説明

シールドトンネルの分岐合流施工方法

【課題】シールドトンネルの分岐合流部を築造する際、地上に影響することなく施工することができ、工期が短縮できて施工コストを低減することができ、安全な施工ができるようにする。
【解決手段】本線トンネルのトンネル側部8に分岐線トンネルを接続するシールドトンネルの分岐合流施工方法であって、トンネル側部8近傍のトンネル内部に、切削ブロック6を配置して切削部を形成する切削部形成工程と、分岐線トンネルを、トンネル側部8から切削部内に向けて掘進して、本線トンネル内部に連通させるトンネル連通工程とを備え、本線トンネルに、トンネル幅方向外側へ張り出す拡幅部10Rを形成してから、切削部形成工程、トンネル連通工程を行って、拡幅部10Rとトンネル幅方向の反対側のトンネル側面において本線トンネルと分岐線トンネルとを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの分岐合流施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルの分岐部または合流部は、地上から縦坑を設ける開削工法による施工が広く行われていた。
開削工法によらない施工方法としては、例えば、特許文献1に、幹線トンネルの分岐部または合流部に大断面のトンネルを形成し、この大断面のトンネル内部からセグメントを取り壊しながら分岐(合流)方向に小断面のシールドトンネルを掘進していく施工方法が記載されている。
【特許文献1】特開2001−355385号公報(第3頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来の分岐合流トンネルの施工方法には、以下のような問題があった。開削工法では、地上において施工スペースが必要となり、排出土や施工中の騒音などの環境問題も発生するという問題があった。特に都市部では、このような問題により、周辺住民の理解を得ることが年々難しくなってきており、施工はきわめて困難となっている。また、施工が認可されたとしても、施工時間が制限され、環境対策などに多額の費用がかかることから、施工コストが膨大なものとなるという問題があった。
特許文献1に記載の技術によれば、施工は地下で、シールド工法により行われるので、施工スペースや環境問題が問題となることはないものの、セグメントを取り壊しつつシールド掘進するので、掘進を開始する大断面トンネルの周りを大規模で地盤改良するなどの対策が必要となり、通常のシールド掘進に比べてはるかに大掛かりな施工となり、施工コストが増大するという問題がある。
また既設トンネルの内部から掘進を開始するので、既設トンネル内を施工スペースとして使用する必要があり、例えば、道路トンネルなどでは、活線下での施工が困難であるという問題がある。このため、トンネルの供用後の施工では通行止めが必須となり、その結果、交通事情を悪化させるなどの社会的な影響をもたらすという問題がある。
一方、本線トンネルと分岐トンネルとを、分岐(合流)部の形成予定位置に近接させて並列に形成しておき、それぞれを幅方向に拡幅して接続することも考えられる。この場合には、上記と同じく拡幅時にそれぞれのセグメントをトンネル内から取り壊す必要がある。この施工はシールド掘削機では行えないので、セグメントの外側を広範囲に地盤改良したり、支保工を建て込んだりするなど、大掛かりな施工が発生し、多大な施工コストが発生するという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、シールドトンネルの分岐合流部を築造する際、地上に影響することなく施工することができ、工期が短縮できて施工コストを低減することができ、安全な施工が可能となるシールドトンネルの分岐合流施工方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、第1のシールドトンネルのトンネル側部に第2のシールドトンネルを接続するシールドトンネルの分岐合流施工方法であって、前記トンネル側部近傍のトンネル内部に、シールド掘削機で切削可能な材質からなる切削部材を配置して切削部を形成する切削部形成工程と、前記第2のシールドトンネルを、前記トンネル側部から前記切削部内に向けて掘進して、前記第1のシールドトンネル内部に連通させるトンネル連通工程とを備え、少なくとも該トンネル連通工程を開始する前に、前記第1のシールドトンネルに、トンネル幅方向外側へ張り出す拡幅部を形成し、前記トンネル連通工程で、前記拡幅部または該拡幅部とトンネル幅方向の反対側のトンネル側面において前記第1および第2のシールドトンネルを接続する。
この発明によれば、切削部を第1のシールドトンネルの内側から形成し、第2のシールドトンネルを切削部に掘進させて第1のシールドトンネルに連通させるので、トンネル内での施工となり、トンネル外部の大掛かりな地盤改良などが不要となる。また、シールド掘削機を用いて安全に施工できる。
また、第1のシールドトンネルに、トンネル幅方向に張り出す拡幅部が形成されるので、第2のシールドトンネルが第1のシールドトンネル内に掘進されても、分岐合流部のトンネル幅方向を広く取ることができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のシールドトンネルの分岐合流施工方法において、前記第1のシールドトンネルの分岐合流部の施工をする際に、前記第1のシールドトンネルの幅方向に対して、前記第2のシールドトンネルが接続される側とは反対側に、前記第1のシールドトンネルを掘削するシールド掘削機を拡幅することで拡幅部を形成し、前記シールド掘削機の掘進位置を前記拡幅量に略応じて前記第2のシールドトンネルが接続される側に変位させる。
