説明

シート排出駆動装置および画像形成装置

【課題】ファーストプリントタイムの短縮化を図り、駆動源を減らして低コスト化を実現できる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】排出ローラ対51の回転軸51cに、定着ローラをシステム速度V1で回転させる駆動モータ61からの駆動力が伝達されるギア139と、スイッチバックのための反転モータ62からの回転駆動力が伝達されるプーリ140とが装着される。ギア139とプーリ140には、排出ローラ対51がシートを排出する場合の回転方向と同方向の回転駆動力のみを回転軸51cに伝達するワンウエイクラッチ201、211が内蔵されている。排出されるべきシートが定着ニップを搬送されている間には、反転モータ62をV1に相当する速度で回転させ、そのシートの後端が定着ニップを通過すると高速に切り替えて回転させることにより、排出ローラ対51が高速回転し、切り替え以降、シート排出に要する時間が短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの第1面と第2面に画像を形成する機能を有する画像形成装置に備えられるシート排出駆動装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプリンタ等の画像形成装置として、特許文献1には、上下に間隔をおいて下側に排出ローラを、上側に反転ローラを配置し、シートの第1面と第2面に画像を形成する両面プリントを行う場合、給紙部から1枚のシートP1を給送し、そのシートP1の第1面に中間転写ベルト上のトナー像を転写位置で転写した後、そのトナー像を定着ローラでシートP1の第1面に定着し、シートP1を反転路に導いて反転ローラでスイッチバックした後、循環路を介して転写位置に戻し、シートP1の第2面に中間転写ベルト上のトナー像を転写位置で転写した後、そのトナー像を定着ローラでシートP1の第2面に定着し、シートP1を排出路に導いて排出ローラで排出する構成が開示されている。
【0003】
この構成をとれば、いわゆるシート交互通紙を実行することができる。
シート交互通紙とは、第1面に画像が形成されたシートを1以上の所定枚数、循環路内に収容している状態で、給紙部と循環路とから交互にシートを転写位置に搬送し、給紙部からのシートについては、第1面に対する画像形成後、反転路に導き(排出せず)、循環路からのシートについては、第2面に対する画像形成後、排出路に導いて排出する動作を繰り返し行う搬送方式をいう。
【0004】
このように、上下に反転ローラと排出ローラという2対のローラを配置したシート交互通紙を用いると、そうでない構成に比べて両面プリントの生産性を高めることができる。
すなわち、シートのスイッチバックは、1枚のシートを前進と後退を切り替えて行う動作であり、ある程度の時間がかかる。このため、反転ローラと排出ローラを1対のローラで兼用した構成、例えば複数枚のシートを連続搬送して、順次、第1面への画像形成、反転路でのスイッチバック、循環路の搬送、第2面への画像形成、排出を行う、いわゆるシート循環搬送を行う構成をとれば、先行するシートと次のシートとの搬送間隔(用紙間隔)をスイッチバックに要する時間だけ空ける必要が生じ、用紙間隔が長くなって、両面プリントの生産性(単位時間当たりのプリント枚数)を高めることができない。
【0005】
これに対し、2組のローラを配置したシート交互通紙を用いると、画像形成後のシートを1枚ごとに反転ローラでスイッチバックを行い、排出ローラで排出することを交互に行うので、1枚のシートP1が反転ローラでスイッチバックして反転路を搬送されている間に次のシートP2が排出ローラから排出され、さらに次のシートP3が反転ローラに導かれるので、シートP1とP3の用紙間隔を1枚のシートのスイッチバックに要する時間以上の間隔をとっても、その間にシートP2を挿入することができ、このことはシート間隔を詰めることと同じであり、シート間隔を詰められる分、両面プリントの生産性を高められるからである。
【0006】
また、特許文献1では、定着ローラと排出ローラと反転ローラをそれぞれの個別のモータで回転駆動する構成をとり、シート排出の際、シートが定着ローラと排出ローラの両方に跨る状態で両ローラにより搬送されているときには、それぞれのローラをシステムスピード(プロセス速度)で回転駆動させ、シートの後端が定着ローラを通過すると、排出ローラだけをシステムスピードよりも高速回転させる制御を行っている。
【0007】
これにより、シートの後端が定着ローラを通過した以降もシステムスピードのまま搬送する構成よりも、シートが排出されるまでに要する時間が短縮され、第1ページ目のデータを受信開始してから、最初の1枚のシートがプリントされて機外に完全に排出されるまでに要する時間、いわゆるファーストプリントタイムの短縮化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−108587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の特許文献1の構成では、定着ローラと排出ローラと反転ローラとをそれぞれ専用のモータを用いるとしており、1つのローラに対して1つの駆動源を設けることは、高コストになるという問題がある。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シートをスイッチバックする機能とシートを排出する機能を有する構成において、モータなど駆動源を減らして低コスト化を図りつつ、シート排出時間の短縮、特にファーストプリントタイムを短縮することができるシート排出駆動装置および画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート排出駆動装置は、搬送されるシートの第1面に画像を書き込み、その画像を定着回転体によりシートに定着し、そのシートを反転路に導いて反転回転部材によりスイッチバックした後、循環路を介して画像書込位置に戻し、当該シートの第2面に画像を書き込み、その画像を定着回転体によりシートに定着した後、そのシートを排出路に導き排出回転部材により排出する画像形成装置に備えられるシート排出駆動装置であって、第1駆動源を有し、第1駆動源の回転駆動力により定着回転体を回転させる第1駆動手段と、第2駆動源を有し、第2駆動源の回転駆動力により反転回転部材の回転方向を正逆方向に切替かつ回転速度を可変可能な第2駆動手段と、第1駆動源からの回転駆動力と第2駆動源からの回転駆動力を排出回転部材に伝達する伝達機構と、を備え、前記伝達機構は、排出回転部材がシートの搬送と同方向に回転したときの回転方向を正方向としたとき、第1駆動源と第2駆動源のうち、排出回転部材の正方向への回転速度が速くなる方の駆動源からの回転駆動力を排出回転部材に伝達することを特徴とする。
【0011】
また、前記伝達機構は、第1駆動源からの回転駆動力が、排出回転部材を正方向に回転させる駆動力である場合に、その駆動力を排出回転部材に伝達し、正方向の反対の逆方向に回転させる駆動力である場合には、伝達させない第1クラッチ機構と、第2駆動源からの回転駆動力が、排出回転部材を正方向に回転させる駆動力である場合に、その駆動力を排出回転部材に伝達し、正方向の反対の逆方向に回転させる駆動力である場合には、伝達させない第2クラッチ機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
さらに、前記第1クラッチ機構と第2クラッチ機構は、ワンウエイクラッチからなることを特徴とする。
また、前記第1クラッチ機構と第2クラッチ機構は、それぞれが排出回転部材の回転軸に装着されていることを特徴とする。
また、前記第2駆動源の出力を制御する制御手段を備え、前記第1駆動手段は、定着回転体を、シートの基準の搬送速度に相当する速度V1で回転させ、前記伝達機構は、定着回転体が回転しているときに、第1駆動源からの回転駆動力が排出回転部材に伝達される場合には、排出回転部材を定着回転体と同じ速度で回転駆動させ、前記制御手段は、1枚のシートが排出回転部材と定着回転体とに跨って搬送されているときには、前記第2駆動源からの回転駆動力により排出回転部材の回転速度が前記速度V1を超えず、その1枚のシートの搬送方向後端が定着回転体を通過してから排出回転部材を通過するまでの搬送時間の少なくとも一部の時間に、排出回転部材の回転速度が前記速度V1よりも高速のV2に切り替わるように、前記第2駆動源の出力を切り替えることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記少なくとも一部の時間は、前記搬送時間の全ての時間であることを特徴とする。
