説明

シート搬送装置及び原稿情報読取装置

【課題】トレイ21の中板をシートを載置するために下降させる動作を行っても、排出したシートが搬送路13内に引き込まれることを防止できる構造を実現する。
【解決手段】トレイ21に載置されたシートを搬送する搬送ローラ22を、モータM1により駆動する。排紙ローラ対43は、モータM2により駆動する。また、中板の昇降はモータM1により行う。これにより、中板を下降させるべくモータM1を逆方向に駆動させても、排紙ローラ対43が逆方向に回転することはない。このため、中板の下降動作により排出したシートが搬送路13内に引き込まれることを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを搬送するシート搬送装置、及び、このようなシート搬送装置を備えたスキャナなどの原稿情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナなどの原稿情報読取装置は、情報読取部にシートを搬送するシート搬送装置を備えている。情報読取部は、例えば、イメージセンサなどのシート上の画像情報或いは磁気情報を読み取るセンサを備えた部分である。また、シート搬送装置は、シートを載置するトレイと、トレイに対向して配置された搬送ローラとを有し、トレイ上のシートを搬送ローラにより搬送する。
【0003】
シートをこのように搬送するためには、トレイの一部(中板、シート載置台)と搬送ローラとによりシートを挟持する必要がある。一方、トレイ上にシートを載置する場合には、中板を搬送ローラから離す必要がある。このため、中板(リフタ)を昇降させる構造が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載された構造の場合、1個のモータで全ての搬送、排紙ローラを駆動すると共に、リフタの昇降も行っていると考えられる。即ち、全てのローラでシートを搬送する正方向にモータを駆動すると、リフタが搬送ローラによるシートの搬送が可能な位置まで上昇する。一方、モータを逆方向に駆動すると、全てのローラが逆方向に駆動すると共に、リフタがシートを載置可能な位置まで下降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−58880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された構造の場合、トレイ上にシートを載置するためにリフタを下降させる動作に伴い、排紙ローラも逆回転する。通常、機内の搬送路から排紙ローラによりそのジョブの全てのシートを排出した後、トレイ上に次のシートを載置できるようにするため、リフタを下降させる。この際、シートが確実に排紙されている必要がある。しかし、排紙トレイ上に排出されたシートが載置されたままとなっている場合には、排紙トレイ上のシートの端部が排紙ローラに接触しているなどすることが想定される。そして、リフタの下降動作に伴う排紙ローラの逆回転により、シートが搬送路内に引き込まれてしまう可能性がある。シートが搬送路内に引き込まれると、そのシートを取り出しにくくなるばかりでなく、シートの損傷の他、その後に読み取るシートがジャムしてしまう可能性もある。
【0007】
なお、このような課題は、トレイが固定で、トレイと対向配置される搬送ローラを昇降させる構造でも同様に存在する。即ち、シートを搬送するために搬送ローラを下降させて、搬送ローラとトレイとの間でシートを挟持し、トレイ上にシートを載置可能とするために搬送ローラを上昇させる構造もある。そして、このような構造で、1個のモータで全ての搬送、排紙ローラを駆動すると共に、搬送ローラの昇降も行うと、搬送ローラを上昇させるべくモータを逆回転した場合に、排出したシートが排紙ローラの逆回転により搬送路内に引き込まれる可能性がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、シート載置台にシートを載置するための動作を行っても、排出したシートが搬送路内に引き込まれることを防止できる構造を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シートを載置するシート載置台と、前記シート載置台に載置されたシートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、シートを前記搬送路から排出する排出手段と、前記搬送手段を駆動する第1の駆動手段と、前記排出手段を駆動する第2の駆動手段と、前記搬送手段と前記シート載置台とのうちの少なくとも何れかを、前記搬送手段と前記シート載置台とが近づいて前記搬送手段によるシートの搬送が可能な第1の位置と、前記搬送手段と前記シート載置台とが離れて前記シート載置台にシートを載置可能な第2の位置との間で移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段は、前記搬送路に沿ってシートを搬送させる正方向に前記第1の駆動手段が前記搬送手段を駆動した場合に、前記シート載置台を前記第1の位置に移動させ、前記第1の駆動手段が正方向とは反対の逆方向に前記搬送手段を駆動した場合に、前記シート載置台を前記第2の位置に移動させる、ことを特徴とするシート搬送装置にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、シート載置台にシートを載置するための動作を行っても、排出したシートが搬送路内に引き込まれることを防ぐことができる。本発明では、例えば、搬送手段と排出手段とは、それぞれ別の駆動手段で駆動されており、第2の位置への移動を搬送手段を駆動する第1の駆動手段で行っているため、第2の位置への移動により、排出手段が逆方向に駆動することはない。したがって、この第2の位置への移動により、排出したシートが搬送路内に引き込まれることを有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るシート搬送装置を備えたスキャナの概略構成断面図。
【図2】図1の一部を拡大して示す概略構成断面図。
【図3】シート載置台にシートを載置した状態を示す、図2と同様の図。
【図4】中板を昇降させる構造を抜き出して、(A)は上昇状態を、(B)は下降状態をそれぞれ示す斜視図。
【図5】本実施形態のスキャナの動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
【0013】
[原稿情報読取装置]
まず、本発明の対象となる原稿情報読取装置の全体構成について簡単に説明する。原稿情報読取装置(以下、スキャナ)1は、図1に示すように、給紙部2と、シート上の情報を読み取る情報読取部3と、シートを排出する排出部4と、を備える。そして、給紙部2から搬送路13内に給紙されたシート上の画像情報を、情報読取部3で読み取り、情報が読み取られたシートは、排出部4から排出される。本実施形態では、給紙部2及び排出部4、更には搬送路13内でシートを搬送する構造を含めて、シート搬送装置を構成している。
【0014】
[給紙部]
給紙部2は、スキャナ1の装置本体11の上部に配置され、搬送手段である搬送ローラ22と、搬送ローラ22と対向して配置され、シートを載置するトレイ21と、分離部材である分離ローラ23と、を有する。
【0015】
トレイ21は、図2及び図3に示すように、装置本体11の本体部11aに固定された固定板21aと、この装置本体11に対して回動自在に支持されたシート載置台である中板21bとから構成される。固定板21aは、装置本体11上部に設けた給紙口12(図1)から斜め上方に延出するように設けられている。このような固定板21aと中板21bとから構成されるトレイ21は、後述する中板21bの昇降状態に拘らず、載置されたシートの搬送方向下流側(図1ないし図3の斜め下方)ほど重力方向下方に向かう方向に傾斜するように設置されている。
【0016】
中板21bは、鋼板や合成樹脂により構成された板状の部材で、固定板21aの搬送ローラ22によるシート搬送方向下流に配置されている。そして、幅方向両端部に設けた突起部21c(図2及び図3)を、装置本体11に設けた支持孔に嵌合することにより、装置本体11に回転自在に支持されている。これら突起部21cと支持孔とで回転支持部を構成する。
【0017】
このような中板21bは、後述する移動手段である中板移動装置50によりこの回転支持部を中心として装置本体11に対して回動(移動)する。具体的には、中板21bは、搬送ローラ22に近づいて搬送ローラ22によるシートの搬送が可能な第1の位置(上昇位置)と、搬送ローラ22から離れてシートを載置可能な第2の位置(下降位置)との間を移動可能である。
【0018】
図2に示す第1の位置では、トレイ21に載置されたシートを搬送ローラ22に押し付ける。これにより、シートを中板21bと搬送ローラ22とにより挟持して、搬送ローラ22によるシート搬送が可能となる。一方、図3に示す第2の位置では、中板21bと搬送ローラ22との間に隙間を形成し、トレイ21上にシート(或いはシート束)Sを載置可能となる。
【0019】
