説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】曲げ搬送部におけるシート材の後端の浮き上がりや、シート材の前端が曲げ搬送部で当接することによる搬送速度の低下を防止できるシート搬送装置を提供する。
【解決手段】ストレート搬送部S1とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部M1を有する搬送経路と、表面にシート材を担持して搬送する搬送ベルト18と、搬送ベルト18の裏面側からエアを吸引してシート材を搬送ベルト18に吸着させるエア吸着手段21,22とを備え、搬送ベルト18によってシート材をストレート搬送部S1から曲げ搬送部M1へ搬送するように構成されたシート搬送装置である。エア吸着手段22による曲げ搬送部M1のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、それよりもシート搬送方向上流側での吸引力よりも大きくなるように設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を搬送するシート搬送装置と、それを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、図13に示すように、インクジェット印刷部100の用紙搬送方向下流側において、用紙を下方へ案内するように構成されたものがある(特許文献1参照)。図13に示す構成では、インクジェット印刷部100で画像が形成された用紙は、搬送ベルト200によって下流へと搬送され、切換爪400や図示しないガイド板などによって下方へ曲げられ搬送経路R10へと案内される。
【0003】
また、図14に示すように、インクジェット印刷部500の用紙搬送方向下流側で、用紙を上方へ案内するように構成されたものがある(特許文献2参照)。この場合、インクジェット印刷部500で画像が形成された用紙は、搬送ベルト600によって下流へと搬送され、図示しないガイド板などによって上方へ曲げられ搬送経路R20へと案内される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、インクジェット印刷装置を含む画像形成装置の小型化に伴い、用紙搬送経路における曲げ搬送部の屈曲度が大きくなってきている。特に、このように構成された画像形成装置において、上記図13に示すように用紙を下方に曲げて搬送すると、用紙の剛性によっては、図15に示すように、用紙Pの後端e2が搬送ベルト200から浮き上がり、インクジェット印刷部100に接触することがある。このように、用紙の後端がインクジェット印刷部に接触すると、それによって用紙の後端がインクで汚れたり、インクジェット印刷部からの次のインクの吐出が正常に行われなくなったりする不具合が生じる。また、上記図14に示すように用紙を上方へ曲げて搬送した場合も、図16に示すように、用紙Pの後端e2側が搬送ベルト600から浮き上がることがあり、用紙Pの浮き上がった部分がインクジェット印刷部500に接触することによる用紙Pの汚れやインクの吐出の不具合が生じる虞がある。
【0005】
また、図17に示すように、用紙Pの前端e1が曲げ搬送部に設けた切換爪400などに当接したときに搬送抵抗が生じると、これにより用紙Pの搬送速度が低下することがある。このとき、用紙Pの後端e2側において画像形成が行われていた場合は、搬送速度の低下によって、用紙Pの後端e2側での画像形成が正確に行われなくなる虞がある。このような問題は、画像形成装置の小型化のためにインクジェット印刷部から曲げ搬送部までの距離を短くした場合や、長い用紙を搬送した場合などに生じやすくなる。なお、図17では、下方に曲がった曲げ搬送部を用紙が通過する場合の例を示しているが、曲げ搬送部が上方に曲がった構成においても同様の問題が生じる。
【0006】
以上のような用紙後端の浮き上がりや用紙の速度低下は、剛性の小さい薄紙等でも発生する虞があるが、剛性の大きい厚紙等は、曲げ搬送部における円滑な搬送がより困難となるため、上記の不具合の発生が顕著となる。
【0007】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、用紙などのシート材が曲げ搬送部を通過することに伴う当該シート材の後端の浮き上がりや、前記シート材の前端が曲げ搬送部に設けたガイド板等に当接することによる搬送速度の低下を防止できるシート搬送装置、及びそのシート搬送装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ストレート搬送部とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部を有する搬送経路と、表面にシート材を担持して搬送する搬送ベルトと、当該搬送ベルトの裏面側からエアを吸引してシート材を前記搬送ベルトに吸着させるエア吸着手段とを備え、前記搬送ベルトによってシート材を前記ストレート搬送部から前記曲げ搬送部へ搬送するように構成したシート搬送装置において、前記エア吸着手段による前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、それよりもシート搬送方向上流側での吸引力よりも大きくなるように設定したものである。
【0009】
曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍(以下、単に「上流側近傍」ということがある。)での吸引力を大きくすることにより、シート材が曲げ搬送部を通過することに伴う後端の浮き上がりを効果的に防止できる。また、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、その箇所での搬送ベルトへのシート材の吸着力が大きくなるので、シート材の前端が曲げ搬送部に設けたガイド板等に当接することにより搬送抵抗が生じても、シート材の滑り(搬送速度の低下)を生じさせないで搬送することが可能となる。一方、曲げ搬送部の上流側近傍のさらに上流側では、上記不具合が生じる虞がないので、このような箇所では吸引力を大きくしないことにより、騒音や消費電力を低減することが可能である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシート搬送装置において、前記曲げ搬送部が、前記ストレート搬送部の延長線に対して前記搬送ベルトの配設側へ曲がるように構成されているものである。
【0011】
曲げ搬送部が、ストレート搬送部の延長線に対して搬送ベルトの配設側へ曲がるように構成されているシート搬送装置に、本発明の構成を適用可能である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1に記載のシート搬送装置において、前記曲げ搬送部が、前記ストレート搬送部の延長線に対して前記搬送ベルトの配設側とは反対側に曲がるように構成されているものである。
【0013】
曲げ搬送部が、ストレート搬送部の延長線に対して搬送ベルトの配設側とは反対側に曲がるように構成されているシート搬送装置に、本発明の構成を適用可能である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、前記エア吸着手段は、前記搬送ベルトの裏面に対向して配設された複数の吸引開口部を有する吸引ダクトを備え、前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での前記吸引ダクトの開口面積率を、それよりもシート搬送方向上流側での前記吸引ダクトの開口面積率よりも大きくしたものである。
【0015】
曲げ搬送部の上流側近傍での吸引ダクトの開口面積率を、それよりも上流側での吸引ダクトの開口面積率よりも大きくすることにより、曲げ搬送部の上流側近傍において、大きな吸引力を発揮することが可能となる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引エリアの幅を、シート材の幅に対応して変更可能に構成したものである。
【0017】
曲げ搬送部の上流側近傍での吸引エリアの幅を、シート材の幅に対応して変更可能に構成したことにより、シート材が通過するエリア外での不要なエア吸引を少なくすることができ、エア漏れによる吸引力の低下を防止することが可能となる。これにより、曲げ搬送部の上流側近傍において、吸引力を効果的に大きくすることができる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、シート材の種類に応じて変更可能に構成したものである。
【0019】
