シート給送装置および画像形成装置
【課題】シートの重送を安定して防止できるシート給送装置を提供する。
【解決手段】シート撓曲給紙部3と、シート撓曲給紙部の下流に設置された摩擦分離部4とを備える。シート撓曲給紙部3は、最上位のシートPの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、先端縁の中央部が次位のシートから離間するようにシートを撓曲させて給紙する。摩擦分離部4は、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とを有し、シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部は、給送部と分離部とにより挟持し、シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送する。
【解決手段】シート撓曲給紙部3と、シート撓曲給紙部の下流に設置された摩擦分離部4とを備える。シート撓曲給紙部3は、最上位のシートPの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、先端縁の中央部が次位のシートから離間するようにシートを撓曲させて給紙する。摩擦分離部4は、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とを有し、シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部は、給送部と分離部とにより挟持し、シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置、特に積載されたシートを一枚ずつ分離給送するシート給送装置に関し、さらにはシート給送装置を備え、シートに画像形成を行う画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリなどの画像形成装置を備えるシート給送装置においては、シートを一枚ずつ分離して、シートを重ねたままで供給(重送)しないようにすることが要求される。
【0003】
従来、このようなシートの重送防止のための分離方式としては、給送手段と分離手段とでシートを挟持して、一枚ずつ分離・給送する摩擦分離方式が広く知られている。この方式は、幅広いシート対応力を持ちながら、簡易な構成であることが利点である。
【0004】
しかし、摩擦分離方式ではシートが給送手段と分離手段との間隙(分離ニップN)を通過する際に分離手段が振動し、シートがその振動を増幅することで異音が発生するという問題がある。
【0005】
他方、シートの弾性を利用して、シートを撓曲させて分離する下記のような方式がある。
【0006】
(1)特開平11−292316号公報(特許文献1)
特許文献1に開示された給紙装置によれば、ピックアップコロは正逆回転可能とし、通常の給紙制御で底板に載置された最上位のシートを搬送し、分離部に繰り出すのに加え、通紙直前に逆回転して最上位のシートを搬送方向の後方側へずらし、下のシートとの間に空気を入れてさばき効果を与えている。シートを載置した底板の先端に、ピックアップコロとの当接部近傍の搬送方向手前側で凸状の屈曲部を設け、予めシートに変形の癖を与えておき、撓み変形し易くしている。
【0007】
このように最上位のシートを、幅方向を軸として屈曲(または撓曲)させることによって、さばき効果を与えて、シート間の搬送抵抗の低減を可能とし、不送りや重送を防止している。
【0008】
(2)特許第2697664号公報(特許文献2)
特許文献2に開示された自動給紙装置によれば、給紙ローラに連動し先端に摩擦ゴムを有し一枚目のシートを幅方向に挟み凸曲(または撓曲)させるピックフィンと、シートの送出方向の中央にシートに生じた凸曲部よりも低くシートの束よりも高い分離爪とが設けられている。シートの送出方向の両端にはシートの束よりも少し高く分離爪よりも低く、僅かに後に当たる位置に返し爪を有している。
【0009】
シート束の最上部のシートは、中央部が凸曲している状態で送出方向へ押し出されるために、中央分離爪を乗り越えて供給される。これより下の二枚目以降のシートの束は、中央分離爪と返し爪によって送出方向にずれることが防止される。従って、シートは印字記録装置に一枚だけ供給されることになる。
【0010】
このように、ピックフィンにより凸曲させられた最上部のシートと二枚目以降のシートとを、中央爪によって分離している。
【0011】
(3)特開2001−97580号公報(特許文献3)
特許文献3に開示の給紙装置では、積載台の上方に一対のシート係合部を含むシート撓曲手段を配設し、一対のシート係合手段を最上位のシートの上面に係合せしめた状態で相互に接近する方向に移動せしめ、最上位のシートを撓曲させて上方に膨出させる。
【0012】
最上位のシートが撓曲されて上方に膨出されると、最上位のシートとその直ぐ下方のシートとの間に十分な空間が生成され、かかる空間にシート浮上および分離手段の送風口からの送風が導入される。従って、最上位のシートがその直ぐ下方のシートから充分確実に分離され、吸引送出手段によって吸引されて送出される。
【0013】
この給紙装置によれば、最上位のシートを撓曲させることによって、その直ぐ下方のシートとの間に、分離手段による送風を導入し易くして分離を実現している。
【0014】
(4)特開2001−302005号公報(特許文献4)
特許文献4に開示のシート供給装置では、シート供給手段により給送されるシートに「さばき動作」を与える複数の斜面部(分離手段)を備え、複数の斜面部のうち、搬送抵抗の小さい第1の斜面部をシート先端の中間部分に対向する位置に配設し、搬送抵抗の大きい第2の斜面部を第1の斜面部の両側に離間してそれぞれ配設し、シート先端が第2の斜面部に突き当って引っ掛かってカールを形成し、第1の斜面部でのシートの搬送が進むと、最上位の1枚のシートのみカールを解いて、第1および第2の斜面部上を搬送され、残りのシートが元の積載位置に戻る。
【0015】
このシート供給装置によれば、安定したさばき効果を得るために搬送方向下流に複数の斜面部を配設している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示の給紙装置では、ピックアップコロを所定時間逆回転に駆動し、最上位のシートを幅方向を軸として撓曲させて「さばき効果」を与えて搬送抵抗の軽減を図っている。しかし、「さばき効果」を与えた後に再び最上位のシートを次位のシートに押し付けながら分離部へ給送することから、新たな搬送抵抗が生じるので、重送を完全に防止することができない。
【0017】
特許文献2に開示の自動給紙装置では、ピックフィンによって最上位のシートを給送方向を軸として撓曲させ、シート束の搬送方向前方に設置された中央分離爪を乗り越えさせることによって、平面状態を保つ次位以降のシートと分離している。しかし、シート間の吸着力がシートの復元力を上回り、最上位のシートと次位のシートが同一形状に撓曲させられた場合に重送が生じるという問題がある。
【0018】
特許文献3に開示の給紙装置では、撓曲手段によって最上位のシートと次位以降のシートとを離間した後、シート束先端に送風を行うシート浮上・分離手段と、表面に多数の吸引孔を持つ吸引送出手段とによって分離・給送している。しかし、送風機構や吸引機構を設置すると、装置の大型化や稼動時の騒音が問題となる。
【0019】
特許文献4に開示のシート供給装置では、斜面部による分離は、シートと搬送ローラとの間、シートと下位のシートとの間の摩擦抵抗差を利用しているため、シートどうしの吸着力が高い場合に重送を生じるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、このような問題を解決し、シートの重送を安定して防止できるシート給送装置を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、このようなシート給送装置を備え、各種シートへの対応性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では、従来の摩擦分離方式とシートの弾性を利用した撓曲分離方式とを組合せている。摩擦分離方式は、撓曲分離方式に比べて幅広いシート対応力を持ちながら、簡易な構成であることが利点である。
【0023】
従って本発明は、シート撓曲給紙部と摩擦分離部とを併せて設置し、尚且つ小型化を図ることでシート給送装置を大型化せずとも分離性能を高めることができるという考えに基づいている。
【0024】
この場合、シート撓曲給紙部によって形成されるシートの撓曲形状は、シートの厚さや剛性で異なるので、シートの先端が給送手段や分離手段の端面に突き当たり、シートの耳折れが生じないようにする必要がある。
【0025】
従って、シート撓曲給紙部は、シート積載部に積載された最上位のシートに接触して、最上位のシートの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、先端縁の中央部が次位のシートまたはシート積載部から離間するようにシートを撓曲させて給紙するように構成している。
【0026】
摩擦分離部は、シート撓曲給紙部の下流に設置され、シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送するように構成している。このためには、摩擦分離部を、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とから構成し、シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部を、給送部と分離部とにより挟持するのが好適である。また、給送部および分離部は、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置するのがよい。
【0027】
さらに、一対の給送部は、シートを給送するとともに、シートの撓曲を伸ばして平面状とするように構成するのが好適である。
【0028】
給送部をローラとし、分離部を平板状の分離パッドとし、あるいは給送部と分離部とを、それぞれローラとすることができる。
【0029】
本発明の画像形成装置は、このようなシート給送装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明のシート給送装置によれば、シート撓曲給紙部で、シートの弾性を利用した一次分離を行い、摩擦分離部で、シートと給送部との摩擦係数と、シートと分離部との間の摩擦係数の差を利用した二次分離を行うことによって、確実にシートの重送を防止することができる。
【0031】
シートが撓曲した状態を維持しながら摩擦分離を行うことにより、摩擦分離部で発生する振動をシートが増幅する作用を抑え、摩擦分離時の異音の発生を防止することができる。
【0032】
また、摩擦分離部を構成する一対の給送部および分離部を、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置することで、シートの先端縁にかかる摩擦抵抗を給送方向に見て左右均等にすることができ、シートが表面に垂直な方向を軸として回転(スキュー)することを防止できる。
【0033】
また、シート撓曲給紙部によって生じさせたシート幅方向中央部の撓みを分離給送しながら伸ばすようにした場合には、像形成部などではシートが幅方向のシート撓曲を持たない方が望ましい画像形成装置には、好適である。
【0034】
本発明の画像形成装置によれば、本発明に係るシート給送装置を搭載することで、各種シートへの対応性に優れた装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】シート給送装置の第1の実施例を、一部破断して示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】シート撓曲給紙部の機構を示す斜視図である。
【図5】摩擦分離部の機構を示す斜視図である。
【図6】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する平面図である。
【図7】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する平面図である。
【図8】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図9】シート給送装置の第2の実施例を、一部破断して示す平面図である。
【図10】第2の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図11】第2の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図12】第3の実施例のシート給送装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の構成要素には、同一の参照番号を付して示す。
【0037】
まず、図1を参照して、本発明のシート給送装置が設けられた画像形成装置の概略構成を説明する。この画像形成装置において、装置本体1の下部に、シートであるシートPが積載されるシート積載部である2個の給紙カセット2が設置されており、各給紙カセット2には、積載されているシートPに接触して、上位のシートPから給紙する給紙部を兼ねるシート撓曲給紙部3が設けられている。
【0038】
給紙カセット2において、シート撓曲給紙部3から給紙されるシートPは、各給紙カセット2における給送側にそれぞれ設置された摩擦分離部4へ送られ、一枚ずつ分離給送される。摩擦分離部4により給送されたシートPは、シート搬送路9に設けられた搬送ローラ10によりレジストローラ11へ搬送され、レジストローラ11により、感光体12,トナー現像部13,レーザ光Lによる露光部14などからなる画像形成ユニット部15における転写部16へ送られ、表面にトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートPは、定着部17にて加圧加熱され定着処理を受けた後、排紙ローラ18により装置本体1の上部の排紙トレイ19に排出される。
【0039】
次に、シート給送装置の各実施例を説明する。
【0040】
(第1の実施例)
(シート給送装置の構成)
図2は、シート給送装置の第1の実施例を、一部破断して示す平面図である。矢印Fは、シートPの給紙方向を示している。図3は、図2のシートPの幅方向中心線50におけるA−A線断面図である。
【0041】
シート給送装置は、給紙カセット2と、シート撓曲給紙部3と、摩擦分離部4とから構成されている。
【0042】
上面が開放された筐状の給紙カセット2内には、平板材からなるシート積載台20が設けられ、シート積載台20は支点21で回動自在に装着されている。給紙カセット2とシート積載台20との間には、回動可能なレバー22が設置され、シート積載台20の昇降を制御する。