また、前記第1駆動手段は、第1駆動源の回転駆動力を第1伝達経路により定着回転体に伝達し、前記第2駆動手段は、第2駆動源の回転駆動力を第2伝達経路により反転回転部材に伝達し、前記伝達機構は、第1伝達経路に接続される第3伝達経路と、第2伝達経路に接続される第4伝達経路を有し、第1伝達経路から第3伝達経路に伝達される回転駆動力と、第2伝達経路から第4伝達経路に伝達される回転駆動力とを前記排出回転部材に伝達することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、上記のシート排出駆動装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このように構成すれば、定着回転体と反転回転部材と排出回転部材の3つの回転体を、2つの駆動源で回転駆動することができるようになり、従来よりも駆動源を減らして低コスト化を実現することができる。そして、例えば1枚のシートが排出路に導かれた場合に、そのシートの搬送方向先端側と後端側が排出回転部材と定着回転体とに跨った状態のときには、そのシートを第1の速度で搬送し、その後、そのシートの搬送方向後端が定着回転体を通過すると、第2駆動源により排出回転部材の回転速度をそれまでよりも高速にして、シートの搬送速度を第1の速度よりも速い第2の速度に切り替えることにより、そのまま第1の速度を維持し続ける場合に比べて、シート排出までに要する時間を短くすることができ、シート排出時間の短縮、特にファーストプリントタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンタの全体の構成を示す図である。
【図2】駆動モータと反転モータからの回転駆動力を定着ローラと排出ローラ対と反転ローラ対に伝達する駆動力伝達機構の構成を示す図である。
【図3】図2のA−A線における駆動力伝達機構の一部概略断面を示す図である。
【図4】制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】両面モードにおけるシート交互通紙時にCPUによりシート搬送制御が実行される場合のシート搬送の様子を示す模式図である。
【図6】シート交互通紙における駆動力伝達機構による回転駆動力の伝達の様子を示す模式図である。
【図7】片面モードで1枚のシートが排出される場合における駆動力伝達機構による回転駆動力の伝達の様子を示す模式図である。
【図8】制御部による反転モータ駆動制御処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】スイッチバック制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図10】両面排出制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るシート排出駆動装置および画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)を例にして説明する。
<プリンタの全体構成>
図1は、プリンタ10の全体の構成を示す図である。
同図に示すように、プリンタ10は、両面プリント機能を有し、作像部1と、中間転写部2と、給送部3と、定着部4と、両面搬送部5と、制御部6などを備えており、ネットワーク、ここではLANに接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてプリントジョブを実行する。プリントジョブには、シートの一方の面に画像形成を行う片面モードによるジョブ、シートの第1面と第2面のそれぞれに画像形成を行う両面モードによるジョブが含まれる。
【0018】
作像部1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の各色のそれぞれに対応する作像ユニット10Y,10M,10C,10Kを備える。
作像ユニット10Y〜10Kは、矢印Aで示す方向にシステム速度V1(シートの基準の搬送速度に相当)で回転駆動される感光体ドラム11Y〜11Kと、感光体ドラム11Y〜11Kの周囲に配された帯電部12Y〜12K、露光部13Y〜13K、現像部14Y〜14Kなどからなる。なお、ここでは作像ユニット10Kの感光体ドラム11Kが、他の感光体ドラム11Y〜11Cよりも径の大きなものが使用されている。
【0019】
中間転写部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21を張架する複数本のローラ、ここでは駆動ローラ22と、従動ローラ23,24,25と、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11Y〜11Kと対向配置される一次転写ローラ26Y,26M,26C,26Kなどからなり、中間転写ベルト21は、矢印Bで示す方向にシステム速度V1で周回走行される。また、中間転写部2には、二次転写位置29において中間転写ベルト21を介して駆動ローラ22と対向配置される二次転写ローラ28およびクリーナ27が含まれる。
【0020】
給送部3は、シートSを収容する給紙カセット31と、給紙カセット31内のシートSを搬送路39に向けて1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ32と、繰り出されたシートSを矢印Cで示す方向に搬送する搬送ローラ対33と、二次転写位置29にシートSを送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対34などを備えている。
定着部4は、筒状の定着ローラ41と、定着ローラ41を押圧して定着ローラ41表面との間に定着ニップNを確保する加圧ローラ42と、定着ローラ41に内挿されるヒータ43と、定着ローラ41の表面温度を検出する温度センサ44などを備え、温度センサ44の温度検出結果に基づき、制御部6によりヒータ43への通電が制御されて、定着ローラ41の表面温度が定着温度、例えば180℃に維持される。定着ローラ41は、駆動モータ61からの回転駆動力により同図の示す方向に回転駆動され、加圧ローラ42は、定着ローラ41に従動回転する。
【0021】
定着ローラ41と加圧ローラ42によるシートSの搬送速度は、感光体ドラム11Y〜11Kの周速や中間転写ベルト21の周回速度などと同じシステム速度V1とされる。
両面搬送部5は、反転ローラ対52と、両面搬送ローラ対53a、53b、53cなどを備える。
制御部6は、外部の端末装置から送信されて来る画像信号を受信して、これをY〜K色用のデジタル画像信号に変換し、作像部1、中間転写部2、給送部3、定着部4、両面搬送部5等を制御して、片面モードと両面モードによる画像形成動作を実行させる。
【0022】
<片面モードの場合>
片面モードの画像形成の場合には、作像ユニット10Y〜10Kごとに、矢印A方向に回転する感光体ドラム11Y〜11Kがクリーナ(不図示)により清掃された後、帯電部12Y〜12Kにより一様に帯電された感光体ドラム11Y〜11Kの表面が露光部13Y〜13Kより露光されることにより、画像データに基づく静電潜像が感光体ドラム11Y〜11Kの表面に形成される。
【0023】
形成された静電潜像は、現像部14Y〜14Kによって現像剤としてのトナーにより現像されてトナー像として顕像化される。現像された各色トナー像は、一次転写ローラ26Y〜26Kによる静電力の作用により、感光体ドラム11Y〜11Kから中間転写ベルト21上に一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト21上の同じ位置に重ね合わせて一次転写されるようにタイミングをずらして実行される。
【0024】
中間転写ベルト21上に一次転写された各色トナー像は、矢印Bで示す方向に周回走行する中間転写ベルト21により二次転写位置29に移動する。
一方、中間転写ベルト21上の各色トナー像の移動タイミングに合わせて、給送部3からは、タイミングローラ対34を介してシートSが給送されて来ており、そのシートSは、周回する中間転写ベルト21と二次転写ローラ28の間に挟まれて搬送され、二次転写位置(画像書込位置)29において静電力により中間転写ベルト21上に多重転写されている各色トナー像が一括してシートSの第1面に二次転写される(書き込まれる。)。
【0025】
二次転写位置29を通過したシートSは、定着部4に搬送され、定着ニップNを通過する際に、シートS上の各色トナー像が加熱、加圧されてシートSの第1面に定着される。
定着部4を通過したシートSは、搬送路39から分岐している排出路35と反転路36のうち、切替爪37により排出路35に導かれる。
