説明

シーリング材組成物

【課題】ヒドロキシル基を有するビニル系重合体を含有し、耐候性、耐熱性及び耐油性等の耐久性に優れるシーリング材組成物を提供する。
【解決手段】ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体と、イソシアネート系架橋剤を含むシーリング材組成物であって、該ビニル系重合体が以下の工程で製造されたものであることを特徴とするシーリング材組成物。
[1]一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する工程。
[2]前記重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体をリビングラジカル重合させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーリング材組成物に関する。さらに詳しくは、耐候性、耐熱性及び耐油性に優れ、かつ、一成分系、二成分系が可能で塗装性にも優れたシーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子鎖の末端にヒドロキシル基を有する重合体は、ヒドロキシル基と反応するイソシアネート系化合物等を硬化剤として用いることにより重合体は架橋され、耐熱性及び耐久性に優れる硬化物を与えることができる。
これらの重合体の主鎖骨格としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及びポリテトラメチレンオキシド等のポリエーテル系重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン及びこれらの水素添加物等の炭化水素系重合体、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン系重合体、並びにポリアクリレート等のビニル系重合体等の重合体があり、主鎖骨格の特性に応じて様々な用途に用いられている。
これらのうち、特にビニル系重合体から得られる硬化物は、耐候性、耐熱性、耐油性及び透明性に優れ、上記の他の重合体では得られない特性を有している。従って、ビニル系重合体を主鎖骨格とする硬化性重合体を含有する硬化性組成物は、様々な分野で提案がされている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ハロゲン化合物を連鎖移動剤として、分子末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体を製造し、当該重合体は末端反応基を有する重合体として、シーリング材などの原料として有用であることが開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、ヒドロキシル基含有スルフィドを連鎖移動剤として、分子鎖末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体を製造し、当該重合体とイソシアネート化合物を反応させることにより得られるポリウレタンが記載されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、遷移金属錯体を触媒として、リビングラジカル重合法を用いて、分子鎖末端にヒドロキシル基を有するビニル系重合体を製造する。そして、得られたビニル系重合体にイソシアネート化合物を配合し、硬化させることにより、ゴム状硬化物が得られることが開示されている。
【0006】
一方、下記特許文献4には、ニトロキシド化合物を用いたフリーラジカル重合法により、熱可塑性樹脂を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−132706号公報
【特許文献2】特開平5−262808号公報
【特許文献3】特開平11−116617号公報
【特許文献4】特開平6−199916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、重合体を製造後にハロゲン化合物を除去することが難しく、特にヨウ素化合物を使用した場合には、硬化物が着色するという問題がある。また、得られる重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が広く、架橋点間分子量を制御することが困難である。従って、この重合体から得られる硬化物が有する強度及び弾性等の硬化物特性は、十分満足できるものではない。
【0009】
また、特許文献2に記載された方法では、連鎖移動剤を開始剤に対して大量に用いなければならず、製造工程上問題である。また、スルフィド化合物由来の硫黄原子が分子鎖に存在するため、硬化物の耐候性に問題がある。
【0010】
また、特許文献3に記載されたリビングラジカル重合法は、遷移金属錯体を触媒として用いる方法であり、これらの触媒は安全性に問題がある場合があり、得られた重合体に遷移金属錯体が残存する場合がある。重合反応の後に、得られた重合体に残存する遷移金属錯体を取り除くことは困難であり、遷移金属錯体を重合体から取り除くには、製造工程が複雑となり、多大な労力及び経済的負担を要する。また、触媒は錯体を形成させないと反応液に溶解しないため、配位子となる化合物を用いなければならず、製造工程が煩雑となり、製造コストも高くなるという問題がある。
【0011】
一方、特許文献4に記載されたフリーラジカル重合法は、例えば過酸化ベンゾイルのようなフリーラジカル開始剤と、例えば2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシのような安定フリーラジカル作用剤を用いてスチレンを重合している。しかしながら、このような構造の作用剤では、(メタ)アクリル系単量体の重合は進行しないという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐候性、耐熱性及び耐油性等の耐久性に優れるシーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体と、イソシアネート系架橋剤を含むシーリング材組成物であって、該ビニル系重合体が以下の工程で製造されたものであることを特徴とするシーリング材組成物。
[1]一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する工程。
[2]前記重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体をリビングラジカル重合させる工程。
【化1】

{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基、R3は−(CH2)m−、mは0〜2の整数、R4は水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のヒドロキシル基含有アルキルエーテル基である。}
2.上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体である上記1.に記載のシーリング材組成物。
3.上記工程[1]が有機溶剤中で行われ、工程[1]のリビングラジカル重合開始剤、ビニル系単量体及び有機溶剤の全量に対して、40〜95質量%の有機溶剤を使用する上記1.又は上記2.に記載のシーリング材組成物。
4.上記工程[1]の有機溶剤が、アルコール系溶剤である上記3.に記載のシーリング材組成物。
5.上記工程[2]の重合率が70〜99%の時点で、更にヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体を添加して、共重合させることを特徴とする上記1.乃至上記4.のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
6.上記ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が5000〜30000であり、かつ、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.1〜2.0以下であることを特徴とする上記1.乃至上記5.のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
7.更に、無機フィラー及び可塑剤を含むことを特徴とする上記1.乃至上記6.のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るシーリング材組成物は、特定のリビングラジカル重合開始剤を用いて得られたヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を含有している。そのため、硬化物は優れた力学的特性(破断強度、破断伸び)を有し、シーリング材に求められる高い耐候性、耐熱性及び耐油性等の耐久性を発現する。また、本発明の工程によって、ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体を安価に、かつ、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のシーリング材組成物について詳しく説明する。
本発明のシーリング材組成物は、ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体と、イソシアネート系架橋剤を含むシーリング材組成物であって、該ビニル系重合体が以下の工程で製造されたものであることを特徴とする。
[1]一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する工程。
[2]前記重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体をリビングラジカル重合させる工程。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を含む意味に用い、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を含む意味に用いる。
