説明

シート材及びその製造方法及び使用方法

【課題】
比較的大型の物品から小型の物品に到るまで、修理、交換、洗浄などを行うことなく、貼るだけでリフォーム、リニューアルを施すことができ、リフォーム後の物品は地の色や下の汚れ、傷が透けて見えることなく、かつ施工後の物品は、木肌、木理を生かした木材独特の味わいがあり、木の香りや自然のぬくもりを楽しむことが可能となる、比較的細工の細かい部位にもフレキシブルに対応して貼り付けることができるシート材を提供すること。
【解決手段】
木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる経木シートの裏面に、シート状部材及び金属シートを接着させた、シート材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木材の木肌を生かしたシート材及びその製造方法及びその使用方法に関する。本発明のシート材は、包装材、文具、事務用品、箱材、玩具あるいはラミネート用原材料などに使用できるほか、家具、建具、各種建築用素材、化粧材、装飾材として広汎に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
木材を薄くスライスして得た経木(突き板あるいは木製シートとも言う)は、納豆、団子などを包む材料として使用されてきた。しかし経木自体は縦方向に裂け易くかつ横方向の折り曲げによって割れるという性質を有する。経木を装飾材や各種建築用素材などのさらに多様な用途に用いるためには、この縦方向に裂け易く、横方向の折り曲げによって割れるという性質を克服しなければならない。
【0003】
木材を厚さ0.03〜0.3mmとなるようにスライスして経木を作製し、この経木を5〜40%の濃度のポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル樹脂水溶液の中に浸漬して、経木にこれら樹脂を含浸させると、経木の導管または仮導管の部分が透けて見えるようになって装飾材や建築用素材として好適である上、経木自体の裂け易い性質が改良された経木シートが得られることが発見されている(特許文献1)。
【0004】
一方、近年の清潔志向の高まりなどにより、公共施設、旅館などの人の多く集まる施設や家、マンションなどの居住施設のリフォームやリニューアルが頻繁に行われる。柱、障子やふすまの桟等の人の手足が多く触れる箇所は、汚れが付着したり傷が付きやすく、窓近くに位置する床の間の柱や鴨居などは、日焼けなどにより木が変色している場合があるが、見栄えが悪く衛生的にも好ましくない。したがってかかる物品の交換、修理、洗浄等が必要になることがある。ところが、これらの箇所を全て交換、修理、洗浄を行うと経費と時間とを多く費やすこととなる。そこで、かかる箇所につき修理、交換、洗浄などを行わずに、例えば木目を印刷した紙等のシートを貼ったり、へぎ板を貼るなどの処理を行うことがある。ところが、木目印刷シートは、木目模様が全て同じであるため高級感に欠け、シートを貼ったことがすぐにわかり重厚感がない上、剥がれ易い。一方へぎ板はその厚さ故加工性が悪く、細かい細工を施した物品や折れ曲がった部分、あるいは鋭角な部分には使用できないという不都合な点がある。また、上述の特許文献1に説明される経木シートをかかるリフォームに使用することもできるが、このシート材は、木材の導管または仮導管の全部または一部が透視できるものであるため、これをリフォーム施工箇所に貼り付けると、地の色が透けて見えてしまい、汚れや傷なども透視できる。そこで、各種建築材料や家具・建具等の比較的大型の物品のほか、楽器、玩具、文具などの比較的小型の物品まで、修理、交換、洗浄などをすることなく、シート材を貼るだけでリフォームが完成し、かつリフォーム後の物品は地の色や下の汚れ、または傷等が透けて見えることなく、かつ木材独特の高級感や重厚感、および味わい、天然の木のぬくもり、あるいは木の香りが楽しめるような材料があれば、非常に便利である。
【特許文献1】特許第1767136号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、比較的大型の物品から小型の物品に到るまで、修理、交換、洗浄などを行うことなく、貼るだけでリフォーム、リニューアルを施すことができ、リフォーム後の物品は地の色や下の汚れ、傷が透けて見えることなく、かつ施工後の物品は、木肌、木理を生かした木材独特の味わいがあり、木の香りや自然のぬくもりを楽しむことが可能となる、比較的細工の細かい部位にもフレキシブルに対応して貼り付けることができるシート材を提供することを目的とする。また、プラスチックや金属など、木材以外のものから作製された物品や、合板により作製された物品に貼り付けることにより、これら物品に木製のものが持つ自然の温かみや木の香りを付与したり、木目調の高級感を付与したりすることができる、シート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、以下の通りである。
