1昇降部61および第2昇降部62は、シート束Sのセット後においては同一高さに維持された第1底板51および第2底板52を、略水平状態を維持しまま上昇させるようになっている。すなわち、図示しない本体制御部からの駆動信号に基づき駆動手段が同期して駆動することにより、第1昇降部61および第2昇降部62が第1底板51、第2底板52を同期した状態(略水平状態)で上昇させる。その後、シート束Sの最上位シートS1の上面がフィラーセンサ38をONとした際(もしくはON後、所定時間上昇した後)、第1昇降部61および第2昇降部62は、第1底板51、第2底板52の上昇を停止する。このとき、従動ローラ42の下部に位置する誘電体ベルト43の表面と最上位シートS1の上面との間には、上述した通り、所定の間隔(例えば、2mm程度)が形成される。
【0063】
また、第2昇降部62は、第1底板51と同期した第2底板52の前記上昇に加えて、フィラーセンサ38がONとされた位置(給紙可能位置)において、さらに第2底板52を誘電体ベルト43に対して近接および離間させるようになっている。ここで、誘電体ベルト43に対して近接させるとは、図3(b)に示すように、第2底板52上に載置されたシート束Sの給紙方向先端側の上面が誘電体ベルト43の下面と面接触するように第2底板52を上昇させることをいう。ここで、上述のシート束Sの給紙方向先端側の上面は、吸着分離に必要な必要領域であって、誘電体ベルト43が最上位シートS1の分離を行うのに十分な吸着力を付与可能な接触領域である。一方、誘電体ベルト43に対して離間させるとは、図3(c)に示すように、最上位シートS1を吸着させた状態でシート束Sの上面を誘電体ベルト43から離間させるよう第2底板52を下降させることをいう。この給紙可能位置における第2底板52の上昇および下降動作においては、第2昇降部62は、第2底板52を第1底板51に対して平行に上昇および下降させるようになっている。
【0064】
次に、図3(a)〜図3(c)を参照して、シート分離給紙装置15の動作について説明する。
【0065】
まず、図3(a)に示すように、シート分離給紙装置15は、図示しない本体制御部からの給紙指令信号を受け取ると、駆動ローラ41を回転駆動し、誘電体ベルト43を周回駆動するとともに、帯電ローラ45を介して交流電源46から交番電圧が印加される。これにより、誘電体ベルト43の表面には、電荷パターンが形成される。このとき、第1底板51および第2底板52は、給紙可能位置にて停止した状態とされる。
【0066】
誘電体ベルト43への帯電完了後、図3(b)に示すように、第2昇降部62が第2底板52のみを水平状態を維持したまま上昇させる。これにより、シート束Sの給紙方向先端側が従動ローラ42の下部に位置する誘電体ベルト43の表面に接触し、これを上方に押し上げるようにして誘電体ベルト43が水平となるまで第2底板52が上昇する。そして、第2昇降部62は、誘電体ベルト43が水平となったことをローラ位置検出センサ47により検知されると、第2底板52の上昇を停止する。このとき、誘電体ベルト43の下面と最上位シートS1の上面が面接触する。そして、誘電体である最上位シートS1には誘電体ベルト43の表層の電荷パターンにより形成される不平等電界により、マクスウェル応力が働き、最上位シートS1が誘電体ベルト43に吸着される。
【0067】
次いで、図3(b)に示す位置で吸着に要する所定時間待機した後、図3(c)に示すように、第2昇降部62が第2底板52を給紙可能位置まで下降させる。これにより、最上位シートS1の給紙方向先端側は、シート束Sから分離され、誘電体ベルト43に吸着保持される。具体的には、最上位シートS1の吸着後、第2底板52の下降に伴い従動ローラ42が自重により下降し誘電体ベルト43が傾斜することで、シートのコシを利用したいわゆるめくり動作によって最上位シートS1がシート束Sから剥離される。ここで、一般に、電荷パターンにより発生するシート吸着力は、最上位シートS1を吸着した瞬間から一定時間は、2枚目以降のシートに作用するが、一定時間を経過した後は最上位シートS1にのみに作用し、2枚目以降のシートには作用しなくなる。本実施の形態では、上記めくり動作を実施することで、上記一定時間の短縮化が図られている。これにより、給紙の生産性を向上させている。また、本実施の形態の給紙方式では、ピックアップ手段とシートとの間の摩擦力を利用しないので、誘電体ベルト43とシート束Sとの接触圧を充分小さくすることができ、摩擦による重送が発生することはない。
