説明

シート空調装置

【課題】シートに着座した乗員の体感温度を効果的に下げることができ、且つ、車室に冷気や暖気を吹き出す空調ユニットを駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えられるようにする。
【解決手段】車室の冷房時、インストルメントパネル1の内部の空調ユニット2から車室内に吹き出される冷気は、第2ファン15の回転により、車室内で拡散することなくシート6の背もたれ部6aに形成された第2通風口8に吸い込まれ、その後にシート6の背もたれ部6aにおけるヘッドレスト6b近傍に形成された第1通風口7から吹き出される。また、第2通風口8からシート6内に吸い込まれた上記冷気は、第2ファン15の回転に伴い、シート6における第2通風口8よりもパネル1に近い位置に形成された第3通風口9からも吹き出される。このように第3通風口9から吹き出された冷気は、車室内で拡散することなく空調ユニット2の吸込口5へと効率よく吸い込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、インストルメントパネル内部の空調ユニットから同パネルの吹出口を介して車室に冷気や暖気を吹き出すことにより、車室の冷房や暖房といった空調が行われる。こうした車室の空調を行う際には、空調ユニットでのエネルギ消費を抑えることが好ましい。このため、車室の空調を行う際、車室内の空気をインストルメントパネル内部の空調ユニットに吸い込んで同ユニットにて冷却もしくは加熱し、その冷却もしくは加熱後の空気をインストルメントパネルの吹出口から冷気もしくは暖気として車室に吹き出すこと(内気循環)が行われる。
【0003】
ところで、車室の暖房や冷房といった空調は、車室内の乗員による冷房要求や暖房要求といった空調要求に応じて行われる。こうした空調要求は車室内の乗員の体感温度に応じて変化する。従って、車室の冷房時に乗員の体感温度を効果的に下げたり、車室の暖房時に乗員の体感温度を効果的に上げたりすることができれば、乗員による車室の空調要求を抑えることができ、ひいては車室の空調を行う際の空調ユニットでのエネルギ消費を抑えることができる。このため、特許文献1に示されるように、車室内のシートに着座した乗員に対して車室内の冷気や暖気を直接的に吹き付けるシート空調装置を設けることが考えられる。
【0004】
特許文献1のシート空調装置は、シートの背もたれ部におけるヘッドレスト近傍に形成された第1通風口と、上記背もたれ部の背面に形成されて上記第1通風口に繋がる第2通風口とを備えている。そして、上記シート空調装置は、第2通風口から車室内の冷気や暖気を吸い込み、それら冷気や暖気を上記第1通風口からシートに着座した乗員の首周りに向けて吹き出す。こうしたシート空調装置を設けることにより、冷房時にはシートに着座した乗員の首周りを冷やして同乗員の体感温度を効果的に下げることができ、且つ、暖房時にはシートに着座した乗員の首周りを温めて同乗員の体感温度を効果的に上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−502610公報(図14b)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車室内のシートに上記シート空調装置を設けることで、車室の冷房時には同シートに着座した乗員の体感温度を下げることができ、且つ、車室の暖房時には乗員の体感温度を上げることができるようにはなる。
【0007】
ただし、上記シート空調装置では、空調ユニットから吹き出されて車室内で拡散した冷気や暖気を第2通風口から吸い込み、その吸い込んだ冷気や暖気を第1通風口から乗員に向けて吹き出している。このため、車室の冷房時に第1通風口から吹き出される冷気により乗員の体感温度を効果的に下げるためには、車室全体の温度を下げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニットを駆動する際に同ユニットでのエネルギ消費が大きくなることは避けられない。また、車室の暖房時に第1通風口から吹き出される暖気により乗員の体感温度を効果的に上げるためには、車室全体の温度を上げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニットを駆動する際に同ユニットでのエネルギ消費が大きくなることも避けられない。
【0008】
従って、シート空調装置によってシートに着座した乗員の体感温度を効果的に下げたり上げたりする際、空調ユニットでのエネルギ消費を小さく抑える点での改善が望まれている。
