説明

シート状物の延伸機

【課題】複数の方向について延伸の量を可変に調節できるシート状物の延伸機を提供する。
【解決手段】シート状物の各端部を把持する連結された複数の等長リンクを入口側から出口側に搬送しつつシート状物を延伸した後入口側に戻して走行させる無端リンク装置の対を備えたシート状物の延伸機1であって、無端リンク装置4の各々は、シート状物を搬送する等長リンクを案内するシート状物に近い搬送側の部分と等長リンクの戻りを案内するシート状物に遠い戻り側部分とを有したレールと、このレールの内側であってシート状物の入口側及び出口側に配置され複数の等長リンクを駆動する入口側スプロケット及び出口側スプロケットと、複数の等長リンクの位置を検知するセンサにより出力から無端リンク装置の対の等長リンクの走行の同期のずれのパターンを検出して該パターンに応じて入口側および出口側のスプロケットの駆動を調節する制御装置とを備えた延伸機1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物、例えば熱可塑性樹脂フィルム等を延伸する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の同時二軸延伸機は、特開2000−334832号公報(特許文献1)に記載のように、ガイドレールを挟んでシート状物の延伸力を支える一対のラジアル軸受を設け、ラジアル軸受にガイドレールに設けた凸部が噛み合う溝を設けてリンク装置の自重も同時に支えるようにしリンク装置を支持したものがある。また、ガイドレールの一方の位置を移動可能にしリンク装置の開き角度を規制することが可能にしてある。本方式によれば、グリース封入方式のラジアル軸受を採用することにより外部からの強制給油が不要となり油飛散を未然に防止でき、高速走行も可能となる。また、ガイドレール位置を移動させることによりMD倍率を無段変換可能となる。
【0003】
また、このような従来技術においても、何れ摺動抵抗が増大して徐々にリンク装置にタイミングのズレが発生したり、延伸の繰返し動作の際に等長リンクの連結部の摩耗等による機械的なズレによってズレが発生する。このリンク装置のズレによって、フィルム両端の無端リンク装置の同調が崩れ、延伸フィルム(製品フィルム)の性能低下、ひいては生産性の低下を招いてしまうという問題が有った。
【0004】
このような課題を解決するため、特開2004−155138号公報(特許文献2)に開示される技術のように、シート状物の両端側に配置された無端リンク装置を駆動するシート状物入口側及び出口側のスプロケットの間のガイドレールの延伸区間の最大屈曲部交流にリンク装置を感知するセンサを配置して、このセンサで検知された特定のリンク位置の情報を示す信号に基づいてスプロケットによる駆動を調節するものが知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−334832号公報
【特許文献2】特開2004−155138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1による従来技術は、リンク装置を構成するリンクの掴み装置が設けられている側のリンクにリンク軸が固定され、他方のリンクがリンク軸に対して回動可能になっている。そして、リンク軸の最下端に軸受取付座を取付け、軸受取付座に溝付きラジアル軸受を取付ける構造になっているため、リンク軸と軸受取付座が実質的に一体になっており、リンク軸に対して軸受取付座が回転しない構造になっていた。
【0007】
このため、リンクが閉じた時と開いた時ではガイドレールに対するリンクプレートの交差角度が変わってしまい、軸受取付座に取付けた2個の溝付きラジアル軸受の取付中心を結ぶ中心線とガイドレールのとの交差角度が異なってしまう、すなわち、リンクを閉じた状態で交差角度が90度となるようにしてあってもリンクが開くと交差角度が90度より小さくなってしまう。このため、リンクが開く区間、すなわち、シート状物の延伸区間及びシート状物の延伸後の送り区間では、溝付きラジアル軸受によって挟まれるガイドレールの幅を交差角度に応じて狭めた寸法に管理しなければならず、ガイドレールの保守管理が大変になるという問題がある。
【0008】
さらに、特許文献1では予熱部,延伸部および熱処理部において、シート状物を搬送するために走行するリンク装置を案内する2重のガイドレールのシート状物より遠い側のガイドレールの位置を調節してガイドレール間隔を変化させる構成を開示するものの、全体のガイドレール長さが変化してしまいスプロケットにより駆動されるリンク装置の走行が不安定になってしまうという問題が生じる。
【0009】
また、特許文献2による従来技術では、シート状物の左右両端側に配置された無端リンク装置の各々において走行するリンク装置の特定のリンクの位置を検知して、左右の位置ずれを検出し瞬時に修正することで左右の無端リンク装置の同調を維持しようとするものである。しかし、このような環状に連結された多数の等長リンクからなるリンク装置を走行させて等長リンク同士の間隔を変化させてシート状物を延伸する構成においては、特定のパターンに基づいたリンク装置の動作が生じており、これによるシート状物に及ぼす作用が左右端側で異なって延伸に悪影響が及ぶことが判明している。
【0010】
この従来技術では、このような無端リンク装置の動作のパターンに基づくシート状物の延伸の不安定さやシート状物の損傷や延伸倍率の不均一等の品質の低下といった問題点を解決することは考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、簡便な構造で、複数の方向について延伸の量を可変に調節でき、シート状物の延伸の効率と歩留まりを向上したシート状物の延伸機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、熱可塑性を有するシート状物の幅方向両端で向かい合って配置され、前記シート状物の各端部を把持する連結された複数の等長リンクを略水平面上の略閉じた経路に沿って案内して前記シート状物を入口側から出口側に搬送しつつ延伸した後入口側に戻して走行させる無端リンク装置の対を備えたシート状物の延伸機であって、前記無端リンク装置の各々は、前記シート状物の入口側であってこのシート状物を略平行に搬送して予熱するための予熱領域と、この後流側に配置されこのシート状物を前記経路の末広がり状の部分に沿って搬送し延伸するための延伸領域と、この後流側に配置され前記シート状物を前記レールの略平行な部分に沿って搬送して熱固定するための熱固定領域と、前記シート状物を搬送する前記等長リンクを案内する前記シート状物に近い搬送側の部分と前記等長リンクの戻りを案内する前記シート状物に遠い戻り側部分とを有したレールと、このレールの内側であって前記シート状物の入口側及び出口側に配置され前記複数の等長リンクを駆動する入口側スプロケット及び出口側スプロケットと、前記無端リンク装置の対の各々の前記シート状物の搬送の方向について前記熱固定領域に配置され前記走行する複数の等長リンクの位置を検知するセンサとを備え、これらのセンサからの出力から前記無端リンク装置の対の前記等長リンクの走行の同期のずれのパターンを検出して該パターンに応じて前記入口側および出口側のスプロケットの駆動を調節する制御装置とを備えたシート状物の延伸機により達成される。
【0013】
さらに、前記制御装置は、前記センサが検知した前記複数の等長リンクの全ての位置に基づいて前記パターンを検出することにより達成される。また、前記制御装置は、前記センサが検知した前記複数の等長リンクのうちの均等な間隔毎の少なくとも4つの位置に基づいて前記パターンを検出することにより達成される。
【0014】
さらにまた、前記パターンの検出をするための運転を行って後製品としての前記シート状物の延伸を行うことにより達成される。
【0015】
さらにまた、前記センサが前記入口側のスプロケットおよび出口側のスプロケットの間の前記等長リンクの中立点の下流側であって前記熱固定領域の上流部近傍に配置されたことにより達成される。
【0016】
さらにまた、前記制御装置が、前記同期のずれのパターンに応じた前記入口側および出口側のスプロケットの動作のパターンを検出してこれを用いて前記同期のずれを抑制するように前記前記入口側および出口側のスプロケットを駆動することにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1乃至図9を用いて本発明に係るシート状物の延伸機の一実施例を説明する。
【0019】
