説明

シート給紙装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】ジャムしたシートが無理矢理引き抜かれてもシートの破損を抑制することが可能なシート給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シート給紙装置3は、シート給紙経路上に位置し、支持体531に第1回動支点回りに回動可能に支持される部材であって、給紙機構32がシートSを給紙する給紙動作の前に当接端部538がシートSの給紙方向先端SUに当接して、給紙方向先端SUの位置を規制する規制姿勢と、給紙動作時に、シートSが給紙される第1方向Fに向かって当接端部538が給紙方向先端SUから離間する給紙許容姿勢と、当接端部538が第1方向とは逆の第2方向に向くように第1回動支点回りに給紙許容姿勢から回動する回動姿勢との間で姿勢変更するストッパ片532とを含む。第2方向は、給紙機構32においてジャムが発生した場合においてシートSが給紙機構32から引き抜かれる方向である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿等のシートを所定の原稿読取位置に給紙するシート給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コピー機等の画像形成装置は、画像を有する原稿等の原稿シートを所定の読取位置に搬送するシート給紙装置と、読取位置において原稿シートの原稿画像を読み取って画像データを得る読取装置と、画像データに基づく画像を記録シート上に形成する画像形成部とを含む。
【0003】
シート給紙装置は、基本的な構成要素として、シートトレイ上に載置された原稿シートを1枚ずつ搬送路に送り込むピックアップローラと、ピックアップローラによって取り出された原稿シートを搬送路にさらに送り込む給紙ローラと、原稿シートを原稿読取位置に向けて搬送する複数の搬送ローラ対と、それらの部材を回転可能に保持するカバーユニットとを含む。
【0004】
また、このようなシート給紙装置は、さらに、ストッパを含む。ストッパは、ピックアップローラと給紙ローラとの間に配置された部材であって、ピックアップローラが給紙動作を行う前に、シートトレイに載置された原稿シートの給紙方向先端に当接して、給紙方向先端の位置を規制する、つまり、給紙方向先端の位置を揃える。給紙方向先端の位置を揃えることで、ピックアップローラの給紙動作時に原稿シートが斜め姿勢で搬送路に送り込まれることが抑制される。
【0005】
そのようなストッパを用いたシート給紙装置として、特許文献1のものが知られている。特許文献1のシート給紙装置では、ストッパは、ピックアップローラの駆動軸にワンウェイクラッチを介して連結されている。原稿シートがシートトレイ上に載置され、給紙方向先端がストッパに当接したとき、ストッパには、ワンウェイクラッチを介して駆動系の負荷が作用しているので、ストッパは、給紙方向先端の位置を規定することができる。一方、ピックアップローラの駆動軸が回転すると、ストッパに作用している駆動系負荷がワンウェイクラッチの作用によって解除され、ストッパは、給紙される原稿シートによる押圧力によって押し上げられて(回動して)、給紙方向先端から離間する。これにより、原稿シートは、搬送路に送り込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−29639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の上記構成のシート給紙装置では、ピックアップローラまたは給紙ローラによる給紙動作によってジャムが発生した場合、ユーザは、カバーユニットを開放して、搬送路を外部に露出させることで、ジャムした原稿シートを除去することができる。しかしながら、ユーザがそのようなジャム処理の手順を知らない場合、原稿シートがジャムし、ジャムした原稿シートの一部(例えば給紙方向後端)がシートトレイ上に残っていると、ユーザは、給紙方向後端を掴み、ジャムしたシートを搬送路から無理矢理引き抜こうとする。そのため、ストッパは、引き抜かれようとしている原稿シートに引っ掛かりやすくなる。ストッパが原稿シートに引っ掛かると、原稿シートが破損する場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、ジャムしたシートが無理矢理引き抜かれても原稿シートの破損を抑制することが可能なシート給紙装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係るシート給紙装置は、シートをシート給紙経路に沿って給紙する給紙機構と、支持体と、前記シート給紙経路上に位置し、前記支持体に第1回動支点回りに回動可能に支持される部材であって、当接端部を有し、前記給紙機構が前記シートを給紙する給紙動作の前に前記当接端部が前記シートの給紙方向先端に当接して、前記給紙方向先端の位置を規制する規制姿勢と、前記給紙動作時に、前記シートが給紙される第1方向に向かって前記当接端部が前記給紙方向先端から離間する給紙許容姿勢と、前記当接端部が前記第1方向とは逆の第2方向に向くように前記第1回動支点回りに前記給紙許容姿勢から回動する回動姿勢との間で姿勢変更するストッパ片とを含み、前記第2方向は、前記給紙機構においてジャムが発生した場合において前記シートが前記給紙機構から引き抜かれる方向である。
【0010】
本発明に係るシート給紙装置によれば、ストッパ片は、規制姿勢と、給紙許容姿勢と、回動姿勢との間で姿勢変更する。ストッパ片は、給紙機構の給紙動作前に規制姿勢を取って、当接端部によってシートの給紙方向先端の位置を規制する。また、ストッパ片は、給紙動作時には、当接端部が給紙方向先端から離間する給紙許容姿勢を取るので、給紙動作を妨げない。
【0011】
さらに、ストッパ片は、給紙機構においてジャムが発生した場合、シートが引き抜かれる方向である第2方向に当接端部が向くように第1回動支点回りに給紙許容姿勢から回動して回動姿勢を取る。これにより、シートがストッパ片に引っ掛かることが抑制され。その結果、ストッパ片が引き抜かれるシートから受ける圧力が低減され、原稿シートの破損が抑制される。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、シート給紙機構は、さらに、前記支持体を回動可能に支持するホルダを含み、前記支持体は、回動可能な部材であって、前記ホルダに第2回動支点回りに回動可能に支持されており、前記支持体は、前記ストッパ片の前記給紙許容姿勢への姿勢変更に連動して、前記第2回動支点回りに第1回動方向に回動する一方、前記ストッパ片の前記回動姿勢への姿勢変更に連動して、前記第2回動支点回りに、前記第1回動方向とは逆の第2回動方向に回動する。
【0013】
この構成によれば、引き抜かれるシートのストッパ片に対する圧力が、ストッパ片から支持体に伝達される。しかしながら、支持体は、ストッパ片の回動姿勢への姿勢変更に連動して第2回動方向に回動する。そのため、シートの圧力がストッパ片、支持体の順に逃がされる。これにより、ストッパ片の回動姿勢への姿勢変更が円滑に行われる。
【0014】
