シート搬送装置および画像形成装置
【課題】部品点数を削減することができ、かつ、多様な条件において良好な分離性能を得ることができるシート搬送装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】吸着ベルト31と吸着ベルト31を張架する2つの張架ローラとを備えた吸着ベルトユニット40を、シート搬送方向下流側の張架ローラである駆動ローラ33を支点に揺動可能に支持する給紙ユニットを設けた。また、給紙ユニット30は、従動ローラ33よりも、シート搬送方向上流側を支点に揺動自在に設けた。さらに、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する揺動範囲変更機構60を設けた。
【解決手段】吸着ベルト31と吸着ベルト31を張架する2つの張架ローラとを備えた吸着ベルトユニット40を、シート搬送方向下流側の張架ローラである駆動ローラ33を支点に揺動可能に支持する給紙ユニットを設けた。また、給紙ユニット30は、従動ローラ33よりも、シート搬送方向上流側を支点に揺動自在に設けた。さらに、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する揺動範囲変更機構60を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積載された原稿や記録紙等のシートを分離搬送する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離搬送方法が知られている。摩擦力を用いた分離搬送方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、搬送性能が低下する。また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離搬送する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、分離できないといった、搬送不良が発生することがある。さらに、シートの搬送時に圧力を加えて分離する構成のため、シートが汚れる場合がある。
【0003】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離搬送方式が提案されている(例えば、特許文献1)。
図11は、特許文献1に記載のシート搬送装置100の模式図である。図11(a)は、待機状態のときの状態を示した図であり、図11(b)は、シートを吸着ベルトに吸着させるときの状態を示した図であり、図11(c)は、シートを搬送するときの状態を示した図である。
【0004】
図11に示す特許文献1に記載のシート搬送装置は、シート束の最上位シートを分離・搬送する給紙ユニット201を備えている。給紙ユニット201は、吸着ベルト200を有し、吸着ベルト200は、駆動ローラ203と、従動ローラ202と、テンションローラ204とで張架されている。また、給紙ユニット201は、吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ205、最上位シートと当接し、シートと供回りするコロ206を有している。駆動ローラ203、従動ローラ202、テンションローラ204、帯電ローラ205、コロ206は、不図示の給紙ユニット201の側板に回動可能に支持されており、側板は、シート搬送方向上流側張架ローラである駆動ローラ203の回転軸を中心にして回動可能となっている。
【0005】
シート収容部210の底板211に積載されたシート束Sの最上位シートS1を搬送するとき、底板211を上昇させて、最上位シートS1をコロ206に接触させる。次に、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト表面に帯電ローラ205によって交番電荷を付与する。次に、給紙ユニット201を駆動ローラ203の回転軸を中心にして、図中反時計回りに回動させて、吸着ベルト200の従動ローラ202とテンションローラ204とに張架された領域(シート吸着面)を最上位シートS1に接触させ、最上位シートS1を吸着ベルト200に静電吸着させる(図11(b)参照)。次に、給紙ユニット201を時計回りに回動させると、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとする。このとき、コロ206との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上位シートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する(図11(c)参照)。そして、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト200に吸着している最上位シートS1を搬送ローラ対に向けて搬送する。
【0006】
特許文献1に記載のシート搬送装置は、給紙ユニット201の揺動の中心を、吸着ベルト200の最上位シートと接触する領域(シート吸着面)よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることで、給紙ユニット201を揺動させるだけで、吸着ベルト200をシート束Sから離間させることができる。また、コロ206をシートに当接させることで、良好な分離性能が得られる。また、コロ206は、シートと供回りする構成なので、最上位シートS1の後端が抜けた後は、回転することがない。よって、2番目のシートが搬送力を受けることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシート搬送装置においては、シート搬送方向上流側張架ローラ(駆動ローラ203)の回転軸を給紙ユニット201の揺動の中心としている。このため、給紙ユニット201の揺動の中心をシート吸着面よりも、シート材搬送方向上流側に位置させるには、吸着ベルト200を3本のローラ202、203,204で張架する必要があった。また、これとは別に、分離の際にシートに復元力を作用させるためのコロ206も設けている。よって、部品点数が増加し、装置のコスト高に繋がるという問題があった。
【0008】
そこで、本出願人は、特願2010−109191号(以下、先願という)において、部品点数を削減することができるシート搬送装置を提案した。
図12は、先願のシート搬送装置を示す模式図である。図12(a)は、シートを吸着ベルト130に吸着させるときの状態を示した図であり、図12(b)は、シートを搬送するときの状態を示した図である。
図に示すように、シート搬送装置100は、給紙手段たる給紙ユニット120を備えている。給紙ユニット120は、第1張架ローラである駆動ローラ130A、第2張架ローラである従動ローラ130B、および、これらローラに張架された吸着ベルト130を有する吸着ベルトユニットと、この吸着ベルトユニットを揺動可能に支持する側板150と有している。側板150には長穴150bが設けられており、この長穴150bに従動ローラ130Bを回転自在に支持し、駆動ローラ130Aを側板150に回転自在に支持している。側板150は、従動ローラ130Bよりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸150aに固定され、回転軸150aには不図示の駆動手段に接続されている。不図示の駆動手段により回転軸150aが、反時計回りに回動すると、側板150が、反時計回りに回転する。すると、図12(a)の状態から駆動ローラ130Aは、側板150とともにシート束Sから離間する方向へ移動する。一方、従動ローラ130Bは、自重によりシート束Sの上面から動かず、側板150に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト130(吸着ベルトユニット)は、従動ローラ130Bの回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト130に吸着したシートが、吸着ベルト130の従動ローラ130Bに巻き回された部分を支点にして湾曲する。その結果、吸着ベルト130に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト130に吸着させ、2番目のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0009】
側板150が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ130Bが、長穴150bの下端に突き当たる。このように、従動ローラ130Bが、長穴150bの下端に突き当たった状態から、さらに側板150を回動させると、従動ローラ130Bも側板150とともに移動し、従動ローラ130Bがシート束Sの上面から離間し、図12(b)に示す状態で側板150の回動が停止する。側板150の回動が停止したら、駆動ローラ130Aを回転駆動し、吸着ベルト130を無端移動させて吸着ベルト130に吸着している最上位シートS1を搬送する。
【0010】
この先願のシート搬送装置100は、シート搬送方向上流側張架ローラ(従動ローラ130B)の回転軸よりもシート搬送方向上流側に給紙ユニット120の揺動の支点を設けることで、2本の張架ローラで吸着ベルト130を張架した構成でも、給紙ユニット120の揺動の中心を、吸着ベルト130の最上位シートと接触する領域よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることができる。これにより、給紙ユニット120を揺動させるだけで、吸着ベルト130をシート束から離間させることができる。また、特許文献1に記載のシート搬送装置のように、シート搬送方向上流側張架ローラ(駆動ローラ203)の回転軸を給紙ユニット120の揺動の中心とした場合に比べて、少ない張架ローラで、給紙ユニット120を揺動させて、吸着ベルト130をシート束から離間させることができる。その結果、引用文献1に記載の構成に比べて、部品点数を削減することができる。
【0011】
また、先願のシート搬送装置は、側板150に長穴150bを設けて、シート搬送方向上流側の張架ローラ130Bを長穴150bに支持している。これにより、吸着ベルトユニットが、第1張架ローラである駆動ローラ130Aを支点にして揺動可能に側板150に支持される。その結果、シート分離時にシート搬送方向上流側の張架ローラ130Bがシート束Sに当接して、吸着ベルト130に吸着したシートに復元力を働かせることができる。また、シート分離後は、シート搬送方向上流側の張架ローラ130Bが長穴150bの下端に当接することで、従動ローラ130Bをシート束Sの上面から離間させることができる。よって、シート搬送時に2番目のシートが搬送力を受けることがない。このように、先願のシート搬送装置100は、特許文献1のシート搬送装置のように、コロ206も設けなくても、シートの復元力を得ることができ、かつ、シート搬送時に2番目のシートが搬送力を受けないようにすることができる。よって、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を削減することができる。
【0012】
しかしながら、上記先願のシート搬送装置においては、従動ローラ130Bがシート束Sから離間するときの吸着ベルト130のシート吸着面(吸着ベルトが接触位置にあるとき、最上位シートと接触する面)と、シート束の上面とがなす角度(以下、揺動角度という)が一定であるため、様々なシートや環境条件に対応できないという課題があった。具体的に説明すると、厚紙などの剛性が高く復元力が強いシートの場合、揺動角度が大きいと、吸着力よりも復元力の方が勝り、最上位シートS1が、吸着ベルト130から剥がれるおそれがある。一方、薄紙などの剛性が弱いシートの場合、揺動角度が小さいと、2番目のシートにおいて、復元力よりも吸着力の方が強くなり、2番目のシートが、分離しないという不具合が生じてしまう。また、環境条件が高湿環境のとき、シートの吸着ベルト130への静電的な吸着力が低下する。このため、揺動角度が大きいと吸着力よりも復元力の方が勝り、最上位シートS1が吸着ベルト130から剥がれるおそれがある。一方、環境条件が低湿環境のときは、シートの吸着ベルト130への静電的な吸着力が増加し、揺動角度が小さいと2番目のシートにおいて、復元力よりも吸着力の方が強くなり、2番目のシートが分離しないという不具合が生じてしまう。このように、シートの種類や環境条件によって分離に最適な揺動角度が異なるのである。
【0013】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、部品点数を削減することができ、かつ、多様な条件において良好な分離性能を得ることができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトに対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段と、上記給紙手段を揺動させて上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離駆動手段とを備えたシート搬送装置において、上記給紙手段は、上記吸着ベルト、上記吸着ベルトを張架する第1張架ローラ、および該第1張架ローラよりもシート搬送方向下流側に位置し、上記吸着ベルトを張架する第2張架ローラを備える吸着ベルトユニットと、該吸着ベルトユニットを揺動可能に支持する側板とを備え、上記給紙手段の揺動の支点が、第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けられており、上記吸着ベルトを上記シート束の最上位シートと当接させた状態から上記接離駆動手段によって上記吸着ベルトを上記シート束から離間させるまでの上記吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシート搬送装置において、上記所定の条件は、シートの種類および/または環境条件であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のシート搬送装置において、上記変更手段は、上記第1の剛性を有するシートよりも高い剛性シートを搬送するとき、上記第1の剛性を備えるシートを搬送するときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2または3のシート搬送装置において、上記変更手段は、湿度検出手段によって検出される湿度が、第1の湿度よりも高い湿度のとき、上記第1の湿度ときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、上記変更手段は、駆動手段と、駆動手段から駆動力が伝達される駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合い、上記第2張架ローラの軸に取り付けられたラックとを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5のシート搬送装置において、上記給紙手段の揺動の支点と同軸上に上記駆動ギヤに駆動力を伝達するための駆動伝達部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のシート搬送装置において、上記駆動伝達部材から上記駆動ギヤへの駆動伝達をタイミングベルト介して行うことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上位シートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、上記シート搬送手段として、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、吸着ベルトをシート束の最上位シートと当接させた状態から接離駆動手段によって吸着ベルトをシート束から離間させるまでの吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を所定の条件に応じて変更すれば、所定の条件に応じた揺動角度にすることができる。例えば、所定の条件として、剛性が高く復元力が強いシートを分離・搬送するときや高湿環境のときにおいては、吸着ベルトユニットの揺動範囲を短くする。その結果、揺動角度が小さい状態で、シート搬送方向上流側の張架ローラである第2張架ローラをシート束から離間することができる。これにより、剛性が高く復元力が強いシートを分離搬送するときや高湿環境のときに、吸着ベルトから最上位シートが剥がれてしまうのを抑制することができる。また、例えば、所定の条件として、薄紙などの剛性が弱いシートを分離搬送するときや低湿環境のときは、剛性が高く復元力が強いシートを分離・搬送するときや高湿環境のときに比べて吸着ベルトユニットの揺動範囲を長くする。これにより、復元力が強いシートの場合や高湿環境下のときの揺動角度に比べて揺動角度が大きくなる。これにより、復元力を増加させることができ、2番目のシートを良好に分離することができる。