エア吸着手段の曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を、シート材の種類に応じて変更可能に構成することにより、シート材の種類ごとに適した吸引力を発揮することができるようになる。これにより、シート材の後端の浮き上がりやシート材の速度低下を確実に防止することが可能となる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項6に記載のシート搬送装置において、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、シート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は大きくし、シート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は小さくするように構成したものである。
【0021】
上記シート材の後端の浮き上がりや上記シート材の搬送速度低下は、シート材が厚くなる又は剛性が大きくなるほど顕著となる傾向にある。そのため、剛性の大きいあるいは厚いシート材の場合は、吸引力を大きくすることで、シート材に対して搬送ベルト側への強力な吸着力を発揮することができ、上記不具合を効果的に抑制することが可能である。これに対し、剛性の小さいあるいは薄いシート材の場合は、上記不具合を抑制するために大きな吸引力は必要ないので、吸引力を小さくすることにより騒音や消費電力を低減することが可能である。
【0022】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、シート材の後端が、少なくとも前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍の所定範囲を通過する間は、それ以外の時に比べて、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を大きくするように制御したものである。
【0023】
これにより、上記シート材の後端の浮き上がりが生じやすい範囲でシート材が搬送されているときに、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることができ、後端の浮き上がりを確実に防止することができる。一方、後端の浮き上がりが生じない範囲にシート材がある場合は、曲げ搬送部の上流側近傍における吸引力を大きくしないことで、騒音や消費電力の低減が図れる。
【0024】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、シート材の前端が、少なくとも前記曲げ搬送部内の所定範囲を通過している間は、それ以外の時に比べて、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を大きくするように制御したものである。
【0025】
これにより、上記シート材の速度低下が生じやすい範囲でシート材が搬送されているときに、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることができ、搬送速度低下を生じることなくシート材を確実に搬送することができる。一方、搬送速度低下が生じない範囲にシート材がある場合は、曲げ搬送部の上流側近傍における吸引力を大きくしないことで、騒音や消費電力の低減が図れる。
【0026】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えた画像形成装置である。
【0027】
画像形成装置が、請求項1から9のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えているので、これらのシート搬送装置による上記効果が得られる。
【0028】
請求項11の発明は、請求項10に記載の画像形成装置において、前記ストレート搬送部においてシート材に画像を形成するように構成したものである。
【0029】
このような画像形成装置に本発明の構成を適用することにより、シート材に画像形成が行われている状態で、後端が浮き上がったり、搬送速度が低下したりすることによる画像形成不良の発生を防止できる。また、浮き上がったシート材の後端が周辺部材や画像形成部に当接することによる画像の乱れやその後の画像形成不良も防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、シート材が曲げ搬送部を通過することに伴う後端の浮き上がりや、シート材の前端が曲げ搬送部に設けたガイド板等に当接することによるシート材の滑りを効果的に防止できる。これにより、搬送性を向上させることができ、円滑かつ安定したシート材の搬送を行うことが可能となる。一方、曲げ搬送部の上流側近傍のさらに上流側では、上記不具合が生じる虞がないので、このような箇所では吸引力を大きくしないことにより、騒音や消費電力の低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のシート搬送装置を搭載したインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】前記シート搬送装置の特徴部分の概略構成図である。
【図3】前記シート搬送装置が備える第1吸引ダクトと第2吸引ダクトを上方から見た場合の平面図である。
【図4】前記シート搬送装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】前記プリンタに設けた操作パネルの紙種選択モードの表示部を示す図である。
【図6】前記プリンタに設けた給紙トレイを上方から見た平面図である。
【図7】前記シート搬送装置の動作のフローチャートである。
【図8】前記シート搬送装置で用紙を搬送する様子を示す図である。
【図9】前記シート搬送装置の他の実施形態に係る特徴部分の概略構成図である。
【図10】前記他の実施形態に係るシート搬送装置の動作のフローチャートである。
【図11】前記他の実施形態に係るシート搬送装置で用紙を搬送する様子を示す図である。
【図12】本発明を適用可能なシート搬送装置の模式図である。
【図13】従来のシート搬送装置の概略構成図である。
【図14】別の従来のシート搬送装置の概略構成図である。
【図15】従来のシート搬送装置の課題を説明するための図である。
【図16】従来のシート搬送装置の課題を説明するための図である。
【図17】従来のシート搬送装置の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0033】
まず、図1に基づいて、本発明のシート搬送装置を搭載した画像形成装置の全体構成について説明する。
図1において、符号1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタの装置本体である。当該装置本体1には、画像読取部2と、画像形成部3と、給紙部4等が配設されている。
【0034】
画像読取部2は、原稿台上に置かれた原稿を、密着イメージセンサー(図示せず)を配した読み取り位置に給紙し、当該密着イメージセンサーによる画像読み取り後に、原稿排出トレイ(図示せず)に原稿を排紙するように構成されている。画像形成部3は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のライン型インクジェットヘッド10Y,10M、10C,10Kを有する画像形成ヘッドユニット11を備えている。給紙部4には、シート材としての用紙Pを収容した複数の給紙カセット12が配設されている。各給紙カセット12には、収容されている用紙Pを送り出すための供給ローラ13が設けてある。各供給ローラ13の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを一枚ずつ分離するためのフィードリバースローラ対50a,50b,51a,51bが配設されている。また、本実施形態では、装置本体1の図の右側に、別の給紙部としての給紙装置6が配設されている。給紙装置6又は給紙カセット12から供給された用紙は、画像形成部3で画像が形成された後、最終的に装置本体1の図の左側に設けられた排紙トレイ20に排出されるようになっている。また、画像形成後の用紙に、ステイプル処理、折り処理、穿孔処理及び製本処理等のいわゆる後処理を施す後処理装置(フィニッシャ)を設けてもよい。
【0035】
図1において、二点鎖線は用紙が搬送される搬送経路である。また、その二点鎖線に付された矢印の方向は、用紙の搬送方向を示す。本実施形態では、搬送経路は、第1〜第5搬送経路A〜Eによって構成されている。
【0036】