本発明の他の好ましい実施形態では、前記給紙機構は、前記ホルダと、前記ホルダによって回動可能に保持され、回転動作によって前記シートを給紙するローラ部材と、前記ホルダを揺動させる揺動手段とを含み、前記揺動手段は、前記ホルダを揺動させることにより、前記ローラ部材の姿勢を、前記ローラ部材が前記シートに接触して前記シートの給紙動作を開始する給紙姿勢と、前記シートから離間する退避姿勢との間で姿勢変更させ、前記ストッパ片は、前記ローラ部材が前記退避姿勢を取っているとき、前記規制姿勢を取る一方、前記ローラ部材が前記給紙姿勢を取っているとき、前記給紙許容姿勢を取り、前記ローラ部材は、前記支持体が前記第2回動方向に回動し、前記ストッパ片が前記回動姿勢を取るタイミングで、前記退避姿勢を取る。
【0015】
この構成によれば、ローラ部材は、支持体が第2回動方向に回動し、ストッパ片が回動姿勢を取るタイミングで、退避姿勢(シートから離間する姿勢)を取るので、ジャムしたシートが給紙機構から円滑に引き抜かれ、ストッパ片のシートへの引っ掛かりが一層抑制される。
【0016】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記ホルダは、軸部を有し、前記支持体は、前記第2回動支点回りに回動可能となるように前記軸部に支持されている。
【0017】
この構成によれば、支持体は、第2回動支点回りに回動可能となるようにホルダの軸部に支持されているので、ストッパ片の姿勢変更とローラ部材の姿勢変更とを同期させることが容易である。
【0018】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、シート給紙装置は、さらに、前記給紙機構、前記ストッパ片および前記支持体を収容する筐体を含み、前記筐体は、前記支持体に当接して、前記支持体の前記第1回動方向への回動動作を防止する第1当接片を有し、前記第1当接片は、前記ストッパ片が前記規制姿勢を取っている状態のとき、前記支持体に当接する。
【0019】
この構成によれば、第1当接片は、ストッパ片が規制姿勢を取っているとき、支持体に当接して、支持体の第1回動方向への回動動作を防止する。そのため、ストッパ片が回動して、当接端部が第1方向に向くことが防止される。これにより、ストッパ片の規制姿勢が維持される。その結果、給紙動作前にシートの給紙方向先端の位置が適切に規制される。
【0020】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記ホルダは、前記ストッパ片が前記給紙許容姿勢を取っている場合において、前記支持体が前記第1回動方向に所定の回動範囲を超えて回動したときに当接する第2当接片を有する。
【0021】
この構成によれば、ストッパ片が給紙許容姿勢を取っている場合において、言い換えれば、ローラ部材が給紙姿勢を取っている場合において、第2当接片は、支持体が第1回動方向に所定の回動範囲を超えて回動したときに当接する。これにより、支持体が必要以上に回動することが防止されるので、ストッパ片の給紙許容姿勢が安定する。
【0022】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、前記ホルダは、前記支持体に当接して、前記支持体の前記第2回動方向への回動動作を防止する第3当接片をさらに有し、前記第3当接片は、前記ストッパ片が前記回動姿勢を取っている状態のとき、前記支持体に当接する。
【0023】
この構成によれば、第3当接片は、ストッパ片が回動姿勢を取っているとき、支持体に当接して、支持体の第2回動方向への回動動作を防止する。そのため、ストッパ片の回動姿勢が維持される。これにより、シートの給紙機構からの引き抜き動作が円滑に行われる。
【0024】
本発明に係る画像形成装置は、原稿シートを搬送するための搬送路と、前記原稿シートの原稿画像が読み取られる読取位置とを有し、前記原稿シートを前記読取位置に搬送するシート給紙装置と、前記読取位置において前記原稿画像を読み取って画像データを得る読取装置と、前記画像データに基づく画像を記録シート上に形成する画像形成部とを含み、前記シート給紙装置として、上記構成のシート給紙装置が用いられている。
【0025】
本発明に係る画像形成装置は、シートの破損を抑制することが可能なシート給紙装置を用いているので、画像形成動作を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るシート給紙装置および画像形成装置によれば、ストッパ片は回動姿勢を取ることができるので、ジャムしたシートが無理矢理引き抜かれてもシートの破損を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の外観を示す斜視図である。
【図2】自動原稿給紙装置の外観を示す斜視図である。
【図3】画像形成装置の内部構造を示す断面図である。
【図4】自動原稿給紙装置の要部断面図である。
【図5】自動原稿給紙装置の原稿給送ユニットの部分を拡大して示す斜視図である。
【図6】前記原稿給送ユニットを下面側から見た斜視図である。
【図7】自動原稿給紙装置の上部カバーユニットを下面側から見た斜視図である。
【図8】ストッパ機構を模式的に示す側面図であり、ストッパ機構のストッパ片が規制姿勢を取っている状態示す。
【図9】ストッパ片が給紙許容姿勢を取っている状態を示す模式図である。
【図10】ストッパ片が回動姿勢を取っている状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の外観を示す斜視図、図2は、自動原稿給紙装置3の外観を示す斜視図、図3は、画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として胴内排紙型の複写機を例示しているが、画像形成装置1は、プリンタ、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよい。
【0029】
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有し胴内空間(胴内排紙部24)を備えた装置本体2、装置本体2の上面に配置された自動原稿給紙装置3(シート給紙装置)、及び装置本体2の下側に組み付けられた増設給紙ユニット4を含む。
【0030】
装置本体2は、シートに対して画像形成処理を行う。装置本体2は、略直方体形状の下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される略直方体形状の上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを連結する連結筐体23とを含む。下部筐体21には画像形成のための各種機器が収容され、上部筐体22には原稿画像を光学的に読み取るための各種機器が収容されている。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23で囲まれる胴内空間が、画像形成後のシートを収容可能な胴内排紙部24とされている。連結筐体23は、装置本体2の右側面の側に配置され、胴内排紙部24へシートを排出するための排出口961が設けられている。
【0031】
