説明

シーリング・ポンプアップ装置

【課題】圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することができるシーリング・ポンプアップ装置を得る。
【解決手段】シリンダ112が往復移動することで、空気室124内の圧縮空気が周期的に圧縮され、この圧縮空気が、空気ホース86及び開封装置60の空気供給路92を通して連結体70に供給される。弾性変形壁122は、空気室124の圧縮空気の圧力変化に追随して変形し、空気室124の空気の圧力変化(圧力差)が抑制される(小さくなる)。これにより、コンプレッサ12(圧縮空気供給部材)によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁114に負荷されることで安全弁114が劣化するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした空気入りタイヤをシールするためのシーリング剤を空気入りタイヤ内へ注入した後、空気入りタイヤ内に圧縮空気を供給して空気入りタイヤの内圧を昇圧させるシーリング・ポンプアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のシーリング・ポンプアップ装置に設けられたコンプレッサ(圧縮空気供給部材)の排気側には、圧力調整機構が設けられている。詳細には、この圧力調整機構には安全弁が設けられ、この安全弁に所定の開放圧力を設定することでコンプレッサから供給さえる圧縮空気の空気圧の上限値が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシーリング・ポンプアップ装置では、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の最大昇圧圧力が安全弁に直接負荷される。このように、最大昇圧圧力が安全弁に直接負荷されることで、安全弁が早期に劣化することが考えられる。
【0005】
本発明の課題は、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るシーリング・ポンプアップ装置は、シーリング剤を内部に収容すると共に、前記シーリング剤が流出する流出口が設けられた液剤容器と、シリンダと、前記シリンダ内に往復移動可能に設けられるピストンと、を備え、前記ピストンを往復移動させることで圧縮空気を生成する圧縮空気供給部材と、前記圧縮空気供給部材により生成された圧縮空気を前記液剤容器に導く空気通路と、前記空気通路を通って前記液剤容器へ導かれた圧縮空気によって、前記流出口から流出したシーリング剤及び圧縮空気を空気入りタイヤへ導く流体供給配管と、前記液剤容器に供給される圧縮空気が規定圧を超えると圧縮空気の圧力を外部に開放する安全弁と、前記空気通路に設けられ、前記ピストンの往復移動により周期的に変化する圧縮空気の圧力変化を抑制する圧力変化抑制手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、圧縮空気供給部材のピストンがシリンダ内で往復移動することで圧縮空気が生成される。そして、圧縮空気供給部材により生成された圧縮空気は、空気通路によって、シーリング剤を内部に収容する液剤容器に導かれる。さらに、流体供給配管が、空気通路を通って液剤容器へ導かれた圧縮空気によって、流出口から流出したシーリング剤及び圧縮空気を空気入りタイヤへ導く。
【0008】
また、安全弁は、液剤容器に供給される圧縮空気が規定圧を超えると圧力を開放して圧縮空気の圧力を規定圧内とする。ここで、空気通路に設けられた圧力変化抑制手段が、ピストンの往復移動により周期的に変化する圧縮空気の圧力変化(圧力差)を抑制する(小さくする)。
【0009】
このように、圧力変化抑制手段が、圧縮空気の圧力変化を抑制することで、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項1に記載において、圧力変化抑制手段は、弾性変形して圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形部材であることを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、弾性変形部材が、弾性変形して圧縮空気の圧力変化を抑制する。このように、弾性変形部材を弾性変形させることで、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することができる。
【0012】
