説明

シーラント及びフィルム材

【課題】汎用性の高い材料で製造され、熱溶融性、非吸着性、透明性等の特性を有するシーラント及びフィルム材を提供する。
【解決手段】結晶性ポリエステルと、ポリオレフィンとからなるシーラントであって、当該シーラントのヘイズは、20以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーラント、及びこのシーラントからなるフィルム材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、包装材料のシーラントには、熱融着性と適度な柔軟性とを有する特性が必要とされている。また、包装される材料の風味は品質等を維持するため、シーラントには、包装される内容物の成分を吸着しないという特性も必要とされている。この特性を満たす材料の一つとして、ポリオレフィン樹脂が汎用されている。
【0003】
このような例として、特許文献1は、酸変性ポリオレフィンと、ガラス転移点が30℃以下の結晶性ポリエステルとをラボプラストミル等で均一に混合して得た容器密封フィルムを開示する。しかしながら、このフィルムは、熱溶融性や、非吸着性等の特性を有するものの、透明性の点で、問題を有している。また、ガラス転移点が30℃以下の結晶性ポリエステルは、汎用性が低く、シーラントの製造に用いるには、コスト的にも不向きであるという問題もある。
【0004】
一方、非吸着性を有する材料として、ポリエチレンテレフタレート樹脂が挙げられ、これを用いた例として、特許文献2は、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレンとを混合した材料で成形した揮発性薬剤包装用フィルムを開示する。ポリエチレンテレフタレートは、非吸着性を有し、汎用性の高い材料といえるものの、熱融着性や柔軟性能が低く、シーラントの材料として用いるのには、不適であった。
【0005】
さらに、特許文献3は、衛生性、保香性、非吸着性、無公害性等を目的として、低結晶性ポリエステルと、オレフィン系熱可塑性エラストマーとよりなる混合物で形成された熱封緘層を有する易剥離性包装材料を開示する。この包装材料は、熱溶融性や非吸着性等の特性を有するものの、透明性については言及されておらず、また、汎用性の低い低結晶性ポリエステルを使用して製造しなければならず、実用性の点で、問題を有していた。
【特許文献1】特開平08−143020号公報
【特許文献2】特開2004−331174号公報
【特許文献3】特開平05−229050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、汎用性の高い材料で製造され、熱溶融性、非吸着性、透明性等の特性を有するシーラント及びフィルム材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるシーラントは、結晶性ポリエステルと、ポリオレフィンとからなるシーラントであって、当該シーラントのヘイズは、20以下であることを特徴とする。これにより、透明基材に本材料をシーラントとして用いて包装材料とした場合、目視で内容物の状態が確認できるようになり、異物等の混入検査も簡便になるという利点がある。
【0008】
本発明によるシーラントにおいて、当該シーラントの厚さは、15μm以上60μm以下であることを特徴とする。これにより、上述に加え、十分な強度を有しつつ、経済的にも優れたシーラントが得られる。
【0009】
本発明によるシーラントにおいて、前記ポリオレフィンの含量は、当該シーラントの重量に対して、1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする。これにより、非吸着性は損なわれずに、熱融着性と柔軟性とを付与することができる。1重量%未満であると熱融着性が悪くなり、10重量%を越えると、透明性が損なわれやすい。
【0010】
本発明によるシーラントにおいて、当該シーラントの全光線透過率は、80%以上であることを特徴とする。これにより、透明基材に本材料をシーラントとして用いて包装材料とした場合、十分な可視光が内部に到達し、内容物の色などが視認しやすくなる。
【0011】
また、本発明によるフィルム材は、基材と、該基材上に積層された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシーラントとからなることを特徴とする。これにより、ヒートシール性を有するとともに、透明性、吸着性など、種々の用途に使用し得るフィルム材が得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるシーラント及びフィルム材は、香気などに対して非吸着性を示し、ヒートシール性に加えて透明性、柔軟性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、説明する。
【0014】
本発明によるシーラントは、結晶性ポリエステルと、ポリオレフィンとからなるシーラントであって、当該シーラントのヘイズは、20以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明において使用し得る結晶性ポリエステルとしては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリペンタメチレンテレフタレート(PPT)などが例示される。また、これらのポリエステルを構成単位に有する限り、ホモポリエステルであってもよく、共重合体であってもよい。これらのうち、グレード選択幅の広さ、入手の容易さ、経済性の点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が好ましい。
【0016】