胴内排紙部24として利用される前記胴内空間は、装置本体2の前面及び左側面において外部に開放されている。ユーザは、これらの開放部分から手を差し入れ、胴内排紙部24から画像形成後のシートを取り出すことが可能である。前記胴内空間の底面241は、下部筐体21の上面で区画され、排出口961から排出されたシートが積載される。
【0032】
上部筐体22の前面には、操作パネルユニット25が突出して設けられている。操作パネルユニット25は、テンキー、スタートキーなどを含む操作キー251及びLCDタッチパネル252などを備え、ユーザからの各種の操作指示の入力を受け付ける。ユーザは、操作パネルユニット25を通じて、印刷されるシートの枚数等を入力したり、印刷濃度等を入力したりすることができる。
【0033】
下部筐体21には、画像形成処理が施される記録シートを収容する給紙カセット211が装着されている。増設給紙ユニット4もまた、画像形成処理が施される記録シートを収容する給紙カセット41、42を含む。これら給紙カセット211、41、42は、自動給紙用に設けられたカセットであり、大量の記録シートをサイズ別に収容することができる。また、給紙カセット211、41、42は、下部筐体21又は増設給紙ユニット4の前面から手前方向に引出可能である。なお、図3では、下部筐体21の給紙カセット211のみを描いている。
【0034】
装置本体2の右側面には、ユーザに手差し給紙を行わせるためのマルチトレイユニットMが装着されている。マルチトレイユニットMは、手差しの記録シートが載置される給紙トレイ43と、前記記録シートを下部筐体21内の画像形成部へ搬入する給紙ユニット44とを含む。給紙トレイ43は、その下端部において下部筐体21に対して開閉自在に取り付けられており、不使用時は閉状態とされる。ユーザは、手差し給紙を行う場合、給紙トレイ43を開き、その上に記録シートを載置する。
【0035】
自動原稿給紙装置3は、装置本体2の上面に、その後側において回動自在に取り付けられている。なお、図3では、この自動原稿給紙装置3の記載を省いている。自動原稿給紙装置3は、装置本体2における所定の原稿読取位置(第1コンタクトガラス222が組み付けられた位置)に向けて、複写される原稿シートを自動給紙する。一方、ユーザが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置(第2コンタクトガラス223の配置位置)に載置する場合は、自動原稿給紙装置3は上方に開けられる。
【0036】
図2を参照して、自動原稿給紙装置3は、本体ハウジング30、原稿給紙トレイ31、原稿搬送部32、原稿排紙トレイ33及び原稿反転トレイ31Bを備える。本体ハウジング30は、自動原稿給紙装置3に備えられている各種の機構を収容する筐体であって、原稿搬送部32を収容する左側部分に、上方に隆起した前壁部301及び後壁部302を有すると共に、右側部分に、ほぼフラットな低層部分を備えている。
【0037】
原稿給紙トレイ31は、画像読取位置へ給送される原稿シートが載置されるトレイであって、本体ハウジング30の給送口30Hから延出するように、本体ハウジング30に付設されている。原稿給紙トレイ31には、載置された原稿シートの幅合わせを行うための一対のカーソル311が備えられている。
【0038】
原稿搬送部32は、原稿給紙トレイ31上の原稿シートを、画像読取位置を経由して原稿排紙トレイ33まで搬送する搬送路及び給紙機構を備える。原稿搬送部32は、本体ハウジング30の前壁部301及び後壁部302の間の開口に嵌め込まれる上部カバーユニット32Uを含む。カバーユニット32Uは、本体ハウジング30に対して開閉可能である。これら詳細については、図4他に基づいて後記で詳述する。
【0039】
原稿排紙トレイ33は、原稿画像が光学的に読み取られた後の原稿シートが排出されるトレイである。本体ハウジング30の右側における前記低層部分の上面が、原稿排紙トレイ33とされている。原稿反転トレイ31Bは、両面に原稿画像を有する原稿シートの読取の際に、当該原稿シートが一時的に排出されるトレイである。
【0040】
続いて、図3に基づいて、装置本体2の内部構造を説明する。下部筐体21の内部には、上方から順に、トナーコンテナ99Y、99M、99C、99K、中間転写ユニット92、画像形成部93、露光ユニット94、及び上述の給紙カセット211が収容されている。
【0041】
画像形成部93は、フルカラーのトナー像を形成するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各トナー像を形成する4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kを備える。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kは、感光体ドラム11と、この感光体ドラム11の周囲に配置された、帯電器12、現像装置13、一次転写ローラ14及びクリーニング装置15とを含む。
【0042】
感光体ドラム11は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム11としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器12は、感光体ドラム11の表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム11の周面は、露光ユニット94によって露光され、静電潜像が形成される。
【0043】
現像装置13は、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム11の周面にトナーを供給する。現像装置13は、2成分現像剤用のものであり、攪拌ローラ16、17、磁気ローラ18、及び現像ローラ19を含む。攪拌ローラ16、17は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラ18の周面には2成分現像剤層が担持され、現像ローラ19の周面には、磁気ローラ18と現像ローラ19との間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラ19上のトナーは、感光体ドラム11の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。
【0044】
一次転写ローラ14は、中間転写ユニット92に備えられている中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム11とニップ部を形成し、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置15は、トナー像転写後の感光体ドラム11の周面を清掃する。
【0045】
イエロー用トナーコンテナ99Y、マゼンタ用トナーコンテナ99M、シアン用トナーコンテナ99C、及びブラック用トナーコンテナ99Kは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCK各色に対応する画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置13に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。
【0046】