【0016】
また、本発明は、先願と同じく、給紙手段の揺動の支点をシート搬送方向上流側の第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けたので、2本の張架ローラで吸着ベルトを張架した構成であっても、給紙手段を揺動させるだけで吸着ベルトをシート束から離間させることができる。これにより、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、張架ローラの数を減らすことができる。また、第1張架ローラを支点に吸着ベルトユニットを揺動可能に側板に支持することで、特許文献1に記載のシート搬送装置のように、コロを設けなくても、シート復元力(剛性)を利用した分離を行え、かつ、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力が伝達されるのを防止できる。これにより、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を少なくでき、装置を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る複写機を示す模式図である。
【図2】同複写機における給紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】同給紙部に設けられるシート分離給紙装置の基本構成を示す模式図である。
【図4】同シート分離給紙装置の要部構成を示す斜視図である。
【図5】同シート分離給紙装置の変形例を示す斜視図である。
【図6】同シート分離給紙装置の変形例を示す正面図である。
【図7】同シート分離給紙装置によるシート分離について説明する図。
【図8】同シート分離給紙装置の電極部材に印加する交番電圧の印加パターンを示す図。
【図9】同シート分離給紙装置の特徴点を示す模式図である。
【図10】同シート分離給紙装置における従動ローラの長穴内の移動停止位置の一例を示す図である。
【図11】従来のシート搬送装置を示す模式図である。
【図12】先願のシート搬送装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、本実施形態の画像形成装置に限らず、例えばインクジェット方式の画像形成装置などにも適用することができることは言うまでもない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る複写機10を示す模式図である。
この複写機10は、原稿トレイ11aに載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部12上のコンタクトガラスに自動給紙する自動原稿搬送装置11と、自動原稿搬送装置11によってコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取る原稿読取部12と、給紙部13から給紙された記録材シート(シート材)に対して、原稿読取部12によって読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段たる画像形成部14とを備えている。給紙部13は、複数枚のシートが積層されたシート束Sを収容していて、このシート束Sからその最上位に位置する最上位シートS1を画像形成部14に給紙する。なお、本実施形態では、画像形成部14と給紙部13とは分割可能となっている。
【0020】
画像形成部14は、主に、イエロー(以下「Y」と記載し、イエロー用の部材の符号には色別符号として「Y」を付す。シアン、マゼンタ、ブラックについても同様。)用の作像部23Y、C(シアン)用の作像部23C、M(マゼンタ)用の作像部23M、BK(ブラック)用の作像部23BKの4つの作像部と、中間転写材である中間転写ベルト24と、潜像形成手段としての露光装置25とから構成されている。
【0021】
露光装置25は、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等から入力される色分解された画像データや、原稿読取部12によって読み取った原稿の画像データを、光源駆動用の信号に変換し、それに従い各レーザ光源ユニット内の半導体レーザを駆動して光ビームを出射するようになっている。
【0022】
各作像部23Y,23C,23M,23BKは、それぞれ、回転駆動される潜像担持体としての感光体26Y,26C,26M,26BK、それぞれの感光体26Y,26C,26M,26BKの周囲に配置される帯電部27、現像部28、クリーニング部29等により構成されている。感光体26Y,26C,26M,26BKは、円筒状に形成された感光体ドラムであり、図示しない駆動源により回転駆動される。各帯電部27は、それぞれ対応する感光体26Y,26C,26M,26BKの表面を所定電位となるように一様帯電するものである。本実施形態の帯電部27は、帯電ローラ等の帯電部材を感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に接触又は近接させて帯電処理する接触帯電方式のものを採用しているが、これに限られない。露光装置25から出射された破線で示す光ビームが帯電部27により一様帯電された各感光体26Y,26C,26M,26BKの表面にスポット照射されることにより、各感光体表面にはそれぞれの画像情報に応じた静電潜像が書き込まれる。各現像部28は、感光体26Y,26C,26M,26BK上の静電潜像にトナーを付着させることにより、その静電潜像をトナー像として顕像化させるもので、感光体26Y,26C,26M,26BKに対して非接触状態でトナーを供給する非接触現像方式のものが採用されている。各クリーニング部29は、感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に付着している転写残トナー等の不要物を除去するもので、感光体表面にブラシを接触させてクリーニングするブラシ接触方式のものが採用されている。
【0023】
中間転写ベルト24は、樹脂フィルムまたはゴムを基体として形成された無端状ベルトから構成されており、各感光体26Y,26C,26M,26BK上に形成された各色トナー像が互いに重なり合うように転写される。このように重なった中間転写ベルト24上の画像は、転写ローラ19によってシートS1に転写される。
画像が転写されたシートS1は、その後に定着器20に搬送され、熱と圧力によって画像がシートS1に定着される。その後、シートS1は、排紙ローラ対21により排紙トレイ22へ排出される。
【0024】
図2は、給紙部13の概略構成を示す斜視図である。
給紙部13は、複数枚のシートを積載して収容するシート材収容部としての給紙カセット15と、給紙カセット15上の複数枚のシートからなるシート束Sから最上位に位置する最上位シートS1を分離して搬送するシート搬送装置90とを含んで構成されている。なお、図2は、シート搬送装置90のうち、吸着ベルトユニット40のみを示している。シート搬送装置90によって分離給紙されたシートS1は、搬送路17(図1参照)に送り出される。そして、レジストローラ対18により所定のタイミングで転写ローラ19による転写位置へ搬送される。
【0025】
シート搬送装置90は、積載可能用紙幅に対して短く、中心付近に配置されているが、これは、積載可能用紙幅に対して、同等もしくは長くても問題ない。また、本実施形態では、シート給紙方向に対して直交する方向(幅方向)の中心付近にシート搬送装置90を1つ設けた構成であるが、幅方向に複数個のシート搬送装置90を配置してもよい。
【0026】
本実施形態のシート搬送装置90は、無端誘電体ベルト上に発生する電界がシートに作用して吸着力を発生させる静電吸着方式により、シート束Sの最上位シートS1を、シート束Sから分離させるものである。しかし、上記静電吸着方式の場合、吸着ベルト31が最上位シートS1と接触してからある一定時間は、最上位シートS1だけではなく、積載された複数のシートにも、電界による吸着力が発生してしまうことがある。吸着ベルト31と最上位シートS1とを接触させておく時間を十分に長くすれば、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させることができるが、生産性の低下を招いてしまい、シート搬送装置90としては商品性に欠けるものとなってしまう恐れがある。ここで、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に静電吸着させるためには、吸着ベルト31を最上位シートS1に長く接触させておく必要がある理由について説明する。吸着ベルト31に与える交番電荷+σと−σの間隔が小さい程、最上位シートS1に作用する吸着力が最大になる時間が早く、また、シート束Sの2枚目以降に作用する吸着力が最小になる時間が早くなる。このことは、各シートに働く時間毎のマクスウェル応力を計算することで容易に証明することが可能である。しかし、交番電荷+σと−σの間隔が小さい場合には、隣あう電位同士が近接しており、その隣り合う電荷同士で電荷を打ち消し合うため、十分な吸着力を得られなくなる。更に、隣あう電位同士が近接している場合には、シート側に発生する積載方向の電界距離も短くなり、シートに吸着力を与えることのできる距離も短くなる。よって、交番電荷+σと−σの間隔が小さい程、最上位シートS1は、吸着ベルト31からはがれる方向に対しては弱くなる。(少しの剥がれで、吸着力を失う)。そのため、良好な搬送性を得るためには、吸着ベルト31に与える交番電荷+σと−σの間隔は、ある程度、大きくしておく必要があり、その結果、シート束Sの2枚目以降に作用する吸着力が最小になる時間が長くなり、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に静電吸着させるための吸着ベルト31と最上位シートS1との接触時間が長くなるのである。
【0027】
また、吸着ベルト31と最上位シートS1とを接触させておく時間を十分に長くしたとしても、シート同士の密着力が強い場合は、最上位シートS1と2枚目のシートを分離することができない場合もある。例えば、コート紙などは、表面コート層があるため裁断面と印字面で吸湿性が異なる。裁断面は吸湿性が高いことから、シートを束にして放置した場合、裁断面は印字面より早く吸湿することでシート周り全部が膨張し、積載したシートの周り同士が密着する為に、積載状態のシート中心部の圧力が低くなり、結果として、積載したシート間の密着力が強固になる。
このように、生産性やシートの種類により良好な分離性が得られない場合があった。
【0028】
そこで、吸着ベルト31を張架する張架ローラのうち、シート搬送方向下流側の張架ローラをシート束の先端よりもシート搬送方向下流側に設け、吸着ベルト31にシート給送経路を挟んで、静止又は反給紙方向に移動可能な阻止部材を設けたものが発明されている(特許第3159727号)。この発明は、複数枚、吸着ベルト31に吸着シートのうち、2枚目以降のシートは、阻止部材との摩擦力により吸着ベルト31から分離させるものである。しかし、吸着ベルト31に圧接させた阻止部材を設ける方法は、吸着ベルト31に吸着した複数枚目のシート先端にも吸着ベルト31の電界による吸着力が発生している状態のため、阻止部材で確実にシートを分離することは、幅広い条件を考慮すると困難である。
【0029】
そこで、本実施形態のシート搬送装置90においては、吸着ベルト31を揺動させて、吸着ベルト31に吸着したシートをめくり上げるような動作をおこなっている。このめくり動作を加えることで、積載されたシートの中心部に空気を入れることができ、2枚目以降に作用するシート吸着力を早期に弱めることができる。さらに、このような動作を行うことにより、複数枚のシートが吸着ベルト31に吸着しても、シートの復元力により2枚目以降のシートを吸着ベルト31から分離させることができ、良好な分離性を得ることができる。よって、吸着ベルト31とシートとの接触時間が短くても、良好に分離を行うことができ、生産性を損なうのを抑制することができる。以下に、具体的に説明する。
【0030】
図3は、シート搬送装置90の基本構成を示す模式図である。(a)は、吸着ベルト31をシート束Sの最上位シートS1に接触させた状態を示す図であり、(b)は、吸着ベルト31をシート束Sから離間させた状態を示す図である。