【0043】
シートの給紙および撓曲の機能を兼ね備えるシート撓曲給紙部3は、シート積載台20にセットされたシートPの束の上方に設置されており、シートを分離する摩擦分離部4は、シート撓曲給紙部3より給紙方向下流側に設置されている。
【0044】
シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4は、それぞれ図2に示すように、シートPの幅方向の中央(中心線50で示す)に対して所定の距離を置いて、同じ機構が対向して設置されている。従って、図2において、同一の構成要素には同一の参照番号を付し、図において左側の構成要素の参照番号には添え字aを、右側の構成要素の参照番号には添え字bを付して区別する。
【0045】
図4は、シート撓曲給紙部3の左側の機構を示す斜視図である。また、図5は、摩擦分離部4の左側の機構を示す斜視図である。
【0046】
以下、図2〜図5を参照して、シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4の構造を説明する。上述したように、シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4は、それぞれ左右対称の機構を有しているので、左側の機構を代表的に説明する。
【0047】
シート撓曲給紙部3は、給紙撓曲ローラ23aを有している。給紙撓曲ローラ23aは、給紙撓曲ローラ軸27aを介してホルダ24aに支持されている。給紙撓曲ローラ23aの表面は、ゴムなどの摩擦係数の高い材料によって形成されている。
【0048】
ホルダ24aは、駆動軸26に沿って平行移動することができ、且つ駆動軸26を支点に回動することができる。ホルダ24aの回動によって、給紙撓曲ローラ23aをシートPと接触あるいは離間させることができる。
【0049】
ホルダ24aは、ホルダ24aとステー(保持板)28aとの間に設置されたスプリング25aによって、給紙撓曲ローラ23aがシートPに接触する方向に付勢されている。
【0050】
ステー28aの上には、ソレノイドS1aが設けられている。ソレノイドS1aは、ホルダ24aを押圧し、スプリング25aの付勢力に逆らいながら、駆動軸26を中心に回動させて、給紙撓曲ローラ23aをシートPから離間させることが可能である。
【0051】
給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動源としてステッピングモータM1が設置されており(図2参照)、モータM1の回転軸に固定されたギヤ29、駆動軸26に固定されたギヤ30a、給紙撓曲ローラ23aの軸27aに固定されたギヤ31aを介して、給紙撓曲ローラ23aに駆動が伝達される。なお、駆動軸26は、右側の機構のギヤ30bに連結されているので、給紙撓曲ローラ23bにも駆動が伝達される。
【0052】
ギヤ30aには電磁クラッチC1が接続されており、給紙撓曲ローラ23a,23bへの駆動の伝達を、接続あるいは切断することが可能である。
【0053】
ソレノイドS2aは、ホルダ24aに接続され、ホルダ24aを駆動軸26に沿って移動させることが可能である。
【0054】
摩擦分離部4は、給送部である給送ローラ5aを有している。給送ローラ5aは、図2および図5に示すように、ステー32に設けられた軸受33aで支持されている。給送ローラ5aの表面は、ゴムなどの摩擦係数の高い材料によって形成されている。なお、図2は、ステー32を切欠いて、摩擦分離部4の下部の構造を示してある。
【0055】
給送ローラ5aの駆動源として、ステー32の上にステッピングモータM2aが設けられ、給送ローラ軸34aを介して駆動が給送ローラ5aに伝達される。図3および図5から明らかなように、給送ローラ5aの下部は、ステー32に設けられた開口を経て、下方に突き出ている。
【0056】
図2および図3からわかるように、分離部である分離パッド7aは高い表面摩擦係数を持ち、それぞれ受台8aに貼り付けられている。受台8aは、給送ローラ5aの下方に設けられ、スプリング6aによって給送ローラ5aに向かって付勢されている。給送ローラ5aと分離パッド7aとが対向する面が、分離ニップNとして形成される。
【0057】
(シート給送装置の動作)
以上のような構成のシート給送装置の動作を、図6〜図8をさらに参照して説明する。
【0058】
まず、図3に示すように、待機状態時には、シート積載台20がレバー22によって上昇し、シート積載台20に積載された最上位のシートPに、給紙撓曲ローラ23a,23bがスプリング25a,25bによる所定圧で圧接する高さに、シート積載台20が固定される。
【0059】
給送動作が開始すると、図6に示すように、ソレノイドS2a,S2bによってホルダ24a,24bが互いに近接する方向に移動し、それに伴い最上位のシートPに接触する給紙撓曲ローラ23a,23bも互いに近接する方向に移動する。
【0060】
給紙撓曲ローラ23a,23bの表面は、摩擦係数の高い材料によって形成されているので、図6に示すように、最上位のシートPの表面をしっかり掴み、シートPを給送方向を軸として撓曲させる。
【0061】
このとき次位のシートP´には、給紙撓曲ローラ23a,23bが最上位のシートPに与える力が、シート同士の摩擦係数によって軽減されて伝達されるが、次位のシートP´は、通常、弾性力により平面形状を保つ。
【0062】
従って、最上位のシートPの先端縁の中央部が、次位のシートP´あるいはシート積載台20から離間する。このとき、最上位のシートPの先端縁の幅方向の両端部は、平面形状を保っている。
【0063】
次に、給紙撓曲ローラ23a,23bが、ステッピングモータM1によって回転され、図7に示すように、最上位のシートPは撓曲状態を維持したまま、摩擦分離部4に移動させられる。
【0064】
このとき次位のシートP´も最上位のシートPとともに、給送方向Fに移動させられ、シートの重送が発生したとする。すなわち、2枚のシートP,P´が重なった状態で摩擦分離部4に送られる。
【0065】
給送ローラ5a,5bがステッピングモータM2a,M2bよって回転し、シートP,P´の幅方向両端部を給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bの間の分離ニップNで挟持しながら給送する。
【0066】
このとき、給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bとは、シートの給紙方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置されているので、シートの幅方向両端部の2箇所でシートの摩擦分離を行うことができる。すなわち、2枚のシートP,P´が撓曲された状態で重なって摩擦分離部4に給送された場合には、シートPと給送ローラとの間の摩擦係数は、シートP´と分離パッドとの間の摩擦係数より小さいので、最上位のシートPのみを分離し、次工程に給送することが可能である。
【0067】
この場合、給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bとに挟持されるのは、シートの両端部は平面形状を保っているので、シートの先端が分離パッドの端面に突き当たることによって、耳折れが生じたり、不送りを発生することはない。
【0068】