排出路35に導かれたシートSは、排出路35上を矢印Dで示す方向に沿って排出ローラ対51(排出回転部材)に向かい、排出ローラ対51により同方向に搬送されて機外に排出される。排出されたシートSは、排出トレイ38に収容される。なお、二次転写後に中間転写ベルト21の表面に残った残留トナーは、クリーナ27による清掃される。
【0026】
<両面モードの場合>
両面モードによる画像形成の場合には、二次転写位置29を通過したシートSは、定着部4から切替爪37により反転路36に導かれる。反転路36に導かれたシートSは、矢印Eに示す方向に搬送され、反転ローラ対52(反転回転部材)に向かう。反転路36上において、反転ローラ対52までの間の位置には、反転爪57が設けられている。
【0027】
反転爪57は、支点を中心に上下に揺動することにより、同図の実線で示す第1姿勢と破線で示す第2姿勢に切り替え可能に構成されている。反転路36上に、反転ローラ対52に向かうシートSが存在しないときには、反転爪57の自重で第1姿勢になり、反転ローラ対52に向かうシートSが反転爪57を通過するときに、シートSの先端が反転爪57を押し上げることにより、反転爪57が第2姿勢に切り替わり、シートSの後端が反転爪57を通過すると、反転爪57が自重により元の第1姿勢に戻るようになっている。
【0028】
反転爪57を通過したシートSは、反転ローラ対52まで搬送される。
この時点では、反転ローラ対52は、同図の実線で示す方向に回転しており、シートSは、反転ローラ対52により、さらに矢印Eで示す方向に搬送される。
シートSの搬送方向先端(シートの先端)が反転ローラ対52を通過した後、シートSの搬送方向後端(シートの後端)が反転ローラ対52を通過する直前のタイミングで反転ローラ対52が逆転駆動される。この反転ローラ対52の逆転駆動により、シートSが反転して矢印Fで示す方向に搬送される(スイッチバック)。このとき、反転爪57が第1姿勢(実線)に戻っているので、スイッチバックされた後のシートSの先端は、反転爪57の上側を案内されて、循環路58に導かれる。
【0029】
循環路58に導かれたシートSは、両面搬送ローラ対53a〜53cにより矢印Gで示す方向に搬送され、再び搬送路39に戻され、タイミングローラ対34を介して、再度、二次転写位置29まで搬送される。この搬送動作によるシートSの二次転写位置29への移動タイミングに合わせて、作像部1と中間転写部2において第2面に対する各色トナー像の作像動作が行われており、中間転写ベルト21上に重ね合わされた各色トナー像が二次転写位置29において一括してシートSの第2面に二次転写される。
【0030】
二次転写位置29において第2面に各色トナー像が二次転写されたシートSは、定着部4に搬送され、定着部4においてその各色トナー像がシートSの第2面に定着される。定着部4を通過したシートSは、切替爪37により排出路35に導かれ、排出路35において排出ローラ対51により搬送されて機外に排出される。
複数枚のシートを連続給紙して両面モードを実行するジョブの場合には、上記のシート交互通紙が実行される。シート交互通紙によるシート搬送の様子については、後述する。
【0031】
シートSの搬送路39には、定着ニップNよりもシート搬送方向の下流側近傍の位置にシート検出センサ9が設けられ、排出路35には、排出ローラ対51よりもシート搬送方向の上流側近傍の位置にシート検出センサ7が設けられ、反転路36には、反転ローラ対52よりもシート搬送方向の上流側近傍の位置にシート検出センサ8が設けられている。
シート検出センサ7、8、9のそれぞれは、搬送されるシートSの先端と後端を検出し、その検出信号を制御部6に送るものであり、例えば反射型や透過型の光学センサが用いられる。シートを検出できるものであれば、他の種類のセンサなどであっても構わない。
【0032】
切替爪37は、制御部6により制御される切替モータ63の駆動力により、シートSを排出路35に導く姿勢と反転路36に導く姿勢とに姿勢変更される。なお、切替爪37を姿勢変更することが可能であれば良く、アクチュエータとして、モータに代えて例えばソレノイドなどを用いるとして良い。
排出ローラ対51は、上側のローラ51aと下側のローラ51bからなり、ここでは上側のローラ51aが駆動側、下側のローラ51bが従動側になっている。駆動側のローラ51aは、駆動モータ61と反転モータ62からの回転駆動力を受けて、同図に示す方向に回転駆動され、従動側のローラ51bは、ローラ51aに従動回転する。
【0033】
反転ローラ対52は、上側のローラ52aと下側のローラ52bからなり、ここでは上側のローラ52aが駆動側、下側のローラ52bが従動側になっている。駆動側のローラ52aは、反転モータ62からの回転駆動力により、同図に示す方向(正方向)とこれの反対方向(逆方向)に切り替えて回転駆動され、従動側のローラ52bは、ローラ52aに従動回転する。
【0034】
<駆動力伝達機構について>
図2は、駆動モータ61と反転モータ62からの回転駆動力を定着ローラ41と排出ローラ対51と反転ローラ対52に伝達する駆動力伝達機構100の構成を示す図であり、図3は、図2のA−A線における駆動力伝達機構100の一部概略断面を示す図である。
図2に示すように、駆動力伝達機構100は、第1伝達機構101と第2伝達機構102と第3伝達機構103を備える。
【0035】
<第1伝達機構>
第1伝達機構101は、駆動モータ61の回転駆動力を定着ローラ41に伝達する機構であり、駆動モータ61の出力軸に軸着されたギア111と、ギア111に噛み合うギア112と、ギア112に噛み合うギア113を備える。ギア113は、定着ローラ41の装置背面側の端部に装着されている。
【0036】
駆動モータ61の出力軸が同図の矢印方向(正方向)に回転すると、その回転駆動力がギア111〜113を介して定着ローラ41に伝達され、定着ローラ41が同図の矢印方向(正方向)に回転駆動されると共に、これに従動して加圧ローラ42が回転する。この正方向は、シートSを搬送するときの回転方向に相当する。この意味で、駆動モータ61と第1伝達機構101は、定着ローラ41を回転させる第1駆動手段として機能し、ギア111〜113などは、駆動モータ61の回転駆動力を定着ローラ41に伝達する第1伝達経路を構成するものといえる。
【0037】
<第2伝達機構>
第2伝達機構102は、反転モータ62の回転駆動力を反転ローラ対52に伝達する機構であり、反転モータ62の出力軸に装着されたプーリ121と、反転ローラ対52の上側のローラ52aにおける回転軸52cの装置背面側の端部に装着されたプーリ122と、プーリ121、122に巻き掛けられた歯付きベルト123を備える。
【0038】
反転モータ62は、図3に示すように装置本体の側板90の装置背面側に配置され、その出力軸が側板90に設けられた透孔を介して装置正面側に向かって突出している。
反転ローラ対52のローラ52aは、その回転軸52cの装置背面側の端部が軸受91を介して側板90に回転自在に支持されており、ローラ52bは、その回転軸52dの装置背面側の端部が軸受92を介して側板90に回転自在に支持されている。
【0039】
ローラ52aの回転軸52cには、側板90を挟んで装置正面側にプーリ122が装着され、装置背面側にプーリ142が装着されている。これらプーリ122と142は、回転軸52cと一体回転するようになっている。
反転モータ62の出力軸が図2の実線で示す矢印の方向(正方向)に回転すると、その回転駆動力がプーリ121、ベルト123、プーリ122を介してローラ52aに伝達される。これにより、反転ローラ対52が正方向に回転する。この正方向は、定着部4から送られて来たシートSをその搬送方向と同方向に搬送するときの回転方向に相当する。
【0040】
一方、反転モータ62の出力軸が図2の破線で示す矢印の方向に回転(逆転)すると、その回転駆動力が反転ローラ対52のローラ52aに伝達され、反転ローラ対52が正方向とは反対の逆方向に回転する。この逆方向は、定着部4から送られて来たシートSを逆方向に搬送(反転)するときの回転方向に相当する。反転モータ62から発せられる駆動力の正逆方向の切り替えにより、シートSがスイッチバックされる。この意味で、反転モータ62と第2伝達機構102は、反転ローラ対52を正逆方向に切り替えて回転可能な第2駆動手段として機能し、プーリ121、122、ベルト123などは、反転モータ62の回転駆動力を反転ローラ対52に伝達する第2伝達経路を構成するものといえる。
【0041】
<第3伝達機構>
第3伝達機構103は、駆動モータ61から出力される回転駆動力と反転モータ62から出力される回転駆動力をクラッチ機構、ここではワンウエイクラッチを介して排出ローラ対51に伝達する機構であり、ギア131,132、歯付きベルト133、ギア134〜139、プーリ140、歯付きベルト141、プーリ142を備える。