この発明によれば、シールド掘削機を拡幅して拡幅部を形成し、拡幅量に略応じて拡幅部の反対側に変位させるので、分岐合流部において第1のシールドトンネルの、第2のシールドトンネルと接続しない側の平面視線形を略直線状またはなだらかに連続する線状に維持でき、しかも変位した側に第1のシールドトンネルと第2のシールドトンネルとを接続するためのスペースを形成することができる。その結果、第1シールドトンネル内部の通過物、載置物、設置施設の流れや配置がスムーズとなる。例えば本線道路などを直線的に配置して分岐合流部を形成することができ、トンネル内の車両の流れをスムーズにすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法によれば、シールドトンネルの分岐合流部築造する際、地上に影響することなく施工することができ、工期が短縮できて施工コストを低減することができ、安全な施工ができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。なおすべての図面において、異なる実施形態であっても、同一部材または相当する部材には同一の符号を付し、共通部分の説明は省略する。
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法によって築造されたトンネル分岐合流部1Aの概略構成を説明するための平面概略断面図である。図2(a)、(b)、(c)は、それぞれ図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【0010】
トンネル分岐合流部1Aは、本線トンネル2(第1のシールドトンネル)に対して分岐線トンネル3(第2のシールドトンネル)がY字状に分岐するように接続された道路トンネルの分岐合流部である。
本線トンネル2は、シールド工法によって、地山90内に延設された円管状の本線セグメント2aにより構築された2車線を有するシールドトンネルである。シールド工法は周知の種々の工法を採用でき、本線セグメント2aも、コンクリートセグメント、合成セグメント、鋼製セグメントなどが採用できる。断面形状も、円断面に限るものではないが、本実施例形態では、円断面として説明する。
【0011】
本線トンネル2のトンネル内の下半部には道路支持部2cが設けられ、その上部に本線道路部4が形成されている。本線道路部4の上方のトンネル内は、本線セグメント2aの内部側に設けられた2次覆工2bで覆われており、道路の側壁部や天井などが適宜形成されている。また特に図示しないが、通常道路トンネル内に設置される照明、換気、通信、排水、消火などの設備は適宜設置されているものである。
【0012】
また、本線セグメント2aの外部は、地山90の状態により、必要に応じて適宜の裏込め材が充填されているが、周知のことであるので、図示および説明は省略する。
【0013】
分岐線トンネル3は、本線トンネル2と同様にシールド工法により地山90内に延設されたシールドトンネルであり、本線トンネル2とほぼ同様に分岐線セグメント3a、2次覆工3b、道路支持部3cを備え、道路支持部3cの上部に分岐線道路部5(分岐線部)が形成されている。分岐線道路部5は、本実施形態では1車線である。
分岐線トンネル3は、本線道路部4(本線部)から分かれて別経路をたどる支線でもよいし、本線道路部4への乗り降りをするために地上に連絡する入口ランプまたは出口ランプでもよい。ただし、少なくとも、トンネル分岐合流部1Aの近傍では、本線トンネル2の側部に水平面内で斜め横方向から近接し、トンネル分岐合流部1AでY字状に接続されている。
【0014】
トンネル分岐合流部1Aは、さらに、トンネル接続部10(分岐合流接続部)と加速車線部11(分岐合流拡幅部)とからなる。トンネル分岐合流部1Aは、車線の進行方向により分岐道路にもなれば、合流道路にもなるが、いずれも主たる構成は変わることがないので、便宜上、以下の説明では、図1において、本線道路部4では矢印Lm1、Lm2で示したように図示の左から右に車両が走行し、分岐線道路部5を走行する車両は、矢印Lbで示したように図示の左上から水平方向の右側に走行して、本線道路部4に合流するものとして説明する。
また以下では、説明を簡略化するため、特に断らない限り、トンネルの幅方向左右を矢印Lm1、Lm2、Lbなどで示される車両走行方向に対する左右として表現することにする。例えば、本実施形態では、本線トンネル2の左側のトンネル側部に分岐線トンネル3が接続している。
【0015】
トンネル接続部10は、斜め横方向から近接する分岐線道路部5が、本線道路部4と同じ高さで略平行に並ぶまでの部分であり、セグメントの構成は、本線側セグメント10A、分岐線側セグメント10Bとに分かれている(図2(b)参照)。
本線側セグメント10Aは、本線セグメント2aの右側(分岐線トンネル3と反対側の側部)に、セグメントの円筒面の一部を水平に張り出して拡幅された拡幅部10Rを有している。
分岐線側セグメント10Bは、分岐線セグメント3aを延設して、本線セグメント2aの側部に食い込む側のセグメントを除去したような部分円筒形状を有している。
本線側セグメント10Aと分岐線側セグメント10Bとの接続部は、切削ブロック6が介装されている。そして、トンネル内部には、二股に分かれている本線道路部4と分岐線道路部5とが略平行となって1本化されるように断面形状が徐変される接続部2次覆工10bと道路支持部10cとが形成されている。
【0016】
加速車線部11は、分岐線道路部5を通る車両が、分岐線道路部5から本線道路部4へ車線変更して合流するために設けられているもので、本線道路部4と分岐線道路部5とが同一平面で、分離帯に隔てられることなく並設され、その終端部近傍で分岐線道路部5の道路幅が徐々に削減され、2車線の本線道路部4に統合されるようになっている。
その断面は、図2(c)に示したように、本線セグメント2aと同一の径を有する円筒の幅方向の左右に略対称に設けられた拡幅部10L、10Rを有する拡幅トンネルである。その内部には、2次覆工11b、道路支持部11cが形成され、道路支持部11cの上部に分岐線道路部5、本線道路部4が形成されている。
【0017】
このようなトンネル分岐合流部1Aは、以下に説明する本発明に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法により築造することができる。
