シート搬送装置及び自動シート搬送機構
【課題】 潜り込み排出方式の自動搬送読取装置(ADF読取装置)において、既に載置されている原稿枚数が増加した場合であっても、正常な潜り込み排出が可能な自動搬送読取装置を提供する。
【解決手段】 少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給を停止する。これにより、新たに潜り込み排出された原稿にトレイローラ27から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されている原稿枚数が増加して既に載置されている原稿の最下部に位置する原稿と新たに排出される原稿との摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、正常な潜り込み排出が可能となる。
【解決手段】 少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給を停止する。これにより、新たに潜り込み排出された原稿にトレイローラ27から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されている原稿枚数が増加して既に載置されている原稿の最下部に位置する原稿と新たに排出される原稿との摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、正常な潜り込み排出が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に排出トレイに載置されているシートと排出トレイとの間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置、及びこれを用いた自動シート搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のシート搬送装置では、既に排出トレイに排出されて積層状態で載置されている1枚以上シートのうち積層方向下端に位置するシートの下側に、新たに排出されるシートを潜り込ませるように排出する潜り込み排出手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排出されるシートを潜り込み排出させる場合、既に載置されているシート枚数が増加すると、既に載置されているシートと新たに排出されるシートとの摩擦抵抗が大きくなり、正常な潜り込み排出をできなくなる可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、潜り込み排出方式のシート搬送装置において、既に載置されているシート枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、正常な潜り込み排出が可能なシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、排出されたシートが積層された状態で載置される排出トレイ(15)を備え、既に排出トレイ(15)に載置されているシートと排出トレイ(15)との間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置であって、回転しながらシートに接触することによりシートに搬送力を付与するとともに、シートを排出トレイ(15)側に排出する排出ローラ(25)と、排出トレイ(15)に設けられ、積層されたシートのうち排出トレイ(15)側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるトレイローラ(27)とを備え、少なくとも、既に排出トレイ(15)に到達したシートの排出方向後端が排出ローラ(25)から離脱したときから、次に、排出ローラ(25)から排出されるシートの排出方向先端が排出ローラ(25)に到達するときまでは、トレイローラ(27)への駆動力の供給が停止されることを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明では、新たに潜り込み排出されたシートにトレイローラ(27)から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されているシート枚数が増加して既に載置されているシートと新たに排出されるシートとの摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、正常な潜り込み排出が可能となる。
【0008】
ところで、潜り込み排出は、排出トレイ(15)に載置されているシート(以下、排出済シートという。)の排出方向後端側が排出トレイ(15)からずれて排出方向上流側に位置し、かつ、排出済シートの排出方向後端側の下面に、次に、排出ローラ(25)から排出されるシート(以下、排出前シートという。)の排出方向先端が衝突するように、排出済シートの排出方向後端側を保持することにより、次に排出されるシートを排出済シートと排出トレイ(15)との間に潜り込ませるものである。
【0009】
このため、排出前シートが排出済シートの排出方向後端側に衝突する前に、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうと、排出前シートを排出済シートに衝突させることができないので、正常に潜り込み排出をできない。
【0010】
一方、トレイローラ(27)は、積層されたシートのうち排出トレイ(15)側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるので、排出前シートがトレイローラ(27)と接触する前に排出済シートを大きく移動させると、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうおそれがある。
【0011】
これに対して、本発明では、少なくとも、既に排出トレイ(15)に到達したシートの排出方向後端が排出ローラ(25)から離脱したときから、次に、排出ローラ(25)から排出されるシートの排出方向先端が排出ローラ(25)に到達するときまでは、トレイローラ(27)への駆動力の供給が停止されるので、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうことを防止できる。
【0012】
以上により、本発明では、潜り込み排出方式のシート搬送装置において、既に載置されているシート枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能なシート搬送装置を得ることができる。
【0013】
なお、「排出済シートが積層された状態で載置される」とは、排出済シートが2枚以上である場合のみならず、排出済シートが1枚である場合も含む意味であり、「既に排出トレイ(15)に到達したシート」とは、少なくとも排出方向先端側が排出トレイ(15)に到達していることを意味する。
【0014】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12(画像読取装置1)の中央断面図であり、(b)は図1(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像読取装置1の斜視図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図3(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図4(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図5(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図6】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図6(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図7(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図8】本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図である。
【図9】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図9(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態は、画像読取装置(スキャナ)用の自動搬送読取装置(ADF読取装置)に本発明に係るシート搬送装置及び自動シート搬送機構を適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0017】
