説明

シールドフィンガーの取り付け装置

【課題】シールドフィンガーを対象物に直接、取り付けることができる装置を提供する。
【解決手段】シールドフィンガー2を電子機器等の対象物3に取り付ける装置1である。シールドフィンガー2の押し込み部4と、押し込み部4を上下左右に操作するレバー部5と、押し込み部4を内部に収め、レバー部5の上下左右の動きを許容するようにレバー部5が上面に通されたフレーム部6と、を備えている。この構成により、シールドフィンガーを対象物に直接、取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドフィンガーの取り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜特許文献4に開示されているように、電子部品又は電子機器等の対象物に、電磁波の遮断用にシールドフィンガーを取り付ける技術が公知である。
【0003】
具体的にいうと、特許文献1のシールドフィンガーを取り付ける技術は、湾曲した板バネ部分の両側に爪部分が形成されたシールドフィンガーを、素手で押し開き、対象物に形成された嵌め込み穴に前記爪部分を嵌め込むように閉じて、シールドフィンガーを対象物に取り付けている。この技術は、素手でシールドフィンガーを押し開くため、板バネ部分に均等に押し開くための力が加わらず、対象物への取り付けにバラツキが生じたり、シールドフィンガーが変形したりする課題がある。
【0004】
特許文献2のシールドフィンガーを取り付ける技術は、湾曲した板バネ部分の両側に爪部分が形成されたシールドフィンガーを、フィンガーレールに通して一体化し、対象物に取り付けている。この技術は、材料費や金属加工費用、及び作業工数の増加に伴う労働費の増加による、生産コストが嵩む課題がある。また、シールドフィンガーをフィンガーレールに通す工程の追加により、単位時間当たりの生産量の低下や、作業をするための場所を確保しなければならない課題がある。
【特許文献1】特開2000−49485号公報
【特許文献2】特開2003−258479号公報
【特許文献3】特開2004−55757号公報
【特許文献4】特開平7−45335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、シールドフィンガーを対象物に直接、取り付けることができる装置が望まれているが、現状では見聞することができない。
【0006】
本発明の目的は、シールドフィンガーを対象物に直接、取り付けることができるシールドフィンガーの取り付け装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシールドフィンガーの取り付け装置は、
シールドフィンガーを電子機器等の対象物に取り付ける装置であって、
前記シールドフィンガーの押し込み部と、
前記押し込み部を上下左右に操作するレバー部と、
前記押し込み部を内部に収め、前記レバー部の上下左右の動きを許容するように前記レバー部が上面に通されたフレーム部と、
を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シールドフィンガーを対象物に直接、取り付けることができる装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
<実施形態1>
本発明に係るシールドフィンガーの取り付け装置の実施形態1を、図1〜図6に基づいて説明する。このシールドフィンガーの取り付け装置(以下、取り付け装置と省略する場合がある。)1は、湾曲した板バネ部分2aの両側に間隔を開けて爪部分2bが形成されたシールドフィンガー2を、電子部品又は電子機器等の対象物3に形成された嵌め込み穴3aへ取り付ける際に好適に採用される。
【0011】
図1に示す取り付け装置1は、シールドフィンガー2の押し込み部4と、押し込み部4を上下左右に操作するレバー部5と、押し込み部4を内部に収め、レバー部5の上下左右の動きを許容するようにレバー部5が上面6aに通されたフレーム部6とを備えている。
【0012】
押し込み部4は支持軸7とローラー8とを備えている。支持軸7はシールドフィンガー2の軸方向の長さより長い棒状部材である。ローラー8は、シールドフィンガー2を押し込んだ際に傷がつかないように、ゴムなどの弾性部材から成り、図4に示すように、シールドフィンガー2を押し広げることができる直径を有する。このローラー8は、シールドフィンガー2の長手方向にわたる略全域を押さえ込むことができるように複数、配置されており、支持軸7に軸受(図示は省略)を介して回転可能に設けられている。但し、ローラー8はシールドフィンガー2の一部を押し込むように配置されていても良い。
【0013】
レバー部5はレバー本体9とハンドル10とを備えている。レバー本体9の下端部は、支持軸7の略中央位置に連結されており、レバー本体9の上端部には、シールドフィンガー2の長手方向と略平行にハンドル10が連結されている。
