説明

シート積載装置および後処理装置

【課題】 トレイに載置された記録シートの浮き上がりを、より確実に防止して円滑な積載動作を実行するシート積載装置を提供する。
【解決手段】
複数の記録シートを順次トレイ60上に導入して積載していく記録シート積載装置であって、導入された記録シートが載置される載置面60aを有し、載置面60aにおける載置状態にある記録シートの後端部に対応する領域が後退してなる後退部60cが形成されたトレイ60と、記録シートの導入位置を挟む第1の位置と第2位置とに移動自在に設けられ、第1の位置への移動に伴い、記録シートの後端部を後退部60cに向けて押圧するガイド部材50と、ガイド部材50を第1と第2の位置に選択的に移動させる駆動手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシートを順次トレイ上に導入して積載するシート積載装置および当該シート積載装置を備えた後処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機等の画像形成装置では、当該画像形成装置から出力された記録シートにステープル処理などを施す後処理装置を付設して使用するケースが多くなっている。
このような後処理装置では、画像形成装置から出力された記録シートを順次トレイに導入して積載するシート積載装置を有し、ユーザから指定された枚数の記録シートがトレイに積載されると、ステープルユニットによりステープル処理が実行される。
【0003】
シート積載装置による記録シートのトレイへの導入は1枚ずつ行われるが、既にトレイ内に積載されている記録シートにカールが生じ、記録シートの導入位置の周辺部分がトレイのシート載置面から浮き上がっていると、記録シートの導入口を塞ぎ、新たに導入されてきた記録シートと衝突して、記録シートが折れ曲がったり、あるいは、浮き上がった記録シートの下に新たな記録シートが入り込んで積載順が入れ替ったりする不都合が生じるおそれがある。
【0004】
このような不都合が生じないように、例えば、特許文献1においては、トレイに導入されて載置された記録シートのカールで浮き上がった部分を、ロール状の押さえ部材で平坦な載置面に向けて押さえ付け、所定のタイミングでロール状の押さえ部材を記録シートから離間させて、次の記録シートを積載するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−83261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によっては、記録シートのカールが十分に矯正されず、押さえ部材の離間に伴いカール形状が復元し、記録シートの導入口を塞ぐおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、トレイに載置された記録シートの浮き上がりを、より確実に防止して円滑な積載動作を実行するシート積載装置および当該シート積載装置を備えた後処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るシート積載装置は、複数のシートを順次トレイ上に導入して積載していくシート積載装置であって、導入されたシートが載置される載置面を有し、当該載置面における載置状態にあるシートの後端部に対応する領域が後退してなる後退部が形成されたトレイと、前記シートの導入位置を挟む第1の位置と第2位置とに移動自在に設けられ、第1の位置への移動に伴い、前記後端部を前記後退部に向けて押圧する押圧部材と、前記押圧部材を第1と第2の位置に選択的に移動させる駆動手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
押圧部材が、シートの後端部をシートの載置面の後退部に向けて押圧するため、当該シート後端部を、カールによる浮き上がり方向と反対の方向に屈曲させることができ、これにより当該カールの矯正が容易となる。
このため、押圧部材による押圧が解除された後でも、従来の平坦な載置面にシートを押圧した場合に比べてカールが復元しにくくなり、シートの後端部がシートの導入位置を塞ぐおそれが大幅に低減され、円滑な積載動作を実行することが可能となる。
【0009】
また、前記載置面における後退部は、前記載置されたシートの後端に向かうにつれて後退量が漸増する傾斜面を有することが望ましい。
さらに、前記押圧部材の押圧面は平坦であって、前記第1の位置において前記傾斜面と押圧面が平行な状態でシートの後端部を傾斜面に押圧するように前記押圧部材が配置されていることが望ましい。