本発明に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法は、切削部形成工程とトンネル連通工程とからなる。本実施形態では、トンネル連通工程は、さらに掘進工程と連通部形成工程とからなる。
図3〜5は、本発明の第1の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法の各工程を説明するためのトンネル分岐合流部1Aのトンネル中心を通る平面断面の工程説明図である。図6(a)は図3におけるD−D断面図、図6(b)は図3(b)におけるE−E断面図、図6(c)は図4(d)におけるF−F断面図である。図7は連通部形成工程を説明するためのトンネル幅方向断面図である。
【0018】
切削部形成工程は、分岐線トンネル3が接続する本線トンネル2のトンネル側部8のトンネル内部側に切削部を形成する工程である。本実施形態では、本線トンネル2はシールド掘削機12により掘進する。
シールド掘削機12は、シールドの側部に幅方向の外側に張り出し可能なオーバーカッタ13R(13L)、拡幅部材14R(14L)を備え、これらにより、幅方向に張り出した断面形状で地山90を掘削し、その内面に適宜のセグメントを配置して、拡幅部10R、10Lを有するシールドトンネルを形成することが可能となっている。また、拡幅部10R、10Lの張り出し量は、適宜可変することが可能となっている。このようなシールド掘削機12は、種々の機構により実現されるが、本方法ではどのような機構を有するものを用いてもよい。一例を挙げれば、特開2002−242585公報に記載されているものなどを好適に用いることができる。
【0019】
図3(a)に示したように、本線トンネル2は、図示左側から位置Pまでは円管断面で築造される。そして、位置Pから先は、右側に拡幅部10Rを形成しながら掘進する。そして、掘削断面に合わせて、本線側セグメント10Aを設置し、1次覆工を形成していく。この場合、拡幅部10Rは、徐々に拡幅して所定長さ掘進してから最大の張り出し量となるようにしてもよいし、図3(a)のように位置Pで、一気に拡幅してもよい。
一方、トンネル側部8の内部には、トンネル内部を幅方向に仕切る幅方向仮壁7a(仮設支持部材)を本線側セグメント10Aの上下間に撤去可能に固定し、幅方向仮壁7aと円筒状のスキンプレートとの間に、適宜の大きさに分割された切削ブロック6を隙間なく配置する(密嵌する)。切削ブロック6が弾性を有する場合は、土圧を受けたとき、隙間が閉鎖される程度の隙間で配置する。なお、止水性能を向上するために、切削ブロック6間に適宜の止水材を充填してもよいことは言うまでもない。
【0020】
切削ブロック6は、地山90からの土圧および水圧を保持して泥水がトンネル内に流入しないように止水可能とするのがよく、分岐線トンネル3を掘進するシールド掘削機のカッターによって切削可能な材質から構成されている。例えば、低強度のモルタルブロック、発泡スチロール、合成樹脂などを好適に用いることができる。切削ブロック6の大きさは、作業性などに配慮して適宜の大きさとすることができる。特に発泡スチロールや合成樹脂を採用する場合は、軽量のためブロックを大きくしても作業性がよく、少ないブロック数でスキンプレートと幅方向仮壁7aとの間を埋めることができるから、施工効率が向上するという利点がある。
なお、シールド掘削機12のスキンプレートに近接する切削ブロック6の外周側部は、スキンプレートの内面に沿う形状に加工されている。このため、シールド掘削機12のテールシール(不図示)が切削ブロック6に密着して泥水がシールド掘削機12およびトンネル内に侵入することを防止できるようになっている。
【0021】
幅方向仮壁7aは、切削ブロック6が配置されるまでの間、本線側セグメント10Aにかかる土圧を上下の面内方向で支持し、切削ブロック6を介して面外方向に土圧を支持し、トンネル断面形状を維持する構造部材となっている。そして、切削ブロック6だけで土圧を支持できる状態になったときは、本線トンネル2の内側から撤去することができるものである。例えば、鋼製部材で本線側セグメント10Aにボルト締結するなどの手段を採用できる。
なお、切削ブロック6と幅方向仮壁7aの施工は、シールド掘削機12の施工に伴って行われるが、切削ブロック6の組立配置時に相互に強固に連結でき、分岐線トンネル3のシールド掘削機15による切削時にも、土圧などに抵抗できるようであれば幅方向仮壁7aはなくてもよい。なお、幅方向仮壁7aは仮設支持部材としているように、この機能を有していればよく、本実施形態で壁体としているのはあくまでも一つの例である。
【0022】
そして、切削ブロック6が動かないように保持して、本線側セグメント10Aに反力をとってシールド掘削機12を位置Qまで直進させて掘進する。さらに、位置Qから位置Rまでは、シールド掘削機12の掘進方向をトンネル幅方向の左側に向けて水平斜め方向に掘進する。位置Rからは、シールド掘削機12の方向を転換して本線トンネル2の延設方向と平行な方向に向けて掘進する。このとき、本線セグメント2aの右側の側部と拡幅部10Rの側部とが、図3(b)の平面視でトンネル延設方向の略同一線上に揃うようにする。したがって、シールド掘削機12の中心は、拡幅部10Rの張り出し幅分だけ左側(分岐線トンネル3側)に移動された状態となっている。
【0023】
一方、トンネル接続部10のトンネル内部では、幅方向仮壁7aをトンネル幅方向の右斜めに略直線状に延設していく。この方向は、図中に破線で示した分岐線トンネル3の延設予定方向に沿った方向とする。すなわち、幅方向仮壁7aは、本線トンネル2の内部で幅方向に位置を変え、上下方向にも寸法を変えながらトンネル内部を斜めに横断するように延びる区画壁として構築される。
これを、トンネル幅方向断面で示すと図6(a)になる。図6(a)は、図3(a)のD−D断面図であるが、位置P以降は略同様な位置関係を有している。図中の破線は後で築造される分岐線トンネル3の分岐線セグメント3aの位置を表している。