本発明に用いる結晶性ポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを適当な脱水縮合反応等の公知の方法により合成すればよい。結晶性ポリエステルの合成に使用し得るジカルボン酸としては、例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等が例示される。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール等が例示される。なお、これらのジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分は、それぞれ2種以上を併用してもよい。
【0017】
結晶性ポリエステルの製造方法としては、本技術分野公知の製造方法であればよい。これらの方法としては、例えば、酸成分とグリコール成分とを直接反応させる直接エステル化法、酸成分としてのエステルとグリコール成分とを反応させるエステル交換法などが挙げられる。
【0018】
本発明に用いるポリオレフィンとしては、不飽和炭化水素からなるオレフィン類であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1およびこれらを主体とした重合体又は共重合体が例示される。なかでも、付着性を付与できる点で、低結晶性で低融点を有するアモルファスオレフィンが好ましい。
【0019】
本発明において使用し得るポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセンなどの炭素数が2〜10のオレフィン類等から適当な重合反応を用いて合成すればよい。本発明に用いるポリオレフィンは、さらに、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、スチレン、アクリロニトリルなどのその他の重合性単量体を既知の方法に従って共重合又はグラフト重合して変性させたポリオレフィンであってもよい。また、本発明に用いるポリオレフィンは、無水マレイン酸等の酸無水物により変性したポリオレフィンであってもよい。
【0020】
本発明によるシーラントは、上述の他、必要に応じて各種添加剤を有してもよい。添加剤の例としては、滑剤(例えば、二酸化チタン、微粒子シリカ、カオリン、炭酸カルシウム)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線防止剤、着色剤(例えば、染料)などが挙げられる。
【0021】
本発明によるシーラントにおいて、当該シーラントの厚さは、15μm以上60μm以下であることが好ましい。15μm未満であると、強度等、シーラントとしての物理的な強度を十分に得ることができなくなる。60μmを越えると、材料等のコスト面で経済的でない。
【0022】
<本発明によるシーラントの製造方法>
本発明のシーラントは、上記の各成分を、同方向二軸混練押出機など、高いせん断力をかけ得る混練機で高分散した後、シート状等の所望の形状に成形することにより、製造される。分散の程度としては、上述の構成を実現し得るものであれば、とくに限定されるものではない。
【0023】
例えば、このような分散の一例としては、30〜200N程度のせん断力で行うことが挙げられる。200Nよりも大きくなると、樹脂分の変性が起きてしまい、30N未満であると、上記の各成分の分散性が悪化してしまい、いずれも不都合である。
【0024】
高分散する混練機としては、例えば、同方向二軸混練押出機が挙げられ、この混練押出機を用いる場合、機械の構成としては、多条スクリューと複数のニーディングディスクとを組み合わせたものが挙げられる。本発明によるシーラントの製造は、このように構成した機械を用いて、材料を、まず多条スクリューで押し込みした後、ニーディングディスクで混練して、行われてもよい。
【0025】
本発明において、高分散は、使用する目的に応じて、適宜に冷却し、加温し、あるいは加圧した状態で行なわれてもよい。また、必要に応じて不活性気体の存在下に行なわれてもよい。
【0026】
<本発明によるフィルム材>
本発明によるフィルム材は、基材上に、上述のシーラントを積層してなることを特徴とする。この基材は、特に限定されない。例えば、種々の合成樹脂フィルムが用いられる。合成樹脂フィルムの例としては、例えば、PETなどのポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ナイロン系フィルムなどが例示される。これらのフィルムは、延伸したもの、或いは無延伸のものであってもよく、フィルム材の目的に応じて、適宜選択すればよい。また、基材として、紙を原料としたものを使用してもよい。さらに、アルミニウムなどの金属を有する材料を使用してもよい。
【0027】
本発明によるフィルム材の製造方法としては、基材上にシーラントを積層し得る方法であれば、特に限定されない。例えば、押出ラミネーション法、ドライラミネーション法、サンドラミネーション法、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法等、適当な積層手段が例示される。
【0028】
本発明によるフィルム材は、上述の他、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、紫外線防止剤、分散剤などの公知の添加剤を有してもよい。
【0029】
本発明によるフィルム材は、種々の物品の包装に用いることができる。このような物品の例としては、例えば、漬物、乳製品、レトルト食品、冷凍食品、菓子、飲料などの食品、着物、洋服などの衣類、注射剤、錠剤、カプセル剤、輸液などの医療用包装材など、固形、液体を問わず、種々の物品が挙げられる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