なお、自動搬送読取装置(ADF読取装置)とは、原稿を自動的に搬送しながら原稿に記載された画像を読み取る装置であり、本実形態に係る画像読取装置は、自動搬送読取装置を用いた自動読取機能、及び静止載置された原稿に記載された画像を読み取る静止原稿読取機能(フラットベッド読取機能)を兼ね備えた画像読取装置である。
【0018】
(第1実施形態)
1.画像読取装置の概略構成
画像読取装置1の本体部3には、図1(a)に示すように、静止原稿読取機能用の画像読取窓(以下、静止読取窓という。)5、及び自動搬送読取機能用の画像読取窓(以下、自動読取窓という。)7が設けられており、両読取窓5、7は、ガラスやアクリル等の透明なプラテン5A、7Aにて閉塞されている。
【0019】
また、本体部3の上面側には、図2に示すように、両読取窓5、7を覆う原稿カバー9が揺動可能に組み付けられており、静止読取窓5にて原稿読取を行う場合には、この原稿カバー9を手動操作にて上方側に開いて原稿を静止読取窓5に載置する。
【0020】
一方、本体部3内には、図1(a)に示すように、原稿に照射されて反射した光を受光し、その受光した光に基づいて電気信号を発する画像撮像素子11が配設されており、画像読取装置1は、画像撮像素子11を介して原稿に記載された文字等の画像を電気信号に変換して画像を読み取っていく。
【0021】
因みに、本実施形態では、画像撮像素子11として、CIS(Contact Image Sensor)を用いており、このCIS(画像撮像素子11)の長手方向は、両読取窓5、7の直下において、その移動方向と直交する方向(紙面と垂直な方向)に延びている。
【0022】
そして、画像撮像素子11は、本体部3の長手方向(図1(a)の左右方向)に移動可能に本体部3に組み付けられており、画像撮像素子11は、自動搬送読取機能作動時には、自動読取窓7の直下に停止配置された状態で画像を読み取り、一方、静止原稿読取機能作動時には、静止読取窓5の直下で移動しながら画像を読み込んでいく。
【0023】
また、原稿カバー9のうち自動読取窓7に対応する部位には、読み取り用の原稿を自動読取窓7に搬送する自動原稿搬送機構(オートドキュメントフィーダ(ADF))12が設けられている。
【0024】
2.自動原稿搬送機構の構成
原稿トレイ13は、読み取り対象となる原稿が載置されるものであり、この原稿トレイ13の上方側には、図1(a)に示すように、画像読取が完了した原稿が載置される排出トレイ15が設けられている。因みに、複数枚の原稿は、その厚み方向が上下方向に一致するように積層された状態で原稿トレイ13又は排出トレイ15に載置される。
【0025】
また、フィーダ機構17は、原稿トレイ13に載置された複数枚の原稿のうち最下部に位置する原稿から順に自動読取窓7に原稿を搬送する送り手段であり、このフィーダ機構17は、吸入ローラ17A、分離ローラ17B、分離パッド17C及び押圧板17D等から構成されている。
【0026】
すなわち、原稿トレイ13に載置されている原稿は、押圧板17Dにより吸入ローラ17A側に押圧されており、吸入ローラ17Aは、原稿トレイ13の最下部に載置された原稿の下面側に接触して回転することにより原稿を分離ローラ17B側に搬送する。
【0027】
また、分離ローラ17Bは、原稿の下面側に接触して回転することにより原稿に搬送力を付与するローラであり、分離パッド17Cは、原稿を挟んで分離ローラ17Bと反対側から原稿に接触して原稿に搬送抵抗を付与するものである。
【0028】
このため、分離ローラ17Bと接触する原稿のみが分離ローラ17Bから搬出され、分離ローラ17Bと接触する原稿より分離パッド17C側に位置する原稿は、分離パッド17Cから搬送抵抗を受けて搬出されることなく止まるので、原稿トレイ13の最下部に載置された原稿から1枚ずつ自動読取窓7に搬送される。
【0029】
また、第1搬送ローラ19は、分離ローラ17Bにより搬送されてきた原稿を自動読取窓7に搬送するための搬送力を原稿に付与する手段であり、原稿押さえ7Bは、自動読取窓7と所定の隙間を有して対向配置され、搬送されてきた原稿を整える手段である。
【0030】
そして、自動読取窓7を通過した原稿は、第2搬送ローラ21により排出トレイ15側に搬送されるとともに、案内部材23により、その搬送方向が上方側に略180°転向させられた後、排出トレイ15側に排出される。
【0031】
また、排出ローラ25は、案内部材23により案内されて搬送されてきた原稿に接触して回転することにより、原稿を排出トレイ15に排出する手段であり、ピンチローラ25Aは、原稿を排出ローラ25に押し付けながら原稿の移動とともに従動回転するローラである。
【0032】
ところで、排出トレイ15は、排出ローラ25側から排出方向(図1(a)の右側)に延びているとともに、排出ローラ25側からその延び方向中間部に設けられたトレイローラ27が設けられた部位まではカバー29により覆われている。
【0033】
そこで、以下、排出トレイ15のうち排出ローラ25側からトレイローラ27までを上流側排出トレイ15Aと記し、トレイローラ27から排出方向前進端までを下流側排出トレイ15Bと記し、排出トレイ全体を意味するときには排出トレイ15と記す。
【0034】
そして、上流側排出トレイ15Aは、原稿が載置される箇所が略水平に配置されており、その排出ローラ25側端部には、排出トレイ15に載置されている原稿の排出方向後端側を上流側排出トレイ15Aに対して持ち上げる突起部31が設けられている。
【0035】
突起部31は、上流側排出トレイ15Aからカバー29側(上方側)に突出した三角板状の凸部であり、この突起部31の先端(上端)に原稿の下面が接触することにより、既に排出トレイ15に排出された原稿の排出方向後端側が上流側排出トレイ15Aに対して浮き上がった状態となる。
【0036】
このため、次に排出ローラ25から排出される原稿の排出方向前端が、突起部31により持ち上げられた原稿の下面に衝突するので、排出ローラ25から排出された原稿は、その衝突した被衝突側の原稿と排出トレイ15との間、つまり既に排出トレイ15に排出された原稿の最下部に潜り込むように「潜り込み排出」される。なお、「潜り込み排出」の作動原理は、特許文献1と同様であるので、本明細書では詳細説明を省略する。
【0037】
また、トレイローラ27は、排出トレイ15に積層された原稿のうち積層方向下端に位置する原稿に接触して回転することにより、原稿を下流側排出トレイ15B側に移動させる手段であり、このトレイローラ27と排出ローラ25とは、複数の歯車からなる歯車列(図示せず。)を介して同一の電動モータ等の駆動源(図示せず。)から駆動力を得て回転する。
【0038】
なお、駆動源から吸入ローラ17A等に供給される駆動力の伝達経路には、駆動力を断続するクラッチ手段(図示せず。)が設けられ、一方、原稿の搬送経路には、少なくとも原稿の搬送方向後端が第1搬送ローラ19を通過したことを検出するためのセンサ(図示せず。)が設けられている。そして、クラッチ手段の作動を制御する制御部(図示せず。)は、上記センサからの信号等に基づいて駆動力の断続を制御する。
【0039】
また、カバー29には、トレイローラ27に向けて原稿を押圧する押圧プレート33が設けられており、この押圧プレート33は、カバー29に対して揺動可能に組み付けられているとともに、捻りバネ(図示せず。)等のバネ手段の弾性力及び押圧プレート33に作用する重力のうち少なくとも一方の力を利用して原稿をトレイローラ27側に押圧する。
【0040】
3.トレイローラの作動及び構成
本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される。
【0041】
そして、本実施形態では、機械的な制御(構成)により、トレイローラ27への駆動力の供給を上記のごとく制御しており、以下、その制御を実現するための構成を説明する。
トレイローラ27の回転中心には、図1(b)に示すように、駆動力を供給するための駆動軸27Aが設けられており、この駆動軸27Aは、前記歯車列を介して駆動源から駆動力を受けて排出ローラ25の回転と機械的に同期して回転する。そして、駆動軸27Aの径方向外側には、外周面が原稿に接触するとともに、駆動軸27Aに対して回転可能に支持された円筒状のローラ27Bが設けられている。
【0042】
なお、ローラ27Bを駆動軸27Aに対して回転可能とするための軸受(図示せず。)は、ローラ27Bの軸方向両端側に設けられており、この軸受の外輪がローラ27Bの内周側に挿入され、内輪が駆動軸27Aに挿入されている。
【0043】
また、駆動軸27Aの外周面には、径方向外側(ローラ27Bの内周面側)に突出した軸側突起部27Cが設けられ、一方、ローラ27Bの内周面には、径方向内側(駆動軸27Aの外周面側)に突出したローラ側突起部27Dが設けられている。そして、軸側突起部27Cは駆動軸27Aと一体的に回転し、ローラ側突起部27Dはローラ27Bと一体的に回転する。
【0044】
このため、軸側突起部27C及びローラ側突起部27Dが互いに接触し、かつ、ローラ側突起部27Dが軸側突起部27Cに対して回転方向前進側に位置している場合には(図3(b)参照)、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給される。
