説明

シールドケース、およびこれでコネクタハウジングが被蔽されて成るコネクタ

【課題】コネクタハウジングから抜け出なくなり、かつ下端がコネクタハウジングから離れる方向に拡開できなくなるシールドケースを提供する。
【解決手段】シールドケース10と、シールドケース10で被蔽されるコネクタハウジング20とから成るコネクタ30において、左右側面12Lの略中央付近から下辺に向けて切り欠きをシールドケース10に形成し、先端にフックを形成しかつ長さ方向中央にスリットを形成して成る長尺片18Rを切り欠き内にフックが下方に向くように延設し、長尺片18Rのフックを係止するブリッジ形状をしたフックシールドケースロック部28Rをそれぞれコネクタハウジング20の左右側側面22L・22Rに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタハウジングを被蔽するシールドケースに関するものであり、特に、コネクタハウジングの外側に被蔽せられたシールドケースが再び抜け出ないようにし、かつシールドケースの側面板が側方へ拡開しないように工夫したシールドケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
〈従来のコネクタ〉
図10はシールドケースで被蔽された従来のコネクタを説明する図で、(a)は従来のシールドケース、(b)はコネクタハウジング、(c)はシールドケースをコネクタハウジングに被蔽したコネクタのそれぞれの斜視図を示している。
以下で、(a)のシールドケース100と、(b)のコネクタハウジング200について詳しく説明する。
【0003】
〈従来のシールドケース100の形状〉
図10(a)において、シールドケース100は正面(図で左斜め下)から見て、上板110と左側面板120Lと右側面板120Rとから成る断面コ字形に曲折された金属薄板であり、その同じ金属薄板の後部が曲折されて同じく上板130と背面板140と左側面板150Lと右側面板150Rとから成る若干小さめの断面コ字形が形成されている。
左側面板120Lと右側面板120Rには下方にそれぞれ係止部160Lと係止部160Rが延設されていて、取り付け基板に形成された係止孔に挿入されて係止・固定される。
また、右側面板150Rと背面板140(図11)には使用時に下方に向くピンP1〜P3(図11)がそれぞれ延設されている。
右側面板120Rと左側面板120Lと右側面板150Rには、それぞれコ字形空間の内側上方に向けて抜け止め係止片120K1、120K2、150Kが曲折されている。
【0004】
〈シールドケース100の展開図〉
図11は図10(a)のシールドケースに曲折する前の金属薄板を表した斜視図である。図11の展開図において、数字の丸(1)〜丸(6)で示す点線の部位を谷折り、丸(イ)で示す点線の部位を山折りにすることで、図10(a)のシールドケース100が完成する。図11に記載した符号について既に図10で説明したものは説明を割愛する。T1、T1はシールドケース100の背面板140に設けられたアース片である。
【0005】
〈コネクタハウジング200の形状〉
次ぎに、図10(b)に戻って、コネクタハウジング200は上面210・230と両側面220L・250L(図面には見えない)、220R・250Rと背面240と底面260と相手方コネクタが嵌合するために正面側から入る内部空間を正面側に備えた全体が直方体形状をしたものが樹脂成形品でできている。
コネクタハウジング200には、右側側面220R、250Rと左側側面220Lの下端にそれぞれ凹部220K1、250K、220K2(図では見えない)が形成されていて、コネクタハウジング200の上からシールドケース100がコネクタハウジング200に被蔽されたとき、シールドケース100の抜け止め係止片120K1、150K、120K2がそれぞれコネクタハウジング200の凹部220K1、250K、220K2嵌り込むので、一旦コネクタハウジング200にシールドケース100が被蔽されたらシールドケース100はコネクタハウジング200から上方に抜けないようにしている。
【0006】
〈コネクタ300の問題点〉