【0009】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、シートに着座した乗員の体感温度を効果的に下げたり上げたりすることができ、且つ、車室に冷気や暖気を吹き出す空調ユニットを駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができるシート空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、車室の冷房時にインストルメントパネルの内部の空調ユニットから同パネルの吹出口を介して車室内に吹き出された冷気は、ファンの回転により、車室内で拡散することなくシートの背もたれ部に形成された第2通風口からシートの内部に吸い込まれる。このように冷気が第2通風口に吸い込まれる際、シートに着座した乗員の胴体周りが冷気により冷やされるため、その乗員の体感温度を効果的に下げることができる。そして、第2通風口からシート内に吸い込まれた冷気は、シートのヘッドレスト周りに形成された第1通風口から吹き出される。このように、第1通風口から吹き出された冷気は、シートに着座した乗員の首周りを冷す。これにより乗員の体感温度を効果的に下げることができる。
【0011】
また、第2通風口からシート内に吸い込まれた冷気は、シートにおける第2通風口よりもインストルメントパネルに近い位置に形成された第3通風口からも吹き出される。このように第3通風口から吹き出された冷気は、その第3通風口の形成位置の関係から、車室内で拡散することなくインストルメントパネル内部の空調ユニットに効率よく吸い込まれる。これにより、空調ユニットとシートに着座した乗員との間に冷気の環流が生じやすくなる。ここで、こうした冷気の還流が生じにくい場合、空調ユニットから吹き出された冷気が車室内で拡散してしまう。そして、冷気の拡散した車室内の空気が第2通風口からシート内部に吸い込まれて第1通風口から乗員の首周りに吹き出される。このため、車室の冷房時に第1通風口から吹き出される空気で乗員の体感温度を効果的に下げるためには、車室全体の温度を下げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニットを駆動する際に同ユニットでのエネルギ消費が大きくなることは避けられない。しかし、空調ユニットとシートに着座した乗員との間に上記冷気の環流を生じさせて同冷気の車室での拡散を抑制することで、上述したような空調ユニットでのエネルギ消費の増大を抑制することができ、そのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0012】
以上により、冷房時にシートに着座した乗員の体感温度を効果的に下げることができ、且つ、車室に冷気を吹き出す空調ユニットを駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、車室の暖房時に空調ユニットからインストルメントパネルの吹出口を介して車室内に吹き出された暖気は、ファンの逆回転により、車室内で拡散することなくシートの座部に形成された第3通風口からシートの内部に吸い込まれる。これにより、空調ユニット(インストルメントパネルの吹出口)からシートに着座した乗員の足下(正確には第3通風口)への暖気の流れが形成されやすくなる。そして、こうした暖気の流れにより、シートに着座した乗員の足下が暖気により暖められるため、その乗員の体感温度を効果的に上げることができる。また、第3通風口からシート内に吸い込まれた冷気は、シートのヘッドレスト周り形成された第1通風口から吹き出される。このように、第1通風口から吹き出された暖気は、シートに着座した乗員の首周りを暖める。これにより乗員の体感温度を効果的に上げることができる。
【0014】
ここで、上述したインストルメントパネルの吹出口から第3通風口への暖気の流れが生じにくい場合、空調ユニットから吹き出された暖気が車室内で拡散してしまう。この場合、暖気が拡散した車室内の空気によって乗員の足下が暖められるとともに、その空気が第3通風口からシート内部に吸い込まれて第1通風口から乗員の首周りに吹き出される。このため、車室の暖房時に乗員の足下周りに存在する空気、及び第1通風口から吹き出される空気で乗員の体感温度を効果的に上げるためには、車室全体の温度を上げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニットを駆動する際に同ユニットでのエネルギ消費が大きくなることは避けられない。しかし、空調ユニットから第3通風口に流れる暖気の車室内での拡散を抑制し、それによって空調ユニットから第3通風口への暖気の流れを形成することで、上述したような空調ユニットでのエネルギ消費の増大を抑制することができ、そのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0015】
