説明

シールドテープ及びケーブル

【課題】シールドテープの遮蔽性を低下させずに、曲げたケーブルのシールドテープに切れや折れを発生させないようにする。
【解決手段】電力ケーブル20は、帯状の導体テープ2をケーブルコア21に螺旋状に巻きつけたものである。複数のスリット3を導体テープ2の長手方向に沿わせて導体テープ2に形成し、スリット3の片側の部分4を隆起させて、スリット3の両側の部分4,5の間に段差を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドテープ及びケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、導体の外側に絶縁層等を同心状に積層してなるケーブルコアの外側に金属遮蔽層を設けたものである。金属遮蔽層は、金属テープを一部重ねるようにして螺旋状にケーブルコアに巻き付けた(いわゆるラップ巻き)ものである。
この電力ケーブルを曲げると、曲げの外側では金属遮蔽層の金属テープに引っ張り応力が加わり、曲げの内側では金属テープに圧縮応力が働くため、曲げ径が小さくなると金属テープに変形が生じる。
特許文献1,2に記載の技術では、電力ケーブルの曲げ性を高めるために、金属テープに多数の透孔又はスリットを形成している。これらの技術は、曲げの外側で、金属テープの透孔やスリットが広がって金属テープに加わる引っ張り応力が緩和されることにより、金属テープの変形を抑制することを狙ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−25425号公報
【特許文献2】特開平9−185913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、金属テープに多数の透孔が形成されているため、電磁遮蔽性が低下してしまう。
また、特許文献2に記載の技術では、電力ケーブルの曲げの内側部分では、スリットの両側の縁部分が互いに突き当たってしまい、その部分で金属テープが折れたり、切れたりしてしまう。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、シールドテープの遮蔽性を低下させずに、曲げたケーブルのシールドテープに切れや折れを発生させないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明に係るシールドテープは、帯状の導体テープの長手方向に沿わせてスリットを形成し、スリットの片側の部分を隆起させて、スリットの両側の部分の間に段差を設けたものである。
【0006】
本発明に係るケーブルは、前記シールドテープをケーブルコアに螺旋状に巻きつけたケーブルである。
【0007】
本発明によれば、スリットの両側の部分の間に段差が設けられているから、ケーブルが曲げられたときの曲げの内側部分で、スリットの両側の部分が突き当たるのを回避できる。すなわち、それら両側の部分は、重なり合うようになる。そのため、シールドテープの切れ・折れ・シワ等が発生しにくい。
また、導体テープに形成されているものはスリットであるから、シールドテープの電磁遮蔽性の低下を招きにくい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シールドテープの電磁遮蔽性が低下しないと共に、曲げたケーブルの曲げの内側部分で、シールドテープの切れ・折れ・シワ等が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るシールドテープを示した斜視図である。
【図2】図1に示されたII−IIに沿った面の矢視断面図である。
【図3】図1に示されたIII−IIIに沿った面の矢視断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るシールドテープを示した斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るシールドテープを示した斜視図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るシールドテープを示した斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る電力ケーブルを一部破断した状態で示した斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る電力ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、シールドテープ1の斜視図である。図2は、図1に示されたII−II線に沿った面の矢視断面図である。図3は、図1に示されたIII−III線に沿った面の矢視断面図である。
【0012】
このシールドテープ1は、導体テープ2に複数のスリット3を形成したものである。
導体テープ2は、金属を帯状に形成したものである。導体テープ2は、銅テープ、軟銅テープ、亜鉛メッキ銅テープ、アルミ箔テープその他の金属テープである。導電テープ2の厚さは、通常0.1mmである。
【0013】
スリット3は、導体テープ2の長手方向に沿って形成されており、好ましくは直線状に形成されている。これらスリット3は、相互に間隔を置いて配列されている。これらスリット3は、導体テープ2の長手方向に沿って2列に配列されている。一方の列のスリット3と、他方の列のスリット3とが互い違いに配置されている。