第1搬送経路Aは、上記給紙カセット12又は給紙装置6から供給された用紙を画像形成部3へ案内するための搬送経路である。詳しくは、第1搬送経路Aは、給紙カセット12から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための縦方向及び横方向の搬送経路と、給紙装置6から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための横方向の搬送経路とが、途中で合流して構成されている。また、第1搬送経路Aにおいて、合流箇所の搬送方向上流側には、用紙のスキュー補正と搬送タイミングの調整を行うレジストローラ対25a,25bが配設されている。
【0037】
第2搬送経路Bは、画像形成後の用紙を機外へ排出するための搬送経路であり、第1搬送経路Aから水平方向に直進するように配設されている。第2搬送経路Bの搬送方向下流端側には、用紙を機外に排出するための排出ローラ対26a,26bが配設されている。また、排出ローラ対26a,26bよりも、搬送方向上流側には、用紙のカールを除去するためのデカーラ部90が設けられている。デカーラ部90としては、例えば、3つのコロを対向させてそれらの間にカール矯正のための湾曲経路を形成したものや、ソフトローラにハードローラを当接させてその当接部にカール矯正のための湾曲経路を形成したものなど、既存の従来技術を採用可能である。
【0038】
第3搬送経路Cは、第1搬送経路Aの搬送方向下流側から下方へ伸び、装置本体1の下部で上方へ引き返して、第2搬送経路Bのデカーラ部90の上流側で合流している。また、第3搬送経路Cの搬送方向上流側で、第2搬送経路Bと分かれている箇所には、用紙を第2搬送経路Bと第3搬送経路Cのいずれかに選択して案内するための切換爪28が配設されている。また、第3搬送経路Cの途中には、正逆回転可能な反転搬送ローラ対27a,27bが配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bが正回転する場合は、用紙は図の下方の排出方向へと搬送され、反転搬送ローラ対27a,27bが逆回転する場合は、用紙は前記排出方向とは逆方向(図の上方)へ搬送されるようになっている。また、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側には、用紙の後端を検知する検知センサ95が配設されている。
【0039】
第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cの反転搬送ローラ対27a,27bよりも正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側で分岐し、第1搬送経路Aに合流するように配設されている。また、第4搬送経路Dが第3搬送経路Cから分岐する箇所には、第3搬送経路Cから逆送される用紙を第4搬送経路Dへ案内するための切換爪29が配設されている。
【0040】
第5搬送経路Eは、第3搬送経路Cの反転搬送ローラ対27a,27bよりも正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側で分岐し、第3搬送経路Cの下流側で合流するように配設されている。また、第5搬送経路Eが第3搬送経路Cから分岐する箇所には、第3搬送経路Cから逆送される用紙を第5搬送経路Eへ案内するための切換爪30が配設されている。
【0041】
また、装置本体1には、上記搬送経路に沿って用紙を搬送するための各種搬送手段を備えたシート搬送装置が搭載されている。このシート搬送装置は、搬送手段の1つとして、画像形成部3の下方に配設された搬送ベルト18を備える。搬送ベルト18は、無端状のベルトで構成されており、1つの駆動ローラ14と3つの従動ローラ15,16,17によって張架されている。また、搬送ベルト18には、テンションローラ19によって所定の張力が付与されている。駆動ローラ14は図示しない駆動装置によって回転駆動可能となっており、駆動ローラ14が回転することによって、搬送ベルト18は図の矢印方向に回転するようになっている。また、従動ローラ15と従動ローラ17の用紙搬送方向の下流側には、それぞれ用紙を検知する用紙検知センサ35,36が設けてある。
【0042】
ここで、搬送ベルト18上で用紙を担持して搬送する搬送面(搬送経路)は、水平状に配設された第1ストレート搬送部S1と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第1曲げ搬送部M1と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第2ストレート搬送部S2と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第2曲げ搬送部M2と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第3ストレート搬送部S3とによって構成されている。
【0043】
また、シート搬送装置は、搬送ベルト18の裏面側からエアを吸引して用紙を搬送ベルト18に吸着させるエア吸着手段を備えている。このエア吸着手段は、搬送ベルト18の裏面側に配設された導風路としての第1〜第4吸引ダクト21〜24と、各吸引ダクト21〜24からそれぞれ独立してエア吸引するエア吸引手段としての吸引用ファン(図示省略)を有している。上記搬送ベルト18には、エアを吸引するための多数の小孔が形成されており、これら小孔から各吸引ダクト21,22,23,24を介してエアを吸引することにより、搬送ベルト18上に用紙を吸着させる仕組みとなっている。
【0044】
各吸引ダクトの配設位置について詳しく説明すると、第1吸引ダクト21は、画像形成部3の下方で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第2吸引ダクト22は、第1曲げ搬送部M1の用紙搬送方向上流側近傍で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第3吸引ダクト23は、第2ストレート搬送部S2に対向した位置に配設されている。また、第4吸引ダクト24は、第3ストレート搬送部S3に対向した位置に配設されている。
【0045】
また、搬送ベルト18の外周側には、搬送ベルト18で搬送される用紙にエアを吹き付けるエア吹き付け手段としての第1エア吹き付け装置31と第2エア吹き付け装置32が設けてある。第1エア吹き付け装置31は、第1曲げ搬送部M1(又は従動ローラ16の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。第2エア吹き付け装置32は、第2曲げ搬送部M2(又は従動ローラ17の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。
【0046】
また、別の搬送手段としての搬送ベルト39が、第2搬送経路Bに配設されている。この搬送ベルト39も、多数の小孔が形成された無端状のベルトで構成され、駆動ローラ37及び従動ローラ38によって張架されている。また、その搬送ベルト39の下方には、搬送ベルト39に形成された小孔からエアを吸引するための吸引ダクト40が配設されている。この吸引ダクト40にも、図示しない吸引用ファンが設けられている。そして、その吸引用ファンを駆動させることによって、搬送ベルト39の小孔からエアを吸引して、用紙を搬送ベルト39上に吸着できるようになっている。
【0047】
また、その他の搬送手段として、複数の搬送ローラ52a,52b〜61a,61bが配設されている。各搬送ローラの中で、用紙の画像形成面側に接触する方のローラ(図1の符号56a,57a,58a,59a,60a,61a,61bで示すローラ)には、画像形成面との接触面積が小さいローラを採用している。具体的には、それらのローラは、プラスチック製又はゴム製のローラ部材の表面にセラミック等の砥粒を多数接着して構成されている。これにより、ローラは画像形成面に対して点接触することができ、画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、用紙の画像形成面側に接触するローラを、薄肉の金属等で形成した拍車ローラで構成してもよい。この場合も、ローラが画像形成面に対して点接触となるため、同様に画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、同様に、上記排出ローラ対26a,26bの両方のローラと、上記反転搬送ローラ対27a,27bの用紙の画像形成面側に接触する方のローラ27aも、画像形成面との接触面積が小さいローラで構成されおり、画像形成面の乱れを生じにくくしている。