【0024】
図6(a)に示したように、分岐線トンネル3が築造される範囲には切削ブロック6のみが配置され、本線側セグメント10Aの周方向端部および幅方向仮壁7aは分岐線セグメント3aの予定位置に重ならないように配置されている。すなわち、本線側セグメント10Aの周方向端部は、トンネルの延設方向に沿って分岐線トンネル3を避けた近接位置で止められている。
【0025】
そして掘進を続け、幅方向仮壁7aを延設し、切削ブロック6を配置していくが、分岐線トンネル3を掘進するシールド掘削機15の掘削終了位置Sまで、すなわち拡幅部10Lを張り出す位置まで来たら、切削ブロック6の配置は停止する。そして、切削ブロック6のトンネル内部側の端部を覆うように延設方向仮壁7bを配置し、撤去可能に固定する。このようにして、切削ブロック6は、延設方向仮壁7bと幅方向仮壁7aとにより本線トンネル2の内側から覆われる。
以上で、切削部形成工程が終了する。
【0026】
そして、シールド掘削機12を直進して掘削を続けるが、このときトンネル幅方向の左側に拡幅部10Lを設けるため、シールド掘削機12から、オーバーカッタ13Lを突出させ、拡幅部材14Lを張り出して拡幅セグメント11aを設置する(図3(b)、図6(b)参照)。
拡幅セグメント11aの内部の幅は、適宜の2次覆工を施した上で、本線道路部4と分岐線道路部5とが並設できる広さとする。
【0027】
加速車線部11は、図4(c)に示したように、拡幅部10R、10Lを有する拡幅セグメント11aを図6(b)と同断面で所定長さ延設してから、拡幅部10R、10Lの張り出しを止め、本線トンネル2と同断面に縮径することにより形成する。
そして、後で内部に形成する本線道路部4の直線性を保つため、位置T〜Uの間でシールド掘削機12の方向転換を行い、シールド掘削機12の軸中心をトンネル接続部10の前段の本線トンネル2の中心と一致させる。ただし、本線道路部4を直線にする必要がなければ、このような方向転換を行う必要はない。
【0028】
次に、本実施形態のトンネル連通工程について説明する。
まず、図4(c)に示したように、掘進工程では、分岐線トンネル3を形成するシールド掘削機15を発進させ、所定経路で分岐線トンネル3を形成する。そして、本線トンネル2に近接したところで、地山90とともに、本線トンネル2のトンネル側部8を形成する切削ブロック6を切削しながら、幅方向仮壁7aに沿って本線トンネル2の内部に食い込むように掘進する。
そして、シールド掘削機15のカッターが延設方向仮壁7bに面する状態まで掘進したところで、掘削を終了する。
【0029】
このとき、分岐線トンネル3と本線トンネル2とは、分岐線セグメント3aの右側部、幅方向仮壁7a、それらに挟持された切削ブロック6の残存部、延設方向仮壁7bにより隔壁状に隔てられている(図6(c)参照)。切削ブロック6は、地山90に面する部分はごくわずかになっている。実際には、セグメント近傍を安定させるための裏込め材などにより、補強され、外側から止水もされている。そこで、ほとんどすべての土圧は、地山90に面している分岐線セグメント3aと、本線側セグメント10Aにより支持されている。
【0030】
次に、連通部形成工程により、分岐線トンネル3、本線トンネル2をトンネル幅方向に連通させる。
図7(d)、(e)、(f)は、その詳細の工程を説明するために、図4(d)のF−F断面での施工の様子を示す概略説明図である。
まず、本線側セグメント10A、分岐線セグメント3aを上下方向に支持するための支柱16、17(支保工)をそれぞれのトンネル内部に適宜間隔で立設する(図7(d))。その状態で、本線トンネル2の内部側から幅方向仮壁7aを撤去し、同時に切削ブロック6に面している部分の分岐線セグメント3aの一部を分岐線トンネル3側から取り外し、右側側部が開いた分岐線側セグメント10Bを形成する。
そして、支柱16、17を残したまま、切削ブロック6の一部を撤去して、本線トンネル2と分岐線トンネル3とをトンネルの幅方向に連通させる。このようにして、本線側セグメント10Aと分岐線側セグメント10Bにより、1次覆工されたトンネル接続部10が形成される。
【0031】
次に、図7(e)に示したように、支柱16、17を巻き込んでトンネル内部下方に本線トンネル2と分岐線トンネル3とにまたがる道路支持部10c(下部支持部)を形成し、道路支持部10cを上方から覆うとともに本線トンネル2と分岐線トンネル3とにまたがる接続部2次覆工10bをトンネル内部の上方に形成する。この接続部2次覆工10bにより、分岐線側セグメント10Bと本線側セグメント10Aとの間に切削ブロック6が介装された比較的脆弱な部分の恒久的な止水と補強が達成される。
そして、図7(f)に示したように、接続部2次覆工10bと道路支持部10cとの間の不要になった支柱16、17を撤去し、道路支持部10c上に本線道路部4および分岐線道路部5を形成する。
なお、前記連通部形成工程においては、本線トンネルと分岐線トンネルで本線側セグメントと分岐線セグメントをそれぞれ支持する支保工を立設し、仮壁の撤去を行うとともに分岐線トンネル側から分岐線セグメントの一部を取り外し、切削ブロックの一部を撤去し、支保工を巻き込んで道路支持部を形成し、同様に支保工を巻き込んで2次覆工を形成した後、道路支持部と2次覆工で囲まれる空間に残存する不要になった支保工を撤去する工程である。これを、本線トンネルと分岐線トンネルの中で、まず道路支持部と2次覆工を形成できる範囲内でできる限り形成し、本線側セグメントと分岐線セグメントをそれぞれ支持できるように、道路支持部と2次覆工を介在して支保工を分割立設し、その後仮壁の撤去を行うとともに分岐線トンネル側から分岐線セグメントの一部を取り外し、切削ブロックの一部を撤去し、そして、残部の道路支持部と2次覆工を形成して左右に分割施工した道路支持部と2次覆工を一体とし、最後に道路支持部と2次覆工で囲まれる空間に残存する不要になった支保工を撤去する工程としてもよい。