【0014】
フレーム部6は、上面6aとシールドフィンガー2の長手方向に配置される側面6bとを備えている。本実施形態では、より剛強に構成するために、シールドフィンガー2の短手方向に配置される側面6cも備えているが、省略しても良い。
【0015】
このフレーム部6は、シールドフィンガー2の上方に配置した際に、両側面6bがシールドフィンガー2の長手方向の両端部上に配置されるように、シールドフィンガー2の長手方向の長さと略等しい長さを有する。但し、フレーム部6は、シールドフィンガー2より短くても良い。そして、フレーム部6は、詳細は後述するが、内部の押し込み部4を上下左右に移動させることができる幅寸法及び高さを有する。
【0016】
フレーム部6の上面6aには、レバー部5のレバー本体9をシールドフィンガー2の短手方向(左右方向)に動かすことができるように横ガイド溝11が形成されている。この横ガイド溝11にレバー本体9が通され、レバー本体9の上下左右の動きが許容されている。
【0017】
フレーム部6の側面6bには、図2に示すように、縦ガイド溝12と前記縦ガイド溝12の下部から連続するように左右に延びる横ガイド溝13とが形成されている。このガイド溝12、13に回転軸7の端部が通されている。なお、フレーム部6の側面6bには、さらに縦ガイド溝12の上部に連続するように回転軸7の端部の格納溝14が形成されていることが好ましい。格納溝14は、縦ガイド溝12に連続する横ガイド溝14aと前記横ガイド溝14aの端部から連続するように下方に延びる格納部14bとを備えている。そのため、取り付け装置1を移動させるときや使用しないときは、回転軸7の端部を格納部14bに挿入しておくと、押し込み部4が遊ぶことがなく、好都合である。
【0018】
フレーム部6の側面6bの下端に補助押し込み部15を備えている。補助押し込み部15は、シールドフィンガー2を押し込んで開放状態とすると共に、図4に示すように開放状態のシールドフィンガー2を収めることができる大きさの切り欠き16が形成されている。そのため、シールドフィンガー2を押し込み部4と補助押し込み部15とで押し込むことができる。しかも、シールドフィンガー2を補助押し込み部15で拘束しながら、押し込むことができ、対象物3への取り付けにバラツキが生じたり、シールドフィンガー2が変形したりすることを防ぐことができる。
【0019】
ちなみに、補助押し込み部15は、図2に示すように、フレーム部6の側面6bの下端に着脱可能な構成とされていることが好ましい。本実施形態では、フレーム部6の側面6bにネジのねじ込み穴が形成されている。補助押し込み部15にネジの貫通穴が形成されている。フレーム部6の側面6bのねじ込み穴と、補助押し込み部15の貫通穴とが同心位置に配置され、ネジがねじ込まれて補助押し込み部15が固定されている。このネジを取り外して、補助押し込み部15をシールドフィンガー2の大きさや材質に応じて、簡単に交換することができる。このとき、フレーム部6の側面6bの下端に凹み部17を形成し、補助押し込み部15の上面に前記凹み部17に対応する凸部18を形成しておくと、補助押し込み部15をフレーム部6の側面6bの下端に取り付ける際に容易に位置決めすることができる。但し、補助押し込み部15の着脱構造は、上記の限りでない。
【0020】
また、補助押し込み部15はゴム等の弾性部材から成ることが好ましい。シールドフィンガー2をより確実に拘束することができる。
【0021】
このような構成の取り付け装置1は、以下のように用いてシールドフィンガー2を対象物3に取り付ける。
【0022】
先ず、図1及び図3に示すように、対象物3上にシールドフィンガー2を配置する。このとき、対象物3の嵌め込み穴3a上に、前記嵌め込み穴3aに嵌め込まれるシールドフィンガー2の爪部分2bが配置される。そして、シールドフィンガー2上に取り付け装置1を配置する。
【0023】
次に、図4に示すように、レバー部5を操作して回転軸7の端部を、格納部14bから横ガイド溝14aに沿って移動させて縦ガイド溝12に導く。そして、フレーム部6を下方に押し込んで補助押し込み部15でシールドフィンガー2の板バネ部分2aの頂部を押し込みながら、拘束する。それと共に、回転軸7の端部が縦ガイド溝12の下端部に接触するまで、レバー部5のハンドル10を下方に押し、ローラー8でシールドフィンガー2の板バネ部分2aの頂部を押し込んで、シールドフィンガー2を開放状態とする。
【0024】
そして、図5に示すように、レバー部5を操作して横ガイド溝13に沿ってローラー8を水平に移動させて、ローラー8でシールドフィンガー2の一方の側部を押し込んで、前記一方の側部を閉じた状態として爪部分2bを対象物3の嵌め込み穴3aに嵌め込む。このとき、他方側の側部は、補助押し込み部15の切り欠き16の内壁に接触するので、この接触部分に反力をとって、一方の側部を良好に閉じた状態とすることができる。しかも、シールドフィンガー2が所定の位置からずれることがない。