【0010】
また、前記載置面の、主面に対する前記傾斜面の傾斜角度が、5[°]以上、50[°]以下であることが望ましい。
ここで、前記後退部の載置面の主面からの最大後退量が、5[mm]以上30[mm]以下の範囲であることが望ましい。
また、前記シートを前記載置面に沿って導入するシート導入手段を備えることが望ましい。
【0011】
そして、前記トレイは、シート導入方向における両端部のうち、前記シート導入手段による導入位置に近い側の端部がもう一方の端部よりも上方となるように傾いていることが望ましい。
また、前記トレイは、異なるサイズのシートに対して、各サイズのシートの後端部が前記後退部に対応する領域内に位置するように、当該シートの上下方向における位置決めを行う位置決め手段を備えることが望ましい。
【0012】
なお、本発明は、上記シート積載装置を備え、画像形成装置から排出された複数の記録シートをトレイに積載して、当該記録シートに対して後処理を行う後処理装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における実施の形態に係る後処理装置が付設された複写機の構成を示す概略図である。
【図2】上記後処理装置の構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図3】上記後処理装置の要部拡大図である。
【図4】(a)〜(d)は、後処理装置の動作状況示す図である。
【図5】上記後処理装置の要部拡大図である。
【図6】(a)〜(d)は、変形例に係る後処理装置の動作状況示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る後処理装置が付設されたデジタル式複写機を例にして説明する。
図1は、当該デジタル式複写機(以下、単に「複写機」と言う。)1の概略図である。
同図に示すように、複写機1は、画像形成装置本体2の左側に後処理ユニット5を付設してなる。画像形成装置本体2は、プリンター部2bの上に、画像読取部3および原稿搬送部4をこの順番に積設して構成される。
【0015】
原稿搬送部4は、原稿トレイ4a上に載置された原稿を、後述する画像読取部3の画像読取面に搬送しながら、その画像を読み取って原稿排紙トレイ4bに排紙する、いわゆるシートスルー方式の画像読取りを実行する際に使用されるものである。
画像読取部3は、シートスルー方式の画像読取りを実行する場合、画像読み取り面に向けて照射した光の反射光を、光学レンズを介して不図示のCCDセンサーに受光させて、画像データを生成する公知の構成を有する。
【0016】
プリンター部2bは、公知の電子写真式のものであって、感光体ドラムの露光、現像、転写及び定着などの一連の動作を実施して、画像読取部3から出力された画像データを記録シートに印刷して後処理ユニット5に搬送するものである。
操作パネル部12は、例えば、テンキー及び液晶ディスプレイなどを有し、ユーザに対して情報を表示すると共に、ユーザから指示を受け付けるものである。
【0017】
後処理ユニット5は、操作パネル部12で受け付けたユーザの指示に基づいて、プリンター部2bで印刷された記録シートにステープル処理を実行し、その後、排紙トレイ5bに排紙するものである。
より具体的には、操作パネル部12によりステープル処理の実行指示を受け付けた場合、プリンター部2bの排紙ローラー対2aにより送り出された記録シートの一部が、例えば、後処理ユニット5の排紙ローラー対5cに引き込まれたタイミングで、当該排紙ローラー対5cを逆転させ、記録シートをスイッチバックさせることにより、当該記録シートを後処理部15に導入する。
【0018】
もちろん、記録シートをスイッチバックさせずに直接後処理部15に導入する構成としてもよい。
後処理部15は、トレイ上に積載された記録シートの束にステープル処理を実行し、ステープル処理が完了した記録シートの束を、排紙ローラー対5dを介して、排紙トレイ5bに排紙する。
【0019】
なお、ユーザからステープル処理の実行指示がなかった場合には、プリンター部2bから排出された記録シートがそのまま排紙トレイ5aに排出される。
図2は、後処理部15の構成を示す一部切欠き斜視図である。
同図に示すように、後処理部15は、導入ローラー対20と、後端規制ユニット30と、ガイド部材50と、トレイ60と、ステープルユニット80と、駆動部70および駆動部90とを備える。
【0020】