【0045】
そして、駆動軸27Aに駆動力を伝達する歯車列の減速比は、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転するときのローラ27Bの周速が排出ローラ25の周速より小さくなるように設定されている。
【0046】
一方、軸側突起部27C及びローラ側突起部27Dが互いに離隔している場合には、トレイローラ27への駆動力の供給が停止され、ローラ27Bが駆動軸27Aに対して異なる回転速で回転可能となる。
【0047】
4.自動原稿搬送機構の作動
自動原稿搬送機構12による読み取りが開始されと、駆動源をなす電動モータが回転し始め、吸入ローラ17A、分離ローラ17B、第1搬送ローラ19、第2搬送ローラ21、排出ローラ25及び駆動軸27Aに回転し始める。
【0048】
これにより、原稿トレイ13に載置されている原稿のうち最下部に位置する原稿から順に自動読取窓7に搬送され始め、図3(a)に示すように、その搬送された原稿の搬送方向前端が上流側排出トレイ15Aに到達する。
【0049】
このとき、上流側排出トレイ15A上を移動する原稿の搬送(移動)速度は、排出ローラ25の周速と一致し、一方、搬送された原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達する前までは、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給された状態となる。
【0050】
なお、原稿の搬送方向後端が第1搬送ローラ19を通過すると、前記クラッチ手段により駆動力の伝達が遮断されて、吸入ローラ17A、分離ローラ17B及び第1搬送ローラ19の回転が停止する。
【0051】
そして、搬送された原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達すると、押圧プレート33により原稿がローラ27Bに押圧され、かつ、ローラ27Bは駆動軸27Aに対して回転可能であるので、ローラ27Bは、排出ローラ25によって排出される原稿の搬送(移動)速度、つまり排出ローラ25の周速で移動する原稿とともに従動回転し始める。
【0052】
一方、駆動軸27Aは、ローラ27Bの周速が排出ローラ25の周速より小さくなるように回転しているので、図4(a)及び図4(b)に示すように、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが離間し、トレイローラ27への駆動力の供給が停止されるとともに、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが隙間が次第に大きくなっていく。
【0053】
また、原稿の搬送方向前端側がトレイローラ27を超えて下流側排出トレイ15Bに到達する頃には、原稿の搬送方向後端が自動読取窓7を通過するため、これがセンサ(図示せず。)等の検出手段により検出されると、吸入ローラ17A、分離ローラ17B及び第1搬送ローラ19が再び回転し始め、次の原稿(以下、第2の原稿という。)が自動読取窓7に搬送され始める。
【0054】
そして、原稿の搬送方向前端側が排出ローラ25から離脱すると、図5(a)に示すように、排出ローラ25から原稿に付与される搬送力が消失する。このとき、駆動軸27Aは回転し続けているものの、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが離間しているため、図5(b)に示すように、トレイローラ27への駆動力の供給が停止した状態となり、既に排出トレイ15に排出されている原稿(以下、第1の原稿という。)は移動することなく停止した状態となる。
【0055】
しかし、駆動軸27Aは回転し続けているので、図6(a)及び図6(b)に示すように、軸側突起部27Cが次第にローラ側突起部27Dに近づくとともに、第2の原稿の搬送方向前端が排出ローラ25に次第に近づいていく。
【0056】
そして、第2の原稿の排出方向先端(搬送方向前端)が排出ローラ25に到達すると、図7(a)及び図7(b)に示すように、軸側突起部27Cがローラ側突起部27Dに接触して駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給されるため、第1の原稿にトレイローラ27から搬送力が付与され、第1の原稿全体が下流側排出トレイ15Bの先端側(図7(a)の右端側)に移動する。
【0057】
このとき、第2の原稿の排出方向先端(搬送方向前端)が、第1の原稿の排出方向後端(搬送方向後端)の下面に衝突するので、図8に示すように、第2の原稿は、第1の原稿と上流側排出トレイ15Aとの間に潜り込むように潜り込み排出される。
【0058】
一方、第1の原稿は、その移動方向(搬送方向)前端が下流側排出トレイ15Bの先端側(図8の右端側)に設けられたストッパ15Cに衝突するまで移動し、また、第1の原稿の下面と上流側排出トレイ15Aとの間に潜り込み排出された第2の原稿は、排出ローラ25から搬送力が付与されてトレイローラ27側に移動していく。
【0059】
そして、第2の原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達すると、図9(a)に示すように、ローラ27Bは、第2の原稿の搬送(移動)速度、つまり排出ローラ25の周速で移動する原稿とともに従動回転し始め、図9(b)に示すように、ローラ側突起部27Dが軸側突起部27Cに対して離間していく。
【0060】
そして、第2の原稿の搬送方向前端側が排出ローラ25から離脱すると、図10に示すように、排出ローラ25から第2の原稿に付与される搬送力が消失するとともに、トレイローラ27への駆動力の供給が停止した状態となる。このため、第2の原稿は移動することなく停止した状態となるとともに、第3の原稿(第2の原稿の次に搬送される原稿)の搬送方向前端が排出ローラ25に次第に近づいていく。
【0061】
以上のように、本実施形態では、図3〜図10に示す作動が繰り返されることにより、原稿トレイ13に載置されている原稿が、順次、排出トレイ15に自動的に搬送されていく。
【0062】
5.本実施形態に係る画像読取装置(特に、自動原稿搬送機構)の特徴
本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される(図5〜図7参照)。
【0063】
これにより、本実施形態では、新たに潜り込み排出された原稿(第2の原稿)にトレイローラ27から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されている原稿枚数が増加して既に載置されている原稿の最下部に位置する原稿(第1の原稿)と新たに排出される原稿(第2の原稿)との摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、特許文献1に記載の原稿搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能となる。
【0064】
ところで、潜り込み排出は、第1の原稿の排出方向後端側が排出トレイ15からずれて排出方向上流側に位置し、かつ、第1の原稿の排出方向後端側であって、上流側排出トレイ15Aから排出ローラ25側に突出した部分(以下、この部分を浮き上がり部分という。)の下面に、第2の原稿の排出方向先端が衝突するように、第1の原稿の排出方向後端側を突起部31によって保持することにより、第2の原稿を第1の原稿と排出トレイ15との間に潜り込ませるものである。
【0065】
このため、第2の原稿が第1の原稿の排出方向後端側に衝突する前に、第1の原稿全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうと、第2の原稿を第1の原稿に衝突させることができないので、正常に潜り込み排出をできない。
【0066】
一方、トレイローラ27は、排出トレイ15に積層された原稿の最下部に位置する原稿に接触して回転することにより、原稿を排出方向下流側に移動させるので、第2の原稿がトレイローラ27と接触する前に第1の原稿を大きく移動させると、第1の原稿全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうおそれがある。
【0067】
これに対して、本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿(第1の原稿)の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿(第2の原稿)の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止されるので、既に排出トレイ15に到達した原稿(第1の原稿)全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうことを防止して、潜り込み排出を行うに適切な浮き上がり部分を維持することができる。
