説明

シームレス状半導電性ベルト

【目的】 継ぎ目がなく、しかも折目がない均一な体積電気抵抗値を有する半導電性ベルトを提供する。
【構成】 本発明は導電性フィラーを含むポリフッ化ビニリデン系樹脂を環状ダイスから押出したチューブ状フイルムで成形される半導電性ベルトであり、ベルトの各部における体積電気抵抗値を10〜1017Ω・cmの範囲内としたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は継目がなく均一な体積電気抵抗値を有するシームレス状半導電性ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、導電性シームレス状半導電性ベルトは各種存在するが、これらはその電気抵抗値がバラツイていたり、また、機械的特性等の不十分なものが多々散見された。その原因は導電性フィラーを各種有機高分子材料に多量混合するために混合が不十分でバラツイたりする他に、こうした導電性フィラーの添加により機械的特性が低下するためであった。
【0003】また従来より、このようなシームレスベルトは押出成形法、遠心成形法等により作成されるが、押出成形法では概して厚み、電気抵抗値のバラツキ、機械的特性等が悪化する傾向にあり、遠心成形法では混合材料間の比重差による表面と内表面との電気抵抗値に差が生じる傾向にあるため、上記のような問題点が生じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは以上のような問題点を解決するべく種々検討を繰り返した結果、ベルト各部における電気抵抗値のバラツキが少なく、かつ、機械的特性等各種物性に優れたシームレスベルトの提供を可能にした。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の特徴とするところは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性フィラーとを配合して成る材料をチューブ状に押出成膜し、軸方向と直角方向に所定長さに切断して得られるベルトであって、ベルト各部における体積電気抵抗値が10〜1017Ω・cm、好ましくは1010〜1015Ω・cmの範囲にあると共に、前記体積電気抵抗値の最大値が最小値の1〜100倍、好ましくは1〜10倍の範囲にある点にある。
【0006】そして、こうすることにより、本発明の導電性ベルトは厚み、電気抵抗値のバラツキが少なく、しかも機械的物性の値が、導電性フィラー微粉末を配合しない同一材料から構成された同一形状のシームレスベルトの値より大幅に低下しない値を確保することも可能となる。
【0007】次に課題を解決するための手段を詳述することにする。本発明におけるポリフッ化ビニリデン系樹脂とは特に制限はないが、通常、重量平均分子量が20,000〜50,000程度の押出用グレードが用いられるが、この値に制限を受けるものでない。またその形状は特に制限なく、例えば粒状(ペレット)、粉状体等のものが使用できるが、例えばフレーク状、フラフ状でも良いのは勿論である更に、本発明に係るかかるシームレスベルトはポリフッ化ビニリデン系樹脂を主成分とするが、半導電性を低下させない範囲内であればポリフッ化ビニリデン系樹脂に他の樹脂、例えばポリメチルメタアクリレートやアクリル樹脂などを添加したものでもよく、このことに特に制限を受けるものではない。
【0008】ポリフッ化ビニリデン系樹脂に導電性を付与するために、配合される導電性フィラーとしては導電性、半導電性等の微粉末ならば特に制限はないが、ケッチェンブラック(コンタクチィブファーネス系カーボンブラック)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、酸化第2錫、酸化インジウム、チタン酸カリウム、チタン酸ブラック、チタン酸ウィスカー等の導電性、半導電性の微粉末を例示でき、特に制限はない。かかる導電性フィラーの使用量は特に制限されず、体積電気抵抗値に応じ適宜選択すればよいが、通常では使用量の全重量にたいし5〜20重量%程度配合すればよい。また、体積電気抵抗値を安定化させるためには、導電性カーボンと金属酸化物を組み合わせて使用すればよい場合もあるが、このことに特に制限はない。