導入ローラー対20は、一方が不図示の駆動源によって駆動されることにより、もう一方が従動回転するローラーであって、排紙ローラー対5cによりスィッチバックされた記録シートS1をトレイ60内に導入するものである。
ガイド部材50は、導入された記録シートS1をトレイ60に案内すると共に、トレイ60に載置されている記録シートをトレイ60の載置面60aの後退部60cに向けて押圧して、記録シートに生じているカールを矯正する板状の部材であって、その下方側(Z’方向側)縁部に付設された回動軸51を介して、後処理ユニット5の本体側フレームに設けられた不図示の軸受部により回動自在に軸支されている。
【0021】
なお、本実施の形態における後処理装置では、記録シートのトレイ60への導入位置を塞ぐようなカールを問題としているため、以降で説明するカールは、記録シートの導入方向中央部が、トレイ60の後述の載置面60aに接し、記録シートの導入方向の両端部が反って載置面60aから浮くようなカール(いわゆるバックカール)を意味する。
回動軸51の一端が、駆動部70に連結されており、これによりガイド部材50が揺動駆動される。
【0022】
この揺動動作により、ガイド部材50は、トレイ60に記載された状態の記録シートの後端部を押圧して、カールを矯正するように構成されている。
駆動部70の駆動源として、例えば、ステッピングモータなどの回転角度が制御可能なモータが望ましい。
ガイド部材50のトレイ60側の面は、導入ローラー対20により導入されてきた記録シートS1を案内するガイド面50aとなっている。
【0023】
ガイド部材50の回動軸51と反対側(Z側)の端部には、手前側に係合部52aが形成されると共に、Y方向に沿って4つの切欠部53が所定の間隔で形成されている(図2では手前側の2箇所しか図示されていない。)。
この切欠部53は、後端規制ユニット30における後述する記録シート後端の押さえ込み動作の際に、後端規制部材31の舌状部31bとの干渉を避けるために設けられている。
【0024】
後端規制ユニット30は、トレイ60に載置された記録シートの後端部(導入ローラー対側の端部)が、カールにより載置面60aから浮くのを規制するためのものである。詳細は後述する。
トレイ60は、複数の記録シートを載置面60aに順次積載していくことにより、記録シートの端を揃えて積載するものである。
【0025】
載置面60aは、平坦な主面部60bと主面部60bの導入ローラー対20に近い側に隣接配置され、主面部60bよりもシートから遠ざかる方向に後退した後退部60cとからなり、当該主面部60bは、水平面に対しθ1の角度で傾斜している。
この角度θ1の値としては、水平方向の装置サイズの小型化を図ると共に、重力を利用して記録シートの先端を揃えることができるように、40[°]以上が望ましく、また、記録シートの腰が自重に負けて、波打ちが生じないようにするために、80[°]以下に設定することが望ましい。
【0026】
また、トレイ60は、下方(Z’方向側)に、記録シートの先端部の位置を調整するための底板61を有している。
当該底板61は、駆動部90によって昇降駆動される。この昇降動作は、シートサイズに応じて異なるシートの後端部の位置を調整して、各記録シート束S2の後端部を、後述するトレイ60の後退部60cに対向させるために行われるものである。
【0027】
これにより、異なるシートサイズの記録シートがトレイ60に導入されても、ガイド部材50の押圧動作に伴い、各サイズの記録シートの後端部を後退部の形状に沿って変形させることができ、当該後端部に生じたカールの矯正が可能となる。
また、ステープル処理が完了した記録シートの束をトレイ60の底部から排出するために底板61が、外側に退避するように構成される。
【0028】
駆動部90は、不図示の駆動源によって回転駆動される駆動ローラー91と回転自在に設けられた従動ローラー92とに無端ベルト93が巻きかけられてなり、トレイ60の底板61は、当該無端ベルト93にベルトの走行方向とほぼ直交した状態が維持されるようにベルトに固定されており、無担ベルト93の回動に連れて上記昇降・退避動作を行う。
ステープルユニット80は、トレイ60に載置された記録シート束の手前側コーナー部にステープル処理を施す。
【0029】
ここで、ステープルユニット80をトレイ60の縦方向に移動する移動機構を設けて、記録シート束の側縁に沿った2個所にステープル処理を施すようにしても構わない。なお、ステープルユニット80自体は公知の構成であるので、これ以上の説明を省略する。
後処理部15でステープル処理されたシート束は、上記底板61が退避することにより、後処理部15から排出され、排紙ローラー対5dを介して排紙トレイ5b上に排出される。
