説明

シート用ポケット

【課題】ポケット格納スペースは小さいが、収容物を出し入れする開口面積の大きなシート用のポケットを提供する。
【解決手段】シートに設けられた凹部20内に水平方向へ出入自在に配され、凹部20内では折り畳み格納されており、凹部20から引き出すことで上面が開口する容器状に展開されるシート用ポケット10である。ポケット10の奥面には、平板状のスライドベース12が配されている。スライドベース12の周縁には、外方に延在する突起15が設けられている。凹部20の内壁には案内溝21が凹設されている。そして、ポケット10を凹部20から引き出すと、突起15が案内溝21で案内されながら、スライドベース12を含めてポケット10全体がシートの外方へスライド移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに設けられた凹部内に出入自在に配され、凹部内では折り畳み格納されており、凹部から引き出すことで容器状に展開されるシート用ポケットに関する。
【背景技術】
【0002】
シート用ではないが、この種のポケットとして下記特許文献1がある。特許文献1では、扇形状に展開可能な蛇腹状のポケットが、車両のインストルメントパネルに設けられている。特許文献1では、3つの形態が提案されている。第1形態では、図5,6に示すように、扇形状ポケット100の下端及び上縁後端を凹部101の内壁へ固定し、凹部開口を塞ぐ蓋板(前面板)102を開けることでポケット100を展開し、上面を開口している。符合110はインストルメントパネルである。第2形態では、ポケットを凹部内へ水平に(横臥状態で)配したうえで、これの底面に平板状のスライドベースを配している。そして、スライドベースと共にポケットを凹部から水平に引き出すことで、扇形状のポケットを側方に開口させている。第3形態では、第1形態と同様にポケットを凹部内へ縦向きに配しているが、スライドベースを配したうえで、スライドベースと共にポケットを凹部から上下方向に引き出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−42424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の第1形態では、ポケットの下端及び上縁後端が凹部内壁に固定されているので、図6に示すように、蓋板102を開いてポケット100の上面を開口させても、当該ポケット100の奥部は凹部101内に留まっている。これでは、ポケット100の上面開口の一部が凹部101内にあるので、実際に収容物を出し入れできる開口面積は小さく、収容物を出し入れし難い。一方、第2・第3形態では、スライドベースを設けてポケット全体を凹部から引き出しているが、凹部の奥行を大きくする必要がある。これでは、凹部寸法(ポケット格納スペース)が制限されるシートへは適用し難い。仮にシートへ適用するとしても、シートを大型化しなければならなくなる。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、その目的は、ポケット格納スペースは小さいが、収容物を出し入れする開口面積の大きなシート用のポケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのための手段として本発明は、シートに設けられた凹部内に水平方向へ出入自在に配され、前記凹部内では折り畳み格納されており、前記凹部から引き出すことで上面が開口する容器状に展開されるシート用ポケットであって、前記ポケットの奥面には、平板状のスライドベースが配されており、前記スライドベースの周縁には外方に延在する突起が設けられており、前記凹部の内壁には案内溝が凹設されている。そして、前記ポケットを前記凹部から引き出すと、前記突起が前記案内溝で案内されながら、前記スライドベースを含めて前記ポケット全体がシート外方へスライド移動することを特徴とする。
【0007】
これによれば、凹部から引き出すことで上面が開口するポケットを水平方向に出入自在としているので、ポケットの格納スペースが小さくなり、シートへも好適に適用できる。なお、本発明において水平方向とは、上下方向ではないことを意味しており、必ずしも真横に出し入れされるものではなく、若干斜め上方又は斜め下方へ出し入れする場合も含む。そのうえで、ポケットを凹部から引き出すと、スライドベースを含めてポケット全体がシート外方へスライド移動するので、収容物を出し入れする開口面積を大きくすることができる。また、スライドベースは突起が案内溝で案内されながらスライドするので、ポケット全体を円滑に出し入れすることができる。
【0008】
前記突起及び案内溝は、スライドベースの一縁や凹部周壁の一面に設けるのみでもよいが、前記突起を前記スライドベースの上下両縁又は左右両縁へ対向状に設けると共に、前記案内溝も前記凹部内壁の対向面に設けることが好ましい。これによれば、スライドベース延いてはポケットをより円滑に安定してスライドさせることができる。
【0009】