まず、図1乃至図6を用いて、上記実施例の構成の概略を説明する。図1は、本発明のシート状物の延伸機の構成の概略を説明する上面である。図2は、図1に示すシート状物の延伸機のリンク装置の構成の概略を模式的に示す図である。図3は、図1に示すシート状物の延伸機に係る予熱部の構成の概略を示す縦断面図である。図4は、図1に示すシート状物の延伸機に係る延伸部の構成の概略を示す縦断面図である。図5は、図1に示すシート状物の延伸機の熱固定部の構成の概略を示す縦断面図である。図6は、図3に示す延伸部のガイドレール部近傍を拡大して示す縦断面図である。
【0020】
まず、図1および図2を用いて、本発明の実施例に係るシート状物の延伸機1およびこれに用いられるリンク装置の構成について説明する。
【0021】
図1に示す、シート状物の延伸機1は、中央部に延伸する熱可塑性を有する樹脂等から構成されたシート状物が搬送される搬送スペース2と、閉じた経路を構成するリンクガイドレール3上を駆動され周回しつつシート状物の両端端部の各々を掴んで搬送し解放する無端リンク装置4,5が搬送スペース2のシート状物の搬送方向の両側に配置されている。
【0022】
これらの無端リンク装置4,5では、搬送スペース2のシート状物の入口側および出口側に配置されたスプロケット6,7,8が図示しないモータ等の駆動装置と連結されて回転駆動され、これらのスプロケット6,7,8に噛み合わされたリンク装置200がリンクガイドレール3上を摺動して移動する。
【0023】
すなわち、図2(a)に示すように、シート状物の端部を把持する複数(多数)の掴み装置202をシート状物の両側に具備した無端リンク装置4または5(図中リンクの一部並びに片側の無端リンクは省略)は、折尺状に形成された複数個(多数個)の等長リンク201が連結されて環状に閉じて構成されたリンク装置200を備えている。このリンク装置200は、シート状物の入口側スプロケット6または7により駆動されてリンクガイドレール3上を走行し、搬送スペース2の入口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置202が開閉されてシート状物を掴み予熱領域9で延伸に必要な温度にシート状物を加熱しつつリンクガイドレール3の搬送側のレール上を走行する。
【0024】
さらに、後流の延伸領域10において、進行方向に末広がり状に配置されたリンクガイドレール3に案内されて掴み装置202同士の間の掴みピッチをP1からP2に徐々に拡大することにより、シート状物を縦横二方向に同時に延伸する。その後、熱固定領域11においてシート状物を所定の温度で熱固定した後、出口に設けられた開閉ガイド等の開閉手段(図示せず)により掴み装置202を開閉してシート状物から外し、外されたシート状物をそのまま進行させる。さらに、リンク装置200は、出口側のスプロケット8により駆動されリンクガイドレール3の戻り側レール上を走行して入口側スプロケット6に戻るように構成される。
【0025】
即ち、本発明に係るシート状物の延伸機1は、熱可塑性樹脂のシート状物の端部を把持する多数の掴み装置202をシート状物の両側端に具備した無端リンク装置4,5が配置され、該無端リンク装置4,5は折尺状に形成された多数個の等長リンク201が環状に連結されたリンク装置200備えて、シート状物の入口側スプロケット6または7より駆動される。本実施例では、リンク装置200が、シート状物の幅方向両端側で対向して配置された内外周1対のレールからなり進行方向に末広がり状に配置されたリンクガイドレール3に案内されてシート状物を延伸させた後シート状物を外し、搬送スペース2出口側のスプロケット8により駆動されて、入口側のスプロケット6に戻るように構成される。なお、無端リンク装置4または5のリンク構成としては、特公平5−4896号公報に記載された無端リンク装置を参照することができる。
【0026】
リンクガイドレール3は、図2(b)に示すように凸状になるように配置された断面略矩形状の梁状部材で構成された、内周および外周の側の一対の組になるレールで構成されている。このガイドレール3上方に載せられて配置される等長リンク201は、この等長リンク201がシート状物を把持しつつ走行する搬送側のレールにおいてシート状物に近い方の外周側のレール205にはシート状物を把持する掴み装置202が連結されたジョイント用リンク軸207が配置され、内周側のレール206には掴み装置202を有さないジョイント用リンク軸208が配置される。
【0027】
シート側のリンク軸207と反シート側のリンク軸208とはリンクプレート209及び210により連結される。また、等長リンク201の最大ピッチを制限するチェーンリンク203a,203bは,隣接した反シート側のリンク軸208同士を連結してリンクプレート209の間に設けられている。
【0028】
また、等長リンク201を構成するリンクプレート209,210は、リンク軸207の上で同軸状に連結されており、この軸を中心にした周りに両者が回転して等長リンク
201の形状が変化する。さらに、各リンクプレート209、210は、反シート側のガイドレール206上の端部で各々リンク軸208と連結されるとともに、リンク軸207の下部でリンクアーム209,210と連結されている。このため、上記変形の際に上下のリンクは、同じ形状となるように同期して変形される。
【0029】
リンク軸207,208の最下端には第1の転がり軸受である軸受ローラ211a,
212aを有する軸受ホルダ211,212が連結され、軸受ホルダ211,212の両側、すなわち、軸受ローラ211a,212aの外周部に一対の第2の転がり軸受である鍔付ラジアル軸受213a,213b,214a,214bが取り付けられている。これら鍔付ラジアル軸受213a,213b,214a,214bは等長リンク201の動きを規制するレール205,206の両側面を転動し、かつ、レール205,206の上面と鍔付ラジアル軸受213,214の鍔の接触で等長リンク201の自重を保持するように配置されている。
【0030】
上記の通り、等長リンク201のシート側端部には掴み装置202が配置されている。本実施例の掴み装置は、リンクアーム210のシート側先端に連続した部材として配置されて上下に分岐した2つの腕を備える掴みアーム210aと、この掴みアーム210aに連結されてシート側または反シート側に回転する回動アーム215及び、この回動アーム215の下端に回転可能に連結された上掴み子216、掴みアーム210aの下側のアーム上面に配置されて上掴み子216との間でシート状物を挟んで保持する下掴み子217とを備えている。
【0031】
さらに、回動アーム215の回転軸の上方の部分は、コイルバネ218が係号されて連結されて、回動アーム215の回転に特定方向(本実施例では上掴み子216をシート側に向かわせる方向)について付勢している。コイルバネ218の反シート側の端部は、リンクプレート210上部と接続された得円柱形状の係号ピン219と係号されて、回動アーム215が等長リンク201の反シート側のリンクプレート209,210と連結される。シート状物を把持する場合には、コイルバネ218に抗して回動アーム215上端をシート側及び下端を反シート側に移動するように回転させて下掴み子217上にシート状物が位置するようにした後に回動アーム218をコイルバネ218の付勢力を利用して回転させ上掴み子216と下掴み子217との間でシート状物を挟んで保持する。シート状物を開放する場合には、再度上記回動アーム215の回転動作を行わせて上掴み子216、下掴み子217との間を遊離させて隙間を開けた状態でシート状物を下掴み子217上方から移動させる。また、係号ピン219上面には、後述の通り、光学的な検知装置がリンクとその位置とを検出し易くするための反射部材が配置されていても良い。
【0032】
図2(c)に示すようにリンクが閉じた状態と開いた状態とでは、リンクプレートとガイドレールの交差角度θがθ1,θ2と異なる。このときでも、軸受ホルダ211,212に支持された鍔付ラジアル軸受213a,213b,214a,214bは、リンク軸
207,208に対する軸受ローラ211a,212aの働き(回動)により、常にレール205,206の両側面に対して実質的に垂直に位置するよう変化する(回動する)、すなわち、ガイドレール205,206の長手方向に対し直交する。
【0033】
従って、本実施例によれば、一対の鍔付ラジアル軸受をガイドレールに対して常に一定の角度にすることができるので、リンクプレート209及び210とレール205,206の交差角度(θ)やガイドレール幅に依存することなくリンク装置200を走行させることが可能となる。
【0034】
図2(c)は、MD方向の延伸の量(倍率,シート状物の長手方向の倍率)が1.0 より大きくした状態を示す。つまり、図示の右側はレール206とレール205との間が接近して等長リンク201のリンクの開き角度が大きくなる。これにより、シート状物は進行方向に延伸される(図中掴み装置は省略)。更に、図示していない部分のガイドレールと図中ガイドレールの連結にはバネ鋼を用いることで、ガイドレールを無端状に配置可能となる。
