説明

シート貼付装置及び貼付方法

【課題】被着体に貼付される接着シートに皺や気泡が生じることを防止できるようにすること。
【解決手段】シート貼付装置10は、帯状の剥離シートRLに接着シートSが仮着された原反Rを繰り出す繰出手段11と、この繰出手段11で繰り出される接着シートSを保持する保持面29Dを有する保持手段12と、この保持手段12で保持した接着シートSを被着体Wの被着面W1に押圧して貼付する押圧手段13とを備えて構成されている。保持面29Dは、接着シートSの面内中央部が同外縁部よりも被着面W1に接近した抗折状態として当該接着シートSを保持可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置及び貼付方法に係り、更に詳しくは、接着シートを被着体に押圧して貼付することができるシート貼付装置及び貼付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、被着体にラベル等の接着シートを貼付するシート貼付装置が広く利用されるに至っており、かかるシート貼付装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1のシート貼付装置は、接着シートを繰り出す繰出手段と、繰り出された接着シートを保持する保持手段と、この保持手段で保持された接着シートを吹き飛ばして押圧する押圧手段とを備えて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−74413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にあっては、保持手段において接着シートをフラットにして保持するので、吹き飛んでいる最中の接着シートが波打つように変形する傾向がある。このため、貼付された接着シートと被着体との間に気泡が混入したり、接着シートに皺が生じたりし易くなるという不都合がある。
また、接着シートを保持手段で保持した状態のまま当該接着シートを搬送中の被着体に貼付する場合、接着シートは、被着体に触れた瞬間に当該被着体の搬送方向に力が付加さ、被着体の搬送方向に縮れた状態で貼付される、という不都合を招来する。
【0005】
[発明の目的]
本発明の目的は、接着シートを吹き飛ばして貼付したり、接着シートを保持手段で保持した状態のまま搬送中の被着体に貼付したりするときに、貼付不良が生じることを防止することができるシート貼付装置及び貼付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートを繰り出す繰出手段と、前記接着シートを基材シート側から保持する保持面を有する保持手段と、前記接着シートを被着体の被着面に押圧して貼付する押圧手段とを備え、
前記保持面は、前記接着シートの面内中央部が同外縁部よりも前記被着面に接近した抗折状態として当該接着シートを保持可能に設けられる、という構成を採っている。
【0007】
本発明において、前記押圧手段は、前記保持面から気体を噴き出し可能な噴出手段を備える、という構成を採ることが好ましい。
【0008】
また、前記保持手段は、保持面を部分的に変位させて前記接着シートの抗折状態を形成可能な抗折状態形成手段を備える、という構成も好ましくは採用される。
【0009】
更に、本発明のシート貼付方法は、基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートを繰り出す工程と、
前記接着シートを基材シート側から保持し、当該接着シートの面内中央部が同外縁部よりも前記被着体の被着面に接近した抗折状態とする工程と、
前記接着シートを被着体に押圧して貼付する工程とを備える、という方法を採っている。
【0010】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「抗折状態」とは、接着シートに対して曲げに対する強度(抗折強度)を持たせるべく湾曲させたり折り曲げたりして変形させた状態を意味する。なお、湾曲させたり折り曲げたりして形成される接着シートの谷部の底が延出する方向を谷方向と定義する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着シートが前述した抗折状態として保持されるので、当該接着シートは、抗折強度が増し、例えば、接着シートを吹き飛ばして押圧する場合、吹き飛んでいる最中の接着シートも抗折状態を維持し易くなり、接着シートが波打つように変形して吹き飛ぶことを防止でき、貼付された接着シートに皺が生じることを抑制することが可能となる。