以上により連通部形成工程が終了する。
【0032】
また、加速車線部11は、通常の拡幅トンネルと同様に道路支持部10c、接続部2次覆工10bを形成し、本線道路部4、分岐線道路部5をトンネル接続部10から延長し、分岐線道路部5を本線道路部4に吸収して、車線幅を2車線に戻すことにより形成される。
【0033】
以上に説明した工程を順次実施することによって、分岐線トンネル3が本線トンネル2にY字に接続し、トンネル接続部10、加速車線部11を備えたトンネル分岐合流部1A(図1)を築造することができる。
本実施形態によれば、切削部を本線トンネルの内側に設け、分岐線トンネルを形成するシールド掘削機で切削部を切削し、それぞれのトンネルのセグメントによりトンネル接続部のセグメントを形成した後に、トンネル内部を連通するので、トンネル内部の作業によりトンネル接続部を形成することができるという利点がある。
したがって、地上部まで施工の影響が及ぶことがなく、またトンネルの周囲に大掛かりな地盤改良を施したりする必要もないので、施工コストや施工工期を低減することができ、またきわめて安全に施工することができるという利点がある。
【0034】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施の形態について説明する。
本実施形態は、本線トンネルをいったん供用可能な状態まで完成させた後、分岐線トンネルを築造して本線トンネルに接続する点が第1の実施形態と大きく異なる。したがって、多くの工程は共通なので、以下では第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法によって築造されたトンネル分岐合流部1Bの概略構成を説明するための平面概略断面図である。図9(a)、(b)、(c)は、それぞれ図8におけるG−G断面図、H−H断面図、I−I断面図である。
【0035】
トンネル分岐合流部1Bは、既設本線トンネル20に分岐線トンネル3がY字状に接続された道路トンネルの分岐合流部である。トンネル分岐合流部1Bは、トンネル接続部10および加速車線部11からなる。
なお、第1の実施形態と同様の理由により、図8において、本線道路部4では矢印Lm1、Lm2、Lm3で示したように図示の左から右に車両が走行し、分岐線道路部5を走行する車両は、矢印Lbで示したように図示の左上から水平方向の右側に走行して、本線道路部4に合流するものとして説明する。
また特に断らない限り、トンネルの幅方向左右を矢印Lm1、Lm2、Lm3、Lbなどで示される車両走行方向に対する左右として表現することも、上記と同様である。
既設本線トンネル20の構成は、トンネル分岐合流部1Aと大略同様であるが、詳しい構成は、各工程の説明の中で説明する。なお、図8では、本線道路部4の車線数が3車線の場合について図示したが、これは、一例であって、施工時の道路供用を可能とするためには、2車線以上あればよい。
【0036】
図10、11は、本発明の第2の実施形態に係るシールドトンネル分岐合流方法の各工程を説明するためのトンネル分岐合流部1Bのトンネル中心を通る平面断面の工程説明図である。図12(a)は図10(a)におけるJ−J断面図、図12(b)は図10(b)におけるK−K断面図、図12(c)は図11(d)におけるL−L断面図である。図13(d)、(e)は、連通部形成工程におけるトンネル幅方向断面の様子を示す説明図である。
本実施形態における工程は、切削部形成工程、掘進工程および連通部形成工程とからなる。後者の2工程はトンネル連通工程をなしている。
【0037】
切削部形成工程は、分岐線トンネル3が接続する既設本線トンネル20のトンネル側部24のトンネル内部側に切削部を形成する工程である。工程の具体的な説明に先立って、本実施形態における既設本線トンネル20の構成を説明する。
既設本線トンネル20は、図9(a)に示したように、全体としては円管状の本線セグメント2aによって構築され、道路支持部2c上に、例えば3車線からなる直線状の複数車線を有する道路トンネルである。そして、トンネル分岐合流部1Bの築造が予定されている部分には、接続用拡幅部30(分岐合流接続部)、路幅拡張用拡幅部31(分岐合流拡幅部)が連続して設けられ、分岐線トンネル3を接続する本線道路部4(本線部)の左横方向に接続スペース18、合流車線スペース19がそれぞれ設けられている(図10(a)参照)。
【0038】
接続用拡幅部30は、図12(a)に示したように、トンネルの幅方向の右側に拡幅部10Rが形成された断面を有する。そして、幅方向左側のトンネル側部24に切削可能なセグメント21が円弧状に配置され、それ以外の断面外周部が本線側セグメント10Aによって覆われている。それらの内面には、本線道路部4を供用するために必要な2次覆工11bが施されている。
切削可能なセグメント21の配置位置は、少なくとも破線で示した分岐線セグメント3aの予定配置位置で囲まれる部分と重なり、その外側にはみ出すように設定される。
【0039】
切削可能なセグメント21は、主要形状が円管部の本線側セグメント10Aと同様な構成を備え、配置と接合の互換性を有するセグメントであり、分岐線トンネル3を築造するシールド掘削機15のカッターによって切削可能な材質により構成されている。
このような切削可能材として、例えば、鉄筋の代わりにグラスファイバーや炭素繊維などの非金属の強化繊維を配設、配合したコンクリートセグメントなどを採用することができる。また、合成セグメントの鋼板部を強化繊維を配合した合成樹脂に置き換えてコンクリートを充填した合成セグメントなども採用することができる。
なお、切削可能なセグメント21を接合する接合継手も、シールド掘削機15により切削可能な材質、例えば合成樹脂などを用いることは言うまでもない。
【0040】
路幅拡張用拡幅部31は、合流車線スペース19に分岐線道路部5を形成したときに図9(c)のようになる拡幅トンネルで、シールド掘削機12により、幅方向の左右に拡幅部10R、10Lを形成して築造される。また、内面には、本線道路部4を供用するために必要な2次覆工11bが施されている。