【0048】
さらに、本実施形態では、用紙の画像形成面の乱れを防止するために、上流側と下流側のローラ間の線速差を極力無くすようにしている。これにより、上流側と下流側のローラ間で、用紙が撓むことによって画像形成面が搬送ガイド板に当接したり、反対に用紙が引っ張られることによって画像形成面がローラと擦れたりするのを防止することが可能となる。上流側と下流側のローラ間の線速をほぼ一定にするには、例えば、上流側のローラにワンウェイクラッチを設けたり、上流側と下流側のローラを同じ駆動モータで駆動させたりすることによって可能である。
【0049】
以下、図1を参照しつつ、本発明に係るインクジェットプリンタの基本動作について説明する。
印刷開始の指示があると、給紙カセット12又は給紙装置6から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ対25a,25bに突き当たって一時停止される。これにより、用紙のスキューが補正される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対25a,25bの回転を開始し、用紙Pが搬送ベルト18上へ搬送される。用紙Pは、第1吸引ダクト21のエア吸引によって搬送ベルト18上に吸着され、その状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは画像形成ヘッドユニット11の下方へ搬送される。また、このとき、用紙検知センサ35によって用紙Pの先端が検知される。そして、この用紙検知センサ35の検知に基づいて、画像形成ヘッドユニット11が所定のタイミングで駆動され、画像読取部2で読み取った原稿の画像情報に基づいて、各色のインクジェットヘッド10Y,10M,10C,10Kのノズルから用紙Pにインクが吐出される。かくして、用紙P上にフルカラー画像が形成される。
【0050】
また、4つのインクジェットヘッド10Y,10M,10C,10Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのインクジェットヘッドを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、この間の搬送ベルト18の速度は極力変動しないように制御されているが、実際はその速度変動を図示しない検知装置によって検知することにより、用紙位置に合わせた正確なタイミングでインクの吐出が行われる。
【0051】
上記画像形成部3で画像が形成された用紙Pをそのまま機外に排出する場合は、切換爪28を図の点線で示す位置に配設して、用紙Pを水平方向に直進させる。そして、用紙Pは第2搬送経路Bに配設した搬送ベルト39上へと搬送され、吸引ダクト40のエア吸引によって用紙Pは搬送ベルト39上に吸着される。その状態で搬送ベルト39が回転することにより、用紙Pは下流へと搬送され、デカーラ部90で用紙のカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって用紙Pは機外へと排出される。
【0052】
また、上記画像形成後の用紙Pを、第3搬送経路Cを通過させてから機外に排出する場合は、切換爪28を図の実線で示す位置に配設し、用紙Pを第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへと案内できるようにする。この状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは第1〜第4吸引ダクト21〜24のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着されつつ第3搬送経路Cへと搬送されるが、第1曲げ搬送部M1では搬送経路(又は搬送ベルト18)が曲がっているため、用紙の厚さや剛性、その他の条件によっては、用紙Pの前端が第1曲げ搬送部M1の搬送方向下流側において浮き上がって、画像形成面が切換爪28等の周辺部材に強く当接する可能性がある。
【0053】
そこで、第1曲げ搬送部M1の搬送方向下流側に配設した第1エア吹き付け装置31によって、用紙Pにエアを吹き付けて、用紙Pを搬送ベルト18(又は搬送経路)に沿う方向へ曲げるようにしている。これにより、用紙Pの先端を切換爪28等に強く当接させることなく搬送することができる。そして、エアによって曲げられた用紙Pは、第3吸引ダクト23のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着される。また、特に用紙Pの剛性が大きい場合は、第1エア吹き付け装置31によって用紙Pの先端を曲げると、反対に用紙Pの後端が第1曲げ搬送部M1の搬送方向上流側で搬送ベルト18から浮き上がることがある。このような場合は、第2吸引ダクト22によってエア吸引を行い、用紙Pの後端が浮き上がらないようにする。なお、上述のように、各吸引ダクトは独立して吸引可能に構成されているため、第2吸引ダクト22のエア吸引動作は、他の吸引ダクトの動作の影響を受けずに制御することができる。
【0054】
用紙Pが第2曲げ搬送部M2の位置に搬送されると、この位置でも搬送経路(又は搬送ベルト18)が曲がっているため、上記第1曲げ搬送部M1と同様に用紙Pが搬送ベルト18から浮き上がる可能性ある。そのため、ここでは、第2エア吹き付け装置32によって、用紙Pにエアを吹き付けて、用紙Pを搬送ベルト18(又は搬送経路)に沿う方向へ曲げるようにする。こうして、吹き付けエアによって曲げられた用紙Pは、第4吸引ダクト24のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着される。
【0055】
その後、用紙Pは、駆動ローラ14の位置で搬送ベルト18から離脱して、反転搬送ローラ対27a,27bへと搬送される。また、切換爪29と切換爪30は、用紙Pの通過を妨げないように、それぞれ図の実線に示す位置に配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bへ到達した用紙Pは、正回転する反転搬送ローラ対27a,27bと、その搬送方向下流側に配設した複数の搬送ローラによって第2搬送経路Bへと搬送される。そして、用紙Pは、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。
【0056】
以上のように、第3搬送経路Cは、反転搬送ローラ対27a,27bを正回転させた場合は、用紙を排出する方向へと案内する排出路として機能する。また、この場合、用紙は第3搬送経路Cを通過することによって、下方へ迂回してから第2搬送経路Bへ案内されるため、用紙Pを排出までの搬送経路を長くすることができ、十分にインクを乾かしてから用紙Pを排出することが可能となる。
【0057】
また、両面印刷を行う場合は、画像形成部3において画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。この場合も、用紙Pは、搬送ベルト18によって斜め下方へと搬送されるが、ここでの搬送動作は、上記第3搬送経路Cを通過させて用紙Pを排出する場合と同様に行われる。そして、この場合は、用紙Pの後端が検知センサ95で検知されたとき、その検知信号に基づいて、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転が停止される。その後、第4搬送経路Dの分岐箇所にある切換爪29を図の点線の位置に切り換え、用紙Pを第4搬送経路Dへ案内できる状態にする。この状態で、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させることにより、用紙Pを逆送して第4搬送経路Dへ案内する。これにより、用紙Pは前後が反転された状態で第4搬送経路Dへと搬送される。この場合、第3搬送経路Cは、用紙を前後反転させて搬送する反転路として機能する。
【0058】
そして、用紙Pは、第4搬送経路Dを通って第1搬送経路Aへ案内され、表裏が反転された状態で再度画像形成部3へと搬送される。このように、第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cから逆送された用紙Pを、両面印刷を行うために再度第1搬送経路Aへと案内する両面搬送経路として機能する。そして、画像形成部3において用紙Pの裏面に表側の場合と同様にして画像が形成される。
【0059】