しかも、接着シートの面内中央部が同外縁部よりも被着面に接近した抗折状態とされるため、当該接着は、その面内中央部から外縁部に貼付面を拡大しながら被着体に貼付されていくので、接着シートと被着体との間の空気を次第に追い出ながら貼付でき、それらの間に気泡が混入することを防止可能となる。また、接着シートを保持手段で保持した状態のまま当該接着シートを搬送中の被着体に貼付する場合、接着シートに被着体の搬送方向に力が付加されても、当該接着シートは、抗折状態とされているため、接着シートが被着体の移動方向に縮れた状態で貼付されることを回避することが可能となる。
【0012】
更に、保持面を部分的に変位させて接着シートの抗折状態を形成可能とした場合、繰出手段から繰り出される接着シートを保持手段が段差なく受け取ることができるので、接着シートが段差で引っ掛かり、折れ曲がったり、脱落したりするような不都合を解消することができる。また、当該抗折状態の形態にバリエーションを付与することが可能となり、接着シートの形状、材質、剛性等に応じて谷方向や抗折状態の形態を変化させて貼付不良をより良く防止することが可能となる。また、保持面を部分的に変位させる方向をアレンジすることで、谷方向を自由に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るシート貼付装置の概略正面図。
【図2】変形例に係るシート貼付装置の部分正面図。
【図3】(A)及び(B)は、他の変形例に係るシート貼付装置の部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本実施形態において、特に明示しない限り、方向を示す用語(例えば、上、下、左、右)は、図1を基準とする。
【0015】
図1において、シート貼付装置10は、被着体Wを紙面直交方向に搬送するベルトコンベア等からなる搬送手段CVに並設されている。シート貼付装置10は、被着体Wに貼付するための接着シートSを繰り出す繰出手段11と、この繰出手段11から繰り出される接着シートSを保持可能な保持手段12と、この保持手段12で保持した接着シートSを被着体Wに押圧して貼付する押圧手段13とを備えて構成されている。接着シートSは、基材シートBSと、この基材シートBSの一方の面に設けられた接着剤層ADとを備え、この接着剤層ADを介して剥離シートRLに仮着されている。
【0016】
前記繰出手段11は、帯状の剥離シートRLに接着シートSが所定間隔を隔てて仮着されたロール状の原反Rを支持する支持軸21と、この支持軸21から繰り出された原反Rの剥離シートRLを折り返して当該剥離シートRLから接着シートSを剥離する剥離板22と、剥離板22を経た後の剥離シートRLを挟み込む駆動ローラ24及びピンチローラ25と、これらを通過した後の剥離シートRLを図示しない駆動機器によって所定のトルクで巻き取る巻取軸26とを備えている。駆動ローラ24は、駆動機器としての回動モータMを介して回転可能に設けられている。
【0017】
前記保持手段12は、底壁29A、側壁29B及び上壁29Cを含んで内部にチャンバ30を形成するヘッド部29と、底壁29Aに複数形成されてチャンバ30に連通する吸引口31と、押圧手段13を介してヘッド部29を支持する駆動機器としての回動モータ32とを備えている。底壁29Aは、その下面が保持面29Dとされ、当該保持面29Dに基材シートBSが面接触した状態で接着シートSが保持される。保持面29Dは、図1の実線で示される状態で、左右方向中央部が両端部より下方に膨出する形状に設けられている。従って、保持面29Dに保持される接着シートSは、被着体Wの被着面W1に対向したときに、面内中央部がその左右の外縁部よりも被着面W1に接近した抗折状態とされ、この抗折状態における接着シートSの谷部の底S1は、図1の紙面直交方向に延出する。
【0018】
前記チャンバ30は、減圧管33を介して図示しない減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段に接続され、この減圧手段に連通されることで吸引口31から吸気し、保持面29Dに接する接着シートSを基材シートBS側から保持可能に設けられている。
【0019】
