説明

シート搬送機構およびこれを備えた記録装置、ならびにシート搬送方法

【課題】シートをロール状に巻いてなるロール状シートが用いられ、かつ、シートの正確な搬送が可能なシート搬送機構を提供する。
【解決手段】搬送機構は、記録用紙Sがロール状に巻かれたロール紙Rを回転可能に支持するスプールシャフト32と、ロール紙Rの正転および逆転させる給紙モータ40と、ロール紙Rから繰り出されたシートの搬送を行うLFローラ9と、を有する。また、搬送機構はロール紙RとLFローラ9との間にかかる張力を検知するエンコーダ39と、ロール紙Rの逆転を行うリセット動作と、ロール紙Rの正転を行うリリース動作と、を行う制御部と、を有する。また、制御部は、記録用紙Sの搬送を行う際に、ロール紙Rを正転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートをロール状に巻いてなるロール状シートが用いられるシート搬送機構およびこれを備えた記録装置、ならびにシート搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な記録装置には、記録媒体であるシートが収納された収納部から記録を行う記録部まで、シートを搬送するための搬送機構が設けられている。一般的なシート搬送機構は、搬送ローラと、該搬送ローラに従動するピンチローラと、からなるローラ対を備えている。このようなシート搬送機構では、ローラ対に挟まれたシートが、搬送ローラの回転により搬送される。
【0003】
また、記録装置には、ロール状シートを上記収納部に収納するものがある。ロール状シートには、用紙(連続紙)が管状の芯に巻き付けられたもの(いわゆるロール紙)がある。ロール紙が用いられる用紙搬送機構は、ロール紙の芯が装着され、ロール紙を回転可能に支持するシャフトを備える。これにより、ロール紙がシャフトに回転可能に支持される。ロール紙は、外周の用紙の端部が引き出されて使用される。ロール紙は、用紙が引き出される際に、芯を中心に回転する。
【0004】
さらに、ロール紙が用いられる用紙搬送機構は、一般的なシート搬送機構と同様に搬送ローラとピンチローラからなるローラ対を備えており、搬送ローラを回転させることによって、用紙を引っ張る。このとき、ロール紙が回転するためのトルクが、用紙からロール紙に加わる。これにより、搬送ローラは、ロール紙を回転させると同時に所定量の用紙をロール紙から引き出して搬送する。このような用紙搬送機構を備えた記録装置では、当該搬送機構によって用紙が記録部まで搬送されると、該記録部で用紙への記録が行われる。
【0005】
上述したロール紙のための用紙搬送機構では、搬送ローラに付与されたトルクが、用紙を介してロール紙に伝達されることにより、ロール紙が回転する。搬送ローラに付与されたトルクが用紙に加わる際に、搬送ローラと用紙との間に負荷がかかる。
【0006】
この搬送ローラと用紙との間にかかる負荷により、搬送ローラが所定量の用紙をロール紙から引き出すことができず、用紙の搬送量が不足する場合がある。また、搬送ローラが用紙の表面を滑る場合、すなわち搬送ローラが空転する場合にも、用紙の搬送量が不足する。
【0007】
特許文献1に、搬送ローラと用紙との間にかかる負荷の低減が図られた用紙搬送機構が開示されている。この用紙搬送機構には、上述の構成と同様の搬送ローラに加えて、該搬送ローラより搬送方向上流に給紙ローラが設けられている。この給紙ローラも、該給紙ローラに従動するピンチローラとともにローラ対をなしている。
【0008】
この用紙搬送機構では、まず、ユーザによってロール紙から引き出された用紙が、給紙ローラのローラ対と搬送ローラのローラ対との両方に挟み込まれる。そして、給紙ローラのみを回転させて所定量の用紙をロール紙から引き出す。このとき、給紙ローラと搬送ローラとの間にある用紙は撓んだ状態になる。その後、搬送ローラを回転させ、用紙の撓みを解消させつつ、所定量の用紙を搬送する。
【0009】