さらには、シートPの先端縁にかかる摩擦抵抗を給紙方向に見て左右均等にすることができ、シートPが表面に垂直な方向を軸として回転(スキュー)することはない。
【0069】
最上位のシートPの先端縁が給送ローラ5a,5bに到達してから所定時間経た後、電磁クラッチC1によって給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動が切断される。
【0070】
最上位のシートPの後端縁が給紙撓曲ローラ23a,23bを過ぎると、図8に示すように、給紙撓曲ローラ23a,23bは、ソレノイドS1a,S1bによって上方に移動されて、シート搬送路から退避する。そして、給送ローラ5a,5bの駆動が停止される。
【0071】
給紙撓曲ローラ23a,23bは、シートPの上方でソレノイドS2a,S2bによって互いに離間するように移動した後、再びソレノイドS1a,S1bにより下降されて、給送開始前の待機位置に戻る(図2および図3)。
【0072】
また、最上位のシートPが分離ニップNを通過する際に、受台8a,8bが振動する恐れがあるが、シートPは撓曲させられているので受台8a,8bから伝わる振動を増幅しにくく、異音の発生を抑えることができる。
【0073】
(第2の実施例)
図9は、本発明のシート給送装置の第2の実施例の平面図である。第1の実施例と異なる点は、図示するように、一対の給送ローラ軸34a,34bをF方向に見てハの字型に設置することである。その他の構成は、第1の実施例と同じであり、同じ構成要素には同じ番号を付して示す。
【0074】
本実施例によれば、給送ローラ軸34a,34bは、シートの給送方向Fに直交する方向に対して、ある角度をなして配置される。従って、給送ローラ5a,5bが回転してシートPに接触して回転すると、各給送ローラ5a,5bはシートPを矢印Ta,Tbの方向へ送る力を作用させるので、シートPを給送方向Fに直交する方向に引っ張る力が働く。このため、シート撓曲給紙部によって生じさせた撓みを給送ローラ5a,5bで伸ばすことができる。
【0075】
本実施例のシート給送装置の動作を、図10および図11を参照して説明する。第1の実施例と同様に、シート積載台20に積載された最上位のシートPは給紙撓曲ローラ23a,23bによって給送方向を軸として撓曲され、シートPの先端縁中央部が次位のシートP´から離間する。このとき、シートPの先端縁の両端部は、図10に示すように、平面形状を保っている。
【0076】
給紙撓曲ローラ23a,23bがステッピングモータM1によって回転し、図11に示すように、最上位のシートPは撓曲状態を維持したまま給送方向Fに移動させられる。
【0077】
給送ローラ5a,5bがステッピングモータM2a,M2bによって回転し、最上位のシートPの幅方向両端部を給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bで挟持しながら分離・給送する。
【0078】
給送ローラ軸34a,34bは、前述したように、シートの給送方向Fに直交する方向に対して、ある角度をなして配置されているので、図11に示すように、シートPの下流に進むに従ってシート撓曲給紙部3によって形成されたシートPのシート幅方向中央部の撓みは徐々に伸ばされながら次工程に分離・給送することができる。
【0079】
最上位のシートPの先端縁が給送ローラ5a,5bに到達してから所定時間経った後、一対の給紙撓曲ローラ23a,23bは、ソレノイドS1a,S1bによって上方に移動して シート搬送路から退避する。また、電磁クラッチC1によって給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動が切断される。
【0080】
給紙撓曲ローラ23a,23bは、シートPの上方でソレノイドS2a,S2bによって互いに離間するように移動した後、再びソレノイドS1a,S1bで下降して給送開始前の待機位置に戻る。給送ローラ5a,5bの駆動が停止される。
【0081】
このように、本実施例のシート給送装置は、画像形成部などではシートが幅方向のシート撓曲を持たない方が望ましい場合に、好適である。
【0082】
(第3の実施例)
図12は、シート給送装置の第3の実施例の断面図である。図3と同様にシートPの幅方向中心線における断面図であり、左側の機構のみ示しているが、右側の構成も同じである。第1の実施例と異なる点は、摩擦分離部4として、公知のFRR分離方式の構成を採用していることである。その他の構成は、第1の実施例と同じであり、同じ構成要素には同じ番号を付して示す。なお、この実施例においても、第2の実施例と同様に、一対の給送ローラ軸34a,34bをF方向に見てハの字型に設置することもできる。
【0083】
本実施例では、摩擦分離部4を、給送ローラ5aと、トルクリミッタ35aを介して逆回転駆動されかつ給送ローラ5aに圧接する分離ローラ36aとを設けた構成にしている。分離ローラ36aは、給送ローラ5aと同じ程度の摩擦係数を有するようにゴムなどで形成されている。
【0084】
この構成において、給送ローラ5aと分離ローラ36aとの間の分離ニップNに撓曲されたシートPが一枚入った場合には、シートPと給送ローラ5aとの間およびシートPと分離ローラ36aとの間の摩擦力がトルクリミッタ35aに勝り、分離ローラ36aが搬送方向へ連れ回るのでシートPは給送される。一方、分離ニップNにシートPが2枚入った場合は、トルクリミッタのトルクが最上位のシートPと下位のシートP´との間の摩擦力に勝り、分離ローラ36aが搬送方向に対して逆回転するので重送を防止することができる。
【符号の説明】
【0085】
M1,M2a,M2b ステッピングモータ
C1 電磁クラッチ
S1a,S1b ソレノイド
1 装置本体
2 給紙カセット
3 シート撓曲給紙部
4 摩擦分離部
5a,5b 給送ローラ
7a,7b 分離パッド
8a,8b 受台
20 シート積載台
23a,23b 給紙撓曲ローラ
34a,34b 給送ローラ軸
35a トルクリミッタ
36a 分離ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開平11−292316号公報
【特許文献2】特許第2697664号公報
【特許文献3】特開2001−97580号公報
【特許文献4】特開2001−302005号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート給送装置、特に積載されたシートを一枚ずつ分離給送するシート給送装置に関し、さらにはシート給送装置を備え、シートに画像形成を行う画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンタ,ファクシミリなどの画像形成装置を備えるシート給送装置においては、シートを一枚ずつ分離して、シートを重ねたままで供給(重送)しないようにすることが要求される。
【0003】
従来、このようなシートの重送防止のための分離方式としては、給送手段と分離手段とでシートを挟持して、一枚ずつ分離・給送する摩擦分離方式が広く知られている。この方式は、幅広いシート対応力を持ちながら、簡易な構成であることが利点である。
【0004】
しかし、摩擦分離方式ではシートが給送手段と分離手段との間隙(分離ニップN)を通過する際に分離手段が振動し、シートがその振動を増幅することで異音が発生するという問題がある。
【0005】
他方、シートの弾性を利用して、シートを撓曲させて分離する下記のような方式がある。
【0006】
(1)特開平11−292316号公報(特許文献1)