以上により、暖房時にシートに着座した乗員の体感温度を効果的に上げることができ、且つ、車室に暖気を吹き出す空調ユニットを駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0016】
なお、上記第2通風口に関しては、請求項3記載の発明のように、シートの背もたれ部における車幅方向側面に形成することが好ましい。これは、車室の冷房時にインストルメントパネルの内部の空調ユニットから同パネルの吹出口を介して車室内に吹き出された冷気は、シートに着座した乗員の胴体周りに当たった後、同シートの背もたれ部における車幅方向側面に流れるためである。この背もたれ部における車幅方向側面に第2通風口を形成することで、シートに着座した乗員の胴体周りに当たった後の上記冷気を効率よく第2通風口から吸い込むことができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、第1通風口から吹き出される空気との熱交換を通じて同空気の温度を調節する熱交換器が設けられているため、その空気を熱交換器により乗員によって快適な温度に調節したうえで、第1通風口から乗員の首周りに吹き出すことができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、車室の暖房時には第2通風口がダンパにより閉塞されるため、第3通風口からシート内部に吸い込まれた暖気が第2通風口から漏れることがない。このため、第3通風口からシート内部に吸い込まれた暖気を効率よく第1通風口から吹き出すことができる。また、車室の冷房時には第2通風口がダンパにより開放されるため、その第2通風口からの冷気の吸い込みが上記ダンパにより阻害されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のシート空調装置が適用される自動車のインストルメントパネル周り及びシート周りの構造を示す略図。
【図2】同シート空調装置が適用される自動車のインストルメントパネル周り及びシート周りの構造を示す略図。
【図3】同シート空調装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】同シート空調装置における第1ファン、第2ファン、及びペルチェ素子の駆動手順を示すフローチャート。
【図5】第2通風口を開閉するダンパを示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を自動車のシート空調装置に具体化した一実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
自動車における車室の冷房や暖房といった空調は、図1に示すインストルメントパネル1内部の空調ユニット2から同パネル1の吹出口3や吹出口4を介して車室に冷気や暖気を吹き出すことによって実現される。こうした車室の空調を行う際、空調ユニット2でのエネルギ消費を抑えるためには、車室内の空気を空調ユニット2の吸込口5から吸い込んで同ユニット2にて冷却もしくは加熱した後、その空気を上記冷気もしくは上記暖気としてインストルメントパネル1の吹出口3,4から車室に吹き出す内気循環を行うことが好ましい。なお、車室の冷房時には、空調ユニット2からの冷気が主に吹出口3から吹き出される。この吹出口3は車室内のシート6に着座した乗員の胴体に対応して位置している。一方、車室の暖房時には、空調ユニット2からの暖気が主に吹出口4から吹き出される。この吹出口4は車室内のシート6に着座した乗員の足下に対応して位置している。
【0021】
車室内のシート6には、同シート6に着座した乗員に対し車室内の冷気や暖気を吹き付けるシート空調装置が設けられている。同装置は、シート6の背もたれ部6aにおけるヘッドレスト6b近傍に形成された第1通風口7を備えている。背もたれ部6aにおける第1通風口7の下方であって同背もたれ部6aにおける車幅方向側面には、第1通風口7と通路10を介して繋がる第2通風口8が形成されている。また、シート6における第2通風口8よりもインストルメントパネル1に近い位置、より詳しくはシート6の座部6cにおけるインストルメントパネル1寄りの端部には、上記通路10と通路11を介して繋がる第3通風口9が形成されている。この第3通風口9は、通路10,11を介して第2通風口8及び第1通風口7と繋がっている。