【0042】
ギア131は、駆動モータ61の出力軸に装着されたギア111に噛み合っている。
ギア132は、大径のギア部151と小径のプーリ部152とが一体に構成されてなり、ギア部151がギア131と噛み合っている。ギア134も、ギア132と同様に、大径のギア部161と小径のプーリ部162とが一体に構成されてなり、ギア部161がギア135と噛み合っている。歯付きベルト133は、プーリ部152とプーリ部162とに掛け渡されている。ギア135は、ギア136と噛み合い、ギア136は、ギア137と噛み合い、ギア137は、ギア138と噛み合っている。
【0043】
ギア136〜138は、図3に示すように側板90と、これよりも装置背面側に配置されたフレーム99との間に架設された軸96〜98に回転自在に支持されている。
ギア139とプーリ140は、排出ローラ対51のローラ51aの回転軸51cにおける装置背面側の端部に装着されている。回転軸51cの装置背面側の端部は、側板90から軸受93を介して装置背面側に飛び出した状態で側板90に回転自在に支持されており、この装置背面側に飛び出した端部に、側板90に遠い方からギア139とプーリ140とが、この順に回転軸51cの同軸上に装着される位置関係になっている。
【0044】
排出ローラ対51のローラ51bは、その回転軸51dの装置背面側の端部が軸受を介して側板90に回転自在に支持されている。ギア139は、ギア138と噛み合い、歯付きベルト141は、プーリ140とプーリ142とに掛け渡されている。
ギア139は、同図の拡大図に示すように、ワンウエイクラッチ201が内蔵されてなり、ワンウエイクラッチ201を介してギア本体部202が回転軸51cに支持されている。プーリ140も同様に、ワンウエイクラッチ211が内蔵されてなり、ワンウエイクラッチ211を介してプーリ本体部212が回転軸51cに支持されている。ワンウエイクラッチ201、211は、一方向の回転駆動力だけを伝達し、これとは逆方向の回転駆動力を伝達させない機能を有するクラッチである。
【0045】
ここでは、ワンウエイクラッチ201は、回転軸51cを図2の実線で示す方向(正方向)に回転させるための回転駆動力がギア本体部202に伝達された場合にだけ、その回転駆動力を回転軸51cに伝達し、これとは反対の方向(逆方向)の回転駆動力がギア本体部202に伝達された場合には、ギア本体部202を回転軸51cに対してスリップさせて、その回転駆動力を回転軸51cに伝達しないように、そのワンウエイの方向が決められている。
【0046】
同様に、ワンウエイクラッチ211は、回転軸51cを正方向に回転させるための回転駆動力がプーリ本体部212に伝達された場合にだけ、その回転駆動力を回転軸51cに伝達し、逆方向の回転駆動力がプーリ本体部212に伝達された場合には、プーリ本体部212を回転軸51cに対してスリップさせて、その回転駆動力を回転軸51cに伝達しないように、そのワンウエイの方向が決められている。
【0047】
ワンウエイクラッチの特性から、駆動モータ61と反転モータ62の両方から正方向の回転駆動力が同時にギア本体部202とプーリ本体部212に伝達された場合には、回転軸51cの回転速度が速くなる方の回転駆動力が回転軸51cに伝達され、遅い方の回転駆動力は伝達されなくなる。
このような構成において、駆動モータ61の出力軸が図2に示す正方向に回転すると、その回転駆動力がギア111、131〜138を介してギア139に伝達される。
【0048】
駆動モータ61からの回転駆動力により回転軸51cが回転される場合のその回転速度が、反転モータ62からの回転駆動力により回転軸51cが回転される場合のその回転速度よりも速ければ、駆動モータ61からの回転駆動力がワンウエイクラッチ201を介して回転軸51cに伝達される。
これにより、回転軸51cが正方向に回転駆動される。この正方向は、定着部4から送られて来たシートSをその搬送方向と同方向に搬送するときの回転方向に相当する。この意味で、ギア131〜139、歯付きベルト133などは、駆動モータ61の回転駆動力を定着ローラ41に伝達する第1伝達経路に接続され、第1伝達経路から伝達される回転駆動力を排出ローラ対51に伝達する第3伝達経路を構成するといえる。
【0049】
駆動モータ61からの回転駆動力は、定着ローラ41と排出ローラ対51の双方に伝達されるが、駆動モータ61が一定速度で回転したときに定着ローラ41の回転速度(周速)とローラ51aの回転速度(周速)が同じ、すなわち定着ローラ41によるシート搬送速度と排出ローラ対51によるシート搬送速度とが同速になるように、上記の各ギアにおけるギア(変速)比が設定(駆動力の伝達経路が構成)されている。
【0050】
一方、反転モータ62の出力軸が正方向(実線で示す方向)に回転(正転)すると、その回転駆動力がプーリ121、歯付きベルト123、プーリ122、回転軸52c、プーリ142、歯付きベルト141を介してプーリ140に伝達される。
反転モータ62からの回転駆動力により回転軸51cが回転される場合のその回転速度が、駆動モータ61からの回転駆動力により回転軸51cが回転される場合のその回転速度よりも速ければ、反転モータ62の回転駆動力がワンウエイクラッチ211を介して回転軸51cに伝達される。これにより、回転軸51cが正方向に回転駆動される。この意味で、プーリ140,142、歯付きベルト141などは、反転モータ62の回転駆動力を反転ローラ対52に伝達する第2伝達経路に接続され、第2伝達経路から伝達される回転駆動力を排出ローラ対51に伝達する第4伝達経路を構成するといえる。
【0051】
反転モータ62の回転駆動力は、反転ローラ対52と排出ローラ対51の双方に伝達されるが、反転モータ62が一定速度で正回転したときにローラ52aの回転速度(周速)とローラ51aの回転速度(周速)が同じ、すなわち反転ローラ対52によるシート搬送速度と排出ローラ対51によるシート搬送速度が同速になるように、各ギアのギアにおけるギア比が設定(駆動力の伝達経路が構成)されている。
【0052】
シートSのスイッチバック時に、反転モータ62の出力軸が逆方向(破線で示す方向)に回転(逆転)した場合には、その回転駆動力がプーリ121、歯付きベルト123、プーリ122、回転軸52c、プーリ142、歯付きベルト141を介してプーリ140まで伝達されるが、回転方向が正方向の逆なので、ワンウエイクラッチ211がスリップして、その回転駆動力が回転軸51cには伝達されない。
【0053】
従って、シートSのスイッチバックにより反転ローラ対52が逆回転している間、反転モータ62からの回転駆動力が排出ローラ対51には伝達されず、排出ローラ対51が正方向とは反対の逆方向に回転することはない。
このように排出ローラ対51のローラ51aの回転軸51cに2つのワンウエイクラッチ201と211を同軸上に設けているのは、駆動モータ61と反転モータ62の2つの駆動源を用いて、定着ローラ41と排出ローラ対51と反転ローラ対52という3つの被駆動対象を回転駆動させるためである。
【0054】
すなわち、(a)定着ローラ41をシステム速度V1に相当する一定の速度で回転させつつ、(b)反転ローラ対52の回転を正逆方向に切り替えてシートのスイッチバックを行い、(c)排出ローラ対51によるシート搬送速度をシステム速度V1とこれよりも速い高速V2とに切り替えてファーストプリントタイムの短縮を図るものである。
ここで、定着ローラ41は、システム速度V1に相当する一定の速度で回転される。これは、次の理由による。本実施の形態では、定着ローラ41や加圧ローラ42は、その径や材質などが寿命との関係からシステム速度V1を基準に設計されており、システム速度V1を超えた高速の回転を行えないからである。
【0055】
別の理由として、通常、定着ローラ41は、定着ニップNの形成のため加圧ローラ42により高い圧力で圧接されているのでトルク負荷が大きく、このため定着ローラ41を回転駆動するためのモータは、モータサイズの大きなものが使用される。定着ローラ41をシステム速度V1に相当する速度で回転させるのに大サイズのモータを使用しなければならないところ、システム速度V1よりも高速で回転させるには、さらに大きなサイズのモータを使用しなければならず、このような大きなサイズのモータを、ファーストプリントタイムの短縮を達成するためだけに使用するのは効率が悪くなる場合があるからである。
【0056】
また、定着ローラ41よりもシート搬送方向上流に配される搬送ローラ等も共用で駆動される構成がとられる場合も多くあり、このような構成であれば、当然に定着ローラ41だけを高速回転に切り替えることはできないことになる。