このように中板21bを第2の位置に移動させて、搬送ローラ22との間の隙間を設ける理由は、次の通りである。即ち、中板21bが搬送ローラ22に向けて付勢されたままの状態であると、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置する際に、シートの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り込みにくい。したがって、本実施形態のように、中板21bを下降(待機)させて、中板21bと搬送ローラ22との間に隙間を開けるようにしている。これにより、シート(或いはシート束)Sをトレイ21に載置した際に、シートの先端が中板21bと搬送ローラ22との間に入り易くして、搬送ローラ22によるシートの搬送を円滑に行える。
【0020】
また、本実施形態の場合、中板21bが第2の位置に移動した場合に、中板21bに載置されたシートSの搬送方向下流端が当接して、中板21bに載置されたシートが搬送ローラ22側(搬送手段側)に移動することを防止する段差21dを有する。この段差21dは、図2及び図3に示すように、装置本体11と一体に形成又は装置本体11に固定されたクランク状の固定部材21eの一部で、分離ローラ23の近傍に位置している。具体的には、段差21dは、搬送ローラ22と分離ローラ23とのニップ部のシート搬送方向上流に、中板21bが第2の位置に存在するときの上面とほぼ直交するように設置されている。また、中板21bの上方からこのニップ部を見た場合に、中板21bが第1の位置に存在する場合には段差21dが中板21bに隠れ、中板21bが第2の位置に移動することにより段差21dが露出するようにしている。
【0021】
これにより、中板21bが第1の位置に存在する場合には、中板21bに載置されたシートが段差21dに接触することなく、搬送ローラ22側に移動する。一方、中板21bが第2の位置に存在する場合には、中板21bのシート搬送方向下流に段差21dが露出して、中板21bに載置されたシートの搬送方向下流端が段差21dに当接する。そして、シート束の整合を行うと共に、前述したように傾斜して設置されるトレイ21に載置されたシートの位置決めが図られる。
【0022】
搬送ローラ22は、装置本体11のカバー部11bに設けられ、第1の駆動手段であるモータM1により回転駆動される。そして、中板21b上(シート載置台上)のシートと当接してこのシートを搬送路13に搬送する。本実施形態の場合、搬送ローラ22は、トレイ21の幅方向中央部に対向する位置に配置している。
【0023】
また、トレイ21の搬送ローラ22によるシート搬送方向下流で、搬送ローラ22と対向する位置には、分離ローラ23を設けている。分離ローラ23は、搬送ローラ22との間でシートを挟持するように配置されている。これら搬送ローラ22と分離ローラ23とで分離給送手段を構成し、中板21b上からシートを1枚ずつ分離して搬送路13に送り込む。
【0024】
本実施形態の場合、分離ローラ23は、中板21bの先端部近傍に非接触で配置されると共に前記搬送ローラ22に対向して配置される。また、分離ローラ23は、搬送ローラ22に遠近動する方向に移動自在に支持され、不図示のばねにより搬送ローラ22に向かう方向に付勢されている。また、第1の駆動手段であるモータM1により、搬送ローラ22の回転方向と逆方向に回転するようにしている。即ち、モータM1と搬送ローラ22との間、及び、モータM1と分離ローラ23との間に、それぞれ別の動力伝達機構を設けている。そして、モータM1が正方向に駆動した場合に、搬送ローラ22を、シートを搬送路13内に搬送する方向に駆動し、分離ローラ23を逆方向に駆動する。
【0025】
このように、分離ローラ23を、搬送ローラ22によるシート搬送時に搬送ローラ22の回転方向と逆方向に回転することにより、シート搬送方向と逆方向に作用するシート抵抗を生じさせて、搬送するシートを他のシートから分離し易くしている。なお、分離ローラ23にはトルクリミッタが設けられており、所定以上のトルクがかかった場合に、モータからの動力伝達を遮断できるようにしている。
【0026】
また、搬送ローラ22と分離ローラ23とのシート搬送方向に関する位置関係は、搬送ローラ22が、分離ローラ23よりも、搬送ローラ22によるシート搬送方向上流にずれた位置としている。これにより、トレイ21上のシートをピックアップし易くしている。
また、本実施形態の場合、装置本体11は、装置本体11内でシートが搬送される搬送路13を境に、本体部11aとカバー部11bとに分離可能としている。このうちの本体部11aは、上述のトレイ21及び分離ローラ23が設けられ、カバー部11bには搬送ローラ22が支持されている。カバー部11bは、本体部11aに対し本体部11aの下端寄り部分を中心として回動自在としている。そして、カバー部11bを回動させれば、搬送路13が露出(開放)し、この搬送路13内でジャムしたシートを取り除くことができる。