【0016】
ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、上記工程[1]及び[2]により、効率的に得ることができる。まず、上記工程[1]では、一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する。
【0017】
本発明で使用するリビングラジカル重合開始剤は、一般式(1)に示すものであり、当該開始剤を使用することにより、効率的にリビングラジカル重合が進行し、Mw/Mnの狭い重合体を得ることができる。
【0018】
【化2】

{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基、R3は−(CH2)m−、mは0〜2の整数、R4は水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のヒドロキシル基含有アルキルエーテル基である。}
【0019】
上記リビングラジカル重合開始剤と反応させるヒドロキシル基含有不飽和化合物は、ラジカル重合性を有し、かつ、分子内にヒドロキシル基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的な化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルヘキシル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルへのε−カプロラクトン又はY−ブチロラクトンの開環付加物[例えば、ダイセル化学社製 商品名「プラクセルF」、UCC社製 商品名「トーンM」等]、モノ(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール;等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、引張物性と耐油性の両立の観点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが好ましい。さらに好ましくはアクリル酸2−ヒドロキシエチル及びアクリル酸4−ヒドロキシブチルであり、これらは導入されるヒドロキシル基の分布を小さくするので好ましい。
【0020】
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物と併用されるビニル系単量体は、ラジカル重合性を有するビニル系不飽和化合物であれば、特に限定されない。ビニル系不飽和化合物としては、(メタ)アクリル系化合物、芳香族ビニル化合物、共役ジエン系化合物、マレイミド系化合物、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物、アルケン化合物、不飽和酸無水物、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル等が挙げられる。
また、上記(メタ)アクリル系化合物は、不飽和カルボン酸化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシル基含有不飽和化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
上記不飽和カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、α−クロルアクリル酸、桂皮酸、α−クロロアクリル酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
アミノ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
アミド基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アルコキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
シアノ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
ニトリル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、tert−ブトキシスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3ブタジエン、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)等が挙げられる。
【0030】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−(2−メトキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−ナフチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
上記ビニルエステル化合物としては、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上記ビニルエーテル化合物としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
上記アルケン化合物としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、へキセン等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステルが挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル等としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のジアルキルエステルが挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
また、その他のビニル系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
リビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体との反応は、リビングラジカル重合開始剤1モルに対して、ビニル系単量体0.5〜2.2モルを反応させることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5モルである。0.5モル未満であると、硬化反応時にヒドロキシル基が少なすぎ、未硬化となる場合がある。一方、2.2モルを越えると、リビングラジカル重合開始剤と反応するヒドロキシル基含有不飽和化合物に分布が生じる場合がある。また、重合前駆体生成時に未反応のヒドロキシル基含有不飽和化合物が多く残り、これらがリビングラジカル重合時に共重合してヒドロキシシル基が主鎖中に分散してしまう場合がある。
【0035】
また、リビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させる場合は、有機溶剤中で行うのが好ましい。有機溶剤の具体例としては、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。これらの溶剤の中でも、溶解性の点から、アルコール類が好ましい。
【0036】
また、有機溶剤の使用量は、リビングラジカル重合開始剤、ビニル系単量体及び有機溶剤の全量に対して、40〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは50〜90質量%であり、更に好ましくは60〜85質量%である。有機溶剤の使用量が、40質量%未満であると、リビングラジカル重合開始剤と反応するヒドロキシル基含有不飽和化合物に分布が生じる場合がある。一方、95質量%を超えると、反応が遅くなり重合前駆体生成時に未反応のヒドロキシル基含有不飽和化合物が多く残り、これらがリビングラジカル重合時に共重合してヒドロキシリル基が主鎖中に分散してしまう場合がある。
【0037】
工程[1]の反応温度は、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは55〜110℃であり、さらに好ましくは60〜100℃であり、更に好ましくは65〜90℃である。重合温度が50℃未満であると、反応速度が著しく遅くなる場合がある。一方、重合温度が120℃より高いとリビングラジカル重合開始剤と反応するヒドロキシル基含有不飽和化合物に分布が生じやすい。
【0038】
工程[1]の反応率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは95%以上である。反応率が70%未満であると、未反応のヒドロキシル基含有不飽和化合物が多く残り、これらがリビングラジカル重合時に共重合してヒドロキシリル基が主鎖中に分散してしまう場合がある。反応率はGPCにより追跡することができ、反応終了後、反応液を脱溶することにより、ヒドロキシル基含有の重合前駆体が得られる。
【0039】
次に、工程[2]は、上記重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体をリビングラジカル重合させる工程である。ここで、リビングラジカル重合とは、ラジカル重合の中で精密に制御された重合をいい、開始と成長のみからなり、連鎖移動、停止等の副反応のない連鎖重合である。理想的なリビングラジカル重合では、分子量分布(Mw/Mn)が狭い等の特徴的な挙動が見られる。本発明に用いられるリビングラジカル重合法は、特表2003−500378号公報で示されるニトロオキサイドラジカルを用いるリビングラジカル重合方法であり、各種のビニル系単量体を制御よく重合することができる。本発明に用いるリビングラジカル重合は、バッチプロセス、セミバッチブロセス、管式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のどのようなプロセスでも重合できる。これらの重合プロセスの中では、バッチプロセス、セミバッチブロセス及び管式連続重合プロセスが好ましく、バッチプロセスがより好ましい。また、重合形式は溶剤を用いないバルク重合でも、重合溶剤を用いる溶液重合でも構わない。