図に示すように、本実施形態のシート搬送装置90は、給紙手段たる給紙ユニット30を備えている。給紙ユニット30は、第1張架ローラとしての駆動ローラ32と、第2張架ローラとしての従動ローラ33と、駆動ローラ32と従動ローラ33とに張架される吸着ベルト31とからなる吸着ベルトユニット40を備えている。また、駆動ローラ32を支点に吸着ベルトユニット40を揺動可能に支持する側板35を備えている。従動ローラ33は、不図示のスプリングにて図中左方向へ付勢されており、吸着ベルト31に張力をかけている。吸着ベルト31は108Ωcm以上の抵抗を有する誘電体で構成されており、例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルムで構成されている。また、吸着ベルト31は、抵抗が108Ω・cm以上の誘電体からなる表層と、抵抗が106Ω・cm以下の導体からなる裏層とを有する2層構造としてもよい。吸着ベルト31を上記のような2層構造とすることで、裏層を接地された対向電極として使用することができ、吸着ベルト31に電荷を与える帯電手段としての電極部材34を、吸着ベルト31の表層に接した位置であればどこでも設けることができる。また、駆動ローラ32は抵抗値が106Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、従動ローラ33は金属ローラである。駆動ローラ32及び従動ローラ33はともに接地されている。駆動ローラ32は吸着ベルト31からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。すなわち、駆動ローラ32の径を小さく設定して曲率を大きくすることにより、吸着ベルト31に吸着されて搬送されたシートが、駆動ローラ32から離れて搬送方向下流側の不図示のガイド部材により形成される搬送路に入ることができるようになっている。また、駆動ローラ32は、不図示の駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるよう構成されている。駆動ローラ32、従動ローラ33は、給紙ユニット30の側板35に回転自在に支持されている。側板35は、回転軸36に回転自在に固定されている。
【0031】
シート搬送方向上流側張架ローラである従動ローラ33は、側板35に設けられた長穴37に、側板35に対して移動可能に回転自在に支持されている。具体的には、側板35は、軸方向両端に設けられており、従動ローラ33の軸が、長穴37に挿入されることで、支持されている。一方、駆動ローラ32は、側板35に対して移動不能に回転自在に支持されている。具体的には、軸受を介して駆動ローラ32の軸が側板35に回転自在に支持される。長穴37内を従動ローラ33が移動することで、従動ローラ33の回転中心と駆動ローラ32の回転中心との距離が変化しないように、長穴37は、駆動ローラ32の回転中心を中心とする円弧形状となっている。その結果、従動ローラ33が、駆動ローラ32の回転中心を中心として回動するように、長穴37内を移動し、長穴37内を従動ローラ33が移動しても、従動ローラ33の回転中心と駆動ローラ32の回転中心との距離が変化することがない。これにより、吸着ベルト31の張力が変化することなく、吸着ベルトユニット40を、駆動ローラ32を支点に揺動させることができる。
【0032】
側板35は、第2張架ローラである従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側を支点にして、揺動自在に装置本体に支持されている。具体的には、側板35は、従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸36に回転自在に固定されている。また、側板35のシート搬送方向下流側端部には、ワイヤ71の一端が固定されている。ワイヤ71は、ワイヤカラー72を介してワイヤ駆動手段73に接続されている。図3(a)の状態からワイヤ駆動手段73により、ワイヤ71を巻き取ることで側板35が、回転軸36を中心にして図中反時計回りに回転する。すると、図3(a)に示す吸着ベルト31が、シート束Sの最上位シートS1に接触した状態から、図3(b)に示す吸着ベルト31がシート束Sから離間する位置へ移動する。すなわち、本実施形態においては、ワイヤ71、ワイヤカラー72、ワイヤ駆動手段73により、接離駆動手段が構成されている。
【0033】
図4は、ベルトユニット40の要部構成を示す斜視図である。
吸着ベルト31の表面には、吸着ベルト31の表面を帯電させる帯電手段としてのブレード状の電極部材34が当接している。電極部材34は、交流を発生する帯電電源38に接続されている。なお、本実施形態では、帯電手段としてブレード状の電極部材34を用いているが、図5に示すようなローラ状の電極部材134を用いてもよい。また、図6に示すように、電極部材34の吸着ベルト31の回転方向上流側で、かつ、シート束Sと吸着ベルト31の分離位置より下流側に、交番電源である除電電源140に接続された除電電極39を吸着ベルト31に当接又は近接して設置してもよい。また、図6に示す吸着ベルト31は、誘電体からなる表層31aと、導体からなる裏層31bとを有する2層構造としたものである。
【0034】
次に、このシート搬送装置90を用いたシート分離・搬送動作について説明する。
[帯電動作]
給紙ユニット30は通常、図3(b)の位置にて待機しており、給紙信号が入ると、電磁クラッチが入り、駆動ローラ32が回転駆動され、吸着ベルト31を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト31に電極部材34を介して帯電電源38より交番電圧を印加し、吸着ベルト31の表面に交流電源周波数と吸着ベルト31の周動速度に応じたピッチ(ピッチは2mm〜15mm程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。帯電電源38は交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、本実施形態では、吸着ベルト31の表面に対して3〜4KV(±1.5〜±2.0)の振幅を持った交流を印加している。
【0035】
[吸着動作]
上記したように、吸着ベルト31に電荷パターンを形成したら、ラック&ピニオン形式のシート押上装置41(図7参照)により底板42を上昇させる。また、これと前後して、給紙ユニット30を図中時計回りに回転させ、図3(a)に示す吸着ベルト31当接位置へ移動させる。このとき、従動ローラ33は、長穴37の下端と当接している。底板42が上昇していくと、シート束Sの最上位シートS1が従動ローラ33と当接する。さらに、底板42を上昇させ、従動ローラ33を押し上げていくと、長穴37に案内されながら、従動ローラ33が上方へ移動して、ベルトユニット40が図中時計回りに回動する。そして、従動ローラ33が、長穴37の上端に当接するタイミングでシート検出手段65がシート束の最上位シートS1が、所定の位置にきたことを検知し、底板42の上昇が停止する。このとき、吸着ベルト31のシート束Sの上面と対向する部分が、シート束の最上位シートS1と当接する。
【0036】
このように、吸着ベルト31が最上位シートS1と当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト31の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束の最上位シートS1が吸着ベルト31に吸着する。
【0037】
[分離・搬送動作]
図3(a)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト31に最上位シートS1が吸着したら、給紙ユニット30の側板35を、図中反時計まわりに回動させる。すると、シート搬送方向下流側の張架ローラである駆動ローラ32は、側板35とともにシート束Sから離間する方向へ移動する。一方、シート搬送方向上流側の張架ローラである従動ローラ33は、自重により、シート束Sの上面から動かず、側板35に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト31(吸着ベルトユニット40)は、従動ローラ33の回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト31に吸着したシートが、吸着ベルト31の従動ローラ33に巻き回された部分を支点して湾曲する(図7参照)。その結果、吸着ベルト31に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させ、2番目以降のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0038】
側板35が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ33が、長穴37の下端に突き当たる。このように、従動ローラ33が、長穴37に突き当たった状態から、さらに側板35を回動させると、従動ローラ33も側板35とともに移動し、従動ローラ33が、シート束Sの上面から離間し、図3(b)に示す状態で、側板35の回動が停止する。側板35の回動が停止したら、電磁クラッチを入れて、駆動ローラ32を回転駆動し、吸着ベルト31を無端移動させて、吸着ベルト31に吸着している最上位シートS1を、搬送ローラ対18(図1参照)へ向けて搬送する。吸着ベルト31に静電吸着した最上位シートS1の先端が、吸着ベルト31の駆動ローラ32の巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト31から分離し、不図示のガイド部材に案内されながら、搬送ローラ対18へ向けて移動する。
【0039】
搬送ローラ対18と吸着ベルト31との線速は同一にされており、搬送ローラ対18がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト31も間欠駆動されるように制御される。
【0040】
また、吸着ベルト31の帯電は、吸着ベルト31のシートの分離位置から、搬送ローラ対18までの長さ分だけ行うようにして、それ以降は、電極部材34で吸着ベルト31を除電するようにしてもよい。これによりシートは、搬送ローラ対18へ搬送された後は吸着ベルト31の影響を受けずに、搬送ローラ対18の搬送力のみによって搬送される。また、吸着ベルト31を除電することによって、2枚目のシートが、離間した吸着ベルト31に静電吸着するのを抑制することができる。
【0041】
ここで、周動する吸着ベルト31に交番電圧を印加することにより、帯電した吸着ベルト31の電荷の除電について説明する。
図8(a)〜(d)は、交番電圧の印加パターンを示す図である。
例えば、図8(a)に示すように、印加電圧を低くすることによって、吸着ベルト31上の電荷パターンを除去する。また、図8(b)に示すように、電源周波数を高くし、吸着ベルト31上に形成する電荷パターンのピッチを細かくすることで、吸着ベルト31のマクスウェル応力に基づく吸着力を低減させることもできる。図8(a)、(b)は、直流電源を交番させた矩形波であるが、図8(c)、(d)に示すように、正弦波を用いる場合も同様である。
【0042】
また、紙粉やその他のごみが吸着ベルト31に付着すると、静電吸着に悪影響を与えることがあるので、吸着ベルト31表面をクリーニングするクリーニング手段を設けて、吸着ベルト31に付着した紙粉やその他ゴミを除去するようにしてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の特徴点について、説明する。
上述のシート搬送装置90においては、従動ローラ33が長穴37の下端に当接することで、吸着ベルト31がシート束Sから離間する構成であるため、従動ローラ33がシート束Sから離間するときの揺動角度(吸着ベルト31におけるシート束の最上位シートS1と接触する面と、シート束の最上位シートS1との角度)が一定である。その結果、様々な紙種や環境条件に対応できないという課題があった。そこで、本実施形態のシート搬送装置90は、シートの種類や環境によって、揺動角度を変更できるように構成した。
【0044】
図9は、本実施形態のシート搬送装置90の特徴点を示す模式図である。
図に示すように、シート搬送装置90には、従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を変更することで、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する変更手段たる揺動範囲変更機構60が設けられている。揺動範囲変更機構60は、ラック63とピニオンギヤ64を有している。ラック63は、長穴37を貫通する従動ローラ33の軸33a端部に不図示の軸受を介して固定されている。具体的には、軸受の外径をD形状にし、ラック63にD形状の穴を設け、軸受にこのラック63のD形状の穴に嵌合させるとともに、ラック63を軸受にネジ止めする。このラック63と噛み合う、ピニオンギヤ64は、側板35に回転自在に固定されている。ピニオンギヤ64と同軸上には不図示の第1プーリが設けられている。回転軸36には、第2プーリ66と不図示の第3プーリとが回転自在に取り付けられている。不図示の第1プーリと第2プーリ66とには、従動タイミングベルト67が巻きまわされており、不図示の第3プーリと変更駆動手段68の駆動軸68aとには、駆動タイミングベルト61が巻きまわされている。変更駆動手段以外の揺動範囲変更機構60を構成する部品(ラック63、ピニオンギヤ64、各プーリ、各タイミングベルト)は、給紙ユニット30の側板35の外側に配置され、軸方向両側に対称に配置し、両側で動作させることがより望ましい。
【0045】
本実施形態の揺動範囲変更機構60は、給紙ユニット30の揺動の支点である回転軸36に駆動伝達部材である第2プーリ66と不図示の第3プーリとを設け、これらのプーリを介して、変更駆動手段68の駆動力が、ピニオンギヤ64に伝達されるようにしている。このように、構成することで、給紙ユニット30が揺動しても、ピニオンギヤ64と同軸上の不図示の第1プリーリと回転軸36と同軸上に設けられた第2プーリ66との距離が変動することがない。これにより、不図示の第1プーリと第2プーリ66とに、巻き回された従動タイミングベルト67が引っ張られたり、たわんだりすることがない。また、同様に回転軸36と同軸上に設けられた不図示の第3プーリと駆動軸68aとに巻き回された駆動タイミングベルト61も、給紙ユニット30が揺動しても引っ張られたり、たわんだりすることがない。これにより、給紙ユニット30が揺動しても、良好に、ピニオンギヤ64に変更駆動手段68の駆動力を伝達することができる。
【0046】