【0014】
スリット3を挟んだ両側のうち一方の部分4を隆起するように形成し、その一方の部分4と他方の部分5との間に段差が設けられている。この段差の高さαは導体テープ2に幅方向の力が加わったとき、スリット3の両側の端面が突き当たって導体テープ2が屈曲しないような高さにされる。通常、この段差の高さαは、導体テープ2の厚さ以上にされる。また、この段差の高さαは、1mm以下であることが望ましい。段差があまり高いと、シールドテープ1をケーブルコアに巻きにくくなる。
スリット3の片側の部分4が隆起しているので、スリット3が導体テープ2の厚み方向に開いている。何れの隆起部分4も、それぞれのスリット3に関して同じ側にある。
【0015】
なお、図1〜図3に示すシールドテープ1では、一方の列のスリット3と、他方の列のスリット3とが互い違いに配置されているが、図4、図5に示すシールドテープ1A,1Bのように、一方の列のスリット3と、他方の列のスリット3とが揃っていてもよい。図4に示すシールドテープ1Aでは、何れの隆起部分4も、それぞれのスリット3に関して同じ側にある。一方、図5に示すシールドテープ1Bでは、一方の列の何れの隆起部分4もそれぞれのスリット3に関して同じ側にあり、他方の列の隆起部分4もそれぞれのスリット3に関して同じ側にあり、一方の列のスリット3に対する隆起部分4の位置と、一方の列のスリット3に対する隆起部分4の位置とが反対である。
【0016】
また、図1〜図3に示すシールドテープ1では、スリット3の列が2列であったが、図6に示すシールテープ1Cのように、スリット3の列が3列であってもよい。図6に示すシールドテープ1Cでは、中央の列のスリット3と、両側の列のスリット3とが互い違いに配置され、両側の列のスリット3同士が揃っている。
【0017】
図7、図8を参照して、図1に示されたシールドテープ1を用いた電力ケーブル20について説明する。図7は、電力ケーブル20を一部破断した状態で示した斜視図である。図8は、電力ケーブル20の径方向に沿った面の断面図である。
【0018】
この電力ケーブル20は、ケーブルコア21にシールドテープ1をラップ巻きして、更にその外側に不織布テープ26をラップ巻きして、不織布テープ26をシース27によって被覆したものである。ケーブルコア21は、導体22、内部半導電層23、絶縁体層24及び外部半導電層25を有する。
【0019】
中心の導体22は、複数本の素線(例えば、軟銅線)を同心円形に撚り合わせて、それを円形圧縮成形したものである。
【0020】
導体22の外側に内部半導電層23を被覆してあり、内部半導電層23の外側に絶縁体層24を被覆してあり、絶縁体層24の外側に外部半導電層25を被覆してあり、導体22、内部半導電層23、絶縁体層24及び外部半導電層25が同心状に設けられている。ケーブルコア21は、導体22の外周に内部半導電層23、絶縁体層24及び外部半導電層25を同心円状に同時に押し出し成形したものである。絶縁体層24は、例えば、架橋ポリエチレンからなる。内部半導電層23及び外部半導電層25は、半導電性樹脂組成物からなる。
【0021】
導体テープ2は、隆起部分4が外側に隆起するようにして、外部半導電層25の外側に巻き付けてある。
また、導体テープ2は、一部重ねるようにして螺旋状に外部半導電層25の外側に巻き付けてある。具体的には、導体テープ2の縁寄りの部分を重ね、隆起部分4の上に導体テープ2に重ねないようにして、導体テープ2が巻かれている。
【0022】
帯状の不織布テープ26は、一部重ねるようにして螺旋状に導体テープ2の外側に巻き付けてある。なお、不織布テープ26の代わりに、織物テープを外部半導電層25の外側に巻き付けてもよい。
【0023】
この電力ケーブル20を曲げた場合、曲げの外側では、スリット3の片側の隆起部分4が反対側の部分5から離れるようにして、スリット3が拡がる。
【0024】
一方、曲げの内側では、図3中矢印で示すように、スリット3の片側の隆起部分4と反対側の部分5とが動いて、それらの部分4,5が部分的に重なり合う。すなわち、スリット3の片側の隆起部分4が反対側の部分5に突き当たることがない。そのため、そのスリット3の周囲で導体テープ2が折れ曲がったり、切れたりしない。また、スリット3の両側の部分4,5が突き当たらないから、曲げの抵抗にもならず、電力ケーブル20の柔軟性が向上する。
【0025】
大きな穴が導体テープ2に形成されているのではなく、スリット3が導体テープ2に形成されているので、導体テープ2の遮蔽性低下を招かない。
【0026】
なお、図1に示されたシールドテープ1の代わりに、図4、図5又は図6に示されたシールドテープ1A,1B,1Cの何れかを一部重ねるようにして螺旋状にケーブルコア21に巻き付けてもよい。何れの場合でも、隆起部分4を外側にし、隆起部分4の上に導体テープ2を重ねない。
また、上述のケーブルコア21が単心形のケーブルコアであったが、複心形のケーブルコアであってもよい。
【0027】
以上、電力ケーブルについて説明したが、本発明に係るケーブルは制御ケーブルなど他のケーブルであっても良い。制御ケーブルの場合、シールドテープを巻きつけるケーブルコアは、一本又は複数本の信号線となる。
【実施例1】
【0028】
〔試料Aの製造〕