以上のように、従来のコネクタ300はシールドケース100の抜け止め係止片120K1、150K、120K2がコネクタハウジング200の凹部220K1、250K、220K2にそれぞれ嵌り込むので、シールドケース100はコネクタハウジング200から「上方には」抜けないようになっている。しかしながら、シールドケース100が左右へ拡開する「広がり方向」についての防止対策は特に施していなかった。
しかしながら、回路基板へのマウントまではピン位置精度が保たれなければならないから、シールドケース100が「広がり方向」に拡開すると回路基板へのマウントまでにピン位置精度が保たれないことになるので拡開防止は重要である。
そこで、広がり方向についての拡開を防止するには、シールドケース100が外形を保持するのに任せるしかなく、したがって外形を保持するためには、図12の平面図で示すように、金属薄板をコネクタの横幅L1いっぱいに用いると共に、挿入方向のシールドケース100の幅(奥行き)L2いっぱいに用いることで拡開しにくくしているが、そのため広い面積の金属薄板を使用せざるを得なくなった。また、後述するように、金属薄板の製造ロスも多くなった。また、その拡開防止もそれほど決定的なものではなかった。
【0007】
〈拡開防止を講じた特許文献1記載のシールドケース〉
また、シールドケースが「広がり方向」に拡がることを防止した発明として、特許文献1記載のシールドケースがあった。これはコネクタハウジングの左右側面から後方へ係止部を突設し、かつこの係止部が嵌入できる下面開放の溝をシールドケースの左右側面板の後方端面に設け、被蔽時にその後方端面を後方に曲折して、シールドケースをコネクタハウジングの上面より押し下げながらコネクタハウジングの上面及び左右側面を被蔽するとき、その溝内に係止部を嵌合せしめることで拡開を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平6−26174号公報
【0009】
〈特許文献1記載のシールドケースの問題点〉
しかしながら、特許文献1記載のシールドケースは拡開防止を講じているものの、シールドケースの左右側面板の後方端面で拡開防止しているので、シールドケースの後方端面近傍は拡開しないものの、そこから離れた反対側のシールドケースの前方側の拡開を確実に防止するには不十分であった。
また、コネクタの挿入方向のシールドケースの幅(奥行き)を長く採っているので、シールドケースの金属薄板の消費量が多くなった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこれらの課題を解決するためになされたもので、コネクタハウジングに被蔽されたシールドケースがコネクタハウジングから「上方に」抜けないようにすると共に、「広がり方向」に拡開しないようにし、しかも使用する金属薄板の面積が小さくかつ製造ロスが少なくできるシールドケースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、シールドケースの第1発明は、上板と前記上板の端部を曲折して形成される左・右側面板とを備えたシールドケースにおいて、前記左・右側面の略中央付近から下辺に向けて切り欠きを形成し、先端にフックを形成しかつ長さ方向中央にスリットを形成して成る長尺片を前記左・右側面板の前記切り欠き内に前記フックが下方に向くように延設したことを特徴としている。
【0012】
また、コネクタハウジングの第2発明は、上面と左右両側面と背面と底面と相手方コネクタが嵌合する内部空間に繋がる正面とを備え全体が略直方体形状に樹脂で成形されて成るコネクタハウジングにおいて、前記左右側側面にそれぞれシールドケースロック部を形成し、前記シールドケースロック部が、ブリッジ形状をし、かつ該ブリッジの高さはシールドケースを構成する金属薄板の厚みより若干大きめで、該ブリッジの幅は前記フック付き長尺片の付け根からフックの付け根までの距離より若干短く、また、該ブリッジの橋桁の内側間の長さは前記フック付き長尺片の幅より大きく、前記フックの先端同士の間隔より短いことを特徴としている。
【0013】
また、コネクタの第3発明は、シールドケースと、該シールドケースで被蔽されるコネクタハウジングとから成るコネクタにおいて、前記シールドケースが第1発明のシールドケースであり、前記コネクタハウジングが第2発明のコネクタハウジングであることを特徴としている。