【0068】
以上により、本実施形態では、潜り込み排出方式の原稿搬送装置において、既に載置されている原稿枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載の原稿搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能な原稿搬送装置を得ることができる。
【0069】
なお、上記説明からも明らかなように、「既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される」とは、浮き上がり部分が潜り込み排出を行うに適切な長さ及び角度等となるように第1の原稿の位置を保持することを意味する。
【0070】
また、浮き上がり部分が潜り込み排出を行うに適切な長さ及び角度等は、原稿の紙質、搬送速度及び排出トレイ15の水平面に対する角度等によって異なり、具体的な値は、試験により決定される値である。
【0071】
また、本実施形態では、駆動軸27Aに設けた軸側突起部27Cとローラ27Bに設けたローラ側突起部27Dとを係止させる場合と離間させる場合とをトレイローラ27の周速と排出ローラ25の周速との差を利用して制御することにより、トレイローラ27への駆動力の供給を制御するので、簡便な構成にて確実に正常な潜り込み排出を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、トレイローラ27に向けて原稿を押圧する押圧プレート33を備えているので、トレイローラ27と原稿との接触面圧を上昇させることができるので、トレイローラ27を効果的に作動させることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明に係るシート搬送装置及び自動シート搬送機構を画像読取装置(スキャナ)用の自動搬送読取装置(ADF読取装置)に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、その他のシート搬送装置及び自動シート搬送機構にも適用できる。
【0074】
また、上述の実施形態では、機械的な制御(構成)により、トレイローラ27への駆動力の供給を上記のごとく制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電磁クラッチ等の電気的制御により駆動力の伝達を制御してもよい。
【0075】
なお、この場合には、トレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速より小さくする必然性はなく、トレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速より大きくする、又はトレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速と同一としてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態に係る画像読取装置1は、原稿の表面側の画像を読み込むのみであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば原稿の表面及び表裏両面を読み込むことができるとともに、読込形態に応じて潜り込み排出をする場合としない場合とを自動的に切り替えることが可能な画像読取装置にも適用できる。
【0077】
また、上述の実施形態では、突起部31により第1の原稿の搬送方向後端側を上流側排出トレイ15Aから持ち上げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上流側排出トレイ15Aの水平面に対する角度及び排出ローラ25から排出される原稿の排出方向を適切な角度とするとともに、排出トレイ15と第1の原稿との接触面積を小さくすることにより、突起部31を廃止することができ得る。
【0078】
また、上述の実施形態では、原稿トレイ13から排出トレイ15に至る原稿の搬送経路中、いずれの部位に原稿が存在するかを物理的に検出するセンサ等の検出手段を設けてクラッチ手段等の作動を制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば原稿の搬送を開始した時からの経過時間を計時する計時手段を検出手段として採用してもよい。
【0079】
つまり、(a)計時手段による経過時間のみに基づいてクラッチ手段等の作動を制御する場合、又は(b)物理的に検出する検出手段からの信号及び経過時間に基づいてクラッチ手段等の作動を制御する場合であってもよい。
【0080】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述の実施形態においては、トレイローラ27への駆動力の供給の停止を既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでとしたが、実質的に問題にならない範囲であれば「離脱したとき」及び「到達するとき」としたタイミングは多少の幅をもっていてもよい。
【0081】
具体的には、トレイローラ27への駆動の停止は、原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱する少し前であってもよいし、原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達した少し後であってもよい。なお、上記の「多少の幅」とは、例えば「離脱したとき」及び「到達するとき」のタイミングに対して原稿の搬送量で約±15mm程度以下をいう。
【符号の説明】
【0082】
1…画像読取装置、3…本体部、5…静止読取窓、5A…プラテン、
7…自動読取窓、7B…原稿押さえ、9…原稿カバー、11…画像撮像素子、
12…自動原稿搬送機構、13…原稿トレイ、15…排出トレイ、
15A…上流側排出トレイ、15B…下流側排出トレイ、15C…ストッパ、
17…フィーダ機構、17A…吸入ローラ、17B…分離ローラ、
17C…分離パッド、17D…押圧板、19…第1搬送ローラ、
21…第2搬送ローラ、23…案内部材、25…排出ローラ、
25A…ピンチローラ、27…トレイローラ、27A…駆動軸、27B…ローラ、
27C…軸側突起部、27D…ローラ側突起部、29…カバー、31…突起部、
33…押圧プレート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、既に排出トレイに載置されているシートと排出トレイとの間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置、及びこれを用いた自動シート搬送機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のシート搬送装置では、既に排出トレイに排出されて積層状態で載置されている1枚以上シートのうち積層方向下端に位置するシートの下側に、新たに排出されるシートを潜り込ませるように排出する潜り込み排出手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−231889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排出されるシートを潜り込み排出させる場合、既に載置されているシート枚数が増加すると、既に載置されているシートと新たに排出されるシートとの摩擦抵抗が大きくなり、正常な潜り込み排出をできなくなる可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、潜り込み排出方式のシート搬送装置において、既に載置されているシート枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、正常な潜り込み排出が可能なシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、排出されたシートが積層された状態で載置される排出トレイ(15)を備え、既に排出トレイ(15)に載置されているシートと排出トレイ(15)との間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置であって、回転しながらシートに接触することによりシートに搬送力を付与するとともに、シートを排出トレイ(15)側に排出する排出ローラ(25)と、排出トレイ(15)に設けられ、積層されたシートのうち排出トレイ(15)側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるトレイローラ(27)とを備え、少なくとも、既に排出トレイ(15)に到達したシートの排出方向後端が排出ローラ(25)から離脱したときから、次に、排出ローラ(25)から排出されるシートの排出方向先端が排出ローラ(25)に到達するときまでは、トレイローラ(27)への駆動力の供給が停止されることを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明では、新たに潜り込み排出されたシートにトレイローラ(27)から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されているシート枚数が増加して既に載置されているシートと新たに排出されるシートとの摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装置に比べて、正常な潜り込み排出が可能となる。
