説明

シールド到達工法

【課題】シールド到達工法において、準備工程における立坑内での構築作業の軽減と時間短縮及びコストダウンを図ることである。
【解決手段】立坑2の内壁面に、シールド掘削機1のほぼ下半部を収容可能で上方に開放されたシールドドック3を取り付けて、シールド掘削機1を前進させてシールドドック3内に到達させる。具体的には、シールドドック3内に液体Wを貯めておく。他方、立坑2の外側のシールド掘削機1近傍の地盤中からディープウェルにより地下水を汲み上げて、立坑2外側のシールド掘削機1近傍の地下水位をシールド掘削機1のほぼ下半部レベル以下に保った状態にしておく。そして、シールド掘削機1を前進させてシールドドック3内に到達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑へのシールド掘削機の到達工法に関する。
【背景技術】
【0002】
立坑へのシールド掘削機の到達工法として特許文献1で知られるものがある。そのシールド到達工法は、立坑の内壁面にエントランス室を有したエントランス装置を取り付け、エントランス室内を加圧装置により加圧して地下水圧と略等しいかあるいはそれ以上に維持し、この状態でシールド掘削機をエントランス室内に到達させ、この後、エントランス室に備えたシール部材を膨張させた状態でエントランス室とシールド掘削機との間をシールしてモルタルを充填し、しかる後にエントランス装置の蓋部を解体撤去するものである。これによれば、エントランス室内を加圧しておくことにより、シールド掘削機の立坑への到達時に、地下水や土砂等が立坑内に流入するのを完全に防止でき、当然のことながら周囲地山が崩れることもない。したがって、シールド掘削機の到達地点が大深度である場合にも、到達を安全かつ確実に行うことが可能となる。
【特許文献1】特開平11−229755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来は立坑の内壁面に、シールド掘削機の外径よりも大径の円筒状のエントランス室を構築しておく必要があり、さらに、そのエントランス室内を加圧する加圧装置も備える必要があった。このため、シールド到達に際しての準備工程において、立坑内での円筒状のエントランス室の構築作業に労力と時間及び経費がかかるものとなっていた。
【0004】
本発明の課題は、シールド到達工法において、準備工程における立坑内での構築作業の軽減と時間短縮及びコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機のほぼ下半部を収容可能で上方に開放されたシールドドックを取り付けておき、前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機のほぼ下半部を収容可能で上方に開放されたシールドドックを取り付けて、このシールドドック内に液体を貯めておく一方、前記立坑の外側の前記シールド掘削機近傍の地盤中から地下水を汲み上げて、前記立坑外側の地下水位を前記シールド掘削機のほぼ下半部レベル以下に保った状態で、前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシールド到達工法であって、前記立坑の外側の前記シールド掘削機近傍の地盤中から地下水を汲み上げて、前記立坑外側の前記シールド掘削機近傍の地下水位を前記シールド掘削機のほぼ下半部レベル以下に保った状態にしておくことを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機が収納可能で、前記立坑の外側の地下水位より高い水位を保つことが可能な高さを有して、上方に開放されたシールドドックを取り付けておき、前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のシールド到達工法であって、前記立坑の外側の前記シールド掘削機近傍の地盤中から地下水を汲み上げて、前記立坑外側の前記シールド掘削機近傍の地下水位を前記シールドドックの上方開放部レベル以下に保った状態にしておくことを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のシールド到達工法であって、前記シールド掘削機を前記立坑の到達口に対し止水シールして前進させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、立坑内での到達準備工程において、シールド掘削機のほぼ下半部を収容する上方に開放されたシールドドックを構築すればよく、従来のような円筒状のエントランス室及びその加圧装置も不要なため、作業の軽減と時間短縮及びコストダウンを達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、1はシールド掘削機、2は立坑、3はシールドドック、4は架台、5は保持枠、Wは水である。図1(a)は立坑2内のシールドドック3の構築工程を示し、図1(b)はシールドドック3内への貯水工程を示し、図1(c)はシールドドック3内へのシールド掘削機1の前進工程を示し、図1(d)はシールド掘削機1の到達完了を示している。
【0013】
シールドドック3は、図2から図5に示すように、立坑2の内部において、底版に設置した架台4上に構築されて、立坑2の到達口に取り付けた保持枠5に取り付けられている。
すなわち、シールドドック3は、立坑2の底版に設置した左右平行レール状の架台4の上に構築されてシールド掘削機1のほぼ下半部を収容可能で上方に開放した半円筒状部31と、その先端を閉止する半円板状部32とから構成され、その半円筒状部31及び半円板状部32はいずれも鋼板及び補強材を接合して形成されている。また、半円筒状部31は、立坑2の到達口に取り付けられたリング状鋼板による保持枠5のほぼ下半部外周に接合して取り付けられている。
【0014】
なお、保持枠5の内周には、止水シール材6及びその保護板7が取り付けられている。止水シール材6は、ゴムチューブと図略のシールゴムにより形成されて保持枠5の内周の全周にわたって取り付けられており、図示しない圧気源からのエアーや水源からの水が供給される。保護板7は、ステンレスにより形成されて保持枠5の内周の全周にわたって分割した状態で取り付けられており、止水シール材6の内周側に位置して、シールド掘削機1の外周に当接する。
【0015】
次に、本発明のシールド到達工法について説明する。
