説明

シート給送装置

【課題】給送ローラを容易且つ確実に交換することができるシート給送装置を提供する。
【解決手段】画像読取装置1が備えるシート給送装置では、給送ローラ6がシートを給送し、開閉自在に設けられたカバー23が閉状態で給送ローラ6を覆うとともにシートを搬送する搬送ガイド面を形成し、支持軸24が給送ローラ6を軸支する軸支位置と給送ローラ6から退避した待機位置との間で軸方向に移動可能である。連結ギア25、第1ギア部26及び第2ギア28からなる連結手段が、カバー23の開動作にしたがって支持軸24を軸支位置から待機位置へ移動させることで給送ローラ6の支持軸24による軸支を解除し、カバー23の閉動作によって支持軸24を待機位置から軸支位置へ移動させることで給送ローラ6を支持軸24により軸支させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置や画像読取装置に装備されるシート給送装置に関し、特に、シートを送り出す給送ローラの配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置や画像読取装置は、シート収納手段(用紙カセット、シート載置台)にセットされたシートを、画像形成部や画像読取部に送り出すシート給送装置を備えている。
【0003】
図7は、公知のシート給送装置の概略構造を示す図である。給送ローラ51は、駆動軸50と支持軸53とによって保持されており、支持軸53は軸方向(支持軸53の長手方向)にスライド移動することができるようになっている。給送ローラ51を交換する場合、先ず、給送ローラ51を覆うカバー52を開く。なお、カバー52は、カバー52を回動自在に軸支する回動軸52a回りに回動させることにより、開閉することができる。
【0004】
続いて、支持軸53の他端(給送ローラ51とは反対側)に設けられている抓み部53aを抓み、支持軸53が矢印G方向に回転するように抓み部53aを回す。これにより、抓み部53aが搬送ガイド面(不図示)から出っ張り、支持軸53を給送ローラ51から軸方向に遠ざける方向にスライド移動させることができるようになる。その結果、給送ローラ51と支持軸53との支持部が解除され、給送ローラ51を交換することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−256287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のようにして支持軸53をスライド移動させる操作が、ユーザやサービスマンにとって、非常に手間となっている。また、給送ローラ51を交換した後に支持軸53の抓み部53aを元に戻すように回転させることを忘れてしまい、これが原因となって、給送ローラ51の交換後のシート搬送時にジャムが発生してしまうという問題もある。
【0007】
本発明は、給送ローラを容易且つ確実に交換することができるシート給送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート給送装置は、シートを給送する給送ローラを有するシート給送装置であって、閉状態で前記給送ローラを覆うとともに前記シートを搬送する搬送ガイド面を形成し、回動により前記搬送ガイド面の上側に開くことができるように開閉自在に設けられたカバーと、前記給送ローラを軸支する軸支位置と前記給送ローラから退避した退避位置との間で軸方向に移動する支持軸と、前記カバーの開動作によって前記支持軸が前記軸支位置から前記退避位置へ移動することで前記給送ローラの前記支持軸による軸支が解除され、前記カバーの閉動作によって前記支持軸が前記退避位置から前記軸支位置へ移動することで前記給送ローラが前記支持軸により軸支されるように、前記カバーと前記支持軸とを連結する連結手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローラカバーを開くと、給送ローラを支持する支持軸が軸方向(支持軸の長手方向)に移動し、給送ローラの軸支が解除される。これにより、給送ローラの交換時に支持軸を移動させる手間を省くことができ、給送ローラの交換時の作業性を向上させることができる。また、ローラカバーを閉じると、給送ローラは支持軸に軸支されるので、給送ローラが軸支されていないことによって搬送ジャムが発生することを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシート給送装置を備える画像読取装置の概略構造を示す断面図である。