このように、既設本線トンネル20におけるトンネル分岐合流部1Bの施工は、前記第1の実施形態に対して切削部形成工程が異なるが、前記第1の実施形態の本線トンネル2に使う両側部が拡幅するシールド掘削機12と、ほぼ同様なシールド掘削機を使うものであり、分岐合流部における前記シールド掘削機12を使った掘削施工方法として以下の点が共通する。通常の本線トンネルを掘削してきて分岐合流部の分岐合流接続部に到達したら、分岐線トンネル3が接続する側とは反対側を拡幅し、掘削に伴って方向転換をすることで、掘進位置を分岐線トンネル3が接続される側に変位させ、分岐合流拡幅部に到達したら、分岐線トンネルが接続する側も拡幅させて、その変位を維持しつつ掘削し、分岐合流拡幅部の終点に到達する前に、シールド掘削機を再び反対方向に変位させて本線トンネル位置に戻し、その後縮幅して通常の本線トンネルを掘削施工するものである。
なお、本実施形態では拡幅を一度に行っているが、徐々にあるいは段階的に行ってもよい。
【0041】
切削部の形成にあたっては、本線道路部4の3車線から2車線の通行車線4aに規制して、左側の1車線分を空きスペースとする。そして、図10(b)に示したように、接続用拡幅部30の切削可能なセグメント21の近傍を覆うように幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bを撤去可能に立設し、切削可能なセグメント21の内面を覆う切削部材充填スペースを設ける。
そして、切削部材充填スペースに、硬化後にシールド掘削機15で切削可能な切削部材となるセメント硬化材22を充填し、硬化させる(図12(b)参照)。セメント硬化材22は、土砂にセメントと水を混合したものやモルタルなどが採用できる。
【0042】
このようにして、トンネル側部24のトンネル内部側に切削可能なセグメント21、セメント硬化材22、幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bからなる切削部が形成される。
本工程においては、既設本線トンネル20が完成された段階でトンネルの内側から切削部を形成するから、幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bの設置作業を、安全かつ容易に行うことができるという利点がある。
【0043】
次に掘進工程では、図11(c)、(d)に示したように、シールド掘削機15を掘進して分岐線トンネル3を形成する。接続用拡幅部30では、トンネル側部24をなす切削可能なセグメント21からセメント硬化材22内に向かって斜めに食い込むように掘進し、徐々にシールド掘削機15の進行方向を変えて、幅方向仮壁7aに沿う方向に進み、図11(c)の位置Vにある一方の延設方向仮壁7bの近傍まで掘進し、シールド掘削機15を停止する。
本工程では、一切の施工は、幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bの地山90側で行われ、これらの仮壁が隔壁となっているので、既設本線トンネル20の内部には施工の影響が生じない。したがって、既設本線トンネル20の内部では、施工中でも安全な車両通行が可能となるという利点がある。
【0044】
次に連結部形成工程では、分岐線トンネル3および既設本線トンネル20の内部での施工作業が発生するので、交通規制を行いながら施工する。施工は、第1の実施形態における連結部形成工程と同様である。すなわち、本線側セグメント10A、分岐線トンネル3の内部の上下に、支柱16、17を立設して地山90からの土圧を支持する(図12(c)参照)。そして、それぞれのトンネル内部から幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bと分岐線セグメント3aを撤去するとともに、必要に応じて道路支持部10cを構築し、その後、トンネル内部に幅方向にまたがる接続部2次覆工10bを構築する(図13(d)参照)。それから、支柱16、17を撤去し、接続用拡幅部30内での本線道路部4を修復して3車線を復活させる。そして分岐線道路部5の合流部を形成する。
また路幅拡張用拡幅部31では、合流車線スペース19に分岐線道路部5を延設する。
このようにして、トンネル内部に、図8に示したトンネル接続部10、加速車線部11を構築する。
【0045】
本実施形態によれば、分岐線トンネル3との接続予定部分に切削可能なセグメント21を配して既設本線トンネル20を築造することにより、既設本線トンネル20の内部から安全かつ容易に切削部が形成できるという利点がある。しかも、既設本線トンネル20を供用しながら、分岐線トンネル3の掘進工程を行うことができ、施工時の通行規制期間を大幅に短縮することができるという利点がある。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本変形例は、既設本線トンネル20にあらかじめ切削可能なセグメント21が構築できない場合にも切削部形成工程を行うことができるようにする方法である。
図14(a)、(b)に示したのは、本変形例の切削部形成工程を説明するためのトンネル幅方向の断面図であり、図10(b)のK−K断面に相当する位置の断面図である。
本変形例における既設本線トンネル20は、トンネル側部24がシールド掘削機15のカッターでは切削できない本線側セグメント10Aにより覆われている。そこで本変形例では、トンネル側部24における本線側セグメント10Aを取り外して切削可能な切削部材に置き換えることにより切削部を形成する。
【0047】
図14(a)に示したように、まず、トンネル側部24の外部がセグメントを取り外しても一時的に地山を自立させることができるように、トンネル側部24を覆う所定範囲を地盤改良して補強地盤部23を形成する。