【0009】本発明では、ポリフッ化ビニリデン系樹脂及び導電性フィラーの外に必要に応じて適当な成分を配合してもよい。例えばワックス、シリコンオイル、低分子量フッ化ビニリデン等の滑剤を適宜配合できる。滑剤は、通常は使用原料の全重量にたいし、例えば1.5重量%以下、好ましくは0.5〜1.5重量%程度配合されるが、滑剤を用いなくてもよいことは勿論である。
【0010】本発明に係る半導電性シームレスベルトはクリープ特性や耐久性を向上させるために、無機フィラーや有機フィラーを混入すると好ましい場合が多いが、特に制限はない。この際、無機フィラーとしては、特に制限はないが、例えばタルク、チタン酸ウイスカー、マイカ等フィルムの表面精度を考慮して粒径1〜2μのものを使用することが望ましい。有機フィラーとしては、特に制限はないが、液晶ポリマー、アラミド繊維等が例示できる。フィラーの添加量としては、特に制限なく適宜でよいが、一般的には20重量%以下、好ましくは5〜20重量%程度を混入する場合が多いが、必ずしもフィラーを添加することに限定されず添加しなくてもよいのは勿論である。
【0011】本発明半導電性シームレスベルトは以下のようにして製造できるが、以下はあくまで1例であり、特に制限を受けるものでない。
【0012】先ず、前記各原料をブレンドする。ブレンドする方法としては、特に制限はないが、例えば、ミキシングブレンド法をあげることができる。ミキシングブレンドに使用するミキサーとしては、特に制限はないが、導電性カーボンを均一に分散させることを考慮すると、例えば、2軸スクリューを有する押出機等が好ましい。更に、分散性を向上させたい場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末と金属酸化物や導電性カーボン等の粉末を物理的、機械的に混合する、例えばハイブリゼーション等の方法でミキシングすることもできるが、このことも特に限定されない。
【0013】こうしてミキシングブレンドされた原料は、通常ペレット状に押出される。ブレンドされた原料、例えば前記のようにペレット状等に形成された原料は、未絶乾の状態では成膜時に発泡する恐れがあるので、必要ならば水分率が0.05重量%程度以下となるように除湿乾燥させてもよい。また、ミキシング及びペレット化を、窒素ガス、炭酸ガス等の反応性の乏しいガスや、ヘリウムガス等の不活性ガスの置換雰囲気下で行なうと、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の分子量変動が抑えられ、好ましい場合が多い。なおミキシングブレンドにより、得られるペレットの体積電気抵抗値が変動する場合があるので注意を要する。こうして得られた配合物は前記したと同様の反応性の乏しいガスや不活性ガス中で乾燥せしめると一層好ましい場合が多い。またミキシング及びペレット化は低温で行なうほうが好ましい。必要ならば滑剤を添加すると分子量低下が防止できる場合が多いが、特に滑剤を添加しなくてもよい。
【0014】次いで、ブレンドされ、必要ならばペレット化された原料をチューブ状フィルムに成膜する。本発明に云うフイルムには、シート状の厚手のものも包含される。成膜方法は特に制限されないが、環状ダイスからの押出成膜法が好ましい。環状ダイスから押出成膜する際、定径、定厚等の寸法精度を得るためには、インサイドもしくはアウトサイドマンドレル等のサイジング部により規制するのが望ましい。こうしたサイジング部の冷却温度は特に重要であり、冷却水の温度、サイジング部の材質などをポリフッ化ビニリデン系樹脂の種類や電気抵抗値、膜厚等に合せて慎重に選ぶことが望ましい。このような選択によってチューブの成膜性を向上させると同時にサイジング部表面に付着する分解モノマーの付着量を低減できる等好ましい場合が多い。本発明に係る製造方法においてはサイイジング筒状態に循環する冷却水の温度は特に制限はないが、通常では0〜90℃、好ましくは20〜60℃が望ましい。押出されたチューブ状フィルムは、折目がつかない状態で引き取るのが好ましい。例えば、軟質の押え爪部を有するキャタピラーコンベアー対を用いて、折目が残らない程度に軽く押えつけながら引き取るキャタピラー方式が好ましい方法として例示できる。引き取りは、このようにチューブとの接触面積を多くして、折目がつかないように引き取るいわゆる長時間隔保持方式が望ましい場合が多い。