【0027】
また、カバー部11bを閉じた状態では、搬送ローラ22が分離ローラ23に当接し、分離ローラ23がばねの付勢方向と反対方向に沈む(搬送ローラ22から離れる方向に移動する)。この結果、搬送ローラ22と分離ローラ23とが弾性的に当接する。
【0028】
[情報読取部]
情報読取部3は、図1に示すように、装置本体11のシート搬送方向中間部に配置され、ローラ対31と、レジストセンサ32と、イメージセンサ33a、33bと、を有する。ローラ対31は、駆動ローラ31aと従動ローラ31bとから構成され、このうちの駆動ローラ31aは本体部11aに、従動ローラ31bはカバー部11bにそれぞれ設けられている。駆動ローラ31aは第2の駆動手段であるモータM2により回転駆動し、従動ローラ31bは、駆動ローラ31aに従動して回転する。このようなローラ対31は、給紙部2から搬送されたシートを搬送ローラ22による搬送方向と同方向に搬送する。
【0029】
レジストセンサ32は、ローラ対31により搬送されるシートの先端と後端とを検知する。このようなレジストセンサ32としては、例えば、発光部と受光部とを備えたフォトセンサ、レバーの動作を検知するものなどが挙げられる。フォトセンサはシートが光を遮ることにより、レバーによる検知はシートがレバーを倒すことにより、シートの通過を検知する。本実施形態の場合には、フォトセンサとしている。
【0030】
イメージセンサ33a、33bは、それぞれCIS(密着型イメージセンサ)であり、シートの表面と裏面との情報を読み取る。即ち、片方のイメージセンサ33aは本体部11a側に設けられ、他方のイメージセンサ33bはカバー部11b側に設けられている。そして、それぞれのイメージセンサ33a、33bの情報を読み取る面を搬送路13側とし、搬送路13を通るシートの両面の情報をイメージセンサ33a、33bにより読み取るようにしている。本実施形態で読み取る情報は、シートの表面又は裏面に形成された画像の情報である。
【0031】
[排出部]
排出部4は、装置本体11のシート搬送方向下流に配置され、搬送路13と連続するU字搬送路41と、搬送ローラ対42と、排紙ローラ対43と、排紙トレイ44と、シート抑え部材45と、を有する。このうちのU字搬送路41は、U字状に形成されたシートが搬送される搬送路である。このようなU字搬送路41は、カバー部11bの下面に形成されたU字状の曲面部41aと、ヒンジ46により装置本体11に接続されたU字状の湾曲部材41bとから構成される。この湾曲部材41bは、ヒンジ46を中心として回動可能である。このため、U字搬送路41内にシートがジャムした場合には、湾曲部材41bを回動させてU字搬送路41を露出させることにより、ジャム処理が可能である。
【0032】
搬送ローラ対42は、装置本体11の搬送路13からU字搬送路41に入る入口で、ヒンジ46よりもシート搬送方向上流に配置されている。このような搬送ローラ対42も、上述のローラ対31と同様に、駆動ローラと従動ローラとから構成され、一方のローラを本体部11aに、他方のローラをカバー部11bにそれぞれ設けている。また、搬送ローラ対42の駆動ローラは、モータM2により駆動される。そして、情報読取部3から搬送されたシートをU字搬送路41に搬送する。
【0033】
排出手段である排紙ローラ対43は、U字搬送路41の出口に設けられ、シートをU字搬送路41から排出する。このような排紙ローラ対43も、駆動ローラと従動ローラとから構成され、一方のローラをカバー部11bに、他方のローラを湾曲部材41bにそれぞれ設けている。また、排紙ローラ対43の駆動ローラは、モータM2により駆動される。
【0034】
排紙トレイ44は、カバー部11bの本体部11aと反対側の面に形成され、排紙ローラ対43から排出されたシートを積載する。この排紙トレイ44は、水平方向に傾斜した傾斜面44aと、この傾斜面44aの下端縁から斜め上方に折り曲げるように規制された支え面44bとから構成される。この支え面44bの先端は排紙ローラ対43の出口近傍に存在する。排紙ローラ対43から排出されるシートは、傾斜面44aに向かって飛び出て、下端縁が支え面44bに支えられつつ、傾斜面44aに重なるように載置される。
【0035】
シート抑え部材45は、排紙トレイ44に積載されたシートを抑え付けて、シートが、外乱などの影響により排紙トレイ44から落下しないようにするものである。このようなシート抑え部材45は、湾曲部材41bの先端からほぼ接線方向に延長するように設けられ、湾曲部材41bを図1のように閉じた状態で、排紙トレイ44の傾斜面44aと対向する。この結果、排紙トレイ44に排出されたシートは、傾斜面44aとシート抑え部材45との間に挟まれ、不用意に落下することを防止される。