【0035】
尚、本実施例ではシート状物をフィルムの進行方向に対して延伸する方法を示したが、図示の左側のレール206とレール205との間を右側での距離を同じくすることでθ1とθ2とを略同一にする、つまり、MD方向の延伸の量を同じにすることも、図2(c)と逆に図上左側のレール206とレール205との間の距離を右側での距離をよりも接近させてリンク装置の開き角度を図示の左側で小さくすることで、シート状物をフィルムの進行方向に対して収縮させることも可能である。なお、この場合、TD方向にシート状物が延伸される。更に、TD方向の延伸の量(倍率)の無段可変技術(リンクガイドレール3を末広がり状に配置させる構成と組み合わせることで、TD方向、MD方向の延伸の量を自由に設定することが可能である。
【0036】
上記の通り、無端リンク装置4,5の間の搬送スペース3は、概略3つの領域に分けられており、入口側から出口側に向かって予熱領域9,延伸領域10,熱固定領域11に分けられる。これらの領域の各々ではシート状物を把持するリンク装置の端部の下方に複数のブロワ12が配置されている。各ブロワ12は、そのシート端側の側方に延在するダクト13と連結されて、このダクト13から導入される加熱された気体である空気がブロワ12に導入される。ブロワ12内の空間に導入された高温の空気は、ブロワ12上部の上方に向けて開口された吹き出し口からその上方を通るシート状物の下面に向けて吹き出される。
【0037】
複数のブロワ12からこのような高温の空気の供給を受けて、予熱領域9では、シート状物が加熱され高温にされることで、熱可塑性を有するシート状物の変形が容易にされ、後方の領域での変形の際の損傷や変形の偏りの発生等が抑制される。また、この予熱領域9はシート状物が搬送スペース2に導入される入口であり、この入口においてリンクガイドレール3に案内されて駆動されたリンク装置のフィルム側端部がシート状物の端部を把持してリンク装置の周回の動作の方向である搬送スペース2の出口側に向かってシート状物を引っ張って搬送を開始する。
【0038】
予熱領域9の後方に隣接する領域である延伸領域10では、シート状物の両端側で向かい合う無端リンク装置4,5のリンクガイドレール3は、一方に対して末広がり状に配置され、このようなリンクガイドレール3に案内されるリンク装置は把持するシート状物の端部を両端の方向に伸ばす(延伸する)ことができる。また、延伸領域10においても、複数のブロワ12より高温の空気がシート状物下面に供給されて吹き付けられ、シート状物延伸の際の損傷や延伸量の偏りが抑制される。
【0039】
延伸領域10の後方でこれに隣接する領域である熱固定領域11では、無端リンク装置4,5のリンクガイドレール3は、一方に対して予熱領域10の出口部の距離で略並行に配置され、リンク装置に把持されたシート状物は略一定の幅で搬送されるとともに、この領域の下方に配置された複数のブロワ12からの高温の空気の供給を受けて、所定の量だけ延伸された状態を維持して加熱され、その形状や長さが固定される。
【0040】
熱固定領域11を搬送されたシート状物はその下流端部に配置された出口側のスプロケット8の直前で無端リンク装置4,5から開放され、さらに下流側に移動して延伸機1から取り出される。延伸機1のシート状物の搬送方向下流側には、シート状物を巻き取る巻き取り機等のシート状物を回収する手段が配置されている。あるいは、延伸を受けたシート状物に更なる加工を施すための別の装置が配置されていても良い。
【0041】
なお、本実施例の延伸機1は、シート状物の搬送は両側の無端リンク装置4,5の把持と運動により行われるものであり、延伸機1の無端リンク装置4,5のみの動作のみによってシート状物を搬送しているものであるが、延伸機1の下流側に配置されてこれから取り出されたシート状物を受ける別の装置からの力も受けつつ無端リンク装置4,5の動作によりシート状物を搬送しても良い。
【0042】
また、後述の通り、本実施例では、リンク装置はシート状物の両端側の方向(幅方向,TD方向)についての延伸のみでなく、シート状物の搬送方向(MD方向)にも延伸可能に構成され、また、これらの方向への延伸の倍率を可変に構成されている。すなわち、リンクガイドレール3のフィルム側レール同士の距離を可変に構成することで、フィルム端同士の距離を搬送方向について変化させて幅方向(TD方向)に延伸可能にするとともに、及びこれと半フィルム側レールの間の距離を可変に構成することで、延伸領域10においてリンク装置の開度を可変にして、シート状物の搬送方向(MD方向)についての延伸の量(例えば、延伸倍率)を変更可能に構成している。
【0043】
また、本実施例では、このようなTD方向の延伸の量の変更は、MD方向の変更と独立に行うことが可能であり、またMD方向の延伸の量の変更をTD方向の変更と並行して行うことが可能に構成されている。
【0044】
図8を用いて、本実施例がシート状物を延伸する動作について概略を説明する。図8は、図1に示すシート状物の延伸機がシート状物を延伸する動作の際の装置各部分の配置の概略を示す正面図及び側面図である。図8(a)は、シート状物の幅方向の延伸の量が0(延伸の倍率が1.0 )である動作を行う際の装置の配置を示す図である。図8(b)は、シート状物の幅方向の延伸の量が0以上(延伸の倍率が1.0 以上)である動作を行う際の装置の配置を示す図である。
【0045】
図8(a)において、シート状物の幅方向の延伸の量が0であるため、シート状物は、本実施例の予熱領域9、延伸領域10及び熱固定領域11のいずれにおいても、その幅は略同一となっている。すなわち、シート状物の両端側に配置された無端リンク装置4,5のそれぞれのリンクガイドレール3の対向して面するレール同士は略同じ高さで略並行に配置されており、これらのレール上でこれに案内されて走行するリンク装置200がシート状物側端部を把持する把持装置の把持位置も、略並行となっている。
【0046】
図8(b)に示すように、シート状物の幅方向についての延伸の量が0以上(延燐の倍率が1.0 以上)である場合には、無端リンク装置4,5の延伸領域10におけるリンクガイドレール3は、図12(a)に示される状態と比べて上記幅方向についてシート状物の外側に曲げられて、シート状物両端側に位置するリンクガイドレール3同士の距離が末広がり状に大きくなるように位置している。
【0047】
本実施例では、延伸領域10でのリンクガイドレール3同士の距離は自在に変更可能であり、延伸の量が可変に調節可能となっている。この延伸の量の変更を指令する信号に応じて、上記それぞれのレールベースは、連結された駆動手段によりシート状物の幅方向に移動され、リンクガイドレール3の末広がりの大きさが変更される。
【0048】
さらに、延伸領域10の下流側(シート状物の出口側)に位置する熱固定部11では、リンクガイドレール3の対向するレール同士を、その延伸領域10の出口での距離で略並行となるように配置される。これにより、シート状物は、その幅方向の長さを延伸部10出口のものと略同等に維持されて、その形状を固定するように下方からの高温の空気が供給されて搬送スペース2の出口に搬送された後、リンク装置が外される。
【0049】
また、本実施例では、図2に示したように、シート状物の搬送方向について延伸を行い、さらにこの延伸の量を可変にする場合、延伸領域10においてシート状物の両端側で対向するリンクガイドレール3の搬送側のレール各々のフィルム側レール(外周側レール)と反フィルム側レール(内周側レール)との間の距離をシート状物の搬送方向について末細まり状に小さくすることが可能に構成されている。2つのレール同士を末細まり状に配置することで、これらの上を案内される折尺状のリンク装置同士の距離が大きくなり、リンク装置のシート状物側に位置してシート状物の端部を把持する把持位置の間隔が増大してシート状物がリンク装置の進行方向(シート状物の搬送方向)に延伸される。
【0050】
また、延伸領域10に隣接する熱固定領域11では、リンク装置同士の距離を熱固定領域11を通して略一定となるように、延伸領域10の出口で設定されたリンクガイドレール3のフィルム側レールおよび反フィルム側レールの間隔が維持される。熱固定領域11では、その入口から出口側のシート状物を離脱させる箇所までの上記フィルム側レール及び反フィルム側レール間隔は略一定にされ、両者が略並行に配置されている。
【0051】
上記間隔は延伸領域10での延伸の量に応じて変化するため、熱固定領域11では、延伸領域10で可変にされるリンクガイドレール3の間隔に合わせてフィルム側レール及び反フィルム側レールの間の間隔を調節可能に構成されている。
【0052】
さらに、本実施例では、熱固定領域11の戻り側レールの少なくとも一部で、レール間隔を増大させて、シート状物を延伸するため大きくしたリンク装置の間隔を減少させている。