【0008】
ところで、潜り込み排出は、排出トレイ(15)に載置されているシート(以下、排出済シートという。)の排出方向後端側が排出トレイ(15)からずれて排出方向上流側に位置し、かつ、排出済シートの排出方向後端側の下面に、次に、排出ローラ(25)から排出されるシート(以下、排出前シートという。)の排出方向先端が衝突するように、排出済シートの排出方向後端側を保持することにより、次に排出されるシートを排出済シートと排出トレイ(15)との間に潜り込ませるものである。
【0009】
このため、排出前シートが排出済シートの排出方向後端側に衝突する前に、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうと、排出前シートを排出済シートに衝突させることができないので、正常に潜り込み排出をできない。
【0010】
一方、トレイローラ(27)は、積層されたシートのうち排出トレイ(15)側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるので、排出前シートがトレイローラ(27)と接触する前に排出済シートを大きく移動させると、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうおそれがある。
【0011】
これに対して、本発明では、少なくとも、既に排出トレイ(15)に到達したシートの排出方向後端が排出ローラ(25)から離脱したときから、次に、排出ローラ(25)から排出されるシートの排出方向先端が排出ローラ(25)に到達するときまでは、トレイローラ(27)への駆動力の供給が停止されるので、排出済シート全体が排出トレイ(15)に位置するように移動してしまうことを防止できる。
【0012】
以上により、本発明では、潜り込み排出方式のシート搬送装置において、既に載置されているシート枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載のシート搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能なシート搬送装置を得ることができる。
【0013】
なお、「排出済シートが積層された状態で載置される」とは、排出済シートが2枚以上である場合のみならず、排出済シートが1枚である場合も含む意味であり、「既に排出トレイ(15)に到達したシート」とは、少なくとも排出方向先端側が排出トレイ(15)に到達していることを意味する。
【0014】
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12(画像読取装置1)の中央断面図であり、(b)は図1(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図2】本発明の実施形態に係る画像読取装置1の斜視図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図3(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図4(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図5】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図5(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図6】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図6(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図7(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図8】本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図である。
【図9】(a)は本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図であり、(b)は図9(a)に示すトレイローラ27の拡大図である。
【図10】本発明の実施形態に係る自動搬送読取装置12の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態は、画像読取装置(スキャナ)用の自動搬送読取装置(ADF読取装置)に本発明に係るシート搬送装置及び自動シート搬送機構を適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【0017】
なお、自動搬送読取装置(ADF読取装置)とは、原稿を自動的に搬送しながら原稿に記載された画像を読み取る装置であり、本実形態に係る画像読取装置は、自動搬送読取装置を用いた自動読取機能、及び静止載置された原稿に記載された画像を読み取る静止原稿読取機能(フラットベッド読取機能)を兼ね備えた画像読取装置である。
【0018】
(第1実施形態)
1.画像読取装置の概略構成
画像読取装置1の本体部3には、図1(a)に示すように、静止原稿読取機能用の画像読取窓(以下、静止読取窓という。)5、及び自動搬送読取機能用の画像読取窓(以下、自動読取窓という。)7が設けられており、両読取窓5、7は、ガラスやアクリル等の透明なプラテン5A、7Aにて閉塞されている。
【0019】
また、本体部3の上面側には、図2に示すように、両読取窓5、7を覆う原稿カバー9が揺動可能に組み付けられており、静止読取窓5にて原稿読取を行う場合には、この原稿カバー9を手動操作にて上方側に開いて原稿を静止読取窓5に載置する。
【0020】
一方、本体部3内には、図1(a)に示すように、原稿に照射されて反射した光を受光し、その受光した光に基づいて電気信号を発する画像撮像素子11が配設されており、画像読取装置1は、画像撮像素子11を介して原稿に記載された文字等の画像を電気信号に変換して画像を読み取っていく。
【0021】
因みに、本実施形態では、画像撮像素子11として、CIS(Contact Image Sensor)を用いており、このCIS(画像撮像素子11)の長手方向は、両読取窓5、7の直下において、その移動方向と直交する方向(紙面と垂直な方向)に延びている。
【0022】
そして、画像撮像素子11は、本体部3の長手方向(図1(a)の左右方向)に移動可能に本体部3に組み付けられており、画像撮像素子11は、自動搬送読取機能作動時には、自動読取窓7の直下に停止配置された状態で画像を読み取り、一方、静止原稿読取機能作動時には、静止読取窓5の直下で移動しながら画像を読み込んでいく。
【0023】
また、原稿カバー9のうち自動読取窓7に対応する部位には、読み取り用の原稿を自動読取窓7に搬送する自動原稿搬送機構(オートドキュメントフィーダ(ADF))12が設けられている。
【0024】
2.自動原稿搬送機構の構成
原稿トレイ13は、読み取り対象となる原稿が載置されるものであり、この原稿トレイ13の上方側には、図1(a)に示すように、画像読取が完了した原稿が載置される排出トレイ15が設けられている。因みに、複数枚の原稿は、その厚み方向が上下方向に一致するように積層された状態で原稿トレイ13又は排出トレイ15に載置される。
【0025】
また、フィーダ機構17は、原稿トレイ13に載置された複数枚の原稿のうち最下部に位置する原稿から順に自動読取窓7に原稿を搬送する送り手段であり、このフィーダ機構17は、吸入ローラ17A、分離ローラ17B、分離パッド17C及び押圧板17D等から構成されている。
【0026】
すなわち、原稿トレイ13に載置されている原稿は、押圧板17Dにより吸入ローラ17A側に押圧されており、吸入ローラ17Aは、原稿トレイ13の最下部に載置された原稿の下面側に接触して回転することにより原稿を分離ローラ17B側に搬送する。
【0027】
また、分離ローラ17Bは、原稿の下面側に接触して回転することにより原稿に搬送力を付与するローラであり、分離パッド17Cは、原稿を挟んで分離ローラ17Bと反対側から原稿に接触して原稿に搬送抵抗を付与するものである。
【0028】