特許文献1に開示された給紙装置によれば、ピックアップコロは正逆回転可能とし、通常の給紙制御で底板に載置された最上位のシートを搬送し、分離部に繰り出すのに加え、通紙直前に逆回転して最上位のシートを搬送方向の後方側へずらし、下のシートとの間に空気を入れてさばき効果を与えている。シートを載置した底板の先端に、ピックアップコロとの当接部近傍の搬送方向手前側で凸状の屈曲部を設け、予めシートに変形の癖を与えておき、撓み変形し易くしている。
【0007】
このように最上位のシートを、幅方向を軸として屈曲(または撓曲)させることによって、さばき効果を与えて、シート間の搬送抵抗の低減を可能とし、不送りや重送を防止している。
【0008】
(2)特許第2697664号公報(特許文献2)
特許文献2に開示された自動給紙装置によれば、給紙ローラに連動し先端に摩擦ゴムを有し一枚目のシートを幅方向に挟み凸曲(または撓曲)させるピックフィンと、シートの送出方向の中央にシートに生じた凸曲部よりも低くシートの束よりも高い分離爪とが設けられている。シートの送出方向の両端にはシートの束よりも少し高く分離爪よりも低く、僅かに後に当たる位置に返し爪を有している。
【0009】
シート束の最上部のシートは、中央部が凸曲している状態で送出方向へ押し出されるために、中央分離爪を乗り越えて供給される。これより下の二枚目以降のシートの束は、中央分離爪と返し爪によって送出方向にずれることが防止される。従って、シートは印字記録装置に一枚だけ供給されることになる。
【0010】
このように、ピックフィンにより凸曲させられた最上部のシートと二枚目以降のシートとを、中央爪によって分離している。
【0011】
(3)特開2001−97580号公報(特許文献3)
特許文献3に開示の給紙装置では、積載台の上方に一対のシート係合部を含むシート撓曲手段を配設し、一対のシート係合手段を最上位のシートの上面に係合せしめた状態で相互に接近する方向に移動せしめ、最上位のシートを撓曲させて上方に膨出させる。
【0012】
最上位のシートが撓曲されて上方に膨出されると、最上位のシートとその直ぐ下方のシートとの間に十分な空間が生成され、かかる空間にシート浮上および分離手段の送風口からの送風が導入される。従って、最上位のシートがその直ぐ下方のシートから充分確実に分離され、吸引送出手段によって吸引されて送出される。
【0013】
この給紙装置によれば、最上位のシートを撓曲させることによって、その直ぐ下方のシートとの間に、分離手段による送風を導入し易くして分離を実現している。
【0014】
(4)特開2001−302005号公報(特許文献4)
特許文献4に開示のシート供給装置では、シート供給手段により給送されるシートに「さばき動作」を与える複数の斜面部(分離手段)を備え、複数の斜面部のうち、搬送抵抗の小さい第1の斜面部をシート先端の中間部分に対向する位置に配設し、搬送抵抗の大きい第2の斜面部を第1の斜面部の両側に離間してそれぞれ配設し、シート先端が第2の斜面部に突き当って引っ掛かってカールを形成し、第1の斜面部でのシートの搬送が進むと、最上位の1枚のシートのみカールを解いて、第1および第2の斜面部上を搬送され、残りのシートが元の積載位置に戻る。
【0015】
このシート供給装置によれば、安定したさばき効果を得るために搬送方向下流に複数の斜面部を配設している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示の給紙装置では、ピックアップコロを所定時間逆回転に駆動し、最上位のシートを幅方向を軸として撓曲させて「さばき効果」を与えて搬送抵抗の軽減を図っている。しかし、「さばき効果」を与えた後に再び最上位のシートを次位のシートに押し付けながら分離部へ給送することから、新たな搬送抵抗が生じるので、重送を完全に防止することができない。
【0017】
特許文献2に開示の自動給紙装置では、ピックフィンによって最上位のシートを給送方向を軸として撓曲させ、シート束の搬送方向前方に設置された中央分離爪を乗り越えさせることによって、平面状態を保つ次位以降のシートと分離している。しかし、シート間の吸着力がシートの復元力を上回り、最上位のシートと次位のシートが同一形状に撓曲させられた場合に重送が生じるという問題がある。
【0018】
特許文献3に開示の給紙装置では、撓曲手段によって最上位のシートと次位以降のシートとを離間した後、シート束先端に送風を行うシート浮上・分離手段と、表面に多数の吸引孔を持つ吸引送出手段とによって分離・給送している。しかし、送風機構や吸引機構を設置すると、装置の大型化や稼動時の騒音が問題となる。
【0019】
特許文献4に開示のシート供給装置では、斜面部による分離は、シートと搬送ローラとの間、シートと下位のシートとの間の摩擦抵抗差を利用しているため、シートどうしの吸着力が高い場合に重送を生じるという問題がある。
【0020】
本発明の目的は、このような問題を解決し、シートの重送を安定して防止できるシート給送装置を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、このようなシート給送装置を備え、各種シートへの対応性に優れた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では、従来の摩擦分離方式とシートの弾性を利用した撓曲分離方式とを組合せている。摩擦分離方式は、撓曲分離方式に比べて幅広いシート対応力を持ちながら、簡易な構成であることが利点である。
【0023】
従って本発明は、シート撓曲給紙部と摩擦分離部とを併せて設置し、尚且つ小型化を図ることでシート給送装置を大型化せずとも分離性能を高めることができるという考えに基づいている。
【0024】
この場合、シート撓曲給紙部によって形成されるシートの撓曲形状は、シートの厚さや剛性で異なるので、シートの先端が給送手段や分離手段の端面に突き当たり、シートの耳折れが生じないようにする必要がある。
【0025】
従って、シート撓曲給紙部は、シート積載部に積載された最上位のシートに接触して、最上位のシートの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、先端縁の中央部が次位のシートまたはシート積載部から離間するようにシートを撓曲させて給紙するように構成している。
【0026】
摩擦分離部は、シート撓曲給紙部の下流に設置され、シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送するように構成している。このためには、摩擦分離部を、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とから構成し、シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部を、給送部と分離部とにより挟持するのが好適である。また、給送部および分離部は、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置するのがよい。
【0027】
さらに、一対の給送部は、シートを給送するとともに、シートの撓曲を伸ばして平面状とするように構成するのが好適である。
【0028】
給送部をローラとし、分離部を平板状の分離パッドとし、あるいは給送部と分離部とを、それぞれローラとすることができる。
【0029】