1. 木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる経木シートの裏面にシート状部材及び金属シートを接着させた、シート材。
2. シート状部材が白色である、請求項1に記載のシート材。
3. シート状部材が紙である、請求項1または2に記載のシート材。
4. さらに紙または布を接着させた、上記1−3のいずれか1項に記載のシート材。
5. 木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるように木材をスライスして木製シートを作製し、該木製シートをポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル樹脂水溶液に浸漬して経木シートを作製し、該経木シートにシート状部材及び金属シートを含む裏当材を加熱下で圧力をかけて接着させる工程を含む、シート材の製造方法。
6. 木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる経木シートの裏面に、シート状部材及び金属シートを接着させたシート材を所望の大きさに切断し、接着剤を用いて物品に貼りつけることを含む、シート材の使用方法。
【0007】
本発明を詳しく説明する。本発明に使用する経木シートは、木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる。木材を薄くスライスすることにより、木材の木肌、木理を生かした独特の味わいを残すことができる。木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件とは、スライスした木製シートの厚さを0.03〜0.3mm、好ましくは0.1〜0.15mm程度にすることを意味する。本明細書では、木材を前記の厚さに薄くスライスしたものを木製シート、経木あるいは突き板と称する。木製シートとして使用することができる木は、シオジ、スギ、ブナ、アカマツ、エゾマツ、シナノキ、モミ、キリ、カラマツ、ヒノキ、ベイマツ、ツガ、ムク、屋久杉、琉球杉またはホオなど、従来の経木、及び各種建材、家具・建具、及び楽器、玩具、文具などに使用される木材である。
【0008】
木製シートに含浸させる樹脂は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン樹脂は木肌、木理を損なうことなく木製シートに柔軟性を与えることができ、かつ取り扱いが容易で、浸漬作業中に皮膚障害などを引き起こすことがない。同様の理由でポリ酢酸ビニル樹脂も使用できる。木製シートにかかる樹脂を含浸させることにより、木製シートの縦方向に裂け易くかつ横方向の折り曲げによって割れるという性質を改善することができる。
【0009】
木製シートにポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル樹脂を含浸させるには、これら樹脂水溶液に木製シートを浸漬させて行うことができる。樹脂水溶液の濃度は好ましくは5〜50%、特に好ましくは25〜40%程度である。特に繊維加工用ポリウレタンディスパージョンを使用することが好ましい。
【0010】
木製シートに樹脂水溶液を含浸させ、乾燥させると、本発明のシート材に使用する経木シートができあがる。本明細書では、木製シートに樹脂を含浸させ、乾燥させたものを経木シートと称する。この経木シートに、シート状部材及び金属シートを接着させる。好ましいシート状部材は、紙であり、さらに好ましくは白色のものである。白色の紙を木材の導管または仮導管の全部または一部が透けて見える経木シートに貼ることができる。そして、この白色紙を経木シートと共に挟むように金属シートを貼ることができる。このような構成にすることにより、シートが透視できなくなるので、本発明のシート材を、例えばプラスチックや金属素材のものに貼り付けても、地の色が透けて見えることがなく、また木材のリフォームなどに用いても汚れや傷が透けて見えることがない。
【0011】
シート状部材として好ましく使用される白色の紙は、種々の厚さの普通紙、和紙等である。本発明のシート材に使用する経木シートは、それ自体充分な強度や割れにくさを有しているので、シート状部材はさほど厚くする必要はない。好ましくは0.010〜0.050mm、さらに好ましくは0.020〜0.030mm程度のものを使用することができる。