本発明の請求項3に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項2に記載において、前記弾性変形部材は、前記空気通路を構成する空気室の壁面の少なくとも一部に設けられ、弾性変形して前記空気室の圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形壁であることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、空気通路を構成する空気室の壁面に設けられ弾性変形壁を弾性変形させることで、圧縮空気の圧力変化を抑制する。これにより、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係るシーリング・ポンプアップ装置は、請求項2に記載において、前記弾性変形部材は、前記空気通路を構成する空気配管の少なくとも一部に設けられ、弾性変形して前記空気配管の圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形配管であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、空気通路を構成する空気配管に設けられ弾性変形配管を弾性変形させることで、圧縮空気の圧力変化を抑制する。これにより、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧縮空気供給部材によって生成される圧縮空気の圧力が安全弁に負荷されることで安全弁が劣化するのを抑制することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置に採用されたコンプレッサユニットを示した断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置に採用されたコンプレッサユニットによって生成された圧縮空気の圧力をグラフで示した図面である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置に採用された開封装置と連結体とをしめた断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置に採用された開封装置と連結体とをしめた断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置に採用された開封装置を示した断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置を示した斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係るシーリング装置を示した斜視図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るシーリング装置に採用されたコンプレッサユニットを示した断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るシーリング装置に採用されたコンプレッサユニットを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の一例について図1から図7に基づいて説明する。なお、図中に示す矢印UPは鉛直方向上方を示す。
【0019】
〔全体構成〕
図7に示されるように、シーリング・ポンプアップ装置10(以下、単に「シーリング装置」という。)は、自動車等の車両に装着される空気入りタイヤ100(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際、タイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤ100のパンク穴をシーリング剤により補修し、タイヤ100の内圧を指定圧まで再加圧(ポンプアップ)するための装置である。
【0020】
図3、図7に示されるように、シーリング装置10は、箱状の筐体16と、タイヤ100のパンク穴補修用のシーリング剤32を収容した液剤容器18と、この液剤容器18の流出口18Aが連結された注入ユニット20と、注入ユニット20の加圧給液室40に連通する突破具挿入穴44に挿入すると液剤容器18の流出口18Aをシールするアルミシール26を開封し、且つ爪96Aによって注入ユニット20の下部に取り付けられる開封装置60と、開封装置60から離間した位置で筐体16に収納されると共に圧縮空気を生成する圧縮空気供給部材の一例としてのコンプレッサユニット12と、コンプレッサユニット12で生成された圧縮空気をアルミシール26が突き破られた液剤容器18へ導く空気ホース86と、注入ユニット20に接続され流出口18Aを通じて加圧給液室40へ流出したシーリング剤32及び圧縮空気をタイヤ100へと導く流体供給配管の一例としてのジョイントホース54と、を備えて構成されている。
【0021】
(筐体)
図6に示されるように、筐体16の内部は、コンプレッサユニット12が収納されるコンプレッサ室74と、それ以外の収納室76とに区切られている。
【0022】
収納室76には、収納室76を開閉可能な蓋78が設けられ、コンプレッサユニット12から伸びる電源ケーブル14と、前述した開封装置60と、コンプレッサユニット12で生成された圧縮空気の圧力を測定するための圧力ゲージ84とが収納されている。そして、開封装置60は、コンプレッサユニット12から伸びる空気ホース86と連結されている。
【0023】