露光ユニット94は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Kの各々に設けられた感光体ドラム11の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
【0047】
中間転写ユニット92は、中間転写ベルト921、駆動ローラ922及び従動ローラ923を備える。中間転写ベルト921上には、複数の感光体ドラム11からトナー像が重ね塗りされる(一次転写)。重ね塗りされたトナー像は、給紙カセット211から供給される記録シートに、二次転写部98において二次転写される。中間転写ベルト921を周回駆動させる駆動ローラ922及び従動ローラ923は、下部筐体21によって回転自在に支持される。
【0048】
給紙カセット211(41、42)は、複数の記録シートが積層されてなるシート束を収納する。給紙カセット211の右端側の上部には、ピックアップローラ212が配置されている。ピックアップローラ212の駆動により、給紙カセット211内のシート束の最上層の記録シートが1枚ずつ繰り出され、搬入搬送路26へ搬入される。一方、給紙トレイ43に載置された手差しの記録シートは、給紙ユニット44の給紙ローラ45の駆動によって、搬入搬送路26へ搬入される。
【0049】
搬入搬送路26の下流側には、二次転写部98、後述する定着ユニット97及び排紙ユニット96を経由して排出口961まで延びるシート搬送路28が設けられている。シート搬送路28の上流部分は、下部筐体21に形成された内壁と、反転搬送ユニット29の内側面を形成する内壁との間に形成されている。なお、反転搬送ユニット29の外側面は、両面印刷の際にシートを反転搬送する反転搬送路291の片面を構成している。シート搬送路28の、二次転写部98よりも上流側にはレジストローラ対27が配置されている。シートは、レジストローラ対27にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、二次転写部98に送り出される。
【0050】
連結筐体23の内部には、定着ユニット97と排紙ユニット96とが収納されている。定着ユニット97は、定着ローラと加圧ローラとを含み、二次転写部98においてトナー像が二次転写された記録シートを加熱及び加圧することで、定着処理を施す。定着処理されたカラー画像付の記録シートは、定着ユニット97の下流に配置されている排紙ユニット96により、排出口961から胴内排紙部24に向けて排出される。
【0051】
上部筐体22の上面には、第1コンタクトガラス222と第2コンタクトガラス223とが嵌め込まれている。第1コンタクトガラス222は、自動原稿給紙装置3から自動給送される原稿シートの読取用に設けられている。第2コンタクトガラス223は、手置きされる原稿シートの読取用に設けられている。
【0052】
上部筐体22の内部には、原稿シートの原稿情報を光学的に読み取るための走査機構224と撮像素子225とが収容されている。走査機構224は、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含み、原稿からの反射光を撮像素子225に導く。撮像素子225は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路(図略)でデジタル電気信号に変換された後、露光ユニット94に入力される。
【0053】
続いて、図4〜図7に基づき、自動原稿給紙装置3の内部構造について詳述する。図4は、自動原稿給紙装置3の要部(原稿搬送部32)の断面図である。原稿搬送部32は、原稿シートの搬送経路となる第1〜第5搬送路341〜345と、これら第1〜第5搬送路341〜345の適所に配置された第1〜第5搬送ローラ対351〜355と、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートを原稿搬送部32内へ送り込む原稿給送ユニット5とを備える。図5は、原稿給送ユニット5を拡大して示す斜視図、図6は、原稿給送ユニット5を下面側から見た斜視図、図7は、上述の上部カバーユニット32Uを下面側から見た斜視図である。
【0054】
第1、第2及び第3搬送路341、342、343は、給送口30Hから、原稿画像の光学的な読取位置Xを経由して、原稿シートを原稿排紙トレイ33に排紙する排紙口30Eまで延びる、U字型に湾曲した搬送路を構成している。一方、第4及び第5搬送路344、345は、両面に原稿画像を有する原稿シートの読取の際に、当該原稿シートを反転させるために用いられるスイッチバック搬送路である。
【0055】
第1搬送路341は、原稿給紙トレイ31に連なって給送口30Hから左方に、やや先下がりに延びる搬送路であり、原稿給送ユニット5から送り出された原稿シートが最初に通過する搬送路である。第1搬送路341の上側搬送面は、上部カバーユニット32Uのガイド部材321(図7参照)により画定されている。第2搬送路342は、第1搬送路341の下流端から、原稿読取位置Xである第1コンタクトガラス222との対向位置まで延びる、円弧状の搬送路である。第2搬送路342の一方の搬送面も、上部カバーユニット32Uのガイド部材321で画定されている。第3搬送路343は、第1コンタクトガラス222との対向位置から右方に、排紙口30Eまでやや先上がりに延びる搬送路である。なお、第1コンタクトガラス222との対向位置には、原稿シートを第1コンタクトガラス222に摺接させる接面ガイド36が配置されている。
【0056】
第4搬送路344は、第3搬送路343から分岐して上方右に延びる搬送路である。第3搬送路343と第4搬送路344との分岐部には振り分けレバー37が配置されている。振り分けレバー37は、通常の片面読取の場合は原稿シートを第3搬送路へ案内するが、原稿シートの両面読取が実行される場合において、片面読取を終えた当該原稿シートを表裏反転させる必要が有るときに、原稿シートを第4搬送路344へ案内する。第5搬送路345は、第4搬送路344及び第1搬送路341と原稿反転トレイ31Bとに連通した略水平な搬送路であり、表裏反転させる原稿シートを第4搬送路344から受け入れ、第1搬送路341にスイッチバック搬送するための搬送路である。
【0057】
第1、第2、第3、第4及び第5搬送ローラ対351、352、353、354及び355は、それぞれ、原稿シートを搬送する回転駆動力を発生する駆動ローラ351A、352A、353A、354A及び355Aと、これに当接されて従動回転する従動ローラ351B、352B、353B、354B及び355Bとの組み合わせからなる。
【0058】
第1搬送ローラ対351は、第1搬送路341と第2搬送路342との間に配置され、大きく湾曲している第2搬送路342に向けて原稿シートを給送する。第2搬送ローラ対352は、原稿読取位置Xの直上流に配置され、この原稿読取位置Xへ原稿シートを送り込む。第3搬送ローラ対353は、原稿読取位置Xの直下流に配置され、画像読取後の原稿シートを、第3搬送路343又は第4搬送路344へ送り出す。第4搬送ローラ対354は、排紙口30Eの近傍に配置され、原稿シートを原稿排紙トレイ33に向けて排出する。第5搬送ローラ対355は、正転及び逆転が可能なローラ対であって第5搬送路345に配置され、原稿反転トレイ31Bを活用して、原稿シートのスイッチバック搬送を実行する。
【0059】