両面に画像が形成された用紙Pは、第1搬送経路Aから第2搬送経路Bへ水平方向に搬送される。このとき、第1搬送経路Aと第2搬送経路Bとの間の切換爪28は、図の点線の位置に切り換えられている。また、第1搬送経路Aから第2搬送経路Bへと用紙Pを搬送する際、第1エア吹き付け装置31からのエア吹き付けは行わない。そして、用紙Pは、第2搬送経路Bに配設した搬送ベルト39によって上記と同様に下流へ搬送され、デカーラ部90で用紙のカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。
【0060】
また、片面印刷でページ順積載を行う場合は、画像形成部3において画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。ここでの搬送ベルト18による搬送動作も、上記第3搬送経路Cを通過させて用紙Pを排出する場合と同様である。そして、この場合、用紙Pの後端が反転搬送ローラ対27a,27bの位置に到達したとき、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止する。その後、第5搬送経路Eの分岐箇所にある切換爪30を図の点線の位置に切り換え、用紙Pを第5搬送経路Eへ案内できる状態にする。この状態で、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させることにより用紙Pを逆送させ、用紙Pは第5搬送経路Eへと搬送される。そして、用紙Pは、第5搬送経路Eを通って第2搬送経路Bへと送られる。このように、第5搬送経路Eは、第3搬送経路Cで逆送される用紙Pを、画像形成部3へと案内せずにそのまま第2搬送経路Bへと案内するための搬送経路として機能する。その後、用紙Pは、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。これにより、用紙Pは、前後及び表裏が反転された状態で排出され、ページ順に揃えた状態で排紙トレイ20上に積載される。
【0061】
以下、上記シート搬送装置の構成について詳しく説明する。
図2は、搬送ベルト18に設けた第1吸引ダクト21と第2吸引ダクト22、及びそれらの周辺部材を示す図である。図2に示すように、第1吸引ダクト21と第2吸引ダクト22には、それぞれ、エア吸引手段としての吸引用ファン41a,41b,42a,42bが2つずつ設けてある。しかし、各吸引ダクト21,22における吸引用ファンの配設の仕方は異なっている。第1吸引ダクト21には、2つの吸引用ファン41a,41bを並列に設けているが、第2吸引ダクト22には、2つの吸引用ファン42a,42bを直列に設けている。このように、第2吸引ダクト22において吸引用ファンを直列に設けることで、吸引用ファンを並列に設けた第1吸引ダクト21よりも、負圧を大きく発生させることができるようにしている。本実施形態では、第1吸引ダクト21で発生させる負圧(静圧)は500Pa程度であり、これに対し、第2吸引ダクト22で発生させる負圧(静圧)は、第1吸引ダクト21よりも大きい800Pa程度となっている。
【0062】
図3は、第1吸引ダクト21と第2吸引ダクト22を上方から見た場合の平面図である。
図3に示すように、搬送ベルト18には、多数の小孔18aが形成されており、ここからエアが吸引されるようになっている。なお、搬送ベルト18は従動ローラ16等によって張架されているが、図3では、搬送ベルト18を一部破断して表している。搬送ベルト18の下方であって第1吸引ダクト21の上部には、複数の吸引開口部43aが形成された面板43が配設されている。同様に、搬送ベルト18の下方であって第2吸引ダクト22の上部にも、複数の吸引開口部44aが形成された面板44が配設してある。これら面板43,44に形成された吸引開口部43a,44aからは、上記吸引用ファン41a,41b,42a,42b(図2参照)の駆動によってエアが吸引されるようになっている。なお、図3では、各面板43,44を一部破断して表しているが、各面板43,44は、搬送ベルト18の幅方向に渡って配設されている。
【0063】
また、各面板43,44の単位面積当たりの吸引開口部43a,44aが占める開口面積率は、第1吸引ダクト21側よりも第2吸引ダクト22側で大きくなるように構成されている。本実施形態では、開口面積率を、第1吸引ダクト21側で約20〜30%、第2吸引ダクト22側で約60〜70%としている。また、第1吸引ダクト21側の吸引開口部43aは丸孔であり、第2吸引ダクト22側の吸引開口部44aは角孔又は六角孔であるが、吸引開口部43a,44aの形状はこれらに限定されるものではない。
【0064】
また、図3に示すように、第2吸引ダクト22内には、一対の可動仕切板45,46が配設されている。可動仕切板45,46には、それぞれ、ラック歯47a,48aを設けたスライド部材47,48が一体的に取り付けられている。また、スライド部材47,48を移動させる移動手段として、駆動手段である2つのモータ49,62と、各モータ49,62の駆動力をスライド部材47,48に伝達する伝達手段としての2つのピニオンギヤ91,92が設けてある。2つのピニオンギヤ91,92は、それぞれ、スライド部材47,48のラック歯47a,48aに噛合している。各モータ49,62が駆動することによりピニオンギヤ91,92が正回転又は逆回転すると、スライドガイド部材47,48が搬送ベルト18の幅方向に移動し、一対の可動仕切板45,46が互いに接近又は離間するようになっている。これにより、可動仕切板45,46同士の間隔が変化し、第2吸引ダクト22において吸引力が発揮される吸引エリアの幅(用紙搬送方向と直交する方向の幅)Wを変更可能となっている。
【0065】
図4は、第2吸引ダクト22及びそれに設けた吸引用ファン42a,42bの制御系を示すブロック図である。
図4に示すように、上記可動仕切板45,46を移動させるためのモータ49,62(以下、「吸引エリア幅調整用モータ」という。)と、第2吸引ダクト22に設けた吸引用ファン42a,42bは、装置本体に搭載されたCPU等から構成される制御部9によって制御可能となっている。詳しくは、吸引エリア幅調整用モータ49,62の駆動は、用紙(シート材)の幅を検知するシート幅検知手段80の検知情報に基づいて制御されるようになっている。また、吸引用ファン42a,42bの出力は、用紙(シート材)の種類を入力するためのシート種類入力手段8の入力情報と、用紙の後端位置を検知する後端位置検知センサ96の検知情報とに基づいて制御されるようになっている。
【0066】
後端位置検知センサ96は、搬送ベルト18の第1ストレート搬送部S1上の所定位置に配設されている(図2参照)。この後端位置検知センサ96によって用紙の後端が検知されたときは、第2吸引ダクト22に設けた吸引用ファン42a,42bの出力が上昇するようになっている。
【0067】
上記シート種類入力手段8は、インクジェットプリンタの装置本体に設けてある操作パネルで構成される。また、本プリンタに接続されたパソコン等を、シート材の種類(紙種)を入力するシート種類入力手段とすることも可能である。あるいは、特有のセンサによってシート材の種類(紙種)を検知するシート種類検知手段70を設け、そのシート種類検知手段70の検知情報に基づいて吸引用ファン42a,42bの出力を制御してもよい。その場合は、上記操作パネル8での使用者による入力作業を不要にすることが可能である。
【0068】
図5は、操作パネル8の紙種選択モードの表示部を示す。
操作パネル8は、タッチパネル式の液晶表示部で構成されており、本実施形態では、「標準紙」「薄紙」「厚紙」のいずれかを選択して入力可能となっている。例えば、「標準紙」は55〜70K紙程度、「薄紙」は45K紙未満、「厚紙」は110〜135K紙程度としている。また、それら以外の紙種を任意設定することも可能である。なお、本実施形態では、図示しない制御テーブルなどによって、紙種ごとに吸引用ファン42a,42bの出力が予め設定されている。
【0069】
上記シート幅検知手段80は、図1に示す給紙部4及び給紙装置6にそれぞれ設けてある。以下、図6に基づいて、シート幅検知手段80の具体的構成について詳しく説明する。
【0070】
図6は、給紙部4及び給紙装置6に設けられた給紙トレイ73を上方から見た平面図である。
図6に示すように、給紙トレイ73上には、用紙Pの両側面部をガイドする一対のサイドフェンス74,75が立設されている。各サイドフェンス74,75には、用紙搬送方向と直交する方向に移動する移動部材76,77が取り付けられており、各移動部材76,77の間には、回転可能なピニオンギヤ78が配設されている。また、各移動部材76,77のピニオンギヤ78と対向する面には、ピニオンギヤ78と噛合するラック歯76a,77aが形成されている。これにより、サイドフェンス74,75の一方を、他方に対して接近又は離間させると、ピニオンギヤ78が回転することにより、他方も連動して接近又は離間する方向に移動するようになっている。このように、一対のサイドフェンス74,75は、互いに接近離間可能に構成されており、サイドフェンス74,75同士の間隔Yを用紙Pの幅に一致させることができるようになっている。