なお、本実施形態のシーリング装置10では、液剤容器18と注入ユニット20とを連結した連結体70と、筐体16とを別々に保管する構成となっている。
そして、装置使用時には、図7に示されるように、筐体16の蓋78を開けて収納室76から電源ケーブル14を取り出し、開封装置60に連結体70を装着するようになっている。
【0024】
また、蓋78の裏面には、シーリング装置10の操作手順、及び使用時の注意事項が記載されたマニュアル(図示省略)が貼り付けられている。シーリング装置10を使用する際には、蓋78を開くため、ユーザーがマニュアルを目視しやすいようになっている。
【0025】
一方、コンプレッサ室74の上方に配置される天井板80(一部図示省略)には、コンプレッサユニット12の電源スイッチ82が設けられている。
なお、開封装置60に連結体70を装着させる装着方法については、後述する作用と共に説明する。
【0026】
(液剤容器)
図3に示されるように、液剤容器18は、内部にシーリング剤32を収容し、下端部には、上側の容器本体部分よりも小径の円筒状の首部22が成形されている。
【0027】
この首部22の先端(図3で示す下端)の開口は、液剤容器18からシーリング剤32が流れ出す流出口18Aであり、膜状のアルミシール26で塞がれている。また、首部22の中間部には、外周側へ延出するように段差部24が形成されている。
【0028】
また、液剤容器18の内部には、シーリング装置10で修理すべきタイヤ100(図7参照)の種類、サイズ等に応じた規定量よりも多めのシーリング剤32が収容されている。
【0029】
(注入ユニット)
図3に示されるように、注入ユニット20は、上端側が開口した略有底円筒状に形成されたユニット本体部34と、このユニット本体部34の下端部から外周側へ張り出す脚部36とを備えている。
【0030】
さらに、ユニット本体部34の内周側には液剤容器18の首部22の下端側が挿入され、首部22の段差部24がユニット本体部34の上端部に当接されて液剤容器18が注入ユニット20に連結固定されて連結体70とされている。
【0031】
また、首部22がユニット本体部34に接合されると、ユニット本体部34の内壁面とアルミシール26との間に加圧給液室40が形成される。この加圧給液室40は、開封装置60によりアルミシール26が破られると液剤容器18の内部と連通する。つまり、アルミシール26が破られて流出口18Aが開放されると、この流出口18Aから流れ出したシーリング剤32が加圧給液室40に流れ込むようになっている。
【0032】
一方、ユニット本体部34の内周側には、略円筒状の内周筒部42が同軸状に形成されている。この内周筒部42の内部は、中心軸に沿って注入ユニット20の下端面と内周筒部42の上端面との間を貫通する断面円形の突破具挿入穴44となっている。
【0033】
さらに、ユニット本体部34の周壁部には、外周側に延出する円筒状の気液供給管50が一体的に形成されている。この気液供給管50は、加圧給液室40と連通し、先端部がニップル52を介してジョイントホース54に接続されている。
また、図7に示されるように、このジョイントホース54の先端部には、タイヤ100のタイヤバルブ(図示省略)に接続可能なバルブアダプタ56が設けられている。
【0034】
(開封装置)
図3に示されるように、開封装置60は、突破具挿入穴44に挿入される棒状の挿入部62と、挿入部62の基端部に形成された略長方体状のベース部66とを備えている。このベース部66の側面には、前述した空気ホース86(図7参照)の他端部が接続される接続管90が設けられている。
【0035】
また、開封装置60には、接続管90からベース部66を通り、挿入部62の先端に開口する空気供給路92が形成されている。
さらに、挿入部62の先端部64は、アルミシール26を突き破りやすいような形状となっている(本実施形態では、略円錐形状)。また、挿入部62の外周面には、リング状の溝が形成されており、この嵌挿溝にOリング68が挿入されている。
【0036】
この挿入部62の長さは、突破具挿入穴44の下端からアルミシール26までの寸法に対して長くなっている。これにより、開封装置60の挿入部62の全体が突破具挿入穴44内へ挿入されると、挿入部62の先端部64がアルミシール26を突き破り、アルミシール26よりも上側に位置するようになっている。
【0037】
このとき、Oリング68は、挿入部62が突破具挿入穴44に挿入された状態で、突破具挿入穴44の内周面へ圧接される。これにより、挿入部62全体が突破具挿入穴44内へ挿入された状態では、突破具挿入穴44は、Oリング68により密閉された状態、つまり、突破具挿入穴44がシールされた状態となる。
【0038】
一方、図3、図5に示されるように、ベース部66の両端付近には、ベース部66の上面から鉛直方向上方に立ち上がる弾性変形可能な第1支柱94が設けられている。この第1支柱94の先端側で挿入部62側の側面には、三角形の第1爪94Aが一体的に形成されている。そして、第1爪94Aは、連結体70が開封装置60に取り付けられた状態で、注入ユニット20の外周面に突出して設けられた突起部35に外側から引っ掛るようになっている。