このように、この用紙搬送機構は、搬送ローラによる用紙の搬送量と等しい量の用紙が、給紙ローラによってあらかじめロール紙から引き出されるように構成されている。したがって、搬送ローラが用紙を搬送する際に、搬送ローラから用紙に加わる負荷が小さくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−203564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された用紙搬送機構では、給紙ローラによりロール紙から引き出す用紙の量が、搬送ローラによる用紙の搬送量と正確に等しい必要がある。
【0012】
給紙ローラによりロール紙から引き出す用紙の量が、搬送ローラにより搬送する用紙の量より多い場合には、用紙の搬送を繰り返すにつれて、給紙ローラと搬送ローラとの間の用紙の撓みが徐々に増加する。これにより、給紙ローラと搬送ローラとの間の領域での用紙詰まりや、用紙の損傷などが発生する場合がある。これらの場合、搬送ローラによる用紙の正常な搬送が行えなくなるおそれがある。
【0013】
また、給紙ローラによりロール紙から引き出す用紙の量が、搬送ローラにより搬送する用紙の量より少ない場合には、用紙の搬送動作の途中で、給紙ローラと搬送ローラとの間の用紙の撓みがなくなる。給紙ローラと搬送ローラとの間の用紙の撓みがなくなると、搬送ローラが用紙を引っ張ることによりロール紙から用紙を引き出すことが必要となる。このとき、搬送ローラと用紙との間に突然大きい負荷がかかる。
【0014】
搬送ローラと用紙との間に大きい負荷がかかると、上述と同様に、搬送ローラの空転などによって、用紙の搬送量が不足する場合がある。また、搬送ローラと用紙との間に突然負荷がかかると、給紙ローラと搬送ローラとの間の用紙に張力がかかる際の騒音(紙張り音)が発生する場合がある。
【0015】
そこで、本発明は、シートをロール状に巻いてなるロール状シートが用いられ、かつ、シートの正確な搬送が可能なシート搬送機構およびこれを用いた記録装置、ならびにシート搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の搬送機構は、シートをロール状に巻いてなるロール状シートの芯を回転可能に支持する支軸と、前記ロール状シートの最外周の前記シートを繰り出すために前記ロール状シートを第1の方向に回転させ、該シートを前記最外周に巻き取るために前記ロール状シートを前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させる駆動部と、前記ロール状シートの前記第1の方向の回転によって繰り出された前記シートを搬送する搬送部と、前記ロール状シートと前記搬送部との間にある前記シートにかかる張力を検知する検知部と、前記検知部が前記張力を検知するまで前記駆動部により前記ロール状シートを前記第2の方向に回転させるリセット動作と、該リセット動作の後に前記検知部が張力を検知しなくなるまで前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させるリリース動作と、を行い、その後、前記搬送部によって前記シートを搬送するとともに、前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シートをロール状に巻いてなるロール状シートが用いられ、かつ、シートの正確な搬送が可能なシート搬送機構およびこれを用いた記録装置、ならびにシート搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る記録装置の内部機構を示した斜視図である。
【図2】図1に示した記録装置のロールの着脱機構の斜視図である。
【図3】図1のA−A’線に沿った断面を示した概略構成図である。
【図4】図3に示した搬送機構の上面図である。
【図5】図3に示した搬送機構の機能を示したブロック図である。
【図6】図3に示した搬送機構の模式図である。
【図7】図3に示した搬送機構による搬送工程のフローチャートである。
【図8】図3に示した搬送機構の動作を示したグラフである。
【図9】図3に示した搬送機構の動作を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態のシート搬送機構について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る記録装置1の概要を、図1から図3を用いて説明する。