このため、分離ローラ17Bと接触する原稿のみが分離ローラ17Bから搬出され、分離ローラ17Bと接触する原稿より分離パッド17C側に位置する原稿は、分離パッド17Cから搬送抵抗を受けて搬出されることなく止まるので、原稿トレイ13の最下部に載置された原稿から1枚ずつ自動読取窓7に搬送される。
【0029】
また、第1搬送ローラ19は、分離ローラ17Bにより搬送されてきた原稿を自動読取窓7に搬送するための搬送力を原稿に付与する手段であり、原稿押さえ7Bは、自動読取窓7と所定の隙間を有して対向配置され、搬送されてきた原稿を整える手段である。
【0030】
そして、自動読取窓7を通過した原稿は、第2搬送ローラ21により排出トレイ15側に搬送されるとともに、案内部材23により、その搬送方向が上方側に略180°転向させられた後、排出トレイ15側に排出される。
【0031】
また、排出ローラ25は、案内部材23により案内されて搬送されてきた原稿に接触して回転することにより、原稿を排出トレイ15に排出する手段であり、ピンチローラ25Aは、原稿を排出ローラ25に押し付けながら原稿の移動とともに従動回転するローラである。
【0032】
ところで、排出トレイ15は、排出ローラ25側から排出方向(図1(a)の右側)に延びているとともに、排出ローラ25側からその延び方向中間部に設けられたトレイローラ27が設けられた部位まではカバー29により覆われている。
【0033】
そこで、以下、排出トレイ15のうち排出ローラ25側からトレイローラ27までを上流側排出トレイ15Aと記し、トレイローラ27から排出方向前進端までを下流側排出トレイ15Bと記し、排出トレイ全体を意味するときには排出トレイ15と記す。
【0034】
そして、上流側排出トレイ15Aは、原稿が載置される箇所が略水平に配置されており、その排出ローラ25側端部には、排出トレイ15に載置されている原稿の排出方向後端側を上流側排出トレイ15Aに対して持ち上げる突起部31が設けられている。
【0035】
突起部31は、上流側排出トレイ15Aからカバー29側(上方側)に突出した三角板状の凸部であり、この突起部31の先端(上端)に原稿の下面が接触することにより、既に排出トレイ15に排出された原稿の排出方向後端側が上流側排出トレイ15Aに対して浮き上がった状態となる。
【0036】
このため、次に排出ローラ25から排出される原稿の排出方向前端が、突起部31により持ち上げられた原稿の下面に衝突するので、排出ローラ25から排出された原稿は、その衝突した被衝突側の原稿と排出トレイ15との間、つまり既に排出トレイ15に排出された原稿の最下部に潜り込むように「潜り込み排出」される。なお、「潜り込み排出」の作動原理は、特許文献1と同様であるので、本明細書では詳細説明を省略する。
【0037】
また、トレイローラ27は、排出トレイ15に積層された原稿のうち積層方向下端に位置する原稿に接触して回転することにより、原稿を下流側排出トレイ15B側に移動させる手段であり、このトレイローラ27と排出ローラ25とは、複数の歯車からなる歯車列(図示せず。)を介して同一の電動モータ等の駆動源(図示せず。)から駆動力を得て回転する。
【0038】
なお、駆動源から吸入ローラ17A等に供給される駆動力の伝達経路には、駆動力を断続するクラッチ手段(図示せず。)が設けられ、一方、原稿の搬送経路には、少なくとも原稿の搬送方向後端が第1搬送ローラ19を通過したことを検出するためのセンサ(図示せず。)が設けられている。そして、クラッチ手段の作動を制御する制御部(図示せず。)は、上記センサからの信号等に基づいて駆動力の断続を制御する。
【0039】
また、カバー29には、トレイローラ27に向けて原稿を押圧する押圧プレート33が設けられており、この押圧プレート33は、カバー29に対して揺動可能に組み付けられているとともに、捻りバネ(図示せず。)等のバネ手段の弾性力及び押圧プレート33に作用する重力のうち少なくとも一方の力を利用して原稿をトレイローラ27側に押圧する。
【0040】
3.トレイローラの作動及び構成
本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される。
【0041】
そして、本実施形態では、機械的な制御(構成)により、トレイローラ27への駆動力の供給を上記のごとく制御しており、以下、その制御を実現するための構成を説明する。
トレイローラ27の回転中心には、図1(b)に示すように、駆動力を供給するための駆動軸27Aが設けられており、この駆動軸27Aは、前記歯車列を介して駆動源から駆動力を受けて排出ローラ25の回転と機械的に同期して回転する。そして、駆動軸27Aの径方向外側には、外周面が原稿に接触するとともに、駆動軸27Aに対して回転可能に支持された円筒状のローラ27Bが設けられている。
【0042】
なお、ローラ27Bを駆動軸27Aに対して回転可能とするための軸受(図示せず。)は、ローラ27Bの軸方向両端側に設けられており、この軸受の外輪がローラ27Bの内周側に挿入され、内輪が駆動軸27Aに挿入されている。
【0043】
また、駆動軸27Aの外周面には、径方向外側(ローラ27Bの内周面側)に突出した軸側突起部27Cが設けられ、一方、ローラ27Bの内周面には、径方向内側(駆動軸27Aの外周面側)に突出したローラ側突起部27Dが設けられている。そして、軸側突起部27Cは駆動軸27Aと一体的に回転し、ローラ側突起部27Dはローラ27Bと一体的に回転する。
【0044】
このため、軸側突起部27C及びローラ側突起部27Dが互いに接触し、かつ、ローラ側突起部27Dが軸側突起部27Cに対して回転方向前進側に位置している場合には(図3(b)参照)、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給される。
【0045】
そして、駆動軸27Aに駆動力を伝達する歯車列の減速比は、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転するときのローラ27Bの周速が排出ローラ25の周速より小さくなるように設定されている。
【0046】
一方、軸側突起部27C及びローラ側突起部27Dが互いに離隔している場合には、トレイローラ27への駆動力の供給が停止され、ローラ27Bが駆動軸27Aに対して異なる回転速で回転可能となる。
【0047】
4.自動原稿搬送機構の作動
自動原稿搬送機構12による読み取りが開始されと、駆動源をなす電動モータが回転し始め、吸入ローラ17A、分離ローラ17B、第1搬送ローラ19、第2搬送ローラ21、排出ローラ25及び駆動軸27Aに回転し始める。
【0048】
これにより、原稿トレイ13に載置されている原稿のうち最下部に位置する原稿から順に自動読取窓7に搬送され始め、図3(a)に示すように、その搬送された原稿の搬送方向前端が上流側排出トレイ15Aに到達する。
【0049】
このとき、上流側排出トレイ15A上を移動する原稿の搬送(移動)速度は、排出ローラ25の周速と一致し、一方、搬送された原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達する前までは、駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給された状態となる。
【0050】
なお、原稿の搬送方向後端が第1搬送ローラ19を通過すると、前記クラッチ手段により駆動力の伝達が遮断されて、吸入ローラ17A、分離ローラ17B及び第1搬送ローラ19の回転が停止する。
【0051】
そして、搬送された原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達すると、押圧プレート33により原稿がローラ27Bに押圧され、かつ、ローラ27Bは駆動軸27Aに対して回転可能であるので、ローラ27Bは、排出ローラ25によって排出される原稿の搬送(移動)速度、つまり排出ローラ25の周速で移動する原稿とともに従動回転し始める。
【0052】
一方、駆動軸27Aは、ローラ27Bの周速が排出ローラ25の周速より小さくなるように回転しているので、図4(a)及び図4(b)に示すように、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが離間し、トレイローラ27への駆動力の供給が停止されるとともに、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが隙間が次第に大きくなっていく。
【0053】
また、原稿の搬送方向前端側がトレイローラ27を超えて下流側排出トレイ15Bに到達する頃には、原稿の搬送方向後端が自動読取窓7を通過するため、これがセンサ(図示せず。)等の検出手段により検出されると、吸入ローラ17A、分離ローラ17B及び第1搬送ローラ19が再び回転し始め、次の原稿(以下、第2の原稿という。)が自動読取窓7に搬送され始める。
【0054】