【0071】
また、給紙トレイ73には、サイドフェンス74,75の位置を検知するサイドフェンス位置検知センサ79が複数設けてある。これらセンサ79がサイドフェンス74,75の位置を検知することにより、用紙Pの幅が間接的に分かるようになっている。すなわち、本実施形態では、サイドフェンス位置検知センサ79が、用紙Pの幅を検知する上記シート幅検知手段80として機能する。そして、サイドフェンス位置検知センサ79によって検知された用紙幅に基づいて、制御部9が吸引エリア幅調整用モータ49,62を駆動させて上記可動仕切板45,46の位置を調整することにより、吸引エリアの幅Wが検知された用紙の幅と一致するようになっている。
【0072】
以下、図7のフローチャートを参照しつつ、上記シート搬送装置の動作について説明する。
まず、使用者が操作パネルによって紙種を入力したら(STEP1)、用紙の搬送動作を開始する前に、第2吸引ダクト22の吸引エリアの幅W(図3参照)が用紙幅に一致するように調整される(STEP2)。その後、用紙の搬送が開始され(STEP3)、その用紙が搬送ベルト18上に搬送されると、図2に示す第1吸引ダクト21からのエア吸引によって用紙Pが搬送ベルト18上に吸着される(STEP4)。そして、用紙が搬送ベルト18によって画像形成部3の下部へ搬送され、そこで画像が形成される。用紙に画像が形成された後、用紙は第2吸引ダクト22の上方へと搬送され、第2吸引ダクト22からのエア吸引によって用紙は搬送ベルト18に吸着される(STEP5)。
【0073】
そして、用紙がさらに下流へと搬送されて、用紙の後端が図2に示す後端位置検知センサ96によって検知されると(STEP6)、第2吸引ダクト22に設けた吸引用ファン42a,42bの出力が上昇して吸引力が増大する(STEP7)。これにより、第2吸引ダクト22の吸引力は、第1吸引ダクト21の吸引力よりも大きくなる。本実施形態において、例えば、第1吸引ダクト21の吸引力が10〜30N/m2程度であるのに対し、吸引力増大後の第2吸引ダクト22の吸引力は、100〜150N/m2程度となる。また、このときの吸引力の増大量は、上記入力された用紙の種類の情報と、予め設定された制御テーブルに基づいて行われる。そして、用紙の後端が図2に示す第1曲げ搬送部M1上の所定位置Xを通過したら(STEP8)、第2吸引ダクト22に設けた吸引用ファン42a,42bの出力を低下して吸引力が元に戻される(STEP9)。また、用紙の後端が上記所定位置Xを通過したか否かは、例えば、後端位置検知センサ96の検知タイミングと、搬送ベルト18の搬送速度に基づいて検知することが可能である。
【0074】
本実施形態のインクジェットプリンタでは、図8に示すように、用紙Pが第1曲げ搬送部M1において下方へ曲げて搬送され、用紙Pの前端e1が第1曲げ搬送部M1の下流側のある位置に達すると、第1曲げ搬送部M1の上流側近傍で、用紙Pの後端e2が搬送ベルト18から浮き上がりやすい状態となる。もし、用紙Pの後端e2の浮き上がりが生じると、用紙Pの画像形成面が周辺部材等に当接して画像が乱れる虞がある。また、図8に示すように、特に、用紙Pの後端e2で画像形成が行われている状態で、用紙Pの後端e2が浮き上がると、画像形成が良好に行われなくなる虞や、浮き上がった後端e2が画像形成部3のインクジェットヘッドのノズルに当接することによる用紙Pの汚れやインクの吐出不良等が生じる虞がある。
【0075】
そこで、上記のように、用紙の後端が後端位置検知センサ96の位置から第1曲げ搬送部M1上の所定位置Xまでの搬送範囲Yにある場合に、第2吸引ダクト22に設けた吸引用ファン42a,42bの出力を上昇させることにより、第2吸引ダクト22における吸引力を大きくするようにしている。これにより、第1曲げ搬送部M1の上流側近傍において、用紙に対して大きな吸引力を作用させることができ、用紙の後端の浮き上がりを防止することが可能となる。
【0076】
また、上記のように、用紙Pの後端e2の位置を検知することにより、後端の浮き上がりが生じやすい範囲で用紙が搬送されているときに、第2吸引ダクト22における吸引力を大きくすることができるので、後端の浮き上がりを確実に防止することが可能である。なお、本実施形態では、吸引用ファン42a,42bの出力を上昇させるタイミングは、吸引用ファン42a,42bの立ち上がり時間を考慮して、用紙の後端が浮き上がりの生じやすい位置に至るタイミングよりも前となるように設定してある。
【0077】
一方、用紙Pの後端e2が、後端位置検知センサ96の位置から上記所定位置Xまでの搬送範囲Y以外にある場合は、後端e2の浮き上がりがほとんど生じない。このため、用紙Pの後端e2が浮き上がりの生じない範囲にある場合は、第2吸引ダクト22の吸引力を増大させないことで、吸引用ファンの騒音や消費電力の低減が図れる。
【0078】
また、本実施形態では、第1吸引ダクト21からのエア吸引と、第2吸引ダクト22からのエア吸引を、それぞれ別々の吸引用ファンによって独立して行うように構成している。これにより、用紙後端の浮き上がりが生じる虞のない位置に配設された第1吸引ダクト21等においては、無駄な吸引力の増大を伴うことがないので、吸引用ファンの騒音や消費電力を低減することができる。
【0079】
これに対し、第2吸引ダクト22では、第1吸引ダクト21よりも大きな吸引力を発生させることが求められるため、その工夫がされている。具体的には、上述のように、2つの吸引用ファン42a,42bを直列で配設したり(図2参照)、面板44に形成した吸引開口部44aの開口面積率を大きくしたりしている(図3参照)。また、第2吸引ダクト22の吸引エリアの幅Wを用紙幅に一致させるように変更することで、用紙が通過するエリア外での不要なエア吸引をなくして、エア漏れによる吸引力の低下を防止している。なお、吸引エリアの幅Wを用紙幅に完全に一致させなくても、不要なエア吸引を少なくして吸引力の低下を抑制することは可能である。
【0080】
また、上記用紙後端の浮き上がりは、用紙が厚くなる又は剛性が大きくなるほど顕著となる傾向にある。そこで、上記のように、用紙の種類に応じて第2吸引ダクト22の吸引力の増大量を変更することにより、第2吸引ダクト72における吸引力を紙種に適した値となるように調整している。具体的には、用紙が剛性の大きい厚紙等である場合は、吸引力の増大量を大きくし、強力な吸引力を作用させることにより、用紙後端の浮き上がりを抑制することが可能である。これに対し、用紙が剛性の小さい薄紙等である場合は、用紙後端の浮き上がりを抑制するために強力な吸引力は必要ないので、吸引力の増大量は小さくてよい。また、紙種によっては、第2吸引ダクト22における吸引力を全く増大させなくてもよい場合もある。このように、薄紙等を搬送する場合は、吸引力の増大量を必要最小限とすることで、吸引用ファンの騒音や消費電力を低減することが可能である。
【0081】
図9は、本発明の他の実施形態に係るインクジェットプリンタの一部を示す概略構成図である。
図9に示すインクジェットプリンタにも、上記本発明の実施形態と同様に、各色のインクジェットヘッド10Y,10M、10C,10Kを有する画像形成ヘッドユニット11を備えた画像形成部3が設けられている。図9において、二点鎖線はシート材としての用紙が搬送される搬送経路であり、その二点鎖線に付された矢印の方向は用紙の搬送方向を示す。インクジェットプリンタには、その搬送経路に沿って用紙を搬送するシート搬送装置が設けてあり、シート搬送装置は、搬送手段として、画像形成部3の下方に配設された搬送ベルト63や、それの用紙搬送方向下流側に配設された搬送ローラ対64a,64b等を備えている。
【0082】
また、搬送経路は、搬送ベルト63によって用紙が水平方向に搬送される第1ストレート搬送部S1と、その搬送方向下流側に連設されると共に切換爪68によって上方へ曲げて搬送される曲げ搬送部M1と、その搬送方向下流側に連設されると共に搬送ローラ対64a,64bによって垂直上方へ搬送される第2ストレート搬送部S2とを有する。
【0083】