【0020】
図1は本実施形態における搬送機構3を備えた記録装置1の斜視図である。図2は図1に示したロール紙Rの着脱機構の斜視図である。図3は記録装置1の図1のA−A’線に沿った断面図である。図1では、記録装置1の筐体の一部を省略し、記録装置1の内部機構を示している。
【0021】
記録装置1は、記録用紙Sがロール状に巻かれたロール状シートであるロール紙Rを着脱可能にする着脱機構を備える。記録用紙Sは、ロール紙Rの最外周にある記録用紙Sの端部から引っ張られて引き出される。記録装置1では、ロール紙Rから引き出された記録用紙Sに記録を行う。
【0022】
本実施形態に係る記録装置1では、記録用紙S以外のシートにも記録を行うことが可能である。記録用紙S以外の記録媒体としては樹脂製シートや、金属製シートなどが挙げられる。
【0023】
図2を参照して、ロール紙Rの着脱機構について説明する。ロール紙Rの着脱機構を構成するために、装填部31を備えたホルダ30と、装填部35を備えたホルダ34と、棒状の支軸であるスプールシャフト32と、が設けられている。スプールシャフト32は、その一方の端部がホルダ30に挿着されている。
【0024】
スプールシャフト32は、その他方の端部からロール紙Rの芯Cを通され、ホルダ30の装填部31が芯Cの一方の端部に嵌め込まれる。そして、スプールシャフト32他方の端部から、さらにホルダ34が通されて、装填部35がロール紙Rの芯Cの他方の端部に嵌め込まれる。
【0025】
この結果、ロール紙Rはホルダ30,34に挟み込まれてスプールシャフト32に固定され、ロール紙Rとスプールシャフト32が一体となる。このとき、スプールシャフト32の中心軸とロール紙Rの中心軸とが一致している。
【0026】
スプールシャフト32は、図1および図3に示すように搬送機構3に回転可能に支持される。これにより、スプールシャフト32と一体となったロール紙Rも、スプールシャフト32と同軸の芯Cを中心に搬送機構3に対して回転可能となる。
【0027】
次に、図3を参照して、記録装置1の動作の概要について説明する。
【0028】
ユーザによって、ロール紙Rの最外周にある記録用紙Sの端部が引っ張られると、ロール紙Rが図3に矢印で示す反時計回り(CCW:CounterClockWise)、すなわち第1の方向の回転(以下、「正転」という。)をするとともに、記録用紙Sが引き出される。引き出された記録用紙Sは、給紙口2を通される。
【0029】
給紙口2より記録用紙Sの搬送方向下流には、LF(Line Feed)ローラ9と、該LFローラ9に従動するピンチローラ10と、が設けられ、これらにより搬送部が構成されている。LFローラ9より記録用紙Sの搬送方向上流には用紙検知センサ41が設けられており、用紙検知センサ41が記録用紙Sを検知すると、LFローラ9の駆動源であるLFモータ8が駆動され、LFローラ9にトルクが加わる。これにより、LFローラ9が回転する。
【0030】
ユーザが記録用紙SをLFローラ9の手前まで引き出すと、用紙検知センサ41が記録用紙Sを検知して、LFローラ9が回転する。そして、ユーザが記録用紙SをLFローラ9とピンチローラ10とにより構成されるローラ対に挿入すると、LFローラ9の回転により、記録用紙Sは自動的にLFローラ9より記録用紙Sの搬送方向下流に搬送される。
【0031】
搬送機構3のLFローラ9より記録用紙Sの搬送方向下流には、記録用紙Sに記録を行う記録部がある。記録部には、プラテン19と、該プラテン19に対向配置され、記録ヘッド11(図1参照)が搭載されたキャリッジと、が設けられている。
【0032】
記録部で記録が行われた記録用紙Sは、プラテン19上を搬送方向下流へ送られ、プラテン19に隣設されたカッタ21によって所定のサイズに切断され、排紙トレイ22に排出される。
【0033】
LFローラ9の回転により、記録用紙Sがプラテン19のキャリッジ12に対向する位置まで搬送され、キャリッジ12に搭載された端部検知センサ42に記録用紙Sの端部が検出されると、搬送機構3が動作可能となる。また、搬送機構3が動作可能となると同時に、キャリッジ12等によって構成される記録部による記録が可能となる。
【0034】