本発明の画像形成装置は、このようなシート給送装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明のシート給送装置によれば、シート撓曲給紙部で、シートの弾性を利用した一次分離を行い、摩擦分離部で、シートと給送部との摩擦係数と、シートと分離部との間の摩擦係数の差を利用した二次分離を行うことによって、確実にシートの重送を防止することができる。
【0031】
シートが撓曲した状態を維持しながら摩擦分離を行うことにより、摩擦分離部で発生する振動をシートが増幅する作用を抑え、摩擦分離時の異音の発生を防止することができる。
【0032】
また、摩擦分離部を構成する一対の給送部および分離部を、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置することで、シートの先端縁にかかる摩擦抵抗を給送方向に見て左右均等にすることができ、シートが表面に垂直な方向を軸として回転(スキュー)することを防止できる。
【0033】
また、シート撓曲給紙部によって生じさせたシート幅方向中央部の撓みを分離給送しながら伸ばすようにした場合には、像形成部などではシートが幅方向のシート撓曲を持たない方が望ましい画像形成装置には、好適である。
【0034】
本発明の画像形成装置によれば、本発明に係るシート給送装置を搭載することで、各種シートへの対応性に優れた装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】シート給送装置の第1の実施例を、一部破断して示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】シート撓曲給紙部の機構を示す斜視図である。
【図5】摩擦分離部の機構を示す斜視図である。
【図6】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する平面図である。
【図7】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する平面図である。
【図8】第1の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図9】シート給送装置の第2の実施例を、一部破断して示す平面図である。
【図10】第2の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図11】第2の実施例のシート給送装置の動作を説明する図である。
【図12】第3の実施例のシート給送装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。各図面において、同一の構成要素には、同一の参照番号を付して示す。
【0037】
まず、図1を参照して、本発明のシート給送装置が設けられた画像形成装置の概略構成を説明する。この画像形成装置において、装置本体1の下部に、シートであるシートPが積載されるシート積載部である2個の給紙カセット2が設置されており、各給紙カセット2には、積載されているシートPに接触して、上位のシートPから給紙する給紙部を兼ねるシート撓曲給紙部3が設けられている。
【0038】
給紙カセット2において、シート撓曲給紙部3から給紙されるシートPは、各給紙カセット2における給送側にそれぞれ設置された摩擦分離部4へ送られ、一枚ずつ分離給送される。摩擦分離部4により給送されたシートPは、シート搬送路9に設けられた搬送ローラ10によりレジストローラ11へ搬送され、レジストローラ11により、感光体12,トナー現像部13,レーザ光Lによる露光部14などからなる画像形成ユニット部15における転写部16へ送られ、表面にトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートPは、定着部17にて加圧加熱され定着処理を受けた後、排紙ローラ18により装置本体1の上部の排紙トレイ19に排出される。
【0039】
次に、シート給送装置の各実施例を説明する。
【0040】
(第1の実施例)
(シート給送装置の構成)
図2は、シート給送装置の第1の実施例を、一部破断して示す平面図である。矢印Fは、シートPの給紙方向を示している。図3は、図2のシートPの幅方向中心線50におけるA−A線断面図である。
【0041】
シート給送装置は、給紙カセット2と、シート撓曲給紙部3と、摩擦分離部4とから構成されている。
【0042】
上面が開放された筐状の給紙カセット2内には、平板材からなるシート積載台20が設けられ、シート積載台20は支点21で回動自在に装着されている。給紙カセット2とシート積載台20との間には、回動可能なレバー22が設置され、シート積載台20の昇降を制御する。
【0043】
シートの給紙および撓曲の機能を兼ね備えるシート撓曲給紙部3は、シート積載台20にセットされたシートPの束の上方に設置されており、シートを分離する摩擦分離部4は、シート撓曲給紙部3より給紙方向下流側に設置されている。
【0044】
シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4は、それぞれ図2に示すように、シートPの幅方向の中央(中心線50で示す)に対して所定の距離を置いて、同じ機構が対向して設置されている。従って、図2において、同一の構成要素には同一の参照番号を付し、図において左側の構成要素の参照番号には添え字aを、右側の構成要素の参照番号には添え字bを付して区別する。
【0045】
図4は、シート撓曲給紙部3の左側の機構を示す斜視図である。また、図5は、摩擦分離部4の左側の機構を示す斜視図である。
【0046】
以下、図2〜図5を参照して、シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4の構造を説明する。上述したように、シート撓曲給紙部3および摩擦分離部4は、それぞれ左右対称の機構を有しているので、左側の機構を代表的に説明する。
【0047】
シート撓曲給紙部3は、給紙撓曲ローラ23aを有している。給紙撓曲ローラ23aは、給紙撓曲ローラ軸27aを介してホルダ24aに支持されている。給紙撓曲ローラ23aの表面は、ゴムなどの摩擦係数の高い材料によって形成されている。
【0048】
ホルダ24aは、駆動軸26に沿って平行移動することができ、且つ駆動軸26を支点に回動することができる。ホルダ24aの回動によって、給紙撓曲ローラ23aをシートPと接触あるいは離間させることができる。
【0049】
ホルダ24aは、ホルダ24aとステー(保持板)28aとの間に設置されたスプリング25aによって、給紙撓曲ローラ23aがシートPに接触する方向に付勢されている。
【0050】
ステー28aの上には、ソレノイドS1aが設けられている。ソレノイドS1aは、ホルダ24aを押圧し、スプリング25aの付勢力に逆らいながら、駆動軸26を中心に回動させて、給紙撓曲ローラ23aをシートPから離間させることが可能である。
【0051】
給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動源としてステッピングモータM1が設置されており(図2参照)、モータM1の回転軸に固定されたギヤ29、駆動軸26に固定されたギヤ30a、給紙撓曲ローラ23aの軸27aに固定されたギヤ31aを介して、給紙撓曲ローラ23aに駆動が伝達される。なお、駆動軸26は、右側の機構のギヤ30bに連結されているので、給紙撓曲ローラ23bにも駆動が伝達される。
【0052】