原稿給送ユニット5は、ピックアップローラ51(ローラ部材)と、ピックアップローラ51よりもシート搬送方向の下流側に配置される原稿給紙ローラ52と、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートを規制するストッパ機構53と、これら部材を保持するホルダ50と、ホルダ50を揺動させる駆動機構56(揺動手段)と、ホルダ50に回転力を与える捻りコイルバネ57とを含む。図7に示す通り、原稿給送ユニット5は、上部カバーユニット32Uに組み付けられている。自動原稿給紙装置3はさらに、駆動機構56に正方向又は逆方向の回転駆動力を与える図略のモータを備える。
【0060】
ホルダ50は、平板状の上板500と、この上板500と一体のリブ部材からなる前板501、後板502及び中板503とを含む、箱状の部材である。前板501及び後板502には、同軸上に並ぶ前筒状部504及び後筒状部505が突設されている。ホルダ50は、この前筒状部504及び後筒状部505の筒心回りに揺動する。
【0061】
ピックアップローラ51は、その軸回りに回転する回転力が与えられ、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートを、1枚ずつ原稿搬送部32(第1搬送路341)に向けて送り出す。ピックアップローラ51の回転軸は、後板502及び中板503の右端側で回転自在に支持されている。ピックアップローラ51は、ホルダ50の前筒状部504及び後筒状部505の筒心回りの揺動によって、原稿給紙トレイ31上の原稿シートの上面に接触する給紙位置と、原稿シートの上面から上方に離間した退避位置との間で位置変更する。
【0062】
図5に示すように、原稿給紙トレイ31の下流端312には、ピックアップローラ51と対向する位置で捌きパット313が配置されている。ピックアップローラ51が給紙位置にあるとき、ピックアップローラ51と捌きパット313との間にニップ部が形成されることとなる。
【0063】
原稿給紙ローラ52は、ピックアップローラ51から送り出された1枚の原稿シートを、さらに第1搬送路341に向けて搬送する。原稿給紙ローラ52の回転軸521は、ホルダ50の前板501及び後板502で回転自在に支持されている。原稿シートの給紙動作を行う際、回転軸521には回転駆動力が与えられ、原稿給紙ローラ52は回転する。なお、図4に示す通り、原稿給紙ローラ52に対向して、本体ハウジングには従動ローラ350が配置されている。ホルダ50の前筒状部504及び後筒状部505は、回転軸521の軸回りに回転可能に取り付けられている。つまり、回転軸521の軸心とホルダ50の前筒状部504及び後筒状部505の筒心とは同軸であり、このため原稿給紙ローラ52は、ホルダ50が揺動しても上下動せず、常時従動ローラ350と給紙ニップ部を形成している。
【0064】
ストッパ機構53は、左右方向において、ピックアップローラ51と原稿給紙ローラ52との間に位置している。ストッパ機構53は、ピックアップローラ51が給紙動作を開始する前に原稿シートの給紙方向先端を規制して、給紙方向先端を揃えるものである。給紙方向先端を揃えることにより、原稿シートが斜め姿勢で第1搬送路341に送り込まれることが抑制される。ストッパ機構53の構成については、後で詳述する。
【0065】
ピックアップローラ51の回転軸には、外周面に多数の溝が形成された第1ホイール541が固定されている。また、原稿給紙ローラ52の回転軸521には、同様な溝を備えた第2ホイール542が固定されている(図6参照)。これら第1、第2ホイール541、542は、それぞれピックアップローラ51、原稿給紙ローラ52の後方側の位置に配置されている。第1、第2ホイール541、542に対して、動力伝達用の無端ベルト55(伝達機構)が架け渡されている。無端ベルト55の内周面には、第1、第2ホイール541、542が備える溝と係合する多数の突起が形成されている。原稿給紙ローラ52の回転軸521に原稿シートを送り出す方向の回転駆動力(正方向の回転駆動力;前方向から見て時計方向の回転駆動力)が与えられると、その回転力は、無端ベルト55を通して、ピックアップローラ51の回転軸に伝達される。その結果、ピックアップローラ51及び原稿給紙ローラ52の双方が同期回転する。
【0066】
駆動機構56は、モータの正方向又は逆方向の回転駆動力を原稿給紙ローラ52の回転軸521に伝達するための機構である。駆動機構56は、カップリング部561、シャフト562、駆動入力部563及び押圧バネ564を備えている。
【0067】
カップリング部561は、回転軸521と係合する部位であり、回転軸521を受容する筒形状を有する。カップリング部561の筒壁には、回転軸521の軸方向に延びる溝部561Aが設けられている。一方、回転軸521の周壁からはピン522が突設されており、このピン522が溝部561Aに嵌り込むことで、前記係合が達成されている。押圧バネ564はカップリング部561を前方向に付勢しており、ピン522に対する溝部561Aの係合を確実にしている。
【0068】
駆動入力部563は、モータから図略のギア機構を介して回転駆動力が与えられる。カップリング部561、シャフト562及び駆動入力部563は一体化されており、駆動入力部563が回転されるとカップリング部561も回転し、その回転駆動力は回転軸521に伝達される。これに伴い、ピックアップローラ51及び原稿給紙ローラ52が回転する。
【0069】
上述の通り、回転軸521にホルダ50の前筒状部504及び後筒状部505は挿通されているので、ホルダ50は回転軸521の軸心回りに回動可能である。このため、回転軸521に正方向の回転駆動力が与えられたとき、ホルダ50には時計方向のモーメントが作用する。結果として、ホルダ50は回転軸521の軸心回りに時計方向に回動し、ピックアップローラ51は、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートの上面に接触する給紙位置に移動する。これに対し、回転軸521に逆方向の回転駆動力(前方向から見て反時計方向の回転駆動力)が与えられたとき、ホルダ50には反時計方向のモーメントが作用する。結果として、ホルダ50は回転軸521の軸心回りに反時計方向に回動し、ピックアップローラ51は、原稿シートの上面から上方に離間した退避位置に移動する。なお、図4及び図5は、ピックアップローラ51が退避位置に移動している状態を示している。
【0070】
捻りコイルバネ57は、そのコイル部が回転軸521に挿通され、ピックアップローラ51が退避位置を維持するようにホルダ50を付勢する。捻りコイルバネ57の付勢力は、回転軸521に正方向の回転駆動力が与えられたときに、ホルダ50に発生する時計方向のモーメントよりも小さく設定されている。従って、回転軸521が原稿シートの給紙時に正方向回転するとき、捻りコイルバネ57の付勢力に抗して、ホルダ50は回転軸521の軸心回りに時計方向に回動する。一方、回転軸521に逆方向の回転駆動力が与えられ、ピックアップローラ51が退避位置に移動すると、そのときのホルダ50の姿勢は、捻りコイルバネ57の付勢力によって維持される。前記退避位置においてホルダ50は、上部カバーユニット32Uの天板320に当止されている。
【0071】