【0053】
つまり、閉じた経路であるリンクガイドレール3上ではリンクの数が一定であることから、延伸領域10において単位長さ当たりのリンク数が減少した分を、大きくする別の箇所が必要となる。本実施例では、リンクガイドレール3の熱固定領域11の装置両端側の戻り側レール上の略直線上の箇所に配置している。
【0054】
図3は、図1に示す本実施例の予熱領域9における一方の無端リンク装置4の構成の概略を示している。
【0055】
この図において、予熱領域9での無端リンク装置4は、上下方向について概略3段の構成に区分けされて構成されている。この無端リンク装置4が接地される床面の上方に据付ベース13が配置されている。この据付ベース13の上方に無端リンク装置4の部材が連結されて配置されており、据付ベース13は、これらの部材の重量とともにリンクを駆動する際に生じる荷重を支持する基礎の部材となっている。
【0056】
この据付ベース13上方には、中間部材14を介して走行台15が連結されて、その位置が固定されている。この走行台15は、その上方に連結された部材を支持するとともに、リンク駆動時の荷重を支持して下方の据付ベース13に伝達する。さらに、この走行台15は、リンクガイドレール3及びこれに案内される複数リンクの位置をシート状物の幅方向に移動させるためのスライドベース16とこれを移動させるための駆動部17及びこの駆動部17により駆動される駆動シャフト18とが連結されている。つまり、走行台
15のシート状物の端部側にはリンクガイドレール3が接地されるスライドベース16が配置され、その反対側(装置外側)の端部に、駆動シャフト18を回転駆動するモータ部19を含む駆動部17が配置されている。
【0057】
さらに、走行台15上面には、シート状物の幅方向(TD方向)に延在してスライドベース16がその上に摺動可能に載せられる少なくとも1つのTDガイドレール20が配置されており、スライドベース16が駆動シャフト18の動作に応じて、このTDガイドレール20上をこれに沿って移動する。また、スライドベース16のシート状物側端部の上方には、リンクガイドレール3をその上に支持するレールベース21が載置され、スライドベース16の移動に伴って、リンクガイドレール3のTD方向にその位置が移動される。
【0058】
上記の通り、走行台15のシート幅方向の端部には、駆動部17が連結されて固定され、駆動部17内のモータ部19の駆動により駆動シャフト19の回転がスライドベース
16に伝達されて、スライドベース16上面にシート状物の幅方向に延在する略直線状のTDガイドレール20に沿ってスライドベース16が移動する。
【0059】
上記の構成において、略円筒形状の軸をなす駆動シャフト18の表面には、ねじ状の溝が配置されているとともに、この溝に噛み合うねじ状の溝が形成されたねじ部22がスライドベース16の下面に配置されている。駆動シャフト18の回転駆動によるねじ状の溝の回転により、これに噛み合ったねじ部22を有するスライドベース16が駆動シャフトの軸方向であるフィルム側あるいは反対の装置外側(反フィルム側)に方向に移動する。
【0060】
スライドベース16の搬送スペース2側の端部上方に配置されたレールベース21は、リンクガイドレール3の搬送側および戻り側レールそれぞれの対の下方でスライドベース16と連結されて配置されている。本実施例では4本のレールを各々支持するレールベース21とこれに支持されるリンクガイドレール3とは、スライドベース16に対して位置が固定されている。
【0061】
図4は、図1に示す実施例の延伸領域における無端リンク装置の構成の概略を示している。
【0062】
この図において、延伸領域10での無端リンク装置4は、上下方向について概略3段の構成に区分けされて構成されている。この無端リンク装置4が接地される床面の上方に据付ベース23が配置されている。この据付ベース23の上方に無端リンク装置4の部材が連結されて配置されており、据付ベース23は、これらの部材の重量とともにリンクを駆動する際に生じる荷重を支持する基礎の部材となっている。
【0063】
この据付ベース23上方には、支持体24を介して走行台車25が連結されて、その位置が固定されている。この走行台車25は、その上方に連結された部材を支持するとともに、リンクの駆動時の荷重を支持して下方の据付ベース23側に伝達する。さらに、この走行台15上には、リンクガイドレール3及びこれに案内される複数リンクの位置をシート状物の幅方向に移動させるためのスライドベース26とこれを移動させるための駆動部27及びこの駆動部27により駆動される駆動シャフト28とが連結されている。つまり、走行台25のシート状物の端部側にはリンクガイドレール3がその上に配置されるスライドベース26が配置され、その反対側(装置外側)の端部に、駆動シャフト28を回転駆動するモータ部29を含む駆動部27が配置されている。
【0064】
さらに、走行台車25上面には、スライドベース26がその上に摺動可能に載せられるTDガイドレール30が配置されており、スライドベース26が駆動シャフト28の動作に応じて、このTDガイドレール30上をこれに沿って移動する。また、スライドベース26のフィルム側端部の上方には、リンクガイドレール3をその上に支持するレールベース31,32,33が載置され、スライドベース26の移動に伴って、リンクガイドレール3のシート状物の幅方向(TD方向)にその位置が移動される。
【0065】
また、据付ベース23あるいは支持体24と走行台車25との間には、搬送スペース2の入口側あるいは出口側(搬送方向、MD方向)に延在して、走行台車25がその上に
MD方向に移動可能に載置される2つのMDガイドレール34が配置されている。これは、後述のように、リンクガイドレール3あるいはスライドベース26をシート状物の幅方向に移動させた場合に、必要な延伸の量を実現する上で必要となるリングガイドレール3のMD方向の移動を実現するために設置されている。
【0066】
本実施の例では、予熱領域9の場合と同様、走行台車25のシート状物幅方向の端部には、駆動部27が連結されて固定され、駆動部27内のモータ部29の駆動により、その表面にねじ状の溝が配置された駆動シャフト29の回転が、スライドベース26下部に配置され駆動シャフト29表面のねじ状溝と噛み合わされるねじ部35を介して伝達されて、スライドベース26上面にシート状物の幅方向に延在する略直線状のTDガイドレール30に沿ってTD方向にスライドベース26が移動する。
【0067】
この際、スライドベース26上に連結されて配置されたレールベース31,32,33は、スライドベース26とともにその位置が移動する。さらに、MD方向についても、スライドベース26とともに位置を移動可能に構成されている。
【0068】
また、本実施例では、延伸領域10において、シート状物の幅方向(TD方向)についての延伸の量のみでなく、搬送方向(MD方向)についての量もか変化可能に構成されている。すなわち、スライドベース26のフィルム側端部に配置された2つのレールベース31,32の上に配置された2つのリンクガイドレール3同士の間のTD方向の距離を変更可能にするため、シート状物の端部に近いレールであるフィルム側レール36を上部に有するフィルム側のレールベース31を、シート状物の幅方向端部についてフィルム側レール37を挟んで反対側のレールである反フィルム側レール37を上部に有するレールベース32に対して変位させる構成を備えている。
【0069】
このために、本実施例では、駆動部27の上部においてモータ部29上方に配置された別のモータ部38と、このモータ部38と連結され駆動シャフト28直上方に配置されレールベース31と連結された駆動シャフト39とを備えている。このように本実施例では、モータ部29,38及び駆動シャフト28,39とは、上下方向について重なって配置されている。
【0070】
略円筒形状を有する上方の駆動シャフト39のシート状物側の端部の円筒部表面にはねじ状の溝が形成されたねじ部が配置され、このねじ部の溝と噛み合ってレールベース31が連結され配置され、駆動シャフト39の回転によるねじ部の回転に伴いTD方向のシート状物の側あるいは装置外側に移動する。
【0071】
図6に、図4に示す延伸領域10のスライドベース26のシート状物側の端部近傍の構成の概略を示す。図6(a)は、延伸領域10の走行台車25上のスライドベース26及びレールベース31,32,33の構成を示す上面図である。図6(b)は、延伸領域
10の走行台車25上部の構成の概略を示す縦断面図である。
【0072】