【0012】
本発明のシート材に使用する金属シートは、上述のシート状部材と共に本発明のシート材に遮光性を与える役割を果たす一方、本発明のシート材の施工の利便性を考慮して用いるものである。本発明のシート材を各種建築用品等の物品に施工する場合は、本発明のシート材の金属シート側に好ましくは木工ボンド、でんぷん糊などの接着剤を塗布し、各種物品に貼り付ける作業を行う。この際に、金属シート側の接着剤は直ちに完全には接着しないため、位置決めをしながら少しずつシート材を移動させ、最適の位置に貼り付けることが可能となる。さらに本発明のシート材に使用する金属シートは、本発明のシート材を物品に貼り付ける際に使用する木工ボンドやでんぷん糊などの接着剤が経木シート側に浸透して経木シートを変色させることを防止する役割も果たす。金属シートとして例えばアルミフォイル、金箔、銀箔などを用いることができ、特にアルミフォイルを使用することが好ましい。金属シートの種類にもよるが、好ましくは0.002〜0.020mm、さらに好ましくは0.005〜0.010mm程度のものを用いることが好ましい。
【0013】
本発明のシート材はさらに紙または布を含むこともできる。本発明のシート材を貼る部分を構成する材料や、使用する接着剤の種類に応じて、適宜変更することができる。このようなシート材の紙または布側に接着剤を塗布し、各種物品に貼ることにより、より強固な接着を得ることが可能となる。
【0014】
本発明のシート材を作製する際には、木製シートを樹脂水溶液に浸漬し、その後完全に乾燥させる前に、シート状部材及び金属シート、場合により紙または布を貼ることができる。本発明のシート材をこのように作製する場合は、予めシート部材と金属シート(及び場合により紙または布)とを貼り合わせた複合シート状の裏当材を作製しておき、未乾燥の経木シートに貼るつけることが便利である。
【0015】
本発明のシート材を各種物品に貼り付ける方法は、物品を構成する材料や貼付面積、あるいは施工現場の環境などに応じて作業者が適宜決定することができる。例えば、本発明のシート材を柱木に貼る場合は、本発明のシート材または柱木の側に木工ボンドまたはでんぷん糊などの接着剤を塗布し、適宜位置決めしながら貼り付けることができる。本発明を貼る物品に著しい汚れがある場合はこの汚れを覆い隠すように本発明のシート材を貼り付け、傷、欠けまたはへこみ等がある場合にはパテ等により適宜修繕した後、本発明のシート材を通常通り貼り付けることができる。また貼り付ける物品の材料によっては本発明の金属シートとの接着が適当でない場合もあるので、この場合は、施工する面にペイント、ゴム糊、水性ボンドなどを必要に応じて希釈して塗布し、乾燥させて均一かつ平滑な薄膜を施工面に作製し、この上に本発明のシート材を通常通り貼り付けることができる。このようにすることにより、金属シートとの相性が適切でない面においても、本発明のシート材を用いることが可能となる。
【0016】
さらに、例えば木製の扉や壁面など、施工面積の広い物品に本発明のシート材を貼る場合は、糊付け機などの治具を用いてシート材に糊を塗布することができる。糊付け機においては通常水溶性の高い、接着力が比較的弱い接着剤(例えばでんぷん糊)を使用する必要があるが、物品を構成する材料によってはでんぷん糊のみでは接着力が適当でない場合もある。このような場合は、紙または布をさらに含む本発明の別の態様のシート材を使用するのが好ましい。紙または布はでんぷん糊との相性が非常によく、接着力を増大させることができる。紙または布をさらに含む本発明の別の態様のシートを用いて通常通り施工することもまた可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシート材は、天然の木目を生かした経木に樹脂を含浸させて割れにくく加工した経木シートに、さらにシート状部材、金属シート、場合により紙または布を貼り付けたものである。本発明のシート材は、木材を薄く削いだ薄経木様のものであるが、縦方向に裂けることなく、横方向への折り曲げにも強いため、各種大型物品、小型物品等に貼り付けて加工することができる。加えて本発明のシート材は背部を透視することができないので、かかる物品に貼り付けても地の色や汚れ、傷などが透けて見えない。これによりこれら物品の洗浄、交換、修理をすることなくリフォーム、リニューアルすることができ、新品同様の仕上がりを得ることができる。また金属やプラスチック製物品または合板製品に貼り付けることにより、これら物品に天然の木の風合いや木目調の高級感を付与することができ、高級木材の雰囲気や日本の木材文化を気軽に味わうことができる。
【0018】