【0068】
そして、誘電体ベルト43に吸着保持された最上位シートS1は、誘電体ベルト43の周回駆動に応じて駆動ローラ41にて曲率分離され、給紙方向に向けて搬送されて搬送経路10a(図2参照)に送り込まれる。搬送経路10aに送り込まれた最上位シートS1は、搬送ローラ対18およびレジストローラ対19によって、画像形成部14に搬送される(図1参照)。搬送ローラ対18と誘電体ベルト43の線速は同一にされており、搬送ローラ対18がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は、誘電体ベルト43も間欠駆動されるように制御される。また、誘電体ベルト43は、最上位シートS1の給紙方向後端が従動ローラ42の対向位置に達する前にシート束Sより離間され、2枚目のシートS2が誘電体ベルト43に吸着されないようにしている。
【0069】
連続して給紙を行う場合(連続給紙)には、図3(a)〜図3(c)で示す動作を繰り返し実行する。ここで、連続給紙によりシート束Sの積載量が減少していくと、これに応じて第2底板52の上昇および下降の移動量が増大する。このため、シート束Sの積載量、すなわちシート束Sの高さが予め設定されたシート束の高さを下回ったときに、第1底板51および第2底板52を同期させて上昇させる。このとき、同期させて上昇させるタイミングすなわち上記予め設定されたシート束の高さは、フィラーセンサ38がOFFとなったとき、あるいはOFF後所定枚数給紙したとき、もしくはOFF後所定時間経過したときとするのが好ましい。
【0070】
なお、除電用のローラ電極を備える場合は、除電用のローラ電極により誘電体ベルト43に交番電圧を印加することにより、帯電した誘電体ベルト43の電荷を除電することができる。
【0071】
具体的には、誘電体ベルト43の外周面に除電用のローラ電極を接触させ直流電源により直流電圧を印加した場合、誘電体ベルト43は印加される直流電圧がある電圧以下の電圧では帯電されず、この電圧を帯電開始電圧と言うが、帯電開始電圧の値V0は誘電体ベルト43の厚さや体積抵抗等により変化する。
【0072】
そこで、帯電開始電圧の値V0をピーク値として持つような交番する電圧を除電用のローラ電極に印加すると、帯電している誘電体ベルト43の表面電位がほぼ0Vに除電されることが確認されている。これは、印加電圧のピーク値を帯電開始電圧の値V0とすることにより、この印加電圧では誘電体である被帯電体を帯電させる能力はないが、被帯電体に帯電している空間電荷には移動させる力が働き、除電できることを意味する。また、交互に交番する印加電圧を用いることから、誘電体が(+)、(−)のどちらに帯電していても除電効果がある。しかし、帯電開始電圧以下の印加電圧では、除電不足が発生し、帯電開始電圧以上では、印加周波数(120Hz、v/f=1mm周期)の帯電が生じ、0Vに除電することができないので、除電用のローラ電極に印加する交番電圧は、ピーク値が誘電体ベルト43に対する帯電開始電圧になるように制御すればよい。
【0073】
以上のように、本実施の形態では、シート束Sから最上位シートS1を分離する際には、第2底板52に載置されたシート束Sの給紙方向前端側のみを第2昇降部62により上昇および下降させることが可能となる。このため、シート束Sの全部を上昇および下降させていた従来のシート分離給紙装置と比較して、シート束Sのうち吸着分離に必要な部分のみを昇降させればよいので、昇降機構にかかる負荷を小さくすることができ、例えば吸着分離にかかる時間を短縮させることができる。したがって、誘電体ベルト43とシート束Sとを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、駆動ローラ41を支点に従動ローラ42が回動することにより誘電体ベルト43が回動するので、シート束Sの位置が積載量に応じて変化した場合でも誘電体ベルト43の表面を最上位シートS1の上面に確実に面接触させることができる。また、ローラ位置検出センサ47により誘電体ベルト43がシート束Sに対して平行すなわち水平となったことを検知可能であるため、誘電体ベルト43の表面に最上位シートS1の上面が接触した時点でシート束Sの上昇を停止することができる。
【0075】