図6(a)に示すように、本実施例は、延伸領域10のリンクガイドレール3を末広がり状に配置するため、延伸領域10のリンクガイドレール3の内外周各々のレール下方に、複数の部材を連結して構成した支持部材を配置している。すなわち、延伸領域10の入口から出口まで延在し各々のリンクガイドレール3であるフィルム側レール36及び反フィルム側レール37各々と連結、接続されてこれを支持する複数のレールベース31a〜31f,32a〜32fを配置し、これらのレールベース同士を連結してリングガイドレール3の内外周レール各々を支持する1つのレールベースとして構成している。
【0073】
また、延伸領域10の戻り側レールの内周側及び外周側レール各々を下方から支持する2つのレールベース33も、シート状物搬送側のレールと同様に、各々が6つの部材33a〜33f,33a′〜33f′を連結して構成された2つのレールベース33として構成されている。
【0074】
すなわち、本実施例では、延伸領域10はシート状物の搬送方向について連なる複数の領域65a〜65fに区画され、各領域65a〜65fの各々が対応するレールベース
31a〜31f,32a〜32f、33a〜33f,33a′〜33f′及びその上方で支持されたリンクガイドレール3の部分を有している。延伸領域10に配置されるリンクガイドレール3の内周、外周の4つの部分は、それぞれ延伸領域10の入口から出口までで6つのレールベース31a〜31f,32a〜32f,33a〜33f,33a′〜
33f′を連結し各々が略上下方向に延在する軸心を有した関節63によって軸周りに略水平の方向に回転可能に連結された支持部材で支持される。このため、延伸領域10では1本のガイドレールについて6つの梁状の部材とこれらを連結する7つの関節部を備えた支持部材で下方から支持される。
【0075】
さらに、シート状物の幅方向(TD方向)に領域65a〜65fに対応して配置されたレールベース、例えば31a,32a,33a,33a′の場合は、下方に配置された走行台車25a及びスライドベース26aと連結されており、対応する駆動部27a及び駆動シャフト28a,39aによってTD方向及びMD方向に移動され、さらにレールベース31aとレールベース32aとの間隔が可変に調節される。
【0076】
本実施例では、各領域65a〜65f毎の対応する部材同士、例えばレールベース31a,32a,33a,33a′のうち、32a,33a,33a′が連結棒64と連結されて、いずれかのTD方向の移動が他の部材に伝達されて移動させる構成となっている。また、これらの対応する部材は、略同じ長さの梁状の部材であり、リンクガイドレール3の
TD方向の移動に際しこれら対応する部材同士が、各両端の関節63の間を一辺とする略平行な四辺形を形成する。また、レールベース31aは、レールベース32aと連結されているため、MD方向の延伸の量を1以上にしない場合は、これらレールベース31a,32a同士も関節部を両端として略平行四辺形を構成する。
【0077】
このような構成の延伸領域10において連結された各領域における上記駆動の動作が各領域のレールベース31,32,33を連動させてこれらによる略平行四辺形の形状が形成され、これらが連結されて上方に連結されて支持されたリンクガイドレール3の末広がりな形状が形成される。
【0078】
図6(b)は、に示すように、本実施例では、スライドベース26のシート状物側端部にリンクガイドレール3及びその下方に配置されてこれらを支持するレールベース31,32,33が配置されている。このうち、レールベース33は、スライドベース26上面にその位置が固定されて連結された連結ボックス40上に固定されて連結されている。
【0079】
このレールベース33上に配置された2つのガイドレールは、シート状物を把持して搬送スペース2の出口側に搬送したリンク装置が、その出口側端部でシート状物の端部を解放して放離した後、出口側に配置されたスプロケット8と噛み合わされて回転し、搬送スペース2の入口側に戻る経路を案内する戻り側レール41である。
【0080】
また、反フィルム側レール37がその上方に配置され連結されたレールベース32は、スライドベース26と連結柱42の上部でこれと連結されている。さらに、フィルム側レール36がその上方に配置され連結されたレールベース31は、駆動シャフト39の先端部のねじ部と連結されるとともに、駆動シャフト39を介して連結柱42およびその上方のレールベース32,反フィルム側レール37と連結されている。このため、レールベース31,32は、図示しない駆動シャフト28の動作によるスライドベース26のTD方向の移動に伴って、TD方向に移動する。
【0081】
一方、連結柱42は、その内部で駆動シャフト39上でその回転軸周りに配置された球面軸受43を介し連結されており、駆動シャフト39の回転の動作は、連結柱42には伝達されない。このため、上記スライドベース26の動作に伴って、レールベース32,
33及び反フィルム側レール37、戻り側レール41と共にTD方向に移動が可能である。一方、駆動シャフト39の回転の動作は、先端部のねじ部を介してレールベース31を反フィルム側レール37,レールベース32、あるいはこれと連結された戻り側レール
41とレールベース33に対して、所望の距離だけ移動させることができる。
【0082】
このように、フィルム側レール36下方のレールベース31は、駆動シャフト39の先端部の円筒部分に配置されたねじ部と連結されている。
【0083】
さらに、ねじ部上方のレールベース31は、その内側に、駆動シャフト39のねじ部と連結された円柱形状の部材であるトラニオン43が挿入されて連結されている。トラニオン43は、その円柱の軸が駆動シャフト39の軸と略垂直の角度をなすように配置されているとともに、レールベース31とその円柱の軸周りにその表面に沿って摺動して相互に回転運動が可能に構成されている。
【0084】
また、駆動シャフト39は、連結ボックス40のシート状物の幅方向の側壁上に配置された軸受部101により連結ボックス40と連結されて回転可能に支持される。口述の通り、この連結ボックス40のシート状物側の軸受部101とねじ部100との間の駆動シャフト39上には、その回転軸方向について2箇所にフレキシブルカップリング68,
69が配置され、駆動シャフト39がこれら2箇所において回転軸が曲げられた状態で曲がり角度を維持して回転をねじ部100に伝達可能に構成されている。
【0085】
このような構成において、駆動シャフト39の回転によりその先端部分のねじ部が回転し、駆動シャフト39のねじ部とかみ合わされた部分と連結されたトラニオン43、及びこれが内部に配置されたレールベース31及びこの上方のフィルム側レール36の位置を移動させる。上記駆動シャフト39の駆動は、その下方に重ねられて配置された駆動シャフト28を駆動するモータ部29とは別に配置されたモータ部38から駆動力が伝達されて行われる。また、モータ部29,38は、図示していない制御装置からの指令信号を授受可能に配置され、2つの駆動シャフト28,39は上記制御装置からの信号を受けた対応するモータ部29,38の動作が伝達されて受け独立に駆動可能に構成されている。
【0086】
このため、レールベース31及びフィルム側レール36は、フィルムの幅方向外側に隣接するリンクガイドレール3である半フィルム側レール37に対して、その間隔を自在に変更可能にされ、本実施例はこれらフィルム側レール36及び半フィルム側レール37に案内されてこれらの上を走行する複数の無端リンクの走行方向の間隔、つまりMD方向の延伸の量を変更可能となっている。
【0087】
上記の構成から、駆動シャフト28の駆動によるスライドベース26の走行台車25に対するTDガイドレール30上のTD方向の移動と、駆動シャフト39の駆動によるレールベース31のスライベース26に対する駆動シャフト39先端部の軸方向に沿った移動とは、独立して行われる。
【0088】
レールベース31が駆動シャフト39により駆動されずスライドベース26に対しその位置を変化させない状態で、スライドベース26が駆動シャフト28により駆動されて
TD方向に移動する場合には、シート状物を挟んでその両端側に配置される無端リンク装置同士の距離が変更されることになり、TD方向の延伸の量のみが変更される。
【0089】
このような動作では、上方に配置された駆動シャフト39は下方のスライドベース26の走行台車25に対する移動に応じてその長さを伸縮する。本実施例の駆動シャフト39は、少なくとも内外2つの略同軸に配置された円柱及び円筒を有した構成であり、一方が走行台車25またはこれに連結された駆動部27と連結されて走行台車25に対して位置が固定され、他方が少なくとも一箇所でスライドベース26と連結されてその位置がスライドベース27に対して固定される。このような構成により上記動作に伴って一方が他方の内部において軸に沿って摺動して収納、引出しされて長さが変更される。
【0090】