また、前記ポケットには、前記凹部内での折り畳み形状を保形するマグネットを設けておくことが好ましい。これによれば、ポケットを確実にコンパクトに折り畳み格納することができる。また、ポケットの反発力(復元力)等によってポケットが凹部内において展開され、格納状態においてポケットが不用意に凹部から突出することも避けられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上面が開口する折り畳み可能なポケットを水平方向へ出し入れしているので、ポケットの格納スペースを小さくできる。また、ポケットを凹部から引き出す際にポケットの奥面もシート外方へスライド移動するので、ポケットの上面開口のほぼ全体を収容物の出し入口として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】シートの斜視図である。
【図2】ポケットの分解斜視図である。
【図3】ポケット格納状態における突起部での断面図である。
【図4】ポケット展開状態における突起部での断面図である。
【図5】従来技術のポケット格納状態の断面図である。
【図6】従来技術のポケット展開状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、適宜図面を参照しながら本発明の代表的な実施形態について説明するが、これに限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0013】
図1に示すように、本発明のポケット10は、代表的には自動車などの車両用シート1へ適用される。シート1は、乗員の着座部となるシートクッション2と、乗員の背凭れとなるシートバック3と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト4と、シートクッション2の側面を覆う樹脂製のサイドシールド5とを有する。そのうえで、ポケット10がシート1の側面に設けられている。詳しくは、図2に示すように、サイドシールド5に凹部20が凹設されており、当該凹部20内へポケット10が水平方向へ出し入れ自在に配されている。
【0014】
図2に示すように、ポケット10は、当該ポケット10の前面に配され、サイドシールド5の凹部20の側面開口を塞ぐ蓋板11と、ポケット10の奥面に配される平板状のスライドベース12と、蓋板11とスライドベース12との間において展開・折り畳み可能なポケット本体部13とを有する。蓋板11及びスライドベース12の外形寸法は、凹部20の開口寸法とほぼ同じである。ポケット10を展開すると、上面に開口を有する容器状を呈する。本実施形態のポケット本体部13は、ポケット10の底壁と側壁を形成しているのみであり、蓋板11がポケット10の前壁を、スライドベース12がポケット10の奥壁を、それぞれ兼ねている。これにより、ポケット本体部13自体を容器状に形成するよりも材料コストを低減できる。蓋板11、スライドベース12、ポケット本体部13は、それぞれ合成樹脂製である。ポケット本体部13には、適宜布製の表皮を被せたり貼着することも好ましい。蓋板11及びスライドベース12とポケット本体部13とは、接着、ビス留め、ボタン留め、又は係合孔と突起による係合などによって互いに接合することができる。本実施形態では、蓋板11とポケット本体部13とは接着し、スライドベース12とポケット本体部13とはボタン14によって固定している。
【0015】
スライドベース12の周縁には、当該スライドベース12の平面方向外方に延在する複数の突起15が一体形成されている。詳しくは、スライドベース12の周縁のうち対向する上下両縁の左右二箇所に、突起15が突設されている。また、スライドベース12の背面には、複数(本実施形態では左右二箇所)のマグネット16が設けられている。詳しくは、図3,4に示すように、マグネット16は、これの表面がスライドベース12の背面とほぼ面一となる状態で埋設されている。
【0016】
一方、ポケット本体部13には、切欠き状の折溝が所定箇所に形成されていることで、折線が予め定められており、常に同じ状態で綺麗に折り畳まれるようになっている。そのうえで、ポケット本体部13には、図2に示すように、折り畳み形状を保形する複数のマグネット17が設けられている。詳しくは、ポケット本体部13が折り畳まれたとき、互いに重なり合う面同士に一対のマグネット17が対向状に配されている。本実施形態では、ポケット10の左右両側壁にそれぞれ一対のマグネット17を設けている。
【0017】
凹部20の内壁には、開口面近傍から奥端にかけて複数の案内溝21が凹設されている。詳しくは、凹部20の内壁のうち対向する上下両壁の左右二箇所に、案内溝21が設けられている。また、凹部20の奥壁には、スライドベース12に埋設されたマグネット16に臨む複数(本実施形態では左右二箇所)のマグネット22が設けられている。当該凹部20のマグネット22も、図3,4に示すように、これの表面が凹部20の奥壁とほぼ面一となる状態で埋設されている。そのうえで、各案内溝21にそれぞれ各突起15をスライド自在に係合させた状態で、ポケット10が凹部20内へ出し入れ自在に嵌め込まれる。
【0018】