反転ローラ対52は、シートSのスイッチバックのために正逆方向に回転を切り替える必要があり、駆動モータ61とは別の駆動源である反転モータ62により正逆方向に回転が切り替えられる。
【0057】
排出ローラ対51は、1枚のシートSについてその先端部と後端部が排出ローラ対51と定着ニップNに跨って搬送される場合に、そのシートSを定着ローラ41と同じシステム速度V1で搬送させる必要がある。このため、専用の駆動源を設けないとすれば、駆動モータ61の回転駆動力により定着ローラ41と同時に回転される構成をとれれば良い。
ところが、駆動モータ61は、定着ローラ41をシステム速度V1で回転させるために一定速度で回転されるので、駆動モータ61からの回転駆動力だけでは、排出ローラ対51を高速回転に切り替えることができない。
【0058】
排出ローラ対51を高速回転させることができなければ、片面モードにおいて1枚目のシートSの後端が定着ニップNを通過してから、その1枚目のシートSの後端が排出ローラ対51を通過するまでの間、システム速度V1からこれよりも速い高速V2に切り替えることができず、ファーストプリントタイムを短縮できなくなる。
そこで、本実施の形態では、排出ローラ対51を高速回転に切替可能なように、排出ローラ対51のローラ51aの回転軸51cへの駆動モータ61からの駆動力の伝達経路にワンウエイクラッチ201を設けると共に、反転モータ62からの駆動力の伝達経路にワンウエイクラッチ211を設け、駆動モータ61と反転モータ62のうち、正方向に回転速度の速い方の回転駆動力が排出ローラ対51に伝達されつつ、逆方向の回転駆動力が伝達されない構成をとり、排出ローラ対51を高速回転させる必要のあるときだけ、反転モータ62を正方向に高速回転に可変させる高速制御を行うことにより、2つの駆動源で3つの被駆動対象を回転駆動させることができるようにしたものである。
【0059】
高速制御以外の通常時には、駆動モータ61を、シートSをシステム速度V1で搬送させるための回転速度V1aで回転駆動させ、反転モータ62を、シートSをシステム速度V1で搬送させるための回転速度V1b(正転と逆転で同速)で回転駆動させ、高速制御時だけ、反転モータ62を、シートSを高速V2で搬送させるための回転速度V2b(正転)に切り替えて回転駆動させるようになっている。この回転速度の切り替え制御は、制御部6により実行される。
【0060】
<制御部6の構成>
図4は、制御部6の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、制御部6は、主な構成要素として、CPU71と、通信インターフェース(I/F)部72と、ROM73と、RAM74と、画像メモリ75と、速度情報記憶部76と、タイマー77を備え、各部は相互に通信可能になっている。
【0061】
通信I/F部72は、LANカード、LANボードといったLANに接続するためのインターフェースであり、外部からのプリントジョブのデータを受信して、受信したデータをCPU71に送る。
CPU71は、通信I/F部72からのプリントジョブのデータをY〜Kの再現色の画像データに変換して、画像メモリ75に出力し、この画像データを再現色ごとに格納させる。また、プリント実行時には、この画像データを画像メモリ75から読み出して、作像部1や中間転写部2などの動作をタイミングを取りながら制御して、読み出した画像データに基づき片面と両面モードのプリントジョブを円滑に実行させる。
【0062】
両面モードのプリントジョブでは、CPU71は、切替モータ63を制御して切替爪37を作動させ、シート1枚単位で、第1面に画像が転写されたシートSを反転路36に導き、第2面に画像が転写されたシートSを排出路35に導く搬送路の切り替えを行う。さらに、両面モードでは、シート交互通紙を実行する。
また、CPU71は、シート検出センサ7の検出信号に基づき、シートSの後端が排出ローラ対51を通過したことを検出し、シート検出センサ8の検出信号に基づき、シートSの後端が反転ローラ対52を通過する直前の位置まで搬送されたことを検出し、シート検出センサ9の検出信号に基づき、シートSが定着ニップNを通過したことを検出する。さらに、CPU71は、反転モータ62を制御して、その出力軸の回転駆動力を可変出力させ、また回転方向を正逆方向に切り替える。
【0063】
ROM73には、画像形成動作に関する制御プログラムなどが格納されており、RAM74は、CPU71のワークエリアとして用いられる。
速度情報記憶部76は、不揮発性の記憶部であり、シートSをシステム速度V1で搬送するときの駆動モータ61の回転速度V1aを示す情報と、シートSをシステム速度V1とこれよりも速い高速V2とに切り替えて搬送するときの反転モータ62の回転速度V1bとV2bを示す情報とが記憶されている。
【0064】
CPU71は、速度情報記憶部76の情報を読み出すことにより、シートSをシステム速度V1(スイッチバック時を含む)と高速V2とに切り替えて搬送するときの駆動モータ61と反転モータ62の目標となる回転速度V1a、V1b、V2bを取得して、駆動モータ61と反転モータ62をその目標の回転速度で回転させる。
タイマー77は、後述する反転モータ駆動制御に用いられる。
【0065】
<両面モードにおけるシート交互通紙時のシート搬送制御>
図5は、シート交互通紙時にCPU71によりシート搬送制御が実行される場合のシート搬送の様子を示す模式図である。同図に示すP1、P2・・は、給紙カセット31から給送されるシートの連番を示している。
図5(a)は、第1面(裏面)に画像が転写されたシートP1が定着部4を通って反転ローラ対52に向かって搬送される様子を示している。
【0066】
図5(b)は、シートP1が反転ローラ対52によりスイッチバックされている間に、第1面(裏面)に画像が転写されたシートP2が定着部4を通って反転ローラ対52に向かって搬送される様子を示している。
図5(c)は、スイッチバックを終わったシートP1が循環路58を搬送されつつ、シートP2が反転ローラ対52によりスイッチバックされている間に、第1面(裏面)に画像が転写されたシートP3が定着部4を通って反転ローラ対52に向かって搬送される様子を示している。
【0067】
図5(d)は、スイッチバックを終わったシートP2が循環路58を搬送されつつ、シートP3が反転ローラ対52に向かって搬送されると共に、循環路58からシートP1がタイミングローラ対34に向けて搬送される様子を示している。
図5(e)は、シートP2が循環路58内に収容されつつ、シートP3が反転ローラ対52によりスイッチバックされている間に、第2面(表面)に画像が転写されたシートP1が排出ローラ対51により搬送されると共に、新たなシートP4が給送される様子を示している。
【0068】
図5(f)は、シートP2とP3が循環路58内に収容されつつ、シートP1が排出ローラ対51により排出されると共に、第1面(裏面)に画像が転写されたシートP4が定着部4を通って反転ローラ対52に向かって搬送される様子を示している。
図5(g)は、シートP3が循環路58を搬送されつつ、シートP4が反転ローラ対52に向かって搬送されると共に、循環路58からシートP2がタイミングローラ対34に向けて搬送される様子を示している。
【0069】
図5(h)は、シートP3が循環路58内に収容されつつ、シートP4が反転ローラ対52によりスイッチバックされている間に、第2面(表面)に画像が転写されたシートP2が排出ローラ対51により搬送されると共に、新たなシートP5が給送される様子を示している。
図5(i)は、シートP3とP4が循環路58内に収容されつつ、シートP2が排出ローラ対51により排出されると共に、第1面(裏面)に画像が転写されたシートP5が定着部4を通って反転ローラ対52に向かって搬送される様子を示している。
【0070】
図5(j)は、シートP4が循環路58を搬送されつつ、シートP5が反転ローラ対52に向かって搬送されると共に、循環路58からシートP3がタイミングローラ対34に向けて搬送される様子を示している。
図5(k)は、シートP4が循環路58内に収容されつつ、シートP5が反転ローラ対52によりスイッチバックされている間に、第2面(表面)に画像が転写されたシートP3が排出ローラ対51により搬送されると共に、新たなシートP6が給送される様子を示している。P6以降の各シートについても、上記の(i)〜(k)の繰り返しにより、第2面に画像が転写された各シートが順次、排出されていく。
【0071】
シート交互通紙では、上記のような搬送順序で各シートが搬送路39上で重なり合うことがないように、予め各シートの搬送タイミングが決められており、その搬送タイミングに基づいてシートの搬送制御が実行される。