まず、シールド掘削機1の到達に先立って、図1(a)及び図2に示すように、立坑2の到達口に保持枠5を構築し、その内周に止水シール材6及び保護板7を取り付け、保持枠5のほぼ下半部外周にシールドドック3を構築しておく。そして、図1(b)に示すように、そのシールドドック3内に注水してほぼ一杯に水Wを満たしておく
また、その作業と並行して、立坑2の外側において、図示しないが、シールド掘削機1近傍の地盤中からディープウェルにより地下水を汲み上げて、その地下水位をシールド掘削機1のほぼ下半部レベル(ほぼ中心線レベル)以下の状態に保っておく。
【0016】
その後、図1(c)に示すように、シールド掘削機1を前進させて立坑2の到達口から保持枠5を介してシールドドック3内に到達させる。このとき、保持枠5の内周において、シールド掘削機1の外周との間に保護板7を介して止水シール材6が介在されており、この止水シール材6のゴムチューブ内にエアーを供給しておくことで、地山から立坑2内への地下水の浸入が効果的に阻止される。しかも、シールド掘削機1のほぼ下半部を収容するシールドドック3内には水Wがほぼ一杯に満たされて、シールド掘削機1近傍の地盤中の地下水位とほぼ同水位で平衡が保たれているため、地山から立坑2内へ地下水が突出することもない。
【0017】
なお、例えば地下水位がシールド掘削機1より上でその天端部分が砂層の場合、その砂層が崩壊する危険もあるが、既に地下水位はシールド掘削機1のほぼ下半部レベル以下の状態に保たれているので、その危険はない。
また、例えば地下水位をシールド掘削機1より下げた場合、止水シール材6のシール性能が下がり、特に、シールド掘削機1のほぼ下半部を受ける止水シール材6が過大荷重により破損することが考えられる。しかし、地下水位がシールド掘削機1のほぼ下半部レベル以下の状態に保たれているので、止水シール材6のシール性能を維持でき、しかも、シールド掘削機1に対する地下水及びシールドドック3内の水Wの浮力により、止水シール材6の破損の心配もない。
【0018】
なお、以上の実施形態においては、半円筒状のシールドドックとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、箱状のシールドドックであっても良い。
また、実施形態では、シールドドック内に水を貯めたが、水に限らず、泥水でも良く、他の液体でも良い。
さらに、シールドドックの形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。例えばシールドドックの高さはシールド掘削機のほぼ下半部に対応したものに限らず立坑背面の地下水位より高い水位を保てる高さで良い。その場合、立坑外側のシールド掘削機近傍の地下水位をシールドドックの上方開放部レベル以下に保った状態にしておく。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成を示すもので、立坑内のシールドドックを示した斜視図(a)、シールドドック内への貯水を示した斜視図(b)、シールドドック内へのシールド掘削機の前進を示した斜視図(c)、シールド掘削機の到達を示した斜視図(d)である。
【図2】図1のシールドドック部の縦断面図である。
【図3】図2の上部の拡大図(a)と下部の拡大図(b)である。
【図4】図2のシールドドックの断面図(a)と端面図(b)である。
【図5】図2の保持枠の正面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 シールド掘削機
2 立坑
3 シールドドック
4 架台
5 保持枠
6 止水シール材
7 保護板
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、
前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機のほぼ下半部を収容可能で上方に開放されたシールドドックを取り付けておき、
前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とするシールド到達工法。
【請求項2】
立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、
前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機のほぼ下半部を収容可能で上方に開放されたシールドドックを取り付けて、このシールドドック内に液体を貯めた状態にしておき、
前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とするシールド到達工法。
【請求項3】
前記立坑の外側の前記シールド掘削機近傍の地盤中から地下水を汲み上げて、前記立坑外側の前記シールド掘削機近傍の地下水位を前記シールド掘削機のほぼ下半部レベル以下に保った状態にしておくことを特徴とする請求項2に記載のシールド到達工法。
【請求項4】
立坑へのシールド掘削機の到達工法であって、
前記立坑の内壁面に、前記シールド掘削機が収納可能で、前記立坑の外側の地下水位より高い水位を保つことが可能な高さを有して、上方に開放されたシールドドックを取り付けておき、
前記シールド掘削機を前進させて前記シールドドック内に到達させることを特徴とするシールド到達工法。
【請求項5】
前記立坑の外側の前記シールド掘削機近傍の地盤中から地下水を汲み上げて、前記立坑外側の前記シールド掘削機近傍の地下水位を前記シールドドックの上方開放部レベル以下に保った状態にしておくことを特徴とする請求項4に記載のシールド到達工法。
【請求項6】
前記シールド掘削機を前記立坑の到達口に対し止水シールして前進させることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシールド到達工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−231729(P2008−231729A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70860(P2007−70860)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(504158881)東京地下鉄株式会社 (22)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【Fターム(参考)】