変更駆動手段68には、制御手段たる制御部81が接続されている。また、制御部81には、操作入力部82や湿度検出手段としての温湿度計83が接続されている。温湿度計83は、給紙部13内に内蔵されており、制御部81は、温湿度計83の検知結果に基づいて、変更駆動手段68を制御している。湿度の検知は、複写機に設けられた湿度検知手段を用いてもよい。また、制御部81は、操作入力部82からユーザーが入力操作または選択操作を行うことにより、給紙カセット15に積載されているシートの材質や厚みなどのシート情報を取得する。すなわち、操作入力部82が、シート情報検知手段として機能している。一例を挙げると、シートの剛性・剛度の情報として、クラーク法(cm3/100、JIS P 8143)などで測定された値を操作入力部に入力させたり、シートの剛性・剛度の情報として、シートの坪量を操作入力部に入力させたりする。一般に、坪量が大きい厚紙であればシートの剛性が高く、坪量が小さい薄紙であればシートの剛性が低いため、坪量に基づいて、給紙カセット15にセットされたシートの剛性を把握することができる。また、このようなシート情報は、シート束を梱包する包装紙(パッケージ)に貼付されているラベルなどから得ることができる。例えば、給紙カセット15にシート束がセットされたとき、操作入力部の表示部にラベルに記載された商品番号を入力するよう指示する画面を表示し、ユーザーに商品番号を入力させる。制御部には、商品番号とシートの剛性(クラーク法で測定された値や坪量)や電気抵抗値とが関連付けられたテーブルが記憶されており、ユーザーが入力した商品番号に基づいて、給紙カセット20にセットされたシートの情報(シートの剛性や電気抵抗値)を得ることができる。そして、取得したシート情報(シートの剛性や電気抵抗など)に基づいて、変更駆動手段68を制御する。また、検知したシート情報や温湿度計83の検知結果に基づいて、吸着ベルト31の帯電ピッチや帯電電圧、吸着時間(吸着ベルトがシート束に接触している時間)などを制御してもよい。これにより、分離・搬送するシートや環境条件に適した吸着を行うことができる。例えば、電気抵抗が高いシートの場合は、必要とする吸着力を得るのに時間がかかるので、給紙カセット15にこのような電気抵抗が高いシートが収容されている場合は、吸着時間を長くする。
【0047】
変更駆動手段68を駆動することにより、ピニオンギヤ64を回転させラック63を移動させることで、従動ローラ33の軸33aが長穴37内を移動する。制御部81は、温湿度計83の検知結果やシート情報に基づいて、変更駆動手段68の駆動時間を特定し、特定した駆動時間、変更駆動手段68が駆動したら、変更駆動手段68を停止する。すると、従動ローラ33の軸33aが長穴37内の所定の位置で停止する。このように、ピニオンギヤ64、ラック63、変更駆動手段68により、従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を任意に設定することができる。
【0048】
上述と同様にして、帯電動作および吸着動作を行った後、吸着ベルト31をシート束から離間させるためにワイヤ駆動手段73を駆動する動作に同期して、変更駆動手段を駆動させる。これにより、側板35が回転軸を支点にして回転し、駆動ローラ32が側板35とともにシート束Sから離間する方向へ移動し、従動ローラ33が変更駆動手段駆動力により、側板35に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、上述同様、吸着ベルト31(吸着ベルトユニット40)は、従動ローラ33の回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト31に吸着したシートが、吸着ベルト31の従動ローラ33に巻き回された部分を支点して湾曲する。よって、上述と同様に、吸着ベルト31に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させ、2番目以降のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0049】
そして、変更駆動手段の駆動時間が紙種情報や環境情報に基づき決定された駆動時間に到達したら、変更駆動手段の駆動を停止する。例えば、給紙カセット15に収容されているシートが厚紙など剛性のあるシートの場合や、高湿環境下など、吸着ベルト31の揺動角度が大きいと最上位シートS1が吸着ベルト31から分離するおそれがある場合は、従動ローラ33が長穴37の下端に到達する前に、変更駆動手段の駆動が停止する。一方、ワイヤ駆動手段73は、変更駆動手段の駆動が停止しても、駆動し続け、側板35をさらに図中反時計回りに回動させる。その結果、図10に示すように、従動ローラ33が長穴37の下端に到達せずに、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間する。これにより、従動ローラ33が長穴37の下端に突き当ってから、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間する場合に比べて、ベルトユニット40の揺動範囲が短くなり、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間したときにおける吸着ベルトの揺動角度を小さくすることができる。その結果、剛性のあるシートを分離・搬送する場合や、高湿環境下でも、最上位シートS1が吸着ベルト31から分離することなく、搬送することができ、搬送不良を抑制することができる。
また、シートの電気抵抗が低い場合など、吸着ベルトに対する吸着力が小さいシートが収容されている場合も、従動ローラ33が長穴37の下端に到達する前に、変更駆動手段の駆動を停止して、従動ローラがシート束から離間するときの揺動角度を小さくする。これにより、吸着力が小さくても、シートの復元力がシートの吸着力よりも大きくなるのを抑制することができ、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができる。
【0050】
一方、給紙カセットに収容されているシートが薄紙などの剛性が弱いシートの場合や、低湿環境の場合など、揺動角度が小さいと2番目以降のシートが吸着ベルト31から分離しないおそれがある場合は、変更駆動手段の駆動時間を長くして、従動ローラが長穴の下端に突き当るまで、駆動する。これにより、ベルトユニット40の揺動範囲が長くなり、揺動角度を大きくすることができ、剛性が弱いシートを分離・搬送する場合や、低湿環境下でも、2番目以降のシートを吸着ベルトから分離させることができる。これにより、複数枚のシートが搬送される重送が生じるのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、側板35に長穴37を設け、長穴37に従動ローラ33を支持しているが、従動ローラ33が、駆動ローラ32の回転中心を中心にして、シート束の上面に対して接離する方向に弧を描くように移動可能に支持される構成であればよい。例えば、側板35の従動ローラ33を支持する穴の駆動ローラ側の側面が、駆動ローラの回転中心を中心とする曲面で構成され、シート束の上面に対して接離する方向に延びる略矩形状の穴でもよい。
【0052】
さらに、上記では静電的にシート束の最上位シートを吸着ベルトに吸着させているが、エアによりシート束の最上位シートを吸着ベルトに吸着させてもよい。
【0053】
以上、本実施形態のシート搬送装置たるシート搬送装置90は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルト31に対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段たる給紙ユニット30と、給紙ユニット30を揺動させて吸着ベルト31をシート束に対して接離駆動させる接離駆動手段(ワイヤ71、ワイヤカラー72、ワイヤ駆動手段73で構成)とを備えている。給紙ユニット30は、吸着ベルト31、吸着ベルト31を張架する第1張架ローラである駆動ローラ32、および駆動ローラ32よりもシート搬送方向下流側に位置し、吸着ベルト31を張架する第2張架ローラである従動ローラ33を備える吸着ベルトユニット40と、吸着ベルトユニット40を、駆動ローラ32を支点にして揺動可能に支持する側板35とを備え、上記給紙ユニット30の揺動の支点が、従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側に設けられている。そして、吸着ベルト31をシート束の最上位シートと当接させた状態から接離駆動手段によって吸着ベルト31をシート束から離間させるまでの吸着ベルトユニット40の揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段たる移動範囲変更機構60を備えている。
かかる構成を備えることにより、上述したように、所定条件としての環境条件やシート種類に応じた最適な揺動角度でシートの分離を行うことができ、シートの分離を良好に行うことができる。
【0054】
具体的には、第1の剛性を有するシートである剛性の低いシートよりも高い剛性のシートを搬送するとき、第1の剛性を備えるシートを搬送するときの吸着ベルトユニット40の揺動範囲よりも小さくなるよう、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する。シートの剛性が弱いときは、シートの復元力が弱いため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を大きくし、シートの復元力を十分に得られるようにし、分離性能を確保する。一方、シートの剛性が高い場合は、シートの復元力が強いので、吸着ベルトユニット40の移動範囲を小さくして、揺動角度を小さくする。これにより、シートの復元力により、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができ、搬送不良を抑制することができる。
【0055】
また、湿度検出手段たる温湿度計83によって検出される湿度が、第1の湿度(例えば、低湿度)よりも高い湿度のとき、第1の湿度ときの吸着ベルトユニット40の揺動範囲よりも小さくなるよう、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更してもよい。低湿環境下では、吸着ベルト31への吸着力が強くなり、複数のシートが吸着ベルトに吸着しやすいため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を長くして、シートの復元力を十分に得られるようにし、分離性能を確保する。一方、高湿環境下では、シートの吸着ベルトへの吸着力が弱いため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を短くして、最上位シートのベルト吸着力よりも、シートの復元力が大きくならないようにする。これにより、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができ、搬送不良を抑制することができる。
【0056】
また、移動範囲変更機構60は、駆動手段たる変更駆動手段68と、変更駆動手段68から駆動力が伝達される駆動ギヤたるピニオンギヤ64と、ピニオンギヤ64と噛み合い、従動ローラ33の軸33aに取り付けられたラック63とを備える。これにより、変更駆動手段68の回転駆動力を、従動ローラを長穴に沿って移動させる力に変換することができ、シートの種類および/または環境条件に基づいて従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を、容易に制御することができる。
【0057】
また、上記吸着ベルト31の揺動の支点と同軸上にピニオンギヤ64に駆動力を伝達するための駆動伝達部材としてのプーリを設けた。これにより吸着ベルト31が揺動しても、プーリとピニオンギヤとの距離が変動することがないので、良好にピニオンギヤ64に変更駆動手段68の駆動力を伝達することができる。
【0058】
上記プーリとピニオンギヤとの駆動伝達をタイミングベルトたる従動タイミングベルトを介して行うことで、上記プーリとピニオンギヤとの距離が離れていても、ピニオンギヤに駆動力を伝達することができ、ギヤ列などを用いてピニオンギヤに駆動力を伝達する場合に比べて、設計の自由度を高めることができる。
【0059】
また、画像形成装置に上述のシート搬送装置90を設けることにより、シート搬送不良を抑制できる。
【符号の説明】
【0060】
10:複写機
13:給紙部
14:画像形成部
15:給紙カセット
30,120:給紙ユニット
31,130,200:吸着ベルト
32,130A,203:駆動ローラ
33,130B,202:従動ローラ
34,134:電極部材
35,150:側板
36,150a:回転軸
37,150b:長穴
38:帯電電源
40:吸着ベルトユニット
41:シート押上装置
42,211:底板
60:移動範囲変更機構
61:駆動タイミングベルト
63:ラック
64:ピニオンギヤ
66:第2プーリ
67:従動タイミングベルト
68:変更駆動手段
68a:駆動軸
71:ワイヤ
72:ワイヤカラー
73:ワイヤ駆動手段
81:制御部
82:操作入力部
83:温湿度計
204:テンションローラ
206:コロ
210:シート収容部
211 底板
S:シート束
S1:最上位シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2003−237969号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積載された原稿や記録紙等のシートを分離搬送する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離搬送方法が知られている。摩擦力を用いた分離搬送方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、搬送性能が低下する。また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離搬送する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、分離できないといった、搬送不良が発生することがある。さらに、シートの搬送時に圧力を加えて分離する構成のため、シートが汚れる場合がある。
【0003】
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離搬送方式が提案されている(例えば、特許文献1)。
図11は、特許文献1に記載のシート搬送装置100の模式図である。図11(a)は、待機状態のときの状態を示した図であり、図11(b)は、シートを吸着ベルトに吸着させるときの状態を示した図であり、図11(c)は、シートを搬送するときの状態を示した図である。
【0004】
図11に示す特許文献1に記載のシート搬送装置は、シート束の最上位シートを分離・搬送する給紙ユニット201を備えている。給紙ユニット201は、吸着ベルト200を有し、吸着ベルト200は、駆動ローラ203と、従動ローラ202と、テンションローラ204とで張架されている。また、給紙ユニット201は、吸着ベルト表面を帯電させる帯電手段たる帯電ローラ205、最上位シートと当接し、シートと供回りするコロ206を有している。駆動ローラ203、従動ローラ202、テンションローラ204、帯電ローラ205、コロ206は、不図示の給紙ユニット201の側板に回動可能に支持されており、側板は、シート搬送方向上流側張架ローラである駆動ローラ203の回転軸を中心にして回動可能となっている。
