説明

シールドトンネルの構築工法

【課題】本発明は、シールド掘削機による構築工程のみで本線トンネルより枝分かれした支線トンネルを備えるトンネルを構築できるシールドトンネルの構築工法を提供する。
【解決手段】本線シールド掘削機で地山を掘進しながら、本線トンネル12aの一般部12aaに本線覆工体10aを、分岐・合流部12abに分岐・合流覆工体10cを構築する。分岐・合流部12abに相当する範囲の坑内を充填材14で閉塞する。本線トンネル12aの坑内で分岐・合流部12abに相当する範囲近傍の所定位置に配置した支線シールド掘削機1bを用いて、支線トンネル12bの構築予定位置に向けて方向転換をしながら充填材14を掘進し、カッタで分岐・合流覆工体10cを切削後、分岐・合流部12abから地山を掘進して分岐・合流部12ab及び支線トンネル12bの支線覆工体10bを構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、本線トンネルから枝分かれした支線トンネルを備えるトンネルをシールド工法により構築する場合、両者が連結する分岐・合流部を地上からの開削工法で構築する方法が一般的である。
しかし、地上における施工スペースの確保は困難であり、また、作業帯による交通障害や施工中の騒音などのため周辺住民の理解が得られない場合が多く、都市内の大規模な開削工法は困難となっている。
【0003】
このような中、特許文献1に示すように、本線トンネルを構築した後、本線トンネルと離間した位置から本線トンネルに漸次接近するように地山を掘削し、本線トンネルと併設させて支線トンネルを構築し、併設された本線トンネル及び支線トンネル間の壁部を除去して両者を連結するシールドトンネルの構築工法が考案されている。
【特許文献1】特開2000−257370号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したシールドトンネルの構築工法は、シールド掘削機により本線トンネル及び支線トンネルを構築した後、両者間の壁部を解体し仮設支柱を建て込んで二次覆工を施し両者を連結させる工程が必要となるだけでなく、地山によっては解体する壁部周辺の地山に地山改良を施す必要がある等、シールド工法による本線トンネル及び支線トンネルの構築工程に加えて、本線トンネルと支線トンネルを連結させるための分岐・合流部構築工程が発生することとなり、その作業が繁雑であり工期が長期化しやすく工費も増大しやすい。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、シールド掘削機による構築工程のみで本線トンネルより枝分かれした支線トンネルを備えるトンネルを構築することのできるシールドトンネルの構築工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のシールドトンネルの構築工法は、本線シールド掘削機を用いて本線トンネルを構築するとともに、前記本線シールド掘削機と比較して断面径の小さい支線シールド掘削機を用いて支線トンネルを構築するシールドトンネルの構築工法であって、前記本線シールド掘削機で地山を掘進しながら、本線トンネルの一般部に本線覆工体を構築するとともに、支線トンネルとの分岐・合流部に支線シールド掘削機で切削可能なセグメントを備える分岐・合流覆工体を構築する第1の工程と、前記本線トンネルの分岐・合流部に相当する範囲の坑内を充填材で閉塞する第2の工程と、前記本線トンネルの坑内から支線シールド掘削機で前記充填材を掘進して前記分岐・合流覆工体を切削した後、本線トンネルの分岐・合流部から地山を掘進して分岐・合流部及び支線トンネルの支線覆工体を構築する第3の工程よりなることを特徴としている。
【0007】
請求項2記載のシールドトンネルの構築工法は、前記支線シールド掘削機が前記本線シールド掘削機に内蔵されており、第1の工程が終了した後、前記支線シールド掘削機を分離し、分岐・合流部に相当する範囲におけるトンネル掘進方向後方端近傍の所定位置まで後退させることを第2の工程に含んで実施することを特徴としている。
【0008】
請求項3記載のシールドトンネルの構築工法は、前記本線トンネルに立坑が備えられており、第1の工程が終了した後、前記支線シールド掘削機を前記立坑より搬入し分岐・合流部に相当する範囲近傍の所定位置に配置することを第2の工程に含んで実施することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1から3に記載のシールドトンネルの構築工法によれば、本線シールド掘削機で地山を掘進しながら、本線トンネルを構築した後、該本線トンネルの坑内から支線シールド掘削機を発進させてシールドトンネルの支線トンネルを構築することから、本線トンネルと支線トンネルとの分岐・合流部を開削工法で構築していた従来と比較して、地上における施工スペースの確保や作業帯による交通障害、施工中の騒音等を考慮する必要がないため、周辺住民への負荷を生じるさせることなく、本線トンネルに支線トンネルを備えるシールドトンネルを構築することが可能となる。