搬送ベルト63は、無端状のベルトで構成されており、少なくとも1つの駆動ローラを含む複数のローラ65,66,67等によって張架されている。また、駆動ローラが回転することによって、搬送ベルト63は図の矢印方向に回転するようになっている。また、本実施形態に係るシート搬送装置も、搬送ベルト63の裏面側からエアを吸引して用紙を搬送ベルト63に吸着させるエア吸着手段を備えている。エア吸着手段は、搬送ベルト63の裏面側に配設された導風路としての第1及び第2吸引ダクト71,72と、各吸引ダクト71,72から独立してエア吸引するエア吸引手段としての複数の吸引用ファン81a,81b,82a,82bを有する。
【0084】
上記吸引ダクト71,72と吸引用ファン81a,81b,82a,82bの配設位置について詳しく説明する。
第1吸引ダクト71は、画像形成部3の下方で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されており、第2吸引ダクト72は、曲げ搬送部M1の用紙搬送方向上流側近傍で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。また、第1吸引ダクト71に設けた2つの吸引用ファン81a,81bは並列に配設されているが、第2吸引ダクト72に設けた2つの吸引用ファン82a,82bは直列に配設されている。このように、吸引用ファンの配設の仕方を異ならせていることで、上記実施形態と同様に、第2吸引ダクト72において第1吸引ダクト71よりも負圧を大きく発生させることができるようにしている。
【0085】
また、第2吸引ダクト72では、第1吸引ダクト71よりも大きな吸引力を発生させるために、上記本発明の実施形態と同様の工夫がされている。つまり、第2吸引ダクト72に設けた図示しない面板に形成した吸引開口部の開口面積率を、第1吸引ダクト71のそれよりも大きくなるようにしている。また、第2吸引ダクト22において、吸引エリアの幅W(図3参照)を用紙幅に一致させるように変更可能に構成し、用紙が通過するエリア外での不要なエア吸をなくして、エア漏れによる吸引力の低下を防止している。また、本実施形態における吸引エリアの幅Wの可変機構や用紙幅の検知機構は、上記図3及び図6で説明したものと同様のものを適用可能である。
【0086】
また、搬送ベルト63上の所定位置に、用紙の前端位置を検知する前端位置検知センサ97が配設されている。この前端位置検知センサ97によって用紙の前端が検知されたときは、第2吸引ダクト72に設けた吸引用ファン82a,82bの出力が上昇するように制御される。また、本実施形態においても、第2吸引ダクト72に設けた吸引用ファン82a,82bの出力は、用紙(シート材)の種類を入力するためのシート種類入力手段(操作パネル等)の入力情報に基づいて制御されるようになっている。あるいは、上記実施形態と同様に、シート材の種類(紙種)を検知するシート種類検知手段を設け、そのシート種類検知手段の検知情報に基づいて吸引用ファン82a,82bの出力を制御することも可能である。また、本実施形態における吸引用ファン82a,82bの出力や上記吸引エリアの幅Wの制御系は、図4及び図5で説明したものと同様のものを適用可能である。
【0087】
以下、図10のフローチャートを参照しつつ、図9に示す実施形態に係るシート搬送装置の動作について説明する。
まず、使用者が操作パネルによって紙種を入力したら(STEP1)、用紙の搬送動作を開始する前に、第2吸引ダクト72の吸引エリアの幅Wが用紙幅に一致するように調整される(STEP2)。その後、用紙の搬送が開始され(STEP3)、その用紙が搬送ベルト63上に搬送されると、図9に示す第1吸引ダクト71からのエア吸引によって用紙Pが搬送ベルト63上に吸着される(STEP4)。そして、用紙Pが搬送ベルト63によって画像形成部3の下部へ搬送され、そこで画像が形成された後、用紙はさらに下流へと搬送され、第2吸引ダクト72からのエア吸引によって搬送ベルト63に吸着される(STEP5)。
【0088】
その後、用紙の前端が前端位置検知センサ97によって検知されると(STEP6)、第2吸引ダクト72に設けた吸引用ファン82a,82bの出力が上昇して吸引力が増大する(STEP7)。これにより、第2吸引ダクト72の吸引力は、第1吸引ダクト71の吸引力よりも大きくなる。また、このときの吸引力の増大量は、上記入力された用紙の種類の情報と、予め設定された制御テーブルに基づいて行われる。そして、用紙の後端が図9に示す曲げ搬送部M1上の所定位置Vを通過したら(STEP8)、第2吸引ダクト72に設けた吸引用ファン82a,82bの出力を低下して吸引力が元に戻される(STEP9)。
【0089】
図11は、上記図9に示すインクジェットプリンタにおいて、搬送ベルト63によって搬送される用紙Pの先端e1が曲げ搬送部M1に設けた切換爪68に当接した状態を示す。このように、用紙Pが曲げ搬送部M1に進入する際、用紙Pの先端e1が切換爪68等に当接すると、その当接によって搬送抵抗が生じる。そして、図11に示すように、用紙の後端e2側で画像形成が行われている状態で、上記当接によって生じた搬送抵抗によって、搬送ベルト63に対して用紙Pが後方へ滑ると、用紙Pの搬送速度が変化し、用紙Pの後端e2側での画像形成が正確に行われなくなる虞がある。
【0090】
そこで、上記のように、用紙Pの前端e1が前端位置検知センサ97の位置から曲げ搬送部M1上の所定位置Vまでの搬送範囲Zにある場合に、第2吸引ダクト72に設けた吸引用ファン82a,82bの出力を上昇させて、第2吸引ダクト72における吸引力を大きくするようにしている。これにより、曲げ搬送部M1の上流側近傍において吸着力が強くなるため、用紙Pに搬送力を十分に与えることができるようになり、用紙Pの前端e1の当接によって搬送抵抗が生じても、用紙Pの滑りを生じさせないで搬送することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態では、用紙Pの前端e1の位置を検知することにより、前端e1の当接による搬送抵抗が生じやすい範囲で用紙Pが搬送されているときに、第2吸引ダクト72における吸引力を大きくすることができ、確実に用紙Pを搬送することができる。なお、本実施形態では、吸引用ファン82a,82bの出力を上昇させるタイミングは、吸引用ファン82a,82bの立ち上がり時間を考慮して、用紙の前端が切換爪68に当接するタイミングよりも前となるように設定してある。
【0092】
一方、用紙Pの前端e1が、前端位置検知センサ97の位置から上記所定位置Vまでの搬送範囲Z以外にある場合は、前端e1の当接による不具合は生じない。このため、用紙Pの前端e1が当接による不具合の生じない範囲にある場合は、第2吸引ダクト72の吸引力を増大させないことで、吸引用ファンの騒音や消費電力の低減を図っている。
【0093】
また、この本実施形態においても、各吸引ダクト71,72からのエア吸引を独立して行うように構成しているので、上記当接による不具合の生じない位置に配設された第1吸引ダクト71等においては、無駄な吸引力の増大を伴うことがなく、吸引用ファンの騒音や消費電力を低減することができる。
【0094】
また、用紙前端の当接による搬送抵抗は、用紙が厚くなる又は剛性が大きくなるほど大きくなる傾向にある。そこで、上記のように、用紙の種類に応じて第2吸引ダクト72の吸引力の増大量を変更することにより、第2吸引ダクト72における吸引力を紙種に適した値となるように調整している。具体的には、用紙が剛性の大きい厚紙等である場合は、吸引力の増大量を大きくし、強力な吸引力を作用させることにより、大きな搬送抵抗が生じても用紙の滑りを生じさせないで搬送することが可能となる。これに対し、用紙が剛性の小さい薄紙等である場合は、発生する搬送抵抗が小さく強力な吸引力は必要ないので、吸引力の増大量は小さくてよい。また、紙種によっては、第2吸引ダクト72における吸引力を全く増大させなくてもよい場合もある。このように、薄紙等を搬送する場合は、吸引力の増大量を必要最小限にすることで、吸引用ファンの騒音や消費電力を低減することが可能である。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記図2等に示す実施形態において、図9等に示す実施形態と同様に、用紙の前端位置を検知して吸引力を変化させるように構成し、曲げ搬送部において用紙前端が当接することによる搬送速度の低下(図17参照)を防止するようにしてもよい。また、図9等に示す実施形態において、図2等に示す実施形態と同様に、用紙の後端位置を検知して吸引力を変化させるように構成し、後端側の用紙の浮き上がり(図16参照)を防止するように構成してもよい。また、図2に示す第1吸引ダクト21と第2吸引ダクト22を一体的に構成し、その一体的に構成した吸引ダクト内で、曲げ搬送部(第1曲げ搬送部M1)の上流側近傍での吸引力を、それよりも上流側での吸引力よりも大きくなるように設定してもよい。すなわち、ストレート搬送部(第1ストレート搬送部S1)においてエアを吸引するエア吸引手段は、1つであってもよい。
