説明

シート材、及びシート材の製造方法

【課題】コーティング層の優れた特性を維持しつつ、その上に印刷や再コーティングなどの後加工を行うことができ、静電気の帯電を低減することができるシート材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂フィルム、紙、金属箔などのシート状基材2の表面に、塗布した樹脂を硬化させた樹脂コーティング層3を有し、該樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより形成した活性化層4を有し、該活性化層4の上に、再度樹脂をコーティングして硬化させた上層樹脂コーティング層5を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、紙、アルミホイルなどのシート状基材の表面に、樹脂コーティング層を形成したシート材、及びシート材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面を光沢処理したシート材は、高い装飾性を備え、また、手軽に使用することができ、しかも安価であるため、例えば、物品の表面を装飾するフィルムシートとして広く使用されている。この様な装飾用シート材としては、シート状基材の表面に、樹脂コーティング層を形成したシート材が広く使用されており、例えば、ポリプロピレンフィルムからなるベースフィルム(基材)の片面にコロナ放電処理を施し、この処理面にアンカーコートを施してからポリエチレン樹脂をラミネートし、このラミネート面にエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂をコーティングしたフィルムシートが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−235810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したフィルムシートのように、従来のシート材は、最終的な樹脂コーティングを施す前において、先ずは基材の表面にアンカーコートを施してから樹脂をラミネートしてその上に樹脂をコーティングするなど、最終的に施すコーティングの前に複数種類の下地処理を行うことが要求されていた。この下地処理を怠ると、表面とコーティング樹脂との相性が悪くて樹脂が塗布できなかったり、塗布しても接合力が不足して後で剥離したり、あるいは接着剤を塗布しても接着剤の接着力が発揮できないなどの不都合が生じるので、省略することができなかった。
【0005】
また、基材の表面に、紫外線硬化樹脂を塗布して紫外線照射することによりコーティング層を形成(UVコート)すると、耐久性に優れた丈夫な表面となるので、様々な用途に使用できるという利点がある。しかし、その一方で、コーティング層の上に印刷したり、再度樹脂をコーティングするなどの後加工を行う場合に、丈夫な円滑面が逆に後加工を困難にしてしまう欠点もあった。そして、これを解決するために紫外線硬化樹脂に大量の助剤を添加してコーティング層の表面の状態を改質することが不可欠となっていた。ところが、助剤の添加により、元々のコーティング層の優れた特性がかえって損なわれてしまう不都合があった。また、前記したUVコートでは、コーティング層に静電気が帯電し易くなる欠点があった。
【0006】
本発明は、前記した事情に鑑み提案されたもので、その目的は、コーティング層の優れた特性を維持しつつ、その上に印刷や再コーティングなどの後加工を行うことができ、静電気の帯電を低減することができるシート材、及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記した目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、樹脂フィルム、紙、金属箔などのシート状基材の表面に、塗布した樹脂を硬化させた樹脂コーティング層を有し、該樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより形成した活性化層を有することを特徴とするシート材である。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記樹脂が光硬化樹脂であり、この樹脂を硬化させた樹脂コーティング層の表面に、微細凹凸構造のホログラムが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート材である。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記した活性化層の表面に、印刷により形成された印刷装飾層を有することを特徴とする請求項2に記載のシート材である。
【0010】
請求項4に記載のものは、前記した活性化層の表面に、再度樹脂を塗布して硬化させた上層樹脂コーティング層を有することを特徴とする請求項3に記載のシート材である。
【0011】
請求項5に記載のものは、前記した活性化層の表面に、接着剤を塗布して形成した接着剤層を有することを特徴とする請求項3に記載のシート材である。
【0012】