【0010】
また、本線トンネル、支線トンネル、及び両者が連結する分岐・合流部の全てを、本線シールド掘削機及び支線シールド掘削機により機械的に構築できるから、本線トンネルと支線トンネルを個別に構築した後に両者の覆工体を破壊した上で連通させていた従来の工法のような、分岐・合流部構築工程が不要となり、作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0011】
さらに、本線シールド掘削機及び支線シールド掘削機により機械的に構築できることから地山に影響を与えることが少ないため、分岐・合流部周辺の地山条件が変化するような場所であっても、一様な手順で機械的に分岐・合流部を構築することができ、地山改良等を大々的に実施する必要がなく、本線トンネルに支線トンネルを有する安全で高品質なシールドトンネルを構築することが可能となる。
【0012】
また、本線トンネルの坑内から支線シールド掘削機を発進させてシールドトンネルの支線トンネルを構築するから、本線シールド掘削機に支線シールド掘削機を予め内蔵させておくか、または発進立坑や到達立坑あるいは中間立坑を利用して支線シールド掘削機を本線トンネルの坑内に搬入できるから、あらためて支線シールド掘削機用の発進立坑を構築するための用地を確保する必要がないため、周辺住民への理解を得やすく施工をスムーズに実施することが可能となり、また工費を大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のシールドトンネルの構築工法の実施の形態を図1から図9に示す。本発明は、本線トンネルより枝分かれした支線トンネルを備えるシールドトンネルを構築する工法であって、本線シールド掘削機及び支線シールド掘削機を用いて本線トンネルと支線トンネルを構築するに際し、本線シールド掘削機を用いて本線トンネルを構築した後、本線トンネルの坑内から支線シールド掘削機を発進させて分岐・合流部及び支線トンネルを構築するものである。
【0014】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、支線シールド掘削機を内蔵した本線シールド掘削機を用いて本線トンネルと支線トンネルを構築するシールドトンネルの構築工法を示す。
【0015】
図1(a)に示す本線シールド掘削機1aは、図2に示すようなシールドトンネル12のうち本線トンネル12aを構築する装置であり、本線トンネル12aから枝分かれしている支線トンネル12bを構築する支線シールド掘削機1bを内蔵した構成を有しており、該支線シールド掘削機1bは、本線シールド掘削機1aに対して脱着自在に構成されている。
【0016】
支線シールド掘削機1bは、図1(b)に示すように、スキンプレート2b及びカッタ3bを備えている。
該スキンプレート2bは、支線シールド掘削機1bの外殻をなす筒体であり、その断面は前記支線トンネル12bに相当する形状を有している。該スキンプレート2bの前方には地山13を掘削する前記カッタ3bが備えられており、前方に設置されたカッタビット3cを回転させて地山13を掘削するものである。
【0017】
また、該支線シールド掘削機1bは、前記スキンプレート2bの内方でカッタ3bの背面に掘削土砂を取り込むチャンバ4b、該チャンバ4bの掘削土砂を排土する排土装置5を備えており、スキンプレート2bの内壁には、周方向に所定の離間間隔をもって配置され、掘進方向に伸長してリングガーダなどの推力受け部材11bあるいはスキンプレート2bの後方でリング状に組み立てられる支線覆工体10bを押圧し、支線シールド掘削機1bを掘進させるシールドジャッキ7bを備えている。
【0018】
さらに、前記スキンプレート2bの後方の内壁には、前記支線覆工体10bの外周面に接するテールパッキン6bを備えている。該テールパッキン6bは、ワイヤーブラシを多重に取り付けた構成を用いているが、土砂や地下水がスキンプレート2bと支線覆工体10bとの隙間からスキンプレート2bの内方に流入する現象を阻止できるものであれば、何れを用いても良い。
【0019】