【0022】
シート6の通路10には、第1通風口7から空気を吹き出すべく回転する第1ファン12、及び、通路10を通過して第1通風口7から吹き出される空気との熱交換を通じて同空気の温度を調節する熱交換器13が設けられている。この熱交換器13は、ペルチェ素子14の駆動を通じて冷却または加熱されるものである。そして、ペルチェ素子14の駆動を通じて熱交換器13を冷却すると、その熱交換器13によって上記空気の温度が低下される。また、ペルチェ素子14の駆動により熱交換器13が加熱されると、その熱交換器13によって上記空気の温度が上昇される。こうして第1通風口7から噴き出される上記空気の熱交換器13による温度調節が行われる。
【0023】
シート6の通路11には、車室の冷房時に空調ユニット2からインストルメントパネル1の吹出口4を介して車室内に吹き出される冷気を第2通風口8から吸い込むよう回転(正回転)する第2ファン15が設けられている。この第2ファン15としては、正回転させたときの風量が上記第1ファン12を回転させたときの風量よりも多くなるものが採用されている。従って、第2ファン15を正回転させると、第2通風口8から吸い込まれた冷気の一部が第1ファン12の回転に伴い通路10を介して第1通風口7から吹き出されるとともに、通路10に流しきれない冷気が通路11を介して第3通風口9から吹き出される。
【0024】
また、第2ファン15は、上記回移に対し逆回転させることも可能となっている。そして、車室の暖房時には第2ファン15が逆回転される。このように第2ファン15を逆回転させると、図2に示すように、空調ユニット2からインストルメントパネル1の吹出口4を介して車室内に吹き出された暖気が第3通風口9から吸い込まれる。そして、第3通風口9から吸い込まれた上記暖気は、通路11を通過し、更に第1ファン12の回転に伴い通路10を介して第1通風口7から吹き出されるとともに、通路10に流しきれない暖気が第2通風口8から吹き出される。
【0025】
次に、シート空調装置の電気的構成について図3を参照して説明する。
シート空調装置には、車室の空調制御を司る電子制御装置21が設けられている。この電子制御装置21は、上記空調制御に係る演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えている。
【0026】
電子制御装置21の入力ポートには、以下に示すセンサ及びスイッチ等からの信号が入力される。
・車室内の空気の温度を検出する室温センサ22。
【0027】
・車室での日射量を検出する日射量センサ23。
・車室の温度を調整するために自動車の乗員により操作される室温設定スイッチ24。
電子制御装置21の出力ポートには、空調ユニット2における各種機器の駆動回路、第1ファン12の駆動回路、第2ファン15の駆動回路、及びペルチェ素子14の駆動回路等が接続されている。
【0028】
電子制御装置21は、室温センサ22の検出信号から求められる車室内の空気の温度と、その空気の温度の目標値である目標室温とに基づいて、車室の冷房要求や暖房要求の有無及びそれら要求の大きさ等を把握する。なお、上記目標室温は、乗員が室温設定スイッチ24により定めた車室内の設定温度、車室内の空気の実際の温度、及び、車室内への日射量などに基づいて求められる値である。そして、電子制御装置21は、上述したように把握した冷房要求や暖房要求に基づき、それら要求が満たされるよう空調ユニット2の各種機器を制御して車室の冷房や暖房を行う。
【0029】
ここで、車室の冷房要求や暖房要求といった空調要求は、車室内の乗員の体感温度に応じて変化する。従って、車室の冷房時に乗員の体感温度を効果的に下げたり、車室の暖房時に乗員の体感温度を効果的に上げたりすることができれば、乗員による車室の空調要求を抑えることができ、ひいては車室の空調を行う際の空調ユニット2でのエネルギ消費を抑えることができる。このため、車室内のシート6に着座した乗員に対してシート空調装置により直接的に冷気や暖気を吹き付けることが行われる。このように乗員に対し直接的に冷気や暖気を吹き付けることで、冷房時には乗員の体感温度を効果的に下げることができ、且つ、暖房時には乗員の体感温度を効果的に上げることができる。
