説明

シート状蓋片の係止構造

【課題】舌片状差込片を差込スリットから外れ難くして安定した係止状態を保持できると共に、簡易な開放操作でこれらの係止状態を開放できるシート状蓋片の係止構造を提供する。
【解決手段】シート状蓋片13の先端部分に切込み22を入れて先端側を基端部14aとして形成された舌片状差込片14を、シート状被係止部12bの上端部分に切込み23を入れることで形成された差込スリット15に差し込んで構成されるシート状蓋片の係止構造10であって、舌片状差込片14には、これの中央部分に切込み24を入れて形成された返し舌状片25が設けられていると共に、この返し舌状片25にシート状蓋片13の表面側に突出する係止突部26が設けられている。また舌片状差込片14を差込スリット15に差し込んだ際に、返し舌状片25の係止突部26は、差込スリット15を通過してケース本体12の背面12bの上端部分の裏面側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状蓋片の係止構造に関し、特に、シート状蓋片の先端部分に形成された舌片状差込片を、シート状被係止部に形成された差込スリットに差し込んで係止することにより構成されるシート状蓋片の係止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製や紙製のシート材料を用いて形成される種々の包装箱や箱容器が知られている。これらの包装箱や箱容器では、例えば胴部の上端開口の開口縁部から連続して延設するシート状蓋片を用いて上端開口を開閉して、内部に各種の物品や収容物を出入れ可能に収容できるようになっている。
【0003】
また、これらの包装箱や箱容器では、シート状蓋片によって上端開口を覆った状態を保持するための係止片として、いわゆるこはぜタイプの舌片状差込片が用いられる場合がある。このようなこはぜタイプの舌片状差込片は、例えば胴部に切込みを入れることで形成した差込スリットに、着脱可能に差し込まれて係止されることにより、シート状蓋片によって上端開口を開閉可能に覆うことができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、プラスチック製や紙製のシート材料からなる包装箱や箱容器に、こはぜタイプの舌片状差込片を用いた係止構造を採用した場合、これらのシート材料は、撓み変形が可能な可撓性を備えていることから、例えば包装箱や箱容器の持ち方によっては、箱形状を構成する各面の変形が大きくなり、箱形状の変形に伴って、舌片状差込片の差込スリットへの差込み状態が外れ易くなる。
【0005】
このようなことから、例えば特許文献1では、舌片状差込片と差込スリットとの係合部に加えて、舌片状差込片よりも先端側でシート状蓋片を胴部にさらに係合させることにより、胴部の開口を閉塞させた状態を確実に維持できるようにする工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−323069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の舌片状差込片を差込スリットから外れ難くした係止構造では、2箇所の係合部でシート状蓋片が係止されることにより係止状態が効果的に強化される一方で、開放時には舌片状差込片と差込スリットとの係合部を開放するのに先立って、これの先端側の係合部を開放する必要があるため、係合状態のシート状蓋片の開放時に一般的に行われる、例えばシート状蓋片の先端を摘んだり引っ掛けて持ち上げるだけの簡易な開放操作だけでは、舌片状差込片を差込スリットから取り外す際の取り扱いが不便になる場合がある。
【0008】
本発明は、シート状蓋片を閉じた際に舌片状差込片を差込スリットから外れ難くして安定した係止状態を保持できると共に、シート状蓋片を開く際には、簡易な開放操作で舌片状差込片を差込スリットから容易に取り外すことのできるシート状蓋片の係止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート状蓋片の先端部分に切込みを入れることで該先端部分の先端側を基端部として形成された舌片状差込片を、該先端部分が重ね合わされるシート状被係止部に切込みを入れることで形成された差込スリットに差し込んで係止することにより構成されるシート状蓋片の係止構造であって、前記舌片状差込片には、切込みを入れることで形成された該舌片状差込片の先端側を基端部とする返し舌状片が設けられていると共に、該返し舌状片の中央部分に前記シート状蓋片の表面側に突出する係止突部が設けられており、前記舌片状差込片を前記差込スリットに差し込んだ際に、前記返し舌状片の係止突部は前記差込スリットを通過して前記シート状被係止部の裏面側に配置されるシート状蓋片の係止構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシート状蓋片の係止構造によれば、シート状蓋片を閉じた際に舌片状差込片を差込スリットから外れ難くして安定した係止状態を保持できると共に、シート状蓋片を開く際には、簡易な開放操作で舌片状差込片を差込スリットから容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係るシート状蓋片の係止構造を用いた包装箱によって吐出容器を包装した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係るシート状蓋片の係止構造を用いた包装箱の、(a)はシート状蓋片を開いた状態の斜視図、(b)はシート状蓋片を閉じる途中の状態の斜視図、(c)はシート状蓋片を閉じた状態の斜視図である。