【0014】
さらに、コネクタの第4発明は、請求項3記載のコネクタにおいて、前記シールドケースが、展開図で背面板と該背面板の両端に延設された左右の側面板と、前記背面板の上に延設された後方中央上板と、前記左右の側面板の上に延設された左右側上板とを備え、かつ前記後方中央上板と前記左右の側面板とをそれぞれ曲折したとき得られる上板に隙間が形成されて成るものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
第3発明によれば、第1発明のシールドケースと第2発明のコネクタハウジングを用いたので、コネクタハウジングに被蔽されたシールドケースがコネクタハウジングから「上方に」抜けないようになると共に、「広がり方向」に拡開しないようになるコネクタが得られるようになる。
【0016】
第4発明によれば、後方中央上板と左右の側面板とをそれぞれ曲折したとき得られる上板に隙間が形成されて成るものであるので、使用する金属薄板の面積が小さくでき、かつ展開図に無駄(製造ロス)が少なくなるコネクタが得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明に係るシールドケースで被蔽されたコネクタを説明する図で、(a)は本発明に係るシールドケース、(b)はコネクタハウジング、(c)はシールドケースを被蔽して成るコネクタの斜視図をそれぞれ示している。
【図2】図2は図1(a)のシールドケースに曲折する前の金属薄板を表した斜視図である。
【図3】図3は図2の金属薄板の左側面板を90度内側に曲折した状態の金属薄板の斜視図である。
【図4】図4はさらに図3の金属薄板の右側面板を90度内側に曲折した状態の金属薄板の斜視図である。
【図5】図5はさらに図4の金属薄板の左・右側面板の上部を水平になるまで90度互いに内側に曲折した状態の金属薄板の斜視図である。
【図6】図6はさらに図5の金属薄板の背面板を水平になるまで90度内側に曲折し、かつその後、背面板の両端を真下に向くまで90度内側に曲折した状態の金属薄板、すなわち曲折が完了した状態の斜視図である。
【図7】図7は図1(c)コネクタを右側から見た側面図である。
【図8】図8は図1(c)コネクタを上側から見た平面図である。
【図9】図9は本発明に係るシールドケース(図2)を得るために用いられる金属薄板の大きさと従来のシールドケース(図11)を得るために用いられる金属薄板の大きさを示すと共に、各金属薄板から得られるシールドケースの形状を示す平面図で、(a)は本発明に係る金属薄板、(b)は従来の金属薄板である。
【図10】図10は特許文献1記載のプリント基板の取り付け構造を示す斜視図である。
【図11】図11は、図10(a)のシールドケースに曲折する前の金属薄板を表した斜視図である。
【図12】図12は、図10(c)のコネクタを上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、コネクタハウジングに被蔽されたシールドケースがコネクタハウジングから「上方に」抜けないようにすると共に、「広がり方向」に拡開しないようにし、しかも使用する金属薄板の面積が小さくかつ製造ロスが少なくできる本発明に係るシールドケースについて図面を用いて説明する。
【0019】
〈本発明に係るシールドケース10の形状〉
本発明に係るシールドケースを説明する図1(a)において、シールドケース10は正面(図で左斜め下)から見て、左側上板11Lと右側上板11R、左側面板12Lと右側面板12R、後方中央上板13、左上側面板13Lと右上側面板13R、背面板14、左右の側面板12L・12Rには下方に延設する係止部16L・16Rと、図1では現れていない背面板14(図2)に設けられたアース片14L・14Rと、ピン端子15L・15R(図2)とがそれぞれ設けられている。
さらに、本発明により下方に碇(いかり)の先を向けた碇状引掛け部18Lと18Rがそれぞれ左側面板12Lと右側面板12Rの面内に設けられている。この碇状引掛け部18L・18Rについては図2を用いて後述する。
【0020】
〈シールドケース10の展開図〉