図4に示されたシールドテープ1Aを用いて図7、図8に示す電力ケーブル20を製造した。シールドテープ1Aの導体テープ2を軟銅テープとし、その幅を30mmとし、その厚さを約0.1mmとした。プレス機によって導体テープ2に長さ15mmのスリット3を形成し、スリット3の両側の段差を1mmとした。シールドテープ1Aの各部の具体的な寸法、位置等については図4に示す通りである(単位はmm)。
製造したシールドテープ1Aをケーブルコア21に巻き付けた。ここでシールドテープ1Aの幅の6分の1を重ね合わせるようにして、シールドテープ1Aをケーブルコア21に巻き付ける。ケーブルコア21は、導体22の外周に内部半導電層23、絶縁体層24及び外部半導電層25を同心円状に同時に押し出し成形したものである。そのケーブルコア21の導体22は、直径2.0mmの軟銅線を同心円形に撚り合せ、それを直径9.3mmに円形圧縮したものである。内部半導電層23の厚さは約1.0mmであり、絶縁体層24は架橋ポリエチレン絶縁体からなり、絶縁体層24と内部半導電層23を合わせた厚さは4.0mmであり、外部半導電層25の厚さは約0.7mmである。
巻き付けたシールドテープ1Aの外側に不織布テープ26を巻き付けた。ここで、不織布テープ26の厚さが0.2mmであり、幅が30mmである。不織布テープ26の幅の6分の1を重ね合わせるようにして、不織布テープ26をシールドテープ1Aの外に巻き付ける。
巻き付けた不織布テープ26の上に、PVC(ポリ塩化ビニル)製のシース27を2.0mmの厚さにて、同心円状に押し出し成形した。
シールドテープ1Aを用いて製造した電力ケーブル20を試料Aという。
【0029】
〔試料Bの製造〕
図5に示されたシールドテープ1Bを用いた。シールドテープ1Bの導体テープ2を軟銅テープとし、その幅を30mmとし、その厚さを約0.1mmとした。プレス機によって導体テープ2に長さ15mmのスリット3を形成し、スリット3の両側の段差を1mmとした。シールドテープ1Bの各部の具体的な寸法、位置等については図5に示す通りである(単位はmm)。
製造したシールドテープ1Bを用いて、試料Aの場合と同様に、電力ケーブル20を製造した。シールドテープ1Bを用いて製造した電力ケーブル20を試料Bという。
【0030】
〔試料Cの製造〕
図6に示されたシールドテープ1Cを用いた。そのシールドテープ1Cの導体テープ2を軟銅テープとし、その幅を30mmとし、その厚さを約0.1mmとした。プレス機によって導体テープ2に長さ15mmのスリット3を形成し、スリット3の両側の段差を1mmとした。シールドテープ1Cの各部の具体的な寸法、位置等については図6に示す通りである(単位はmm)。
製造したシールドテープ1Cを用いて、試料Aの場合と同様に、電力ケーブル20を製造した。シールドテープ1Cを用いて製造した電力ケーブル20を試料Cという。
【0031】
〔試料Dの製造〕
幅30mm・厚さ約0.1mmの導体テープにスリット加工(長さ15mm、間隔10mm、2列平行)を形成し、その導体テープを用いて、試料Aの場合と同様に、電力ケーブルを製造した。その導体テープを用いて製造した電力ケーブルを試料Dという。
【0032】
〔シワの有無の確認〕
各試料A、試料B、試料C、試料Dのケーブル自己径に対する各倍率の曲げ径で試料A、試料B、試料C、試料Dを曲げた後に、真っ直ぐに戻し、その後試料A、試料B、試料C、試料Dを解体した。そして、それらを目視にて観察することによって、軟銅テープにシワが発生しているか否かを調べた。その結果を次の表に示す。
なお、表1中の「シワあり」と、「シワなし」は次のように判定した。
「シワあり」:元の形状と比較してスリット周辺に持ち上がるような変形が生じており、その高さが軟銅テープの厚さの2倍以上であった。
「シワなし」:元の形状と比較してスリット周辺に持ち上がるような変形が生じなかった。または、生じていても、その高さは軟銅テープの厚さの2倍未満であった。
【0033】
【表1】

【0034】
表に示すように、スリット3の片側の部分4を隆起させたシールドテープ1A,1B,1Cを用いた試料A、試料B、試料Cは、小さい径に曲げても、軟銅テープである導体テープ2にシワが発生していなかった。一方、単にスリットを形成したのみで、隆起部を形成しないシールドテープを用いた試料D(特許文献2に記載されたケーブルに相当)を小さい径(5倍径)に曲げると、軟銅テープにシワが発生した。
【符号の説明】
【0035】
1,1A,1B,1C シールドテープ
2 導体テープ
3 スリット
4 隆起部分
20 電力ケーブル
21 ケーブルコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の導体テープの長手方向に沿わせてスリットを形成し、スリットの片側の部分を隆起させて、スリットの両側の部分の間に段差を設けたことを特徴とするシールドテープ。
【請求項2】
請求項1のシールドテープをケーブルコアに螺旋状に巻きつけたことを特徴とするケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228031(P2011−228031A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94610(P2010−94610)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】