【図2】図1の画像読取装置が備える第1実施例に係るシート給送装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2のシート給送装置が備えるカバーの開閉動作を模式的に示す図である。
【図4】図2の矢視A−A断面図である。
【図5】図1の画像読取装置が備える第2実施例に係るシート給送装置の概略構成を示す図である。
【図6】図5のシート給送装置が備えるカムの形状と動作を示す斜視図である。
【図7】従来のシート給送装置の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明の実施形態に係るシート給送装置を備える画像読取装置を取り上げることとする。
【0012】
<画像読取装置の概略構造>
図1は、本発明の実施形態に係るシート給送装置を備える画像読取装置の概略構造を示す断面図である。画像読取装置1は、ホストコンピュータ(不図示)からの読取開始信号を受信すると、原稿台2に積載されたシート状の原稿Dを検知ユニット3,4で検知した後、ピックアップローラ5を原稿Dに押し付けて、回転させる。これにより、原稿台2に積載された原稿Dは、給送ローラ6と分離ローラ7とのニップ部へ送り込まれ、給送ローラ6と分離ローラ7は、送り込まれた原稿Dを1枚ずつ分離して搬送路に給送する。
【0013】
なお、本実施形態では、給送ローラ6と分離ローラ7により原稿Dを1枚ずつ分離する構成としたが、原稿Dを1枚ずつ分離することができるものであれば、このような構成に限定されるものではない。
【0014】
給送ローラ6と分離ローラ7により搬送路に給送された原稿Dは、搬送路下流側に配置されたレジストローラ対(斜行修正用ローラ対)9へ送られる。レジストローラ対9が一時的に回転を停止した状態で、原稿Dの先端はレジストローラ対9のニップ部に突き当てられ、これにより原稿Dの斜行が修正される。斜行修正後の原稿Dは、レジストローラ対9の回転によってレジストローラ対9により挟持、搬送されながら読取ユニット10,11の間を通過し、その際に原稿Dの表裏の画像がそれぞれ読取ユニット10,11に読み取られる。
【0015】
このとき、画像読取装置1の制御部(不図示)は、レジストセンサ8からの信号に基づいてタイミングを取り、読取ユニット10,11の画像読取信号から画像データを生成する。読取ユニット10,11により表裏の画像が読取られた原稿Dは、排紙ローラ対12によって挟持、搬送されて、画像読取装置1外に排出される。
【0016】
<第1実施例に係るシート給送装置の概略構成>
図2は、画像読取装置1が備える第1実施例に係るシート給送装置の概略構成を示す図であり、具体的には、給送ローラ6及び給送ローラ6周りの概略構成を示している。給送ローラ6は、その一端に設けられた係合部61において駆動軸21と係合しており、駆動軸21によって回転駆動される。また、給送ローラ6の他端には凹形状部62が設けらられており、凹形状部62の凹部に、支持軸24が挿入されることにより、給送ローラ6は支持軸24に軸支されている。
【0017】
なお、図2に示される支持軸24の位置を、以下の説明において「軸支位置」という。また、支持軸24は、後述するように、軸支位置と給送ローラ6に対する軸支を解除した位置(以下「退避位置」という)との間で軸方向(支持軸24の長手方向)に移動可能である。
【0018】
軸方向において、支持軸24は、第1ギア部28を介して、ネジ形状を有するリードねじ部22に連結されており、本実施形態では、支持軸24、第1ギア部28及びリードねじ部22は一体構造となっている。リードねじ部22は、画像読取装置1のフレーム等に固定された保持部材27に螺合されており、これにより、支持軸24の軸支が実現されている。給送ローラ6を覆うカバー23は、閉状態では、搬送ガイド面を形成する搬送ガイド部材を兼ねている。カバー23は、回動軸23aを中心として回動自在であり、給送ローラ6の交換時等には、回動により搬送ガイド面の上側に開くことができるように開閉自在となっている。また、カバー23には、第2ギア部26が取り付けられており、第2ギア部26は連結ギア25を介して第1ギア部28とギア連結されている。
【0019】
[カバー23の開閉動作]
図3は、カバー23の開閉動作を模式的に示す図である。カバー23を回動軸23aを軸心として矢印A方向に回動させる、つまり、給送ローラ6全体が露出するようにカバー23を開くと、第2ギア部26が回動軸23aを中心として矢印B方向に回動する。こうして第2ギア部26が矢印B方向に回動すると、連結ギア25が矢印C方向に回転し、これにより、第1ギア部28が矢印D方向に回転する。