図2は図1(a)のシールドケースを形成する金属薄板を曲折する前の展開した状態の斜視図である。図2の展開図において、数字の丸(1)〜丸(8)で示す点線の部位はそれぞれ谷折りにすることで、図1(a)のシールドケース10が完成する。図2に記載した符号について既に図1で説明したものは説明を割愛する。図2において、背面板14にアース片14L・14Rとピン端子15L・15Rが、また右側面板12Rに係止片15Kがそれぞれ設けられている。そして、アース片14L・14Rと係止片15Kはそれぞれ根元から内側に上方を向くように曲折されている。
さらに、左側面板12Lと右側面板12Rには下部から略中心部に向けて切り欠き12K、12Kが形成され、その切り欠き12K、12K内に本発明により碇状引掛け部18Lと18Rが立設されている。
【0021】
〈碇状引掛け部18L・18Rの形状〉
碇状引掛け部18L・18Rは左側面板12L・12Rの中央部位の切り欠き12Kの中から下方に向けて長尺片が延設され、その先端にフック状が形成され、さらにその長尺片の中央にスリット18Cがあけられることによって、外向きフックの形成された長尺片18Aと内向きフックの形成された長尺片18Bとスリット18Cとから成るものである。全体で碇状に見えるので、ここでは碇状引掛け部18Lと18Rと名付けている。
【0022】
〈コネクタハウジング20の形状〉
次ぎに、コネクタハウジング20の形状について説明する。
図1(b)に戻って、コネクタハウジング20は上面21と両側面22L、22Rと背面24と底面26と相手方コネクタが嵌合するために正面側から入ってくる内部空間を正面側に備え、全体が直方体形状をした樹脂成形品でできている。
コネクタハウジング20には、左側側面22Lと右側側面22Rに本発明によりそれぞれシールドケースロック部28L(図では見えない)と28Rが形成されている。
次ぎに、シールドケースロック部28Lと28Rの形状について、シールドケースロック部28Rの例で説明する。
【0023】
〈シールドケースロック部28Rの形状〉
シールドケースロック部28Rは右側側面22Rの表面に設けられたブリッジ状をした部材で形成されて成る。
(1)右側側面22Rの表面からのブリッジの高さはシールドケース10を構成する金属薄板の厚みより若干大きめであり、
(2)ブリッジの幅はシールドケースロック部28Rのフック付き長尺片18A(または18B)の付け根から外向きフック(または内向きフック)の付け根より若干短くなっており、
(3)また、ブリッジの橋桁の内側間の長さはシールドケースロック部28Rの外向きフック付き長尺片18Aと内向きフック付き長尺片18Bの両長尺片の外側同士の間隔より大きく、外向きフックと内向きフックの先端同士の間隔より短くなっている。
(4)そして、ブリッジの置かれる向きはコネクタハウジング20の上からシールドケース10がコネクタハウジング20に被蔽されたとき碇状引掛け部18Rがブリッジの下を通過できる向きとなっている。すなわち、ブリッジの2つの橋桁はコネクタの嵌合方向の上流と下流に形成されている。
【0024】
〈碇状引掛け部18L・18Rとシールドケースロック部28Rによる機能〉
本発明に係る碇状引掛け部18L・18Rとシールドケースロック部28Rによって得られる機能としては、次の2つがある。
《機能1》
コネクタハウジング20の上からシールドケース10がコネクタハウジング20に向けて被蔽するとき、シールドケース10の碇状引掛け部18Rを構成する外向きフック付き長尺片18Aと内向きフック付き長尺片18Bの各フックが、ブリッジ状のシールドケースロック部28Rの橋桁に当接して材料の持つ弾性と中央スリット18Cの効果で各フックが互いに近づくように変位して橋桁間を通過し、ブリッジの反対側に出たとき復元力で外向きフック付き長尺片18Aと内向きフック付き長尺片18Bの各フックが原状復帰して橋桁に係合し、これ以降、シールドケース10はコネクタハウジング20から抜け出ることがなくなる。
図1(c)はこのように碇状引掛け部18Rがシールドケースロック部28Rに係止してシールドケース10がコネクタハウジング20から抜け出なくなった状態を示している。
《機能2》