次に、図4および図5に加え、図8を参照して、ストッパ機構53について説明する。図8は、ストッパ機構53を模式的に示す側面図であり、ストッパ機構53のストッパ片が後述する規制姿勢を取っている状態を示す。ストッパ機構53は、ピックアップローラ51と原稿給紙ローラ52との間に位置するよう、ホルダ50の前板501及び後板502の外面側にそれぞれ取り付けられている。各ストッパ機構53は同一の構成を有しているので、ここでは、前板501に取り付けられたストッパ機構53について説明する。
【0072】
ストッパ機構53は、支持体531と、ストッパ片532とを含む。支持体531は、前方から見た平面視で略三角形に形状設定されており、一辺が右方向に膨らんだ半円筒状の回動支点部(以下、第2回動支点部533という)を有する。第2回動支点部533は支持体531の回動支点(第2回動支点)を有する。ホルダ50の前板501には、軸部508が突設されている。軸部508は、前方視でピックアップローラ51と原稿給紙ローラ52との間に位置している。支持体531は、軸部508に第2回動支点部533を介して支持されることで、第2回動支点回りに回動可能である。支持体531の前記一辺における第2回動支点部533よりも上方の部分は、当接部535とされている。
【0073】
支持体531は、さらに、底辺から略垂直に垂下する垂下片536を有する。垂下片536は、前後方向における一対の前側面および後側面を有し、前側面には、前方向に突出する回動支持軸536Aが形成されていると共に、後側面にも、後方向に突出する回動支持軸536A(図7参照)が形成されている。
【0074】
垂下片536には、回動防止片537が一体に形成されている。回動防止片537は、前後方向に前側面および後側面を有する。回動防止片537は、右方視または左方視で垂下片536よりも幅広に設定されている。回動防止片537の位置は、垂下片536の回動支持軸536Aの上方に設定されている。回動防止片537は、後述するが、ストッパ片532に当接して、前方視でストッパ片532の時計回りの回動を防止するものである。
【0075】
ストッパ片532は、シート搬送経路上に配置された細長の部材である。シート搬送経路は、図4を用いて行った説明から明らかなように、原稿シートがピックアップローラ51、原稿給紙ローラ52、第1〜第3搬送ローラ対351〜353の順に搬送される経路である。ストッパ片532は、回動支点部(以下、第1回動支点部534という)と、当接端部538とを有する。
【0076】
第1回動支点部534は、ストッパ片532の回動支点(第1回動支点)を有する。第1回動支点部534は、ストッパ片532における一方の端部寄りの部位に設定されており、前後方向に離間する一対の前壁539および後壁540を有する。前壁539および後壁540間の距離は、垂下片536の前記前側面および前記後側面間の距離よりも大きく設定されており、前壁539および後壁540間の空間に、垂下片536が収容されている。そして、前壁539および後壁540のそれぞれには、同軸の貫通孔534Hが形成されており、垂下片536の一対の回動支持軸536Aが対応する貫通孔534Hに挿通されている。これにより、ストッパ片532は支持体531に対して第1回動支点回りに回動自在となっている。
【0077】
また、前壁539および後壁540間の距離は、回動防止片537の前記前側面および前記後側面間の距離と等しく、またはその距離よりも小さく設定されており、前壁539および後壁540間の空間に、回動防止片537が収容されない構成となっている。そのため、前壁539および後壁540のそれぞれにおける右方に向く面は、回動防止片537に当止される当止面539S,540Sとされている。ストッパ片532が前方視で時計回りに回動しようとすると、当止面539Sが回動防止片537によって当止される。これにより、ストッパ片532の時計回りの回動が規制されている。
【0078】
このように、ストッパ片532は、前方視で反時計回りに回動することが許容されている一方、回動防止片537によって時計回りに回動することが規制されている。
【0079】
ストッパ片532における他方の端部が、当接端部538として作用する。当接端部538は、ピックアップローラ51が原稿シートを送り出す給紙動作が始まる前に、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートの給紙方向先端に当接して、給紙方向先端の位置を規制する。当接端部538は、給紙方向先端に当接する規制面538Sを有する。
【0080】
上記構成のストッパ機構53のストッパ片532は、規制姿勢と、給紙許容姿勢と、回動姿勢との間で姿勢変更が可能である。上述した図8は、ストッパ片532が規制姿勢を取っている状態を示す模式図であり、図9は、ストッパ片532が給紙許容姿勢を取っている状態を示す模式図であり、図10は、ストッパ片532が回動姿勢を取っている状態を示す模式図である。以下、図8〜図10を参照してストッパ片532の各姿勢について説明する。
【0081】
(規制姿勢)
ストッパ片532は、原稿シートSの給紙方向先端SUの位置を規制するために規制姿勢を取る。ストッパ片532は、図8に示すように、ホルダ50の揺動動作によってピックアップローラ51が原稿シートSから離間する退避姿勢を取っているとき、規制姿勢を取る。ストッパ片532は、規制姿勢を取っているとき、原稿給紙トレイ31の下流端314に向かって突出した状態となり、当接端部538の規制面538Sは、原稿給紙トレイ31に載置される原稿シートSに対して略垂直に延びる壁面となっている。これにより、当接端部538の規制面538Sは、原稿シートSの給紙方向先端SUに当接することができる。そのため、原稿シートSの給紙方向先端SUの位置が規制され、給紙方向先端SUが揃えられる。その結果、原稿シートSが斜め姿勢でピックアップローラ51によって送り出されることが抑制される。
【0082】
ストッパ片532の規制姿勢は、第1当接片322(図4参照)によって維持される。第1当接片322は、上部カバーユニット32Uの天板320に形成されている。ホルダ50は、ピックアップローラ51が退避姿勢を取っているとき、天板320に当止されている。第1当接片322の位置は、ホルダ50が天板320に当止されている状態で、第1当接片322がストッパ機構53の支持体531の当接部535に当接することが可能なように設定されている。
【0083】
ストッパ片532が規制姿勢を取っているとき、ユーザが原稿シートSを原稿給紙トレイ31に置いて給紙方向先端SUをストッパ片532の当接端部538に突き当てると、当接端部538に対して原稿シートSの押圧力が作用する。原稿シートSの押圧力は、ストッパ片532、ひいては支持体531を、前方視で時計回り(第1回動方向)に回動させようとする。しかしながら、このとき、第1当接片322は支持体531の当接部535に当接するので、支持体531の時計回りの回動が防止される。これにより、ストッパ片532の規制姿勢が維持される。
【0084】
(給紙許容姿勢)