本発明のシート材は、一本の木材から数十枚〜数百枚作製することができるので、高級木材を不必要に多く切り出すことがない。また、間伐材や合板などに本発明のシート材を使用して、高級木材から作製されたもののように見せることができるので、用途の限られた間伐材などの木材資源の再利用にも役立つ。すなわち、本発明のシート材は、枯渇しつつある高級木材を保全することができる、環境にやさしい製品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の態様を説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
図1は、本発明のシート材の構成を模式的に示すものである。図はシート材の構成を説明するためのものであって、大きさや厚さの比は実物のものとは異なる。図中1:経木シート、2:シート状部材、3:金属シートである。1:経木シートは、木材を薄く削いた木製シートにポリウレタン樹脂などを含浸させて作製したものであり、厚さはだいたい0.03〜0.3mm程度のものである。この経木シートに2:シート状部材として、好ましくは白色紙と3:金属シートとして好ましくはアルミフォイルを貼る。上述の通り、経木シートは天然の木目を有した薄経木様のものであるが、縦方向に裂けにくく、横方向の折り曲げにも強いものである。これに白色紙及びアルミフォイルを貼ることにより、背部が透視可能の経木シートを透視できないものにすることができる。
【0020】
次に本発明のシート材の製造方法を説明する。シオジ、スギ、ブナ、アカマツ、エゾマツ、シナノキ、モミ、キリ、カラマツ、ヒノキ、ベイマツ、カシ、ムク、屋久杉、琉球松またはホオ等から選択される木材を、背部が透視できる程度の厚さ(例えば0.03〜0.3mm程度、好ましくは0.1mm程度)に削って経木を作製する。木材を削る場合、柾目、追い柾目、板目等、所望の木目が出るように木取りして削ることが可能である。この経木を、含浸させる樹脂の水溶液に浸漬する。樹脂は好ましくはポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル樹脂である。含浸樹脂液の濃度は、好ましくは5〜50%程度、さらに好ましくは25〜45%程度であり、浸漬時間は経木の大きさや樹脂水溶液の濃度にもよるが、だいたい5〜30分程度でよい。樹脂水溶液に浸漬した経木を引き揚げ、乾燥させる。乾燥は自然乾燥による他、乾燥機を使用したり、熱風による熱処理などにより行うことができる。例えば、予備乾燥として室温で約10〜20時間乾燥し、次いで約100〜150℃、好ましくは約120℃のオーブンで約10〜30分間熱処理することができる。このように作製した経木シートに、裏当材として例えば白色紙の片面をアルミフォイル加工したものを貼り付ける。裏当材のいずれの面を経木シートに貼り付けてもよいが、白色紙の面を経木シート側に貼ることが好ましい。裏当材の接着には、木工ボンドやでんぷん糊等、木工細工に広く用いられる接着剤を使用することができる。また、経木シートを完全に乾燥させずに裏当剤を貼り付ければ、経木シート上に残る未乾燥の樹脂が接着剤の役割を果たすことができる。このように経木シートに裏当材を貼り付ける際には、好ましくは温度100〜120℃、圧力5.5〜7.7kg/cm2で約30〜60秒間ヒートプレスし、完全に接着させることが好ましい。
【0021】
本発明のシート材は、金属シート側に接着剤を塗布し、物品に貼り付けることができる。この際に、金属シート側に塗布した接着剤は、直ちに完全に物品と強固に接着するわけではないので、位置決めや多少の張り直しなどの微調整がスムーズに行える。本発明のシート材は、貼り付ける物品の材料や使用する接着剤の種類に応じて、金属シート側に紙や布をさらに有していてもよい。
【0022】
このように作製した本発明のシート材を必要な大きさに切り、例えば修理や交換、洗浄の必要な家具の部材などに木工ボンドなどの接着剤を用いて貼り付ける。例えば図2は柱木に本発明のシート材を用いる例を示した模式図である。本図は模式図であり、実際の建築態様とは異なり、壁などの他の部材は記載していない。人の手垢などにより汚れた部位あるいは木部の傷やへこみなどをパテなどにより修繕した部位に、かかる部分を覆い隠すように本発明のシート材を貼り付けることにより、特別な洗浄や修理を行わなくとも短時間で新品同様の柱にすることができる。また、木目が貼り付ける物品に最適に出るように木材を削った経木を使用して本発明のシート材を作製すれば、このシート材を貼り付けることにより、例えば高級な和風建築の柱として用いられる四方柾のように見せることもできる。
【0023】