【0036】
なお、本実施形態の場合、前述したように、湾曲部材41bを回動させ、U字搬送路41を露出させた状態でも、シートの排出が可能である。この場合、搬送ローラ対42が排紙ローラ対(排出手段)の役目を行い、シート抑え部材45が排紙トレイの役目を有する。
【0037】
本実施形態では、第1の駆動手段であるモータM1と排出手段である搬送ローラ対42或いは排紙ローラ対43との間は、少なくともモータM1の逆方向の駆動が伝達されないように構成されている。即ち、搬送ローラ対42及び排紙ローラ対43は、モータM2により駆動され、モータM1とは接続されていない。このため、搬送ローラ対42及び排紙ローラ対43は、モータM1の正逆いずれの方向の駆動も伝達されない。
【0038】
[中板移動装置]
次に、シート載置台である中板21bを第1の位置と第2の位置との間で移動させる移動手段である中板移動装置50について、図2及び図3を参照しつつ、図4を用いて説明する。中板移動装置50は、付勢手段であるばね51と、駆動側部材である駆動ギヤ52と、移動側部材である回動軸53と、中板21bに固定された係合部材54と、動力切替手段であるワンウェイクラッチ55とを有する。
【0039】
ばね51は、図2及び図3に示すように、中板21bと固定部材21eの支持板部21fとの間に配置され、中板21bを第1の位置(上昇位置)に移動する方向に付勢する。駆動ギヤ52は、第1の駆動手段であるモータM1に、ギヤ列52aを介して接続されている。回動軸53は、中板21bの下方(支持板部21f側)に、シート搬送方向にほぼ直交する幅方向に配置され、係合部材54を介して中板21bを移動させる。
【0040】
このために回動軸53の先端部には、外周面から突出するように係合突部53aを形成している。係合突部53aは、中板21bに固定の係合部材54から幅方向に突出した被係合突部54aと係合する。そして、回動軸53が図4(B)の矢印ロ方向に回動した際に、係合突部53aと被係合突部54aとの係合により、中板21bが第2の位置に移動するようにしている。
【0041】
ワンウェイクラッチ55は、駆動ギヤ52と回動軸53との間に配置され、動力の伝達及び切断の切り替えを行う。即ち、駆動ギヤ52が図4(A)の矢印イ方向に回動すると、ワンウェイクラッチ55が駆動ギヤ52と回動軸53との間で動力を切断する。一方、駆動ギヤ52が図4(B)の矢印ロ方向に回動すると、ワンウェイクラッチ55が駆動ギヤ52から回動軸53に動力を伝達する。
【0042】
このように構成される中板移動装置50は、モータM1が正方向に駆動すると、図4(A)に示すように、駆動ギヤ52がギヤ列52aを介して矢印イ方向に回動する。この場合には、上述したようにワンウェイクラッチ55が駆動ギヤ52と回動軸53との間で動力を切断する。この結果、中板21bがばね51の付勢力により第1の位置に向けて移動する。具体的には、中板21bは、回転支持部を中心として搬送ローラ22に近づく方向に回動する。
【0043】
これに対して、モータM1が逆方向に駆動すると、図4(B)に示すように、駆動ギヤ52がギヤ列52aを介して矢印ロ方向に回動する。この場合には、上述したようにワンウェイクラッチ55が駆動ギヤ52と回動軸53との間で動力を伝達する。すると、回動軸53も駆動ギヤ52と同方向に回動し、回動軸53の係合突部53aも同方向に回動する。係合突部53aには係合部材54の被係合突部54aが係合しており、係合部材54は中板21bに固定されている。したがって、回動軸53が矢印ロ方向に回動することにより、中板21bがばね52の付勢力に抗して第2の位置に向けて移動する。
【0044】
[スキャナの動作]
このような本実施形態のスキャナ1の動作について、図1ないし図4に加えて図5を用いて説明する。まず、スキャナ1のスイッチを入れる(Power ONにする)と、モータM1が正方向に所定量回転(正転)した後、逆方向に所定量回転(逆転)する。これにより、中板21bを第2の位置に移動させる。
【0045】
次に、情報を読み取るシート(或いはシート束)をトレイ21に載置する。シートをトレイ21に載置する際には、上述のように、中板21bが第2の位置に移動しており、中板21bと搬送ローラ22との間にシートの先端(搬送方向下流端)が進入する。また、シートの先端が段差21dに当接する。この状態で、例えば、ユーザが装置に設けられた読取開始ボタンを押すなどして、動作を開始させる(Scan Startする)と、モータM1及びモータM2がそれぞれ正方向に駆動を始める。この際、モータM1の正方向の駆動により、中板21bがばね51に付勢されて第1の位置に移動し、中板21b上のシートの先端が中板21bと搬送ローラ22とにより挟持される。