【0005】
シート収容部210の底板211に積載されたシート束Sの最上位シートS1を搬送するとき、底板211を上昇させて、最上位シートS1をコロ206に接触させる。次に、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト表面に帯電ローラ205によって交番電荷を付与する。次に、給紙ユニット201を駆動ローラ203の回転軸を中心にして、図中反時計回りに回動させて、吸着ベルト200の従動ローラ202とテンションローラ204とに張架された領域(シート吸着面)を最上位シートS1に接触させ、最上位シートS1を吸着ベルト200に静電吸着させる(図11(b)参照)。次に、給紙ユニット201を時計回りに回動させると、吸着ベルト200に静電吸着したシートが、吸着ベルト200とともに移動しようとする。このとき、コロ206との当接部を支点にして、シートが曲がり、シートに復元力が働く。最上位シートS1は、この復元力よりも吸着ベルト200への吸着力の方が勝り、吸着ベルト200とともに移動する。一方、2番目のシートは、吸着ベルト200との距離が遠いので、吸着ベルト200との吸着力がシートの復元力よりも弱くなり、2番目のシートは、吸着ベルト200から分離する(図11(c)参照)。そして、吸着ベルト200を回転させて、吸着ベルト200に吸着している最上位シートS1を搬送ローラ対に向けて搬送する。
【0006】
特許文献1に記載のシート搬送装置は、給紙ユニット201の揺動の中心を、吸着ベルト200の最上位シートと接触する領域(シート吸着面)よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることで、給紙ユニット201を揺動させるだけで、吸着ベルト200をシート束Sから離間させることができる。また、コロ206をシートに当接させることで、良好な分離性能が得られる。また、コロ206は、シートと供回りする構成なので、最上位シートS1の後端が抜けた後は、回転することがない。よって、2番目のシートが搬送力を受けることがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のシート搬送装置においては、シート搬送方向上流側張架ローラ(駆動ローラ203)の回転軸を給紙ユニット201の揺動の中心としている。このため、給紙ユニット201の揺動の中心をシート吸着面よりも、シート材搬送方向上流側に位置させるには、吸着ベルト200を3本のローラ202、203,204で張架する必要があった。また、これとは別に、分離の際にシートに復元力を作用させるためのコロ206も設けている。よって、部品点数が増加し、装置のコスト高に繋がるという問題があった。
【0008】
そこで、本出願人は、特願2010−109191号(以下、先願という)において、部品点数を削減することができるシート搬送装置を提案した。
図12は、先願のシート搬送装置を示す模式図である。図12(a)は、シートを吸着ベルト130に吸着させるときの状態を示した図であり、図12(b)は、シートを搬送するときの状態を示した図である。
図に示すように、シート搬送装置100は、給紙手段たる給紙ユニット120を備えている。給紙ユニット120は、第1張架ローラである駆動ローラ130A、第2張架ローラである従動ローラ130B、および、これらローラに張架された吸着ベルト130を有する吸着ベルトユニットと、この吸着ベルトユニットを揺動可能に支持する側板150と有している。側板150には長穴150bが設けられており、この長穴150bに従動ローラ130Bを回転自在に支持し、駆動ローラ130Aを側板150に回転自在に支持している。側板150は、従動ローラ130Bよりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸150aに固定され、回転軸150aには不図示の駆動手段に接続されている。不図示の駆動手段により回転軸150aが、反時計回りに回動すると、側板150が、反時計回りに回転する。すると、図12(a)の状態から駆動ローラ130Aは、側板150とともにシート束Sから離間する方向へ移動する。一方、従動ローラ130Bは、自重によりシート束Sの上面から動かず、側板150に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト130(吸着ベルトユニット)は、従動ローラ130Bの回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト130に吸着したシートが、吸着ベルト130の従動ローラ130Bに巻き回された部分を支点にして湾曲する。その結果、吸着ベルト130に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト130に吸着させ、2番目のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0009】
側板150が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ130Bが、長穴150bの下端に突き当たる。このように、従動ローラ130Bが、長穴150bの下端に突き当たった状態から、さらに側板150を回動させると、従動ローラ130Bも側板150とともに移動し、従動ローラ130Bがシート束Sの上面から離間し、図12(b)に示す状態で側板150の回動が停止する。側板150の回動が停止したら、駆動ローラ130Aを回転駆動し、吸着ベルト130を無端移動させて吸着ベルト130に吸着している最上位シートS1を搬送する。
【0010】
この先願のシート搬送装置100は、シート搬送方向上流側張架ローラ(従動ローラ130B)の回転軸よりもシート搬送方向上流側に給紙ユニット120の揺動の支点を設けることで、2本の張架ローラで吸着ベルト130を張架した構成でも、給紙ユニット120の揺動の中心を、吸着ベルト130の最上位シートと接触する領域よりも、シート材搬送方向上流側に位置させることができる。これにより、給紙ユニット120を揺動させるだけで、吸着ベルト130をシート束から離間させることができる。また、特許文献1に記載のシート搬送装置のように、シート搬送方向上流側張架ローラ(駆動ローラ203)の回転軸を給紙ユニット120の揺動の中心とした場合に比べて、少ない張架ローラで、給紙ユニット120を揺動させて、吸着ベルト130をシート束から離間させることができる。その結果、引用文献1に記載の構成に比べて、部品点数を削減することができる。
【0011】
また、先願のシート搬送装置は、側板150に長穴150bを設けて、シート搬送方向上流側の張架ローラ130Bを長穴150bに支持している。これにより、吸着ベルトユニットが、第1張架ローラである駆動ローラ130Aを支点にして揺動可能に側板150に支持される。その結果、シート分離時にシート搬送方向上流側の張架ローラ130Bがシート束Sに当接して、吸着ベルト130に吸着したシートに復元力を働かせることができる。また、シート分離後は、シート搬送方向上流側の張架ローラ130Bが長穴150bの下端に当接することで、従動ローラ130Bをシート束Sの上面から離間させることができる。よって、シート搬送時に2番目のシートが搬送力を受けることがない。このように、先願のシート搬送装置100は、特許文献1のシート搬送装置のように、コロ206も設けなくても、シートの復元力を得ることができ、かつ、シート搬送時に2番目のシートが搬送力を受けないようにすることができる。よって、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を削減することができる。
【0012】
しかしながら、上記先願のシート搬送装置においては、従動ローラ130Bがシート束Sから離間するときの吸着ベルト130のシート吸着面(吸着ベルトが接触位置にあるとき、最上位シートと接触する面)と、シート束の上面とがなす角度(以下、揺動角度という)が一定であるため、様々なシートや環境条件に対応できないという課題があった。具体的に説明すると、厚紙などの剛性が高く復元力が強いシートの場合、揺動角度が大きいと、吸着力よりも復元力の方が勝り、最上位シートS1が、吸着ベルト130から剥がれるおそれがある。一方、薄紙などの剛性が弱いシートの場合、揺動角度が小さいと、2番目のシートにおいて、復元力よりも吸着力の方が強くなり、2番目のシートが、分離しないという不具合が生じてしまう。また、環境条件が高湿環境のとき、シートの吸着ベルト130への静電的な吸着力が低下する。このため、揺動角度が大きいと吸着力よりも復元力の方が勝り、最上位シートS1が吸着ベルト130から剥がれるおそれがある。一方、環境条件が低湿環境のときは、シートの吸着ベルト130への静電的な吸着力が増加し、揺動角度が小さいと2番目のシートにおいて、復元力よりも吸着力の方が強くなり、2番目のシートが分離しないという不具合が生じてしまう。このように、シートの種類や環境条件によって分離に最適な揺動角度が異なるのである。
【0013】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、部品点数を削減することができ、かつ、多様な条件において良好な分離性能を得ることができるシート搬送装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトに対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段と、上記給紙手段を揺動させて上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離させる接離駆動手段とを備えたシート搬送装置において、上記給紙手段は、上記吸着ベルト、上記吸着ベルトを張架する第1張架ローラ、および該第1張架ローラよりもシート搬送方向下流側に位置し、上記吸着ベルトを張架する第2張架ローラを備える吸着ベルトユニットと、該吸着ベルトユニットを揺動可能に支持する側板とを備え、上記給紙手段の揺動の支点が、第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けられており、上記吸着ベルトを上記シート束の最上位シートと当接させた状態から上記接離駆動手段によって上記吸着ベルトを上記シート束から離間させるまでの上記吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシート搬送装置において、上記所定の条件は、シートの種類および/または環境条件であることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2のシート搬送装置において、上記変更手段は、上記第1の剛性を有するシートよりも高い剛性シートを搬送するとき、上記第1の剛性を備えるシートを搬送するときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2または3のシート搬送装置において、上記変更手段は、湿度検出手段によって検出される湿度が、第1の湿度よりも高い湿度のとき、上記第1の湿度ときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、上記変更手段は、駆動手段と、駆動手段から駆動力が伝達される駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合い、上記第2張架ローラの軸に取り付けられたラックとを備えたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5のシート搬送装置において、上記給紙手段の揺動の支点と同軸上に上記駆動ギヤに駆動力を伝達するための駆動伝達部材を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のシート搬送装置において、上記駆動伝達部材から上記駆動ギヤへの駆動伝達をタイミングベルト介して行うことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上位シートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、上記シート搬送手段として、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、吸着ベルトをシート束の最上位シートと当接させた状態から接離駆動手段によって吸着ベルトをシート束から離間させるまでの吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を所定の条件に応じて変更すれば、所定の条件に応じた揺動角度にすることができる。例えば、所定の条件として、剛性が高く復元力が強いシートを分離・搬送するときや高湿環境のときにおいては、吸着ベルトユニットの揺動範囲を短くする。その結果、揺動角度が小さい状態で、シート搬送方向上流側の張架ローラである第2張架ローラをシート束から離間することができる。これにより、剛性が高く復元力が強いシートを分離搬送するときや高湿環境のときに、吸着ベルトから最上位シートが剥がれてしまうのを抑制することができる。また、例えば、所定の条件として、薄紙などの剛性が弱いシートを分離搬送するときや低湿環境のときは、剛性が高く復元力が強いシートを分離・搬送するときや高湿環境のときに比べて吸着ベルトユニットの揺動範囲を長くする。これにより、復元力が強いシートの場合や高湿環境下のときの揺動角度に比べて揺動角度が大きくなる。これにより、復元力を増加させることができ、2番目のシートを良好に分離することができる。
【0016】
また、本発明は、先願と同じく、給紙手段の揺動の支点をシート搬送方向上流側の第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けたので、2本の張架ローラで吸着ベルトを張架した構成であっても、給紙手段を揺動させるだけで吸着ベルトをシート束から離間させることができる。これにより、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、張架ローラの数を減らすことができる。また、第1張架ローラを支点に吸着ベルトユニットを揺動可能に側板に支持することで、特許文献1に記載のシート搬送装置のように、コロを設けなくても、シート復元力(剛性)を利用した分離を行え、かつ、2番目のシートに吸着ベルトの搬送力が伝達されるのを防止できる。これにより、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、部品点数を少なくでき、装置を安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る複写機を示す模式図である。
