説明

シールドトンネルの拡幅方法

【課題】直上の地上の開削工事なしで、本線シールドトンネルとランプシールドトンネルとの分岐合流部を構築可能なシールドトンネルの拡幅方法を提供する。
【解決手段】ランプシールドトンネル5から、本線シールドトンネル3に近づく方向へ子シールドトンネル7を構築する。本線シールドトンネル3、ランプシールドトンネル5、子シールドトンネル7から、上方向と下方向の両方に薬液注入などの地盤改良を行い、改良体11を構築して閉空間12を形成し、土留めおよび止水を行う。その後、閉空間12内を掘削し、本線シールドトンネルの拡幅工事を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐合流部の形成に適したシールドトンネルの拡幅方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本線シールドトンネルとランプシールドトンネルの分岐合流部を形成する方法としては、地上からトンネル接続部付近まで薬液注入管を伸ばして地盤改良を行い、拡幅工事を行う方法や、地上を開削し、立坑をシールドトンネルまで下ろしてトンネル同士を接続する方法が行われていた。
【0003】
また、シールドトンネルの拡幅対象部位の山留め方法として、シールドトンネルの延長方向に沿って、作業基地として用いるパイロットシールドトンネルを構築し、作業基地より山留め構築材をシールドトンネルの拡幅対象部位を囲む位置に送り出すことが、開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−336854号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の方法においては、開削して立坑を形成する、注入管を延ばすなどの地上からの作業が必要であり、地上部に作業基地が設置できる位置にしかトンネルの分岐合流部を構築できなかった。また、用地買収に多大なコストが必要であった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは直上の地上からの開削工事なしでのトンネルの分岐合流部の構築を可能にする、シールドトンネルの拡幅方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、本線シールドトンネルと、ランプシールドトンネルとを連結する、シールドトンネルの拡幅方法であって、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルから改良体を構築し、前記改良体で囲まれた閉空間を形成する工程(a)と、前記閉空間内で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルを連結する工程(b)と、を具備することを特徴とするシールドトンネルの拡幅方法である。
【0008】
また、前記工程(a)で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネル上方向に改良体が構築され、前記改良体で前記閉空間が形成されることが望ましく、前記工程(a)で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルから不透水層に達するまでトンネル下方向に改良体が構築され、前記改良体と前記不透水層で前記閉空間が形成されることが望ましい。
【0009】
また、前記工程(a)で、前記ランプシールドトンネルの先端部から子シールドトンネルが構築され、または前記本線シールドトンネルの側面から子シールドトンネルが構築され、前記子シールドトンネルから、改良体が構築されて、前記閉鎖空間が形成されることが望ましい。
【0010】
また、前記工程(a)で、地盤への薬液の注入または地盤の凍結により、改良体が構築されることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直上の地上部からの開削をせずにトンネルの分岐合流部を形成可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は第1の実施形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の各工程におけるシールドトンネルの正面図、図2は各工程におけるシールドトンネルの平面図、図3はシールドトンネルのA−A断面図、図4はシールドトンネルのD−D断面図、図5は拡幅後のシールドトンネルの断面図である。
【0013】
図1(a)、図2(a)に示すように、地表1の地下に、シールド機により本線シールドトンネル3を構築する。
【0014】
次に、図1(b)、図2(b)に示すように、地表1から、ランプシールドトンネル5を構築する。ランプシールドトンネル5は、地表1のランプ建設予定地に開削孔を設け、開削孔内でシールド機を組み立て、シールド機により構築する。図3(a)は、図2(b)におけるA−A断面図である。
【0015】
次に、図2(c)に示すように、ランプシールドトンネル5より、一回り小さいシールド機が発進し、子シールドトンネル7を構築する。図4(a)は、図2(c)におけるD−D断面図である。
【0016】
図2(c)に示すように、子シールドトンネル7を、水平方向に本線シールドトンネル3に近づくほど、図4(a)に示すように、鉛直方向に地表1に近づくように、構築する。
【0017】
ランプシールドトンネル5を構築するシールド機は、小口径の子シールド機を内蔵した大口径の親子シールド機であって、ランプシールドトンネル5の構築を終了した後、そこから子シールド機をトンネル軸方向に発進して子シールドトンネル7を構築する親子シールド機であることが好ましい。
【0018】
次に、図2(d)に示すように、本線シールドトンネル3、ランプシールドトンネル5、子シールドトンネル7から、下方および上方に地盤改良を行い、改良体11を構築する。図2(d)においては、上方の改良体11は図示していない。図3(b)に改良体11を構築した後の図2(d)のA−A断面図を、図4(b)に図2(d)のD−D断面図を示す。