【0046】
この状態で更にモータM1の正方向の駆動を継続することにより、搬送ローラ22が正方向に回転駆動する共に、分離ローラ23が逆方向に回転する。これにより、シート束の場合には、シートが1枚ずつ分離されて搬送路13へ搬送される。一方、シートが1枚の場合には、分離ローラ23に設けられたトルクリミッタが作動し、分離ローラ23への動力伝達が切られ、この分離ローラ23は搬送ローラ22の回転に従動して回転する。この結果、1枚のシートが搬送路13へ搬送される。
【0047】
搬送路13へ搬送されたシートは、モータM2により駆動されるローラ対31により挟持されて、更に搬送される。そして、シートの先端がレジストセンサ32により検知され、シートの両面(或いは何れかの面)の情報がイメージセンサ33a、33bにより読み取られる。即ち、レジストセンサ32がシートの先端を検知してから所定時間後にイメージセンサ33a、33bによる読み取りを開始する。そして、レジストセンサ32がシートの後端(搬送方向上流端)を検知してから所定時間経過後に、イメージセンサ33a、33bによる読み取りを終了する。
【0048】
この際、レジストセンサ32がシートの先端を検知すると、モータM1の駆動を停止し、レジストセンサ32がシートの後端を検知すると、モータM1の駆動を再開する。そして、搬送ローラ22により次のシートを搬送路13に搬送し、同様に読取を行う。なお、モータM2は、スキャンの開始から終了まで駆動し続ける。また、モータM1は、スキャンの開始から終了まで逆方向に駆動することはない。
【0049】
イメージセンサ33a、33bに読み取られた情報は、装置に設けられた記憶手段(メモリ)に記憶されたり、不図示の外部端末(パーソナルコンピュータなど)に送られたりする。イメージセンサ33a、33bを通過したシートは、モータM2により駆動される搬送ローラ対42により挟持され、U字搬送路41に搬送されるか、排紙トレイとして機能するシート抑え部材45上に排出される。U字搬送路41に搬送されたシートは、モータM2に駆動される排紙ローラ対43により挟持され、排紙トレイ44に排出される。
【0050】
以上の動作を繰り返し、トレイ21の最後のシートが排紙トレイ44に排出される(スキャンが終了、Scan Endする)と、モータM1とモータM2の駆動を停止する。その後、所定時間モータM1を逆方向に駆動して、中板21bを第2の位置に移動させる。そして、中板21bと搬送ローラ22との間に隙間を開けて、次のシート或いはシート束を中板21b上に載置可能としている。この時、モータM2は停止したままとし、逆方向に駆動しないようにする。これにより、モータM2により駆動される搬送ローラ対42及び排紙ローラ対43が逆方向に回転することはない。
【0051】
本実施形態の場合、中板21bにシートを載置するための動作を行っても、排出したシートが搬送路内に引き込まれることなどを防ぐことができる。即ち、搬送ローラ22と、搬送ローラ対42及び排紙ローラ対43とは、それぞれ別の駆動手段で駆動されている。そして、中板21bの移動は、搬送ローラ22を駆動するモータM1で行っている。このため、スキャン終了後などにモータM1を逆方向に駆動して中板21bを第2の位置に移動させても、シートを排出する搬送ローラ対42或いは排紙ローラ対43が逆方向に駆動することはない。したがって、中板21bを第2の位置に移動させても、排出したシートが搬送路13内に引き込まれることなどの不都合を有効に防止できる。そして、シートが取り出しにくくなったり、シートがジャムしてしまうことを防止できる。
【0052】
なお、中板21bの第2の位置への移動(下降)は、トレイ21上にシートが載置された状態で行っても良い。この場合、搬送ローラ22に当接しているシートは、中板21bの下降に伴い搬送ローラ22が逆回転するため、トレイ21上に戻される。但し、この場合、分離ローラ23は、モータM1の逆方向の駆動が伝達されないようにすることが好ましい。例えば、トレイ21上にシートが100枚載置した状態で、そのうちの50枚のシートの読み込みのジョブを実行する。このジョブの終了後には、通常、51枚目のシートの先端が搬送ローラ22に当接している。したがって、ジョブ終了後にモータM1を逆方向に駆動して中板21bを下降させると共に、搬送ローラ22を逆方向に回転させれば、このシートがトレイ21上に戻され、残りのシートをトレイ21上に整列させることができる。