一方、上述の支線シールド掘削機1bを内蔵する本線シールド掘削機1aは、図1(b)に示すように、スキンプレート2a及びカッタ3aを備えている。
該スキンプレート2aは、本線シールド掘削機1aの外殻をなす筒体であり、その断面は前記本線トンネル12aに相当する形状を有している。該スキンプレート2aの前方には地山13を掘削する前記カッタ3aが備えられており、図1(b)に示すように、中央部に支線シールド掘削機1bを構成するカッタ3bの外径と同様のカッタ嵌合孔9が形成されている。
【0020】
本線シールド掘削機1aは、カッタ3aに設けられているカッタ嵌合孔9に支線シールド掘削機1bのカッタ3bを嵌合させて図1(a)に示すようにカッタ3a及びカッタ3bを面一に配置して、両者の前方に設置されたカッタビット3cを回転させて地山13を掘削するものである。
この場合、カッタ3bの外周面にその外周面から出没自在で均等ピッチに配設された複数の凸部(図示なし)と、カッタ3aの内周面に前記凸部に嵌合可能な凹部(図示なし)を設け、この凸部と凹部を嵌合させてカッタ3aとカッタ3bを一緒に回転させるようにする。このようにすれば、本線シールド掘削機のカッタ回転駆動装置を設けなくてもよくなる。
【0021】
また、該本線シールド掘削機1aは、前記スキンプレート2aの内方でカッタ3aの背面に掘削土砂を取り込むチャンバ4aを有するものの、前記支線シールド掘削機1bのチャンバ4bと連通する構成となっており、前記支線シールド掘削機1bに備えられている排土装置5を共有して用いることでチャンバ4a、4bに回収された掘削土砂を排土する構成となっている。なお、本線シールド掘削機1aのチャンバ4aと連通する構成となっている支線シールド掘削機1bのチャンバ4bは、図1(b)に破線で示しているように支線トンネル12bを構築する際には連通部を覆われて閉合されるようになっている。
【0022】
さらに、スキンプレート2aの内壁には、前記支線シールド掘削機1bと同様に、周方向に所定の離間間隔をもって配置され、掘進方向に伸長して推力受け部材11aあるいはスキンプレート2aの後方でリング状に組み立てられる本線覆工体10aを押圧し、本線シールド掘削機1aを掘進させるシールドジャッキ7aを備えている。
【0023】
また、前記スキンプレート2aの後方の内壁には、前記本線覆工体10aの外周面に接するテールパッキン6aを備えている。該テールパッキン6aは、前記支線シールド掘削機1bと同様で、ワイヤーブラシを多重に取り付けた構成を用いているが、土砂や地下水がスキンプレート2aと本線覆工体10aとの隙間からスキンプレート2aの内方に流入する現象を阻止できるものであれば、何れを用いても良い。
それから、上記では支線シールド掘削機1bが本線シールド掘削機1aに内蔵されている状態で支線シールド掘削機1b及び本線シールド掘削機1aの双方にスキンプレート2とシールドジャッキ7を備えることとしたが、支線シールド掘削機1bについては、スキンプレート2bとシールドジャッキ7bを最初から備える必要はない。本線シールド掘削機1aが立坑16に到達し、支線シールド掘削機1bの本体を分岐・合流部12abの後方端近傍に後退移動させてから、支線シールド掘削機1bの本体部にスキンプレート2bを取り付けるとともに、本線シールドジャッキ7aを転用してシールドジャッキ7bとして取り付けるようにしても良い。
【0024】
上述の構成の本線シールド掘削機1a及びこれに内蔵されている支線シールド掘削機1bの両者を用いたシールドトンネル12の構築工法を、図4及び図5を参照しながら以下に示す。なお、図4及び図5は、本線シールド掘削機1a、支線シールド掘削機1b及びシールドトンネル12の水平断面を示したものである。
【0025】
(第1の工程)
図4(a)に示すように、前記本線シールド掘削機1aで地山13を掘進しながら、本線トンネル12aの一般部12aaに本線覆工体10aを構築していく。本線トンネル12aと支線トンネル12bの分岐・合流部12abでは、地山13の掘進に伴って支線シールド掘削機1bで切削可能なセグメント15b(後述)をその一部に備える分岐・合流覆工体10cを構築していく。分岐・合流部12abを過ぎて再び一般部12aaに入ったら、到達立坑16まで本線覆工体10aを構築していき、本線シールド掘削機1aを到達立坑16に到達させる。
【0026】
ここで、前記本線覆工体10aは、図3(a)に示すように、地山13からの土圧に対する耐力を十分有し、また、前記本線シールド掘削機1aや支線シールド掘削機1bのカッタ3a、3bにて切削できない剛度を有する一般的な鉄筋コンクリート製あるいは鋼製のセグメント15aをリング状に組み立てて形成されたものである。