また、本実施の形態では、第2底板52を第1底板51に対して平行に上昇および下降させるので、シート束Sの積載量が変化しても誘電体ベルト43とシート束Sとの接触角度は変わらないため、吸着分離時にあっても最上位シートS1の上面の必要領域(給紙方向先端側の上面)を誘電体ベルト43に容易に接触させることができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、第1昇降部61および第2昇降部62をともに2本のアームからなるリンク機構で構成したが、これに限らず、例えばラックアンドピニオン機構で構成してもよいし、図4(a)、(b)に示すように、4本のアームからなる第1昇降部161および第2昇降部162としてもよい。具体的には、第2昇降部162を例に説明すると、第2昇降部162は、下アーム162a、162bの下方側の基端部を支点に下アーム162a、162bが回転することによりリンク機構の高さを変化させ、例えば図4(b)に示すように、第2底板52を上昇させるようになっている。このとき、上アーム162c、162dの上方側の基端部は、第2底板52に回動可能に支持されているが、給紙方向への移動は生じないようにその位置が固定されている。第1昇降部161についても同様である。また、第1昇降部61と第2昇降部62とで、一方を2本のアームからなるリンク機構とし、他方を4本のアームからなるリンク機構とし、その構成を異なるようにしてもよい。
【0077】
(第2の実施の形態)
次に、図5、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るシート分離給紙装置について説明する。
【0078】
なお、本実施の形態に係るシート分離給紙装置においては、本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置とは、第2底板および第2昇降部の構成が異なるが、他の構成は、略同様に構成されている。したがって、図1から図4に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0079】
図5に示すように、本実施の形態に係るシート分離給紙装置215は、吸着分離手段としての吸着分離部40と、シート束Sを積載するシート積載手段としてのシート積載部250と、シート積載部250を上昇および下降させる昇降手段としての昇降機構部260とを含んで構成されている。吸着分離部40は、第1の実施の形態と同様な構成であるため、説明を省略する。
【0080】
シート積載部250は、第1の実施の形態と同様の構成の第1底板51と、この第1底板51に対して支点252aを中心に上下に回動可能に取り付けられた第2底板252とを備えている。
【0081】
昇降機構部260は、第1の実施の形態と同様の構成の第1昇降部61と、第2底板52を上昇および下降させる第2昇降手段としての第2昇降部262とを備えている。
【0082】
第2昇降部262は、下方側の基端部を支点に回動可能な単一のアームからなり、装置本体に設けられた図示しないモータ等の駆動手段により上下に回動されるようになっている。なお、第2昇降部262は、アーム形状に限らず、例えば平板プレートで構成してもよい。第2昇降部262は、回動することにより第2底板252を上昇および下降させるようになっている。ここで、第2底板252の上昇とは、図6(b)に示すように、第1底板51に対して所定の角度で上方に傾斜させることをいう。また、第2底板252の下降とは、図6(b)に示す状態から図6(c)に示すように第2底板252を第1底板51と平行にすることをいう。
【0083】
ここで、第1昇降部61および第2昇降部262は、第1の実施の形態同様、シートの吸着分離を行わない待機時やシート補給時等においては第1底板51と同期させて第2底板252を上昇させるとともに、フィラーセンサ38のON時にその上昇が停止されるようになっている。
【0084】
また、第2昇降部262は、フィラーセンサ38がONとされた給紙可能位置において、さらに第2底板252を誘電体ベルト43に対して近接および離間させるようになっている。ここで、誘電体ベルト43に対して近接させるとは、図6(b)に示すように、第2底板252上に載置されたシート束Sの給紙方向先端側の上面(必要領域)が誘電体ベルト43の下面と面接触するように第2底板252を上方に向けて回動させることをいう。一方、誘電体ベルト43に対して離間させるとは、図6(c)に示すように、最上位シートS1を吸着させた状態でシート束Sの上面を誘電体ベルト43から離間させるよう第2底板252を下方に向けて回動させることをいう。
【0085】
次に、図6(a)〜図6(c)を参照して、シート分離給紙装置215の動作について説明する。