【0040】
工程[2]で用いるヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体は、前記工程[1]に記載したビニル系単量体を用いることができる。ビニル系単量体は、重合前駆体1モルに対し、20〜500モルが好ましく、より好ましくは40〜300である。さらに好ましくは70〜250である。特に好ましくは100〜210である。20モル未満の場合は、架橋点間距離が短すぎ伸びが小さくなる。一方、500モルを超える場合は、リビングラジカル重合の制御性が悪くなるため好ましくない。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体としては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。(メタ)アクリル系化合物の使用割合としては、工程[2]で用いる上記ビニル系単量体全量を100質量%とした時に、40〜100質量%が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、耐油性が求められる用途に関しては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシプロピル等の親水性ビニル系単量体を共重合することが好ましい。親水性単量体の使用量は、ビニル系単量体の全量に対して20〜80質量%が好ましく、さらに好ましくは30〜70質量%であり、特に好ましくは40〜60質量%である。親水性ビニル系単量体の使用量が20質量%未満では、耐油性を満足することが難しくなる傾向にあり、一方で80質量%を超えると、粘度が高くなり取り扱い性が悪くなる。
【0041】
また、重合温度は100〜150℃がよく、好ましくは105℃〜135℃、さらに好ましくは110〜125℃がよい。重合温度が100℃未満であると、重合速度が著しく遅くなる。一方、重合温度が150℃より高いとニトロオキサイドラジカルが生長ラジカルをキャップできなくなり、生長ラジカル同士の再結合反応や不均化反応、高分子主鎖からの水素引抜反応やバックバイティング反応からのβ分解反応が生じ、リビング重合性を失い、ラジカル重合を制御できなくなる。
【0042】
重合の際、ニトロキシラジカルを添加することで、分子量分布の制御および重合速度を調節することができる。その使用量は、リビングラジカル重合開始剤[一般式(1)]1モルに対し、0.001〜0.2モルが好ましい。さらに好ましくは0.003〜0.1モルが好ましく、特に好ましくは0.005〜0.05モルである。リビングラジカル重合開始剤とニトロキシラジカルのモル比が0.001倍より少ないとニトロキシラジカルの効果が得られず、0.2倍を超える量を添加すると、反応速度が著しく低下するため、生産効率を悪化する。
【0043】
具体的なニトロキシラジカル化合物としては、限定はされないが、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6−テトラエチル−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6−テトラメチル−4−オキソ−1−ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5−テトラメチル−1−ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソインドリニルオキシラジカル、N,N−ジ−t−ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。また、一般式(2)のニトロキシラジカルを使用してもよい。最も適しているのが一般式(2)のニトロキシラジカルである。ニトロキシラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
【0044】
【化3】

【0045】
本発明で使用する重合溶剤は、有機炭化水素系化合物が適当であり、テトラヒドロフラン及びジオキサン等の環状エーテル類、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素化合物、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類等、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類が例示され、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
溶剤の使用量は、重合前駆体、ビニル系単量体及び有機溶剤の全量に対し、0〜30質量%が好ましく、0〜15質量%とすることがより好ましい。さらに好ましくは0〜5質量%である。30質量%を超えると、溶剤に起因する連鎖移動反応が発生し、分子量制御、分子量分布制御及び末端のリビング性等の重合制御が悪くなる。
【0047】
次に、上記工程[2]の重合率が70〜99%の時点で、更にヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体を添加して、共重合させることが好ましい(以下「工程[3]」ともいう。)。より好ましい重合率は、80〜99%である。重合率が70%未満では、ビニル系重合体の末端付近にヒドロキシル基が導入されないため、硬化物の力学的特性が不十分となる。
【0048】
工程[3]で用いられるヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルヘキシル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし2つ以上を組み合わせて用いてもよい。より好ましいのはメタクリレートが好ましい。
【0049】
工程[3]におけるヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体の量は、工程[2]で使用する重合前駆体1モルに対し、0.1〜10モルの範囲が好ましい。より好ましくは0.4〜5モルの範囲である。さらに好ましくは0.6〜3モルの範囲が好ましい。最も好ましくは0.8〜1.5モルの範囲である。0.1モル未満では、硬化物が弱く、優れた力学的特性を示さない。一方、10モルを超えると、硬化物の架橋密度が高くなりすぎ破断伸びも低く、脆くなるため好ましくない。
【0050】
本発明において製造されるヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体は、反応後、溶剤や残モノマー等の残揮発分を取り除く工程を必要とする場合がある。脱溶プロセスとしては、流下式蒸発機、薄膜蒸発機や押出機式乾燥機等の一般に用いられる脱溶プロセスであれば何でもよい。脱溶温度条件は好ましくは、100〜250℃である。より好ましくは、140〜220℃である。この温度条件であれば、ポリマーの分解による低分子量物の生成が起きない。一方、250℃を超える場合には、高分子鎖が一部分解し低分子量物が生成される。また、着色も発生するので好ましくない。
【0051】
また、上記工程[3]終了後、メタクリル酸エステル単量体を追加添加して重合させた後、残揮発分を除去することが好ましい(以下工程[4]ともいう。)工程[4]を行うことで、末端にニトロキシド基が残らなくなり、脱溶時にポリマーの分解が起きにくいため好ましい。
工程[4]で用いられるメタクリル酸エステル単量体は、上記工程[3]に記載された単量体を使用することができる。メタクリル酸エステル単量体の量は、リビングラジカル重合開始剤に対し、1〜30モルであることが好ましく、5〜20モルであることがより好ましい。温度条件は100〜200℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは110〜150℃の範囲である。
【0052】
また、上記工程[3]終了後、アルコール系溶剤を追加添加して熟成反応させた後、残揮発分を除去することもできる(以下工程[5]ともいう。)上記工程[4]と同様な効果があるため好ましい。
工程[5]で使用するアルコール系溶剤は、上記工程[1]に記載された溶剤を使用することができる。アルコール系溶剤の量は、ビニル系単量体の全量に対し、10〜100質量部であることが好ましく、20〜60であることがより好ましい。温度条件は100〜200℃の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは140〜180℃の範囲である。
【0053】
本発明において製造されるヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)が5000〜40000であることが好ましい。より好ましいのは8000〜30000である。さらに好ましいのは12000〜25000である。Mnが5000より低いと硬化物の架橋密度が高くなりすぎ、硬化物の伸びが著しく小さくなる。Mnが40000より高いと粘度が非常に高くなり、作業性が著しく悪くなる。また、分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.0であることが好ましい。より好ましくは1.3〜2.0である。
【0054】
高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基の個数f(OH)は、1〜6個が好ましい。より好ましくは1.5〜3個であり、1.7〜2.4であることが特に好ましい。f(OH)は以下のように計算される。
f(OH)=
高分子中のヒドロキシル基濃度[mol/kg]/(1000/数平均分子量)
f(OH)が1.0個より小さいと、硬化物は架橋密度が小さいため、破断強度が非常に弱いものになる。一方、6個より高い場合には、架橋密度が高すぎ、脆くて伸びない硬化物となる。