【0025】
さらに、図6に示すように、レバー部5を操作して横ガイド溝13に沿ってローラー8を水平に移動させて、ローラー8でシールドフィンガー2の他方側の側部を押し込んで、前記他方側の側部を閉じた状態として爪部分2bを対象物3の嵌め込み穴3aに嵌め込むと、シールドフィンガー2の取り付け作業が完了する。なお、ローラー8を横ガイド溝13に沿って水平に移動させる際に、ローラー8がシールドフィンガー2の頂部と接触する。しかし、一旦、シールドフィンガー2の一方の側部が閉じた状態となって爪部分2bが嵌め込み穴3aに嵌合されると、再び一方の側部を開いた状態とするには、大きな加重を必要とするので、水平移動するローラー8が接触する程度では、一方の側部が開いた状態とはならない。しかも、ローラー8を弾性部材で構成しているので、シールドフィンガー2の頂部を強く押し込むことがない。
【0026】
このように、取り付け装置1はレバー部5を操作するだけで、シールドフィンガー2を対象物3に直接、取り付けることができる。そのため、作業経験者でなくとも、シールドフィンガー2を対象物3に簡単に取り付けることができる。しかも、生産コストを低減することができる。また、生産性が高く、場所を必要としない。特に、取り付け装置1をシールドフィンガー2上に配置するだけで、用いることができるので、対象物3が地面と水平に配置されていなくても、シールドフィンガー2を対象物3に取り付けることができる。
【0027】
さらに、ローラー8を用いてシールドフィンガー2を押し広げるので、板バネ部分2aに略均等に力を加えることができ、対象物3への取り付けにバラツキが生じたり、シールドフィンガー2が変形することがない。
【0028】
<実施形態2>
上記実施形態1は、フレーム部6の側面6bにガイド溝12、13及び格納溝14を形成したが、図7に示すように省略しても、実施することができる。つまり、押し込み部4をレバー部5によって上下左右に操作することができる構成であれば良い。側面6bのガイド溝12、13及び格納溝14を省略することができるので、簡単に製造することができる。
【0029】
このとき、図8に示すように、フレーム部6の上面6aとレバー部5との間に圧縮バネ19が配置されていることが好ましい。
【0030】
具体的にいうと、フレーム部6の上面6aにオーバル形状の貫通穴を有する筒状部20が形成されている。この筒状部20の貫通穴の下端部には、周縁に沿って内方に突出するフランジ部21が形成されている。
【0031】
レバー部5は、レバー本体9が筒状部20内に通されている。このレバー本体9は、筒状部20内において、大径部9aと小径部9bとが切り替わるように構成されている。
【0032】
フレーム部6の上面6aにおける筒状部20のフランジ部21の上面と、レバー部5におけるレバー本体9の大径部9aの下面との間に、圧縮バネ19が配置されている。つまり、レバー部5と共に圧縮バネ19も移動する構成とされており、ローラー8の上方への移動を補助する。但し、フレーム部6の上面6aとレバー部5との間に圧縮バネ19が配置されていれば良く、上記構成の限りでない。
【0033】
<実施形態3>
上記実施形態1、2の取り付け装置は、ローラー8の表面が平坦に形成されているが、図9に示すように、ローラー8の表面に凸部22が形成されていることが好ましい。シールドフィンガー2の板バネ部分2aの形状が不均一なものであっても、対応することができる。
【0034】
上記実施形態1、2の取り付け装置は、押し込み部4がローラー8を備えているが、シールドフィンガー2を押し込むことができれば、形状及び材質は特に限られない。
【0035】
上記実施形態1、2の取り付け装置は、補助押し込み部15を備えているが、省略しても良い。このとき、図10に示すように、フレーム部6をシールドフィンガー2上に配置した際に相互が干渉しないように、フレーム部6は、脚部23を備えた構成とされる。そのため、シールドフィンガー2の長さを問わずに用いることができる。
【0036】
要するに、最も簡単な構成としては、図11に示すように、フレーム部6の側面6bのガイド溝12、13及び格納溝14を省略し、さらに補助押し込み部15を省略した形態で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態1のシールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける形態を示した概略斜視図である。
【図2】補助押し込み部の着脱構成を示した概略側面図である。
【図3】シールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける工程を示した概略透視図である。
【図4】シールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける工程を示した概略透視図である。