請求項6に記載のものは、樹脂フィルム、紙、金属箔などのシート状基材の表面に、光硬化性樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
塗布された光硬化性樹脂に光を照射して硬化させる光照射工程と、
この光照射工程により硬化した樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより活性化層を形成するコロナ放電処理工程と、
を順次経て製造することを特徴とするシート材の製造方法である。
【0013】
請求項7に記載のものは、前記した光照射工程において、表面に微細凹凸構造のホログラムが形成された透光性フィルムを塗布面に重ね合わせ、この重合状態で光を照射して光硬化性樹脂を硬化させると共に前記微細凹凸構造を転写し、
この光照射工程の後、コロナ放電処理工程の前に透光性フィルムを樹脂コーティング層の表面から剥離する剥離工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のシート材の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シート状基材の表面に樹脂コーティング層を有し、該樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより形成した活性化層を有するので、樹脂コーティング層の特性を損なうことなく該樹脂コーティング層の上に、印刷したり再コーティングなどの後加工を施すことが容易となると共に、静電気の帯電を低減することができる。また、接着剤による接着も可能となる。
【0015】
また、前記樹脂を光硬化樹脂とし、この樹脂を硬化させた樹脂コーティング層の表面に、微細凹凸構造のホログラムを形成すると、装飾性の高いシート材を容易に製造することができ、これにより安価に提供することができる。
【0016】
そして、前記した活性化層の表面に、印刷により印刷装飾層を形成すると、印刷によって装飾の自由度が広がり、これにより装飾性を一層高めることができる。
【0017】
また、前記した活性化層の表面に、再度樹脂を塗布して硬化させた上層樹脂コーティング層を形成すると、光沢性を向上させることができ、これにより装飾性を一層高めることができる。
【0018】
前記した活性化層の表面に、接着剤を塗布して接着剤層を形成すると、接着剤による接着が可能となり、これによりパッケージ材などとして用途の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】上層樹脂コーティング層を形成したシート材の断面図である。
【図2】印刷装飾層を形成したシート材の断面図である。
【図3】接着剤層を形成したシート材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すシート材1は、シート状基材2の表面に、塗布した樹脂を硬化させた樹脂コーティング層3を有し、該樹脂コーティング層3の表面に、微細凹凸構造のホログラムが形成されており、また、この樹脂コーティング層3の表面には、アンカーコートに代表されるプレコート等の前処理は行うことなく、直接コロナ放電処理することにより形成した活性化層4を有し、この活性化層4の表面に再度樹脂をコーティングして上層樹脂コーティング層5を形成してある。
【0021】
シート状基材2は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチロール)、PC(ポリカーボネート)などの樹脂フィルム、紙、アルミニューム箔などの金属ホイルなどを使用することができる。また、これらの素材からなるシート状基材2は、帯状に長尺なものであっても、あるいは枚葉紙のように短く切断したものであってもよい。
【0022】
このシート状基材2の上に樹脂コーティング層3、例えば、PP(ポリプロピレン)製シート状基材2の表面に、光硬化樹脂の代表的なものである紫外線硬化樹脂によるコーティング層を形成するには、まず、シート状基材2の表面にコロナ放電処理を施した後に紫外線硬化樹脂を塗布する(樹脂塗布工程)。
紫外線硬化樹脂としては、アクリル系、ポリエステル系、エポキシ系などがあり、適宜選択して用いることができる。そして、この紫外線硬化樹脂をシート状基材2に塗布する場合、コーターにより基材2の全面に塗布してもよいが、版を使用して予め設定した一部分にだけ、要するに部分的に塗布しても良い。
【0023】
塗布した紫外線硬化樹脂を硬化するには塗布面に紫外線を照射する(光照射工程)。このとき、透光性を有するフィルムを密着させた重合状態で当該フィルムを通して紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させてもよい。
そして、塗布面に被覆するフィルムは表面が平滑な通常のものでよいが、塗布面に密着させる側の表面に凹凸、例えば、ホログラムとなる微細凹凸を形成しておくと、この微細凹凸構造のホログラムを塗布面に転写することができる。なお、この転写フィルムは、紫外線照射により紫外線硬化樹脂が硬化した後(後述するコロナ放電処理工程の前)に剥離除去する(剥離工程)。