【0030】
<後端規制ユニットの構成>
上述のように、後端規制ユニット30は、トレイ60に載置された記録シートの後端部(導入ローラー対側の端部)が、浮き上がらないようにカールを矯正して、記録シートの導入口を塞がないようにするためのものであって、後端規制部材31、係合レバー32、付勢部材33および姿勢保持部材34などからなる。
【0031】
後端規制部材31は、Y軸方向に伸びる回動軸31aと、当該回動軸31aに直交する一の方向に延出された4つの舌状部31bとからなる。回動軸31aは、軸受部42を介して不図示のフレームに回動自在に支持される。
係合レバー32は、回動軸31aの手前側端部に付設されており、ガイド部材50がトレイ60に向けて揺動される際に、ガイド部材50の係合部52aと係合して、後端規制部材31をトレイ60に向けて揺動回動させるためのものである。
【0032】
図3(a)は、上記係合レバー32周辺の拡大斜視図であり、また、図3(b)は、係合レバー32を、回動軸31aの軸心を含む平面で切断したときの断面図である。
図3(a)に示すように、係合レバー32は、レバー部32bとアーム部32eが直交してなる逆L字形状となっている。
ここで、係合レバー32は、引っ張りコイルばねなどの付勢部材33によりアーム部32eが図の上側に付勢されているため、時計回りに揺動する回転モーメントが付与されている。
【0033】
この付勢部材33として、ゴムや樹脂などの他の弾性部材を用いてももちろん構わない。
回動軸31aの係合レバー32を取着している部分よりも外側には、当該回動軸31aと直交する方向に係合ピン31cが立設されており、この係合ピン31cが、本体フレーム(不図示)に設けられたストッパー41と当接することにより、後端規制部材31のトレイ60から離れる方向における揺動角が規制される。
【0034】
また、図3(b)の断面図に示すように、係合レバー32は、その貫通孔32aに後端規制部材31の回動軸31aが遊嵌された状態で、支軸ピン35によってY軸方向において揺動自在に支持されている。
係合レバー32は、図3(b)に示すように、圧縮コイルばねからなる姿勢保持部材34の端部が挿嵌される溝部32dを有しており、通常は、姿勢保持部材34が挿嵌されることによって、姿勢保持部材34が有する適度な剛性により、レバー部32bの長手方向が回動軸31aと直交するように姿勢が保持されている。
【0035】
なお、図3(a)では、係合レバー32の形状を理解し易いように、姿勢保持部材34である圧縮コイルばねの図示を一部省略しているが、実際には、係合ピン31cから係合レバー32の溝部32dまでにわたって配されている。
レバー部32bのXおよびX’側の両面は、ガイド部材50の係合部52aが係合する部分であり、X側の係合面は、回動軸31aの延びる方向と平行な平坦面であるが、X’側の面の、係合部52aと接触する部分は、図3(a)および(b)に示すように、Y方向に進むつれ、X’方向における厚みが徐々に薄くなって先細りするテーパー部32cを有し、図3(a)に示すように、係合ピン31cがストッパー41に当接する状態において、ガイド部材がトレイ60の反対側に向けて揺動する際に、その係合部52aがテーパー部32cに当接し、上記テーパー部32cによるテーパー作用により、当該当接面において軸方向へ押し付ける分力が発生し、レバー部32b側が、姿勢保持部材34の付勢力に抗してY’方向に逃げるようにして矢印B方向に傾倒する。
【0036】
これにより係合部52aとレバー部32bとの係合が解除され、ガイド部材50のみがX軸方向に揺動して元の位置(第1の位置)に復帰する。
図4(a)〜(d)は、後処理部15における各部材の動作状況を示す図である。
通常、ガイド部材50は、図4(a)に示すように、記録シートS1が導入ローラー対20によって導入されたときの軌跡(以下、「導入軌跡」という。)R1のX方向側の位置(以下、「ガイド位置」という。)にある。
【0037】
また、後端規制部材31は、図4(a)に示すように、上記ガイド位置にあるガイド部材50のガイド面50aとトレイ60の載置面60aとの間の位置(以下、「規制位置」という。)にある。
このとき、導入ローラー対20によって導入されてきた記録シートS1は、ガイド部材50のガイド面によりトレイ60側へと案内される。後端規制部材31は、積載済みの記録シート束S2の後端部Qの浮き上がりを規制して、当該後端部Qが記録シートの導入口P1を塞ぐことを防止する。
【0038】