【図3】シート状蓋片の先端部分に設けられた舌片状差込片の正面図である。
【図4】舌片状差込片を差込スリットに差し込んで係止した状態の正面図である。
【図5】舌片状差込片を差込スリットに差し込んで係止する状況を説明する図5のA−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい一実施形態に係るシート状蓋片の係止構造10は、図1及び図2(a)〜(c)に示すように、液収容部20aと液吐出部20bとからなる吐出容器20を包装する包装箱として、例えば可撓性を有するプラスチック製の透明なシート材料を用いて形成されたクリアケース11において採用されたものである。すなわち、本実施形態の係止構造10は、箱状のケース本体12に液収容部20aを収容すると共に液吐出部20bをケース本体12から上方に突出させた状態で、クリアケース11を吐出容器20に装着する際に、ケース本体12の上端開口縁部の一辺部12aから連続して延設するシート状蓋片13の、枝分かれした二股片13a,13aの各先端部分に各々設けられた舌片状差込片14を、ケース本体12の一辺部12aと対向する背面12bの上端部分に設けられた差込スリット15に、安定した状態で係止させると共に、簡易な開放操作によって舌片状差込片14を差込スリット15から容易に取り外すことができるようにするための構造として採用されたものである。
【0013】
ここで、本実施形態では、吐出容器20の液収容部20aは、略全周が曲面となった縦長の略楕円球形状を備えていて、その外周面に能書きを施し難いことから、略楕円球形状の液収容部20aを覆って略六面体形状のクリアケース11を装着して、このクリアケース11の外周面に能書きを施し易くなっていると共に、液吐出部20bをクリアケース11から上方に突出させて露出させたままの状態で、吐出容器20を陳列することができるようになっている。
【0014】
このため、クリアケース11は、ケース本体12の上端開口縁部の一辺部12aから連続して延設するシート状蓋片13を、首部装着開口16を挟んで枝分かれした一対の二股片13a,13aで構成すると共に、シート状蓋片13が延設する一辺部13aと対向する他辺部13cから連続して延設して、先端縁部に半円形状の位置決め切欠き部17が形成された位置決め片18が設けられている。
【0015】
また、吐出容器20をクリアケース11で包装するには、シート状蓋片13と位置決め片18を開いた状態で(図2(a)参照)、吐出容器20の液収容部20aをケース本体12の内部に上方から収容した後に、位置決め片18を、内側に折り曲げるようにして位置決め切欠き部17を吐出容器20の首部に沿わせて配置する。さらに、シート状蓋片13の首部装着開口16に吐出容器20の首部を挿通すると共に、内側に折り曲げた位置決め片18に上方から重ね合わせるようにしながら、シート状蓋片13の各二股片13a,13aの先端部分をケース本体12の一辺部12aと対向する面12bの上端部分まで延設させる(図2(b)参照)。この状態で、舌片状差込片14を差込スリット15に差し込んで係止することによって(図2(c)参照)、図1に示すように、吐出容器20にクリアケース11が装着された陳列用の形態が形成されることになる。
【0016】
なお、本実施形態では、クリアケース11は、ケース本体12の一対の側面12d,12dの上部が切欠き窓部21として切り欠かれており、これによってケース本体12の上部は特に変形し易い構造となっている。
【0017】
そして、本実施形態のシート状蓋片の係止構造10は、シート状蓋片13(二股片13a,13a)の先端部分に切込み22を入れることで先端部分の先端側を基端部14aとして形成された舌片状差込片14を、この先端部分が重ね合わされるシート状被係止部として、ケース本体12の一辺部12aと対向する背面12bの上端部分に切込み23を入れることで形成された差込スリット15に差し込んで係止することにより構成される係止構造であって、図3〜図5に示すように、舌片状差込片14には、これの好ましくは中央部分に切込み24を入れることで形成された、舌片状差込片14の先端側を基端部25aとする返し舌状片25が設けられていると共に、この返し舌状片25の好ましくは中央部分に、シート状蓋片13の表面側に突出する係止突部26が設けられている。また舌片状差込片14を差込スリット15に差し込んだ際に、返し舌状片25の係止突部26は、差込スリット15を通過してケース本体12の背面12bの上端部分の裏面側に配置されるようになっている(図5参照)。
【0018】
本実施形態では、舌片状差込片14は、二股片13a,13aの先端部分に切込み22を入れることによって各々形成される。切込み22は、略半円弧形状の両端分をこれよりも小さな略半円弧形状に切り返した切返し部22aを有する形状に切り込まれており、これによって、シート状蓋片13の先端側を基端部14aとして、先端側とは反対側に片持梁状に張り出す略半円形状の舌片状差込片14が形成されることになる。
【0019】
また、返し舌状片25は、舌片状差込片14の好ましくは中央部分に切込み24を入れることによって各々形成される。切込み24は、矩形形状の3辺部に相当するコの字形状に切り込まれており、これによって、舌片状差込片14とは反対側を向いた、舌片状差込片14の先端側を基端部25aとして、シート状蓋片13の先端側に片持梁状に張り出す略矩形形状の返し舌状片25が形成されることになる。
【0020】