記録装置1での記録動作では、搬送機構3は記録用紙Sを間欠的に搬送する。具体的には、キャリッジ12に搭載された記録ヘッド11による記録用紙Sへのインクの吐出と、搬送機構3による所定量の記録用紙Sの搬送と、が繰り返される。すなわち、搬送機構3による記録用紙Sの搬送が停止している間に、キャリッジ12の往復走査および記録ヘッド11によるインクの吐出が行われ、キャリッジ12が停止している間に、搬送機構3による記録用紙Sの搬送が行われる。
【0035】
このように、本実施形態に係る記録装置1の記録方式はいわゆるシリアル方式である。しかし、記録装置は、他の方式でもよく、たとえば、ライン方式でもよい。
【0036】
次に、本実施形態に係る搬送機構3の構成について図4を参照して説明する。図4は図3に示した搬送機構3の上面図である。図4では説明の便宜上、記録装置1の筐体およびキャリッジ12を省略して示している。
【0037】
搬送機構3はロール紙Rの芯に装填されたスプールシャフト32にトルクを加える駆動部である給紙モータ40を有している。給紙モータ40が発生させるトルクは、ギア36,37,38を介してスプールシャフト32に伝達され、ロール紙Rが回転する。
【0038】
搬送機構3には、ギア37に接続された給紙エンコーダ39が備えられている。給紙エンコーダ39は、ロール紙Rの回転量に応じた信号を出力する。また、搬送機構3には、図3に示すように、LFローラ9に接続されたLFエンコーダ5が備えられている。LFエンコーダ5は、LFローラ9の回転量に応じた信号を出力する。
【0039】
図5は搬送機構3の機能を示したブロック図である。搬送機構3は、ユーザによって操作されるPC(Personal Computer)100に接続された制御部101を有している。制御部101は、ユーザの操作や、検知部であるエンコーダ5,39から出力された信号に基づいて、記録ヘッド11、キャリッジ12、LFモータ8、および給紙モータ40の動作を独立して制御する。
【0040】
図6は搬送機構3を模式的に示した図であり、図7は搬送機構3による動作を示したフローチャートである。
【0041】
図6では、LFローラ9の回転速度をVlfと示し、ロール紙Rの回転速度をVrollと示している。また、LFローラ9とロール紙Rとの間にある記録用紙Sの一部分をStと示している。また、LFローラ9とロール紙Rとの間の給紙口2における記録用紙Sの最大撓み量をDと示している。
【0042】
次に、図6を参照しながら、図7に沿って搬送機構3の動作について説明する。
【0043】
搬送機構3は、上述の動作可能な状態でユーザによってPC100に記録指令がなされると(S01)、まず、搬送機構3による搬送方法の第1ステップとして、制御部101がリセット動作を行う。
【0044】
リセット動作では、記録用紙Sの部分Stの撓みをとる。すなわち、撓み量Dがゼロ(D=0)となるようにする。
【0045】
リセット動作では、まず、給紙モータ40を駆動させ、ロール紙Rを図6に示す時計回り(CW:ClockWise)への第1の方向とは反対の第2の方向の回転(以下、「逆転」という。)をさせる。これにより、記録用紙Sのロール紙Rへの巻き取り(紙戻し)を開始する(S02)。そして、ロール紙Rに記録用紙Sを巻き取ってゆくと、やがて撓み量Dがゼロとなる。
【0046】
撓み量Dがゼロとなると、記録用紙Sの部分Stに張力が働く。この部分Stに張力が働いたことは、図4に示した給紙エンコーダ39の出力する信号により検知可能である。すなわち、制御部101が給紙エンコーダ39の出力する信号を読み取ることにより、撓み量Dがゼロとなったと判断すると(S03)、リセット動作が終了する。
【0047】
搬送機構3では、リセット動作が終了すると、搬送機構3による搬送方法の第2ステップとして、リリース動作を行う。
【0048】
リリース動作では、記録用紙Sの部分Stに張力が働いていない状態にする。すなわち、撓み量Dがゼロより大きくなるようにする(D>0)。
【0049】
リリース動作では、まず、給紙モータ40を駆動させ、ロール紙Rの正転(図6に示す反時計回り、すなわち上述の第1の方向の回転)をさせて記録用紙Sの搬送(紙送り)を開始する(S04)。そして、ロール紙Rから記録用紙Sを繰り出してゆくと、やがて撓み量Dがゼロより大きくなる。