【0039】
また、第1支柱94よりも挿入部62側には、ベース部66の上面から鉛直方向上方に立ち上がり、且つ第1支柱94よりも高さが低い弾性変形可能な第2支柱96が設けられている。この第2支柱96の先端側で第1支柱94側の側面には、三角形の第2爪96Aが一体的に形成されている。そして、第2爪96Aは、連結体70が開封装置60に取り付けられた状態で、注入ユニット20の脚部36に内側から引っ掛るようになっている。
以上のように、第1爪94A及び第2爪96Aを注入ユニット20に引っ掛けることで、開封装置60に連結体70が装着された装着状態が保持されるようになっている。
【0040】
〔要部構成〕
次に、開封装置60の空気供給路92を通して連結体70に供給される圧縮空気を生成するコンプレッサユニット12について説明する。
【0041】
(コンプレッサユニット)
図6に示されるように、コンプレッサユニット12は、収納室76に収納される電源ケーブル14と接続されており、この電源ケーブル14の先端部には、車両に設置されたシガレットライターのソケットに差し込み可能なプラグ15が設けられている。
【0042】
そして、このプラグ15をシガレットライターのソケットに差込むことで、車両に搭載されたバッテリから駆動回路に電力が供給可能になり、前述した電源スイッチ82をオンにすると駆動回路に電力が供給されるようになっている。
【0043】
これにより、コンプレッサユニット12が作動し、このコンプレッサユニット12によって生成された圧縮空気は、コンプレッサユニット12に連結された空気ホース86を介して、開封装置60へ供給されるようになっている。
【0044】
詳細には、図1に示されるように、コンプレッサユニット12は、レシプロ式のものが用いられている。コンプレッサユニット12は、シリンダ112を備えており、このシリンダ112を延設することで、後述するピストン146を往復移動させることで生成される圧縮空気を液剤容器18(図3参照)に導く空気通路123を構成する空気室124が設けられている。この空気室124の側壁には、空気室124内に供給された圧縮空気の圧力を開放する安全弁114が設けられている。
【0045】
安全弁114は、略円筒状のヘッド部116を備えており、ヘッド部116の中空部118が空気室124の側壁に形成された貫通穴120と連通するようにヘッド部116が溶接等によってシリンダ112の側壁に取付けられている。
また、ヘッド部116の中空部118の一端部(貫通穴120側)は、他端部(大気開放側)よりも小径となっており、空気室124と貫通穴120を介して連通する連通口128とされている。
【0046】
また、ヘッド部116の中空部118の他端側には、中空部118の内部に形成されたネジ形状と噛み合うように、調整ネジ126が設けられている。調整ネジ126のネジ部には、調整方向に延びる凹部126Aが形成されており、中空部118内の空気が、この凹部を介して外部と連通している。
【0047】
さらに、この調整ネジ126の中心部には、中空部118に設けられた円錐状の開閉弁130の軸部132を移動可能に支持するガイド孔134が形成されている。そして、ガイド孔134の中空部118側は拡径化されており、ここに、開閉弁130を、中空部118を構成する円錐状の壁面118A側に付勢するコイルスプリング138が設けられている。
【0048】
また、空気室124を構成する天壁112Aには、後述するピストン146の往復移動により周期的に変化する空気室124内の圧縮空気の圧力変化を抑制する圧力変化抑制手段の一例としての弾性変形壁122が設けられている。この弾性変形壁122は弾性変形可能なゴム材料で形成され、空気室124の圧縮空気の圧力変化に追随して弾性変形壁122が変形することで、空気室124内の圧縮空気の圧力変化(圧力差)が抑制されるようになっている(小さくなるようになっている)。
【0049】
以上の構成により、空気室124内の圧縮空気の圧力が所定値未満の場合には、開閉弁130がコイルスプリング138の付勢力で、壁面118Aにリング状のシール部材140を介して密着し、空気室124内の空気が外部に開放されないようになっている。
【0050】
一方、空気室124内の圧縮空気の圧力が所定値以上の場合には、開閉弁130が空気室124内の圧縮空気に押圧されてコイルスプリング138が縮み、開閉弁130が壁面118Aから離間して、空気室124の空気が調整ネジ126の凹部126Aを通して外部に開放されるようになっている。
【0051】
一方、空気室124の天壁112Aと対向する対向面には、外側(空気室124に対して反対側)からの圧力により弾性変形して開放される排気弁144が設けられている。また、この排気弁144を挟んで、空気室124の反対側には、ピストン146がシリンダ112の軸方向(矢印X方向)に往復移動可能に設けられている。このピストン146は略円柱状であり、シリンダ112と同軸とされている。
【0052】