【0055】
本発明のシーリング材組成物を構成するもう一つの成分は、イソシアネート系架橋剤である。イソシアネート系架橋剤の例としては、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、カルボジイミド変性4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、及びこれらポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。また、ポリアルキレンエーテルの末端イソシアネート化物、ポリエステルの末端イソシアネート化物、ポリカーボネートの末端イソシアネート化物等も使用できる。
【0056】
イソシアネート系架橋剤の使用量は、ビニル系重合体におけるヒドロキシル基に対するイソシアネート基のモル比(NCO/OH)が、0.5〜2.0の範囲となる量が好ましく、より好ましくは0.8〜1.2の範囲である。さらに好ましくは0.9〜1.1の範囲である。NCO/OHが、0.5未満であると、未硬化となる場合があり、2.0を超えても未硬化となる場合がある。
【0057】
本発明のシーリング材組成物は、本発明の目的が達成される限り、更に、他の成分を含有できる。他の成分としては、無機フィラー(補強剤、充填剤)、可塑剤、密着性付与剤、溶剤、硬化促進剤、粘度調整剤、物性調整剤、貯蔵安定性改良剤、滑剤、顔料、消泡剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
尚、本発明におけるビニル系重合体は、耐久性に優れた重合体であるので、老化防止剤は必ずしも必要ではないが、一般的な酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を適宜用いることができる。
【0058】
上記無機フィラーは、補強剤又は充填剤として使用される。この無機フィラーは、特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸及びカーボンブラック等の補強性充填材;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華及びシラスバルーン等充填材;石綿、ガラス繊維及びフィラメント等繊維状充填材が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
無機フィラーを用いることにより強度の高い硬化物を得たい場合には、主にヒュームドシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー及び活性亜鉛華等の使用が好ましい。この場合の無機フィラーの使用量は、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜250質量部が好ましく、80〜180質量部がより好ましい。
また、低強度で伸びが大きい硬化物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛及びシラスバルーン等の使用が好ましい。この場合の無機フィラーの使用量は、ビニル系重合体100質量部に対して、0.1〜200質量部が好ましく、80〜150質量部がより好ましい。これら無機フィラーは1種類で使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0059】
上記可塑剤は、特に限定されないが、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル類;ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等の非芳香族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート等のポリアルキレングリコールのエステル類;トリクレジルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸エステル類;ポリエリレングリコール、ポリプロピレングリコールあるいはこれらの水酸基を変換したポリエーテル類;塩化パラフィン類;アルキルジフェニル、部分水添ターフェニル等の炭化水素系油、重量平均分子量(Mw)1000〜7000のTg−10℃以下のポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、可塑剤を使用する場合の使用量は、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜400質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましく、0.1〜100質量部が特に好ましい。
【0060】
上記密着性付与剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシラン、メチルシラン類等のシラン化合物が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、密着性付与剤を使用する場合の使用量は、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜100質量部が好ましく、0.1〜50質量部がより好ましく、0.1〜30質量部が特に好ましい。
【0061】
上記溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸セロソルブ等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。これらは、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。また、溶剤は重合体の製造時に用いてもよい。また、溶剤を使用する場合の使用量は、ビニル系重合体100質量部に対して0.1〜400質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましく、0.1〜100質量部が特に好ましい。
【0062】
上記硬化促進剤(触媒)としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセトアセトナート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレート等の4価のスズ化合物類が挙げられる。
【0063】
上記粘度調整剤及び物性調整剤としては、ヒドロキシル基を有する化合物であるポリアルキレングリコール、ポリエステルポリオール、ヒマシ油、低分子量多価アルコールが挙げられる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びソルビトール等が挙げられる。これらの低分子量多価アルコールは、2種以上を併用することもできる。
【0064】
本発明に係るシーリング材組成物は、以上のような成分を含有するが、その製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、攪拌装置、遊星式攪拌装置等を用いて、混合することにより製造することができる。
【0065】
本発明のシーリング材組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿分を吸収することにより硬化する1成分型として調製することも可能であり、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調整することもできる。取り扱いが容易で、施工時のミスも少ない1成分型がより好ましい。
【0066】
本発明によるシーリング材組成物は、比較的高温でも貯蔵安定性に優れることから、組成物をより低い粘度で扱うことが可能となり、高温での液状射出成形等に好適である。本発明において、シーリング材組成物を流動させる際には、30℃以上80℃未満の温度で行なうのが好ましいが、40℃以上70℃未満の温度で流動させることがより好ましい。また、本発明においては、シーリング材組成物を30℃以上80℃未満の温度で流動させるとともに、さらに30℃以上で流動させながら硬化反応をおこなうことができる。すなわち本発明のシーリング材組成物を、射出成形[LIM(Liquid Injection Molding)等]用樹脂として用いることも可能である。
【0067】
本発明のシーリング材組成物を成形体として用いる場合の成形方法としては、特に限定されず、一般に使用されている各種の成形方法を用いることができる。例えば、注型成形、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、押し出し成形、回転成形、中空成形、熱成形等が挙げられる。特に自動化、連続化が可能で、生産性に優れるという観点から射出成形によるものが好ましい。
【0068】
本発明のシーリング材組成物を成形体として硬化させた場合には、前記成形体を実質的に破損させずに、脱型することができる。成形体が実質的に破損しないとは、成形体がその役割を果たす程度に良好な表面を有することである。
【0069】
本発明のシーリング材組成物は建築用途、自動車関連用途および電気・電子材料用途等の様々な用途に使用可能である。建築用途としては、例えば、建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、人工大理石用シーリング材等が挙げられる。また、電気・電子材料用途としては、例えば、半導体封止用樹脂、プリント配線基板用絶縁材料、電線・ケーブル用絶縁被覆材、電子部品コーティング剤、電子部品用ポッティング剤、電装シーラー等が挙げられる。また、パッキン、Oリング等にも使用できる。具体的には、防水パッキン類、防虫パッキン類、クリーナ用の防振・吸音と空気シール材、電気温水器用の防滴カバー、防水パッキン、ヒータ部パッキン、電極部パッキン、安全弁ダイアフラム、電磁弁、スチームオーブンレンジ及びジャー炊飯器用の防水パッキン、給水タンクパッキン、吸水バルブ、水受けパッキン、保温ヒータ部パッキン、蒸気吹き出し口シールなど燃焼機器用のオイルパッキン、Oリング、ドレインパッキン、送・吸気パッキン、防振ゴム、給油口パッキン、油量計パッキン、ダイアフラム弁など、音響機器用のスピーカーガスケット、スピーカーエッジ、等が挙げられる。また、自動車関連用途としては、例えば、ボディ部品として、気密保持のためのシール材、ガラスの振動防止材、車体部位の防振材、特にウインドシールガスケット、ドアガラス用ガスケットに使用することができる。エンジン部品としては、エンジンオイル用シール材等に使用することができる。さらに、本発明のシーリング材組成物は、電気・電子部品、自動車部品の組み付けライン上で液状シール材をロボット等により自動塗布しながらシールするガスケット方法[MIPG(Mold In Place Gasket)、FIPG(Formed In Place Gasket)、CIPG(Cured In Place Gasket)]にも使用することができる。