【0050】
撓み量Dがゼロより大きくなると、記録用紙Sの部分Stに張力が働かなくなる。この部分Stに張力が働かなくなったことは、図4に示した給紙エンコーダ39の出力する信号により検知可能である。すなわち、制御部101が給紙エンコーダ39の出力する信号を読み取ることにより、撓み量Dがゼロより大きくなったと判断すると、リセット動作が終了する。
【0051】
リセット動作後の撓み量Dは、ゼロより大きいという条件で適宜決定することができる。撓み量Dは、たとえば、制御部101が、部分Stに張力が働かなくなったと判断した後に、ロール紙Rを所定量回転させることによって制御する。
【0052】
リセット動作後の記録用紙Sの撓み量Dは、小さいことが望ましい。記録用紙Sの撓み量Dが大きいと、記録用紙Sの撓みが、記録用紙Sの正常な搬送の妨げとなる場合があり、用紙詰まりや、記録用紙Sの損傷などの原因となることもある。また、記録用紙Sの撓み量Dが大きいと、記録用紙Sの撓みを収容するのに十分なスペースを確保するために、搬送機構自体を大きくする必要性も生じる。
【0053】
本実施形態に係る搬送機構3では、あらかじめ、記録用紙Sの部分Stに張力を働かせて、撓み量D=0にするリセット動作を行った後に、リリース動作を行う。そのため、制御部101は、リリース動作において、記録用紙Sの撓み量Dを制御することが可能である。したがって、本実施形態では、記録用紙Sの撓み量Dが大きくなることを防止できる。
【0054】
ロール紙Rの正転は、リセット動作の後も継続する。リセット動作の後には、搬送機構3による搬送方法の第3ステップとして、ロール紙Rの正転とともに、LFローラ9の回転も行いLFローラ9による記録用紙Sの搬送(紙送り)も開始する(S05)。
【0055】
LFローラ9の回転により記録用紙Sの搬送が行われている間、ロール紙Rの正転により、記録用紙Sの撓みがなくならないように保つ。記録用紙Sの撓みがなくなっていないことは、給紙エンコーダ39が出力する信号により記録用紙Sの部分Stに張力が働いていないことを検知することにより確認可能である。
【0056】
LFローラ9により所定量の記録用紙Sの搬送が完了すると、給紙モータ40およびLFモータ8の駆動を停止し(S06)、ロール紙Rの正転による記録用紙Sの繰り出しと、LFローラ9の回転による記録用紙Sの搬送とを停止する。
【0057】
その後、再びS02,S03と同様のリセット動作を行い(S07,S08)、さらに記録を行う場合には、リリース動作を行うS04に戻り、記録を行わない場合には記録を終了する(S10)。
【0058】
このように、搬送機構3は、記録用紙Sの搬送を行う度に上述のリセット動作およびリリース動作を行うことにより、記録用紙Sの部分Stにおける撓みを確保することができる。そのため、搬送機構3では、LFローラ9が記録用紙Sを搬送する際に、LFローラ9と記録用紙Sとの間には大きい負荷がかからない。
【0059】
したがって、本実施形態に係る搬送機構3では、記録用紙Sの正確な搬送が可能である。
【0060】
次に、図8および図9を参照して、LFローラ9の回転速度Vlf、ロール紙Rの回転速度Vroll、および記録用紙Sの部分Stの撓み量Dについて説明する。図8および図9は、横軸を時間Tとし、各値の時間変化を示したグラフである。
【0061】
図8は、用紙切れ寸前のロール紙Rを使用した場合のグラフを示している。このとき、ロール紙Rの径が最も小さい。一方、図9は、新品状態のロール紙Rを使用した場合のグラフを示している。このとき、ロール紙Rに巻かれた記録用紙Sはまだ減少しておらず、ロール紙Rの径が最も大きい。
【0062】
なお、Vrollが正の値の期間はロール紙Rが正転しており、Vrollが負の値の期間はロール紙Rが逆転していることを示している。
【0063】
図8および図9において、図7のS01〜S03は、Ta〜Tbの期間に対応し、S04はTcの時点に対応し、S05はTdの時点に対応し、LFローラ9により記録用紙Sを搬送している期間は、Td〜Tgの期間に対応している。また、図7のS6およびS07はTgの時点に対応し、S07〜S08の期間は、Tg〜Thの期間に対応している。図7のS9で記録を終了しない場合に戻るS4はTc’の時点に対応している。