なお、このピストン146には、ワンウェイバルブ(図示省略)が取り付けられており、ピストン146をシリンダ112の軸方向(矢印X方向)に往復移動させると、ワンウェイバルブを通して、ピストン146と排気弁144との間に空気が供給されるが、ピストン146と排気弁144との間の空気は、ワンウェイバルブによって外部に漏れないようになっている。
【0053】
また、シリンダ112の端部は、クランクシャフト148が収容された箱状のクランクケース156が取り付けられている。そして、ピストン146には、ピストンピン(図示せず)を介してピストンロッド150の一端部が回転自在に連結されている。また、このピストンロッド150の他端部は、クランクシャフト148の一端部に回転自在に連結されている。
【0054】
さらに、クランクシャフト148の軸部152はクランクケース156に回転自在に支持され、この軸部152には、ギア154が固定されている。さらに、このギア154には、駆動源であるモータ158の回転軸158Aに固定されたギア159が噛み合っている。
【0055】
この構成により、モータ158を回転駆動させると、ギア159及びギア154が回転し、クランクシャフト148が回転することで、ピストンロッド150及びピストン146が、シリンダ112の軸方向に往復移動する。そして、シリンダ112が往復移動することで、空気室124内の空気が周期的に圧縮され、この圧縮空気が、空気ホース86及び開封装置60の空気供給路92を通して連結体70に供給されるようになっている。つまり、本実施形態では、空気通路123は、空気室124と、空気ホース86と、開封装置60の空気供給路92(図3参照)とを含んで構成されている。
【0056】
(作用・効果)
次に、本実施形態のシーリング装置10を用いてパンクしたタイヤ100を修理する作業手順を説明する。
【0057】
図7に示されるように、まず、タイヤ100にパンクが発生した際には、ユーザーは、筐体16を車両の保管スペースから取り出し、電源スイッチ82や圧力ゲージ(図示省略)が上を向くように路面等に筐体16を置いて蓋78を開けて収納室76を開放する。
このとき開いた蓋78の裏面にはマニュアルが貼り付けられているため、ユーザーはこのマニュアルを逐次確認しながら作業を行うことができる。
【0058】
次に、ユーザーは筐体16と別に保管された連結体70(図3参照)を車両の保管スペースから取り出し、予め連結体70の注入ユニット20に接続されたジョイントホース54のバルブアダプタ56をタイヤ100のタイヤバルブ(図示省略)に接続する。
【0059】
さらに、ユーザーは収納室76に収納されている電源ケーブル14を収納室76から取り出し、プラグ15を車両に設置されたシガレットライターのソケット(図示省略)に差し込み、車両のエンジンをかける。これにより、車両のバッテリ(DC12V)からコンプレッサユニット12の駆動回路へ電力が供給可能となる。
【0060】
次に、図3に示されるように、注入ユニット20を下に向かせて、注入ユニット20を開封装置60に装着する。これにより、挿入部62全体が突破具挿入穴44に挿入され、アルミシール26が先端部64によって突き破られる(開封される)。
【0061】
図4に示されるように、先端部64がアルミシール26を突き破ると、第1爪94A及び第2爪96A(図5参照)が注入ユニット20の突起部35及び脚部36に引っ掛り、開封装置60に連結体70が装着された装着状態が保持される。
【0062】
このとき、挿入部62に設けられたOリング68は、突破具挿入穴44の内面に接触して突破具挿入穴44をシールする。これにより、突破具挿入穴44から外部に流体が漏れ出すのが抑制される。
【0063】
一方、アルミシール26が突き破られると、アルミシール26に開けられた孔28を通して液剤容器18内のシーリング剤32が加圧給液室40へ流れ出す。そして、電源スイッチ82をオンにし、コンプレッサユニット12を作動させると、コンプレッサユニット12により発生した圧縮空気は、空気供給路92を通して液剤容器18内に供給される。圧縮空気が液剤容器18内に供給されると、この圧縮空気が液剤容器18内で上方へ浮上し、液剤容器18内のシーリング剤32の上に空間(空気層G)を形成する。
【0064】
詳細には、図1に示されるように、コンプレッサユニット12を作動させると、モータ158が回転駆動し、これにより、ギア159及びギア154が回転する。ギア154が回転することで、クランクシャフト148が回転し、これにより、ピストンロッド150及びピストン146が、シリンダ112の軸方向に往復移動する。
【0065】
シリンダ112が往復移動することで、空気室124内の圧縮空気が周期的に圧縮され、この圧縮空気が、空気ホース86及び開封装置60の空気供給路92を通して連結体70に供給される。ここで、弾性変形壁122は、空気室124の圧縮空気の圧力変化に追随して変形し、空気室124の空気の圧力変化(圧力差)が抑制される(小さくなる)。
【0066】