【0015】得られるフィルムの体積電気抵抗値は、主にブレンドする導電性フィラーの量によって決定されるが、フィルム各部の体積電気抗値は成膜条件によっても相当に変動する。従って、体積電気抵抗値を所定の値にコントロールすると共に、フィルム各部の体積電気抵抗値の変動幅を一定値以内にするためには、成膜条件に充分な注意を要する。例えば押出し成膜を行なう際には、ブレンドされた原料の流動性、粘度等や押出機内でかかる圧力、その他の要因により変動する場合があるので、スクリューの形状、押出量、温度制御等を精度よく行なうことが望ましい。この際、押出機内の圧力をコントロールするためにはギヤーポンプを介してポリフッ化ビニリデン系樹脂を押出機に投入してもよい。かかるギヤーポンプは溶融状の樹脂を定量的にダイスに導くものであればよく、市販のものを使用できる。
【0016】殊に、この体積電気抵抗値の変動は、一般的に押出方向(チューブの軸方向)に対し直角方向(チューブの円周方向)に大きくなる傾向を示すので、特に制限はないが、押出時、例えば環状ダイスにおける温度コントロールを細部に行なうが好ましい。例えばダイスの円周方向に段階的にコントロールを行なうのがよい。より具体的には、例えば、ダイス内での樹脂温度を±1℃程度、更には±0.5℃程度の精度でコントロールすることにより体積電気抵抗値の変動が少ないフィルムが成膜できる。
【0017】本発明者の研究によれば、良好な電気的特性を有する継目のない半導電性ベルトを得るためには、ベルトの体積電気抵抗値を10〜1017Ω・cm、好ましくは1010〜1015Ω・cmの範囲にすると共に、ベルト各部における体積電気抵抗値の最大値が最小値の1〜100倍、好ましくは1〜10倍の範囲にする必要があることが判明した。またベルトの厚さ変動も体積電気抗値に影響を与えるので、厚み精度のコントロールにも注意を要する。
【0018】より高度な寸法精度が要求される場合には、例えば、押出成膜後、定寸ガイドで規制したり、延伸を行なう等により寸法精度の向上に適した方法を採用してもよい。延伸を行なう場合には、縦、横(チューブの軸方向及び円周方向)の延伸倍率の程度により、導電性カーボンの相互の接触状態の分布が変り体積電気抗値が変動するので、予め条件を正確に設定しておくことが望ましい。延伸倍率は、例えば縦、横各々3〜5%を例示できる。また延伸温度は、60〜180℃、好ましくは120〜150℃を例示できるが、延伸倍率、延伸温度は上記範囲に限定されないことは勿論である。
【0019】導電性フィラーの凝集により、フィルム表面の平滑性等の表面精度が低下する場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が溶融状態の時に用いる押出機中のフィルターに注意を要することもある。かかるフィルターは10〜20μメッシュのバスケットタイプ、5〜20μメッシュのリーフタイプのフィルター等を通常押出機中のスクリューとヘッドとの間に設けるものを例示できるが、フィルタ−の種類、メッシュの値は特に制限はない。また、必要に応じ、適当な平滑性材料、例えばシリコンオイル、4フッ化エチレン系重合体等を配合することにより、表面張力が改善され、表面精度の向上に役立つこともある。平滑性材料の配合量は特に制限されないが、通常は使用原料の全重量にたいし0.1〜3.0重量%程度とすればよい。
【0020】以上のような条件で製造することにより、体積電気抵抗値のバラツキを少なくコントロールすることができ、かつ、良好な表面の平滑性を維持でき、加えて径、厚さ等の寸法精度に優れたチューブ状フィルムの製造が可能となる。勿論、電気抵抗値、寸法精度等にこだわらない場合は、どのようにチューブ状にフィルム化しても自由であるが、複写機器等における映像機能性ベルト、メモリー機能、静電コントロール機能、搬送等に用いる場合は、上記各性能を供えることが望ましい場合が多い。