【0086】
まず、図6(a)に示すように、シート分離給紙装置215は、図示しない本体制御部からの給紙指令信号を受け取ると、駆動ローラ41を回転駆動し、誘電体ベルト43を周回駆動するとともに、帯電ローラ45を介して交流電源46から交番電圧が印加される。これにより、誘電体ベルト43の表面には、電荷パターンが形成される。このとき、第1底板51および第2底板252は、給紙可能位置にて停止した状態とされる。
【0087】
誘電体ベルト43への帯電完了後、図6(b)に示すように、第2昇降部262が図中、反時計回りに回動し、第2底板252の給紙方向先端側を上方に押し上げる。すなわち、第1底板51に対して第2底板252を上昇させる。そして、第2昇降部262は、シート束Sの給紙方向先端側の上面が駆動ローラ41の下部に位置する誘電体ベルト43の表面に接触したとき、第2底板252の回動(上昇)を停止する。すなわち、誘電体ベルト43が所定の傾斜角度となったことがローラ位置検出センサ47により検知されたとき、第2底板252の回動(上昇)が停止される。このため、本実施の形態では、ローラ位置検出センサ47は、第1の実施の形態と異なり誘電体ベルト43が所定の傾斜角度となったことを検知可能な位置に設置されている。また、このとき、シート束Sの給紙方向先端側が所定角度で傾斜し、傾斜した最上位シートS1の上面が誘電体ベルト43の下面に面接触する。そして、誘電体である最上位シートS1には誘電体ベルト43の表層の電荷パターンにより形成される不平等電界により、マクスウェル応力が働き、最上位シートS1が誘電体ベルト43に吸着される。
【0088】
次いで、図6(b)に示す位置で吸着に要する所定時間待機した後、図6(c)に示すように、第2昇降部262が第2底板252を給紙可能位置まで下降させる。これにより、最上位シートS1の給紙方向先端側は、シート束Sから分離され、誘電体ベルト43に吸着保持される。
【0089】
そして、誘電体ベルト43に吸着保持された最上位シートS1は、第1の実施の形態と同様、誘電体ベルト43の周回駆動に応じて駆動ローラ41にて曲率分離され、給紙方向に向けて搬送されて搬送経路10a(図2参照)に送り込まれる。搬送経路10aに送り込まれた最上位シートS1は、搬送ローラ対18およびレジストローラ対19によって、画像形成部14に搬送される(図1参照)。最上位シートS1の分離後の動作については、第1の実施の形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0090】
なお、連続給紙の場合についても、第1の実施の形態と同様である。ただし、本実施の形態では、シート束Sを誘電体ベルト43に確実に接触させるため第2底板252の傾斜角度を大きくする必要がある。したがって、一定の傾斜角度を維持するため、第1の実施の形態と比較して頻繁に第1底板51と第2底板252とを同期させて上昇させる。また、傾斜角度が大きくなった場合であっても、誘電体ベルト43が従動ローラ42の自重によりシート束Sの角度変化に追従するよう回動するので、最上位シートS1の上面と誘電体ベルト43の下面とを確実に面接触させることができる。
【0091】
以上のように、本実施の形態では、支点252aを中心に第2底板252を回動させることにより第2底板252を上昇および下降させるので、第2底板252の上昇時にはシート束Sの給紙方向先端部のみを持ち上げればよい。このため、シート束Sの全部を持ち上げる構成あるいはシート束Sの給紙方向先端側のみを第1底板と平行に上昇させる構成(第1の実施の形態)と比較して、より小さな駆動力でシート束Sの吸着分離に必要な部分のみを上昇させることができる。
【0092】
このため、昇降機構にかかる負荷を小さくすることができ、例えば吸着分離にかかる時間を短縮させることができる。したがって、誘電体ベルト43とシート束Sとを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができる。
【0093】
(第3の実施の形態)
次に、図7を参照して、本発明の第3の実施の形態に係るシート分離給紙装置について説明する。
【0094】
なお、本実施の形態に係るシート分離給紙装置においては、本発明の第1の実施の形態に係るシート分離給紙装置とは、シート積載部および昇降機構部の構成が異なるが、他の構成は、略同様に構成されている。したがって、図1から図4に示した第1の実施の形態と同一の符号を用いて説明し、特に相違点についてのみ詳述する。