【実施例】
【0070】
<ビニル系重合体の合成>
以下に本発明の実施例を合成例、比較例と共に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことは言うまでもない。なお、以下において「部」は特にことわらない限り質量基準である。
【0071】
重合前駆体A〜Lの合成例
(重合前駆体Aの合成例)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにエタノール(以下「EtOH」ともいう。)79.6質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]14.9質量部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下「HEA」ともいう。)5.5質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.2)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると、HEAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Aを得た。GPCで分析するとMw530、Mn520、Mw/Mn1.02であった。OH価は130mgKOH/gであった。NMRで構造を分析すると下記式(4)の化合物が主成分(純度98%以上)であることがわかった。
【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
(重合前駆体Bの合成例))滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 79.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.7質量部、HEA 4.8質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Bを得た。GPCで分析するとMw510、Mn500、Mw/Mn1.02であった。OH価は113mgKOH/gであった。
【0075】
(重合前駆体Cの合成例))滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 78.6質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.5質量部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(以下「4HBA」ともいう。)5.9質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると4HBAの重合率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Cを得た。GPCで分析するとMw570、Mn560、Mw/Mn1.02であった。OH価は107mgKOH/gであった。
【0076】
(重合前駆体Dの合成 比較例)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 75.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]14.2質量部、HEA 10.3質量部(重合開始剤Aに対するモル比:2.4)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの反応率は48%であり、約半分のHEAが残留した。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約22質量部の重合前駆体Dを得た。GPCで分析するとMw550、Mn530、Mw/Mn1.04と分子量分布はやや広がり、残存HEAが残った。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル開始剤=2.4:1であり、過剰なHEAが反応できずに残存したと考えられる。OH価は79mgKOH/gであった。
【0077】
(重合前駆体Eの合成 比較例)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 81.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]17.0質量部、HEA 1.5質量部(重合開始剤Aに対するモル比:0.3)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル重合開始剤=0.3:1であった。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの反応率は50%であり、約半分のHEAが残留した。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約18質量部の重合前駆体Eを得た。GPCで分析するとMw500、Mn450、Mw/Mn1.11となった。残存HEAが残った。リビングラジカル重合開始剤が過剰すぎても発生したイソブチル酸ラジカル同士の停止反応からニトロオキサイドラジカルが過剰に残存し、リビングラジカル重合開始剤の解離反応を抑制するため、HEAの反応率も低下したと考えられる。OH価は16mgKOH/gであった。
【0078】
(重合前駆体Fの合成 比較例)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 79.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.7質量部、HEA 4.8質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル重合開始剤=1:1であった。ジャケット温度を40℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が40℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの反応率は34%であり、約2/3のHEAが残留した。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約18質量部の重合前駆体Fを得た。GPCで分析するとMw490、Mn440、Mw/Mn1.11となった。残存HEAが多量に残った。40℃ではリビングラジカル重合開始剤の解離速度が遅く、HEAの反応率が上がらなかった。OH価は31mgKOH/gであった。
【0079】
(重合前駆体Gの合成 比較例)攪拌機、窒素導入管、温度計及びオイルジャケットを備えたオートクレーブにEtOH 79.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.7質量部、HEA 4.8質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル重合開始剤=1:1であった。ジャケット温度を120℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの反応率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Fを得た。GPCで分析するとMw700、Mn480、Mw/Mn1.46となった。GPC曲線は高分子量側にテーリングしており、HEAの多量体付加物が生成していることが分かった。OH価は113mgKOH/gであった。
【0080】
(重合前駆体Hの合成 比較例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにEtOH34.8質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]50質量部、HEA 15.2質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル重合開始剤=1:1であった。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が750℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液には白い沈殿物が生じた。反応液を分析するとHEAの反応率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約65質量部の重合前駆体Hを得た。GPCで分析するとMw590、Mn490、Mw/Mn1.20となった。GPC曲線は高分子量側にテーリングしており、HEAの多量体付加物が生成していることが分かった。OH価は113mgKOH/gであった。
【0081】