【0030】
次に、シート空調装置の作用について、同装置の第1ファン12、第2ファン15、及びペルチェ素子14を駆動するためのシート空調ルーチンを示す図4のフローチャートを参照して説明する。このシート空調ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0031】
同ルーチンにおいては、まず室温設定スイッチ24からの信号に基づき夏季であるか否かが判断され(S101)、ここで肯定判定であって夏季である旨判断された場合には車室の冷房要求があるか否かが判断される(S102)。このS102の処理で冷房要求がある旨判断されると、第1ファン12が回転されるとともに第2ファン15が正回転される(S103)。更に、熱交換器13を冷却すべく車室の冷房要求に応じてペルチェ素子14が駆動される(S104)。
【0032】
上記冷房要求に基づき車室の冷房が行われるときには、図1に示すインストルメントパネル1の内部の空調ユニット2から同パネル1の吹出口3を介して車室内に冷気が吹き出される。この冷気は、第2ファン15の回転により、車室内で拡散することなくシート6の背もたれ部6aに形成された第2通風口8からシート6の内部に吸い込まれる。このように冷気が第2通風口8に吸い込まれる際、シート6に着座した乗員の胴体周りが冷気により冷やされるため、その乗員の体感温度を効果的に下げることができる。そして、第2通風口8からシート6内に吸い込まれた冷気は、第1ファン12の回転に伴い通路10を通過してシート6の背もたれ部6aにおけるヘッドレスト6b近傍に形成された第1通風口7から吹き出される。第1通風口7から吹き出される冷気は、通路10を通過する際に熱交換器13により冷却されることで、車室の冷房要求に応じた温度に調節されるようになる。そして、第1通風口7から吹き出された冷気は、シート6に着座した乗員の首周りを冷す。これにより乗員の体感温度を効果的に下げることができる。
【0033】
また、第2通風口8からシート6内に吸い込まれた上記冷気は、第2ファン15の回転に伴い、シート6における第2通風口8よりもインストルメントパネル1に近い位置に形成された第3通風口9からも吹き出される。このように第3通風口9から吹き出された冷気は、その第3通風口9の形成位置の関係から、車室内で拡散することなくインストルメントパネル1内部の空調ユニット2の吸込口5へと効率よく吸い込まれる。これにより、空調ユニット2とシート6に着座した乗員との間に冷気の環流が生じやすくなる。ここで、こうした冷気の還流が生じにくい場合、空調ユニット2から吹き出された冷気が車室内で拡散してしまう。そして、冷気の拡散した車室内の空気が第2通風口8からシート6内部に吸い込まれて第1通風口7から乗員の首周りに吹き出される。このため、車室の冷房時に第1通風口7から吹き出される空気で乗員の体感温度を効果的に下げるためには、車室全体の温度を下げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニット2を駆動する際に同ユニット2でのエネルギ消費が大きくなることは避けられない。しかし、空調ユニット2とシート6に着座した乗員との間に上記冷気の環流を生じさせて同冷気の車室での拡散を抑制することで、上述したような空調ユニット2でのエネルギ消費の増大を抑制することができ、そのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0034】
図4に示すシート空調ルーチンのS101において、夏季ではない旨判断された場合、言い換えれば冬季である旨判断された場合には、車室の暖房要求があるか否かが判断される(S105)。このS105の処理で暖房要求がある旨判断されると、第1ファン12が回転されるとともに第2ファン15が逆回転される(S106)。更に、熱交換器13を加熱すべく車室の暖房要求に応じてペルチェ素子14が駆動される(S107)。
【0035】