【0020】
この第1ギア部28の回転にしたがってリードねじ部22が回転すると、支持軸24は、軸方向において給送ローラ6から遠ざかる方向に移動し、給送ローラ6の凹形状部62の凹部から退避した退避位置へと移動する。これより、給送ローラ6の支持軸24による軸支が解除される。このとき、第1ギア部28は連結ギア25よりも歯幅が大きく設定されているので(図2参照)、第1ギア部28が移動しても第1ギア部28と連結ギア25とのギア連結が外れることはない。
【0021】
図4は、図2の矢視A−A断面図である。図3を参照して説明したように、カバー23を回動させることで、給送ローラ6の凹形状部62と支持軸24との係合が解除される。このとき、図4に示されるように、凹形状部62を支持する支持部42を設けておくことによって、給送ローラ6を支持軸24と係合している状態にあるときとほぼ同じ位置(以下「待機位置」という)に留めておくことができる。
【0022】
こうして、給送ローラ6は、係合部61において駆動軸21と係合し、軸支されているだけの状態となるため、ユーザは駆動軸21と係合部61との係合点を支点として給送ローラ6を持ち上げれば、容易に給送ローラ6を取り出すことができる。
【0023】
一方、給送ローラ6の係合部61が駆動軸21に係合するように、容易に給送ローラ6を組み込むことができる。このとき、支持部42が設けられているので、給送ローラ6を待機位置に留めることができる。
【0024】
カバー23を閉じるときには、上記説明と逆の動作によって、支持軸24が給送ローラ6の凹形状部62の凹部に進入することで、給送ローラ6は支持軸24に軸支されるようになる。このとき、図4に示されるように、給送ローラ6の凹形状部62における支持軸24側の開口近傍にテーパ部62aが設けられているので、支持軸24の挿入をスムーズに行うことができるようになっている。
【0025】
以上の説明の通り、本実施形態によれば、カバー23の開動作によって支持軸24が軸支位置から退避位置へ移動することで、給送ローラ6の支持軸24による軸支を解除することができる。一方、カバー23の閉動作によって、支持軸24が退避位置から軸支位置へ移動することで、給送ローラ6を支持軸24により確実に軸支することができる。よって、従来のように、カバーの開閉とは別に支持軸を移動させる操作が不要となるので、作業が容易になると共に、給送ローラ6が軸支されずに作業を終えてしまう作業ミスを防止することができる。これにより、ひいては、給送ローラの固定が不完全なことに起因するジャムの発生を未然に防ぐことができる。
【0026】
<第2実施例に係るシート給送装置の概略構成>
図5は、図1の画像読取装置が備える第2実施例に係るシート給送装置の概略構成を示す図である。第2実施例において、給送ローラ6が駆動軸21と係合し、軸支されている構造は、第1実施例の場合と同じである。第2実施例では、給送ローラ6に設けられた凹形状部62の凹部に、ガイド39により位置決めされた支持軸34の一端が挿入されることで、給送ローラ6は支持軸34により軸支されている。ここで、給送ローラ6のカバー40が閉じられた状態では、常時、支持軸34はばね部材35によって給送ローラ6側に付勢され、押し付けられている。
【0027】
カバー40は、第1実施例のカバー23と同様に、閉じた状態で搬送ガイド部材を兼ねており、回動軸40aを中心として回動自在であり、給送ローラ6の交換時等には、搬送ガイド面(不図示)の上側へ開くことができるようになっている。カバー40には、回動軸40a回りに回動するカム部41が一体的に設けられている。
【0028】
図6は、カム部41の形状と動作を示す斜視図である。図6(a)は、カバー40が閉じられた状態でのカム部41の状態を示しており、カム部41には斜面70設けられており、この斜面70が支持軸34に接触している。
【0029】
図6(b)はカバー40の開動作中のカム部41の状態を示している。カバー40の開動作にしたがってカム部41が矢印E方向に回転することにうより、カム部41の斜面70における支持軸34との接点が移動することで、支持軸34は矢印F方向へ直線的に移動する。すなわち、カバー40を開くと、カム部41が矢印E方向に回動してばね部材35を圧縮し、支持軸34を給送ローラ6から遠ざかる方向に直線的に移動させる。こうして、支持軸34が支持位置から退避位置へ移動することにより、給送ローラ6の支持軸34による軸支が解除される。