さらに、トンネル側部24の内部を覆うような切削部の形成と、セグメントにかかる土圧を受けるために、既設本線トンネル20の内部に幅方向仮壁7aを撤去可能に固定し、本線側セグメント10Aを上下方向に支持する。そして、トンネル内部からトンネル側部24における本線側セグメント10Aを撤去する。
そして、延設方向仮壁7bを撤去可能に固定し、幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bにより本線側セグメント10Aを撤去した部分がトンネル内部から覆うことにより、補強地盤部23と幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bとで囲まれる切削部材充填スペースを設ける。そして、切削部材充填スペースにセメント硬化材22を充填し、硬化させる。このようにして切削部を形成する。
【0048】
本変形例では、補強地盤部23は、セメント硬化材22が切削部材充填スペースに充填されるまでの間、一時的に地山が自立できればよく、恒久的な補強は必要なく、補強範囲もトンネル側部24の近傍の範囲で済むという利点がある。
【0049】
なお、上記の変形例の説明では、補強地盤部23を形成してから本線側セグメント10Aを取り外すとして説明したが、補強地盤部23をトンネル延設方向に向けて段階的に形成し、補強地盤部23が形成された部分の本線側セグメント10Aを取り外し、幅方向仮壁7aと補強地盤部23との間にトンネル幅方向に仮設型枠板を設けてセメント硬化材22を充填し、これらの工程を繰り返して切削部を構築してもよい。このようにすれば、補強地盤部23を比較的低強度に形成しても安全に施工できるので、地盤改良をより小規模のものとすることができるという利点がある。
【0050】
なお、上記の第1の実施形態の説明では、切削ブロック6として、ブロック状に加工した部材の例で説明したが、シールド機内でシールド掘削機12の掘進長さごとに配置することができれば、固体ブロックでなくともよい。例えば、幅方向仮壁7aに袋を設けておき、袋内にセメント硬化材22を充填することにより、ブロック状に硬化させたものでもよい。
袋材としては、例えばグラスファイバーを含む化学繊維や、塩化ビニールなどの合成樹脂材料を母材としたものを好適に用いることができる。
【0051】
また、上記の第2の実施形態の説明では、切削部材としてセメント硬化材22を用いる例で説明したが、第1の実施形態と同様に、切削ブロック6を配置してもよい。ただし、上記に説明した順序とは異なり、幅方向仮壁7a、延設方向仮壁7bで切削可能なセグメント21を取り囲んで切削部充填スペースを形成する前に、切削ブロック6の搬入口を幅方向仮壁7aに設けて切削ブロック6を配置するか、または切削ブロック6を配置しながら幅方向仮壁7aを固定する。
【0052】
また、上記の第2の実施形態の説明では、主として接続用拡幅部30によりトンネル接続部10を形成し、路幅拡張用拡幅部31により加速車線部11を形成する例で説明したが、路幅拡張用拡幅部31をさらに短縮するか、またはまったく設けず、接続用拡幅部30を加速車線部11の範囲まで延長し、加速車線部11の範囲まで分岐線トンネル3を掘進して、加速車線部11を形成するための拡幅トンネルを形成してもよい。
このように本発明のシールドトンネルの分岐合流施工方法は、既設シールドトンネルの拡幅を行うための施工方法としても用いることができる。その場合でも、上記に説明した作用効果を同様に有している。特に、施工期間の大部分にわたって既設道路トンネルを供用することができるという優れた利点がある。
【0053】
また、上記の第1および第2の実施形態の説明を通じて、本線トンネル2の幅方向右側に拡幅部10Rを設けた例で説明したが、分岐線トンネル3が接続する本線トンネル2の幅方向左側に拡幅部10Lを設けてもよい。ちなみに、前記第1および第2の実施形態では、トンネル分岐合流部1Aの加速車線部11(分岐合流拡幅部)やトンネル分岐合流部1Bの路幅拡張用拡幅部31(分岐合流拡幅部)の右側部と分岐合流前の本線トンネルの右側部は、図1、10の平面視で一つの直線上にある。つまり右側拡幅部を設ける分岐合流部の施工で、本線トンネルの中心を左側(分岐線トンネルが接続される側)に変位させることでこのような線形にしている。なお、この線形は、直線に限らず曲線であってもよい。要するにこれらの右側部の線形が一つの略なだらかな線に連なるようになっていればよい。この結果、本線道路部4(本線部)の線形を分岐合流部で特に変えないので、完成後の本線部の通行がスムーズになる。用途が道路トンネルでなく、鉄道、下水、共同溝であっても、同様に本線を通過あるいは載置される物体の流れや配置がスムーズになる。また、トンネル分岐合流部1Aの加速車線部11やトンネル分岐合流部1Bの路幅拡張用拡幅部31では、左側にも拡幅部を設けている。この部分は断面一体の一つの拡幅トンネルとして施工する部分であり、拡幅部を片側だけにするよりも左右両方に設けることにした方が拡幅量が均等化されるので、同じ拡幅量であればシールド掘削機の製作コストや全体の施工コストが低減できる。
また、拡幅部10R、10Lの断面形状は、一例であって、上記説明の形状に限るものでないことは言うまでもない。
【0054】
また、上記の第1および第2の実施形態の説明では、本線トンネルに分岐線トンネルがY字状に接続する例で説明したが、複数のトンネルが、例えば、T字状、十字状に接続するものであってもよい。これらの接続形態によれば、道路トンネルの場合、道路交差部を形成することになる。
また、このような接続形態において、接続角度が90度に近い場合、シールドトンネルに拡幅部を設けることは必須ではない。
【0055】
また、上記の第1および第2の実施形態の説明では、トンネル連通工程を掘進工程と連通部形成工程に分割して行う例で説明した。このように施工すれば、安全性が高いので好ましいが、強度上、そのまま掘進してもトンネル内の安全が維持されるならば、シールド掘削機で延設方向に連通させ、その後必要に応じてトンネル幅方向の連通部形成を行うようにしてもよい。
【0056】