【0019】
図3(b)に示すように、本線シールドトンネル3から、地表方向かつランプシールドトンネル5方向へ薬液を注入して改良体11−2を構築し、地下方向に薬液を注入して改良体11−4を構築する。同様に、ランプシールドトンネル5から、地表方向かつ本線シールドトンネル3方向へ薬液を注入して改良体11−1を構築し、地下方向に薬液を注入して改良体11−3を構築し、地盤改良を行う。
【0020】
図4(b)に示すように、本線シールドトンネル3から地表方向へ薬液を注入して改良体11−14を構築し、地下方向に薬液を注入して改良体11−16を構築する。同様に、子シールドトンネル7から、本線シールドトンネル3方向へ薬液を注入して改良体11−13を構築し、地下方向に薬液を注入して改良体11−15を構築し、地盤改良を行う。
【0021】
改良体11−1、11−2、11−13、11−14は、上部地盤が軟弱な場合に構築され、改良体11−1および11−2ならびに改良体11−13および11−14の尻部は重複し、改良体の隙間から地下水が漏出しないようにすることが好ましい。
【0022】
改良体11−3、11−4、11−15、11−16は、地盤の不透水層13まで達するように構築する。
【0023】
図3(b)に示すように、本線シールドトンネル3とランプシールドトンネル5の上部は改良体11−1、改良体11−2に、下部は改良体11−3、改良体11−4、不透水層13に囲まれ、閉空間12を形成する。トンネルの拡幅を行う際、閉空間12の上部は、改良体11-1、改良体11-2が、地下水の浸入と地盤の崩壊を防ぎ、止水効果と土留め効果を有する。また、閉空間12の下部は、改良体11-3、改良体11−4、不透水層13が閉空間12を形成し、地下水の侵入を防ぐ止水効果を主に有する。
【0024】
図4(b)においても、図3(b)と同様に、改良体11−13、改良体11−14、本線シールドトンネル3、子シールドトンネル7、改良体11−15、改良体11-16、不透水層13が閉空間12を形成し、土留め効果と止水効果を有する。
【0025】
図2(d)において、改良体11で囲まれた範囲内は、すべて閉空間12となり、改良体11の土留め効果、止水効果により、閉空間12内において掘削工事を行うことができる。
【0026】
薬液注入ではなく、凍結液の注入により地盤を凍結させ、改良体11を構築してもよい。
【0027】
次に、図2(e)に示すように、拡幅部17を形成し、分岐合流部を構築する。図2(e)における、A−A断面図を図5(a)に、B−B断面図を図5(b)に、C−C断面図を図5(c)に、D−D断面図を図5(d)に示す。
【0028】
図5(a)に示すように、A−A断面においては、改良体11−1、11−2、11−3、11−4および不透水層13により止水と土留めされた閉空間12において、本線シールドトンネル3とランプシールドトンネル5の、一部のセグメントをはずし、拡幅予定部を掘削し、上下にコンクリートを打設し、拡幅部17を形成する。拡幅部17の上下をアーチ状にし、中柱15を鉛直方向に設けることで、拡幅部17が土圧に耐えられるようになっている。また、ランプシールドトンネル5の残ったセグメント部分もコンクリートにより補強される。
【0029】
図5(b)に示すように、B−B断面においては、改良体11−5、11−6、11−7、11−8および不透水層13により止水と土留めされた閉空間12において、本線シールドトンネル3とランプシールドトンネル5の一部のセグメントをはずし、拡幅予定部を掘削し、上下にコンクリートを打設し、拡幅部17を形成する。拡幅部17の上下をアーチ状にすることで、拡幅部17が土圧に耐えられる。また、本線シールドトンネル3およびランプシールドトンネル5の内部もコンクリートにより補強されている。
【0030】
図5(c)に示すように、C−C断面においては、改良体11−9、11−10、11−11、11−12および不透水層13により止水と土留めされた閉空間12において、本線シールドトンネル3の側面のセグメントをはずし、拡幅予定部を掘削しコンクリートを打設し、拡幅部17を形成する。
【0031】
図5(d)に示すように、D−D断面においては、改良体11−13、11−14、11−15、11−16および不透水層13により止水と土留めされた閉空間12において、本線シールドトンネル3の側面のセグメントをはずし、拡幅予定部を掘削しコンクリートを打設し、拡幅部17を形成する。
【0032】
このようにして、直上の地上部からの掘削なしで、本線シールドトンネル3と、ランプシールドトンネル5との分岐合流部を形成する。
【0033】
なお、改良体11−1、11−5、11−9、11−13は連結して、壁体を形成し、11−2、11−6、11−10、11−14と、11−3、11−7、11−11、11−15および、11−4、11-8、11-12、11-16も連結して壁体を形成する。
【0034】
第1の実施の形態は、本線シールドトンネル3の構築後、比較的早めに地上よりランプシールドトンネル5が到達する場合、有効である。
【0035】
第1の実施の形態によれば、ランプシールドトンネル5用のシールド機が発進するための、ランプ建設地を確保すればよく、分岐合流部の直上に地上部を確保する必要がない。そのため、分岐合流部の位置を自由に設定可能である。
【0036】
また、第1の実施の形態によれば、確保が必要な地上部の面積が減るだけでなく、子シールドトンネルを用いることで、従来に比べて分岐合流部を建設するための地下構造体の占有面積を少なくすることが可能であり、トンネル施工コストの低減が可能である。
【0037】
このことを、図2(c)を用いて説明する。ランプシールドトンネル5から、子シールドトンネル7を構築するため、子シールドトンネル7に沿って用地境界9を設定できる。そのため、子シールドトンネル7が形成されている位置までランプシールドトンネル5を形成した場合に比べて、節約可能な用地10に相当する箇所を掘削しないですみ、トンネル掘削コストを低減できる。また、地下に建造物を建造する際に必要となる区分地上権を、用地10に相当する分を取得せずにすみ、用地取得コストを低減することができる。