【図2】同複写機における給紙部の概略構成を示す斜視図である。
【図3】同給紙部に設けられるシート分離給紙装置の基本構成を示す模式図である。
【図4】同シート分離給紙装置の要部構成を示す斜視図である。
【図5】同シート分離給紙装置の変形例を示す斜視図である。
【図6】同シート分離給紙装置の変形例を示す正面図である。
【図7】同シート分離給紙装置によるシート分離について説明する図。
【図8】同シート分離給紙装置の電極部材に印加する交番電圧の印加パターンを示す図。
【図9】同シート分離給紙装置の特徴点を示す模式図である。
【図10】同シート分離給紙装置における従動ローラの長穴内の移動停止位置の一例を示す図である。
【図11】従来のシート搬送装置を示す模式図である。
【図12】先願のシート搬送装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置である複写機に適用した一実施形態について説明する。
なお、本発明は、本実施形態の画像形成装置に限らず、例えばインクジェット方式の画像形成装置などにも適用することができることは言うまでもない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る複写機10を示す模式図である。
この複写機10は、原稿トレイ11aに載置された原稿束から原稿を1枚ずつ分離して原稿読取部12上のコンタクトガラスに自動給紙する自動原稿搬送装置11と、自動原稿搬送装置11によってコンタクトガラス上に搬送された原稿を読み取る原稿読取部12と、給紙部13から給紙された記録材シート(シート材)に対して、原稿読取部12によって読み取った原稿画像に基づいて画像を形成する画像形成手段たる画像形成部14とを備えている。給紙部13は、複数枚のシートが積層されたシート束Sを収容していて、このシート束Sからその最上位に位置する最上位シートS1を画像形成部14に給紙する。なお、本実施形態では、画像形成部14と給紙部13とは分割可能となっている。
【0020】
画像形成部14は、主に、イエロー(以下「Y」と記載し、イエロー用の部材の符号には色別符号として「Y」を付す。シアン、マゼンタ、ブラックについても同様。)用の作像部23Y、C(シアン)用の作像部23C、M(マゼンタ)用の作像部23M、BK(ブラック)用の作像部23BKの4つの作像部と、中間転写材である中間転写ベルト24と、潜像形成手段としての露光装置25とから構成されている。
【0021】
露光装置25は、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等から入力される色分解された画像データや、原稿読取部12によって読み取った原稿の画像データを、光源駆動用の信号に変換し、それに従い各レーザ光源ユニット内の半導体レーザを駆動して光ビームを出射するようになっている。
【0022】
各作像部23Y,23C,23M,23BKは、それぞれ、回転駆動される潜像担持体としての感光体26Y,26C,26M,26BK、それぞれの感光体26Y,26C,26M,26BKの周囲に配置される帯電部27、現像部28、クリーニング部29等により構成されている。感光体26Y,26C,26M,26BKは、円筒状に形成された感光体ドラムであり、図示しない駆動源により回転駆動される。各帯電部27は、それぞれ対応する感光体26Y,26C,26M,26BKの表面を所定電位となるように一様帯電するものである。本実施形態の帯電部27は、帯電ローラ等の帯電部材を感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に接触又は近接させて帯電処理する接触帯電方式のものを採用しているが、これに限られない。露光装置25から出射された破線で示す光ビームが帯電部27により一様帯電された各感光体26Y,26C,26M,26BKの表面にスポット照射されることにより、各感光体表面にはそれぞれの画像情報に応じた静電潜像が書き込まれる。各現像部28は、感光体26Y,26C,26M,26BK上の静電潜像にトナーを付着させることにより、その静電潜像をトナー像として顕像化させるもので、感光体26Y,26C,26M,26BKに対して非接触状態でトナーを供給する非接触現像方式のものが採用されている。各クリーニング部29は、感光体26Y,26C,26M,26BKの表面に付着している転写残トナー等の不要物を除去するもので、感光体表面にブラシを接触させてクリーニングするブラシ接触方式のものが採用されている。
【0023】
中間転写ベルト24は、樹脂フィルムまたはゴムを基体として形成された無端状ベルトから構成されており、各感光体26Y,26C,26M,26BK上に形成された各色トナー像が互いに重なり合うように転写される。このように重なった中間転写ベルト24上の画像は、転写ローラ19によってシートS1に転写される。
画像が転写されたシートS1は、その後に定着器20に搬送され、熱と圧力によって画像がシートS1に定着される。その後、シートS1は、排紙ローラ対21により排紙トレイ22へ排出される。
【0024】
図2は、給紙部13の概略構成を示す斜視図である。
給紙部13は、複数枚のシートを積載して収容するシート材収容部としての給紙カセット15と、給紙カセット15上の複数枚のシートからなるシート束Sから最上位に位置する最上位シートS1を分離して搬送するシート搬送装置90とを含んで構成されている。なお、図2は、シート搬送装置90のうち、吸着ベルトユニット40のみを示している。シート搬送装置90によって分離給紙されたシートS1は、搬送路17(図1参照)に送り出される。そして、レジストローラ対18により所定のタイミングで転写ローラ19による転写位置へ搬送される。
【0025】
シート搬送装置90は、積載可能用紙幅に対して短く、中心付近に配置されているが、これは、積載可能用紙幅に対して、同等もしくは長くても問題ない。また、本実施形態では、シート給紙方向に対して直交する方向(幅方向)の中心付近にシート搬送装置90を1つ設けた構成であるが、幅方向に複数個のシート搬送装置90を配置してもよい。
【0026】
本実施形態のシート搬送装置90は、無端誘電体ベルト上に発生する電界がシートに作用して吸着力を発生させる静電吸着方式により、シート束Sの最上位シートS1を、シート束Sから分離させるものである。しかし、上記静電吸着方式の場合、吸着ベルト31が最上位シートS1と接触してからある一定時間は、最上位シートS1だけではなく、積載された複数のシートにも、電界による吸着力が発生してしまうことがある。吸着ベルト31と最上位シートS1とを接触させておく時間を十分に長くすれば、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させることができるが、生産性の低下を招いてしまい、シート搬送装置90としては商品性に欠けるものとなってしまう恐れがある。ここで、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に静電吸着させるためには、吸着ベルト31を最上位シートS1に長く接触させておく必要がある理由について説明する。吸着ベルト31に与える交番電荷+σと−σの間隔が小さい程、最上位シートS1に作用する吸着力が最大になる時間が早く、また、シート束Sの2枚目以降に作用する吸着力が最小になる時間が早くなる。このことは、各シートに働く時間毎のマクスウェル応力を計算することで容易に証明することが可能である。しかし、交番電荷+σと−σの間隔が小さい場合には、隣あう電位同士が近接しており、その隣り合う電荷同士で電荷を打ち消し合うため、十分な吸着力を得られなくなる。更に、隣あう電位同士が近接している場合には、シート側に発生する積載方向の電界距離も短くなり、シートに吸着力を与えることのできる距離も短くなる。よって、交番電荷+σと−σの間隔が小さい程、最上位シートS1は、吸着ベルト31からはがれる方向に対しては弱くなる。(少しの剥がれで、吸着力を失う)。そのため、良好な搬送性を得るためには、吸着ベルト31に与える交番電荷+σと−σの間隔は、ある程度、大きくしておく必要があり、その結果、シート束Sの2枚目以降に作用する吸着力が最小になる時間が長くなり、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に静電吸着させるための吸着ベルト31と最上位シートS1との接触時間が長くなるのである。
【0027】
また、吸着ベルト31と最上位シートS1とを接触させておく時間を十分に長くしたとしても、シート同士の密着力が強い場合は、最上位シートS1と2枚目のシートを分離することができない場合もある。例えば、コート紙などは、表面コート層があるため裁断面と印字面で吸湿性が異なる。裁断面は吸湿性が高いことから、シートを束にして放置した場合、裁断面は印字面より早く吸湿することでシート周り全部が膨張し、積載したシートの周り同士が密着する為に、積載状態のシート中心部の圧力が低くなり、結果として、積載したシート間の密着力が強固になる。
このように、生産性やシートの種類により良好な分離性が得られない場合があった。
【0028】
そこで、吸着ベルト31を張架する張架ローラのうち、シート搬送方向下流側の張架ローラをシート束の先端よりもシート搬送方向下流側に設け、吸着ベルト31にシート給送経路を挟んで、静止又は反給紙方向に移動可能な阻止部材を設けたものが発明されている(特許第3159727号)。この発明は、複数枚、吸着ベルト31に吸着シートのうち、2枚目以降のシートは、阻止部材との摩擦力により吸着ベルト31から分離させるものである。しかし、吸着ベルト31に圧接させた阻止部材を設ける方法は、吸着ベルト31に吸着した複数枚目のシート先端にも吸着ベルト31の電界による吸着力が発生している状態のため、阻止部材で確実にシートを分離することは、幅広い条件を考慮すると困難である。
【0029】
そこで、本実施形態のシート搬送装置90においては、吸着ベルト31を揺動させて、吸着ベルト31に吸着したシートをめくり上げるような動作をおこなっている。このめくり動作を加えることで、積載されたシートの中心部に空気を入れることができ、2枚目以降に作用するシート吸着力を早期に弱めることができる。さらに、このような動作を行うことにより、複数枚のシートが吸着ベルト31に吸着しても、シートの復元力により2枚目以降のシートを吸着ベルト31から分離させることができ、良好な分離性を得ることができる。よって、吸着ベルト31とシートとの接触時間が短くても、良好に分離を行うことができ、生産性を損なうのを抑制することができる。以下に、具体的に説明する。
【0030】
図3は、シート搬送装置90の基本構成を示す模式図である。(a)は、吸着ベルト31をシート束Sの最上位シートS1に接触させた状態を示す図であり、(b)は、吸着ベルト31をシート束Sから離間させた状態を示す図である。
図に示すように、本実施形態のシート搬送装置90は、給紙手段たる給紙ユニット30を備えている。給紙ユニット30は、第1張架ローラとしての駆動ローラ32と、第2張架ローラとしての従動ローラ33と、駆動ローラ32と従動ローラ33とに張架される吸着ベルト31とからなる吸着ベルトユニット40を備えている。また、駆動ローラ32を支点に吸着ベルトユニット40を揺動可能に支持する側板35を備えている。従動ローラ33は、不図示のスプリングにて図中左方向へ付勢されており、吸着ベルト31に張力をかけている。吸着ベルト31は108Ωcm以上の抵抗を有する誘電体で構成されており、例えば、厚さ100μm程度のポリエチレンテレフタレート等のフィルムで構成されている。また、吸着ベルト31は、抵抗が108Ω・cm以上の誘電体からなる表層と、抵抗が106Ω・cm以下の導体からなる裏層とを有する2層構造としてもよい。吸着ベルト31を上記のような2層構造とすることで、裏層を接地された対向電極として使用することができ、吸着ベルト31に電荷を与える帯電手段としての電極部材34を、吸着ベルト31の表層に接した位置であればどこでも設けることができる。また、駆動ローラ32は抵抗値が106Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、従動ローラ33は金属ローラである。駆動ローラ32及び従動ローラ33はともに接地されている。駆動ローラ32は吸着ベルト31からシートを曲率により分離するのに適した小径にされている。すなわち、駆動ローラ32の径を小さく設定して曲率を大きくすることにより、吸着ベルト31に吸着されて搬送されたシートが、駆動ローラ32から離れて搬送方向下流側の不図示のガイド部材により形成される搬送路に入ることができるようになっている。また、駆動ローラ32は、不図示の駆動モータにより電磁クラッチを介して給紙信号に応じて間欠的に駆動されるよう構成されている。駆動ローラ32、従動ローラ33は、給紙ユニット30の側板35に回転自在に支持されている。側板35は、回転軸36に回転自在に固定されている。
【0031】
シート搬送方向上流側張架ローラである従動ローラ33は、側板35に設けられた長穴37に、側板35に対して移動可能に回転自在に支持されている。具体的には、側板35は、軸方向両端に設けられており、従動ローラ33の軸が、長穴37に挿入されることで、支持されている。一方、駆動ローラ32は、側板35に対して移動不能に回転自在に支持されている。具体的には、軸受を介して駆動ローラ32の軸が側板35に回転自在に支持される。長穴37内を従動ローラ33が移動することで、従動ローラ33の回転中心と駆動ローラ32の回転中心との距離が変化しないように、長穴37は、駆動ローラ32の回転中心を中心とする円弧形状となっている。その結果、従動ローラ33が、駆動ローラ32の回転中心を中心として回動するように、長穴37内を移動し、長穴37内を従動ローラ33が移動しても、従動ローラ33の回転中心と駆動ローラ32の回転中心との距離が変化することがない。これにより、吸着ベルト31の張力が変化することなく、吸着ベルトユニット40を、駆動ローラ32を支点に揺動させることができる。
【0032】
側板35は、第2張架ローラである従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側を支点にして、揺動自在に装置本体に支持されている。具体的には、側板35は、従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側に設けられた回転軸36に回転自在に固定されている。また、側板35のシート搬送方向下流側端部には、ワイヤ71の一端が固定されている。ワイヤ71は、ワイヤカラー72を介してワイヤ駆動手段73に接続されている。図3(a)の状態からワイヤ駆動手段73により、ワイヤ71を巻き取ることで側板35が、回転軸36を中心にして図中反時計回りに回転する。すると、図3(a)に示す吸着ベルト31が、シート束Sの最上位シートS1に接触した状態から、図3(b)に示す吸着ベルト31がシート束Sから離間する位置へ移動する。すなわち、本実施形態においては、ワイヤ71、ワイヤカラー72、ワイヤ駆動手段73により、接離駆動手段が構成されている。