図3は、主に柱の一つの面が壁から見えるよう施工された部位(例えば和室の真壁)の柱をリフォームする例を示したものである。例として、三寸五分(約105mm)幅の柱のうち主に一つの面が壁から見えるよう施工された部位をリフォームする場合の、本発明のシート材の裁断パターンを示す。図中数字は全てmm単位で記載されている。図3(a)は、本態様の柱を示し、図3(b)は、(a)の柱に施工する場合の本発明のシート材の裁断例を表す。(b)の左右両端の20mm部分はあそびである。これは、柱の寸法が必ずしも正確ではないため、貼り付けるシート材にあそびをもたせ、施工時に不要な部分を切る、という方法を採るからである。あそび部分の寸法は適宜決定でき、施工の便宜上約10〜50mm程度が好ましい。
【0024】
図4は、主に柱の二つの面が見えるよう施工された部位につき、リフォームする場合を表す。例として、三寸五分幅の柱のうち主に二つの面が見えるように施工された部位をリフォームする場合の、本発明のシート材の裁断パターンを示す。図4(a)は、本態様の柱を示し、図4(b)は、(a)の柱に施工する場合の本発明のシート材の裁断例を表す。図3と同様、(b)の左右両端の20mm部分はあそびである。
【0025】
図5は、柱の三つの面が見えるように施工された部位(例えば床柱)をリフォームする例を示したものである。例として、三寸五分幅の柱のうち主に三つの面が見えるように施工された部位をリフォームする場合の、本発明のシート材の裁断パターンを示す。図5(a)は、本態様の柱を示し、図5(b)は、(a)の柱に施工する場合の本発明のシート材の裁断例を表す。図3及び図4と同様、(b)の左右両端の20mm部分はあそびである。
【0026】
図6は、例えば長押部分に本発明のシート材を施工する場合を表したものである。長押部分の側断面部本発明のシート材を貼る場合と、長押本体部分に貼る場合の裁断パターンをそれぞれ示す。図6(a)は、長押側断面に貼る本発明のシート材の裁断例、図6(b)は、長押本体に施工する場合の本発明のシート材の裁断例をそれぞれ表す。図3〜図5と同様、(b)の上下両端の20mm部分はあそびである。
【0027】
この他、和風建築に使用される建材や建具、例えば、床板、落とし掛け、回り縁、違い棚、竿縁など、リフォーム、リニューアルが必要な部位に本発明のシート材を貼ることができる。
【0028】
間伐材や合板など、継ぎ目のある木材や板などに本発明のシート材を貼り付けることにより、一本の木から作製したように見せることも可能である。
上述したとおり、物品に大きな欠けやへこみ等がある場合、本発明のシート材をそのまま貼るよりも予め修理を施してから貼る方が好ましい場合がある。例えば柱木に比較的大きな傷や欠けなどがある場合、予めこれをパテなどを用いて修復し、修復部を覆い隠すように本発明のシート材を貼ることができる。さらに本発明のシート材の金属シートとの接着が適当でない場合は、パテ、ペイント、ゴム糊、水性ボンドなどを適宜希釈して施工面に薄く塗布し、乾燥して平滑な薄膜を形成した上に本発明のシート材を貼ることができる。形成された比較的均一かつ平滑な薄膜により、本発明のシート材の金属シートとの接着を飛躍的に高めることができる。
【0029】
扉や壁面などの比較的施工面積の広い部分に本発明のシート材を貼る場合には、紙または布をさらに含む本発明の別の態様のシート材を用いることが好ましい。施工面積が広い場合は、水溶性の高いでんぷん糊を用い、糊付け機などの治具を用いて施工する場合があるため、施工面との接着力を増大させるために、でんぷん糊との相性が比較的高い紙または布を含むシート材を用いることが好ましい。
【実施例】
【0030】
本発明の具体的な実施の例を以下に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の態様に限定されない。
[実施例1]
本発明のシート材を以下の方法により作製した。スギの木を削ることにより厚さ0.12mmの経木を作製した。この経木をポリウレタン樹脂30%溶液(商品名:スーパーフレックス300、第一工業製薬)に5〜10分程度浸漬した後、水溶液から引き揚げて室温で15時間自然乾燥し、次いで120℃の乾燥機で20分間熱処理して経木シートを作製した。この経木シートに裏当材としてアルミフォイル(商品名:アルミ箔7ミクロン艶なし、東洋アルミニウム)で加工した白色紙(商品名:薄葉紙AFT20g/m3、天間特殊製紙)を貼り付け(アルミニウム加工した白色紙の厚さ:0.035mm±3μm)、経木シート上に残る未乾燥のポリウレタン樹脂を接着剤とし、温度120〜150℃、圧力4〜7kg/cm2で約30〜60秒間ヒートプレスして接着させ、厚さ0.15mmのシート材を作製した。このシート材はスギ特有の木目が表面に表れており、かつ背部を透視することができないものであった。シート材は木目と平行の縦方向に裂けにくく、横方向に折り曲げてもささくれ立たずかつ折り目もつきにくかった。本シート材の物理的強度を示すデータを表1に示す。