本実施例では、駆動シャフト39上の箇所と反フィルム側レール37下方のレールベース32とが連結されている。すなわち、レールベース32内部に円柱形状の部材であるトラニオン44が挿入されて下方の駆動シャフト39と連結されている。トラニオン44は円柱の軸が駆動シャフト39の軸と略垂直の角度をなすように配置されているとともに、レールベース32とその円柱の軸周りにその表面に沿って摺動して相互に回転運動が可能に構成されている。
【0091】
また駆動シャフト39とトラニオン43またはこの下方で連結された部材とは、駆動シャフト39上に配置された表面が球形状の部分を支持する球面軸受45により連結されて、トラニオン43およびレールベース32と駆動シャフト39とを連結してその位置を拘束している。
【0092】
また、駆動シャフト28が駆動されずスライドベース26が走行台車25に対して変位せず、駆動シャフト39の動作によりレールベース31がスライドベース26に対して変位する場合には、連結された複数のリンク装置同士の距離が変更され、MD方向の延伸の量のみが変更される。
【0093】
図5は、図1に示す実施例の熱固定領域における無端リンク装置の構成の概略を示している。
【0094】
無端リンク装置4,5の熱固定領域11の構成も、延伸領域10と同様に、上下方向に概略3つ部分から構成されている。すなわち、装置が据付けられた床面の上方にこれと連結されて固定された据付ベース46、及びこの上部に連結された支持体47上方にMD方向に移動可能に配置された走行台車48及びその上方でTD方向に移動可能に配置されたスライドベース49から構成されている。
【0095】
また、スライドベース49上方には、リンクガイドレール3を下方から支持するレールベース50,51,52とが配置されている。さらに、走行台車48のTD方向の端部には、スライドベース49およびレールベース50,52をTD方向に移動させるためのモータ等を含む駆動部53が走行台車48に固定されて配置されている。
【0096】
走行台車48は、下方の支持体47上方に配置されMD方向に延在する2つのMDガイドレール54上に載せられて連結されており、これらの上で摺動してMD方向に移動可能に構成されている。この構成により、連結された延伸領域10のTD方向の変位に応じてMD方向へ移動することを可能にする。さらに、走行台車48の上方には、TD方向に延在する少なくとも1つのTDガイドレール55が配置され、その上方に配置されたスライドベース49と駆動部53のモータとの間でこれらを連結する駆動シャフト56がモータの回転動作をスライドベース49に伝達して、スライドベース49が上部を摺動してTD方向に移動する。
【0097】
また、本図に示す熱固定領域11の無端リンク装置4の構成では、スライドベース49をTD方向に移動させる駆動シャフト56の直上方にその軸の位置を重ねて配置された駆動シャフト57が備えられている。
【0098】
この駆動シャフト57は、延伸領域10の駆動シャフト39と同様に、その先端部にねじ部58を有して、このねじ部58とその上方のレールベース50とが、内部に配置された円柱形状のトラニアン59を介して連結されている。駆動シャフト57は、駆動部53においてTD方向の駆動シャフト56駆動用のモータの上方に配置されたモータと連結されて回転され、この回転動作がねじ部58を介して連結された上方のトラニアン59及びレールベース50にTD方向の移動として伝達され、その上方に連結されて配置されたフィルム側レール60をレールベース51上方でこれに連結された反フィルム側レール61に対する間隔を変更する。
【0099】
このような構成により、予熱領域9において変更され設定されるシート状物の幅方向の基準長さ及び延伸領域10において調節され設定されるTD方向の延伸の量に応じて、スライドベース49がTD方向に移動される。
【0100】
さらに、延伸領域10において調節され設定されるMD方向の延伸の量に応じて、レールベース50及びその上方でこれに連結されたフィルム側レール60のレールベース51あるいは反フィルム側レール61に対する位置が調節され、これらの間の距離が設定される。
【0101】
さらに、本図のレールベース52は、図示していない別の走行台車上でこれに連結された別のスライドベースの上方に、これらの間に配置された別のTDガイドレール上に配置されて連結されている。また、この別のスライドベースは走行台車48及びスライドベース49と同様に、別の走行台車のTD方向の無端リンク装置4の外側端部にモータを含む駆動部と駆動シャフトを介して連結され、モータの回転が駆動シャフトに伝達されることで別のスライドベースが別の走行台車上をTDガイドレール上をTD方向に移動する。
【0102】
また、レールベース52はこれに連結されたスライドベースとともに、TD方向に移動するとともに、レールベース51に対して(あるいはその上方に配置された内周側の戻り側レール102に対して)距離を位置を可変に調節可能に構成されて、これらの間の間隔は変更可能に構成されている。このような構成により、例えば、レールベース52上に配置されこれに支持される外周側の戻り側レール103と内周側の戻り側レール102との間隔を増大させることで、延伸領域10においてシート状物のMD方向についての延伸の量を増大させてこの領域に存在するリンク数を減少させた場合に、その分のリンク数を増大させる箇所である貯留部を熱固定領域11の戻り側レール上に形成する。
【0103】
図7を用いて、上記貯留部の作用を説明する。図7は、図1に示す実施例のリンクガイドレール上のリンク装置の配置を示す模式図である。この模式図では、図1に示す無端リンク装置4,5におけるリンク装置の配置を例示している。この図で、内外2重の点線がリンクガイドレール3を示し、これらの間に示された鋸歯状の線がリンク装置200を示している。
【0104】
この図は、MD方向の所定の延伸の量を得る配置であり、この配置では、延伸領域10に存在するリンク装置の数は、MD方向の延伸の量がより少ないか0である場合における数よりも少なくなっている。つまり、延伸領域10におけるフィルム側レール36と反フィルム側レール37との間のシート状物の幅方向についての距離が、搬送スペース2の出口側に向かうにつれて小さくなっており、リンク装置同士の移動方向(リンクガイドレール3の方向)についての間隔が増大している。このため、リンクガイドレール3の戻り側において、上記減少したリンク数を増大させることが必要となる。
【0105】
すなわち、予熱領域9の入口のスプロケット6と熱固定領域11出口側のスプロケット8との間の戻り側レール上でリンク数を調節する。すなわち、戻り側レールの装置内側
(リンクガイドレール3の内周側)のレールと装置外側(リンクガイドレール3の外周側)のレールとの間の距離を増大させる箇所を配置し、この箇所でのリンク同士の距離を減少させてリンクガイドレール3の単位長さ当たりのリンク数を大きくする。
【0106】
本実施例では、図示する通り、熱固定領域11の戻り側レール上で、内外リンクガイドレール3同士の間の距離を調節してリンク数を増大させる貯留部62を配置している。このために、上記の通り外周側の戻り側レールを下方から支持するレールベース52をスライドベース49またはレールベース51に対してTD方向に移動させる構成を備えている。この貯留部62では内周側のリンクガイドレール3は略直線状であり、さらにまた、外周側のリンクガイドレール3を支持するレールベース52は略直線状に延在する梁材で構成されており、この貯留部62でのレールベース52の移動によるリンクの間隔の変更を容易にしリンク装置の移動をスムーズにしている。
【0107】
上記の通り、熱固定領域11における無端リンク装置4,5は、スライドベース49のシート状物側でフィルム側レール60を支持するレールベース50および戻り側レールの外周側レールを支持するレールベース52が、これらの間に配置されたスライドベース
49およびこの上方に配置され反フィルム側レール61及び内周側の戻り側レールを支持するレールベース51に対してシート状物の幅方向(TD方向)について距離(隙間)を可変にする構成となっている。
【0108】
そして、熱固定領域11のリンクガイドレール3のスプロケット8の後流側において、略直線状の内周側のレールに対しリンク装置の移動方向について外周側のレールを末広がり状に配置して、後流に向かうにつれて間隔を増大させている。これにより、リンク同士の間隔が減少しリンク装置が収縮して、リンクガイドレール3の単位長さ当たりのリンク数が増大する。この貯留部62の後流側では、リンク装置は予熱領域10の戻り側レール内外周レール間隔により設定されるリンク間隔から定まる単位長さ当たりのリンク数で、無端リンク装置5の入口側のスプロケット6に向かって移動する。予熱領域9の戻り側レールのスプロケット6の上流側においても同様である。
【0109】
さらに、本実施例の延伸機1では、シート状物の左右両端側の無端リンク装置4,5各々について、走行するリンク装置200の各等長リンク201の通過を検知するセンサ