記録シートS1の導入が完了すると、駆動部70(図2参照)は、図4(b)に示すように、ガイド部材50の上端部をX’方向に揺動させる。
このとき、ガイド部材50の係合部52aが、図5に示すように、レバー部32bに係合しながら揺動することによって、後端規制部材31の舌状部31bもガイド部材50に連動して揺動する。
【0039】
これにより、図4(b)に示すように、後端規制部材31の舌状部31bが反時計回りに回動していく。
ガイド部材50が揺動して、後端規制部材31の回動が進み、ある時点になると舌状部31bが積載済みの記録シート束S2の後端部Qに係合しなくなって、その位置規制が解除され、新たに導入された記録シートが、積載済み記録シートに重ねられる。
【0040】
この揺動動作に伴って、ガイド部材50の係合部52aと、レバー部32bの係合位置が徐々にそれぞれの回動中心から離れていき、上記新たに導入された記録シート全体が、積載済み記録シートに上に重ねられた直後に、両者の係合が解除されるように、それらの配置と長さが設定されている。
このようにして、ガイド部材50の係合部52aとレバー部32bとの係合が解除されると、後端規制部材31が付勢部材33の付勢力により元の規制位置まで復帰する(図4(c))。
【0041】
上述のようにトレイ60の載置面60aには、後退部60cが設けられており、ガイド部材50は、後端規制部材31との係合が解除された後も揺動を継続し、記録シートS1の後端部を記録シート束S2と共に、後退部60cに向けて押し付ける(第2の位置)。
後退部60cは、図4(b)に示すように、載置状態の記録シートの後端から長さL1分、当該記録シートの先端側(下端側)寄りの位置に、ちょうど主面部60bとの境界部60dが存するように設けられていると共に、当該境界部60dは、記録シートの導入方向に対して直交する方向(Y軸方向)に延びると共に、当該境界部60dを起点として主面部60bから遠ざかる方向(Z方向)に進むにつれ、後退量が次第に大きくなる傾斜面60eを有しており、主面部60bからの後退量がD1に達した後は、Z方向に進んでもこの後退量が維持される構成となっている。
【0042】
これにより、記録シートS1の後端部と記録シート束S2の後端部とが、ガイド部材50により、後退部60cに押しつけられると、境界部60d付近を起点として上記後端部がX’方向側に屈曲し、カールが矯正される。
ここで、上述したL1の値が小さすぎると、カールの矯正範囲が小さくなり、記録シートの後端が記録シートの導入口P1を塞ぐことを防止する効果が十分得られない。
【0043】
反対に、L1が大きすぎるとカール矯正の必要のない部分をガイド部材50で斜面部60eに押さえ付けることとなり、必要な箇所のカール矯正ができない。
このような観点から、L1の値は、20[mm]以上、50[mm]以下に設定することが望ましい。なお、本実施の形態では、35[mm]に設定している。
また、上述の傾斜面60eの主面部60bに対する角度θ2の値は、以下のように設定されている。
【0044】
即ち、角度θ2が、小さすぎるとカールの矯正が不十分となり、また、大きすぎると、底板61を下方にスライドさせて後処理後の記録シートを排出させる際に、記録シートの後端部の屈曲された部分が、傾斜面60eに引っ掛かって排出しにくくなったり、出力された記録シートに境界部60dでの折り目がついてしまうおそれもある。
このような不都合が生じないように、角度θ2の値は、5[°]以上、50[°]以下が望ましい。
【0045】
また、後退部60cの後退量D1は、角度θ2や斜面部のシート導入方向の長さLsの値が大きくなると大きくなり(図4(a)参照)、また、これらの値が小さいとD1の値も小さくなるので、これらの値と、装置サイズを考慮して適宜決定されるが、5[mm]以上、30[mm]以下の範囲が適当である。
もっとも、後退部60cは、上記のような傾斜面60eさえ有しておればよく、そのZ方向側に、図4(a)に示すような主面部60bと平行な平面部分が設けられていても構わず、また、傾斜面60eのみであっても構わない。
【0046】
なお、ガイド部材50は、傾斜面60eと平行になり、互いの距離がD2になると、回動動作が停止される。
当該距離D2の値は、トレイ60に載置される記録シートの最大枚数×記録シートの最大厚み[mm]に設定されており、ここでは、2[mm]に設定されている。
これにより、記録シートに大きな力が加わらないため、傷やしわなどが生じ難い。
【0047】
また、ガイド部材50が傾斜面60eにほぼ平行な状態で記録シートを押さえつけるため、線ではなく面で記録シートに当接して傾斜面60eに押さえつけることができ、カール矯正の効果も大きくなる。