上記暖房要求に基づき車室の暖房が行われるときには、図2に示す空調ユニット2からインストルメントパネル1の吹出口4を介して車室内に暖気が吹き出される。この暖気は、第2ファン15の逆回転により、車室内で拡散することなくシート6の座部6cに形成された第3通風口9からシート6の内部に吸い込まれる。これにより、空調ユニット2(インストルメントパネル1の吹出口4)からシート6に着座した乗員の足下(正確には第3通風口9)への暖気の流れが形成されやすくなる。そして、こうした暖気の流れにより、シート6に着座した乗員の足下が暖気により暖められるため、その乗員の体感温度を効果的に上げることができる。また、第3通風口9からシート6内に吸い込まれた暖気は、シート6の背もたれ部6aにおけるヘッドレスト6b近傍に形成された第1通風口7から吹き出される。第1通風口7から吹き出される暖気は、通路10を通過する際に熱交換器13により加熱されることで、車室の暖房要求に応じた温度に調節されるようになる。そして、第1通風口7から吹き出された暖気は、シート6に着座した乗員の首周りを暖める。これにより乗員の体感温度を効果的に上げることができる。
【0036】
ここで、上述したインストルメントパネル1の吹出口4から第3通風口9への暖気の流れが生じにくい場合、空調ユニット2から吹き出された暖気が車室内で拡散してしまう。この場合、暖気が拡散した車室内の空気によって乗員の足下が暖められるとともに、その空気が第3通風口9からシート6内部に吸い込まれて第1通風口7から乗員の首周りに吹き出される。このため、車室の暖房時に乗員の足下周りに存在する空気、及び第1通風口7から吹き出される空気で乗員の体感温度を効果的に下げるためには、車室全体の温度を上げなければならなくなり、それを実現すべく空調ユニット2を駆動する際に同ユニット2でのエネルギ消費が大きくなることは避けられない。しかし、空調ユニット2から第3通風口9に流れる暖気の車室内での拡散を抑制し、それによって空調ユニット2から第3通風口9への暖気の流れを形成することで、上述したような空調ユニット2でのエネルギ消費の増大を抑制することができ、そのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0037】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)車室の冷房時にシート6に着座した乗員の体感温度を効果的に下げることができ、且つ、車室に冷気を吹き出す空調ユニット2を駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0038】
(2)車室の冷房時に空調ユニット2とシート6に着座した乗員との間に冷気の環流が生じる際には、第3通風口9から空調ユニット2への冷気の流れにより、上記乗員の足下の蒸れが解消される。従って、夏季においてシート6に着座した乗員の足下の蒸れによる不快感を抑制することができる。
【0039】
(3)車室の暖房時にシート6に着座した乗員の体感温度を効果的に上げることができ、且つ、車室に暖気を吹き出す空調ユニット2を駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができる。
【0040】
(4)車室の暖房時、第3通風口9からシート6内に吸い込まれた暖気は、シート6の背もたれ部6aにおける第1通風口7だけでなく第2通風口8からも吹き出される。第2通風口8から吹き出された暖気は、第1通風口7から吹き出された暖気よりも、インストルメントパネル1内部の空調ユニット2の吸込口5へと吸い込まれやすくなる。このため、車室の暖房時、空調ユニット2から第3通風口9に向かう暖気の流れだけでなく第2通風口8から空調ユニット2への暖気の流れも形成することが可能になり、その空調ユニット2とシート6に着座した乗員との間に暖気の環流が生じやすくなる。このように暖気の還流を生じさせることができれば、車室の暖房時における空調ユニット2のエネルギ消費をより効果的に低減することが可能になる。
【0041】
(5)第2通風口8は、シート6の背もたれ部6aにおける車幅方向側面に形成されている。ここで、車室の冷房時にインストルメントパネル1の内部の空調ユニット2から同パネル1の吹出口3を介して車室内に吹き出された冷気は、シート6に着座した乗員の胴体周りに当たった後、同シート6の背もたれ部6aにおける車幅方向側面に流れる。このため、上述したように背もたれ部6aにおける車幅方向側面に第2通風口8を形成することで、シート6に着座した乗員の胴体周りに当たった後の上記冷気を効率よく第2通風口8から吸い込むことができる。
【0042】
(6)シート空調装置には、第1通風口7から吹き出される空気との熱交換を通じて同空気の温度を車室の冷房要求や暖房要求に応じて調節する熱交換器13が設けられているため、その空気を熱交換器13により乗員によって快適な温度に調節したうえで、第1通風口7から乗員の首周りに吹き出すことができる。なお、熱交換器13による上記空気の温度調節はペルチェ素子14の駆動を通じて行われるが、こうした駆動のためのエネルギ消費については最小限に抑えることが可能である。これは、上記(1)及び上記(2)に示したように空調ユニット2を駆動するためのエネルギ消費を小さく抑えることができるのと同様の理由による。