703,703′が備えられている。本実施例の無端リンク装置4,5では、内周および外周のガイドレール3の間隔が無段階に可変可能であり、特に、内周側(反シート側)のガイドレール6の位置が固定されてこれに対して外周側(シート側)のガイドレール5の位置が調節される。そこで、センサ703,703′は、内周側のガイドレール6の側において走行するリンク装置200の各等長リンク201の通過を検知するように配置されている。
【0110】
例えば、図2に示す等長リンク201のリンクプレート209上方に配置された係合ピン219の上方に非接触による検知手段(例えば光学センサ)であるセンサ703または703′が配置され、係合ピン219上面に配置された反射部材からの光を検知して等長リンク201の通過を検知して、これを出力する。このセンサ703または703′の出力は、延伸機1の動作を調節する制御装置704に送信され、制御装置704はこの出力を受けて、等長リンクがセンサ703,703′の位置を通過したこと、または等長リンク201の特定のものの位置を検出することができる。
【0111】
このようなセンサ703,703′は、等長リンク201の上方ではなく、その位置が熱固定領域11のスライドベース49に固定されたガイドレール6の内周側であって、リンク軸208の内周側(反シート側)に配置されていても良い。本実施例のセンサ703,703′は、延伸領域10の出口のシート状物の搬送方向の直下流側であって、熱固定領域11の上流端の近傍に配置されている。
【0112】
本実施例の延伸機1は、延伸領域10においてシート側、反シート側のガイドレール5,6の間隔が搬送方向について変化してリンク装置の各等長リンク201同士の間隔が変化する一方、熱固定領域11は基本的に両者の間隔がほぼ一定にされる構成である。このため熱固定領域11では等長リンク201同士の間隔は基本的に変化無い。
【0113】
制御装置704は、センサ703,703′からの出力を用いて、シート状物の両端側の等長リンク201同士の通過時刻(通過タイミング)の差から、無端リンク装置4,5の走行するリンク装置200同士の同期のずれを検出することができる。すなわち、本実施例の延伸機1では、シート状物の両側において、略同一距離で対称形のガイドレール3の配置となるように構成され、シート状物を幅方向に均一な力を作用させて延伸する構成である。このように配置された両側のガイドレール3上を走行するリンク装置200の各等長リンク201は、シート状物の搬送方向について、面対称の位置では同一の開き角度であって同一の等長リンク装置間隔になるように構成される。
【0114】
しかしながら、等長リンク201の加工精度のばらつきやリンク装置200の走行時の抵抗のばらつき、あるいは制御の誤差やシート状物両端側のガイドレール3の配置や間隔の差等により、対称の位置における等長リンク201の開き角度や等長リンク201同士の間隔が同一とならない場合が有る。また、走行時の抵抗といったリンク装置200に作用する外力の大きさが時間とともに変動することから、ガイドレール3上の所定の位置におけるこれらのばらつきも時間的に変化して、典型的には脈動といった繰り返しのパターンをなす変化を示すことが、発明者らの検討により判った。
【0115】
本実施例では、このような無端リンク装置4,5のリンク装置200同士の動作の同期にずれが生じたことが検知されると、これを抑制するように、制御装置704がリンク装置200を駆動する入口側のスプロケット6または7および出口側のスプロケット8の動作を調節する。より具体的には、入口側のスプロケット5を回転駆動するモータ701,701′および出口側のスプロケット8を回転駆動するモータ702,702′に動作指令を発信して、回転速度やトルクの大きさを調節することにより、リンク装置200同士の同期のずれを抑制する。
【0116】
センサ:固定レール側でリンク検知→制御装置が出入口スプロケ駆動モータ制御
上記の通り、等長リンク201の同期のずれの大きさにはパターンが存在する。これは、例えば周期やその増減の順序等がある。このような同期のずれは、等長リンク201間隔が変化している延伸領域10において増長されると考えられる。このことから、センサ703,703′を延伸領域10の下流端の直下流側、熱固定領域11の上流端近傍に配置して、この位置でのリンク装置200の同期のずれを検出する。
【0117】
熱固定領域11では、ガイドレール3の内周側および外周側の間隔は一定である場合、等長リンク201同士の間隔は略同一となること、およびシート状物が熱固定される領域であることから、本実施例においてリンク装置200の同期が熱固定領域11で大きく変化することは少ない。このことから、センサ703,703′を熱固定領域11であってシート状物を等長リンク201が把持している領域に配置することで、両側のリンク装置200の同期のずれを十分に検知することが可能であるが、延伸領域10に最も近接した箇所が最良と考えられ、本実施例ではセンサ703,703′は上記の通りに配置されている。
【0118】
上記同期のずれのパターンを得るためには、リンク装置200を集会させることが必要となる。特に、長期にわたるパターンを検出するためには、リンク装置200を少なくとも一周回させることが必要となる。本実施例では、センサ703,703′によりリンク装置200を構成する各々の等長リンク201の通過が検知される。
【0119】
このため、各々の等長リンク201の上部である係合ピン219の上面に反射部材が配置されている。このように構成された等長リンク201の通過が一周に相当する回数だけ検知された場合一周回したと検出できる。このような周回に依るパターンを検出する上で、少なくとも4個以上の等数間隔の等長リンクを検知するようにしてもよい。
【0120】
本実施例では、このようにして検出された同期のずれのパターンに応じて、このずれの大きさを抑制するリンク装置を動作させるパターンを検出し、この動作のパターンを実現するように、入口および出口のスプロケット5,8を駆動するモータ701,701′,702,702′に制御装置704が指令を発信してその動作を調節する。例えば、周期的にずれが増減することが検出された場合には、その周期の位相に応じてこれと逆の位相のずれを生起させるようにモータ701,701′,702,702′に制御装置704が指令を発信してその動作を調節する。
【0121】
あるいは、動作の増減のパターンの軸対称の増減となるパターンを生起するようにモータ701,701′,702,702′に制御装置704が指令を発信してその動作を調節する。本実施例では、熱固定領域11上流端部のセンサ703,703′により各等長リンク201の通過、あるいは位置を検出して、この検出に基づいて等長リンク201を走行させるモータ701,701′,702,702′に上記のパターンを生起させて延伸領域10における等長リンク201の位置や間隔を調節する。
【0122】
このため、リンク装置200を動作させるパターンを検出してから、所定の時間のタイムラグを経過した後、上記動作を開始することが効果的である場合が有る。この場合、制御装置704は、動作パターンを開始するタイミングを調節する。例えば、所定の等長リンク201が対応する同期のずれのパターンに関する位相や増減の順序に応じて検出された時間だけ経過後に上記動作のパターンを開始する。
【0123】
上記同期のずれを抑制するリンク装置200の動作のパターンは、図示しない記憶装置に予め記憶され、シート状物を延伸する条件と同一の条件の動作パターンを制御装置704が選択して読み出して利用するようにしても良い。また、動作のパターンをファジー制御を用いても良く、熱固定部10上流端のセンサ703,703′の出力から検出されたリンク装置200同士の同期のずれを熱固定領域11においてリアルタイムに修正するための調節動作と併用して同期のずれを抑制しても良い。
【0124】
次に、本実施例の同期のずれを抑制するための動作の調節の流れを説明する。図9は、図1に示す実施例に係るリンク装置200の同期のずれを抑制するように動作の流れを示すフローチャートである。
【0125】
本実施例では、製品としてのシート状物を延伸する動作を行う前に、同期ずれのパターンを検出するための学習運転を行う。この検出したずれのパターンを抑制するように設定された動作のパターンを実現するように、出入口側のスプロケット5,8の駆動を調節しつつ製品用のシート状物の延伸を行う。
【0126】
まず、学習運転901を行う前に、シート状物を延伸するための延伸機1の動作条件を設定し、延伸機1のガイドレール3やリンク装置200を含む無端リンク4,5の配置を調節する(ステップ903)。この後、製品用のシート状物と同等のシート状物を搬送スペース2に搬送して延伸を開始する(ステップ904)。
【0127】