そして、原稿の搬送方向前端側が排出ローラ25から離脱すると、図5(a)に示すように、排出ローラ25から原稿に付与される搬送力が消失する。このとき、駆動軸27Aは回転し続けているものの、軸側突起部27Cとローラ側突起部27Dとが離間しているため、図5(b)に示すように、トレイローラ27への駆動力の供給が停止した状態となり、既に排出トレイ15に排出されている原稿(以下、第1の原稿という。)は移動することなく停止した状態となる。
【0055】
しかし、駆動軸27Aは回転し続けているので、図6(a)及び図6(b)に示すように、軸側突起部27Cが次第にローラ側突起部27Dに近づくとともに、第2の原稿の搬送方向前端が排出ローラ25に次第に近づいていく。
【0056】
そして、第2の原稿の排出方向先端(搬送方向前端)が排出ローラ25に到達すると、図7(a)及び図7(b)に示すように、軸側突起部27Cがローラ側突起部27Dに接触して駆動軸27Aとローラ27Bとが一体に回転してトレイローラ27に駆動力が供給されるため、第1の原稿にトレイローラ27から搬送力が付与され、第1の原稿全体が下流側排出トレイ15Bの先端側(図7(a)の右端側)に移動する。
【0057】
このとき、第2の原稿の排出方向先端(搬送方向前端)が、第1の原稿の排出方向後端(搬送方向後端)の下面に衝突するので、図8に示すように、第2の原稿は、第1の原稿と上流側排出トレイ15Aとの間に潜り込むように潜り込み排出される。
【0058】
一方、第1の原稿は、その移動方向(搬送方向)前端が下流側排出トレイ15Bの先端側(図8の右端側)に設けられたストッパ15Cに衝突するまで移動し、また、第1の原稿の下面と上流側排出トレイ15Aとの間に潜り込み排出された第2の原稿は、排出ローラ25から搬送力が付与されてトレイローラ27側に移動していく。
【0059】
そして、第2の原稿の搬送方向前端がトレイローラ27に到達すると、図9(a)に示すように、ローラ27Bは、第2の原稿の搬送(移動)速度、つまり排出ローラ25の周速で移動する原稿とともに従動回転し始め、図9(b)に示すように、ローラ側突起部27Dが軸側突起部27Cに対して離間していく。
【0060】
そして、第2の原稿の搬送方向前端側が排出ローラ25から離脱すると、図10に示すように、排出ローラ25から第2の原稿に付与される搬送力が消失するとともに、トレイローラ27への駆動力の供給が停止した状態となる。このため、第2の原稿は移動することなく停止した状態となるとともに、第3の原稿(第2の原稿の次に搬送される原稿)の搬送方向前端が排出ローラ25に次第に近づいていく。
【0061】
以上のように、本実施形態では、図3〜図10に示す作動が繰り返されることにより、原稿トレイ13に載置されている原稿が、順次、排出トレイ15に自動的に搬送されていく。
【0062】
5.本実施形態に係る画像読取装置(特に、自動原稿搬送機構)の特徴
本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される(図5〜図7参照)。
【0063】
これにより、本実施形態では、新たに潜り込み排出された原稿(第2の原稿)にトレイローラ27から移動力(搬送力)が付与されるので、既に載置されている原稿枚数が増加して既に載置されている原稿の最下部に位置する原稿(第1の原稿)と新たに排出される原稿(第2の原稿)との摩擦抵抗が大きくなった場合であっても、特許文献1に記載の原稿搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能となる。
【0064】
ところで、潜り込み排出は、第1の原稿の排出方向後端側が排出トレイ15からずれて排出方向上流側に位置し、かつ、第1の原稿の排出方向後端側であって、上流側排出トレイ15Aから排出ローラ25側に突出した部分(以下、この部分を浮き上がり部分という。)の下面に、第2の原稿の排出方向先端が衝突するように、第1の原稿の排出方向後端側を突起部31によって保持することにより、第2の原稿を第1の原稿と排出トレイ15との間に潜り込ませるものである。
【0065】
このため、第2の原稿が第1の原稿の排出方向後端側に衝突する前に、第1の原稿全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうと、第2の原稿を第1の原稿に衝突させることができないので、正常に潜り込み排出をできない。
【0066】
一方、トレイローラ27は、排出トレイ15に積層された原稿の最下部に位置する原稿に接触して回転することにより、原稿を排出方向下流側に移動させるので、第2の原稿がトレイローラ27と接触する前に第1の原稿を大きく移動させると、第1の原稿全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうおそれがある。
【0067】
これに対して、本実施形態では、少なくとも、既に排出トレイ15に到達した原稿(第1の原稿)の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿(第2の原稿)の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止されるので、既に排出トレイ15に到達した原稿(第1の原稿)全体が排出トレイ15に位置するように移動してしまうことを防止して、潜り込み排出を行うに適切な浮き上がり部分を維持することができる。
【0068】
以上により、本実施形態では、潜り込み排出方式の原稿搬送装置において、既に載置されている原稿枚数が増加した場合であっても、特許文献1に記載の原稿搬送装に比べて、正常な潜り込み排出が可能な原稿搬送装置を得ることができる。
【0069】
なお、上記説明からも明らかなように、「既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでは、トレイローラ27への駆動力の供給が停止される」とは、浮き上がり部分が潜り込み排出を行うに適切な長さ及び角度等となるように第1の原稿の位置を保持することを意味する。
【0070】
また、浮き上がり部分が潜り込み排出を行うに適切な長さ及び角度等は、原稿の紙質、搬送速度及び排出トレイ15の水平面に対する角度等によって異なり、具体的な値は、試験により決定される値である。
【0071】
また、本実施形態では、駆動軸27Aに設けた軸側突起部27Cとローラ27Bに設けたローラ側突起部27Dとを係止させる場合と離間させる場合とをトレイローラ27の周速と排出ローラ25の周速との差を利用して制御することにより、トレイローラ27への駆動力の供給を制御するので、簡便な構成にて確実に正常な潜り込み排出を行うことができる。
【0072】
また、本実施形態では、トレイローラ27に向けて原稿を押圧する押圧プレート33を備えているので、トレイローラ27と原稿との接触面圧を上昇させることができるので、トレイローラ27を効果的に作動させることができる。
【0073】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、本発明に係るシート搬送装置及び自動シート搬送機構を画像読取装置(スキャナ)用の自動搬送読取装置(ADF読取装置)に適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、その他のシート搬送装置及び自動シート搬送機構にも適用できる。
【0074】
また、上述の実施形態では、機械的な制御(構成)により、トレイローラ27への駆動力の供給を上記のごとく制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば電磁クラッチ等の電気的制御により駆動力の伝達を制御してもよい。
【0075】
なお、この場合には、トレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速より小さくする必然性はなく、トレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速より大きくする、又はトレイローラ27の周速を排出ローラ25の周速と同一としてもよい。
【0076】
また、上述の実施形態に係る画像読取装置1は、原稿の表面側の画像を読み込むのみであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば原稿の表面及び表裏両面を読み込むことができるとともに、読込形態に応じて潜り込み排出をする場合としない場合とを自動的に切り替えることが可能な画像読取装置にも適用できる。
【0077】
また、上述の実施形態では、突起部31により第1の原稿の搬送方向後端側を上流側排出トレイ15Aから持ち上げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上流側排出トレイ15Aの水平面に対する角度及び排出ローラ25から排出される原稿の排出方向を適切な角度とするとともに、排出トレイ15と第1の原稿との接触面積を小さくすることにより、突起部31を廃止することができ得る。
【0078】