【0064】
図8と図9の違いについて説明する。本実施形態では、VlfおよびVrollを一定の回転数で制御している。LFローラ9の径は変化しないためVlfは一定であるが、ロール紙Rの径は記録用紙Sを繰り出すにつれて小さくなる。本実施形態では、図8に示したロール紙Rが用紙切れ寸前のときに、ロール紙Rによる記録用紙Sの繰り出し量とLFローラ9による記録用紙Sの搬送量とが等しくなるように設定している。
【0065】
そのため、図8では、Vrollの最大値とVlfの最大値がともにV1であり等しい。また、ロール紙Rによる記録用紙Sの繰り出し量とLFローラ9による記録用紙Sの搬送量とが等しいため、LFローラ9による記録用紙Sの搬送時に、記録用紙Sの撓み量Dが一定の期間(Te〜Tg)が続く。
【0066】
一方、図9では、ロール紙Rの径がLFローラ9の径より大きいため、Vrollの最大値V2がVlfの最大値V1より大きい。また、ロール紙Rによる記録用紙Sの繰り出し量が
LFローラ9による記録用紙Sの搬送量より大きくなるため、記録用紙Sの撓み量Dが単調増加する期間(Te〜Tg)が続く。
【0067】
本実施形態に係る搬送機構3における記録用紙Sの撓み量Dの最大値は、図9に示すD2である。したがって、制御部101によって、D2が所定範囲内に収まるような動作を行えば、記録用紙Sの撓み量Dを所定範囲内に収めることが可能である。
【0068】
なお、本実施形態では、シートSの張力を検知する検知部として給紙エンコーダ39を用いたが、他のセンサを用いてもよい。たとえば、シートSの張力を検知する検知部として、LFエンコーダ5を用いることもできる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る搬送機構は、以下に示す構成以外は第1の実施形態に係る搬送機構3と同様の構成である。
【0069】
本実施形態に係る搬送機構では、制御部が、記録用紙Sの搬送前にLFローラ9の紙送り動作や紙戻し動作を行い、給紙エンコーダ39の出力信号から、ロール紙Rの径の推定を行う。そして、制御部は、ロール紙Rの径に応じて、記録用紙Sの搬送時における、ロール紙Rによる記録用紙Sの繰り出し量をLFローラ9による搬送量と等しくなるように制御する。
【0070】
したがって、本実施形態に係る搬送機構でも、用紙切れ寸前のロール紙Rを使用した場合のロール紙Rの径が最小の時には、第1の実施形態搬送機構3と同様に、Vroll、VlfおよびDの値の時間変化は図8に示すようになる。
【0071】
一方、本実施形態に係る搬送機構では、ロール紙Rによる記録用紙Sの繰り出し量とLFローラ9による搬送量とが等しいため、ロール紙Rの径がいかなる場合にも、Vlfの最大値はV1となり、撓み量Dの最大値はD1となる。したがって、本実施形態に係る搬送機構では、ロール紙Rの径がいかなる場合にも、Vroll、VlfおよびDの値の時間変化は図8に示すようになる。
【0072】
具体的に、この搬送機構では、新品状態のロール紙Rを使用した場合のロール紙Rの径が最大のときにも、Vroll、VlfおよびDの値の時間変化は、第1の実施形態に係る搬送機構3とは異なり、図9に示すようにはならず、図8に示すようになる。
【0073】
このように、本実施形態に係る搬送機構では、記録用紙Sの撓み量DをD1以内に収めることができ、かつ、LFローラ9が記録用紙Sを搬送する際に、LFローラ9と記録用紙Sとの間には大きい負荷がかからない。
【0074】
したがって、本実施形態に係る搬送機構では、記録用紙Sの正確な搬送が可能である。
【符号の説明】
【0075】
R ロール紙
S 用紙
C 芯
1 記録装置
3 搬送機構
5 LFエンコーダ
8 LFモータ
9 LFローラ
10 ピンチローラ
11 記録ヘッド
12 キャリッジ
19 プラテン
32 スプールシャフト
39 給紙エンコーダ
40 給紙モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートをロール状に巻いてなるロール状シートの芯を回転可能に支持する支軸と、