続いて、駆動部70(図2参照)が、逆回転することにより、ガイド部材50上端部をX方向に揺動させ、上述のガイド位置に復帰させる(図4(d))。
【0048】
このとき、上述したガイド部材50の押圧動作によりカールが矯正されているため、たとえ記録シートの後端部Qが若干浮き上がったとしても、その量は少なく、記録シートの導入口P1を塞ぐまでに到らない。
ガイド部材50が、ガイド位置に復帰する途中で、係合部52aがレバー部32bのテーパー部32cに当接するが、図3において説明したように、レバー部32bが軸方向に倒れるため、係合部52aとレバー部32bとの係合が完全に解除され、ガイド部材50のみがX軸方向に揺動することができる(図3参照)。
【0049】
そして、ガイド部材50が元のガイド位置に復帰した時点で、ガイド部材の駆動が停止される。
この際、ガイド部材50のガイド位置への復帰は、例えば、復帰時における駆動部70の回動量を多めに設定しておき、不図示のストッパーに確実に当接させ、X方向の回動を停止させることで実現することができる。
【0050】
さらに、ガイド部材50がガイド位置に復帰する毎に、駆動部70の駆動パルスのカウント値を0にリセットし、このガイド位置から、ガイド部材50がトレイ60の載置面60aに移動して当接するのに十分な数の駆動パルスを駆動部70に与えることによって、ガイド部材50の位置を検出することなく図4(a)〜(c)の動作を実行することができる。
【0051】
もちろん、ガイド部材50がガイド位置にあることを検出するために、反射型光学センサーなどからなるホームポジションセンサを設けて制御しても構わない。
以上、本実施の形態によれば、記録シートの載置面のシート後端部に対応する部分が後退しており、ガイド部材により記録シート後端部を当該後退部に向けて押さえつけることにより、効果的に記録シートのカールを矯正でき、浮き上がってシート導入口を防ぐようなおそれを極めて低くすることができる。
<変形例>
本発明は、上述のような実施の形態に限られるものではなく、次のような変形例も実施することができる。
【0052】
(1)上記実施形態では、ガイド部材50は、Y軸方向に伸びる板状部材としたが、これに限らず、例えば、記録シートの導入を案内できると共に、導入された記録シートを押さえ込むことができる形状であれば、どのような形状であっても構わない。
(2)また、上記実施形態では、ガイド部材50と後端規制部材31とが揺動する構成について説明したが、これに限るものではない。
【0053】
例えば、ガイド部材とシート後端位置規制部材をスライドさせる構成であってもよい。
図6(a)〜(d)は、このような構成を採用した後処理部115における各部材の動作状態を示す図である。
まず、図6(a)を用いて、後処理部115の各部の構成について説明する。
なお、上記実施の形態における後処理部15と同じ構成については、同一の符号を付しており、以下では、主に、後処理部15と異なる構成について説明する。
【0054】
図6(a)に示すように、X’方向に進むにつれて、互いの間隔が広がるレール235とレール255とが設けられている。
そして、後端規制部材230とガイド部材250とが、それぞれレール235とレール255上にスライド自在に設けられている。
また、レール235は、X軸方向の端部に後端規制部材230に当接して位置を規制するストッパー241を有する。
【0055】
さらに、後端規制部材230をストッパー241に向けて付勢するばねもしくゴムなどの付勢部材233が設けられている。
加えて、ガイド部材250をレール255に沿って移動させる、ベルト駆動機構などからなる駆動部280が設けられている。
図6(a)における後端規制部材230とガイド部材250の位置は、それぞれ図4(a)における後端規制部材31とガイド部材50の位置と略同様の位置にあり、この位置がそれぞれ、規制位置とガイド位置となる。
【0056】
このガイド位置から、ガイド部材250がX’方向側にスライドすると、記録シートS1がトレイ60の載置面60a側へと押し込まれて行くと共に、図6(b)に示す位置に到達したときにガイド部材250が後端規制部材230に接触して、これをX’方向にスライドさせる。
上述したように、レール235とレール255は、X’方向に進むにつれて、間隔が広がるように設けられているので、後端規制部材230とガイド部材250との接触部同士のZ軸方向における距離が次第に拡大し、やがて当該接触状態が解除されて、図6(c)に示すように、付勢部材233の付勢力により、後端規制部材230だけが規制位置に復帰する。