【0027】
一方、図3(b)に示すように、前記分岐・合流覆工体10cは、前記本線覆工体10aで用いたものと同様の形態のセグメント15aを用いているが、前記支線トンネル12bの支線覆工体10bで囲まれる部分は、前記地山13の土圧に対する耐力を有するものの、支線シールド掘削機1bのカッタ3bにて切削可能な程度に成形されたセグメント15bを採用し、これらをリング状に組み立てて形成されたものである。
前記セグメント15bとしては、例えば、通常のセグメントの鉄筋に替わる補強材として樹脂を含浸させた繊維補強体を用いたコンクリートセグメント、あるいはセグメント外殻をFRP製にしてコンクリートが充填されたセグメントが考えられる。また、そのセグメント15bを連結するボルトとしては切削可能なプラスチック製ボルトとすることが好ましい。
【0028】
(第2の工程)
図4(b)に示すように、到達立坑16に到達したら、本線シールド掘削機1aはそのままにして、本線シールド掘削機1aに内蔵されている支線シールド掘削機1bを、本線シールド掘削機1aから分離して、本線シールド掘削機1aの掘進方向で起点側を後方とすれば分岐・合流部12abの後方端近傍で一般部12aaの所定位置(後述の仕切体20の施工や充填材14の充填作業に支障のない位置でその近傍)まで後退移動させる。
【0029】
次に図4(c)に示すように、本線トンネル12aの分岐・合流部12abの坑内を充填材14で閉塞する。この閉塞にあたっては、まず分岐・合流部12abのトンネル軸方向の両端部に仕切体20を構築する。仕切体20は、通常のコンクリート躯体構築と同様にトンネル内の全断面に型枠を組み立ててコンクリート打設することで構築することでもよいが、鋼製部材あるいはコンクリート等のプレキャスト製品をトンネル内空断面に合わせて組み立てることでもよい。
なお、支線シールド掘削機1bが発進する側の仕切体20は、少なくとも支線シールド掘削機1bが通過する部分はその支線シールド掘削機1bで切削できる材料、例えば、充填材14を充填したときにかかる圧力に耐えうるだけの強度の無筋コンクリートにしておくことが好ましい。この仕切体20を構築した後、仕切体20によって閉塞されたトンネル坑内に流動化処理土あるいはソイルセメント等の充填材14を充填する。また、支線シールド掘削機1bの発進側の仕切体20の外側にはエントランスパッキン8を設置する。
また、支線シールド掘削機1bの発進にあたり、図4(c)に示すように、支線シールド掘削機1bの反力受体21をその後方で本線覆工体10aの内面に設置する。
【0030】
(第3の工程)
図4(c)に示すように、反力受体21と支線シールド掘削機1bのシールドジャッキ7bとの間にセグメント15aを入れてリング状に組立て、支線シールド掘削機1bの掘進反力がセグメント15aを介して反力受体21に伝達できるようにする。そして支線シールド掘削機1bのカッタ3bをエントランスパッキン8に臨ませる。
支線シールド掘削機1bのカッタ3bを回転させて図5(a)に示すように本線トンネル12aの分岐・合流部12abの仕切体20および充填材14を切削・掘進しつつ支線シールド掘削機1bの後方にセグメント15aを組立て、支線覆工体10bを構築する。
【0031】
さらに支線トンネル12bの構築予定位置にあわせるべく支線シールド掘削機1bの掘進方向を転向させて、分岐・合流覆工体10cのうちのセグメント15bを切削して支線シールド掘削機1bを地山13中に進める。以後、支線トンネル12bの構築予定位置に沿って地山13を掘進するとともに支線トンネル12bの支線覆工体10bを構築する。
この後、図5(b)に示すように、前記本線トンネル12aの坑内で組み立てられている支線覆工体10bを解体するとともに、充填材14や仕切体20や反力受体21を撤去する。
【0032】
以上により、前記本線トンネル12aと支線トンネル12bとの分岐・合流部12abを開削工法で構築することなくシールドトンネル12を構築できる。
また、分岐・合流部12abの構築に際し、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bによる本線トンネル12a及び支線トンネル12bの構築工程の後に、従来より行われていた本線トンネル12aと支線トンネル12bを連結させるための分岐・合流部構築工程をあらためて行う必要がなく、本線トンネル12a、支線トンネル12b及び分岐・合流部12abの全てを本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bを用いて機械的に構築することができるものである。