【0095】
図7に示すように、本実施の形態に係るシート分離給紙装置315は、吸着分離手段としての吸着分離部40と、シート束Sを積載するシート積載手段としてのシート積載部350と、シート積載部350を上昇および下降させる昇降手段としての昇降機構部360とを含んで構成されている。吸着分離部40は、第1の実施の形態と同様な構成であるため、説明を省略する。
【0096】
シート積載部350は、シート束Sの給紙方向後端側が載置される第1底板351と、第1底板351上に独立して設けられ、吸着分離部40の下方でシート束Sの給紙方向先端側が載置される第2底板352とを備えている。本実施の形態では、第1底板351は、シート束Sを載置するシート載置部351aと、シート載置部351aに対して厚み方向に切欠かれ、第2底板352および第2昇降部362が配置される底板収容部351bとから構成されている。
【0097】
昇降機構部360は、第1底板351を上昇および下降させる第1昇降手段としての第1昇降部361と、第2底板352を上昇および下降させる第2昇降手段としての第2昇降部362とを備えている。これら第1底板351、第2底板352、第1昇降部361および第2昇降部362は、図示しない略平箱形状の給紙カセット内に配置されている。
【0098】
第1昇降部361は、第1の実施の形態と同様の構成のリンク機構で構成されている。第2昇降部362は、第1の実施の形態と同様の構成を有しているが、その配置箇所が第1の実施の形態と異なり、第1底板351の上記底板収容部351b上に設置されている。また、第2昇降部362を駆動するためモータ365が上記底板収容部351b上に設けられている。第2昇降部362は、モータ365の駆動によって第1底板351上で上昇および下降するようになっている。本実施の形態におけるモータ365は、本発明に係る第2駆動手段を構成している。
【0099】
本実施の形態では、シート束Sを給紙可能位置に上昇させるに際し、第1底板351と第2底板352とを同期させて上昇させる必要がない点で第1の実施の形態と異なるが、その他の動作については、第1の実施の形態と同様である。
【0100】
以上のように、本実施の形態では、第1昇降部361がシート束全体の上昇および下降を行い、第2昇降部362が最上位シートS1の吸着分離に必要な分だけ第2底板352を上昇させればよく、第2昇降部362の駆動量および可動範囲を小さくすることができる。このため、第2昇降部362を簡易かつコンパクトな構成とすることが可能となる。
【0101】
また、例えば第1底板51と第2底板52とをそれぞれ独立に設置した第1の実施の形態と比較して、それぞれの昇降手段の駆動制御を単純化することができる。すなわち、第1底板51と第2底板52とを独立に設置した第1の実施の形態の場合には、シート束全体の上昇および下降時、第1底板51と第2底板52とを同期してそれぞれの昇降手段(第1昇降部61、第2昇降部62)によって上下動させる必要があり、その駆動制御が複雑である。これに対して、本実施の形態では、第1底板351と第2底板352とを同期して駆動する必要がなく、その駆動制御が単純化される。
【0102】
また、本実施の形態では、第2昇降部362を駆動するモータ365が第1底板351の底板収容部351b上に設けられているので、モータ365と第2昇降部362との間の駆動伝達機構を簡易な構成とすることができる。すなわち、モータ365は、第1底板351の上昇および下降に連動して上下に移動するので、第1底板351が上昇および下降しても第2昇降部362との位置関係は不変である。このため、第1底板351の上昇および下降に応じて駆動伝達の経路を切り換えるなどの複雑な構成をとることなく、第2昇降部362を駆動することができる。
【0103】
なお、本実施の形態においては、第2底板352を第1の実施の形態と同様、第1底板351と平行、すなわち水平に上昇および下降させる構成としたが、これに限らず、例えば図8に示すように、第2の実施の形態と同様に、第1底板351に対して支点452aを中心に第2底板452を回動させる構成のシート分離給紙装置415としてもよい。この場合、第2底板452を回動させる単一のアームからなる第2昇降手段としての第2昇降部462は、第1底板351の底板収容部351b上に配置される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