シート交互通紙を行うと、両面プリントの順序がシートP1の第1面、シートP2の第1面、シートP3の第1面、シートP1の第2面、シートP4の第1面、シートP2の第2面、シートP5の第1面、シートP3の第2面、シートP6の第1面・・というように、シートP3からのシートについては、プリント面が第1面と第2面の交互になる。これにより、上記のシート循環搬送に比べて、シート間隔を詰めることができ、両面の生産性を向上することができる。
【0072】
<シート交互通紙時における駆動力伝達機構による回転駆動力の伝達について>
図6は、シート交互通紙における駆動力伝達機構100による回転駆動力の伝達の様子を示す模式図である。図6(a)において、矢印101aが駆動モータ61から定着ローラ41への回転駆動力の伝達経路に相当し、矢印102aが反転モータ62から反転ローラ対52への回転駆動力の伝達経路に相当し、矢印103aが駆動モータ61から排出ローラ対51への回転駆動力の伝達経路に相当し、矢印104aが反転モータ62から排出ローラ対51への回転駆動力の伝達経路を104aに相当する。
【0073】
図6(a)は、シートP1のスイッチバック時(図5(b)に相当)を示し、図6(b)は、シートP1の排出時(図5(e)に相当)を示している。
シート交互通紙では、シートがシステム速度V1で搬送されるので、図6(a)と(b)の両方とも、駆動モータ61は、回転速度V1aで回転駆動され、反転モータ62は、回転速度V1bで回転駆動される。
【0074】
排出ローラ対51のローラ51aには、ワンウエイクラッチ201と211を介して駆動モータ61からの回転駆動力と反転モータ62からの正方向の回転駆動力が同時に伝達されるが、いずれの回転駆動力もシステム速度V1に相当する大きさのものであるため、排出ローラ対51は、システム速度V1に相当する速度(周速V1)で回転駆動される。
図6(a)では、排出ローラ対51によりシートが搬送されておらず、図6(b)では、シートP1の先端側が排出ローラ対51により搬送され、同時に後端側が定着ローラ41により搬送される状態(シートP1が排出ローラ対51と定着ニップNとに跨った状態)で搬送されている。この搬送状態では、排出ローラ対51が定着ローラ41と同速のシステム速度V1に相当する速度(周速V1)で回転しているので、シートP1に、排出ローラ対51と定着ニップN間での搬送方向の引っ張り力が作用することがなく、スムーズなシート搬送が行われる。
【0075】
なお、図6(b)において、シートP1の搬送と同時に、シートP3のスイッチバックが行われる様子が示されており、スイッチバック時に反転モータ62が逆転するが、上記のように反転モータ62が逆転しても、その逆方向の回転駆動力は排出ローラ対51に伝わらないので、排出ローラ対51の正方向への回転に影響を与えることはない。
<1枚のシートSの排出時における回転駆動力の伝達について>
図7は、片面モードで1枚のシートSが排出される場合における駆動力伝達機構100による回転駆動力の伝達の様子を示す模式図であり、図7(a)は、シートSが排出ローラ対51と定着ローラ41とに跨って搬送されている状態を示し、図7(b)は、シートSの後端が定着ニップNを通過した直後の状態を示している。
【0076】
図7(a)に示すように、1枚のシートSが排出ローラ対51と定着ローラ41とに跨って搬送されている状態では、排出ローラ対51と定着ローラ41の双方による搬送速度をシステム速度V1に一致させるため、駆動モータ61が回転速度V1aで回転駆動される。反転モータ62については、回転速度V1bで正回転されるが、シートSの後端が定着ニップNを通過するまでの間には、回転停止状態であっても良い。
【0077】
一方、図7(b)に示すように、シートSの後端が定着ニップNを通過した直後に反転モータ62だけその回転速度が正方向の高速のV2bに切り替えられる。正方向に高速回転される反転モータ62の回転駆動力が排出ローラ対51のワンウエイクラッチ211を介してローラ51aに伝達され、排出ローラ対51によるシート搬送速度がシステム速度V1よりも速い高速V2に切り替わる。なお、このときには駆動モータ61がV1aで回転しているが、排出ローラ対51の回転軸51cには、駆動モータ61よりも高速の回転駆動力が反転モータ62から伝達されるので、駆動モータ61からの駆動力はワンウエイクラッチ201のスリップにより回転軸51cには伝達されない。
【0078】
排出ローラ対51の回転速度が高速V2bに切り替わることにより、この切り替え時以降から当該シートSが完全に機外に排出されるまでに要する時間が、システム速度V1のまま搬送を続ける場合よりも短くなり、この短くなった時間分だけ、1枚のシートSに対するファーストプリントタイムを短縮することができる。
上記の高速制御は、片面モードだけでなく、後述のように両面モードによるプリントジョブの最後に給送されるシート(最終紙)が排出される場合にも適用される。
【0079】
<反転モータ62の駆動制御>
図8は、制御部6による反転モータ62の駆動制御処理の内容を示すフローチャートである。当該駆動制御処理は、プリントジョブ単位で実行され、当該ジョブにおいて複数枚のシートが搬送されるときには、給紙カセット31から給送される順に、シートP1、P2・・Pnと番号を付して規定するものとする。
【0080】
同図に示すように、変数nを「1」に設定する(ステップS1)。
プリントジョブ実行中にシステム速度V1で搬送される1枚のシートPn(ここでは、P1とする。)の先端が定着ニップNを通過したか否かを判断する(ステップS2)。
この判断は、シート検出センサ9によるシートP1の先端の検出信号を受信することにより行われる。
【0081】
システム速度V1で搬送されるシートP1の先端が定着ニップNを通過したことを判断すると(ステップS2で「YES」)、反転モータ62をシステム速度V1に相当する回転速度V1bで正転させる(ステップS3)。
当該プリントジョブが片面モードによるジョブであるか否かを判断する(ステップS4)。片面モードの場合、シートP1は排出路35に導かれて排出されるが、両面モードの場合、第1面と第2面の両方に画像が形成されていれば排出路35に導かれ、第1面だけに画像が形成されていれば、反転路36に導かれてスイッチバックされることになり、シートの搬送径路が異なるので、以下、各モードを分けて説明する。
【0082】
片面モードであることを判断すると(ステップS4で「YES」)、排出路35に導かれたシートP1の後端が定着ニップNを通過したか否かを判断する(ステップS5)。この判断は、シート検出センサ9によるシートP1の後端の検出信号を受信することにより行われる。
システム速度V1で搬送されるシートP1の後端が定着ニップNを通過したことを判断すると(ステップS5で「YES」)、反転モータ62の回転速度をV1bから高速のV2b(正転)に切り替える(ステップS6)。これにより、シートP1の搬送速度がシステム速度V1から高速V2に切り替わり、シートP1について、システム速度V1のまま維持する場合に比べてシート排出時間を短縮することができる。
【0083】
高速V2で搬送されるシートP1の後端が排出ローラ対51を通過したか否かを判断する(ステップS7)。この判断は、シート検出センサ7によるシートP1の後端検出からの経過時間をタイマー77で計時し、計時した時間が所定時間t1に達したことを判断することにより行われる。ここで、所定時間t1は、高速V2で搬送されるシートP1の後端がシート検出センサ7で検出されてから排出ローラ対51を通過(機外への排出に相当)するまでに要する時間に相当し、予め実験などから求められて、そのデータがROM73などに格納されている。
【0084】
シートP1の後端が排出ローラ対51を通過したことを判断すると(ステップS7で「YES」)、シートP1が完全に排出されたとして、反転モータ62の回転速度をシステム速度V1に相当するV1bに戻す(ステップS8)。
そして、シートP1が当該プリントジョブにおける最終紙であるか否かを判断する(ステップS9)。
【0085】
ここで、最終紙ではないと判断すると(ステップS9で「NO」)、現在の変数nの値、ここでは1に「1」をインクリメントして(ステップS10)、ステップS2に戻る。
ステップS2では、次に給送されたシートP2の先端が定着ニップNを通過したか否かを判断する。シートP2の先端が定着ニップNを通過したことを判断すると、ステップS3では、反転モータ62を回転速度V1bで正転させる(既にV1bで正転中の場合には、これを継続する。)。ステップS5において、シートP2の後端が定着ニップNを通過したことを判断すると、ステップS6で反転モータ62の回転速度をV1bからV2bに切り替える。これにより、シートP2の搬送速度が高速V2に切り替わる。ステップ7において、シートP2の後端が排出ローラ対51を通過したことを判断すると、シートP2が排出されたとして、ステップS8で反転モータ62の回転速度をV2bからV1bに戻し、ステップS9でシートP2が最終紙であるか否かを判断する。