さらに、本実施形態では、係止突部26は、返し舌状片25の好ましくは中央部分を、例えば加熱変形させて裏面側から表面側に突出させることにより、例えば半球形状に突出する突起として形成されることになる。
【0021】
さらにまた、本実施形態では、ケース本体12の背面12bの上端部分に形成される差込スリット15は、舌片状差込片14が係止されるべき位置に、舌片状差込片14の基端部14aの幅を超える長さで直線状の切込み23を入れることによって、2箇所に設けられる。切込み23の両端部には斜め下方に向けて延設する補助切込み23aが形成されており、舌片状差込片14を差し込む際の差込スリット15の開口幅を広げさせて、差込み操作をスムーズに行えるようになっている。
【0022】
上述の構成を備える本実施形態のシート状蓋片の係止構造10では、シート状蓋片13を閉じる際には、図5に示すように、二股片13a,13aの先端部分に設けられた舌片状差込片14を、各々、ケース本体12の背面12bの上端部分に設けられた差込スリット15に差し込んで係止する。すなわち、基端部14aからシート状蓋片13の先端側とは反対側に片持梁状に張り出す舌片状差込片14を、その先端部分を内側に弾性変形させつつ、係止突部26が通過するまで差込スリット15に差し込んでゆけば、差し込まれた舌片状差込片14は、その板ばね状の弾性復元力によって、ケース本体12の背面12bの裏面に押し付けられる力を生じて差込スリット15に係止されることになる。
【0023】
また、本実施形態によれば、舌片状差込片14は、係止突部26を有する片持梁状の返し舌状片25を有しているので、この係止突部26が差込スリット15を通過することにより返し舌状片25が下方に弾性変形して、係止突部26をケース本体12の背面12bの裏面に押し付ける付勢力を生じることになる。これによって、舌片状差込片14の差込スリット15への係止状態が強化されて、例えばクリアケース11の各面の変形が大きくなった場合でも、舌片状差込片14が差込スリット15から外れるのを効果的に回避することが可能になる。
【0024】
一方、閉じていたシート状蓋片13を開く際には、シート状蓋片13の開放時に一般的に行われる、例えばシート状蓋片13の先端を摘んだり引っ掛けて持ち上げるだけの簡易な開放操作を行えば、舌片状差込片14の片持梁状の返し舌状片25は、舌片状差込片14の先端側を基端部25aとしてスムーズに弾性変形しつつ下方に回転するようにして移動するので、このような返し舌状片25の弾性変形によって係止突部26が差込スリット15を乗り越えることよって、舌片状差込片14の差込スリット15への係止状態が容易に開放されることになる。
【0025】
したがって、本実施形態のシート状蓋片の係止構造10によれば、シート状蓋片13を閉じた際に舌片状差込片14を差込スリット15から外れ難くして安定した係止状態を保持できると共に、シート状蓋片13を開く際には、簡易な開放操作で舌片状差込片14を差込スリット15から容易に取り外すことが可能になる。
【0026】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、返し舌状片は、舌片状差込片の中央部分に設けられている必要は必ずしも無く、略矩形形状を有している必要は必ずしも無い。また、返し舌状片は、各舌片状差込片に複数設けられていても良い。さらに、係止突部は、返し舌状片の中央部分に設けられている必要は必ずしも無く、半球形状以外の形状で突出していても良い。さらにまた、本発明の係止構造が設けられる包装箱や箱容器は、プラスチック製の他、紙製のシート材料を用いて形成されるものであっても良い。
【符号の説明】
【0027】
10 シート状蓋片の係止構造
11 クリアケース(包装箱)
12 ケース本体
12a ケース本体の一辺部
12b ケース本体の一辺部と対向する背面(シート状被係止部)
13 シート状蓋片
13a 二股片
14 舌片状差込片
14a 舌片状差込片の基端部
15 差込スリット
20 吐出容器
21 切欠き窓部
22,23,24 切込み
25 返し舌状片
25a 返し舌状片の基端部
26 係止突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状蓋片の先端部分に切込みを入れることで該先端部分の先端側を基端部として形成された舌片状差込片を、該先端部分が重ね合わされるシート状被係止部に切込みを入れることで形成された差込スリットに差し込んで係止することにより構成されるシート状蓋片の係止構造であって、
前記舌片状差込片には、切込みを入れることで形成された該舌片状差込片の先端側を基端部とする返し舌状片が設けられていると共に、該返し舌状片の中央部分に前記シート状蓋片の表面側に突出する係止突部が設けられており、
前記舌片状差込片を前記差込スリットに差し込んだ際に、前記返し舌状片の係止突部は前記差込スリットを通過して前記シート状被係止部の裏面側に配置されるシート状蓋片の係止構造。
【請求項2】
前記返し舌状片は、前記舌片状差込片の中央部分に設けられている請求項1記載のシート状蓋片の係止構造。
【請求項3】
前記係止突部は、前記返し舌状片の中央部分に設けられている請求項1又は2記載のシート状蓋片の係止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−195462(P2010−195462A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45650(P2009−45650)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】