【0096】
また、上記曲げ搬送部(第1曲げ搬送部)の曲げ方向は、上方又は下方に限定されるものではない。すなわち、図12に示すように、本発明は、ストレート搬送部Sの搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部M又はM´が、ストレート搬送部Sの延長線Lに対して搬送ベルト85の配設側又はそれと反対側へ曲がるように配設されている構成であれば、適用可能である。
【0097】
また、本発明に係るシート搬送装置は、図1に示すインクジェットプリンタ以外に、電子写真方式の画像形成部を備えたプリンタや、それ以外の複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置にも搭載可能である。
【0098】
以上のように、本発明によれば、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、用紙などのシート材が曲げ搬送部を通過することに伴う後端の浮き上がりを効果的に防止できる。また、曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、その箇所での搬送ベルトへのシート材の吸着力が大きくなるので、シート材の前端が曲げ搬送部に設けたガイド板等に当接することにより搬送抵抗が生じても、シート材の滑り(搬送速度の低下)を生じさせないで搬送することが可能となる。このように、本発明では、シート材の後端の浮き上がりや搬送ベルトに対するシート材の滑り(搬送速度の低下)を効果的に防止できるので、円滑かつ安定したシート材の搬送を行うことが可能となる。一方、曲げ搬送部の上流側近傍のさらに上流側では、上記不具合が生じる虞がないので、このような箇所では吸引力を大きくしないことにより、騒音や消費電力の低減を図ることができる。
【0099】
また、エア吸着手段の曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を、シート材の種類に応じて変更可能に構成することにより、シート材の種類ごとに適した吸引力を発揮することができるようになる。具体的には、剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は、吸引力を大きくすることで、シート材に対して搬送ベルト側への強力な吸着力を発揮することができ、上記不具合を効果的に抑制することができる。これに対し、剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は、上記不具合を抑制するために大きな吸引力は必要ないので、吸引力を小さくすることにより、騒音や消費電力を低減することが可能となる。
【0100】
また、シート材の後端が、少なくとも曲げ搬送部の上流側近傍の所定範囲(例えば図8に示す搬送範囲Y)を通過する間は、それ以外の時に比べて、エア吸着手段の曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、シート材の後端の浮き上がりを確実に防止することができる。一方、シート材の後端がそれ以外の箇所を通過する間は、後端の浮き上がりが生じる虞がないため、吸引力を大きくしないことで、騒音や消費電力の低減が図れる。
【0101】
また、シート材の前端が、少なくとも前記曲げ搬送部内の所定範囲(例えば図12に示す搬送範囲Z)を通過している間は、それ以外の時に比べて、エア吸着手段の曲げ搬送部の上流側近傍での吸引力を大きくすることにより、シート材の搬送速度の低下を生じることなくシート材を確実に搬送することができる。一方、シート材の前端がそれ以外の箇所を通過する間は、シート材の搬送速度の低下が生じる虞がないため、吸引力を大きくしないことで、騒音や消費電力の低減が図ることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
8 操作パネル(シート種類入力手段)
18 搬送ベルト
21〜24 吸引ダクト
43a 吸引開口部
44a 吸引開口部
63 搬送ベルト
85 搬送ベルト
A〜E 第1〜第5搬送経路
M1,M2 曲げ搬送部
P 用紙(シート材)
S1〜S3 ストレート搬送部
W 吸引エリア幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【特許文献1】特開2009−274368号公報
【特許文献2】特開2009−113935号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレート搬送部とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部を有する搬送経路と、表面にシート材を担持して搬送する搬送ベルトと、当該搬送ベルトの裏面側からエアを吸引してシート材を前記搬送ベルトに吸着させるエア吸着手段とを備え、前記搬送ベルトによってシート材を前記ストレート搬送部から前記曲げ搬送部へ搬送するように構成したシート搬送装置において、
前記エア吸着手段による前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、それよりもシート搬送方向上流側での吸引力よりも大きくなるように設定したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記曲げ搬送部が、前記ストレート搬送部の延長線に対して前記搬送ベルトの配設側へ曲がるように構成されている請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記曲げ搬送部が、前記ストレート搬送部の延長線に対して前記搬送ベルトの配設側とは反対側に曲がるように構成されている請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記エア吸着手段は、前記搬送ベルトの裏面に対向して配設された複数の吸引開口部を有する吸引ダクトを備え、前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での前記吸引ダクトの開口面積率を、それよりもシート搬送方向上流側での前記吸引ダクトの開口面積率よりも大きくした請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引エリアの幅を、シート材の幅に対応して変更可能に構成した請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、シート材の種類に応じて変更可能に構成した請求項1から5のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を、シート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は大きくし、シート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は小さくするように構成した請求項6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
シート材の後端が、少なくとも前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍の所定範囲を通過する間は、それ以外の時に比べて、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を大きくするように制御した請求項1から7のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
シート材の前端が、少なくとも前記曲げ搬送部内の所定範囲を通過している間は、それ以外の時に比べて、前記エア吸着手段の前記曲げ搬送部のシート搬送方向上流側近傍での吸引力を大きくするように制御した請求項1から8のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記ストレート搬送部においてシート材に画像を形成するように構成した請求項10に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−168351(P2011−168351A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31276(P2010−31276)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】