ギヤ30aには電磁クラッチC1が接続されており、給紙撓曲ローラ23a,23bへの駆動の伝達を、接続あるいは切断することが可能である。
【0053】
ソレノイドS2aは、ホルダ24aに接続され、ホルダ24aを駆動軸26に沿って移動させることが可能である。
【0054】
摩擦分離部4は、給送部である給送ローラ5aを有している。給送ローラ5aは、図2および図5に示すように、ステー32に設けられた軸受33aで支持されている。給送ローラ5aの表面は、ゴムなどの摩擦係数の高い材料によって形成されている。なお、図2は、ステー32を切欠いて、摩擦分離部4の下部の構造を示してある。
【0055】
給送ローラ5aの駆動源として、ステー32の上にステッピングモータM2aが設けられ、給送ローラ軸34aを介して駆動が給送ローラ5aに伝達される。図3および図5から明らかなように、給送ローラ5aの下部は、ステー32に設けられた開口を経て、下方に突き出ている。
【0056】
図2および図3からわかるように、分離部である分離パッド7aは高い表面摩擦係数を持ち、それぞれ受台8aに貼り付けられている。受台8aは、給送ローラ5aの下方に設けられ、スプリング6aによって給送ローラ5aに向かって付勢されている。給送ローラ5aと分離パッド7aとが対向する面が、分離ニップNとして形成される。
【0057】
(シート給送装置の動作)
以上のような構成のシート給送装置の動作を、図6〜図8をさらに参照して説明する。
【0058】
まず、図3に示すように、待機状態時には、シート積載台20がレバー22によって上昇し、シート積載台20に積載された最上位のシートPに、給紙撓曲ローラ23a,23bがスプリング25a,25bによる所定圧で圧接する高さに、シート積載台20が固定される。
【0059】
給送動作が開始すると、図6に示すように、ソレノイドS2a,S2bによってホルダ24a,24bが互いに近接する方向に移動し、それに伴い最上位のシートPに接触する給紙撓曲ローラ23a,23bも互いに近接する方向に移動する。
【0060】
給紙撓曲ローラ23a,23bの表面は、摩擦係数の高い材料によって形成されているので、図6に示すように、最上位のシートPの表面をしっかり掴み、シートPを給送方向を軸として撓曲させる。
【0061】
このとき次位のシートP´には、給紙撓曲ローラ23a,23bが最上位のシートPに与える力が、シート同士の摩擦係数によって軽減されて伝達されるが、次位のシートP´は、通常、弾性力により平面形状を保つ。
【0062】
従って、最上位のシートPの先端縁の中央部が、次位のシートP´あるいはシート積載台20から離間する。このとき、最上位のシートPの先端縁の幅方向の両端部は、平面形状を保っている。
【0063】
次に、給紙撓曲ローラ23a,23bが、ステッピングモータM1によって回転され、図7に示すように、最上位のシートPは撓曲状態を維持したまま、摩擦分離部4に移動させられる。
【0064】
このとき次位のシートP´も最上位のシートPとともに、給送方向Fに移動させられ、シートの重送が発生したとする。すなわち、2枚のシートP,P´が重なった状態で摩擦分離部4に送られる。
【0065】
給送ローラ5a,5bがステッピングモータM2a,M2bよって回転し、シートP,P´の幅方向両端部を給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bの間の分離ニップNで挟持しながら給送する。
【0066】
このとき、給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bとは、シートの給紙方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置されているので、シートの幅方向両端部の2箇所でシートの摩擦分離を行うことができる。すなわち、2枚のシートP,P´が撓曲された状態で重なって摩擦分離部4に給送された場合には、シートPと給送ローラとの間の摩擦係数は、シートP´と分離パッドとの間の摩擦係数より小さいので、最上位のシートPのみを分離し、次工程に給送することが可能である。
【0067】
この場合、給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bとに挟持されるのは、シートの両端部は平面形状を保っているので、シートの先端が分離パッドの端面に突き当たることによって、耳折れが生じたり、不送りを発生することはない。
【0068】
さらには、シートPの先端縁にかかる摩擦抵抗を給紙方向に見て左右均等にすることができ、シートPが表面に垂直な方向を軸として回転(スキュー)することはない。
【0069】
最上位のシートPの先端縁が給送ローラ5a,5bに到達してから所定時間経た後、電磁クラッチC1によって給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動が切断される。
【0070】
最上位のシートPの後端縁が給紙撓曲ローラ23a,23bを過ぎると、図8に示すように、給紙撓曲ローラ23a,23bは、ソレノイドS1a,S1bによって上方に移動されて、シート搬送路から退避する。そして、給送ローラ5a,5bの駆動が停止される。
【0071】
給紙撓曲ローラ23a,23bは、シートPの上方でソレノイドS2a,S2bによって互いに離間するように移動した後、再びソレノイドS1a,S1bにより下降されて、給送開始前の待機位置に戻る(図2および図3)。
【0072】
また、最上位のシートPが分離ニップNを通過する際に、受台8a,8bが振動する恐れがあるが、シートPは撓曲させられているので受台8a,8bから伝わる振動を増幅しにくく、異音の発生を抑えることができる。
【0073】
(第2の実施例)
図9は、本発明のシート給送装置の第2の実施例の平面図である。第1の実施例と異なる点は、図示するように、一対の給送ローラ軸34a,34bをF方向に見てハの字型に設置することである。その他の構成は、第1の実施例と同じであり、同じ構成要素には同じ番号を付して示す。
【0074】
本実施例によれば、給送ローラ軸34a,34bは、シートの給送方向Fに直交する方向に対して、ある角度をなして配置される。従って、給送ローラ5a,5bが回転してシートPに接触して回転すると、各給送ローラ5a,5bはシートPを矢印Ta,Tbの方向へ送る力を作用させるので、シートPを給送方向Fに直交する方向に引っ張る力が働く。このため、シート撓曲給紙部によって生じさせた撓みを給送ローラ5a,5bで伸ばすことができる。
【0075】
本実施例のシート給送装置の動作を、図10および図11を参照して説明する。第1の実施例と同様に、シート積載台20に積載された最上位のシートPは給紙撓曲ローラ23a,23bによって給送方向を軸として撓曲され、シートPの先端縁中央部が次位のシートP´から離間する。このとき、シートPの先端縁の両端部は、図10に示すように、平面形状を保っている。
【0076】
給紙撓曲ローラ23a,23bがステッピングモータM1によって回転し、図11に示すように、最上位のシートPは撓曲状態を維持したまま給送方向Fに移動させられる。
【0077】
給送ローラ5a,5bがステッピングモータM2a,M2bによって回転し、最上位のシートPの幅方向両端部を給送ローラ5a,5bと分離パッド7a,7bで挟持しながら分離・給送する。
【0078】
給送ローラ軸34a,34bは、前述したように、シートの給送方向Fに直交する方向に対して、ある角度をなして配置されているので、図11に示すように、シートPの下流に進むに従ってシート撓曲給紙部3によって形成されたシートPのシート幅方向中央部の撓みは徐々に伸ばされながら次工程に分離・給送することができる。