【0033】
図4は、ベルトユニット40の要部構成を示す斜視図である。
吸着ベルト31の表面には、吸着ベルト31の表面を帯電させる帯電手段としてのブレード状の電極部材34が当接している。電極部材34は、交流を発生する帯電電源38に接続されている。なお、本実施形態では、帯電手段としてブレード状の電極部材34を用いているが、図5に示すようなローラ状の電極部材134を用いてもよい。また、図6に示すように、電極部材34の吸着ベルト31の回転方向上流側で、かつ、シート束Sと吸着ベルト31の分離位置より下流側に、交番電源である除電電源140に接続された除電電極39を吸着ベルト31に当接又は近接して設置してもよい。また、図6に示す吸着ベルト31は、誘電体からなる表層31aと、導体からなる裏層31bとを有する2層構造としたものである。
【0034】
次に、このシート搬送装置90を用いたシート分離・搬送動作について説明する。
[帯電動作]
給紙ユニット30は通常、図3(b)の位置にて待機しており、給紙信号が入ると、電磁クラッチが入り、駆動ローラ32が回転駆動され、吸着ベルト31を無端移動させる。次に、無端移動する吸着ベルト31に電極部材34を介して帯電電源38より交番電圧を印加し、吸着ベルト31の表面に交流電源周波数と吸着ベルト31の周動速度に応じたピッチ(ピッチは2mm〜15mm程度とするのがよい)で交番する電荷パターンを形成する。帯電電源38は交流の他直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、本実施形態では、吸着ベルト31の表面に対して3〜4KV(±1.5〜±2.0)の振幅を持った交流を印加している。
【0035】
[吸着動作]
上記したように、吸着ベルト31に電荷パターンを形成したら、ラック&ピニオン形式のシート押上装置41(図7参照)により底板42を上昇させる。また、これと前後して、給紙ユニット30を図中時計回りに回転させ、図3(a)に示す吸着ベルト31当接位置へ移動させる。このとき、従動ローラ33は、長穴37の下端と当接している。底板42が上昇していくと、シート束Sの最上位シートS1が従動ローラ33と当接する。さらに、底板42を上昇させ、従動ローラ33を押し上げていくと、長穴37に案内されながら、従動ローラ33が上方へ移動して、ベルトユニット40が図中時計回りに回動する。そして、従動ローラ33が、長穴37の上端に当接するタイミングでシート検出手段65がシート束の最上位シートS1が、所定の位置にきたことを検知し、底板42の上昇が停止する。このとき、吸着ベルト31のシート束Sの上面と対向する部分が、シート束の最上位シートS1と当接する。
【0036】
このように、吸着ベルト31が最上位シートS1と当接すると、誘電体であるシートには吸着ベルト31の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、シート束の最上位シートS1が吸着ベルト31に吸着する。
【0037】
[分離・搬送動作]
図3(a)に示す状態にて所定時間待機し、吸着ベルト31に最上位シートS1が吸着したら、給紙ユニット30の側板35を、図中反時計まわりに回動させる。すると、シート搬送方向下流側の張架ローラである駆動ローラ32は、側板35とともにシート束Sから離間する方向へ移動する。一方、シート搬送方向上流側の張架ローラである従動ローラ33は、自重により、シート束Sの上面から動かず、側板35に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、吸着ベルト31(吸着ベルトユニット40)は、従動ローラ33の回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト31に吸着したシートが、吸着ベルト31の従動ローラ33に巻き回された部分を支点して湾曲する(図7参照)。その結果、吸着ベルト31に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させ、2番目以降のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0038】
側板35が、さらに図中反時計回りに回動すると、従動ローラ33が、長穴37の下端に突き当たる。このように、従動ローラ33が、長穴37に突き当たった状態から、さらに側板35を回動させると、従動ローラ33も側板35とともに移動し、従動ローラ33が、シート束Sの上面から離間し、図3(b)に示す状態で、側板35の回動が停止する。側板35の回動が停止したら、電磁クラッチを入れて、駆動ローラ32を回転駆動し、吸着ベルト31を無端移動させて、吸着ベルト31に吸着している最上位シートS1を、搬送ローラ対18(図1参照)へ向けて搬送する。吸着ベルト31に静電吸着した最上位シートS1の先端が、吸着ベルト31の駆動ローラ32の巻き回し部分に到達すると、曲率分離により吸着ベルト31から分離し、不図示のガイド部材に案内されながら、搬送ローラ対18へ向けて移動する。
【0039】
搬送ローラ対18と吸着ベルト31との線速は同一にされており、搬送ローラ対18がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト31も間欠駆動されるように制御される。
【0040】
また、吸着ベルト31の帯電は、吸着ベルト31のシートの分離位置から、搬送ローラ対18までの長さ分だけ行うようにして、それ以降は、電極部材34で吸着ベルト31を除電するようにしてもよい。これによりシートは、搬送ローラ対18へ搬送された後は吸着ベルト31の影響を受けずに、搬送ローラ対18の搬送力のみによって搬送される。また、吸着ベルト31を除電することによって、2枚目のシートが、離間した吸着ベルト31に静電吸着するのを抑制することができる。
【0041】
ここで、周動する吸着ベルト31に交番電圧を印加することにより、帯電した吸着ベルト31の電荷の除電について説明する。
図8(a)〜(d)は、交番電圧の印加パターンを示す図である。
例えば、図8(a)に示すように、印加電圧を低くすることによって、吸着ベルト31上の電荷パターンを除去する。また、図8(b)に示すように、電源周波数を高くし、吸着ベルト31上に形成する電荷パターンのピッチを細かくすることで、吸着ベルト31のマクスウェル応力に基づく吸着力を低減させることもできる。図8(a)、(b)は、直流電源を交番させた矩形波であるが、図8(c)、(d)に示すように、正弦波を用いる場合も同様である。
【0042】
また、紙粉やその他のごみが吸着ベルト31に付着すると、静電吸着に悪影響を与えることがあるので、吸着ベルト31表面をクリーニングするクリーニング手段を設けて、吸着ベルト31に付着した紙粉やその他ゴミを除去するようにしてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の特徴点について、説明する。
上述のシート搬送装置90においては、従動ローラ33が長穴37の下端に当接することで、吸着ベルト31がシート束Sから離間する構成であるため、従動ローラ33がシート束Sから離間するときの揺動角度(吸着ベルト31におけるシート束の最上位シートS1と接触する面と、シート束の最上位シートS1との角度)が一定である。その結果、様々な紙種や環境条件に対応できないという課題があった。そこで、本実施形態のシート搬送装置90は、シートの種類や環境によって、揺動角度を変更できるように構成した。
【0044】
図9は、本実施形態のシート搬送装置90の特徴点を示す模式図である。
図に示すように、シート搬送装置90には、従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を変更することで、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する変更手段たる揺動範囲変更機構60が設けられている。揺動範囲変更機構60は、ラック63とピニオンギヤ64を有している。ラック63は、長穴37を貫通する従動ローラ33の軸33a端部に不図示の軸受を介して固定されている。具体的には、軸受の外径をD形状にし、ラック63にD形状の穴を設け、軸受にこのラック63のD形状の穴に嵌合させるとともに、ラック63を軸受にネジ止めする。このラック63と噛み合う、ピニオンギヤ64は、側板35に回転自在に固定されている。ピニオンギヤ64と同軸上には不図示の第1プーリが設けられている。回転軸36には、第2プーリ66と不図示の第3プーリとが回転自在に取り付けられている。不図示の第1プーリと第2プーリ66とには、従動タイミングベルト67が巻きまわされており、不図示の第3プーリと変更駆動手段68の駆動軸68aとには、駆動タイミングベルト61が巻きまわされている。変更駆動手段以外の揺動範囲変更機構60を構成する部品(ラック63、ピニオンギヤ64、各プーリ、各タイミングベルト)は、給紙ユニット30の側板35の外側に配置され、軸方向両側に対称に配置し、両側で動作させることがより望ましい。
【0045】
本実施形態の揺動範囲変更機構60は、給紙ユニット30の揺動の支点である回転軸36に駆動伝達部材である第2プーリ66と不図示の第3プーリとを設け、これらのプーリを介して、変更駆動手段68の駆動力が、ピニオンギヤ64に伝達されるようにしている。このように、構成することで、給紙ユニット30が揺動しても、ピニオンギヤ64と同軸上の不図示の第1プリーリと回転軸36と同軸上に設けられた第2プーリ66との距離が変動することがない。これにより、不図示の第1プーリと第2プーリ66とに、巻き回された従動タイミングベルト67が引っ張られたり、たわんだりすることがない。また、同様に回転軸36と同軸上に設けられた不図示の第3プーリと駆動軸68aとに巻き回された駆動タイミングベルト61も、給紙ユニット30が揺動しても引っ張られたり、たわんだりすることがない。これにより、給紙ユニット30が揺動しても、良好に、ピニオンギヤ64に変更駆動手段68の駆動力を伝達することができる。
【0046】
変更駆動手段68には、制御手段たる制御部81が接続されている。また、制御部81には、操作入力部82や湿度検出手段としての温湿度計83が接続されている。温湿度計83は、給紙部13内に内蔵されており、制御部81は、温湿度計83の検知結果に基づいて、変更駆動手段68を制御している。湿度の検知は、複写機に設けられた湿度検知手段を用いてもよい。また、制御部81は、操作入力部82からユーザーが入力操作または選択操作を行うことにより、給紙カセット15に積載されているシートの材質や厚みなどのシート情報を取得する。すなわち、操作入力部82が、シート情報検知手段として機能している。一例を挙げると、シートの剛性・剛度の情報として、クラーク法(cm3/100、JIS P 8143)などで測定された値を操作入力部に入力させたり、シートの剛性・剛度の情報として、シートの坪量を操作入力部に入力させたりする。一般に、坪量が大きい厚紙であればシートの剛性が高く、坪量が小さい薄紙であればシートの剛性が低いため、坪量に基づいて、給紙カセット15にセットされたシートの剛性を把握することができる。また、このようなシート情報は、シート束を梱包する包装紙(パッケージ)に貼付されているラベルなどから得ることができる。例えば、給紙カセット15にシート束がセットされたとき、操作入力部の表示部にラベルに記載された商品番号を入力するよう指示する画面を表示し、ユーザーに商品番号を入力させる。制御部には、商品番号とシートの剛性(クラーク法で測定された値や坪量)や電気抵抗値とが関連付けられたテーブルが記憶されており、ユーザーが入力した商品番号に基づいて、給紙カセット20にセットされたシートの情報(シートの剛性や電気抵抗値)を得ることができる。そして、取得したシート情報(シートの剛性や電気抵抗など)に基づいて、変更駆動手段68を制御する。また、検知したシート情報や温湿度計83の検知結果に基づいて、吸着ベルト31の帯電ピッチや帯電電圧、吸着時間(吸着ベルトがシート束に接触している時間)などを制御してもよい。これにより、分離・搬送するシートや環境条件に適した吸着を行うことができる。例えば、電気抵抗が高いシートの場合は、必要とする吸着力を得るのに時間がかかるので、給紙カセット15にこのような電気抵抗が高いシートが収容されている場合は、吸着時間を長くする。
【0047】
変更駆動手段68を駆動することにより、ピニオンギヤ64を回転させラック63を移動させることで、従動ローラ33の軸33aが長穴37内を移動する。制御部81は、温湿度計83の検知結果やシート情報に基づいて、変更駆動手段68の駆動時間を特定し、特定した駆動時間、変更駆動手段68が駆動したら、変更駆動手段68を停止する。すると、従動ローラ33の軸33aが長穴37内の所定の位置で停止する。このように、ピニオンギヤ64、ラック63、変更駆動手段68により、従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を任意に設定することができる。
【0048】
上述と同様にして、帯電動作および吸着動作を行った後、吸着ベルト31をシート束から離間させるためにワイヤ駆動手段73を駆動する動作に同期して、変更駆動手段を駆動させる。これにより、側板35が回転軸を支点にして回転し、駆動ローラ32が側板35とともにシート束Sから離間する方向へ移動し、従動ローラ33が変更駆動手段駆動力により、側板35に対して相対的にシート束方向へ移動する。これにより、上述同様、吸着ベルト31(吸着ベルトユニット40)は、従動ローラ33の回転中心を中心にして、揺動するような動きをとり、吸着ベルト31に吸着したシートが、吸着ベルト31の従動ローラ33に巻き回された部分を支点して湾曲する。よって、上述と同様に、吸着ベルト31に吸着したシートに復元力が働き、最上位シートS1のみを吸着ベルト31に吸着させ、2番目以降のシートをシートの復元力により分離させることができる。
【0049】
そして、変更駆動手段の駆動時間が紙種情報や環境情報に基づき決定された駆動時間に到達したら、変更駆動手段の駆動を停止する。例えば、給紙カセット15に収容されているシートが厚紙など剛性のあるシートの場合や、高湿環境下など、吸着ベルト31の揺動角度が大きいと最上位シートS1が吸着ベルト31から分離するおそれがある場合は、従動ローラ33が長穴37の下端に到達する前に、変更駆動手段の駆動が停止する。一方、ワイヤ駆動手段73は、変更駆動手段の駆動が停止しても、駆動し続け、側板35をさらに図中反時計回りに回動させる。その結果、図10に示すように、従動ローラ33が長穴37の下端に到達せずに、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間する。これにより、従動ローラ33が長穴37の下端に突き当ってから、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間する場合に比べて、ベルトユニット40の揺動範囲が短くなり、従動ローラ33がシート束Sの上面から離間したときにおける吸着ベルトの揺動角度を小さくすることができる。その結果、剛性のあるシートを分離・搬送する場合や、高湿環境下でも、最上位シートS1が吸着ベルト31から分離することなく、搬送することができ、搬送不良を抑制することができる。