PET樹脂(商品名:J−125(三井ペット樹脂製)、Tg:83℃)95.5重量部と、アモルファス系ポリオレフィン(商品名:アウローレン150S(日本製紙ケミカル製))0.5重量部とを、ラボプラストミルの押出機(ニーディングディスクを組み合わせて使用)を用いて、以下の条件で混練して、20μmの膜厚を有するシーラント1を得た。
【0031】
混練温度:260〜270℃
混練時間:3〜10分
【0032】
(実施例2)
実施例1において、PET樹脂とアモルファス系ポリオレフィンの重量部を、それぞれ、99重量部及び1重量部とした以外は、実施例1と同様に処理し、シーラント2を得た。
【0033】
(実施例3)
実施例1において、PET樹脂とアモルファス系ポリオレフィンの重量部を、95重量部及び5重量部とした以外は、実施例1と同様に処理し、シーラント3を得た。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、PET樹脂とアモルファス系ポリオレフィンの重量部を、90重量部及び10重量部とした以外は、実施例1と同様に処理し、シーラント4を得た。
【0035】
(比較例1)
実施例1において、PET樹脂及びアモルファス系ポリオレフィンに代えて、PET樹脂のみを用いた以外は、実施例1と同様に処理し、30μmの膜厚を有する比較シーラント1を得た。
【0036】
(比較例2)
実施例1において、PET樹脂及びアモルファス系ポリオレフィンに代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(スズロンL(アイセロ化学社製))を用いた以外は、実施例1と同様に処理し、40μmの膜厚を有する比較シーラント2を得た。
【0037】
(比較例3)
実施例1において、PET樹脂とアモルファス系ポリオレフィンの重量部を、85重量部及び15重量部とした以外は、実施例1と同様に処理し、比較シーラント3を得た。
【0038】
<ヒートシール性の評価>
上述の各シーラントと、12μmの膜厚を有するPETフィルム(商品名:ポリエステルフィルムE5100(東洋紡社製))とをドライラミネートしたものを、シーラントの面同士を合わせるように、0.1MPa、120〜150℃、0.7〜1.0秒の条件で、ヒートシールした。これらを、300mm/分の剥離速度、180°の剥離角度で剥離し、その際の剥離強度を算出した。結果を表1に示す。
【0039】
<吸着性の評価>
上述の各シーラントと、12μmの膜厚を有する上記のPETフィルムとをドライラミネートしたものを、サンプルフィルム面を内面として袋(100mm×100mm)を作製した。その後、各袋に、100%オレンジジュースを10mL入れて、0.1MPa、120℃、0.7秒でヒートシールした。各袋について、23℃50%RHの条件で、1週間保存後、ジュースを取り出し内面を水で洗浄した。洗浄済みの各袋を、さらに、IPA(イソプロパノール)溶液で3時間浸漬して、IPA抽出液を調製した。この抽出液について、リモネンの標準物質として、GC−MS法に準じて、リモネン吸着量を算出した。結果を表1に示す。
【0040】
<透明性の測定>
(全光線透過率)
ASTMD1003に準じて、測定した。結果を表1に示す。
【0041】
(ヘイズ値)
JISK7105に規定された方法にもとづいて入射角0゜で測定した。結果を表1に示す。
【0042】
<柔軟性の評価>
上記の各シーラントを25mmの幅、150mmの長さに裁断し、この中央部分を長さ100mmのループ状にして、その頂部に、感圧センサを備えた測定器(ループスティフネステスター:東洋精機株式会社製)を接触させて測定した。得た値から、各シーラントの断面積当たりの値(単位mg/mm)を算出し、柔軟性とした。結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
これらの結果、本発明によるシーラントを用いた場合、透明性、ヒートシール性、香気非吸着性を示すことが分かる。また、ポリオレフィン5重量%添加によるシーラントを用いた場合、20μmの膜厚でも、直鎖状低密度ポリエチレン40μm並みのヒートシール性強度が得られた。これにより、小さい膜厚で使用することが可能となり、より透明性が向上される。
【0045】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ポリエステルと、ポリオレフィンとからなるシーラントであって、
当該シーラントのヘイズは、20以下であることを特徴とするシーラント。
【請求項2】
当該シーラントの厚さは、15μm以上60μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のシーラント。
【請求項3】
前記ポリオレフィンの含量は、当該シーラントの重量に対して、1重量%以上10重量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシーラント。
【請求項4】
当該シーラントの全光線透過率は、80%以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシーラント。
【請求項5】
基材と、該基材上に積層された請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシーラントとからなることを特徴とするフィルム材。

【公開番号】特開2007−291231(P2007−291231A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120586(P2006−120586)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】