【0079】
最上位のシートPの先端縁が給送ローラ5a,5bに到達してから所定時間経った後、一対の給紙撓曲ローラ23a,23bは、ソレノイドS1a,S1bによって上方に移動して シート搬送路から退避する。また、電磁クラッチC1によって給紙撓曲ローラ23a,23bの駆動が切断される。
【0080】
給紙撓曲ローラ23a,23bは、シートPの上方でソレノイドS2a,S2bによって互いに離間するように移動した後、再びソレノイドS1a,S1bで下降して給送開始前の待機位置に戻る。給送ローラ5a,5bの駆動が停止される。
【0081】
このように、本実施例のシート給送装置は、画像形成部などではシートが幅方向のシート撓曲を持たない方が望ましい場合に、好適である。
【0082】
(第3の実施例)
図12は、シート給送装置の第3の実施例の断面図である。図3と同様にシートPの幅方向中心線における断面図であり、左側の機構のみ示しているが、右側の構成も同じである。第1の実施例と異なる点は、摩擦分離部4として、公知のFRR分離方式の構成を採用していることである。その他の構成は、第1の実施例と同じであり、同じ構成要素には同じ番号を付して示す。なお、この実施例においても、第2の実施例と同様に、一対の給送ローラ軸34a,34bをF方向に見てハの字型に設置することもできる。
【0083】
本実施例では、摩擦分離部4を、給送ローラ5aと、トルクリミッタ35aを介して逆回転駆動されかつ給送ローラ5aに圧接する分離ローラ36aとを設けた構成にしている。分離ローラ36aは、給送ローラ5aと同じ程度の摩擦係数を有するようにゴムなどで形成されている。
【0084】
この構成において、給送ローラ5aと分離ローラ36aとの間の分離ニップNに撓曲されたシートPが一枚入った場合には、シートPと給送ローラ5aとの間およびシートPと分離ローラ36aとの間の摩擦力がトルクリミッタ35aに勝り、分離ローラ36aが搬送方向へ連れ回るのでシートPは給送される。一方、分離ニップNにシートPが2枚入った場合は、トルクリミッタのトルクが最上位のシートPと下位のシートP´との間の摩擦力に勝り、分離ローラ36aが搬送方向に対して逆回転するので重送を防止することができる。
【符号の説明】
【0085】
M1,M2a,M2b ステッピングモータ
C1 電磁クラッチ
S1a,S1b ソレノイド
1 装置本体
2 給紙カセット
3 シート撓曲給紙部
4 摩擦分離部
5a,5b 給送ローラ
7a,7b 分離パッド
8a,8b 受台
20 シート積載台
23a,23b 給紙撓曲ローラ
34a,34b 給送ローラ軸
35a トルクリミッタ
36a 分離ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0086】
【特許文献1】特開平11−292316号公報
【特許文献2】特許第2697664号公報
【特許文献3】特開2001−97580号公報
【特許文献4】特開2001−302005号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部に積載された最上位のシートに接触して、前記最上位のシートの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、前記先端縁の中央部が次位のシートまたは前記シート積載部から離間するようにシートを撓曲させて給紙するシート撓曲給紙部と、
前記シート撓曲給紙部の下流に設置され、前記シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送する摩擦分離部とを備え、
前記摩擦分離部は、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とを有し、前記シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部は、前記給送部と前記分離部とにより挟持される、シート給送装置。
【請求項2】
前記一対の給送部および分離部は、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置されている、請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記一対の給送部は、シートを給送するとともに、シートの前記撓曲を伸ばして平面状とするように構成されている、請求項1または2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記給送部をローラとし、前記分離部を平板状の分離パッドとした、請求項1,2または3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送部と前記分離部とを、それぞれローラとした、請求項1,2または3に記載のシート給送装置。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート給送装置を備える画像形成装置。
【請求項1】
シートが積載されるシート積載部と、
前記シート積載部に積載された最上位のシートに接触して、前記最上位のシートの先端縁の両側部を平面状に保持しながら、前記先端縁の中央部が次位のシートまたは前記シート積載部から離間するようにシートを撓曲させて給紙するシート撓曲給紙部と、
前記シート撓曲給紙部の下流に設置され、前記シート撓曲給紙部から給紙されたシートを、一枚ずつ分離給送する摩擦分離部とを備え、
前記摩擦分離部は、シートの給送方向に直交する方向に対向して設置された一対の給送部と、各給送部を圧接する一対の分離部とを有し、前記シート撓曲給紙部から給紙されるシートの両側部は、前記給送部と前記分離部とにより挟持される、シート給送装置。
【請求項2】
前記一対の給送部および分離部は、シートの給送方向に直交する幅方向の中心から等距離に設置されている、請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記一対の給送部は、シートを給送するとともに、シートの前記撓曲を伸ばして平面状とするように構成されている、請求項1または2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記給送部をローラとし、前記分離部を平板状の分離パッドとした、請求項1,2または3に記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記給送部と前記分離部とを、それぞれローラとした、請求項1,2または3に記載のシート給送装置。
【請求項6】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のシート給送装置を備える画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−202334(P2010−202334A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49493(P2009−49493)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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