ちなみに、本線シールド掘削機1aは、その後到達立坑16際でスキンプレート2aを残して解体され、スキンプレート2aの内部にセグメント15aが組立てられて本線覆工体10aが構築されることになる。あるいは、本線シールド掘削機1aを到達立坑16内に完全に貫入させて、そのまま本線シールド掘削機1aを到達立坑16から搬出するようにしてもよい。本線シールド掘削機1aをそのまま搬出する場合は、本線覆工体10aを構築しつつ本線シールド掘削機1aを立坑16内に完全に貫入させてから、支線シールド掘削機1bを本線シールド掘削機1aから分離して分岐・合流部12abの後方端近傍に後退移動させるようにすることが良い。
【0033】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態では、本線トンネル12a及び支線トンネル12bを構築するシールドトンネルの構築工法に、前記支線シールド掘削機1bが内蔵されている本線シールド掘削機1aを用いる場合を示したが、本工法は必ずしもこれにこだわるものではなく、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1b各々が別体であってもよい。
【0034】
これら別体の本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bを用いる場合には、図6に示すように、本線トンネル12aを構築する際に本線シールド掘削機1aを搬入して地山中に貫入させるための発進立坑17から、支線シールド掘削機1bを本線トンネル12aの坑内に搬入する。以下に、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bの2機のシールド掘削機を用いたシールドトンネルの構築工法を示す。
【0035】
なお、ここで用いる本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bは、その断面径が本線シールド掘削機1aは本線トンネル12aに、支線シールド掘削機1bは支線トンネル12bと同様に各々成形されているのみでその他の構成は、第1の実施の形態で示した支線シールド掘削機1bと同様の構成を有している。つまり、図1(c)に示すように、スキンプレート2、カッタビット3cを備えるカッタ3、カッタ3の背面に位置するチャンバ4、チャンバ4内の掘削土砂を搬送する排土装置5、テールパッキン6、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bに推力を付与するためのシールドジャッキ7及び推力受け部材11を有している。
【0036】
(第1の工程)
図7(a)に示すように、前記本線シールド掘削機1aで地山13を掘進しながら、本線トンネル12aの一般部12aaに本線覆工体10aを構築するとともに、支線トンネル12bとの分岐・合流部12abに支線シールド掘削機1bで切削可能なセグメント15bをその一部に備える分岐・合流覆工体10cを構築しつつ、本線シールド掘削機1aを到達立坑16に到達させる。
なお、本線覆工体10a及び分岐・合流覆工体10cは、第1の実施の形態で示したものと同様のものを用いている。
【0037】
(第2の工程)
図7(b)に示すように、本線トンネル12aの分岐・合流部12abの坑内を充填材14で閉塞する。この閉塞にあたっては、まず分岐・合流部12abのトンネル軸方向の両端部に仕切体20を構築し、その後、仕切体20によって閉塞されたトンネル内部に充填材14を充填する。この仕切体20の構築や充填材14の充填方法は第1の実施の形態と同様である。そして、支線シールド掘削機1bの発進側の仕切体20の外側にはエントランスパッキン8を設置する。
次に発進立坑17より支線シールド掘削機1bを搬入し、本線シールド掘削機1aの掘進方向で起点側を後方とすれば、分岐・合流部12abの後方端近傍で一般部12aaの所定位置まで移動させる。
そして、支線シールド掘削機1bの発進にあたり、図7(c)に示すように、支線シールド掘削機1bの反力受体21をその後方で本線覆工体10aの内面に設置する。
【0038】
なお、前記支線シールド掘削機1bの本線トンネル12a内への搬入は、必ずしも上述した順序にこだわるものではなく、充填材14を充填する作業前に、あるいは作業中に搬入してもよい。