シールドケース10の碇状引掛け部18Rはブリッジ状のシールドケースロック部28R下を通過しているため、碇状引掛け部18Rが外側に拡開しようとしてもブリッジに阻止されるため、拡開できなくなる。図1(c)はこのように碇状引掛け部18Rがシールドケースロック部28Rに係止してシールドケース10の下端がコネクタハウジング20から離れる方向に拡開できなくなった状態も示している。
【0025】
〈シールドケース10の組み立て〉
図2〜図6は図1(a)のシールドケース10の組み立て順序を説明する斜視図である。
まず、図2のシールドケース10の金属薄板を図の丸(1)の点線に沿って谷折りすると、図3のように、左側面板12Lを折り曲げ部12L1で90度内側に曲折した状態が得られる。
次ぎに、図2のシールドケース10の金属薄板を図の丸(2)の点線に沿って谷折りすると、図4のように、右側面板12Rが折り曲げ部12R1で90度内側に曲折した状態が得られる。
さらに、図2のシールドケース10の金属薄板を図の丸(3)の点線に沿って谷折りすると、図5のように、左側面板12Lの左側上板11Lが折り曲げ部11L1で90度内側に曲折し、また、図2の丸(4)の点線に沿って谷折りすると右側面板12Rの右側上板11Rが折り曲げ部11R1で90度内側に曲折した状態が得られる。
そして最後に、図2のシールドケース10の金属薄板を図の丸(5)の点線と丸(6)の点線と丸(7)の点線に沿ってそれぞれ谷折りすると、図6のように、後方中央上板13が折り曲げ部131で90度内側に曲折し、左上側面板13Lが折り曲げ部13L1で90度内側に曲折し、右上側面板13Rが折り曲げ部13R1で90度内側にそれぞれ曲折し、図1(a)に示す立体的なシールドケース10が得られる。
【0026】
図7は、このようにして組み立てられた本発明に係るシールドケース10を同じく本発明に係るコネクタハウジング20の上から被蔽して成るコネクタ30の碇状引掛け部18Rとシールドケースロック部28Rの部位を示す図である。碇状引掛け部18Rがシールドケースロック部28Rの下を通過して反対側に出て、外向きフック付き長尺片18Aと内向きフック付き長尺片18Bの各フックがシールドケースロック部28Rの橋桁に係合している状態が判る。
したがって、本発明によれば、これ以降、シールドケース10はコネクタハウジング20から抜け出なくなり、かつ、シールドケース10の下端がコネクタハウジング20から離れる方向に拡開できなくなっている。
【0027】
〈本発明の長所1〉
以上の説明から判るように、本発明によれば、シールドケース10をコネクタハウジング20の上から被蔽すると、シールドケース10の碇状引掛け部18Rがコネクタハウジング20のシールドケースロック部28Rの下を通過して反対側に出て、外向きフック付き長尺片18Aと内向きフック付き長尺片18Bの各フックがシールドケースロック部28Rの橋桁に係合するので、シールドケース10はコネクタハウジング20から抜け出ることがなくなり、かつ、シールドケース10の下端がコネクタハウジング20から離れる方向に拡開できなくなる。
【0028】
〈本発明の長所2〉
図8は図1(c)のコネクタの平面図である。図において、白い部位10は本発明に係るシールドケース、点々部位20は本発明に係るコネクタハウジングである。本出願人はシールドケース10の上板部のシールド性能について研究・検討した結果、HOT自体のEMC(電磁適合性)性能が向上しているため上板部の一部を開放してもシールド性能に差異が見られないことを突き止めた。そこで、図8のように、本発明によって、コネクタハウジング20の上部すべてシールドケースで覆うのではなくて、左側上板11Lと右側上板11Rと後方中央上板13の部分だけから構成することとした。
その結果、従来のシールドケース100と比べて性能を落とすことなく、従来の上板110(図10(a))と比べてハッチングで示す部位11Hだけ金属薄板の材料を節約することができた。
図9は本発明に係るシールドケース10(図2)を得るために用いられる金属薄板の大きさと従来のシールドケース100(図11)を得るために用いられる金属薄板の大きさを示すと共に、各金属薄板から打ち抜かれるシールドケースの形状を示す平面図で、(a)は本発明に係る金属薄板、(b)は従来の金属薄板である。