【0038】
第1の実施の形態によれば、横方向へのシールドトンネルの拡幅量が大きい場合にでも、地盤改良による止水領域を用意に確実に形成でき、地下水の浸入を防ぐことができる。
【0039】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態にかかる、シールドトンネルの拡幅方法の各工程の正面図である。図6(a)に示すように、本線シールドトンネル3の構築をする。その後、図6(b)に示すように、本線シールドトンネル3より、斜め水平方向に子シールド用シールド機を発進させ、ランプシールドトンネル5の到達予定位置まで子シールドトンネル7の構築を行う。その後、図6(c)に示すように、地表1よりランプシールドトンネル5の構築を行い、ランプシールドトンネル5と子シールドトンネル7を接続する。
【0040】
その後、第1の実施の形態と同様に、本線シールドトンネル3、ランプシールドトンネル5、子シールドトンネル7から薬液注入を行い、閉空間を形成し、シールドトンネルの拡幅を行う。
【0041】
第2の実施の形態は、本線シールドトンネル3の構築後、しばらくしてランプシールドトンネル5が到達する場合に有効である。
【0042】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、分岐合流部を直上の地上部からの掘削をすることなく形成可能で、第1の実施の形態と同様の効果を得る。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかるシールドトンネルの拡幅方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0044】
前述した各実施形態では、本線シールドトンネル3、ランプシールドトンネル5、子シールドトンネル7から改良体11を構築したが、子シールドトンネル7を用いずに、本線シールドトンネル3とランプシールドトンネル5だけで改良体11を構築し、両者を連結するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の一部の工程の正面図。
【図2(a)】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の平面図。
【図2(b)】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の平面図。
【図2(c)】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の平面図。
【図2(d)】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の平面図。
【図2(e)】第1の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の平面図。
【図3】(a)図2(b)におけるA−A断面図、(b)図2(d)におけるA−A断面図。
【図4】(a)図2(c)におけるD−D断面図、(b)図2(d)におけるD−D断面図。
【図5(a)】図2(e)におけるA−A断面図。
【図5(b)】図2(e)におけるB−B断面図。
【図5(c)】図2(e)におけるC−C断面図。
【図5(d)】図2(e)におけるD−D断面図。
【図6】第2の実施の形態に係るシールドトンネルの拡幅方法の一部の工程の正面図。
【符号の説明】
【0046】
1………地表
3………本線シールドトンネル
5………ランプシールドトンネル
7………子シールドトンネル
9………用地境界
10………節約可能な用地
11………改良体
12………閉空間
13………不透水層
15………中柱
17………拡幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線シールドトンネルと、ランプシールドトンネルとを連結する、シールドトンネルの拡幅方法であって、
前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルから改良体を構築し、前記改良体で囲まれた閉空間を形成する工程(a)と、
前記閉空間内で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルを連結する工程(b)と、
を具備することを特徴とするシールドトンネルの拡幅方法。
【請求項2】
前記工程(a)で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルから上方向に改良体が構築され、前記改良体で前記閉空間が形成されることを特徴とする請求項1記載のシールドトンネルの拡幅方法。
【請求項3】
前記工程(a)で、前記本線シールドトンネルと前記ランプシールドトンネルから不透水層に達するまで、下方向に改良体が構築され、前記改良体と前記不透水層で前記閉空間が形成されることを特徴とする請求項1記載のシールドトンネルの拡幅方法。
【請求項4】
前記工程(a)で、前記ランプシールドトンネルの先端部から子シールドトンネルが構築され、前記子シールドトンネルから、改良体が構築されて、前記閉鎖空間が形成されることを特徴とする請求項1ないし3記載のシールドトンネルの拡幅方法。
【請求項5】
前記工程(a)で、前記本線シールドトンネルの側面から子シールドトンネルが構築され、前記子シールドトンネルから、改良体が構築されて、前記閉鎖空間が形成されることを特徴とする請求項1ないし3記載のシールドトンネルの拡幅方法。
【請求項6】
前記工程(a)で、地盤への薬液の注入または地盤の凍結により、改良体が構築されることを特徴とする請求項1ないし請求項5記載のシールドトンネルの拡幅方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図6】
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