つまり、図2に示されるように、縦軸を空気室124内の圧縮空気の圧力として横軸を時間とすると、ピストン146の往復移動により、空気室124内の圧縮空気が周期的に圧縮される。弾性変形壁122が設けられない場合は、2点鎖線で示されるように空気室124の圧縮空気の圧力が周期的に変化する。一方、弾性変形壁122が設けられる場合は、弾性変形壁122が空気室124内の圧縮空気の圧力変化に追随して変形するため、実線で示されるように、空気室124内の圧縮空気のピークが下がり、圧縮空気の圧力変化(圧力差)が抑制される(小さくなる)。
【0067】
そして、図1に示されるように、空気室124内の圧縮空気の圧力が所定値未満の場合には、開閉弁130がコイルスプリング138の付勢力で、壁面118Aにリング状のシール部材140を介して密着し、空気室124の空気が外部に開放されない。
【0068】
一方、空気室124内の圧縮空気の圧力が所定値以上の場合には、開閉弁130が空気室124内の圧縮空気に押圧され、コイルスプリング138が縮む。これにより、開閉弁130が壁面118Aから離間して、空気室124の空気が外部に開放される。
【0069】
つまり、弾性変形壁122を設けることで、圧縮空気のピークが下がり、空気室124内の圧力が所定値以上になるのが抑制させる。これにより、開閉弁130が空気室124内の圧縮空気に押圧され、コイルスプリング138が縮んで、空気室124の空気が外部に開放される頻度が低くなる。
【0070】
一方、図4に示されるように、コンプレッサユニット12により生成された圧縮空気が液剤容器18内に供給されて、圧縮空気が液剤容器18内で上方へ浮上し、液剤容器18内のシーリング剤32の上に形成された空気層Gからの空気圧により加圧されたシーリング剤32が、アルミシール26に開けられた孔28を通して加圧給液室40へ押し出される。そして、加圧給液室40のシーリング剤32がジョイントホース54を通って空気入りタイヤ100内へ供給される。その後、加圧給液室40及びジョイントホース54から全てのシーリング剤32がタイヤ100へ供給されると、圧縮空気が液剤容器18、加圧給液室40、そしてジョイントホース54を介してタイヤ100内へ供給される。
【0071】
次に、図7に示されるように、ユーザーは、圧力ゲージ84によりタイヤ100の内圧が指定圧になったことを確認したならば、コンプレッサユニット12を停止し、バルブアダプタ56をタイヤバルブ(図示省略)から取り外す。
【0072】
ユーザーは、タイヤ100の膨張完了後一定時間内に、シーリング剤32が注入されたタイヤ100を用いて一定距離(例えば、10km)に亘って予備走行する。これにより、タイヤ100内部にシーリング剤32が均一に拡散し、シーリング剤32がパンク穴に充填されてパンク穴が閉塞される。
【0073】
予備走行完了後に、ユーザーは、タイヤ100の内圧を再測定し、必要に応じて再びジョイントホース54のバルブアダプタ56をタイヤバルブに接続し、コンプレッサユニット12を再作動させてタイヤ100を規定の内圧まで加圧する。これにより、タイヤ100のパンク修理が完了し、このタイヤ100を用いて一定の距離範囲内で一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0074】
以上説明したように、コンプレッサユニット12を用いて圧縮空気を供給する際に、弾性変形壁122(図1参照)を設けることで、圧縮空気の圧力変化(圧力差)が小さくなり(ピークが低くなり)、空気室124内の圧力が所定値以上になるのが抑制させる。これにより、開閉弁130が空気室124内の圧縮空気に押圧され、コイルスプリング138が縮んで、空気室124の空気が外部に開放される頻度が低くなる。このため、安全弁114の劣化を抑制することができる。
【0075】
また、弾性変形壁122は、弾性変形可能なゴム材料で形成されているため、簡易な構成とすることができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の一例について図8に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
図8で示されるように、本第2実施形態では、弾性変形壁122及び安全弁160はシリンダ112を延設して設けられた空気室124には設けられていない。
【0077】
それに替えて、ピストン146を往復移動させることで生成される圧縮空気を液剤容器に導く空気通路163を構成する空気配管の一部であると共に、弾性変形可能なゴム材料で成形された弾性変形配管162が設けられている。また、弾性変形配管162の周囲には、変形する弾性変形配管162の変形量を規制する円筒状の規制筒166が設けられている。
【0078】
この弾性変形配管162の一端は、空気室124に連通されている。そして、安全弁160は、弾性変形配管162を挟んで空気室124の反対側に設けられた空気室164の壁面に取り付けられている。
【0079】
以上の構成により、ピストン146を往復移動させると、空気室124内の圧縮空気が周期的に圧縮さる。これにより、弾性変形配管162が、空気室124内の圧縮空気の圧力変化に追随して変形し、空気室124内の圧縮空気の圧力変化(圧力差)が抑制される(小さくなる)。