【0086】
シートP2が最終紙ではないことを判断すると、ステップS10で現在の変数nの値、ここでは2に「1」をインクリメントして、ステップS2に戻る。ステップS2〜S7では、シートP3について上記同様の回転速度の切替が実行される。搬送されているシートPnが最終紙と判断されるまで、ステップS2〜S10が繰り返し実行される。
シートPnを最終紙と判断すると(ステップS9で「YES」)、反転モータ62を停止させて(ステップS11)、当該処理を終了する。
【0087】
一方、両面モードの場合には(ステップS4で「NO」)、シートP1が排出されるか否かを判断する(ステップS12)。この判断は、定着ニップNを通過したシートP1が排出路35と反転路36のいずれに導かれるかにより判断される。排出路35に導かれる場合には、排出と判断し、反転路36に導かれる場合には、排出ではないと判断される。
シートP1が排出されない(反転路36に導かれる)ことを判断すると(ステップS12で「NO」)、スイッチバック制御を実行する(ステップS14)。
【0088】
図9は、スイッチバック制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
同図に示すように、シートP1の後端がシート検出センサ8により検出されたか否かを判断する(ステップS21)。シートP1の後端が検出されたことを判断すると(ステップS21で「YES」)、反転モータ62を正転から逆転に切り替える(ステップS22)。逆転時の回転速度は、V1bとされる。これにより、反転ローラ対52が正回転から逆回転に切り替わって、シートP1の搬送方向が反対方向に変わり、シートP1が循環路58に向かって搬送される(スイッチバック)。
【0089】
スイッチバックされた後のシートP1の後端がシート検出センサ8により検出されたか否かを判断する(ステップS23)。シートP1の後端が検出されたことを判断すると(ステップS23で「YES」)、反転モータ62を逆転から正転に切り替えて(ステップS24)、リターンする。正転時の回転速度は、V1bとされる。
図8に戻り、ステップS2では、シートP1(スイッチバック後に循環路58を通って二次転写位置29に戻り、二次転写位置29で第2面に画像が転写された後のシート)の先端が定着ニップNを通過したか否かを判断する。
【0090】
シートP1が定着ニップNを通過したことを判断すると、ステップS3では、反転モータ62の回転速度をV1bに継続し、ステップS12では、シートP1が排出されると判断する。そして、シートP1が最終紙であるか否かを判断する(ステップS13)。最終紙ではないことを判断すると(ステップS13で「NO」)、ステップS10に移り、現在の変数nの値、ここでは1に「1」をインクリメントして、ステップS2に戻る。シートP1が最終紙でない場合には、システム速度V1による排出が行われる。
【0091】
ステップS2では、次に給送されたシートP2の先端が定着ニップNを通過したか否かを判断する。シートP2に対して、ステップS3、S4、S12、S14によりスイッチバック制御を行い、スイッチバックの後、S2〜S4を介してS12に移り、S12で排出であることを判断し、ステップS13に移る。S13でシートP2が最終紙でないことを判断すると、ステップS10を経てステップS2に戻り、次に給送されたシートP3に対して、ステップS2以降の処理を実行する。
【0092】
ステップS13において最終紙であることが判断されるまで、ステップS2以降の処理をシートごとに繰り返し行い、シートPnが排出されるシートであり(ステップS12で「YES」)、最終紙であることを判断すると(ステップS13で「YES」)、両面排出制御を実行して(ステップS15)、当該処理を終了する。
図10は、両面排出制御のサブルーチンの内容を示すフローチャートである。
【0093】
同図に示すように、排出されるシートPn(最終紙)の後端が定着ニップNを通過したか否かを判断する(ステップS31)。シートPn(最終紙)の後端が定着ニップNを通過したことを判断すると(ステップS31で「YES」)、反転モータ62の回転速度をV1bから高速のV2b(正転)に切り替える(ステップS32)。これにより、排出路35を搬送されているシートPn(最終紙)の搬送速度がシステム速度V1から高速V2に切り替わり、シートPn(最終紙)について、システム速度V1のまま維持する場合に比べてシート排出時間を短縮することができる。
【0094】
高速V2で搬送されるシートPn(最終紙)の後端が排出ローラ対51を通過したことを判断すると(ステップS33で「YES」)、反転モータ62を停止させて(ステップS34)、リターンする。
以上、説明したように本実施の形態では、排出ローラ対51のローラ51aの回転軸51cに対する、駆動モータ61からの駆動力の伝達経路と反転モータ62からの駆動力の伝達経路とにワンウエイクラッチ201と211を設け、駆動モータ61と反転モータ62のうち、正方向に回転速度の速い方の回転駆動力が排出ローラ対51に伝達されつつ、逆方向の回転駆動力が伝達されない構成とした。
【0095】
これにより、定着ローラ41についてはシステム速度V1に相当する一定の回転速度で回転させながら、反転ローラ対52についてはシートSのスイッチバックのために正逆回転させることができ、かつ、排出ローラ対51については、通常はシステム速度V1に相当する回転速度で回転させつつ、所定の条件(例えば、片面モードでシート後端が定着ニップNを通過したこと)を満たすと、高速V2に相当する回転速度に上げることにより、ファーストプリントタイムを短縮することができる。
【0096】
なお、正方向の回転を基準に、逆方向の回転速度を基準の正方向の回転速度よりも遅いとすれば、正方向に回転速度の速い方の回転駆動力が伝達されるということは、逆方向の回転駆動力が伝達されない構成という意味で捉えることができる。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0097】
(1)上記実施の形態では、排出ローラ対51について、一方向の回転駆動力を回転軸51cに伝達し、これとは逆方向の回転駆動力を回転軸51cに伝達させない機能を有するクラッチ機構として、ワンウエイクラッチを用いた例を説明したが、これに限られない。例えば、電磁クラッチや、いわゆるバネクラッチ、またはラチェットを一種のクラッチと捉えれば、これらクラッチ機構一般を用いることができる。また、クラッチ機構以外でも同機能を有するものであれば、適用可能である。
【0098】
(2)上記実施の形態では、反転ローラ対52の回転速度をシステム速度V1と同じとする構成例を説明したが、これに限られない。例えば、反転ローラ対52の正方向の回転速度をシステム速度V1以下としても良いし、逆方向の回転速度をシステム速度V1以上として反転をより速く行えるように回転速度を切り替えるとしても良い。
(3)また、高速時以外の通常時に、駆動モータ61からの回転駆動力と反転モータ62からの正方向の回転駆動力とが同時に排出ローラ対51に伝達された場合に、いずれの回転駆動力による排出ローラ対51の回転速度もシステム速度V1に相当する大きさになるように構成することにより、排出ローラ対51が一定の速度V1で回転されるとしたが、これに限られない。排出ローラ対51が速度V1で回転されれば良く、例えば反転モータ62からの回転駆動力による排出ローラ対51の回転速度が駆動モータ61からの回転駆動力による回転速度を超えない(以下になる)ように、反転モータ62の出力(回転数)を制御するとしても良い。
【0099】
(4)上記実施の形態では、ファーストプリントタイムの短縮のために、1枚のシートSの後端が定着ニップN(定着ローラ41)を通過した時点で、反転モータ62の回転速度をシステム速度V1に相当するV1bから高速のV2bに切り替えるとしたが、例えばシートSの後端が定着ニップNを通過してから排出ローラ対51を通過するまでの搬送時間の少なくとも一部の時間、すなわちその搬送時間の全部またはその搬送時間における一部の間だけ高速に切り替える構成をとるとしても良い。その搬送時間の全部をシステム速度V1に維持する場合に比べると、ファーストプリントタイムを短縮することができる。
【0100】
(5)また、上記実施の形態では、片面モードのプリントジョブにおける1枚目のシートの排出時と両面モードのプリントジョブにおける最終紙の排出時に、排出ローラ対51をシステム速度V1から高速V2に切り替える高速制御を適用するとしたが、これに限られない。両面モードにおいて、スイッチバック(反転ローラ対52の逆転)と高速制御とが同時に実行されない時間帯であれば、高速制御を適用でき、例えば両面モードのプリントジョブにおける1枚目のシートの排出時に適用するとしても良いし、モードに関わらず、各シートについてその排出時に適用するとしても良い。