(重合前駆体Iの合成 比較例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにメチルエチルケトン(以下、「MEK」ともいう)79.5質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.8質量部、HEA 4.8質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とHEAの仕込みのモル比率はHEA:リビングラジカル重合開始剤=1:1であった。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃に保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとHEAの反応率は80%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約19質量部の重合前駆体Hを得た。GPCで分析するとMw500、Mn480、Mw/Mn1.04となった。少量のHEAが残存した。OH価は113mgKOH/gであった。
【0082】
(重合前駆体Jの合成 比較例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにEtOH80.8質量部、リビングラジカル重合開始剤A[式(3)]15.7質量部、アクリル酸メチル(以下「MA」ともいう。)3.5質量部(重合開始剤Aに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。リビングラジカル重合開始剤とMAの仕込みのモル比率はMA:リビングラジカル重合開始剤=1:1であった。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃に保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析するとMAの反応率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約19質量部の重合前駆体Jを得た。GPCで分析するとMw460、Mn450、Mw/Mn1.02であった。
【0083】
(重合前駆体Kの合成)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 79.6質量部、リビングラジカル重合開始剤B[式(5)]14.9質量部、HEA 5.5質量部(重合開始剤Bに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると、HEAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Kを得た。GPCで分析するとMw520、Mn510、Mw/Mn1.02であった。OH価は113mgKOH/gであった。
【0084】
【化6】

【0085】
(重合前駆体Lの合成)滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコにEtOH 79.6質量部、リビングラジカル重合開始剤C[式(6)]14.9質量部、HEA 5.5質量部(重合開始剤Bに対するモル比:1.0)からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。ジャケット温度を75℃に上昇させ反応を開始し、反応液温度が75℃保たれるように調整された。4時間後に冷却し反応を終了した。反応液を分析すると、HEAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけエバポレーターで減圧乾燥し、約20質量部の重合前駆体Kを得た。GPCで分析するとMw530、Mn520、Mw/Mn1.02であった。OH価は110mgKOH/gであった。
【0086】
【化7】

【0087】
重合体1〜10の製造例
(重合体1の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにアクリル酸ブチル(以下「BA」ともいう。)95.2質量部(重合前駆体Aに対するモル比:203)、重合前駆体A 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は83%であった。そこに、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下「HEMA」ともいう。)0.6質量部、酢酸ブチル(以下「BuAc」ともいう。)2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は92.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw29200、Mn21300、Mw/Mn1.37であった。OH価は5.1mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0088】
(重合体2の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 92.7質量部(重合前駆体Aに対するモル比:98)、重合前駆体A 3.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は88%であった。そこに、HEMA1.16質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は94.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw16300、Mn12300、Mw/Mn1.33であった。OH価は9.8mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は2.2であった。
【0089】
(重合体3の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 96.4質量部(重合前駆体Aに対するモル比:390)、重合前駆体A 1.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は80%であった。そこに、HEMA0.3質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は96.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約93.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw75800、Mn37900、Mw/Mn1.90であった。OH価は2.5mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.7であった。
【0090】
(重合体4の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 95.5質量部(重合前駆体Cに対するモル比:199)、重合前駆体C 2.1質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は84%であった。そこに、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル(以下「4HBMA」ともいう。)0.6質量部、BuAc 1.8質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は96.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約94.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw31400、Mn20400、Mw/Mn1.54であった。OH価は4.7mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.7であった。
【0091】
(重合体5の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 95.1質量部(重合前駆体Bに対するモル比:196)、重合前駆体B 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は85%であった。そこに、HEMA0.6質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は94.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw29500、Mn20600、Mw/Mn1.43であった。OH価は5.1mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0092】
(重合体6の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 90.8質量部(重合前駆体Bに対するモル比:96)、重合前駆体B 3.7質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は90%であった。そこに、HEMA1.1質量部、BuAc 4.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は96.0%、HEMAの重合率は97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw15600、Mn12000、Mw/Mn1.30であった。OH価は9.6mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は2.1であった。
【0093】
(重合体7の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 94.6質量部(重合前駆体Bに対するモル比:194)、重合前駆体B 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は84%であった。そこに、HEMA1.2質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw28500、Mn19800、Mw/Mn1.44であった。OH価は7.6mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は2.7であった。