【0030】
逆に、カバー40の閉動作にしたがって、カム部41の斜面70における支持軸34との接点が移動することで、ばね部材35は伸張する。これにより、支持軸34は退避位置から軸支位置へ移動し、給送ローラ6は支持軸34により軸支される。
【0031】
なお、第1実施例と同様に、第2実施例でも、凹形状部62に対して、図4に示した支持部42を設けることにより、支持軸34による軸支が解除された状態でも、給送ローラ6を待機位置に保持することができる。
【0032】
第2実施例でも、第1実施例と同様に、カバー40の開動作によって給送ローラ6の支持軸34による軸支を解除することができ、一方、カバー40の閉動作によって給送ローラ6を支持軸34により確実に軸支することができる。よって、従来のように、カバーの開閉とは別に支持軸を移動させる操作が不要となるので、作業が容易になると共に、給送ローラ6が軸支されずに作業を終えてしまう作業ミスを防止することができる。これにより、ひいては、給送ローラの固定が不完全なことに起因するジャムの発生を未然に防ぐことができる。
【0033】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0034】
例えば、支持軸24(34)がモータ又はソレノイド等で移動可能であり、且つ、カバー23(40)の開閉を、例えばフォトインタラプタ等のセンサを用いて検知して、カバー23(40)の開閉に合わせてモータやソレノイドを動作させる構成としてもよい。これにより、ユーザやサービスマンは、カバー23(40)の開閉とは別に支持軸24(34)を操作する作業を行う必要はなく、第1実施例及び第2実施例と同じ効果を得ることができる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 画像読取装置
6 給送ローラ
21 駆動軸
22 リードねじ部
23 カバー
24 支持軸
25 連結ギア
26 第1ギア部
28 第2ギア部
41 カム部
D 原稿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを給送する給送ローラを有するシート給送装置であって、
閉状態で前記給送ローラを覆うとともに前記シートを搬送する搬送ガイド面を形成し、回動により前記搬送ガイド面の上側に開くことができるように開閉自在に設けられたカバーと、
前記給送ローラを軸支する軸支位置と前記給送ローラから退避した退避位置との間で軸方向に移動する支持軸と、
前記カバーの開動作によって前記支持軸が前記軸支位置から前記退避位置へ移動することで前記給送ローラの前記支持軸による軸支が解除され、前記カバーの閉動作によって前記支持軸が前記退避位置から前記軸支位置へ移動することで前記給送ローラが前記支持軸により軸支されるように、前記カバーと前記支持軸とを連結する連結手段と、を備えることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記軸方向において前記支持軸と連結されたねじ部と、
前記ねじ部と螺合される、固定された保持部材と、を備え、
前記連結手段は、前記カバーの開閉動作にしたがって前記ねじ部を回転させ、前記ねじ部は、回転により前記軸方向に移動することで前記支持軸を前記退避位置と前記軸支位置との間で移動させることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記支持軸を軸方向において付勢するばね部材と、
前記支持軸と接触するように前記カバーに連結され、前記カバーの開閉動作にしたがって回動するカム部と、を備え、
前記カム部は、前記カバーの開動作にしたがって前記ばね部材を圧縮することにより前記支持軸を前記軸支位置から前記退避位置へ移動させ、前記カバーの閉動作にしたがって前記ばね部材が伸張することで、前記支持軸が前記退避位置から前記軸支位置へ移動することを特徴とすることを特徴とする請求項1記載のシート給送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218865(P2012−218865A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85280(P2011−85280)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】