【0024】
なお、前記した転写フィルムは、無端環状にしてローラー間に張設して回転移動するので、硬化したコーティング層から剥離してから重合位置まで戻して次の紫外線硬化樹脂塗布面に密着させることにより繰り返し使用することができる。そして、微細凹凸は、ホログラム構造の凹凸に限定されるものではなく、装飾性のある凹凸であればエンボス、ヘアーライン、その他の適宜な回折格子などでもよい。この様に、光硬化樹脂層に転写フィルムの凹凸を転写する前記製造方法を採ると、ホログラムを簡単に形成して装飾用のシート材とすることができ、製造が容易であるばかりでなく、製造コストの低減にも寄与する。
【0025】
前記した光照射工程と剥離工程とを終了したならば、次に、硬化した樹脂コーティング層3の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより活性化層4を形成する(コロナ放電処理工程)。このコロナ放電処理を行うと、樹脂コーティング層3の表面が放電によって活性化された状態(ラジカルな状態)に改質され、表面にカルボニル基等の極性基が生成され、濡れ性が向上することとなり、これにより静電気の帯電が低減される。また、活性化されたことにより接着剤の接着力が増大される。
【0026】
前記した工程を経て製造したシート材1は、コロナ放電処理により樹脂コーティング層3の表面が活性化されているので、この樹脂コーティング層3の上に、再度樹脂をコーティングして上層樹脂コーティング層5を形成することができる。
【0027】
また、図2に示すように、樹脂コーティング層3の上に、印刷により装飾や文字を記した印刷装飾層6を形成することができ、この様にして、樹脂コーティング層3の上に上層樹脂コーティング層5や印刷装飾層6を形成すると、いずれも装飾性を一層向上させることができる。
【0028】
また、コロナ放電処理したシート材1は、樹脂コーティング層3の表面の濡れ性向上によって帯電し難くなっているので、重ねても静電気により張り付き難くなり、取り扱いが容易である。
【0029】
そして、このシート材1は、接着剤を使用した場合の接着力が強いので、図3に示すように、接着剤を塗布して接着剤層7を形成し、この接着剤層で接合しながら包装体として組み立てることができる。したがって、前記した装飾性と耐久性を活かしつつ、パッケージの材料としても利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…シート材、2…シート状基材、3…樹脂コーティング層、4…活性化層、5…上層樹脂コーティング層、6…印刷装飾層、7…接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム、紙、金属箔などのシート状基材の表面に、塗布した樹脂を硬化させた樹脂コーティング層を有し、該樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより形成した活性化層を有することを特徴とするシート材。
【請求項2】
前記樹脂が光硬化樹脂であり、この樹脂を硬化させた樹脂コーティング層の表面に、微細凹凸構造のホログラムが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記した活性化層の表面に、印刷により形成された印刷装飾層を有することを特徴とする請求項2に記載のシート材。
【請求項4】
前記した活性化層の表面に、再度樹脂を塗布して硬化させた上層樹脂コーティング層を有することを特徴とする請求項3に記載のシート材。
【請求項5】
前記した活性化層の表面に、接着剤を塗布して形成した接着剤層を有することを特徴とする請求項3に記載のシート材。
【請求項6】
樹脂フィルム、紙、金属箔などのシート状基材の表面に、光硬化性樹脂を塗布する樹脂塗布工程と、
塗布された光硬化性樹脂に光を照射して硬化させる光照射工程と、
この光照射工程により硬化した樹脂コーティング層の表面に、プレコート等の前処理を行うことなく直接コロナ放電処理することにより活性化層を形成するコロナ放電処理工程と、
を順次経て製造することを特徴とするシート材の製造方法。
【請求項7】
前記した光照射工程において、表面に微細凹凸構造のホログラムが形成された透光性フィルムを塗布面に重ね合わせ、この重合状態で光を照射して光硬化性樹脂を硬化させると共に前記微細凹凸構造を転写し、
この光照射工程の後、コロナ放電処理工程の前に透光性フィルムを樹脂コーティング層の表面から剥離する剥離工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のシート材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−280062(P2010−280062A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132730(P2009−132730)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(398043757)有限会社協和ラミコート (10)
【Fターム(参考)】