前記ロール状シートの最外周の前記シートを繰り出すために前記ロール状シートを第1の方向に回転させ、該シートを前記最外周に巻き取るために前記ロール状シートを前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させる駆動部と、
前記ロール状シートの前記第1の方向の回転によって繰り出された前記シートを搬送する搬送部と、
前記ロール状シートと前記搬送部との間にある前記シートにかかる張力を検知する検知部と、
前記検知部が前記張力を検知するまで前記駆動部により前記ロール状シートを前記第2の方向に回転させるリセット動作と、該リセット動作の後に前記検知部が張力を検知しなくなるまで前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させるリリース動作と、を行い、その後、前記搬送部によって前記シートを搬送するとともに、前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる制御部と、
を有するシート搬送機構。
【請求項2】
前記搬送部は、前記シートを挟んで回転するローラ対と、該ローラ対の一方のローラを回転させる駆動源としてのモータと、を備え、
前記制御部は、前記モータにより前記ローラを回転させることによって前記シートの搬送を行う請求項1に記載のシート搬送機構。
【請求項3】
前記制御部は、前記リリース動作の際に、前記検知部が前記張力を検出しなくなった後に、さらに所定量、前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる、請求項1または2に記載のシート搬送機構。
【請求項4】
前記制御部は、前記搬送部による前記シートの搬送を間欠的に行い、前記シートの搬送の度に、前記リセット動作と前記リリース動作とを行う、請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送機構。
【請求項5】
前記制御部は、前記ロール状シートの前記第1の方向の回転の速度を前記ロール状シートの径に応じて変化させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送機構と、該搬送機構によって搬送されたシートに記録を行う記録部と、を有する記録装置。
【請求項7】
シートをロール状に巻いてなるロール状シートを第1の方向に回転させることにより、該ロール状シートの最外周から繰り出された前記シートを搬送部によって搬送するシートの搬送方法であって、
前記ロール状シートと前記搬送部との間にある前記シートに張力がかかるまで前記ロール状シートを前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させる第1ステップと、
前記第1ステップの後に、前記ロール状シートと前記搬送部との間にある前記シートに前記張力がかからなくなるまで前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる第2ステップと、
前記第2ステップの後に、前記搬送部によって前記シートを搬送するとともに、前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる第3ステップと、
を有することを特徴とするシート搬送方法。
【請求項8】
前記第2ステップで、前記ロール状シートと前記搬送部との間にある前記シートに前記張力がかからなくなった後に、さらに所定量、前記ロール状シートを前記第1の方向に回転させる、請求項7に記載のシート搬送方法。
【請求項9】
前記ロール状シートの前記第1の方向の回転の速度を前記ロール状シートの径に応じて変化させる、請求項7または8に記載のシート搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224412(P2012−224412A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91055(P2011−91055)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】