【0101】
(6)上記実施の形態では、排出ローラ対51のローラ51aの回転軸51cにギア139とプーリ140が装着され、そのギア139とプーリ140にワンウエイクラッチ201と211が内蔵される構成例を説明したが、これに限られない。排出ローラ対51に対する、駆動モータ61からの駆動力の伝達経路上と反転モータ62からの駆動力の伝達経路上のどこかに、それぞれワンウエイクラッチが挿入される構成であれば良い。
【0102】
また、排出ローラ対51を、ローラ51aとこれに当接するローラ51bとからなるとしたが、回転によりシートを搬送することができる回転部材であればローラ対に限られず、例えばベルト状のものなどを含むとしても良い。排出回転部材として、例えばベルトを用いる場合、吸引手段によりシートをベルト表面に吸引する構成をとれば、ローラ対など一対の回転部材を接触させる構成をとらないことも可能になる。
【0103】
また、シートを搬送できる構成であれば良いので、例えば一方の回転部材が駆動側、他方の回転部材が従動側でも良いし、両方の回転部材が駆動側でも良い。これらのことは、反転ローラ対52について同様である。
(7)上記実施の形態では、本発明に係るシート排出駆動装置および画像形成装置をタンデム型のプリンタに適用した場合の例を説明したが、タンデム型に限られず、またカラーとモノクロの画像形成の機能に関わりなく、シートの両面(第1面と第2面)にトナー像等の画像を形成する両面の画像形成機能を有する画像形成装置一般、例えば複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multiple Function Peripheral)等に適用できる。
【0104】
また、上記実施の形態では、定着ローラ41とこれに圧接されて定着ニップNを確保する加圧ローラ42を備え、定着ローラ41をシートに画像を定着させる定着回転体として用いる例を説明したが、定着回転体としては、ローラ状に限られず、例えばベルト状のものなどであっても構わない。さらに、上記実施の形態では、両面モードでシート交互通紙を行う場合の例を説明したが、例えばシート循環搬送の場合でも適用できる。
【0105】
また、駆動力伝達機構100において駆動力を伝達する部材としてギアと歯付きベルトを用いる例を説明したが、駆動力を伝達することができる部材であれば、これに限られず、他の種類のものを用いるとしても良い。また、ギアやベルトの数や大きさが上記のものに限られることもない。さらに、反転モータ62の出力軸121の回転方向を正逆方向に切り替える構成例を説明したが、シートSのスイッチバックのために反転ローラ対52の回転方向を正逆方向に切り替えることができれば、これに限られない。
【0106】
例えば、第2伝達機構102に、伝達される回転駆動力の回転方向を正逆方向に切り替えるクラッチやギア列等を介在させれば、反転モータ62の出力軸121を一方向だけに回転させる構成をとることもできる。
さらに、駆動モータ61を定着ローラ41の駆動源とした例を説明としたが、システム速度V1に相当する速度で回転する他の部材、例えば感光体ドラム11Y〜11Kや中間転写ベルト21などの少なくとも1つの部材の駆動源として駆動モータ61を共用する構成をとるとしても良い。
【0107】
また、上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、シートの両面に画像を形成する機能を有する画像形成装置およびシートを排出するシート排出駆動装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0109】
4 定着部
5 循環路
6 制御部
51 排出ローラ対
52 反転ローラ対
61 駆動モータ
62 反転モータ
100 駆動力伝達機構
101 第1伝達機構
102 第2伝達機構
103 第3伝達機構
201、211 ワンウエイクラッチ
V1 システム速度
V2 システム速度より速い速度(高速)
S シート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートの第1面に画像を書き込み、その画像を定着回転体によりシートに定着し、そのシートを反転路に導いて反転回転部材によりスイッチバックした後、循環路を介して画像書込位置に戻し、当該シートの第2面に画像を書き込み、その画像を定着回転体によりシートに定着した後、そのシートを排出路に導き排出回転部材により排出する画像形成装置に備えられるシート排出駆動装置であって、
第1駆動源を有し、第1駆動源の回転駆動力により定着回転体を回転させる第1駆動手段と、
第2駆動源を有し、第2駆動源の回転駆動力により反転回転部材の回転方向を正逆方向に切替かつ回転速度を可変可能な第2駆動手段と、
第1駆動源からの回転駆動力と第2駆動源からの回転駆動力を排出回転部材に伝達する伝達機構と、を備え、
前記伝達機構は、
排出回転部材がシートの搬送と同方向に回転したときの回転方向を正方向としたとき、第1駆動源と第2駆動源のうち、排出回転部材の正方向への回転速度が速くなる方の駆動源からの回転駆動力を排出回転部材に伝達することを特徴とするシート排出駆動装置。
【請求項2】
前記伝達機構は、
第1駆動源からの回転駆動力が、排出回転部材を正方向に回転させる駆動力である場合に、その駆動力を排出回転部材に伝達し、正方向の反対の逆方向に回転させる駆動力である場合には、伝達させない第1クラッチ機構と、
第2駆動源からの回転駆動力が、排出回転部材を正方向に回転させる駆動力である場合に、その駆動力を排出回転部材に伝達し、正方向の反対の逆方向に回転させる駆動力である場合には、伝達させない第2クラッチ機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のシート排出駆動装置。
【請求項3】
前記第1クラッチ機構と第2クラッチ機構は、ワンウエイクラッチからなることを特徴とする請求項2に記載のシート排出駆動装置。
【請求項4】
前記第1クラッチ機構と第2クラッチ機構は、それぞれが排出回転部材の回転軸に装着されていることを特徴とする請求項2または3に記載のシート排出駆動装置。
【請求項5】
前記第2駆動源の出力を制御する制御手段を備え、
前記第1駆動手段は、
定着回転体を、シートの基準の搬送速度に相当する速度V1で回転させ、
前記伝達機構は、
定着回転体が回転しているときに、第1駆動源からの回転駆動力が排出回転部材に伝達される場合には、排出回転部材を定着回転体と同じ速度で回転駆動させ、
前記制御手段は、
1枚のシートが排出回転部材と定着回転体とに跨って搬送されているときには、前記第2駆動源からの回転駆動力により排出回転部材の回転速度が前記速度V1を超えず、
その1枚のシートの搬送方向後端が定着回転体を通過してから排出回転部材を通過するまでの搬送時間の少なくとも一部の時間に、排出回転部材の回転速度が前記速度V1よりも高速のV2に切り替わるように、前記第2駆動源の出力を切り替えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシート排出駆動装置。
【請求項6】
前記少なくとも一部の時間は、前記搬送時間の全ての時間であることを特徴とする請求項5に記載のシート排出駆動装置。
【請求項7】
前記第1駆動手段は、
第1駆動源の回転駆動力を第1伝達経路により定着回転体に伝達し、
前記第2駆動手段は、
第2駆動源の回転駆動力を第2伝達経路により反転回転部材に伝達し、
前記伝達機構は、
第1伝達経路に接続される第3伝達経路と、第2伝達経路に接続される第4伝達経路を有し、第1伝達経路から第3伝達経路に伝達される回転駆動力と、第2伝達経路から第4伝達経路に伝達される回転駆動力とを前記排出回転部材に伝達することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート排出駆動装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のシート排出駆動装置を備えることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−237899(P2012−237899A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107451(P2011−107451)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】