【0053】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、トレイ側の中板が移動する構造について説明したが、トレイが固定で、トレイと対向配置される搬送ローラを昇降させる構造にも、本発明を適用可能である。即ち、本発明は、シートを搬送するために搬送ローラを下降させて、搬送ローラとトレイとの間でシートを挟持し、トレイ上にシートを載置可能とするために搬送ローラを上昇させる構造にも適用できる。要は、搬送ローラと中板とのうちの少なくとも何れかを移動させる構造に本発明を適用できる。
【0054】
搬送ローラを移動させる構造についてより具体的に説明する。この構造の場合、搬送ローラの駆動と搬送ローラの昇降とを同一のモータで行い、排紙ローラの駆動は別のモータで行う。そして、搬送ローラを上昇させる際に搬送ローラを駆動するモータを逆方向に駆動し、別のモータは逆方向に駆動しないようにする。なお、この構造で、搬送ローラを移動させる移動手段は、搬送ローラが自重によりトレイ上のシートと接触する(第1の位置に移動する)ようにしても良い。この場合、第1の位置に移動する方向に付勢する付勢手段を省略できる。
【0055】
また、上述の実施形態では、スキャナ1のスイッチを入れると、モータM1が正方向に所定量回転(正転)した後、逆方向に所定量回転(逆転)するようにしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、シート(或いはシート束)をトレイに載置した後、シートが搬送ローラ22に巻き込まれない程度にモータM1の駆動量を抑えながら、モータM1の正転・逆転の動作を小刻みに複数回行っても良い。そして、中板21bの上下動を繰り返し行う。中板21bの上下動作(微振動)によってシート束が整合されて、シート束の捌き効果を得ることができる。
【0056】
即ち、中板移動装置50は、シートの束が中板21bに載置され且つ搬送路13に向かって搬送される前の搬送待機状態において、中板21bを第1の位置(上昇位置)と第2の位置(下降位置)との間で繰り返し移動させる。そして、中板21b上でシートの束を整合させる整合動作を実行する。或いは、中板移動装置50は、搬送待機状態において、中板21bを下降位置と、上昇位置及び下降位置の間である第3の位置(中間位置)との間で繰り返し移動させる。そして、中板21b上でシートの束を整合させる整合動作を実行する。モータM1は、中板移動装置50による整合動作を実行後に、中板21b上からシートを搬送路13に向けて搬送するように搬送ローラ22を駆動する。
【0057】
このような捌き動作(整合動作)は、シート束を1枚ずつ分離して装置内に給送する装置、特に、シート束の先端部を下に向けた状態で装置上部に縦にセットしてから鉛直方向下方側に向けて搬送する搬送装置において有効である。例えば、上記の実施形態のように、給送口にシート束の先端を受ける段差を設けて、その段差の範囲内でトレイを上下動させることにより、シート束の自重と相俟ってシート束の先端が段差の端面に摺接するためシート束の先端を揃える効果を得ることができる。
【0058】
なお、このような整合動作は、スキャナのスタートボタン等の操作ボタンが押された際で且つ給送動作の前処理として行うようにすることが好ましい。あるいは、スキャナに接続されたPC等で実行されるスキャナ制御プログラムからのユーザ操作に基づいて、スキャナ側で整合動作をさせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 原稿情報読取装置(スキャナ)
21 トレイ
21b 中板(シート載置台)
21d 段差
22 搬送ローラ(搬送手段)
3 情報読取部
43 排紙ローラ対(排出手段)
50 中板移動装置(移動手段)
51 ばね(付勢手段)
52 駆動ギヤ(駆動側部材)
53 回動軸(移動側部材)
55 ワンウェイクラッチ(動力切替手段)
M1 モータ(第1の駆動手段)
M2 モータ(第2の駆動手段)
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを載置するシート載置台と、
前記シート載置台に載置されたシートを搬送路に沿って搬送する搬送手段と、
シートを前記搬送路から排出する排出手段と、
前記搬送手段を駆動する第1の駆動手段と、
前記排出手段を駆動する第2の駆動手段と、
前記搬送手段と前記シート載置台とのうちの少なくとも何れかを、前記搬送手段と前記シート載置台とが近づいて前記搬送手段によるシートの搬送が可能な第1の位置と、前記搬送手段と前記シート載置台とが離れて前記シート載置台にシートを載置可能な第2の位置との間で移動させる移動手段と、を備え、