次に、ポケット10の使用方法について説明する。先ず、ポケット10の不使用時は、図1、3に示すように、ポケット10は凹部20内にて折り畳み格納されている。このとき、蓋板11は、サイドシールド5とほぼ面一となっている。また、スライドベース12のマグネット16と凹部20のマグネット22とが互いに磁力によって引き合うことで、ポケット10が凹部20内で保持されている。このとき、両マグネット16・22はそれぞれスライドベース12と凹部20へ埋設されているので、スライドベース12と凹部20の奥壁とは近接している。これにより、凹部20の奥行き、すなわちポケット10の格納スペースをよりコンパクトにできる。また、ポケット本体部13には予め折れ線が形成されているので、綺麗且つコンパクトに折り畳まれている。そのうで、ポケット10(ポケット本体部13)の左右両側壁にそれぞれ設けられた一対のマグネット17によって、ポケット10の折り畳み状態が保形されている。これにより、ポケット10が不用意に凹部20から突出することが防がれる。
【0019】
ポケット10へ各種収容物を収容したいときは、図4に示すように、蓋板11をサイドシールド5の外方へ水平方向に引き出せばよい。このとき、ポケット本体部13も蓋板11に追従して引き出されることで、一対のマグネット17の磁力に抗して上面が開口した容器状に展開される。さらに本実施形態では、蓋板11及びポケット本体部13に追従して、スライドベース12も凹部20の外方へスライド移動する。これにより、蓋板11をサイドシールド5の外方へ水平方向に引き出せば、スライドベース12を含めてポケット10全体がシート1の外方へ引き出される。これにより、ポケット10の上面開口全体を収容物を出し入れする開口として利用できる。なお、スライドベース12は、各突起15がそれぞれ各案内溝21内でスライド案内されることで、円滑且つ安定してスライド移動する。ポケット10を凹部20内へ格納するときは、蓋板11を押し込めばよい。
【0020】
(変形例)
上記実施形態では、ポケット10をシート1の側面、すなわちサイドシールド5に設けたが、これに限らず、例えばシート1(シートクッション2)の前面、シート1(シートバック3やヘッドレスト4)の後面に設けることもできる。
【0021】
ポケット本体部13は、これ自体を容器状に形成したうえで、ポケット本体部13の前壁外面に蓋板11を、ポケット本体部13の奥壁外面にスライドベース12を設けることもできる。また、ポケット本体部13は布製とすることもできる。突起15及び案内溝21は、必ずしもスライドベース12の対向縁や凹部20の対向面に設ける必要は無く、いずれか一縁及び一面に設けてあればよい。また、上下対向状に設けるほか、左右対向状に設けることもできる。また、突起15及び案内溝21は、各縁及び内面の二箇所に設ける必要は無く、一箇所又は三箇所以上設けることもできる。
【0022】
ポケット10の折り畳み形状を保形する一対のマグネット17は、必ずしも設ける必要は無い。また、一対のマグネット17は、ポケット10の側壁に設けるほか、底壁に設けることもできる。スライドベース12のマグネット16及び凹部20のマグネット22も、必ずしも設ける必要は無い。この場合、不用意なポケット10の突出を避けるため、蓋板11と凹部20の内壁に、フックと係合片とを設けて係止することが好ましい。また、マグネット16・22は、必ずしもスライドベース12や凹部20の内壁に埋設する必要は無い。また、マグネット16・22は、二箇所に限らず一箇所または三箇所以上設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 シート
5 サイドシールド
10 ポケット
11 蓋板
12 スライドベース
13 ポケット本体部
15 突起
16・17・22 マグネット
20 凹部
21 案内溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに設けられた凹部内に水平方向へ出入自在に配され、前記凹部内では折り畳み格納されており、前記凹部から引き出すことで上面が開口する容器状に展開されるシート用ポケットであって、
前記ポケットの奥面には、平板状のスライドベースが配されており、
前記スライドベースの周縁には外方に延在する突起が設けられており、
前記凹部の内壁には案内溝が凹設されており、
前記ポケットを前記凹部から引き出すと、前記突起が前記案内溝で案内されながら、前記スライドベースを含めて前記ポケット全体がシート外方へスライド移動することを特徴とする、シート用ポケット。
【請求項2】
前記突起は、前記スライドベースの上下両縁又は左右両縁へ対向状に設けられており、前記案内溝も前記凹部内壁の対向面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシート用ポケット。
【請求項3】
前記ポケットには、前記凹部内での折り畳み形状を保形するマグネットが設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシート用ポケット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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