【0057】
そして、ガイド部材250がスライドし続けると、図6(c)に示すように、記録シートS1の後端部を記録シート束S2に押し付ける。このガイド部材250のトレイ60の傾斜部60eに対応する部分が、当該傾斜部60eの傾斜面と平行になっており、スライド移動のため、積載された記録シートの枚数に拘わらず、面で記録シートに当接して記録シートの後端部全体を傾斜面60eに向けて押さえつけることができる。
【0058】
その後、駆動部280を反転させて、ガイド部材250部をX方向にスライドさせ、ガイド位置に復帰させる。
ガイド部材250部は、ガイド位置に復帰する途中で、規制位置にある後端規制部材230と接触することになるが、双方の当接部の一方、例えば、ガイド部材250部側の当接部252aが、図6(e)に示すように、後端規制部材230側の当接部232bと接触して時計回りの方向に力が加わるときにだけに揺動して係合が回避される構成となっており、これにより、ガイド部材250部だけがX方向にさらにスライドすることができる。
【0059】
なお、当接部252aは、不図示のばねにより常時反時計回りの方向に揺動するように付勢されており、上記係合が解除されると、元の位置に復帰する。
以上のように、後端規制部材およびガイド部材は、回動する構成のみならず、スライドする構成としても構わない。
(3)また、上記実施の形態では、ガイド部材50は、後端規制部材31との係合が解除された後も揺動を継続し、ガイド部材50と傾斜面60eとが平行になり、互いの距離がD2になるまで、記録シートS1の後端部を記録シート束S2に押し付けるとしたが、これに限らず、ガイド部材50と傾斜面60eとが完全に平行にならなくても構わない。要するに、記録シートの後端部を押圧することにより、当該後端部が押圧方向に屈曲できさえすれば、導入口を塞がない程度にカールを矯正させることが可能であるからである。
【0060】
また、後退部60cには、傾斜面60eが含まれていたが、このような傾斜面60eが設けられていなくてもよく、例えば、境界部60dにおいて、載置面60aの厚み方向に切り立った壁が形成されて、段差が生じている構成であっても構わない。
その場合、上記実施の形態における後処理部15と同様のカールの矯正効果を得るためには、段差の深さを、5[mm]以上、30[mm]以下とすることが望ましい。
【0061】
(4)上記実施形態では、後端規制部材31を設けていたが、この後端規制部材31は、必ずしも必須ではない。
ガイド部材50がトレイ60に記載された状態の記録シートの後端を押圧するだけでも、トレイ60の載置面60aに設けられた後退部60cの存在により、記録シートの後端部を記録シートの導入口P1から遠ざかる方向に屈曲させて、記録シートの後端部に生じているカールを効果的に矯正することができる上、もし、上記押圧が解除された後にカールが若干復元したとしても、シートの導入口P1と記録シートの後端との距離が、従来の平坦な載置面60aに記録シートを押圧する場合に比べて大きくなっているので、通常の記録シートを使用する限り、その後端部が導入口まで浮き上がることがないからである。
【0062】
しかし、たとえば再生紙使用率が高い記録シートと高温高湿などの悪条件が重なったような場合には、記録シートのカールの程度が極端に大きくなって、ガイド部材の押圧により十分にカール矯正できない場合が皆無とは言えないので、上記実施の形態では、万が一のため後端規制部材31を補助として設けている。
(5)また、上記実施の形態では、ガイド部材50は、導入された記録シートをトレイ60に案内する機能と、記録シートをトレイ60の載置面60aに向けて押圧する機能とを備えていたが、導入された記録シートをトレイ60に案内する機能を備えていなくてもよく、要するに、記録シートをトレイ60の載置面60aに向けて押圧する押圧部材としての機能さえ備えていればよい。
【0063】
(6)上記実施の形態では、本発明に係る後処理ユニット5(後処理装置)をデジタル式複写機に適用した場合の例を説明したが、プリンター部2bに後処理ユニット5を付設した構成に適用してもよい。
(7)また、上記実施の形態では、後処理ユニット5は、プリンター部2bで印刷された記録シートにステープル処理を実行するものであるとしたがこれに限らず、例えば、ステープル処理に代えて、複数の記録シートにまとめて穴をあけるパンチ処理であってもよい。
【0064】
もしくは、導入された複数のシートを順次トレイ上に積載していく、単なるシート積載装置にも適用することができる。