【0080】
さらに、規制筒166が、弾性変形配管162の変形量を規制することで、弾性変形配管162が過大に変形して破損するのが抑制される。
【0081】
次に、本発明の第3実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の一例について図9に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一部材については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0082】
図9で示されるように、空気室124を構成する天壁には、弾性変形壁は設けられておらず、空気室124内には、弾性変形可能な弾性変形部材の一例としての弾性ボール170が配置されている。
【0083】
以上の構成により、ピストン146が往復移動することで、空気室124内の圧縮空気が周期的に圧縮さると、弾性ボール170が、空気室124内の圧縮空気の圧力変化に追随して変形し、空気室124内の圧縮空気の圧力変化(圧力差)が抑制される(小さくなる)。
【0084】
このように、既存の設備を利用して、弾性ボール170を新たに追加するだけで、空気室124内の圧縮空気の圧力変化(圧力差)を抑制するこができる。
【0085】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記第1、第3実施形態では、安全弁をシリンダ空気室124の側壁に設けたが、特にこの部位に限定されることなく、開封装置60等に設けてもよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、弾性変形壁122をゴム材料で成形させて弾性変形させたが、スプリング等を利用して弾性変形させてもよい。
【0087】
また、上記第1実施形態では、空気通路123を構成する空気室124をシリンダ122を延設することで形成したが、特にこれに限定されることなく、空気室124をシリンダ122と別体としてもよい。つまり、空気室124をコンプレッサユニット12と別個に設けてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10 シーリング装置(シーリング・ポンプアップ装置)
12 コンプレッサユニット(圧縮空気供給部材)
18 液剤容器
18A 流出口
32 シーリング剤
54 ジョイントホース(流体供給配管)
112 シリンダ
114 安全弁
122 弾性変形壁(圧力変化抑制手段)
123 空気通路
124 空気室
146 ピストン
160 安全弁
162 弾性変形配管
163 空気通路
170 弾性ボール(弾性変形部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーリング剤を内部に収容すると共に、前記シーリング剤が流出する流出口が設けられた液剤容器と、
シリンダと、前記シリンダ内に往復移動可能に設けられるピストンと、を備え、前記ピストンを往復移動させることで圧縮空気を生成する圧縮空気供給部材と、
前記圧縮空気供給部材により生成された圧縮空気を前記液剤容器に導く空気通路と、
前記空気通路を通って前記液剤容器へ導かれた圧縮空気によって、前記流出口から流出したシーリング剤及び圧縮空気を空気入りタイヤへ導く流体供給配管と、
前記液剤容器に供給される圧縮空気が規定圧を超えると圧縮空気の圧力を外部に開放する安全弁と、
前記空気通路に設けられ、前記ピストンの往復移動により周期的に変化する圧縮空気の圧力変化を抑制する圧力変化抑制手段と、
を備えたシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項2】
圧力変化抑制手段は、弾性変形して圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形部材である請求1に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項3】
前記弾性変形部材は、前記空気通路を構成する空気室の壁面の少なくとも一部に設けられ、弾性変形して前記空気室の圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形壁である請求項2に記載のシーリング・ポンプアップ装置。
【請求項4】
前記弾性変形部材は、前記空気通路を構成する空気配管の少なくとも一部に設けられ、弾性変形して前記空気配管の圧縮空気の圧力変化を抑制する弾性変形配管である請求項2に記載のシーリング・ポンプアップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−51337(P2012−51337A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197680(P2010−197680)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】