【0031】
【表1】

[実施例2]
【0032】
実施例1にしたがって作製した本発明のシート材を、和室の真壁の柱のリフォームに用いた。これは図3に例示する態様の実施例である。実施例1のシート材を三寸五分(約105mm)サイズの柱を覆うことができるよう、縦3000mm、横175mmの大きさに裁断した。この裁断シート材の金属シート側に木工ボンド(製品名:プラゾールボンド、ヤヨイ化学工業)を両端にもたせたあそびの部分(幅20mmずつ)以外に均一に塗布し、柱に貼り付けた。このまま自然乾燥させ、あそびの部分を柱にあわせて切ることにより、新品同様の柱を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のシート材は、柔軟で強度に優れるため、家具、建具、建築用品などの比較的大型の物品、楽器、玩具、文具、電化製品などの比較的小型の物品に適用することができる。また本発明のシート材は背部を透視できないので、汚れや傷のある部分や、あるいはプラスチック、金属製など木製ではない物品にも適用することができ、これにより簡便にリフォーム、リニューアル、イメージの変更などを行うことができる。本発明のシート材は天然の木材を使用したものなので、同じ木目模様のものは一つとして作製できないため、貼り付ける物品に高級感、重厚感を与え、さらに天然の木目の温かみや木の香りなどを付与することができる。本発明のシート材の主な利用の例として、例えば和風建築の旅館などのリニューアル工事、マンションの和室のリフォーム、洗浄困難な楽器や玩具のリフォームなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のシート材の構成を示す模式図である。
【図2】本発明のシート材を柱に貼り付けた施工例を示す図である。
【図3】主に柱の一つの面が見える施工部位に本発明のシート材を貼り付ける場合の裁断例を示す図である。
【図4】主に柱の二つの面が見える施工部位に本発明のシート材を貼り付ける場合の裁断例を示す図である。
【図5】主に柱の三つの面が見える施工部位に本発明のシート材を貼り付ける場合の裁断例を示す図である。
【図6】長押部分に本発明のシート材を貼り付ける場合の裁断例を示す図である。(a)が長押側断面に貼るための裁断例、(b)が長押に貼るための裁断例を示す。
【符号の説明】
【0035】
1:経木シート、2:シート状部材、3:金属シート、4:柱、5:シート材、6:柱、7:壁、8:シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる経木シートの裏面に、シート状部材及び金属シートを接着させた、シート材。
【請求項2】
シート状部材が白色である、請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
シート状部材が紙である、請求項1または2に記載のシート材。
【請求項4】
さらに紙または布を接着させた、請求項1−3のいずれか1項に記載のシート材。
【請求項5】
木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるように木材をスライスして木製シートを作製し、該木製シートをポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル樹脂水溶液に浸漬して経木シートを作製し、該経木シートにシート状部材及び金属シートを含む裏当材を加熱下で圧力をかけて接着させる工程を含む、シート材の製造方法。
【請求項6】
木材の導管及び/又は仮導管の全部または一部が透視可能となるような条件で木材をスライスし、そしてポリウレタン樹脂またはポリ酢酸ビニル系樹脂で含浸してなる経木シートの裏面に、シート状部材及び金属シートを接着させたシート材を所望の大きさに切断し、接着剤を用いて物品に貼りつけることを含む、シート材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−224500(P2006−224500A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41938(P2005−41938)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(504233328)株式会社木紙 (1)
【出願人】(591137204)株式会社群成舎 (1)
【Fターム(参考)】