【0094】
(重合体8製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 94.1質量部(重合前駆体Bに対するモル比:193)、重合前駆体B 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は84%であった。そこに、HEMA 1.7質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw31700、Mn20300、Mw/Mn1.56であった。OH価は10.3mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は3.7であった。
【0095】
(重合体9製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 95.2質量部(重合前駆体Kに対するモル比:200)、重合前駆体K 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は85%であった。そこに、HEMA 0.6質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は95.0%、HEMAの重合率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw30000、Mn21000、Mw/Mn1.43であった。OH価は5.1mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0096】
(重合体10製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 95.2質量部(重合前駆体Lに対するモル比:204)、重合前駆体L 1.9質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBAの重合率は86%であった。そこに、HEMA0.6質量部、BuAc 2.3質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は95.0%、HEMAの重合率は99%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw32200、Mn20200、Mw/Mn1.59であった。OH価は5.1mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.8であった。
【0097】
比較重合体1〜4の製造例
(比較重合体1の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 97.2質量部、重合前駆体J 1.7質量部、HEA 1.1質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。6時間後にBAの重合率は95.0%、HEAの重合率は95%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約94.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw29000、Mn22800、Mw/Mn1.27であった。OH価は5.3mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は2.2であった。
【0098】
(比較重合体2の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 96.7質量部、重合前駆体J 1.7質量部、HEA 1.6質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。6時間後にBAの重合率は95.0%、HEAの重合率は96%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約94.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw27800、Mn22100、Mw/Mn1.26であった。OH価は7.8mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は3.1であった。
【0099】
(比較重合体3の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 96.2質量部、重合前駆体J 1.7質量部、HEA 2.1質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。6時間後にBAの重合率は96.0%、HEAの重合率は95%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約94.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw27100、Mn21500、Mw/Mn1.26であった。OH価は10.0mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は3.9であった。
【0100】
(比較重合体4の製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 97.5質量部、重合前駆体B 1.9質量部、HEA 0.6質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。6時間後にBAの重合率は96.0%、HEAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw26900、Mn20700、Mw/Mn1.30であった。OH価は5.2mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0101】
実施例1〜10、比較例1〜4
表1の配合割合に従って配合し、厚さ2mmのシートと0.4mmのシートを作製し、23℃、50%RHで6日間、次いで50℃で1日の養生を行った。厚さ2mmの硬化物のシートから1号ダンベル試験片を打ち抜き、破断時強度、伸度を測定した(引張物性)。引張物性測定は、温度23℃、湿度50%の環境において引張速度5cm/分で行った。厚さ0.4mmのシートはメタリングウェザーメーター試験を行い、150時間毎に、目視でクラックを観察した(耐候性)。また、硬化物の耐熱性、ブリードについても評価した。
【0102】
【表1】

【0103】
表1中の数量は質量部を意味する。使用した材料は以下のとおりである。
1.ビニル系重合体:重合体1〜10、比較重合例1〜4
2.イソシアネート系架橋剤:TSS−100(旭化成社製)
3.アクリル系可塑剤:ARUFON UP−1000(Mw2900、Mn1600、Tg;−77℃、東亞合成社製)
4.炭酸カルシウム:軽炭(白艶華CCR、白石カルシウム社製)と重炭(スーパーSS、丸尾カルシウム社製)の50wt/50wt混合物
5.老化防止剤:チヌビンB75(チバスペシャリティー社製)
6.消泡剤:DAPPO SN−359(サンノプコ社製)
7.硬化触媒:ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)
【0104】
重合前駆体及びビニル系重合体の評価は、次の方法で行った。
(1)分子量
装置: HLC−8120(東ソー社製)
カラム: TSKgel SuperMultiporeHZ−M 4本(東ソー社製)
カラム温度: 40℃
溶離液: テトラヒドロフラン 0.35ml/min
検出器: RI
GPCにより測定した分子量をポリスチレンの分子量を基準にして換算した。
(2)OH価
本発明におけるOH価は、JIS K 0070の中和滴定法により測定した。
【0105】
硬化物の評価結果を表2に示す。シーリング材組成物の評価は、次の方法で行った。
(1)引張り試験
各配合物について、引張り試験用ダンベル(JIS K 6251 3号型)を作成し、引張り試験機(東洋精機製、テンシロン200)により破断伸び[EI(%)]、破断強度[Ts(MPa)]を測定した。
(2)耐候性試験及び作業性
各配合物について厚さ2mmで塗布し、23℃、50%RHの条件下で1週間養生して硬化シートを作製した。メタリングウェザーメーター(DAIPLA METAL WEATHER KU−R5NCI−A、ダイプラ・ウィンテス社製)で促進耐候性試験を行い、150時間毎に、目視でクラックを観察した(耐候性)。表の〇は変化なし、△は微小なクラック有、×はクラック有を示す。
また、塗布時の作業性を、〇:良好、△:悪い、×:非常に悪いと評価した。
(3)硬化物の耐熱性
各配合物について硬化物シートの一部を150℃のオーブンに入れ、24時間後に取り出し、表面状態を観察した。変化なしを○、部分的に変化ありを△、変化ありを×とした。
(4)ブリード
各配合物について硬化物シートの一部を23℃、50%RH条件下に30日間放置した後、触手により液状分がブリードしていないか確認した。ブリードなしを○、ブリードありを×とした。
【0106】
【表2】

【0107】
重合体11〜16の重合例
(重合体11製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 48質量部、アクリル酸エチル(以下「EA」ともいう。)24質量部、アクリル酸メトキシエチル(以下「C1」ともいう。)24質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は85%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は93.0%、EAの重合率は95.0%、C1の重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw27400、Mn20000、Mw/Mn1.37であった。OH価は5.0mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.8であった。