無端リンク装置4,5各々のリンク装置200が周回し、センサ703,703′において、各リンク装置200を構成する各等長リンク201の通過が検知され、制御装置
704において両者の同期のずれとその大きさの変動のパターンが検出される(ステップ905,906)。
【0128】
さらに、制御装置704が、この検出されたパターンに基づいて、同期のずれを抑制するためのリンク装置200の動作、およびモータ701,701′,702,702′の動作のパターンを検出し設定する(ステップ907)。この動作のパターンは、図示しない記憶装置に予め記憶されたパターンの情報の中から選択しても良く、また、制御装置
704内に配置された演算装置を用いて算出しても良い。さらに、上記の時間差(タイムラグτ)を、同様に記憶装置内の情報からの選択または演算した結果を用いて設定する。これらの設定した結果は、図示しない前記制御装置内の演算器と通信可能に配置された記憶装置内に記憶される。
【0129】
さらに、制御装置704は、同期のずれを修正するためのリンク装置200の駆動の調節を行う際の基準位置(原点)となる等長リンク201を選択し設定する (ステップ908)。この原点リンクの位置、あるいは特定の位置を通過したことを検出するセンサをセンサ703,703′と異なる位置に配置しても良い。本実施例では、センサ703,703′と併用する。
【0130】
この学習運転が終了後に製品用のシート状物の延伸を実施する。本実施例では、学習運転のシート状物と製品用のシート状物とは同一のロールから切れ目無く供給されたものであって、両者が連続して延伸される。
【0131】
ステップ908が終了して学習運転から製品の延伸運転を開始することを制御装置704が検知すると、現在の動作条件で延伸機1が動作されてシート状物の延伸を持続する。無端リンク装置4,5の各リンク装置200の同期のずれがセンサ703,703′の出力に基づいて検出され、そのずれの大きさが所定値δより大きいか否かが判断される(ステップ909)。
【0132】
ずれがδ以下であると判断された場合には、ステップ909を繰り返しつつ現在の延伸動作を持続する。δより大きい場合には、ステップ910に進み原点リンクの位置が検出される。
【0133】
センサ703,703′により原点リンクの位置が検出されるまで延伸機1の動作を持続し、原点リンクが検知されるとステップ911に進み上記時間差のためのタイムラグτが経過するまで延伸を持続する。τ経過後、ステップ907において設定された記憶された動作パターンが読み出され具現化するように、モータ701,701′,702,
702′に動作指令が発信され、引続き熱固定領域11において同期ずれを低減するための動作を動作パターンに畳重して、両者を並行するように調節する(ステップ912)とともに、ステップ909に戻る。
【0134】
本実施例では、シート状物の入口側および出口側のスプロケット6または7,8を駆動することで、リンク装置200を入口側から押し込み、出口側で引っ張る構成となっている。このため、リンク装置200にスプロケット6または7,8から印加されるこれらの外力が釣り合って中立状態となる箇所がリンク装置200のシート状物の搬送側の走行経路上に形成される。
【0135】
本実施例では、このような中立点は延伸領域10に位置するように、スプロケット6または7,8が駆動されており、中立点近傍では等長リンク201に作用する押し込みおよび引っ張りの力が小さいため、等長リンク201が遊動し易く、同期のずれが生起し易い。このため、本実施例では、このような中立点の交流側であって、等長リンク201の動作が安定する領域の最も中立点に近接した位置である熱固定領域11の上流端部にセンサ703,703′を配置している。
【0136】
また、本実施例では、同期のずれを入口側および出口側のスプロケット5,8を駆動するモータ701,701′,702,702′の動作を調節しているが、ガイドレール3の間隔を調節して等長リンク201同士の間隔、開き角度を調節するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明のシート状物の延伸機の構成の概略を説明する上面である。
【図2】図1に示すシート状物の延伸機のリンク装置の構成の概略を模式的に示す図である。
【図3】図1に示すシート状物の延伸機に係る予熱部の構成の概略を示す縦断面図である。
【図4】図1に示すシート状物の延伸機に係る延伸部の構成の概略を示す縦断面図である。
【図5】図1に示すシート状物の延伸機の熱固定部の構成の概略を示す縦断面図である。
【図6】図3に示す延伸部のガイドレール部近傍を拡大して示す縦断面図である。
【図7】図1に示す実施例のリンクガイドレール上のリンク装置の配置を示す模式図である。
【図8】図1に示すシート状物の延伸機がシート状物を延伸する動作の際の装置各部分の配置の概略を示す正面図及び側面図である。
【図9】図1に示す実施例に係るリンク装置200の同期のずれを抑制するように動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0138】
1 延伸機
2 搬送スペース
3 ガイドレール
4,5 無端リンク装置
6,7,8 スプロケット
9 余熱領域
10 延伸領域
11 熱固定領域
701,701′,702,702′ モータ
703,703′ センサ
704 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性を有するシート状物の幅方向両端で向かい合って配置され、前記シート状物の各端部を把持する連結された複数の等長リンクを略水平面上の略閉じた経路に沿って案内して前記シート状物を入口側から出口側に搬送しつつ延伸した後入口側に戻して走行させる無端リンク装置の対を備えたシート状物の延伸機であって、
前記無端リンク装置の各々は、前記シート状物の入口側であってこのシート状物を略平行に搬送して予熱するための予熱領域と、この後流側に配置されこのシート状物を前記経路の末広がり状の部分に沿って搬送し延伸するための延伸領域と、この後流側に配置され前記シート状物を前記レールの略平行な部分に沿って搬送して熱固定するための熱固定領域と、前記シート状物を搬送する前記等長リンクを案内する前記シート状物に近い搬送側の部分と前記等長リンクの戻りを案内する前記シート状物に遠い戻り側部分とを有したレールと、このレールの内側であって前記シート状物の入口側及び出口側に配置され前記複数の等長リンクを駆動する入口側スプロケット及び出口側スプロケットと、前記無端リンク装置の対の各々の前記シート状物の搬送の方向について前記熱固定領域に配置され前記走行する複数の等長リンクの位置を検知するセンサとを備え、
これらのセンサからの出力から前記無端リンク装置の対の前記等長リンクの走行の同期のずれのパターンを検出して該パターンに応じて前記入口側および出口側のスプロケットの駆動を調節する制御装置とを備えたシート状物の延伸機。
【請求項2】
請求項1に記載のシート状物の延伸機であって、
前記制御装置は、前記センサが検知した前記複数の等長リンクの全ての位置に基づいて前記パターンを検出するシート状物の延伸機。
【請求項3】
請求項1に記載のシート状物の延伸機であって、
前記制御装置は、前記センサが検知した前記複数の等長リンクのうちの均等な間隔毎の少なくとも4つの位置に基づいて前記パターンを検出するシート状物の延伸機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのに記載のシート状物の延伸機であって、
前記パターンの検出をするための運転を行って後製品としての前記シート状物の延伸を行うシート状物の延伸機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のシート状物の延伸機であって、
前記センサが前記入口側のスプロケットおよび出口側のスプロケットの間の前記等長リンクの中立点の下流側であって前記熱固定領域の上流部近傍に配置されたシート状物の延伸機。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載のシート状物の延伸機であって、
前記制御装置が、前記同期のずれのパターンに応じた前記入口側および出口側のスプロケットの動作のパターンを検出してこれを用いて前記同期のずれを抑制するように前記前記入口側および出口側のスプロケットを駆動するシート状物の延伸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−126433(P2008−126433A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310940(P2006−310940)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】