また、上記実施の形態および上記変形例の内容を可能な限り、それぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、導入された複数のシートを順次トレイ上に積載していくシート積載装置および当該シート積載装置を備える後処理装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 複写機
2 画像形成装置本体
2a 排紙ローラー対
2b プリンター部
3 画像読取部
4 原稿搬送部
4a 原稿トレイ
4b 原稿排紙トレイ
5 後処理ユニット
5a、5b 排紙トレイ
5c、5d 排紙ローラー対
12 操作パネル部
15、115 後処理部
20 導入ローラー対
30 後端規制ユニット
31、230 後端規制部材
31a、51 回動軸
31b 舌状部
31c 係合ピン
32 係合レバー
32a 貫通孔
32b レバー部
32c テーパー部
32d 溝部
32e アーム部
33、233 付勢部材
34 姿勢保持部材
35 支軸ピン
41、241 ストッパー
42 軸受部
50、150、250 ガイド部材
50a ガイド面
52a 係合部
53 切欠部
60 トレイ
60a 載置面
60b 主面部
60c 後退部
60d 境界部
61 底板
70、90、280 駆動部
80 ステープルユニット
91 駆動ローラー
92 従動ローラー
93 無端ベルト
232b、252a 当接部
235、255 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートを順次トレイ上に導入して積載していくシート積載装置であって、
導入されたシートが載置される載置面を有し、当該載置面における載置状態にあるシートの後端部に対応する領域が後退してなる後退部が形成されたトレイと、
前記シートの導入位置を挟む第1の位置と第2位置とに移動自在に設けられ、第1の位置への移動に伴い、前記後端部を前記後退部に向けて押圧する押圧部材と、
前記押圧部材を第1と第2の位置に選択的に移動させる駆動手段と、
を備えることを特徴とするシート積載装置。
【請求項2】
前記載置面における後退部は、前記載置されたシートの後端に向かうにつれて後退量が漸増する傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載のシート積載装置。
【請求項3】
前記押圧部材の押圧面は平坦であって、前記第1の位置において前記傾斜面と押圧面が平行な状態でシートの後端部を傾斜面に押圧するように前記押圧部材が配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載のシート積載装置。
【請求項4】
前記載置面の、主面に対する前記傾斜面の傾斜角度が、5[°]以上、50[°]以下であることを特徴とする請求項3に記載のシート積載装置。
【請求項5】
前記後退部の載置面の主面からの最大後退量が、5[mm]以上30[mm]以下の範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシート積載装置。
【請求項6】
前記シートを前記載置面に沿って導入するシート導入手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のシート積載装置。
【請求項7】
前記トレイは、シート導入方向における両端部のうち、前記シート導入手段による導入位置に近い側の端部がもう一方の端部よりも上方となるように傾いていることを特徴とする請求項6に記載のシート積載装置。
【請求項8】
前記トレイは、異なるサイズのシートに対して、各サイズのシートの後端部が前記後退部に対応する領域内に位置するように、当該シートの上下方向における位置決めを行う位置決め手段を備えることを特徴とする請求項7に記載のシート積載装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のシート積載装置を備え、画像形成装置から排出された複数の記録シートをトレイに積載して、当該記録シートに対して後処理を行う後処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−79135(P2013−79135A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220265(P2011−220265)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】