上述のように、本発明に係るシールドケース10は従来のシールドケース100よりもハッチングで示す部位11H(図8)だけ金属薄板の材料を節約することができるので、図9から判るように、本発明に係るシールドケース10を得るために用いられる金属薄板の大きさは細長い形状の(a)となり、一方、従来のシールドケース100用の金属薄板の大きさは正方形に近い長方形の(b)となり、したがって両者の面積を比較すると、本発明に係るシールドケース10用の金属薄板は従来のそれのわずか面積比で59%で済むこととなった。
【0029】
〈本発明の長所3〉
しかも、図9から判るように、金属薄板からハッチング部位だけ打ち抜かれる本発明に係るシールドケース10が元の金属薄板に対する面積比で75.2%で打ち抜かれているのに対して、従来のシールドケース100が金属薄板から打ち抜かれるハッチング部位の割合は66.3%となった。
すなわち、本発明に係るシールドケース10の方が従来のシールドケース100よりも金属薄板の材料を有効利用しているのである。
【0030】
〈本発明の効果〉
以上のように、本発明によれば、(1)シールドケース10をコネクタハウジング20に被蔽すると、シールドケース10はコネクタハウジング20から抜け出なくなり、かつ、(2)シールドケース10の下端がコネクタハウジング20から離れる方向に拡開できなくなり、(3)金属薄板から打ち抜かれる面積を小さくすることができ、しかも(4)打ち抜かれた金属薄板を有効利用することができるようになる。
【符号の説明】
【0031】
10 シールドケース
11L 左側上板
11R 右側上板
11L1、11R1、12L1、12R1、131、13L1、13R1 折り曲げ部
12L 左側面板
12R 右側面板
13 後方中央上板
13L 左上側面板
13R 右上側面板
14 背面板
14L、14R アース片
15K 係止片
15L、15R ピン端子
16L、16R 係止部
18L、18R 碇状引掛け部
18A 外向きフック付き長尺片
18B 内向きフック付き長尺片
18C スリット
20 コネクタハウジング
21 上面
22L 左側側面
22R 右側側面
24 背面
26 底面
28L、28R シールドケースロック部
30 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上板と前記上板の端部を曲折して形成される左・右側面板とを備えたシールドケースにおいて、前記左・右側面の略中央付近から下辺に向けて切り欠きを形成し、先端にフックを形成しかつ長さ方向中央にスリットを形成して成る長尺片を前記左・右側面板の前記切り欠き内に前記フックが下方に向くように延設したことを特徴とするシールドケース。
【請求項2】
上面と左右両側面と背面と底面と相手方コネクタが嵌合する内部空間に繋がる正面とを備え全体が略直方体形状に樹脂で成形されて成るコネクタハウジングにおいて、前記左右側側面にそれぞれシールドケースロック部を形成し、前記シールドケースロック部が、ブリッジ形状をし、かつ該ブリッジの高さはシールドケースを構成する金属薄板の厚みより若干大きめで、該ブリッジの幅は前記フック付き長尺片の付け根からフックの付け根までの距離より若干短く、また、該ブリッジの橋桁の内側間の長さは前記フック付き長尺片の幅より大きく、前記フックの先端同士の間隔より短いことを特徴とするコネクタハウジング。
【請求項3】
シールドケースと、該シールドケースで被蔽されるコネクタハウジングとから成るコネクタにおいて、前記シールドケースが請求項1記載のシールドケースであり、前記コネクタハウジングが請求項2記載のコネクタハウジングであることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
前記シールドケースが、展開図で背面板と該背面板の両端に延設された左右の側面板と、前記背面板の上に延設された後方中央上板と、前記左右の側面板の上に延設された左右側上板とを備え、かつ前記後方中央上板と前記左右の側面板とをそれぞれ曲折したとき得られる上板に隙間が形成されて成るものであることを特徴とする請求項3記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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