また、上記のように支線シールド掘削機1bを発進立坑17から搬入することに代えて、図8に示すように小断面の中間立坑18を設けてそこから搬入するようにしてもよい。勿論、支線シールド掘削機1bを搬入するための小断面の中間立坑18を敢えて設けずとも、本線トンネル12aの途中に本線シールド掘削機1aが通過する中間立坑を設ける場合にあっては、最寄りの中間立坑から支線シールド掘削機1bを搬入するようにしてもよい。
【0039】
(第3の工程)
以降の工程は第1の実施の形態と同様である。そのため、詳細の記述は省略する。
【0040】
ちなみに、本実施の形態における到達立坑16に到達した後の本線シールド掘削機1aであるが、本線トンネル12aが更に延長されている場合は、到達立坑16を発進立坑にして、本線シールド掘削機1aをそのまま次の区間の到達立坑16に向かって掘進を進めるようにしてもよいし、あるいは到達立坑16際で本線シールド掘削機1aをスキンプレート2だけを残して解体するようにしてもよいし、または到達立坑16から本線シールド掘削機1aをそのまま搬出するようにしてもよい。
【0041】
(第2の実施の形態の変形例)
上述の第2の実施の形態では、本線シールド掘削機1aの掘進方向と支線シールド掘削機1bとの初期掘進方向はほぼ同じであるところ、本変形例では、図9に示すように本線シールド掘削機1aの掘進方向と支線シールド掘削機1bとの初期掘進方向とは反対方向になっていることである。
【0042】
(第1の工程)
第2の実施の形態と同様にして、本線シールド掘削機1aを到達立坑16に到達させる。その後、本線シールド掘削機1aを解体するか、そのまま次の区間の到達立坑16に向かって掘進を進めるかして到達立坑16のスペースを確保する。
(第2の工程)
第2の実施の形態の図7(b)と同様に、本線トンネル12aの分岐・合流部12abの坑内を充填材14で閉塞する。この閉塞にあたっては、まず分岐・合流部12abのトンネル軸方向で両端部に仕切体20を構築し、その後、仕切体20によって閉塞されたトンネル内部に充填材14を充填する。この仕切体20の構築や充填材14の充填方法は第1の実施の形態と同様である。そして、支線シールド掘削機1bの発進側の仕切体20(本実施の形態では、到達立坑16側にある仕切体20)にはエントランスパッキン8を設置する。
次に到達立坑16(あるいはそれに代わる中間立坑18)より支線シールド掘削機1bを本線トンネル12aに搬入し、本線シールド掘削機1aの掘進方向で終点側を前方とすれば、分岐・合流部12abの前方端近傍で一般部12aaの所定位置まで移動させる。
そして、支線シールド掘削機1bの発進にあたり、支線シールド掘削機1bの反力受体21を支線シールド掘削機1bの後方で本線覆工体10aの内面に設置する。
(第3の工程)
以降の工程は、第1,2の実施の形態とは支線シールド掘削機1bの掘進方向が反対方向であることを除き同様であるから、詳細の記述は省略する。
【0043】
以上で説明したように、本発明のシールドトンネル12の構築工法によれば、本線シールド掘削機1aで地山13を掘進しながら、本線トンネル12aを構築した後、該本線トンネル12aの坑内から支線シールド掘削機1bを発進させてシールドトンネル12の支線トンネル12bを構築することから、本線トンネル12aと支線トンネル12bとの分岐・合流部12abを開削工法で構築していた従来と比較して、地上における施工スペースの確保や作業帯による交通障害、施工中の騒音等を考慮する必要がないため、周辺住民への負荷を生じるさせることなく、シールドトンネル12を構築することが可能となる。
【0044】
また、本線トンネル12a、支線トンネル12b、及び両者が連結する分岐・合流部12abの全てを、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bにより機械的に構築できるから、本線トンネル12aと支線トンネル12bを個別に構築した後に両者の覆工体を破壊した上で連通させていた従来の工法のような、分岐・合流部構築工程が不要となり、作業性を大幅に向上することが可能となる。
【0045】
さらに、本線シールド掘削機1a及び支線シールド掘削機1bにより機械的に構築できることから地山13に影響を与えることが少ないため、分岐・合流部12ab周辺の地山条件が変化するような場所であっても、一様な手順で機械的に分岐・合流部12abを構築することができ、地山改良等を大々的に実施する必要がなく(実施するとしても、分岐・合流覆工体10cと支線覆工体10bとの接合部付近だけに実施すれば良い)、本線トンネル12aに支線トンネル12bを有する安全で高品質なシールドトンネル12を構築することが可能となる。
【0046】