前記移動手段は、前記搬送路に沿ってシートを搬送させる正方向に前記第1の駆動手段が前記搬送手段を駆動した場合に、前記シート載置台を前記第1の位置に移動させ、前記第1の駆動手段が正方向とは反対の逆方向に前記搬送手段を駆動した場合に、前記シート載置台を前記第2の位置に移動させる、
ことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、前記シート載置台上からシートを1枚ずつ分離して前記搬送路に送り込む分離給送手段を含み、
前記分離給送手段は、前記第1の位置で前記シート載置台上のシートに摺接する搬送ローラと、前記シート載置台の先端部近傍に非接触で配置されると共に前記搬送ローラに対向して配置される分離ローラとを有することを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記シート載置台は、載置されたシートの搬送方向下流側ほど重力方向下方に向かう方向に傾斜するように設置され、
前記移動手段は、前記シートの束が前記シート載置台に載置され且つ前記搬送路に向かって搬送される前の搬送待機状態において、前記シート載置台を前記第1の位置と前記第2の位置との間で繰り返し移動させ、前記シート載置台上で前記シートの束を整合させる整合動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シート載置台は、載置されたシートの搬送方向下流側ほど重力方向下方に向かう方向に傾斜するように設置され、
前記移動手段は、前記シートの束が前記シート載置台に載置され且つ前記搬送路に向かって搬送される前の搬送待機状態において、前記シート載置台を前記第2の位置と前記第1の位置及び前記第2の位置の間である第3の位置との間で繰り返し移動させ、前記シート載置台上で前記シートの束を整合させる整合動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第1の駆動手段は、前記移動手段による前記整合動作を実行後に、前記シート載置台上からシートを前記搬送路に向けて搬送するように前記搬送手段を駆動することを特徴とする請求項3又は4に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記シート載置台を前記第1の位置に移動する方向に付勢する付勢手段と、前記第1の駆動手段に接続される駆動側部材と、前記シート載置台を移動させる移動側部材と、前記駆動側部材と前記移動側部材との間に配置され、動力の伝達及び切断の切り替えを行う動力切替手段と、を有し、
前記第1の駆動手段が正方向に駆動している場合には、前記動力切替手段が前記駆動側部材と前記移動側部材との間で動力を切断して、前記シート載置台が前記付勢手段の付勢力により前記第1の位置に向けて移動し、
前記第1の駆動手段が逆方向に駆動している場合には、前記動力切替手段が前記駆動側部材と前記移動側部材との間で動力を伝達して、前記シート載置台が前記付勢手段の付勢力に抗して前記第2の位置に向けて移動する、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記シート載置台は、載置されたシートの搬送方向下流側ほど重力方向下方に向かう方向に傾斜するように設置され、
前記シート載置台が前記第2の位置に移動した場合に、前記シート載置台に載置されたシートの搬送方向下流端が当接して、前記シート載置台に載置されたシートが前記搬送手段側に移動することを防止する段差を有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のうちの何れか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シートを搬送するシート搬送装置と、
前記シート搬送装置により搬送されるシートの情報を読み取る情報読取部と、を備え、
前記シート搬送装置が、請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載のシート搬送装置である、
ことを特徴とする原稿情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218891(P2012−218891A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86722(P2011−86722)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】