【0021】このようにして得られるチューブ状フイルムを、軸方向(機械方向、押出方向)に対し直角方向(円周方向)に、所定の長さで順次輪切り状に切断することにより、本発明の継目のない導電性ベルトを得ることができる。ベルトの幅は、切断長さを変えるだけで任意に調整でき、便利である。
【0022】本発明は転写ベルトの導電性基体として用いると最も好ましいが、その他あらゆる方面に広範な用途が期待され、特に制限を受けるものでない。
【0023】以下本発明を実施例で説明する。
【0024】
【実施例】
【0025】実施例1ポリフッ化ビニリデン系樹脂95重量%及びアセチレンブラック5重量%を、窒素ガス雰囲気中でハイブリゼイションシステムによりブレンドし、得られたブレンド物を引き続き窒素ガス雰囲気中で2軸スクリューを有する押出機を用いてペレット状原料に作製した。このペレット状原料をL/D=29の65mmφ押出機に投入し、ギヤーポンプを通じてスパイラル環状ダイスに導き、スリット口から直下にチューブ状に溶融押出した。次いで、内径520mmの浸水式真空水冷槽におけるサイジングスリーブによりチューブ状フィルムを規制して冷却し、幅50mmのニップロールを12個用いることにより中間部のみニップし、折目を作らないように引き取り、厚さ150μ、直径500mmのチューブ状フィルムを成膜した。次に130℃温度下で縦方向及び円周方向に各々3%延伸したチューブ状フィルムを得た。この際、4分割ヒーターを環状ダイスの円周方向に段階的に配置し、環状ダイス内の温度を200±0.5℃にコントロールした。更に、押出機のスクリュー先端とダイスとの間には20μメッシュのバスケット状ステンレス製フィルターを装着した。こして得たチューブ状フィルムを軸方向と直角方向(円周方向)に350mm間隔の長さに切断して、外径515mm,厚さ136.5μの継目が無い半導電性ベルトを得た。このベルトの体積電気低抗値は100V電圧を印加した時に1×1014〜1×1015Ω・cmの範囲であった。この際、ベルト各部における体積電気低抗値の最大値は最小値の10倍であった。
【0026】実施例2ポリフッ化ビニリデン系樹脂92重量%、アセチレンブラック5重量%、チタン酸ブラック3重量%をハイブリゼイションシステムによりブレンドし分散させ、実施例1と同様にして半導電性ベルトを得た。このベルトの体積電気抵抗値は100Vの電圧を印加した時に5×1013〜1×1014Ω・cmの範囲であった。ベルト各部における体積電気低抗値の最大値は最小値の2倍であった。
【0027】実施例3ポリフッ化ビニリデン系樹脂85重量%にアセチレンブラック5重量%、タルク(平均粒径2〜3μ)10重量%をハイブリゼイションシステムによりブレンドし分散させ、実施例1と同様にして半導電性ベルトを得た。このベルトの体積電気抵抗値は100V電圧を印加した時に1×1013〜1×1014Ω・cmの範囲にあり、ベルト各部における体積電気低抗値の最大値は最小値の10倍である耐久性、クリープ特性も優れた半導電性ベルトであった。
【0028】
【発明の効果】本発明に係る半導電性ベルトは電気的特性に優れ、継目を有しないため、継目が原因となる破損が生ずることもなく、耐久性に優れた強靭なものである。さらに耐熱性にも優れているため、今後各分野への適用が期待できる。例えば、複写機等の映写機能性ベルトとして使用すると画像の乱れ、寸法変形なども発生せず、その効果は顕著である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリフッ化ビニリデン系樹脂と導電性フィラーとを配合して成る材料をチューブ状に押出し成膜し、軸方向と直角方向に所定長さに切断して得られるベルトであって、ベルトの各部における体積電気抵抗値が10〜1017Ω・cmの範囲にあると共に、前記体積電気抵抗値の最大値が最小値の1〜100倍の範囲にあることを特徴とするシームレス状半導電性ベルト。

【公開番号】特開平5−200904
【公開日】平成5年(1993)8月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−57612
【出願日】平成4年(1992)1月29日
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)