【0108】
(重合体12製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 19質量部、EA 38質量部、C1 38質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は84%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は95.0%、EAの重合率は94.0%、C1の重合率は96.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw27900、Mn21000、Mw/Mn1.33であった。OH価は5.0mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0109】
(重合体13製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 57質量部、EA 19質量部、C1 19質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は85%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は96.0%、EAの重合率は94.0%、C1の重合率は94.0%、HEMAの重合率は97%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw32600、Mn21300、Mw/Mn1.53であった。OH価は4.9mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0110】
(重合体14製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 76質量部、EA 9.5質量部、C1 9.5質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は82%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は93.0%、EAの重合率は95.0%、C1の重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約91.0質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw31000、Mn21500、Mw/Mn1.44であった。OH価は4.9mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.9であった。
【0111】
(重合体15製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 19質量部、EA 38質量部、C1 38質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は84%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は93.0%、EAの重合率は95.0%、C1の重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。さらにメタクリル酸ブチル(以下「BMA」ともいう。)を15質量部添加し、2時間反応させた。最終的な重合率は、BAは97.0%、EAは98.0%、C1は99.0%、HEMAは99%、BMAは90%となった。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約105質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw36000、Mn23500、Mw/Mn1.53であった。OH価は4.2mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.8であった。
【0112】
(重合体16製造例)攪拌機、窒素導入管、温度計を備えたフラスコにBA 19質量部、EA 38質量部、C1 38質量部、重合前駆体B 2.0質量部からなる混合液を仕込み、混合液は窒素バブリングで十分に脱気された。温度を120℃に上昇させ重合反応を開始し、反応液温度が120℃保たれるよう調整された。4時間後にBA、EA,C1の総重合率は85%であった。そこへHEMA 0.56質量部、BuAc 2.4質量部を添加し、120℃でさらに2時間反応させた。この時点でのBAの重合率は93.0%、EAの重合率は95.0%、C1の重合率は95.0%、HEMAの重合率は98%であった。さらにイソプロピルアルコール(以下「IPA」ともいう。)を30質量部添加し、120℃で2時間反応させた。冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、90℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、約92質量部の重合体を得た。重合体の性状はMw30000、Mn21000、Mw/Mn1.43であった。OH価は4.8mgKOH/g、重合体の高分子鎖1本あたりのヒドロキシル基数;f(OH)は1.8であった。
【0113】
実施例11〜16
重合体11〜16を用いて、実施例1〜10と同様に、表3の配合割合に従って配合し、厚さ2mmのシートと0.4mmのシートを作製し、23℃、50%RHで6日間、次いで50℃で1日の養生を行った。厚さ2mmの硬化物のシートから1号ダンベル試験片を打ち抜き、破断時の強度及び伸度を測定した(引張物性)。引張物性測定は、温度23℃、湿度50%の環境において引張速度5cm/分で行った。また、耐熱性、耐油性の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0114】
硬化物の耐油性は次の通り評価した。
各配合物について硬化物シートの一部を市販のエンジンオイル(JOMO社製、商品名「GEOMA」、SJグレード、5W−30)に浸漬し、160℃下で10日間加熱した後、その表面状態を観察し、変化なしを○、部分的に変化ありを△、変化ありを×とした。さらに、試験前後の重量変化率を測定した。重量変化率が小さい硬化物ほど、耐油性に優れる硬化物である。
【0115】
【表3】

【0116】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明のシーリング材組成物は、優れた耐候性、耐熱性及び耐油性等を有するため、建築用途、自動車関連用途、電気・電子用途等で幅広く応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体と、イソシアネート系架橋剤を含むシーリング材組成物であって、該ビニル系重合体が以下の工程で製造されたものであることを特徴とするシーリング材組成物。
[1]一般式(1)で示されるリビングラジカル重合開始剤と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含むビニル系単量体を反応させ、ヒドロキシル基含有の重合前駆体を製造する工程。
[2]前記重合前駆体を用いて、ヒドロキシル基含有不飽和化合物を含まないビニル系単量体をリビングラジカル重合させる工程。
【化1】

{式中、R1は炭素数1〜2のアルキル基又は水素原子、R2は炭素数1〜2のアルキル基又はニトリル基、R3は−(CH2)m−、mは0〜2の整数、R4は水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基又は炭素数1〜18のヒドロキシル基含有アルキルエーテル基である。}
【請求項2】
上記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体であることを特徴とする請求項1に記載のシーリング材組成物。
【請求項3】
上記工程[1]が有機溶剤中で行われ、工程[1]のリビングラジカル重合開始剤、ビニル系単量体及び有機溶剤の全量に対して、40〜95質量%の有機溶剤を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載のシーリング材組成物。
【請求項4】
上記工程[1]の有機溶剤が、アルコール系溶剤であることを特徴とする請求項3に記載のシーリング材組成物。
【請求項5】
上記工程[2]の重合率が70〜99%の時点で、更にヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系単量体を添加して、共重合させることを特徴とするとする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項6】
上記ヒドロキシル基を少なくとも1個有するビニル系重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量が5000〜30000であり、かつ、重量平均分子量と数平均分子量の比が1.1〜2.0以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。
【請求項7】
更に、無機フィラー及び可塑剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシーリング材組成物。

【公開番号】特開2010−275469(P2010−275469A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130679(P2009−130679)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】