前記押圧手段13は、上壁29Cの上面に連結されてヘッド部29を上下動可能な駆動機器としてのエアシリンダ35と、チャンバ30に接続された加圧管36を有する噴出手段37とを備えている。噴出手段37は、加圧管36を介してチャンバ30に連通する加圧ポンプや加圧タンク等の図示しない加圧手段を更に備え、吸引口31から気体を噴出可能とし、保持面29Dで保持される接着シートSを吹き飛ばして当該接着シートSを被着体Wに押圧して貼付可能となっている。なお、エアシリンダ35はヘッド部29を所定の位置で停止させることのできる中間停止可能なもので構成するとよい。
【0020】
次に、実施形態に係る接着シートSの貼付方法について説明する。
【0021】
被着体Wが搬送手段CVによって搬送され、所定の位置で図示しないセンサによって検出されると、回動モータMと回動モータ32との同期作動により、原反Rを繰り出すとともに、原反Rの繰出速度と同速度で、図1の二点鎖線で示される位置で待機していたヘッド部29を実線で示される位置に回動させる。これにより、接着シートSは、剥離板22で剥離シートRLから剥離されつつ、減圧管33を介して減圧手段へ連通された吸引口31によって基材シートBS側から保持面29Dに保持される。このとき、ヘッド部29に保持された接着シートSは、面内中央部が左右の外縁部よりも被着体Wの被着面W1に接近した抗折状態に維持される。
【0022】
この状態から、エアシリンダ35の作動により、被着体Wと保持面29Dとの間隔が所定間隔(例えば、被着面W1から保持面29Dまでの最短距離が10mm)となるようにヘッド部29を下降させる。その後、減圧手段への連通を遮断すると同時に、加圧管36を介して吸引口31を加圧手段に連通し、吸引口31から気体を噴出させる。この噴出によって接着シートSは、抗折状態を維持しながら吹き飛ばされ、当該接着シートSが被着体Wに押圧されて貼付される。
【0023】
従って、このような実施形態によれば、接着シートSが下方に膨出するように湾曲した抗折状態として保持されるので、噴出手段37によって吹き飛ぶ接着シートSの吹き飛ぶ姿勢も同様の抗折状態に形成可能となる。これにより、接着シートSが図1中紙面に交わる方向(波の振幅が進む方向が図1の紙面に交差する方向)へ波打つような吹き飛び姿勢になることを回避できる他、接着シートSを面内中央部から同外縁部に空気を次第に追い出ながら貼付でき、貼付された接着シートSに皺が生じたり、気泡が混入したりすることを防止することが可能となる。なお、接着シートSは、その長辺方向に波打つように変形し易いので、谷方向は、接着シートSの長辺方向に形成するとよい。
【0024】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0025】
例えば、押圧手段13をエアシリンダ35だけで構成し、当該エアシリンダ35によるヘッド部29の下降動作によって接着シートSを被着体Wに押圧して貼付してもよい。この場合、搬送手段による搬送中の被着体Wに接着シートSを貼付しても、抗折状態となる接着シートSが搬送方向(図1の紙面直交方向)に対して抗折強度が増しているので、接着シートSが縮れて皺が生じることを防止することができる。この場合、接着シートSの左右方向中央の一部領域を被着面W1に押圧した後、吸引口31から気体を噴出させ、接着シートSの左右方向両側の領域を被着面W1に押圧して貼付するようにしてもよい。
また、図2に示されるように、搬送手段CVの搬送方向が左方向となる場合、この搬送方向に対して抗折状態の接着シートSが抗折強度を増すよう、ヘッド部29の向きを変更し、谷方向を左右方向にすることができる。具体的には、保持された接着シートSが対向する被着面W1に対し、図2の紙面直交方向の中央部が同方向両側の外縁部よりも接近した抗折状態に形成されるよう、前記実施形態に対し、ヘッド部29を平面視で90°回転した向きに変更する。このヘッド部29の向きは、固定としてもよいし、図2中二点鎖線で示されるように、回動モータ40等の駆動機器である貼付方向変更手段をヘッド部29と押圧手段13との間に配置し、被着体Wの搬送方向に合わせてヘッド部29を回転させてもよい。このような貼付方向変更手段を設けた場合、シート貼付装置10の接着シート繰出方向に対し、被着体Wの搬送方向を例えば30°としたり45°としたりあらゆる角度とすることができ、搬送手段の搬送方向に対してシート貼付装置10を配置する相対位置関係が制限されることを防止することができる。
【0026】