【図5】シールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける工程を示した概略透視図である。
【図6】シールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける工程を示した概略透視図である。
【図7】本発明の実施形態2のシールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける形態を示した概略斜視図である。
【図8】フレーム部の上面とレバー部との間に圧縮バネが配置された形態を示した部分断面図である。
【図9】本発明の実施形態3のシールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける形態を示した概略斜視図である。
【図10】本発明の実施形態3の異なるシールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける形態を示した概略斜視図である。
【図11】本発明の実施形態3の異なるシールドフィンガーの取り付け装置を用いて、シールドフィンガーを対象物に取り付ける形態を示した概略斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 シールドフィンガーの取り付け装置
2 シールドフィンガー
3 対象物
4 押し込み部
5 レバー部
6 フレーム部
6a フレーム部の上面
6b フレーム部の側面
7 支持軸
8 ローラー
11 横ガイド溝
12 縦ガイド溝
13 横ガイド溝
14 格納溝
15 補助押し込み部
16 切り欠き
17 凹み部
18 凸部
19 圧縮バネ
22 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドフィンガーを電子機器等の対象物に取り付ける装置であって、
前記シールドフィンガーの押し込み部と、
前記押し込み部を上下左右に操作するレバー部と、
前記押し込み部を内部に収め、前記レバー部の上下左右の動きを許容するように前記レバー部が上面に通されたフレーム部と、
を備えたシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項2】
前記押し込み部は、支持軸と前記支持軸に回転可能に設けられたローラーとを備え、前記支持軸に前記レバー部の下端部が連結されており、
前記フレーム部の上面には、左右に延びる横ガイド溝が形成され、前記横ガイド溝にレバー部が通されており、
前記フレーム部の相対峙する側面には、縦ガイド溝と前記縦ガイド溝の下部から連続するように左右に延びる横ガイド溝とが形成され、前記ガイド溝に前記回転軸の端部が通されていることを特徴とする、請求項1に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項3】
前記フレーム部の上面と前記レバー部との間に圧縮バネが配置されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項4】
前記フレーム部の側面の下端に補助押し込み部を備えており、前記補助押し込み部は、前記シールドフィンガーを押し込んで開放状態とすると共に、前記開放状態のシールドフィンガーを収めることができる大きさの切り欠きが形成されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項5】
前記補助押し込み部は、前記フレーム部の側面の下端に着脱可能な構成とされており、シールドフィンガーの大きさ又は材質に応じて交換されることを特徴とする、請求項4に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項6】
前記補助押し込み部は弾性部材から成ることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項7】
前記フレーム部の側面には、前記縦ガイド溝に連続するように前記回転軸の端部の格納溝が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。
【請求項8】
前記ローラーの表面に凸部が形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のシールドフィンガーの取り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−206155(P2009−206155A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44504(P2008−44504)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】