また、本線トンネル12aの坑内から支線シールド掘削機1bを発進させて支線トンネル12bを構築するから、本線シールド掘削機1aに支線シールド掘削機1bを予め内蔵させておくか、または発進立坑17や到達立坑16あるいは中間立坑18を利用して支線シールド掘削機1bを本線トンネル12aの坑内に搬入できるから、あらためて支線シールド掘削機1b用の発進立坑17を構築するための用地を確保する必要がないため、周辺住民への理解を得やすく施工をスムーズに実施することが可能となり、また工費を大幅に削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るトンネルの構築工法に用いる本線シールド掘削機及び支線シールド掘削機を示す図である。
【図2】本発明に係る本線トンネル及び支線トンネルの構築予定位置を示す図である。
【図3】本発明に係る本線トンネルの断面図を示す図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルの構築方法における第1〜第2の工程を示す図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルの構築方法における第3の工程を示す図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルの構築方法を示す図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルの構築方法における第1〜第2の工程を示す図である。
【図8】本発明に係る第2の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルの他の構築方法を示す図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態の本線トンネル及び支線トンネルのさらに他の構築方法を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 シールド掘削機
2 スキンプレート
3 カッタ
4 チャンバ
5 排土装置
6 テールパッキン
7 シールドジャッキ
8 エントランスパッキン
9 カッタ嵌合孔
10a 本線覆工体
10b 支線覆工体
10c 分岐・合流覆工体
11 推力受け部材
12 シールドトンネル
12a 本線トンネル
12b 支線トンネル
13 地山
14 充填材
15 セグメント
16 到達立坑
17 発進立坑
18 中間立坑
20 仕切体
21 反力受体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本線シールド掘削機を用いて本線トンネルを構築するとともに、前記本線シールド掘削機と比較して断面径の小さい支線シールド掘削機を用いて支線トンネルを構築するトンネルの構築工法であって、
前記本線シールド掘削機で地山を掘進しながら、本線トンネルの一般部に本線覆工体を構築するとともに、支線トンネルとの分岐・合流部に支線シールド掘削機で切削可能なセグメントを備える分岐・合流覆工体を構築する第1の工程と、
前記本線トンネルの分岐・合流部に相当する範囲の坑内を充填材で閉塞する第2の工程と、
前記本線トンネルの坑内から支線シールド掘削機で前記充填材を掘進して前記分岐・合流覆工体を切削した後、本線トンネルの分岐・合流部から地山を掘進して分岐・合流部及び支線トンネルの支線覆工体を構築する第3の工程よりなることを特徴とするシールドトンネルの構築工法。
【請求項2】
請求項1に記載のシールドトンネルの構築工法において、
前記支線シールド掘削機が前記本線シールド掘削機に内蔵されており、
第1の工程が終了した後、前記支線シールド掘削機を分離し、分岐・合流部に相当する範囲におけるトンネル掘進方向後方端近傍の所定位置まで後退させることを第2の工程に含んで実施することを特徴とするシールドトンネルの構築工法。
【請求項3】
請求項1に記載のシールドトンネルの構築工法において、
前記本線トンネルに立坑が備えられており、
第1の工程が終了した後、前記支線シールド掘削機を前記立坑より搬入し分岐・合流部に相当する範囲近傍の所定位置に配置することを第2の工程に含んで実施することを特徴とするシールドトンネルの構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−303195(P2007−303195A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133711(P2006−133711)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】