また、ヘッド部29は、種々の設計変更が可能であり、図3に示される構成に代替することができる。図3(A)のヘッド部29は、保持面29Dを部分的に変位させて接着シートSの抗折状態を形成可能な抗折状態形成手段41を備えている。抗折状態形成手段41は、チャンバ30内に設けられた駆動機器としての直動モータ42と、直動モータ42の出力軸に支持されるとともに、保持面29Dの左右方向中央の一部領域を下面により形成可能な移動体43とを備えている。移動体43には、吸引口43Aが設けられ、この吸引口43Aはチャンバ30に連通して底壁29Aに形成された吸引口31と同様に吸排気を行えるようになっている。接着シートSを貼付する場合、図3(A)に示されるように、保持面29Dで接着シートSを保持した後、同図(B)に示されるように、直動モータ42の作動によって移動体43を下降させる。これにより、保持された接着シートSは、面内中央部が左右の外縁部よりも被着面W1に接近した抗折状態に形成され、吹き飛ぶ最中の接着シートSも抗折状態を維持して被着体Wに貼付されることとなる。ここで、直動モータ42の作動量を調整することで、抗折状態の接着シートSにおける中央部の突出量を変えることができ、接着シートSの材質等に応じて良好に貼付し得る抗折状態を簡単且つ迅速に形成可能となる。この場合も貼付方向変更手段を設けることを妨げない。
図3の移動体43の延出方向は同図の紙面直交方向だが、これに変えて同図の紙面斜め方向に交わる方向や、同図の紙面と平行な方向に移動体43の延出方向を変更してもよい。更に、移動体43で接着シートSの左右方向中央の一部領域を被着面W1に押圧した後、直動モータ42とエアシリンダ35とを動機駆動させ、底壁29Aで接着シートSの左右方向両側の領域を被着面W1に押圧して貼付するようにしてもよい。
【0027】
更に、繰出手段11は、前述のように繰り出しを行える限りにおいて、種々の設計変更が可能である。
また、保持手段12は、接着シートSを保持できる限りにおいて何ら限定されるものではなく、例えば、静電気によって接着シートSを保持可能な静電保持等の他の構成を採用してもよい。
更に、前記実施形態では、谷方向を各図の紙面直交方向又は、紙面平行方向としたが、谷方向は各図の紙面斜め方向に交わる方向としてもよい。
【0028】
また、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0029】
10 シート貼付装置
11 繰出手段
12 保持手段
13 押圧手段
29D 保持面
31 吸引口
37 噴出手段
41 抗折状態形成手段
AD 接着剤層
BS 基材シート
S 接着シート
W 被着体
W1 被着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートを繰り出す繰出手段と、前記接着シートを基材シート側から保持する保持面を有する保持手段と、前記接着シートを被着体の被着面に押圧して貼付する押圧手段とを備え、
前記保持面は、前記接着シートの面内中央部が同外縁部よりも前記被着面に接近した抗折状態として当該接着シートを保持可能に設けられていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、前記保持面から気体を噴き出し可能な噴出手段を備えていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項3】
前記保持手段は、保持面を部分的に変位させて前記接着シートの抗折状態を形成可能な抗折状態形成手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート貼付装置。
【請求項4】
基材シートの一方の面に接着剤層を有する接着シートを繰り出す工程と、
前記接着シートを基材シート側から保持し、当該接着シートの面内中央部が同外縁部よりも前記被着体の被着面に接近した抗折状態とする工程と、
前記接着シートを被着体に押圧して貼付する工程とを備えていることを特徴とするシート貼付方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−1438(P2013−1438A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135979(P2011−135979)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】