【0043】
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・図5に示すように、第2通風口8を開閉するためのダンパ25を設けてもよい。このダンパ25は、車室の冷房時には第2通風口8を開放する位置(実線)に切り換えられる一方、車室の暖房時には第2通風口8を閉塞する位置(二点鎖線)に切り換えられる。この場合、車室の暖房時に第2通風口8がダンパ25により閉塞されるため、第3通風口9からシート6内部に吸い込まれた暖気が第2通風口8から漏れることはなく、その暖気を効率よく第1通風口7から吹き出すことができる。また、車室の冷房時には第2通風口8がダンパ25により開放されるため、その第2通風口8からの冷気の吸い込みが上記ダンパ25により阻害されることはない。
【0044】
・熱交換器13及びペルチェ素子14については必ずしも設ける必要はない。
・第2通風口8は、シート6の背もたれ部6aにおける車幅方向側面以外の箇所に形成されていてもよい。例えば、背もたれ部6aにおけるシート6に着座した乗員側の面であって、その面における乗員と重ならない部分に、第2通風口8を形成することが考えられる。
【0045】
・第3通風口9は、必ずしも座部6cのインストルメントパネル1寄りの端部に形成する必要はない。例えば、座部6cにおける上記端部以外の位置であって第2通風口8よりもインストルメントパネル1に近い位置に第3通風口9を形成したり背もたれ部6aにおいて第2通風口8よりもインストルメントパネル1に近い位置に第3通風口9を形成したりすることも可能である。
【0046】
・シート空調装置を車室の冷房時のみ動作させるようにしてもよい。この場合、第2ファン15を逆回転させなくてもよくなる。
【符号の説明】
【0047】
1…インストルメントパネル、2…空調ユニット、3,4…吹出口、5…吸込口、6…シート、6a…背もたれ部、6b…ヘッドレスト、6c…座部、7…第1通風口、8…第2通風口、9…第3通風口、10,11…通路、12…第1ファン、13…熱交換器、14…ペルチェ素子、15…第2ファン、21…電子制御装置、22…室温センサ、23…日射量センサ、24…室温設定スイッチ、25…ダンパ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のシートのヘッドレスト周りに形成された第1通風口と、前記背もたれ部に形成されて前記第1通風口に繋がる第2通風口とを備え、前記第1通風口から前記シートに着座した乗員に向けて空気を吹き出すシート空調装置において、
前記シートにおける前記第2通風口よりもインストルメントパネルに近い位置に形成されて前記第1通風口及び前記第2通風口に繋がる第3通風口と、
車室の冷房時に前記インストルメントパネルの内部の空調ユニットから同パネルの吹出口を介して車室内に吹き出される冷気を前記第2通風口から吸い込むよう回転するファンと、
を備えることを特徴とするシート空調装置。
【請求項2】
前記第3通風口は、前記シートにおける座部に形成されており、
前記ファンは、車室の暖房時に前記空調ユニットから前記インストルメントパネルの吹出口を介して車室内に吹き出される暖気を前記第3通風口から吸い込むよう逆回転する
請求項1記載のシート空調装置。
【請求項3】
前記第2通風口は、前記シートの前記背もたれ部における車幅方向側面に形成されている
請求項1記載の車両のシート空調装置。
【請求項4】
請求項1記載のシート空調装置において、
前記第1通風口から吹き出される空気との熱交換を通じて同空気の温度を調節する熱交換器を更に備える
ことを特徴とするシート空調装置。
【請求項5】
請求項2記載のシート空調装置において、
車室の冷房時に前記第2通風口を開放する一方、同車室の暖房時には前記第2通風口を閉塞するダンパを更に備える
ことを特徴とするシート空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−245881(P2012−245881A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119010(P2011−119010)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】