ストッパ片532は、図9に示すように、ホルダ50の揺動動作によってピックアップローラ51が原稿シートSに接触する給紙姿勢を取るとき、図8に示す規制姿勢から給紙許容姿勢を取る。ピックアップローラ51が給紙姿勢を取るようにホルダ50が揺動すると、つまり、ホルダ50の右端が下降すると、ストッパ機構53の支持体531の当接部535は、天板320の第1当接片322から離間する。これにより、支持体531の時計回りの回動が許容された状態となる。そして、ピックアップローラ51の回転動作によって原稿シートSの給紙が開始されると、ストッパ片532は、給紙される原稿シートSの給紙方向先端SUに押し上げられて時計回りに回動し、当接端部538が給紙方向先端SUから離間する。これにより、当接端部538による給紙方向先端SUの規制が解除される。ストッパ片532の時計回りの回動動作は、時計回りに回動することが許容された状態の支持体531によって可能である。このとき、当接端部538は、原稿シートSの給紙を邪魔しない程度に、原稿シートSがピックアップローラ51から原稿給紙ローラ52に向けて搬送される方向(第1方向F)に向く。当接端部538は、原稿シートSが搬送されるとき、シート搬送経路上に位置しており、原稿シートSは、当接端部538に対して摺動しつつ搬送される。
【0085】
ホルダ50の前板501には、第2当接片506(図5参照)が形成されている。第2当接片506の前板501における位置は、支持体531の近傍に、かつ前方視で支持体531よりもピックアップローラ51寄りに設定されている。また、第2当接片506は、前板501の上下方向に延在している。第2当接片506の前記上下方向における高さは、ストッパ片532が給紙許容姿勢を取っている場合において、支持体531が時計回りに所定の回動範囲を超えて回動したときに、第2当接片506の上縁が支持体531の当接部535に当接することが可能なように設定されている。
【0086】
したがって、原稿シートSによってストッパ片532が押し上げられ、支持体531が時計回りに所定の回動範囲を超えて回動しようとすると、第2当接片506が支持体531の当接部535に当接する。そのため、支持体531が必要以上に回動することが防止されるので、ストッパ片532の給紙許容姿勢が安定する。
【0087】
(回動姿勢)
本実施形態では、ストッパ片532は、図9に示す給紙許容姿勢から図10に示す回動姿勢をさらに取ることができる。ストッパ片532は、図9に示す給紙許容姿勢を取っている状態で原稿搬送部32(つまり、シート搬送経路)において原稿シートSのジャムが発生したときに回動姿勢を取ることができる。
【0088】
本実施形態の自動原稿給紙装置3では、原稿シートSのジャムが発生した場合、上部カバーユニット32U(図4参照)を開状態として、第1搬送路341および第2搬送路342を外部に露出させることで、ジャムした原稿シートSを除去することができる。
【0089】
しかしながら、ユーザが上記のジャム処理の手順を知らない場合、ジャムした原稿シートSの一部(例えば給紙方向後端)が原稿給紙トレイ31上に残っていると、ユーザは、給紙方向後端を掴み、ジャムした原稿シートSを第1搬送路341または第2搬送路342から無理矢理引き抜こうとする。このユーザによる無理な原稿シートSの引き抜きにより、給紙許容姿勢を取っているストッパ片532が原稿シートSに引っ掛かって原稿シートSを破損するおそれがある。
【0090】
本実施形態における、ストッパ片532の給紙許容姿勢から回動姿勢への姿勢変更は、上記の問題を解決するものである。すなわち、図9に示すように、ピックアップローラ51が搬送姿勢を取り、ストッパ片532が給紙許容姿勢を取っている状態で、原稿シートSのジャムが発生すると、ジャム処理の手順を知らないユーザは、原稿シートSにおけるピックアップローラ51よりも外部に残っている部分(給紙方向後端部)を掴んで、第1方向Fとは逆の方向(第2方向R)に引き抜こうとする。ピックアップローラ51は、原稿シートSの第2方向Rへの引き抜き動作により、原稿シートSから上方に作用する押圧力を受ける。その押圧力がピックアップローラ51を介してホルダ50に伝達されると、ホルダ50が揺動し始めて、ピックアップローラ51は上方に移動し始める。つまり、ピックアップローラ51は退避姿勢を取り始める。
【0091】
このとき、ジャムした原稿シートSと接触状態にある、ストッパ片532の当接端部538は第1方向Fを向いているので、原稿シートSの第2方向Rへの引き抜き動作により、ストッパ片532の当接端部538には、該当接端部538を第2方向Rに移動させる引張力が作用する。その引張力より、ストッパ片532には、該ストッパ片532を反時計回りに回動させる力が作用する。ストッパ片532は、上述したように、第1回動支点回りに回動自在に構成されている。そのため、ストッパ片532の当接端部538に対して引張力が作用すると、図10に示すように、ストッパ片532は第1回動支点回りに反時計回りに回動して、当接端部538が第2方向Rに向く。このようにしてストッパ片532は回動姿勢を取る。ストッパ片532の回動範囲は、当接端部538が第2方向Rを向く程度に設定されている。当接端部538が第2方向Rに向いた状態では、ストッパ片532は、原稿シートSに対して略平行に延在し、ストッパ片532における規制面538Sとは反対の面が原稿シートSの片面に接触した状態となる。したがって、ストッパ片532が、引き抜かれる原稿シートSから受ける圧力(引張力)が低減される。これにより、原稿シートSの破損が抑制される。
【0092】
ストッパ片532を第1回動支点回りに回動可能に支持する支持体531も、ストッパ片532の回動動作(回動姿勢への姿勢変更)に連動して反時計回り(第1回動方向とは逆の第2回動方向)に回動する。具体的には、ストッパ片532の当接端部538に対して引張力が作用したとき、その引張力はストッパ片532を介して支持体531に伝達される。支持体531は、上述したように、第2回動支点回りに回動自在に構成されている。そのため、引張力が支持体531に伝達されると、支持体531は、図9の状態から、図10に示すように反時計回りに回動する。支持体531の反時計回りの回動により、引き抜かれる原稿シートSの圧力が、ストッパ片532、支持体531の順に逃がされる。これにより、ストッパ片532の回動姿勢への姿勢変更が円滑に行われる。
【0093】
ストッパ片532の回動姿勢は、第3当接片507(図5参照)によって維持される。第3当接片507は、ホルダ50の前板501に形成されている。第3当接片507は、支持体531の前記底辺の直下方位置、かつ支持体531の回動防止片537の直右方位置に形成されている。つまり、第3当接片507は、ストッパ片532が規制姿勢を取っているときに回動防止片537に当接することが可能な位置に形成されている。ストッパ片532の回動姿勢への姿勢変更に伴って支持体531が反時計回りに回動すると、第3当接片507は、回動防止片537に当接する。これにより、支持体531の回動が防止され、ストッパ片532の回動姿勢が維持される。
【0094】
以上説明した本実施形態に係る自動原稿給紙装置3によれば、ストッパ片532は、第1回動支点回りに回動可能に支持体531に支持されていると共に、支持体531は、第2回動支点回りに回動可能にホルダ50に支持されている。つまり、本実施形態では、原稿シートSの給紙方向先端SUの位置を規制するストッパを、分割構成としている。そして、ストッパ片532は、ジャムが発生し、原稿シートSが第2方向Rに引き抜かれるときに、第1回動支点回りに回動して回動姿勢を取るので、ストッパ片532が、引き抜かれる原稿シートSから受ける圧力(引張力)が低減される。その結果、原稿シートSの破損が抑制される。しかも、支持体531は、ストッパ片532の回動姿勢への姿勢変更に連動して反時計回り(第2回動方向)に回動するので、引き抜かれる原稿シートSの圧力が、ストッパ片532、支持体531の順に逃がされる。これにより、ストッパ片532の回動姿勢への姿勢変更が円滑に行われる。