また、シートの電気抵抗が低い場合など、吸着ベルトに対する吸着力が小さいシートが収容されている場合も、従動ローラ33が長穴37の下端に到達する前に、変更駆動手段の駆動を停止して、従動ローラがシート束から離間するときの揺動角度を小さくする。これにより、吸着力が小さくても、シートの復元力がシートの吸着力よりも大きくなるのを抑制することができ、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができる。
【0050】
一方、給紙カセットに収容されているシートが薄紙などの剛性が弱いシートの場合や、低湿環境の場合など、揺動角度が小さいと2番目以降のシートが吸着ベルト31から分離しないおそれがある場合は、変更駆動手段の駆動時間を長くして、従動ローラが長穴の下端に突き当るまで、駆動する。これにより、ベルトユニット40の揺動範囲が長くなり、揺動角度を大きくすることができ、剛性が弱いシートを分離・搬送する場合や、低湿環境下でも、2番目以降のシートを吸着ベルトから分離させることができる。これにより、複数枚のシートが搬送される重送が生じるのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、側板35に長穴37を設け、長穴37に従動ローラ33を支持しているが、従動ローラ33が、駆動ローラ32の回転中心を中心にして、シート束の上面に対して接離する方向に弧を描くように移動可能に支持される構成であればよい。例えば、側板35の従動ローラ33を支持する穴の駆動ローラ側の側面が、駆動ローラの回転中心を中心とする曲面で構成され、シート束の上面に対して接離する方向に延びる略矩形状の穴でもよい。
【0052】
さらに、上記では静電的にシート束の最上位シートを吸着ベルトに吸着させているが、エアによりシート束の最上位シートを吸着ベルトに吸着させてもよい。
【0053】
以上、本実施形態のシート搬送装置たるシート搬送装置90は、積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルト31に対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段たる給紙ユニット30と、給紙ユニット30を揺動させて吸着ベルト31をシート束に対して接離駆動させる接離駆動手段(ワイヤ71、ワイヤカラー72、ワイヤ駆動手段73で構成)とを備えている。給紙ユニット30は、吸着ベルト31、吸着ベルト31を張架する第1張架ローラである駆動ローラ32、および駆動ローラ32よりもシート搬送方向下流側に位置し、吸着ベルト31を張架する第2張架ローラである従動ローラ33を備える吸着ベルトユニット40と、吸着ベルトユニット40を、駆動ローラ32を支点にして揺動可能に支持する側板35とを備え、上記給紙ユニット30の揺動の支点が、従動ローラ33よりもシート搬送方向上流側に設けられている。そして、吸着ベルト31をシート束の最上位シートと当接させた状態から接離駆動手段によって吸着ベルト31をシート束から離間させるまでの吸着ベルトユニット40の揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段たる移動範囲変更機構60を備えている。
かかる構成を備えることにより、上述したように、所定条件としての環境条件やシート種類に応じた最適な揺動角度でシートの分離を行うことができ、シートの分離を良好に行うことができる。
【0054】
具体的には、第1の剛性を有するシートである剛性の低いシートよりも高い剛性のシートを搬送するとき、第1の剛性を備えるシートを搬送するときの吸着ベルトユニット40の揺動範囲よりも小さくなるよう、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更する。シートの剛性が弱いときは、シートの復元力が弱いため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を大きくし、シートの復元力を十分に得られるようにし、分離性能を確保する。一方、シートの剛性が高い場合は、シートの復元力が強いので、吸着ベルトユニット40の移動範囲を小さくして、揺動角度を小さくする。これにより、シートの復元力により、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができ、搬送不良を抑制することができる。
【0055】
また、湿度検出手段たる温湿度計83によって検出される湿度が、第1の湿度(例えば、低湿度)よりも高い湿度のとき、第1の湿度ときの吸着ベルトユニット40の揺動範囲よりも小さくなるよう、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を変更してもよい。低湿環境下では、吸着ベルト31への吸着力が強くなり、複数のシートが吸着ベルトに吸着しやすいため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を長くして、シートの復元力を十分に得られるようにし、分離性能を確保する。一方、高湿環境下では、シートの吸着ベルトへの吸着力が弱いため、吸着ベルトユニット40の揺動範囲を短くして、最上位シートのベルト吸着力よりも、シートの復元力が大きくならないようにする。これにより、最上位シートが吸着ベルトから分離するのを抑制することができ、搬送不良を抑制することができる。
【0056】
また、移動範囲変更機構60は、駆動手段たる変更駆動手段68と、変更駆動手段68から駆動力が伝達される駆動ギヤたるピニオンギヤ64と、ピニオンギヤ64と噛み合い、従動ローラ33の軸33aに取り付けられたラック63とを備える。これにより、変更駆動手段68の回転駆動力を、従動ローラを長穴に沿って移動させる力に変換することができ、シートの種類および/または環境条件に基づいて従動ローラ33の長穴37内での移動範囲を、容易に制御することができる。
【0057】
また、上記吸着ベルト31の揺動の支点と同軸上にピニオンギヤ64に駆動力を伝達するための駆動伝達部材としてのプーリを設けた。これにより吸着ベルト31が揺動しても、プーリとピニオンギヤとの距離が変動することがないので、良好にピニオンギヤ64に変更駆動手段68の駆動力を伝達することができる。
【0058】
上記プーリとピニオンギヤとの駆動伝達をタイミングベルトたる従動タイミングベルトを介して行うことで、上記プーリとピニオンギヤとの距離が離れていても、ピニオンギヤに駆動力を伝達することができ、ギヤ列などを用いてピニオンギヤに駆動力を伝達する場合に比べて、設計の自由度を高めることができる。
【0059】
また、画像形成装置に上述のシート搬送装置90を設けることにより、シート搬送不良を抑制できる。
【符号の説明】
【0060】
10:複写機
13:給紙部
14:画像形成部
15:給紙カセット
30,120:給紙ユニット
31,130,200:吸着ベルト
32,130A,203:駆動ローラ
33,130B,202:従動ローラ
34,134:電極部材
35,150:側板
36,150a:回転軸
37,150b:長穴
38:帯電電源
40:吸着ベルトユニット
41:シート押上装置
42,211:底板
60:移動範囲変更機構
61:駆動タイミングベルト
63:ラック
64:ピニオンギヤ
66:第2プーリ
67:従動タイミングベルト
68:変更駆動手段
68a:駆動軸
71:ワイヤ
72:ワイヤカラー
73:ワイヤ駆動手段
81:制御部
82:操作入力部
83:温湿度計
204:テンションローラ
206:コロ
210:シート収容部
211 底板
S:シート束
S1:最上位シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2003−237969号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトに対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段と、
上記給紙手段を揺動させて上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離駆動させる接離駆動手段とを備えたシート搬送装置において、
上記給紙手段は、上記吸着ベルト、上記吸着ベルトを張架する第1張架ローラ、および該第1張架ローラよりもシート搬送方向下流側に位置し、上記吸着ベルトを張架する第2張架ローラを備える吸着ベルトユニットと、該吸着ベルトユニットを上記第1の張架ローラを支点にして揺動可能に支持する側板とを備え、
上記給紙手段の揺動の支点が、第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けられており、
上記吸着ベルトを上記シート束の最上位シートと当接させた状態から上記接離駆動手段によって上記吸着ベルトを上記シート束から離間させるまでの上記吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1のシート搬送装置において、
上記所定の条件は、シートの種類および/または環境条件であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項2のシート搬送装置において、
上記変更手段は、第1の剛性を有するシートよりも高い剛性シートを搬送するとき、上記第1の剛性を備えるシートを搬送するときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項2または3のシート搬送装置において、
上記変更手段は、湿度検出手段によって検出される湿度が、第1の湿度よりも高い湿度のとき、上記第1の湿度ときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、
上記変更手段は、駆動手段と、駆動手段から駆動力が伝達される駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合い、上記第2張架ローラの軸に取り付けられたラックとを備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項5のシート搬送装置において、
上記給紙手段の揺動の支点と同軸上に上記駆動ギヤに駆動力を伝達するための駆動伝達部材を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項6のシート搬送装置において、
上記駆動伝達部材から上記駆動ギヤへの駆動伝達をタイミングベルト介して行うことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上位シートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、
上記シート搬送手段として、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
積載されたシート束の上面に対向配置された吸着ベルトに対向するシートを吸着させて搬送する給紙手段と、
上記給紙手段を揺動させて上記吸着ベルトを上記シート束に対して接離駆動させる接離駆動手段とを備えたシート搬送装置において、
上記給紙手段は、上記吸着ベルト、上記吸着ベルトを張架する第1張架ローラ、および該第1張架ローラよりもシート搬送方向下流側に位置し、上記吸着ベルトを張架する第2張架ローラを備える吸着ベルトユニットと、該吸着ベルトユニットを上記第1の張架ローラを支点にして揺動可能に支持する側板とを備え、
上記給紙手段の揺動の支点が、第2張架ローラよりもシート搬送方向上流側に設けられており、
上記吸着ベルトを上記シート束の最上位シートと当接させた状態から上記接離駆動手段によって上記吸着ベルトを上記シート束から離間させるまでの上記吸着ベルトユニットの上記側板に対する揺動範囲を、所定の条件に応じて変更する変更手段を備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
請求項1のシート搬送装置において、
上記所定の条件は、シートの種類および/または環境条件であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項2のシート搬送装置において、
上記変更手段は、第1の剛性を有するシートよりも高い剛性シートを搬送するとき、上記第1の剛性を備えるシートを搬送するときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項2または3のシート搬送装置において、
上記変更手段は、湿度検出手段によって検出される湿度が、第1の湿度よりも高い湿度のとき、上記第1の湿度ときの上記吸着ベルトユニットの揺動範囲よりも小さくなるよう、上記吸着ベルトユニットの揺動範囲を変更することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかのシート搬送装置において、
上記変更手段は、駆動手段と、駆動手段から駆動力が伝達される駆動ギヤと、該駆動ギヤと噛み合い、上記第2張架ローラの軸に取り付けられたラックとを備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項5のシート搬送装置において、
上記給紙手段の揺動の支点と同軸上に上記駆動ギヤに駆動力を伝達するための駆動伝達部材を設けたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項6のシート搬送装置において、
上記駆動伝達部材から上記駆動ギヤへの駆動伝達をタイミングベルト介して行うことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
シートに画像を形成する画像形成手段と、積載されたシート束から最上位シートを分離し、上記画像形成手段へシートを搬送するシート搬送手段とを備えた画像形成装置において、
上記シート搬送手段として、請求項1乃至7いずれかのシート搬送装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−56711(P2012−56711A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201610(P2010−201610)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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