以上のように、本発明に係るシート分離給紙装置および画像形成装置は、静電吸着を利用してシートの分離を行う際に無端状ベルトとシート束とを近接および離間させる構成であっても、高い生産性を得ることができるという効果を有し、積載されたシート束から最上面に位置するシートを1枚ずつ分離して給紙するシート分離給紙装置およびこのシート分離給紙装置を備えた例えば電子写真複写機、ファクシミリ装置、プリンタ装置等からなる画像形成装置等として有用である。
【符号の説明】
【0105】
10 複写機(画像形成装置)
14 画像形成部(画像形成手段)
15、215、315 シート分離給紙装置
40 吸着分離部(吸着分離部)
41 駆動ローラ(下流ローラ)
42 従動ローラ(上流ローラ)
43 誘電体ベルト
47 ローラ位置検出センサ(角度検知手段)
50、250、350 シート積載部(シート積載手段)
51、351 第1底板
52、252、352、452 第2底板
60、260、360 昇降機構部(昇降手段)
61、161、361 第1昇降部
62、162、262、362、462 第2昇降部
252a、452a 支点
351a シート載置部
351b 底板収容部
365 モータ(第2駆動手段)
S シート束
S1 最上位シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【特許文献1】特開平5−139548号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート束の給紙方向前端側の上部に配置され、前記シート束から最上位に位置する最上位シートを静電気力を用いて吸着保持するとともに前記シート束から分離する吸着分離手段を備えたシート分離給紙装置であって、
前記シート束を積載するシート積載手段と、
前記シート積載手段を上昇および下降させる昇降手段と、を備え、
前記シート積載手段は、前記シート束の給紙方向後端側が載置される第1底板と、前記第1底板と独立して設けられ、前記吸着分離手段の下方で前記シート束の給紙方向前端側が載置される第2底板とを有し、
前記昇降手段は、前記第1底板を上昇および下降させる第1昇降手段と、前記シート束の給紙方向前端側が前記吸着分離手段に対して近接および離間するよう前記第2底板を上昇および下降させる第2昇降手段とを有することを特徴とするシート分離給紙装置。
【請求項2】
前記吸着分離手段は、給紙方向下流側に設けられた下流ローラと、前記下流ローラに対して給紙方向上流に離隔して設けられ、前記下流ローラを支点に回動可能に構成された上流ローラと、前記上流ローラおよび前記下流ローラに架け渡された無端状の誘電体ベルトとを有し、
前記誘電体ベルトが前記シート束に対して平行となったことを検知する角度検知手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載のシート分離給紙装置。
【請求項3】
前記第2昇降手段は、前記第2底板を前記第1底板に対して平行に上昇および下降させることを特徴とする請求項1または2に記載のシート分離給紙装置。
【請求項4】
前記第2底板は、前記第1底板に対して支点を中心に回動可能に構成され、
前記第2昇降手段は、前記支点を中心に前記第2底板を回動させることにより前記第2底板を上昇および下降させることを特徴とする請求項1または2に記載のシート分離給紙装置。
【請求項5】
前記第2底板および前記第2昇降手段は、前記第1底板の給紙方向前端側の上面に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート分離給紙装置。
【請求項6】
前記第2昇降手段を駆動する第2駆動手段をさらに備え、
前記第2駆動手段は、前記第1底板に設けられることを特徴とする請求項5に記載のシート分離給紙装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート分離給紙装置を備えた画像形成装置であって、
前記シート分離給紙装置によって分離給紙された最上位シート上に画像を形成する画像形成手段を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−140231(P2012−140231A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−649(P2011−649)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】