また、上述の実施形態では、原稿トレイ13から排出トレイ15に至る原稿の搬送経路中、いずれの部位に原稿が存在するかを物理的に検出するセンサ等の検出手段を設けてクラッチ手段等の作動を制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば原稿の搬送を開始した時からの経過時間を計時する計時手段を検出手段として採用してもよい。
【0079】
つまり、(a)計時手段による経過時間のみに基づいてクラッチ手段等の作動を制御する場合、又は(b)物理的に検出する検出手段からの信号及び経過時間に基づいてクラッチ手段等の作動を制御する場合であってもよい。
【0080】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上述の実施形態においては、トレイローラ27への駆動力の供給の停止を既に排出トレイ15に到達した原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱したときから、次に、排出ローラ25から排出される原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達するときまでとしたが、実質的に問題にならない範囲であれば「離脱したとき」及び「到達するとき」としたタイミングは多少の幅をもっていてもよい。
【0081】
具体的には、トレイローラ27への駆動の停止は、原稿の排出方向後端が排出ローラ25から離脱する少し前であってもよいし、原稿の排出方向先端が排出ローラ25に到達した少し後であってもよい。なお、上記の「多少の幅」とは、例えば「離脱したとき」及び「到達するとき」のタイミングに対して原稿の搬送量で約±15mm程度以下をいう。
【符号の説明】
【0082】
1…画像読取装置、3…本体部、5…静止読取窓、5A…プラテン、
7…自動読取窓、7B…原稿押さえ、9…原稿カバー、11…画像撮像素子、
12…自動原稿搬送機構、13…原稿トレイ、15…排出トレイ、
15A…上流側排出トレイ、15B…下流側排出トレイ、15C…ストッパ、
17…フィーダ機構、17A…吸入ローラ、17B…分離ローラ、
17C…分離パッド、17D…押圧板、19…第1搬送ローラ、
21…第2搬送ローラ、23…案内部材、25…排出ローラ、
25A…ピンチローラ、27…トレイローラ、27A…駆動軸、27B…ローラ、
27C…軸側突起部、27D…ローラ側突起部、29…カバー、31…突起部、
33…押圧プレート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出されたシートが積層された状態で載置される排出トレイを備え、既に前記排出トレイに載置されているシートと前記排出トレイとの間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置であって、
回転しながらシートに接触することによりシートに搬送力を付与するとともに、シートを前記排出トレイ側に排出する排出ローラと、
前記排出トレイに設けられ、積層されたシートのうち前記排出トレイ側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるトレイローラとを備え、
少なくとも、既に前記排出トレイに到達したシートの排出方向後端が前記排出ローラから離脱したときから、次に、前記排出ローラから排出されるシートの排出方向先端が前記排出ローラに到達するときまでは、前記トレイローラへの駆動力の供給が停止されることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記トレイローラは、
駆動力を受けて前記排出ローラの回転と同期して回転する駆動軸、
シートに接触するとともに、前記駆動軸に対して回転可能なローラ、
前記駆動軸と一体的に回転し、径方向に突出した軸側突起部、及び
前記ローラと一体的に回転し、径方向に突出したローラ側突起部を有して構成されており、
前記軸側突起部及び前記ローラ側突起部が互いに接触している場合には、前記駆動軸と前記ローラとが一体に回転して前記トレイローラに駆動力が供給され、
一方、前記軸側突起部及び前記ローラ側突起部が互いに離隔している場合には、前記トレイローラへの駆動力の供給が停止され、前記ローラが前記駆動軸に対して異なる回転速で回転可能となり、
さらに、前記駆動軸と前記ローラとが一体に回転するときの前記ローラの周速は、前記排出ローラの周速より小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記トレイローラに向けてシートを押圧する押圧手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記排出トレイのうち前記排出ローラ側には、前記排出トレイに載置されているシートの排出方向後端側を前記排出トレイに対して持ち上げるとともにその持ち上げられたシートの下面に次に排出されるシートを衝突させて既に前記排出トレイに載置されているシートと前記排出トレイとの間に潜り込ませるための持ち上げ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
読み取り対象となる画像が形成されているシートが載置されるシートトレイと、
前記シートトレイに載置されているシートを、読取部を通過させて前記排出トレイまで搬送する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート搬送装置と
を備えることを特徴とする自動シート搬送機構。
【請求項1】
排出されたシートが積層された状態で載置される排出トレイを備え、既に前記排出トレイに載置されているシートと前記排出トレイとの間に次のシートを潜り込ませながら排出する潜り込み排出が可能なシート搬送装置であって、
回転しながらシートに接触することによりシートに搬送力を付与するとともに、シートを前記排出トレイ側に排出する排出ローラと、
前記排出トレイに設けられ、積層されたシートのうち前記排出トレイ側の積層方向端部に位置するシートに接触して回転することにより、シートを排出方向下流側に移動させるトレイローラとを備え、
少なくとも、既に前記排出トレイに到達したシートの排出方向後端が前記排出ローラから離脱したときから、次に、前記排出ローラから排出されるシートの排出方向先端が前記排出ローラに到達するときまでは、前記トレイローラへの駆動力の供給が停止されることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記トレイローラは、
駆動力を受けて前記排出ローラの回転と同期して回転する駆動軸、
シートに接触するとともに、前記駆動軸に対して回転可能なローラ、
前記駆動軸と一体的に回転し、径方向に突出した軸側突起部、及び
前記ローラと一体的に回転し、径方向に突出したローラ側突起部を有して構成されており、
前記軸側突起部及び前記ローラ側突起部が互いに接触している場合には、前記駆動軸と前記ローラとが一体に回転して前記トレイローラに駆動力が供給され、
一方、前記軸側突起部及び前記ローラ側突起部が互いに離隔している場合には、前記トレイローラへの駆動力の供給が停止され、前記ローラが前記駆動軸に対して異なる回転速で回転可能となり、
さらに、前記駆動軸と前記ローラとが一体に回転するときの前記ローラの周速は、前記排出ローラの周速より小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記トレイローラに向けてシートを押圧する押圧手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記排出トレイのうち前記排出ローラ側には、前記排出トレイに載置されているシートの排出方向後端側を前記排出トレイに対して持ち上げるとともにその持ち上げられたシートの下面に次に排出されるシートを衝突させて既に前記排出トレイに載置されているシートと前記排出トレイとの間に潜り込ませるための持ち上げ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
読み取り対象となる画像が形成されているシートが載置されるシートトレイと、
前記シートトレイに載置されているシートを、読取部を通過させて前記排出トレイまで搬送する請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシート搬送装置と
を備えることを特徴とする自動シート搬送機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−201673(P2011−201673A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71865(P2010−71865)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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