また、上記の第1および第2の実施形態の説明では、接続される2つのシールドトンネルの内径が異なり、本線道路への分岐線道路からの合流部またはその逆の分岐部を形成する例で説明したが、本発明は、シールドトンネルを交差して接続する一般的な分岐合流施工方法として用いることができ、これ以外の用途にも活用できることは言うまでもない。例えば、内径が同一のシールドトンネル同士の接続に用いてもよい。また、シールドトンネルは道路トンネルとは限らず、例えば、鉄道トンネルでもよいし、流体管路として用いるものであってもよい。
【0057】
また、上記の第1および第2の実施形態の説明では、便宜上シールド掘削機12、15の掘進方向を限定して説明したが、いずれかまたは両方を逆進させて施工することも可能である。その場合、若干の工程順序を変更する必要があるが、当業者には容易に理解されるので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法によって築造されたトンネル分岐合流部の概略構成を説明するための平面概略断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法の各工程を説明するためのトンネル分岐合流部のトンネル中心を通る平面断面の工程説明図である。
【図4】同じく、図3に続く各工程を説明するための工程説明図である。
【図5】同じく、図4に続く各工程を説明するための工程説明図である。
【図6】図3(a)におけるD−D断面図、図3(b)におけるE−E断面図、および図4(d)におけるF−F断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る連通部形成工程を説明するためのトンネルの幅方向断面の概略説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るシールドトンネルの分岐合流施工方法によって築造されたトンネル分岐合流部の概略構成を説明するための平面概略断面図である。
【図9】図8におけるG−G断面図、H−H断面図、I−I断面図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るシールドトンネル分岐合流方法の各工程を説明するためのトンネル分岐合流部のトンネル中心を通る平面断面の工程説明図である。
【図11】同じく、図10に続く各工程を説明するための工程説明図である。
【図12】図10(a)におけるJ−J断面図、図10(b)におけるK−K断面図、図11(d)におけるL−L断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る連通部形成工程におけるトンネル幅方向断面の様子を示す説明図である。
【図14】本発明の第2の実施形態に係る変形例の切削部形成工程を説明するためのトンネル幅方向の断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 トンネル分岐合流部
2 本線トンネル(第1のシールドトンネル)
2a 本線セグメント
3 分岐線トンネル(第2のシールドトンネル)
3a 分岐線セグメント
4 本線道路部(本線部)
4a 通行車線
5 分岐線道路部(分岐線部)
6 切削ブロック(切削部材)
7a 幅方向仮壁(仮設支持部材)
7b 延設方向仮壁(仮設支持部材)
8、24 トンネル側部
10 トンネル接続部(分岐合流接続部)
10b 接続部2次覆工
10A 本線側セグメント
10B 分岐線側セグメント
10R、10L 拡幅部
11 加速車線部(分岐合流拡幅部)
12、15 シールド掘削機
16、17 支柱(支保工)
20 既設本線トンネル(第1のシールドトンネル)
21 切削可能なセグメント
22 セメント硬化材(切削部材)
23 補強地盤部
30 接続用拡幅部(分岐合流接続部)
31 路幅拡張用拡幅部(分岐合流拡幅部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシールドトンネルのトンネル側部に第2のシールドトンネルを接続するシールドトンネルの分岐合流施工方法であって、
前記トンネル側部近傍のトンネル内部に、シールド掘削機で切削可能な材質からなる切削部材を配置して切削部を形成する切削部形成工程と、
前記第2のシールドトンネルを、前記トンネル側部から前記切削部内に向けて掘進して、前記第1のシールドトンネル内部に連通させるトンネル連通工程とを備え、
少なくとも該トンネル連通工程を開始する前に、前記第1のシールドトンネルに、トンネル幅方向外側へ張り出す拡幅部を形成し、
前記トンネル連通工程で、前記拡幅部または該拡幅部とトンネル幅方向の反対側のトンネル側面において前記第1および第2のシールドトンネルを接続することを特徴とするシールドトンネルの分岐合流施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドトンネルの分岐合流施工方法において、
前記第1のシールドトンネルの分岐合流部の施工をする際に、前記第1のシールドトンネルの幅方向に対して、前記第2のシールドトンネルが接続される側とは反対側に、前記第1のシールドトンネルを掘削するシールド掘削機を拡幅することで拡幅部を形成し、前記シールド掘削機の掘進位置を前記拡幅量に略応じて前記第2のシールドトンネルが接続される側に変位させることを特徴とするシールドトンネル分岐合流施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−312876(P2006−312876A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228891(P2006−228891)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【分割の表示】特願2002−381087(P2002−381087)の分割
【原出願日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】