【0095】
また、本実施形態に係る自動原稿給紙装置3によれば、ピックアップローラ51は、支持体531が反時計回りに回動し、ストッパ片532が回動姿勢を取るタイミングで、原稿シートSから離間する退避姿勢を取る。そのため、ジャムした原稿シートSがシート搬送経路から円滑に引き抜かれる。これにより、ストッパ片532の原稿シートSへの引っ掛かりが一層抑制される。
【0096】
さらに、本実施形態に係る自動原稿給紙装置3によれば、支持体531は、第2回動支点回りに回動可能となるようにホルダ50の軸部508に支持されているので、ストッパ片532の姿勢変更とピックアップローラ51の姿勢変更とを同期させることが容易である。
【0097】
さらに、本実施形態に係る自動原稿給紙装置3によれば、ストッパ片532の姿勢を維持する第1当接片322〜第3当接片507が設けられている。第1当接片322は、ストッパ片532の規制姿勢を維持するので、ピックアップローラ51による給紙動作前に原稿シートSの給紙方向先端SUの位置が適切に規制される。また、第2当接片506は、支持体531が第1回動方向に所定の回動範囲を超えて回動することを防止するので、ストッパ片532の給紙許容姿勢が安定する。さらに、第3当接片507は、ストッパ片532の回動姿勢を維持するので、原稿シートSのシート搬送経路からの引き抜き動作が円滑に行われる。
【符号の説明】
【0098】
1 画像形成装置
3 自動原稿給紙装置(シート給紙装置)
32 原稿搬送部
51 ピックアップローラ
52 原稿給紙ローラ
53 ストッパ機構
531 支持体
532 ストッパ片
533 第2回動支点部
534 第1回動支点部
535 当接部
536 垂下片
537 回動防止片
538 当接端部
538S 規制面
539 前壁
540 後壁
F 第1方向
R 第2方向
S 原稿シート
SU 原稿シートの給紙方向先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートをシート給紙経路に沿って給紙する給紙機構と、
支持体と、
前記シート給紙経路上に位置し、前記支持体に第1回動支点回りに回動可能に支持される部材であって、当接端部を有し、前記給紙機構が前記シートを給紙する給紙動作の前に前記当接端部が前記シートの給紙方向先端に当接して、前記給紙方向先端の位置を規制する規制姿勢と、前記給紙動作時に、前記シートが給紙される第1方向に向かって前記当接端部が前記給紙方向先端から離間する給紙許容姿勢と、前記当接端部が前記第1方向とは逆の第2方向に向くように前記第1回動支点回りに前記給紙許容姿勢から回動する回動姿勢との間で姿勢変更するストッパ片と、
を備え、
前記第2方向は、前記給紙機構においてジャムが発生した場合において前記シートが前記給紙機構から引き抜かれる方向であるシート給紙装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート給紙装置において、
さらに、前記支持体を回動可能に支持するホルダを備え、
前記支持体は、回動可能な部材であって、前記ホルダに第2回動支点回りに回動可能に支持されており、
前記支持体は、前記ストッパ片の前記給紙許容姿勢への姿勢変更に連動して、前記第2回動支点回りに第1回動方向に回動する一方、前記ストッパ片の前記回動姿勢への姿勢変更に連動して、前記第2回動支点回りに、前記第1回動方向とは逆の第2回動方向に回動するシート給紙装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシート給紙装置において、
前記給紙機構は、前記ホルダと、前記ホルダによって回動可能に保持され、回転動作によって前記シートを給紙するローラ部材と、前記ホルダを揺動させる揺動手段とを含み、
前記揺動手段は、前記ホルダを揺動させることにより、前記ローラ部材の姿勢を、前記ローラ部材が前記シートに接触して前記シートの給紙動作を開始する給紙姿勢と、前記シートから離間する退避姿勢との間で姿勢変更させ、
前記ストッパ片は、前記ローラ部材が前記退避姿勢を取っているとき、前記規制姿勢を取る一方、前記ローラ部材が前記給紙姿勢を取っているとき、前記給紙許容姿勢を取り、
前記ローラ部材は、前記支持体が前記第2回動方向に回動し、前記ストッパ片が前記回動姿勢を取るタイミングで、前記退避姿勢を取るシート給紙装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート給紙装置において、
前記ホルダは、軸部を有し、
前記支持体は、前記第2回動支点回りに回動可能となるように前記軸部に支持されているシート給紙装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のシート給紙機構において、
さらに、前記給紙機構、前記ストッパ片および前記支持体を収容する筐体を備え、
前記筐体は、前記支持体に当接して、前記支持体の前記第1回動方向への回動動作を防止する第1当接片を有し、
前記第1当接片は、前記ストッパ片が前記規制姿勢を取っている状態のとき、前記支持体に当接するシート給紙装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載のシート給紙機構において、
前記ホルダは、前記ストッパ片が前記給紙許容姿勢を取っている場合において、前記支持体が前記第1回動方向に所定の回動範囲を超えて回動したときに当接する第2当接片を有するシート給紙装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載のシート給紙機構において、
前記ホルダは、前記支持体に当接して、前記支持体の前記第2回動方向への回動動作を防止する第3当接片をさらに有し、
前記第3当接片は、前記ストッパ片が前記回動姿勢を取っている状態のとき、前記支持体に当接するシート給紙装置。
【請求項8】
原稿シートを搬送するための搬送路と、前記原稿シートの原稿画像が読み取られる読取位置とを有し、前記原稿シートを前記読取位置に搬送するシート給紙装置と、
前記読取位置において前記原稿画像を読み取って画像データを得る読取装置と、
前記画像データに基づく画像を記録シート上に形成する画像形成部と、
を備え、
前記シート給紙装置として、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート給紙装置が用いられている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−153522(P2012−153522A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16264(P2011−16264)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】